説明

鍵盤装置

【課題】 生産性が良く、低コストで、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができる鍵盤装置を提供する。
【解決手段】 鍵盤シャーシ1上に上下方向に回転自在に取り付けられた合成樹脂製の鍵2に、屈曲可能な連結部である樹脂ヒンジ20、26を介して、鍵2の押鍵操作に伴って鍵2にアクション荷重を付与するためのハンマー部18、19を一体に成形した。従って、鍵2にアクション荷重を付与するハンマー部18、19と鍵2とを別々に形成する必要なく、鍵2とハンマー部18、19とを一度に成形することができると共に、鍵2とハンマー部18、19とを鍵盤シャーシ1に一度に組み付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍵盤装置においては、特許文献1に記載されているように、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得るために、鍵盤シャーシ上に鍵を上下方向に回転可能に取り付けると共に、この鍵盤シャーシに鍵の押鍵操作に応じて鍵にアクション荷重を付与するハンマー部材を上下方向に回転可能に取り付けた構成のもが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−108059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の鍵盤装置では、鍵とハンマー部材とがそれぞれ別々に形成されているため、鍵とハンマー部材とを別々に製作する必要があり、製作コストが高くなるばかりか、鍵とハンマー部材とをそれぞれ個別に鍵盤シャーシに組み付けなければならないため、組立作業が煩雑で面倒であり、生産性が悪いという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、生産性が良く、低コストで、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができる鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤シャーシ上に合成樹脂製の鍵を上下方向に回転自在に取り付けた鍵盤装置において、前記鍵に、屈曲可能な連結部を介して、前記鍵の押鍵操作に伴って前記鍵にアクション荷重を付与するためのハンマー部を一体に成形したことを特徴とする鍵盤装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記連結部が、前記鍵および前記ハンマー部と同じ合成樹脂からなる樹脂ヒンジであることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記ハンマー部と前記連結部との間に、前記ハンマー部の回転中心である支持軸が一体に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記鍵盤シャーシに、前記ハンマー部の回転中心である前記支持軸を回転自在に支持するハンマー支持部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、鍵にアクション荷重を付与するためのハンマー部と鍵とを別々に形成する必要なく、鍵とハンマー部とを一度に成形することができると共に、鍵とハンマー部とを鍵盤シャーシに一度に組み付けることができる。このため、生産性が良く、低コストで、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明を適用した鍵盤装置の一実施形態において、白鍵の箇所の断面を示した図である。
【図2】図1に示された鍵盤装置において、黒鍵の箇所の断面を示した図である。
【図3】図1に示された鍵盤装置における白鍵およびハンマー部を成形した際の状態を示した斜視図である。
【図4】図3に示された白鍵とハンマー部との間のA−A矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図5】図2に示された鍵盤装置における黒鍵およびハンマー部を成形した際の状態を示した斜視図である。
【図6】図5に示された黒鍵とハンマー部との間のB−B矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図7】図1に示された鍵盤装置において、白鍵を押鍵操作した状態を示した断面図である。
【図8】図2に示された鍵盤装置において、黒鍵を押鍵操作した状態を示した断面図である。
【図9】この発明を適用した鍵の変形例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜図8を参照して、この発明を適用した鍵盤装置の一実施形態について説明する。
この鍵盤装置は、図1および図2に示すように、合成樹脂製の鍵盤シャーシ1と、この鍵盤シャーシ1上に配列されて上下方向にそれぞれ回転可能に取り付けられた複数の鍵2と、この複数の鍵2の押鍵動作に応じてそれぞれオン信号を出力するスイッチ部3と、鍵盤シャーシ1の後端部に設けられて鍵2の後端部の上側を覆う上部ケース4とを備えている。
【0013】
鍵盤シャーシ1は、図1および図2に示すように、楽器本体の下部ケースを構成するものであり、その前端部(図1では右端部)には、前脚部5が底部から上方に突出して形成されている。この前脚部5の前端部(図1では右端部)には、鍵2の前端面に対応する前カバー部6が前部上方(図1では右側上方)に向けて更に突出して形成されている。
【0014】
また、鍵盤シャーシ1の前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部には、図1および図2に示すように、基板載置部7が前カバー部6よりも少し低い高さで形成されている。この基板載置部7の上面には、スイッチ部3が取り付けられている。この場合、基板載置部7の前端部(図1では右端部)には、立上り部8が形成されており、この立上り部8には、後述する黒鍵16のハンマー部19が上下方向に移動可能に挿入するハンマー挿入用の開口部8aが形成されている。
【0015】
さらに、鍵盤シャーシ1の後部、つまり基板載置部7の後部側(図1では左側部)には、図1および図2に示すように、鍵載置部9が前カバー部6とほぼ同じ高さで形成されている。この鍵載置部9の上面には、鍵支持部10が複数の鍵2にそれぞれ対応して形成されている。この鍵支持部10には、鍵2の後端部(図1では左端部)を上下方向に回転可能に支持する支持軸10aが設けられている。
【0016】
また、鍵盤シャーシ1の鍵載置部10の後端部(図1では左端部)には、図1および図2に示すように、鍵盤シャーシ1の後端部を支持する後脚部11が鍵盤シャーシ1の上部から底部に向けて垂下されている。なお、この後脚部11の後端部には、上部ケース4が鍵盤シャーシ1の後端部側と鍵2の後端部側とを覆った状態で取り付けられている。この上部ケース4の内部には、楽音を放音するためのスピーカ12が設けられている。また、この鍵盤シャーシ1の底部には、底板13が設けられている。
【0017】
一方、鍵2は、図1および図2に示すように、白鍵15と黒鍵16とを有している。白鍵15は、図1に示すように、その後端部(図1では左端部)が鍵盤シャーシ1の鍵載置部9上に設けられた鍵支持部10に支持軸10aによって上下方向に回転可能に取り付けられている。この白鍵15の前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部には、鍵盤シャーシ1の基板載置部7上に取り付けられたスイッチ部3を押圧するためのスイッチ押圧部15aが下側に突出して形成されている。
【0018】
同様に、黒鍵16は、図2に示すように、その後端部(図2では左端部)が鍵盤シャーシ1の鍵載置部9上に設けられた鍵支持部10に支持軸10aによって上下方向に回転可能に取り付けられている。この黒鍵16の前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部には、白鍵15と同様、鍵盤シャーシ1の基板載置部7上に取り付けられたスイッチ部3を押圧するためのスイッチ押圧部16aが下側に突出して形成されている。
【0019】
この場合、スイッチ部3は、図1および図2に示すように、スイッチ基板14上に配置されたゴムシート17を備え、このゴムシート17にドーム状の膨出部17aが鍵2の各スイッチ押圧部15a、16aにそれぞれ対応して形成された構成になっている。このスイッチ部3は、ゴムシート17の膨出部17aが各鍵2の各スイッチ押圧部15a、16aによって押圧された際に、図6および図7に示すように、膨出部17aが弾性変形して、その内部の可動接点がスイッチ基板14の固定接点(いずれも図示せず)に接触してオン信号を出力するように構成されている。
【0020】
ところで、複数の鍵2である白鍵15および黒鍵16には、図1および図2に示すように、それぞれハンマー部18、19が一体に形成されている。すなわち、白鍵15は、図1および図3に示すように、その先端下部(図1では右端下部)に屈曲可能な連結部である樹脂ヒンジ20を介して、ハンマー部18が一体に形成されている。この場合、ハンマー部18は、図3および図4に示すように、全体がほぼ三角形の板状に形成され、錘としての機能を有するように構成されている。
【0021】
また、樹脂ヒンジ20は、図3に示すように、肉厚の薄い板状をなし、白鍵15を成形する際に、白鍵15の先端下部から前側(図3では右側)に向けて突出して形成されている。この白鍵15の樹脂ヒンジ20とハンマー部18との間には、図3および図4に示すように、ハンマー部18の回転中心となる支持軸21が一体に形成されている。この支持軸21は、図3および図4に示すように、樹脂ヒンジ20の厚みよりも太い丸棒状に形成され、この丸棒状の両側に一対の軸突起21aが樹脂ヒンジ20の両側縁から突出して形成されている。
【0022】
この支持軸21は、図1および図4の2点鎖線で示すように、樹脂ヒンジ20を中心にハンマー部18を白鍵15の下側に向けて折り返した状態で、鍵盤シャーシ1に設けられた白鍵用の支持リブ22に回転可能に支持されるように構成されている。この支持リブ22は、図1に示すように、白鍵15の先端下部(図1では右端下部)に対応する鍵盤シャーシ1の前脚部5に沿って底部から上部に向けて形成されていると共に、その上端部が前脚部5の上方に突出した状態で形成されている。
【0023】
この支持リブ22の上端部には、図1および図4の2点鎖線で示すように、樹脂ヒンジ20を中心にハンマー部18を白鍵15の下側に向けて折り返した状態で、支持軸21の一対の軸突起21aが上方から挿入して回転可能に保持する軸受け溝部22aが形成されている。この軸受け溝部22a内には、支持軸21を円滑に回転させるために、シリコーングリスなどの潤滑剤(図示せず)が塗布されている。
【0024】
また、鍵盤シャーシ1の底板13上には、図1に示すように、白鍵15が押鍵操作されていない初期状態のとき、ハンマー部18の下面が当接する下限ストッパ23が設けられている。また、白鍵15の内部における下面には、図6に示すように、白鍵15が押鍵操作されてハンマー部18が支持軸21を中心に時計回りに回転した際に、ハンマー部18の上面が当接する上限ストッパ24が設けられている。これら下限ストッパ23および上限ストッパ24は、それぞれクッション性を有し、ハンマー部18が当接した際に、ノイズなどの異音の発生を防ぐように構成されている。
【0025】
このような白鍵15、ハンマー部18、樹脂ヒンジ20、および支持軸21は、ポリプロピレン(PP)などの耐屈曲性を有する合成樹脂からなり、図3に示すように、白鍵用の成形用金型(図示せず)によって成形されている。すなわち、白鍵15、ハンマー部18、樹脂ヒンジ20、および支持軸21を製作する場合には、図3に示すように、ハンマー部18を白鍵15の前側(図3では右側)に位置させた状態で、白鍵15の先端下部(図3では右端下部)とハンマー部18とを、樹脂ヒンジ20および支持軸21によって連結するように、白鍵用の成形用金型を形成する。
【0026】
この場合、白鍵用の成形用金型は、下金型と上金型とからなり、図4に2点鎖線で示すように、その両者の分離面であるパーテイングラインPLが支持軸21の中心を通る直線上に位置するように形成されている。また、樹脂ヒンジ20は、成形用金型で白鍵15、ハンマー部18、樹脂ヒンジ20、および支持軸21を一体に成形した際に、その成形直後に、樹脂ヒンジ20を複数回屈曲させる後加工を施すことにより、屈曲性を有するほかに、耐久性および強靭性が確保されている。
【0027】
一方、黒鍵16は、図1および図2に示すように、その前後方向の長さが白鍵15よりも短く形成されている。この黒鍵16は、図2および図5に示すように、その先端下部(図2では右端下部)に屈曲可能な連結部である樹脂ヒンジ26を介して、ハンマー部19が一体に形成されている。
【0028】
この場合、ハンマー部19は、図5に示すように、全体がほぼ三角形の板状に形成され、白鍵15と同様、錘としての機能を有するように構成されている。このハンマー部19は、図2に示すように、その後部側(図2では左側)に位置する一部が、鍵盤シャーシ1に設けられた立上り部8の開口部8a内に上下方向に移動可能に配置されている。
【0029】
また、樹脂ヒンジ26は、図5に示すように、肉厚の薄い板状をなし、黒鍵16を成形する際に、黒鍵16の先端下部から前側(図5では右側)に向けて突出して形成されている。この黒鍵16の樹脂ヒンジ26とハンマー部19との間には、図5および図6に示すように、ハンマー部19の回転中心となる支持軸27が一体に形成されている。この支持軸27は、図5および図6に示すように、樹脂ヒンジ26の厚みよりも太い丸棒状に形成され、この丸棒状の両側に一対の軸突起28aが樹脂ヒンジ26の両側縁から突出して形成されている。
【0030】
この支持軸27は、図2および図6の2点鎖線で示すように、樹脂ヒンジ26を中心にハンマー部19を黒鍵16の下側に向けて折り返した状態で、鍵盤シャーシ1に設けられた黒鍵用の支持リブ28に回転可能に支持されている。この支持リブ28は、図2に示すように、黒鍵16の先端下部(図2では右端下部)に対応する鍵盤シャーシ1の立上り部8の前側(図2では右側)に位置する鍵盤シャーシ1の箇所の底部から上部に向けて起立して形成されている。
【0031】
この支持リブ28の上端部には、図2および図6の2点鎖線で示すように、樹脂ヒンジ26を中心にハンマー部19を黒鍵16の下側に向けて折り返した状態で、支持軸27の一対の軸突起28aが上方から挿入して回転可能に保持する軸受け溝部28aが形成されている。この軸受け溝部28a内には、支持軸27を円滑に回転させるために、白鍵15の軸受け溝部22aと同様、シリコーングリスなどの潤滑剤(図示せず)が塗布されている。
【0032】
また、鍵盤シャーシ1の底板13上には、図2に示すように、黒鍵16が押鍵操作されていない初期状態のとき、ハンマー部19の下面が当接する下限ストッパ30が設けられている。また、鍵盤シャーシ1における基板載置部7の下面には、図7に示すように、黒鍵16が押鍵操作されてハンマー部19が支持軸27を中心に時計回りに回転した際に、ハンマー部19の上面が当接する上限ストッパ31が設けられている。これら下限ストッパ30および上限ストッパ31も、それぞれクッション性を有し、ハンマー部19が当接した際に、ノイズなどの異音の発生を防ぐように構成されている。
【0033】
このような黒鍵16、ハンマー部19、樹脂ヒンジ26、および支持軸27は、白鍵15と同様、ポリプロピレン(PP)などの耐屈曲性を有する合成樹脂からなり、黒鍵用の成形用金型(図示せず)によって成形されている。すなわち、黒鍵16、ハンマー部19、樹脂ヒンジ26、および支持軸27を製作する場合には、図5に示すように、ハンマー部19を黒鍵16の前側(図5では右側)に位置させた状態で、黒鍵16の先端下部(図5では右端下部)とハンマー部19とを、樹脂ヒンジ26および支持軸27によって連結するように、黒鍵用の成形用金型を形成する。
【0034】
この場合、黒鍵用の成形用金型も、下金型と上金型とからなり、図6に2点鎖線で示すように、その両者の分離面であるパーテイングラインPLが支持軸27の中心を通る直線上に位置するように形成されている。また、樹脂ヒンジ26も、成形用金型で黒鍵16、ハンマー部19、樹脂ヒンジ26、および支持軸27を一体に成形した際に、その成形直後に、樹脂ヒンジ26を複数回屈曲させる後加工を施すことにより、屈曲性を有するほかに、耐久性および強靭性が確保されている。
【0035】
次に、鍵2である白鍵15および黒鍵16の各鍵2を鍵盤シャーシ1に組み付ける場合について説明する。
まず、白鍵15を鍵盤シャーシ1に組み付ける場合には、図1に示すように、白鍵15の先端下部に位置する樹脂ヒンジ20を中心にハンマー部18を白鍵15の下側に向けて折り返す。この状態で、白鍵15とハンマー部18との間に設けられた支持軸21の一対の支持突起21aを、鍵盤シャーシ1に設けられた支持リブ22の上端部の軸受け溝部22aに上方から挿入させる。この軸受け溝部22aには、予め、シリコーングリスなどの潤滑剤を塗布しておく。
【0036】
これにより、ハンマー部18が鍵盤シャーシ1に対して支持軸21を中心に上下方向に回転可能に取り付けられる。この後、白鍵15の後端部(図1では左端部)を鍵盤シャーシ1の鍵載置部9上に設けられた鍵支持部10に支持軸10aによって回転可能に取り付ける。この結果、図1に示すように、白鍵15が鍵盤シャーシ1上に上下方向に回転可能に取り付けられると共に、ハンマー部18が鍵盤シャーシ1に対して上下方向に回転可能に取り付けられる。
【0037】
また、黒鍵16を鍵盤シャーシ1に組み付ける場合には、図2に示すように、黒鍵16の先端下部に位置する樹脂ヒンジ26を中心にハンマー部19を黒鍵16の下側に向けて折り返す。この状態で、黒鍵16とハンマー部19との間に設けられた支持軸27の一対の支持突起28aを、鍵盤シャーシ1に設けられた支持リブ28の上端部の軸受け溝部28aに上方から挿入させる。
【0038】
このときには、図2に示すように、ハンマー部19の後部側(図2では左側)に位置する一部を、鍵盤シャーシ1に設けられた立上り部8の開口部8a内に上下方向に移動可能な状態で挿入させる。また、このときにも、軸受け溝部28aに、予め、シリコーングリスなどの潤滑剤を塗布しておく。
【0039】
これにより、ハンマー部19が鍵盤シャーシ1に対して支持軸27を中心に上下方向に回転可能に取り付けられる。この後、黒鍵16の後端部(図2では左端部)を鍵盤シャーシ1の鍵載置部9上に設けられた鍵支持部10に支持軸10aによって回転可能に取り付ける。この結果、図2に示すように、黒鍵16が鍵盤シャーシ1上に上下方向に回転可能に取り付けられると共に、ハンマー部19が鍵盤シャーシ1に対して上下方向に回転可能に取り付けられる。
【0040】
次に、このような鍵盤装置の作用について説明する。
この鍵盤装置では、複数の鍵2が白鍵15と黒鍵16とを有していることにより、ここでは、まず、白鍵15について説明する。この白鍵15が押鍵操作されていない初期状態のときには、図1に示すように、ハンマー部18が自身の重量によって、鍵盤シャーシ1の支持リブ22に回転可能に支持された支持軸21を中心に反時計回りに回転し、このハンマー部18が鍵盤シャーシ1の底板13上に設けられた下限ストッパ23に当接している。
【0041】
このときには、図1に示すように、ハンマー部18の回転に伴って樹脂ヒンジ20が支持軸21を中心に反時計回りに回転して、白鍵15の先端下部を押し上げる。これにより、白鍵15は、鍵盤シャーシ1の鍵載置部9上に設けられた鍵支持部10の支持軸10aを中心に反時計回りに回転して上限位置に規制されている。この状態では、白鍵15のスイッチ押圧部15aがスイッチ部3の上方に位置して離れている。
【0042】
この状態で、白鍵15を押鍵操作すると、図7に示すように、白鍵15が鍵支持部10の支持軸10aを中心に時計回りに回転して、白鍵15の先端下部が樹脂ヒンジ20を押し下げる。これにより、ハンマー部18が自身の重量に抗して、鍵盤シャーシ1の支持リブ22に回転可能に支持された支持軸21を中心に時計回りに回転し、白鍵15にアクション荷重を付与する。このときには、支持軸21がシリコーングリスなどの潤滑剤によって支持リブ22の軸受け溝部22a内で円滑に回転する。
【0043】
そして、白鍵15の押鍵操作に伴ってハンマー部18が時計回りに回転して、図7に示すように、ハンマー部18の上面が白鍵15の内部に設けられた上限ストッパ24に当接し、ハンマー部18の時計回り方向の回転が停止される。このときには、上限ストッパ24がクッション性を有しているので、ノイズなどの異音を発生することがない。また、このときには、スイッチ部3が白鍵15のスイッチ押圧部15aによって押圧され、ゴムシート17の膨出部17aが弾性変形することにより、スイッチ部3がスイッチ信号を出力して、スピーカ12から楽音を放音させる。
【0044】
この後、ハンマー部18は、その自重によって、鍵盤シャーシ1の支持リブ22に回転可能に支持された支持軸21を中心に反時計回りに回転し、これに伴って樹脂ヒンジ20が支持軸21を中心に反時計回りに回転して、白鍵15の先端下部を押し上げる。これにより、白鍵15は、図1に示すように、初期位置に戻る。
【0045】
一方、黒鍵16は、白鍵15と同様、押鍵操作されていない初期状態のときには、図2に示すように、ハンマー部19が自身の重量によって、鍵盤シャーシ1の支持リブ28に回転可能に支持された支持軸27を中心に反時計回りに回転し、このハンマー部19が鍵盤シャーシ1の底板13上に設けられた下限ストッパ30に当接している。
【0046】
このときには、図2に示すように、ハンマー部19の回転に伴って樹脂ヒンジ26が支持軸27を中心に反時計回りに回転して、黒鍵16の先端下部を押し上げる。これにより、黒鍵16は、鍵盤シャーシ1の鍵載置部9上に設けられた鍵支持部10の支持軸10aを中心に反時計回りに回転して上限位置に規制されている。この状態では、黒鍵16のスイッチ押圧部16aがスイッチ部3の上方に位置して離れている。
【0047】
この状態で、黒鍵16を押鍵操作すると、図8に示すように、黒鍵16が鍵支持部10の支持軸10aを中心に時計回りに回転して、黒鍵16の先端下部が樹脂ヒンジ26を押し下げる。これにより、ハンマー部19は、それ自身の重量に抗して、鍵盤シャーシ1の支持リブ28に回転可能に支持された支持軸27を中心に時計回りに回転し、黒鍵16にアクション荷重を付与する。このときには、支持軸27がシリコーングリスなどの潤滑剤によって支持リブ28の軸受け溝部28a内で円滑に回転する。
【0048】
そして、黒鍵16の押鍵操作に伴ってハンマー部19が時計回りに回転して、図8に示すように、ハンマー部19の上面が黒鍵16の内部に設けられた上限ストッパ31に当接し、ハンマー部19の時計回り方向の回転が停止される。このときには、上限ストッパ31がクッション性を有しているので、ノイズなどの異音を発生することがない。また、このときには、スイッチ部3が黒鍵16のスイッチ押圧部16aによって押圧され、ゴムシート17の膨出部17aが弾性変形することにより、スイッチ部3がスイッチ信号を出力して、スピーカ12から楽音を放音させる。
【0049】
この後、ハンマー部19は、その自重によって、鍵盤シャーシ1の支持リブ28に回転可能に支持された支持軸27を中心に反時計回りに回転し、これに伴って樹脂ヒンジ26が支持軸27を中心に反時計回りに回転して、黒鍵16の先端下部を押し上げる。これにより、黒鍵16は、図2に示すように、初期位置に戻る。
【0050】
このように、この鍵盤装置によれば、鍵盤シャーシ1上に上下方向に回転自在に取り付けられた合成樹脂製の鍵2に、屈曲可能な連結部である樹脂ヒンジ20、26を介して、鍵2の押鍵操作に伴って鍵2にアクション荷重を付与するためのハンマー部18、19を一体に成形したので、鍵2とハンマー部18、19とを別々に形成する必要なく、その両者を一度に成形することができると共に、鍵2とハンマー部18、19とを鍵盤シャーシ1に一度に組み付けることができる。このため、生産性が良く、低コストで、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができる。
【0051】
この場合、合成樹脂製の鍵2は、白鍵15と黒鍵16とを有しており、白鍵15には、屈曲可能な連結部である樹脂ヒンジ20を介して、白鍵15にアクション荷重を付与するハンマー部18が一体に成形されているので、白鍵15とハンマー部18とを別々に形成する必要なく、両者を一度に成形することができると共に、白鍵15とハンマー部18とを鍵盤シャーシ1に一度に組み付けることができる。このため、白鍵15の生産性が良く、低コスト化を図ることができる。
【0052】
同様に、黒鍵16には、屈曲可能な連結部である樹脂ヒンジ26を介して、黒鍵16にアクション荷重を付与するハンマー部19が一体に成形されているので、黒鍵16とハンマー部19とを別々に形成する必要なく、両者を一度に成形することができると共に、黒鍵16とハンマー部19とを鍵盤シャーシ1に一度に組み付けることができる。このため、黒鍵16の生産性が良く、低コスト化を図ることができる。
【0053】
また、白鍵15の樹脂ヒンジ20は、白鍵15およびそのハンマー部18と同じ合成樹脂であることにより、この合成樹脂によって白鍵15とハンマー部18とを連結させた状態で一度に成形することができる。すなわち、白鍵15を成形用金型で成形する場合には、図3に示すように、ハンマー部18を白鍵15の前側に位置させた状態で、白鍵15の先端下部とハンマー部18とを樹脂ヒンジ20で連結することにより、白鍵用の成形用金型の構造が簡単で、成形用金型を容易に製作することができると共に、この成形用金型によって白鍵15とハンマー部18とを樹脂ヒンジ20で連結させた状態で容易に成形することができる。
【0054】
この場合、白鍵15の樹脂ヒンジ20は、ポリプロピレン(PP)などの耐屈曲性を有する合成樹脂であることにより、成形用金型で白鍵15およびハンマー部18を成形した際に、その成形直後に、樹脂ヒンジ20を複数回屈曲させる後加工を施すことにより、屈曲性を有するほかに、耐久性および強靭性を確保することができる。
【0055】
このように成形された白鍵15を鍵盤シャーシ1に組み付ける場合には、樹脂ヒンジ20を中心にハンマー部18を白鍵15の下側に向けて折り返すことにより、ハンマー部18を備えていても、白鍵15を鍵盤シャーシ1にコンパクトに組み付けることができ、これにより鍵盤装置全体の小型化を図ることができる。
【0056】
また、黒鍵16の樹脂ヒンジ26も、黒鍵16およびそのハンマー部19と同じ合成樹脂であることにより、この合成樹脂によって黒鍵16とハンマー部19とを連結させた状態で一度に成形することができる。すなわち、黒鍵16においても、成形用金型で成形する場合には、図5に示すように、ハンマー部19が黒鍵16の前側に位置させた状態で、黒鍵16の先端下部とハンマー部19とを樹脂ヒンジ26とで連結することにより、黒鍵用の成形用金型の構造が簡単で、成形用金型を容易に製作することができると共に、この成形用金型によって黒鍵16とハンマー部19とを樹脂ヒンジ26で連結させた状態で容易に成形することができる。
【0057】
この場合にも、黒鍵16の樹脂ヒンジ26は、ポリプロピレン(PP)などの耐屈曲性を有する合成樹脂であることにより、成形用金型で黒鍵16およびハンマー部19を成形した際に、その成形直後に、樹脂ヒンジ26を複数回屈曲させる後加工を施すことにより、屈曲性を有するほかに、耐久性および強靭性を確保することができる。
【0058】
このように成形された黒鍵16を鍵盤シャーシ1に組み付ける場合にも、樹脂ヒンジ26を中心にハンマー部19を黒鍵16の下側に向けて折り返すことにより、ハンマー部19を備えていても、黒鍵16をコンパクトに鍵盤シャーシ1に組み付けることができ、これによっても鍵盤装置全体の小型化を図ることができる。
【0059】
また、この鍵盤装置では、ハンマー部18、19と連結部である樹脂ヒンジ20、26との間に、ハンマー部18、19の各回転中心となる支持軸21、27が一体に形成されていることにより、部品点数を削減することができると共に、組立て作業性の向上を図ることができるほか、成形用金型によって、ハンマー部18を有する白鍵15、およびハンマー部19を有する黒鍵16ごとに、一度に成形することができる。
【0060】
すなわち、ハンマー部18を有する白鍵15を成形用金型で成形する場合には、成形用金型を下金型と上金型とに分割し、その両者の分離面であるパーテイングラインPLを支持軸21の中心に位置させることにより、支持軸21がハンマー部18と樹脂ヒンジ20との間に設けられた構成であっても、成形用金型の構造が簡単で、この成形用金型によって支持軸21を白鍵15およびハンマー部18と共に一度に成形することができる。
【0061】
同様に、ハンマー部19を有する黒鍵16を成形用金型で成形する場合にも、成形用金型を下金型と上金型とに分割し、その両者の分離面であるパーテイングラインPLを支持軸27の中心に位置させることにより、支持軸27がハンマー部19と樹脂ヒンジ26との間に設けられた構成であっても、成形用金型の構造が簡単で、この成形用金型によって支持軸27を黒鍵16およびハンマー部19と共に一度に成形することができる。
【0062】
さらに、この鍵盤装置では、鍵盤シャーシ1にハンマー部18、19の回転中心である支持軸21、28を回転自在に支持するハンマー支持部である支持リブ22、29が設けられているので、この支持リブ22、29によってハンマー部18、19を上下方向に回転可能な状態で良好に支持することができる。
【0063】
すなわち、白鍵15におけるハンマー部18の回転中心である支持軸21は、その一対の軸突起21aが鍵盤シャーシ1に設けられた支持リブ22の軸受け溝部22aに回転自在に支持されているので、白鍵15にハンマー部18が一体に形成されていても、ハンマー部18を上下方向に円滑に且つ良好に回転させることができる。
【0064】
同様に、黒鍵16におけるハンマー部19の回転中心である支持軸27は、その一対の軸突起27aが鍵盤シャーシ1に設けられた支持リブ28の軸受け溝部28aに回転自在に支持されているので、黒鍵16にハンマー部19が一体に形成されていても、ハンマー部19を上下方向に円滑に且つ良好に回転させることができる。
【0065】
なお、上述した実施形態では、複数の鍵2である白鍵15および黒鍵16が鍵盤シャーシ1の鍵載置部9上に形成された鍵支持部10に支持軸10aによってそれぞれ上下方向に回転可能に取り付けられている場合について述べたが、これに限らず、例えば図9に示す変形例のように、複数の鍵は、音階順に配列された状態で、その配列方向に沿って連続させて一体に形成した構成のものであっても良い。
【0066】
この場合、複数の鍵は、図9に示すように、複数の白鍵35であり、それぞれ音階順に配置されている。この複数の白鍵35の各後端部(図9では上辺側に位置する端部)には、上下方向に屈曲可能な薄肉部からなる屈曲部36がそれぞれ形成されており、この各屈曲部36は、白鍵35の配列方向に沿って連続する連結部37に連結された状態で形成されている。この連結部37は、鍵盤シャーシ1の鍵載置部9上にビス37aによって取り付けられるように構成されている。
【0067】
この複数の白鍵35の各先端部(図9では下辺側に位置する端部)には、上述した実施形態と同様、ハンマー部18が樹脂ヒンジ20を介して一体に形成されている。この場合にも、ハンマー部18と樹脂ヒンジ20との間には、支持軸21に形成されている。この支持軸21は、鍵盤シャーシ1に形成された支持リブ22に回転可能に支持されるように構成されている。
【0068】
このように構成された複数の白鍵35は、上述した実施形態と同様、各樹脂ヒンジ20を中心に各ハンマー部18をそれぞれ回転させて各白鍵35の下側に配置させた状態で、各支持軸21を鍵盤シャーシ1に形成された各支持リブ22に回転可能に支持させ、この状態で連結部37を鍵盤シャーシ1の鍵載置部9上にビス37aによって取り付けることにより、複数の白鍵35を複数のハンマー部18と共に一度に鍵盤シャーシ1に取り付けることができるので、より一層、組立作業を向上させることができる。なお、このような構成は、白鍵35に限らず、黒鍵にも適用することができる。
【0069】
なおまた、上述した実施形態では、鍵2とハンマー部18、19とを連結する連結部である樹脂ヒンジ20、26を鍵2とハンマー部18、19と同じ合成樹脂で形成した場合について述べたが、これに限らず、樹脂ヒンジ20、26をポリプロピレン(PP)などの耐屈曲性を有する合成樹脂で形成し、鍵2およびハンマー部18、19を異なる樹脂で形成しても良い。この場合には、2色成形によって形成すれば良い。また、これに限らず、連結部は、屈曲性の高い線材や板ばねなどの部材をインサート成形した構成であっても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 鍵盤シャーシ
2 鍵
10 鍵支持部
10a 支持軸
15、35 白鍵
16 黒鍵
18、19 ハンマー部
20、26 樹脂ヒンジ
21、27 支持軸
21a、27a 軸突起
22、28 支持リブ
22a、28a 軸受け溝部
23、30 下限ストッパ
24、31 上限ストッパ
36 屈曲部
37 連結部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤シャーシ上に合成樹脂製の鍵を上下方向に回転自在に取り付けた鍵盤装置において、
前記鍵に、屈曲可能な連結部を介して、前記鍵の押鍵操作に伴って前記鍵にアクション荷重を付与するためのハンマー部を一体に成形したことを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記連結部は、前記鍵および前記ハンマー部と同じ合成樹脂からなる樹脂ヒンジであることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記ハンマー部と前記連結部との間には、前記ハンマー部の回転中心である支持軸が一体に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記鍵盤シャーシには、前記ハンマー部の回転中心である前記支持軸を回転自在に支持するハンマー支持部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の鍵盤装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−221336(P2011−221336A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91273(P2010−91273)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】