説明

鍵盤装置

【課題】ノイズの原因である鍵盤スイッチの振動を物理的に抑制するとともに、同一鍵盤を高速で連打した場合に音切れがなく安定した連打音を発生させること。
【解決手段】ハンマー20には、押鍵時にスイッチ本体35の可動接点36付近を弾性変化して包み込みながら押圧するための押圧部材22が取り付けられている。押圧部材22は、略直方体に形成された発泡スポンジ層からなる部材であり、ハンマー20のスイッチ本体35の可動接点36付近に対向する位置に取り付けられている。そして、押圧部材22は、押鍵時には基板34に向けて回動するハンマー20に伴ってスイッチ本体35の可動接点36付近に当接して押圧し始め、離鍵時には反対方向に回動するハンマー20に伴ってスイッチ本体35の可動接点36付近から離間するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤の押鍵情報を検出する鍵盤スイッチを備える鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子ピアノや電子オルガンなどの電子鍵盤楽器に使用される鍵盤装置においては、鍵盤の押鍵情報を検出する鍵盤スイッチが用いられている。
例えば、特許文献1に記載の鍵盤スイッチは、三個の固定接点が並べて形成された板状の基板と、三個の固定接点を覆うように基板に取り付けられた弾性を有する略ドーム状のスイッチ本体と、基板上の三個の固定接点それぞれに対向するようスイッチ本体に並べて設置された可動接点と、を備え、押鍵時に回動する鍵盤の押圧によってスイッチ本体が弾性変形することで可動接点が対向する固定接点と順次接触するとともに、離鍵時にはスイッチ本体の弾性変形が解消することで可動接点が接触中の固定接点から順次離間するよう構成されている。
【0003】
なお、三組の対向する可動接点と固定接点のうち、一組目の対向する可動接点と固定接点とがノートオンおよびノートオフを検出するのに用いられ、二組目と三組目の対向する可動接点と固定接点とが押鍵速度(オンベロシティ)および離鍵速度(オフベロシティ)を検出するのに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−54234号公報(第2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような鍵盤スイッチにおいては、次のような問題があった。すなわち、押鍵時に前記鍵盤スイッチが備える一組目の対向する可動接点と固定接点とが接触した後に二組目の対向する可動接点と固定接点とが接触した場合に、弾性を有するスイッチ本体が、接触中である二組目の対向する可動接点と固定接点を支点として、シーソー状に振動しやすくなり、このような振動がスイッチ本体に発生すると接触中である一組目の対向する可動接点と固定接点とが離間しやすくなる。接触中である一組目の対向する可動接点と固定接点とが離間すると、ノートオン中であるにも拘わらず、ノートオフが検出されるという問題があった。
【0006】
特に、同一の鍵盤を高速で連打する際に上述のような振動がスイッチ本体に発生すると、上述のようなノートオン時にノートオフを出力する現象が頻繁に出現していわゆる音切れが発生するという問題があった。
【0007】
なお、ソフト的な手法で振動に起因するノイズを除去する方法もあるが、ソフトを修正するだけでよいために低コストである一方、振動に起因するノイズが存在することには変わりなく、また処理に時間遅れがあるという別の欠陥を内包するため、根本的な解決にはなっていない。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、ノイズの原因である鍵盤スイッチの振動を物理的に抑制するとともに、同一鍵盤を高速で連打した場合に音切れがなく安定した連打音を発生させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る鍵盤装置(1:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄で用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、複数の鍵盤(10)と、前記複数の鍵盤(10)のほぼ中央を下方より回動可能に支持するシャーシと、前記複数の鍵盤(10)それぞれに対応して配設され、前記シャーシに回動可能に支持され、前記鍵盤(10)の押鍵により回動するとともに押鍵された前記鍵盤(10)を元の位置へ復帰させる荷重を付与するハンマー(20)と、前記複数の鍵盤(10)それぞれに対応して前記シャーシに設けられ、前記鍵盤(10)の押鍵情報を検出する鍵盤スイッチ(30)と、を備える鍵盤装置(1)であって、前記鍵盤スイッチ(30)は、前記鍵盤(10)の長さ方向に沿って三個以上の固定接点(31,32,33)が形成された板状の基板(34)と、前記鍵盤(10)または前記ハンマー(20)に対向して前記固定接点(31,32,33)を覆うように前記基板(34)に取り付けられた弾性を有する略ドーム状のスイッチ本体(35)と、前記基板(34)上の前記固定接点(31,32,33)それぞれに対向するよう前記スイッチ本体(35)に並べて設置された可動接点(36,37,38)と、を備え、押鍵時に回動する前記鍵盤(10)または前記ハンマー(20)の押圧によって前記スイッチ本体(35)が弾性変形することで前記可動接点(36,37,38)が対向する前記固定接点(31,32,33)と順次接触するとともに、離鍵時には前記スイッチ本体(35)の弾性変形が解消することで前記可動接点(36,37,38)が接触中の前記固定接点(31,32,33)から順次離間するよう構成されており、さらに、押鍵時に前記鍵盤スイッチ(30)が備える一組目の対向する前記可動接点(36)と前記固定接点(31)とが接触してから二組目の対向する前記可動接点(37)と前記固定接点(32)とが接触するまでの何れかのタイミングで前記一組目の前記可動接点(36)を接触中の前記固定接点(31)に向けて押圧し始め、離鍵時に前記二組目の前記可動接点(37)が接触中の前記固定接点(32)から離間したら前記一組目の前記可動接点(36)への押圧を解除する押圧部材(22)を備えることを特徴とする。
【0010】
このように構成された本発明の鍵盤装置(1)によれば、押鍵時に二組目の対向する可動接点(37)と固定接点(32)とが接触した後に、一組目の対向する可動接点(36)と固定接点(31)とに対してスイッチ本体(35)を介して振動が伝わってきても、上述の押圧部材(22)が一組目の可動接点(36)を接触中の固定接点(31)に向けて押圧することで両者を密着状態に維持するので、二組目の対向する可動接点(37)と固定接点(31)とを支点とするシーソー状の振動が発生しない。
【0011】
このように二組目の対向する可動接点(37)と固定接点(31)とを支点とするシーソー状の振動が発生しないと、上述のように接触中である一組目の対向する可動接点(36)と固定接点(31)とが離間する現象が出現せず、いわゆる音切れも発生しない。
【0012】
このことにより、対策後も振動に起因するノイズが依然として存在するとともに処理に時間遅れという欠陥を内包するソフト的な解決方法とは異なり、ノイズの原因である鍵盤スイッチの振動を物理的に抑制することができ、処理の時間遅れという欠陥が存在せず、したがって、同一鍵盤を高速で連打した場合に音切れがなく安定した連打音を発生させることができる。
【0013】
また、本発明の鍵盤装置によれば、上述のように押圧部材(22)が一組目の可動接点(36)と固定接点(31)とを密着状態に維持することで、押鍵時にスイッチ本体(35)が押し潰されて弾性変形する方向が安定し、タッチ感の向上にも寄与する。
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項2に係る鍵盤装置(1)は、請求項1に記載の鍵盤装置(1)において、前記押圧部材(22)は可塑性を有する物質から構成されることを特徴とする。
【0015】
このように構成された本発明の鍵盤装置(1)によれば、押圧部材(22)が、一組目の可動接点(36)を接触中の固定接点(31)に向けて押圧する際にスイッチ本体(35)に当接した部分が弾性変化してスイッチ本体(35)を包み込む状態となり、二組目の対向する可動接点(37)と固定接点(32)とを支点とするシーソー状の振動が更に発生しにくくなる。
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項3に係る鍵盤装置(1)は、請求項1または請求項2の何れか1項に記載の鍵盤装置(1)において、前記押圧部材(22)は発泡スポンジ層を少なくとも表面に有することを特徴とする。
【0017】
このように構成された本発明の鍵盤装置(1)によれば、押鍵時に押圧部材(22)が一組目の可動接点(36)を接触中の固定接点(31)に向けて押圧する際にスイッチ本体(35)に当接した部分である発泡スポンジ層が弾性変化してスイッチ本体(35)を大きく包み込む状態となり、二組目の対向する可動接点(37)と固定接点(32)とを支点とするシーソー状の振動が更に発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は離鍵時の鍵盤装置の断面図であり、(b)は押鍵時の鍵盤装置の断面図であり、(c)は鍵盤スイッチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[1.鍵盤装置1の構成の説明]
電子ピアノや電子オルガンなどの電子鍵盤楽器で用いられる鍵盤装置1は、図1(a)に示すように、そのほぼ中央が図示しないシャーシによって下方から回動可能に支持される複数の鍵盤10(一つのみ図示)と、複数の鍵盤10それぞれに対応して配設され、図示しないシャーシに回動可能に支持され、鍵盤10の押鍵により回動するとともに押鍵された鍵盤10を元の位置へ復帰させる荷重を付与するハンマー20と、複数の鍵盤10それぞれに対応して図示しないシャーシに設けられ、鍵盤10の押鍵情報を検出する鍵盤スイッチ30と、を備えている。
【0020】
[1.1.鍵盤スイッチ30の構成の説明]
次に、鍵盤スイッチ30の構成について説明する。
図1(c)に示すように、鍵盤スイッチ30は、鍵盤10の長さ方向に沿って三個の固定接点31,32,33が形成された板状の基板34と、ハンマー20に対向して三個の固定接点31,32,33を覆うように基板34に取り付けられたゴム製で略ドーム状のスイッチ本体35と、基板34上の固定接点31,32,33それぞれに対向してスイッチ本体35に並べて設置された可動接点36,37,38と、を備えている。
【0021】
なお、スイッチ本体35の基板34側には、可動接点を取り付けるための取付面35a,35b,35cが鍵盤10の長手方向に沿って鍵盤10の前端から後端に行くに従って基板34までの距離寸法が大きくなるよう形成されている。そして、鍵盤10の前端側の取付面35aには、可動接点36が何も介さずに直接取り付けられ、中央の取付面35bには、可動接点37が、内部に空洞を有する発泡スポンジ層35eを介して取り付けられ、鍵盤10の後端側の取付面35cには、可動接点38が、同じく内部に空洞を有する発泡スポンジ層35fを介して取り付けられている。
【0022】
このことにより、鍵盤スイッチ30が備える三組の対向する可動接点36,37,38と固定接点31,32,33については、一組目の対向する可動接点36と固定接点31、二組目の対向する可動接点37と固定接点32、三組目の対向する可動接点38と固定接点33の順に、鍵盤10の長手方向に沿って鍵盤10の前端から後端に向けて配置されるとともに、一組目の対向する可動接点36と固定接点31との間の距離寸法、二組目の対向する可動接点37と固定接点32との間の距離寸法、三組目の対向する可動接点38と固定接点33との間の距離寸法の順に大きくなるように設定されている。
【0023】
また、スイッチ本体35のハンマー20(後述する当接部材21)で押圧される部分(可動接点37と可動接点38との間)には、突起35dが形成されている。
このように構成された鍵盤スイッチ30は、押鍵時に回動するハンマー20の押圧によってスイッチ本体35が弾性変形することで可動接点36,37,38が対向する固定接点31,32,33と順次接触するとともに、離鍵時にはスイッチ本体35の弾性変形が解消することで可動接点36,37,38が接触中の固定接点31,32,33から順次離間するようになっている。
【0024】
なお、本実施形態では、鍵盤スイッチ30が備える三組の対向する可動接点36,37,38と固定接点31,32,33のうちの一組目の対向する可動接点36と固定接点31とがノートオンおよびノートオフを検出するのに用いられ、二組目の対向する可動接点37と固定接点32および三組目の対向する可動接点38と固定接点33が押鍵速度(オンベロシティ)および離鍵速度(オフベロシティ)を検出するのに用いられる。
【0025】
[1.2.ハンマー20に取り付けられる各種構成の説明]
次に、ハンマー20に取り付けられる押圧部材22などの各種構成について説明する。
図1(a)に示すように、ハンマー20には、押鍵時にスイッチ本体35の突起35d周囲に当接して押圧するための当接部材21と、同じく押鍵時にスイッチ本体35の可動接点36付近を弾性変化して包み込みながら押圧するための押圧部材22とが取り付けられている。
【0026】
まず、当接部材21は、略直方体に形成された弾性を有する樹脂製の部材であり、ハンマー20のスイッチ本体35の突起35d周囲に対向する位置に取り付けられている。そして、当接部材21は、押鍵時には基板34に向けて回動するハンマー20に伴ってスイッチ本体35の突起35d周囲に当接して押圧し(図1(b)参照)、離鍵時には反対方向に回動するハンマー20に伴ってスイッチ本体35の突起35d周囲から離間するようになっている(図1(a)参照)。
【0027】
また、押圧部材22は、略直方体に形成された発泡スポンジ層からなる部材であり、ハンマー20のスイッチ本体35の可動接点36付近に対向する位置に取り付けられている。そして、押圧部材22は、押鍵時には基板34に向けて回動するハンマー20に伴ってスイッチ本体35の可動接点36付近に当接して押圧し始め、離鍵時には反対方向に回動するハンマー20に伴ってスイッチ本体35の可動接点36付近から離間するようになっている。
【0028】
なお、本実施形態では、押圧部材22は、発泡スポンジ層の厚み寸法が、一組目の対向する可動接点36と固定接点31とが接触してから二組目の対向する可動接点37と固定接点32とが接触するまでの何れかのタイミングで、押し潰された状態の押圧部材22がスイッチ本体35の可動接点36付近を押圧する押圧力がスイッチ本体35からの反力よりも大きくなるよう設定されている。このことにより、押圧部材22は、発泡スポンジ層の厚み寸法に応じた弾性係数を有し、上述のタイミングで一組目の可動接点36を接触中の固定接点31に向けて押圧し始め、離鍵時に二組目の可動接点37が接触中の固定接点32から離間したら一組目の可動接点36への押圧を解除するようになっている。
【0029】
また、押圧部材22が、押鍵時に一組目の可動接点36を接触中の固定接点31に向けて押圧すると、図1(b)に例示するように、当該押圧部材22のスイッチ本体35に当接した部分が押し潰されるように弾性変化してスイッチ本体35を大きく包み込む状態となり、一組目の対向する可動接点36と固定接点31とが接触して密着する状態を維持することができる。
【0030】
[2.鍵盤装置1の構成の動作]
次に、鍵盤装置1の動作を説明する。
まず、鍵盤10が押鍵されると、ハンマー20が鍵盤10の押鍵により基板34に向けて回動し、当接部材21が鍵盤スイッチ30のスイッチ本体35の突起35d周囲に当接して押圧する。
【0031】
ハンマー20がさらに回動すると、スイッチ本体35が当接部材21に押圧されて弾性変形し、最初に可動接点36が固定接点31に接触する。このように一組目の対向する可動接点36と固定接点31とが接触すると、ノートオンを示す信号が出力される。
【0032】
ハンマー20がさらに回動すると、スイッチ本体35が当接部材21に押圧されてさらに弾性変形し、可動接点37が固定接点32に接触し、最後に可動接点38が固定接点33に接触する。
【0033】
このとき、一組目の対向する可動接点36と固定接点31とが接触してから二組目の対向する可動接点37と固定接点32とが接触するまでの何れかのタイミングで、押圧部材22がスイッチ本体35の可動接点36付近に当接して押圧し始め、ハンマー20の回動に伴って当該押圧部材22のスイッチ本体35に当接した部分が押し潰されるように弾性変化してスイッチ本体35を大きく包み込む状態となり、一組目の対向する可動接点36と固定接点31とが接触して密着する状態を維持するようになる(図1(b)参照)。
【0034】
また、二組目の対向する可動接点37と固定接点32とが接触してから三組目の対向する可動接点38と固定接点33とが接触までの時間がオンベロシティとして計時されて信号が出力される。
【0035】
一方、鍵盤10が離鍵されると、ハンマー20が鍵盤10の離鍵により基板34から離れる方向へ回動する。これに伴って当接部材21に押圧されているスイッチ本体35の弾性変形が徐々に解消していき、まず、可動接点38が固定接点33から離間し、続いて可動接点37が固定接点32から離間する。
【0036】
ハンマー20がさらに回動すると、押圧部材22がハンマー20の回動に伴ってスイッチ本体35の可動接点36付近から離間し、続いて可動接点36が固定接点31から離間し、最後に当接部材21がスイッチ本体35の突起35d周囲から離間する(図1(a)参照)。
【0037】
なお、同一鍵盤10が高速で連打される場合には、可動接点36が固定接点31に接触する状態で再びハンマー20が鍵盤10の押鍵により基板34に向けて回動し始めるため、可動接点36が固定接点31からは離間せずに接触したままとなる。つまり、押圧部材22がスイッチ本体35の可動接点36付近から離間した後に、再びハンマー20が鍵盤10の押鍵により基板34に向けて回動し始めると、可動接点36が固定接点31に接触する状態で、上述の一連の押鍵動作が再び行われる。
【0038】
[3.実施形態の効果]
(1)このように本実施形態の鍵盤装置1によれば、押鍵時に二組目の対向する可動接点37と固定接点32とが接触した後に、一組目の対向する可動接点36と固定接点31とに対してスイッチ本体35を介して振動が伝わってきても、押圧部材22が一組目の可動接点36を接触中の固定接点31に向けて押圧することで両者を密着状態に維持するので、二組目の対向する可動接点37と固定接点32とを支点とするシーソー状の振動が発生しない。
【0039】
このように二組目の対向する可動接点37と固定接点32とを支点とするシーソー状の振動が発生しないと、上述のように接触中である一組目の対向する可動接点36と固定接点31とが離間する現象が出現せず、いわゆる音切れも発生しない。
【0040】
このことにより、対策後も振動に起因するノイズが依然として存在するとともに処理に時間遅れという欠陥を内包するソフト的な解決方法とは異なり、ノイズの原因である鍵盤スイッチ30の振動を物理的に抑制することができ、処理の時間遅れという欠陥が存在せず、したがって、同一鍵盤10を高速で連打した場合に音切れがなく安定した連打音を発生させることができる。
【0041】
(2)また、本実施形態の鍵盤装置1によれば、上述のように押圧部材22が一組目の可動接点36と固定接点31とを密着状態に維持することで、押鍵時にスイッチ本体35が押し潰されて弾性変形する方向が安定し、タッチ感の向上にも寄与する。
【0042】
(3)また、本実施形態の鍵盤装置1によれば、押鍵時に押圧部材22が一組目の可動接点36を接触中の固定接点31に向けて押圧する際にスイッチ本体35に当接した部分である発泡スポンジ層が弾性変化してスイッチ本体35を大きく包み込む状態となり、二組目の対向する可動接点37と固定接点32とを支点とするシーソー状の振動が発生しにくくなる。
【0043】
[4.他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0044】
(1)上記実施形態では、鍵盤スイッチ30がハンマー20の回動を検出する構成を有する鍵盤装置に本発明を適用した例を説明したが、鍵盤スイッチ30が鍵盤10の回動を検出する構成を有する鍵盤装置に本発明を適用してもよい。
【0045】
(2)上記実施形態では、押圧部材22全体が略直方体に形成された発泡スポンジ層からなる部材であるが、これには限られず、押圧部材22を、略直方体に形成された発泡スポンジ層を表面に有する部材としてもよい。
【0046】
このように構成しても、上記実施形態と同様に、押鍵時に押圧部材22が一組目の可動接点36を接触中の固定接点31に向けて押圧する際にスイッチ本体35に当接した部分である発泡スポンジ層が弾性変化してスイッチ本体35を大きく包み込む状態となり、二組目の対向する可動接点37と固定接点32とを支点とするシーソー状の振動が発生しにくくなる。
【0047】
(3)また、押圧部材22については、可塑性を有する物質であれば発泡スポンジ以外の物質を用いて構成してもよい。例えば押圧部材22の全体または表層をゴムなどの弾性を有する材料で構成するといった具合である。このように構成すれば、押圧部材22が、一組目の可動接点36を接触中の固定接点31に向けて押圧する際にスイッチ本体35に当接した部分が弾性変化してスイッチ本体35を包み込む状態となり、二組目の対向する可動接点37と固定接点32とを支点とするシーソー状の振動が発生しにくくなる。
【符号の説明】
【0048】
1…鍵盤装置、10…鍵盤、20…ハンマー、21…当接部材、22…押圧部材、30…鍵盤スイッチ、31,32,33…固定接点、34…基板、35…スイッチ本体、36,37,38…可動接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵盤と、
前記複数の鍵盤のほぼ中央を下方より回動可能に支持するシャーシと、
前記複数の鍵盤それぞれに対応して配設され、前記シャーシに回動可能に支持され、前記鍵盤の押鍵により回動するとともに押鍵された前記鍵盤を元の位置へ復帰させる荷重を付与するハンマーと、
前記複数の鍵盤それぞれに対応して前記シャーシに設けられ、前記鍵盤の押鍵情報を検出する鍵盤スイッチと、
を備える鍵盤装置であって、
前記鍵盤スイッチは、前記鍵盤の長さ方向に沿って三個以上の固定接点が形成された板状の基板と、前記鍵盤または前記ハンマーに対向して前記固定接点を覆うように前記基板に取り付けられた弾性を有する略ドーム状のスイッチ本体と、前記基板上の前記固定接点それぞれに対向するよう前記スイッチ本体に並べて設置された可動接点と、を備え、押鍵時に回動する前記鍵盤または前記ハンマーの押圧によって前記スイッチ本体が弾性変形することで前記可動接点が対向する前記固定接点と順次接触するとともに、離鍵時には前記スイッチ本体の弾性変形が解消することで前記可動接点が接触中の前記固定接点から順次離間するよう構成されており、
さらに、
押鍵時に前記鍵盤スイッチが備える一組目の対向する前記可動接点と前記固定接点とが接触してから二組目の対向する前記可動接点と前記固定接点とが接触するまでの何れかのタイミングで前記一組目の前記可動接点を接触中の前記固定接点に向けて押圧し始め、離鍵時に前記二組目の前記可動接点が接触中の前記固定接点から離間したら前記一組目の前記可動接点への押圧を解除する押圧部材を備えること
を特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鍵盤装置において、
前記押圧部材は可塑性を有する物質から構成されることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れか1項に記載の鍵盤装置において、
前記押圧部材は発泡スポンジ層を少なくとも表面に有することを特徴とする鍵盤装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−215328(P2011−215328A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82646(P2010−82646)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】