説明

鍵盤装置

【課題】鍵にクリック感を付与する機能とスイッチ機能とを一体化し、部品点数を削減して製品の低コスト化を図ることができる鍵盤装置を提供する。
【解決手段】鍵盤シャーシ1上に上下方向に回転可能に設けられた鍵2の押鍵操作時に鍵2にクリック感を付与するクリック感付与部材12を備え、このクリック感付与部材12が、鍵2に設けられた導電性を有する押圧突起部13と、鍵盤シャーシ1に対して片持ち梁状態で設けられ、鍵2を押鍵操作した際に押圧突起部13によって押し下げられて撓み変形することにより、押圧突起部13が乗り越える弾性部材15とを備え、この弾性部材15が、絶縁性弾性部と導電性弾性部とを鍵2の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列させた状態で一体に形成した。従って弾性部材15が導電性を有する押圧突起部13によって押し下げられる際に、絶縁性弾性部を挟んで隣接する導電性弾性部同士を導通させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの電子鍵盤楽器の鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、アコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得るために、押鍵操作時に鍵荷重を急激に軽くして、鍵荷重が抜ける感覚のレットオフ効果を付与するクリック感付与部材を備えた構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−318077号公報
【0004】
この種の電子鍵盤楽器は、鍵の押鍵操作に応じて上下方向に回転して鍵にアクション荷重を付与するハンマー部材を備え、このハンマー部材が回転する際に、クリック感付与部材がハンマー部材に対して鍵荷重を重くした後に、鍵荷重を急激に軽くして、鍵荷重が抜けるような感覚のクリック感を付与することにより、鍵にレットオフ効果を付与するように構成されている。
【0005】
この場合、クリック感付与部材は、鍵が押鍵されてハンマー部材が回転する際にハンマー部材が当接するローラと、このローラを回転自在に支持してハンマー部材に対する接離方向に弾性変形する板ばねとを備え、鍵が押鍵されてハンマー部材が回転する際に、ハンマー部材がローラに当接して鍵荷重を重くし、ハンマー部材が板ばねのばね力に抗してローラを乗り越えたときに、鍵荷重を急激に軽くして、鍵荷重が抜ける感覚のクリック感を鍵に付与するように構成されている。
【0006】
また、このような電子鍵盤楽器では、クリック感付与部材がクリック感を付与するタイミングのときに発音開始を指示するためのスイッチ信号を出力するスイッチ部を備えている。このスイッチ部は、鍵盤シャーシに設けられたスイッチ基板上にゴムシートを設け、このゴムシートにドーム状の膨出部を一体に形成し、この膨出部内に可動接点を設け、スイッチ基板に可動接点が接離可能に接触する固定接点を設けた構成になっている。
【0007】
これにより、スイッチ部は、鍵が押鍵操作されて、ハンマー部材が鍵にアクション荷重を付与しながらクリック感付与部材のローラを乗り越えるときに、ゴムシートの膨出部がハンマー部材で押されて弾性変形し、この弾性変形したドーム状の膨出部内の可動接点がスイッチ基板上の固定接点に接触することにより、スイッチ信号を出力するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の電子鍵盤楽器では、鍵にクリック感を付与するクリック感付与部材と、押鍵操作によって発音開始を指示するためのスイッチ信号を得るスイッチ部とが、必要であるため、部品点数が多く、組立作業が煩雑になるばかりか、生産性が悪く、製品コストが高くなるという問題がある。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、鍵にクリック感を付与する機能とスイッチ機能とを一体化し、部品点数を削減して製品の低コスト化を図ることができる鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に上下方向に回転可能に設けられた鍵と、この鍵の押鍵操作時に前記鍵にクリック感を付与するクリック感付与部材とを備えた鍵盤装置において、前記クリック感付与部材は、前記鍵に設けられた導電性を有する押圧突起部と、前記鍵盤シャーシに対して片持ち梁状態で設けられ、前記鍵を押鍵操作した際に前記押圧突起部によって押し下げられて撓み変形することにより、前記押圧突起部が乗り越える弾性部材とを備え、この弾性部材は、絶縁性弾性部と導電性弾性部とが前記鍵の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列された状態で一体に形成されていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記押圧突起部が、前記鍵を押鍵操作した際に前記弾性部材を押し下げて撓み変形させる第1斜面と、この第1斜面が前記弾性部材を乗り越えて前記鍵が初期位置に戻る際に前記弾性部材に下側から接触して前記弾性部材をすり抜ける第2斜面とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記押圧突起部の前記第1斜面と前記第2斜面との各表面に、前記弾性部材の前記導電性弾性部に弾接した際に、前記絶縁性弾性部を挟んで隣接する前記導電性弾性部同士を導通させるための導電層がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記弾性部材が、絶縁性弾性部と導電性弾性部とを前記鍵の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列させた状態で一体に形成してなる第1弾性体と、絶縁性弾性部と導電性弾性部とを前記鍵の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列させた状態で一体に形成してなる第2弾性体とを有し、この第1、第2の各弾性体が絶縁層を介して積層されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、鍵が押鍵操作されて、鍵の押圧突起部が鍵盤シャーシに対して片持ち梁状態で設けられた弾性部材を上方から押し下げるときに、鍵荷重を急激に重くすることができ、鍵の押圧突起部が弾性部材を撓み変形させて乗り越えると、鍵荷重を急激に軽くすることができるので、鍵に鍵荷重が抜ける感覚のクリック感を付与することができる。また、鍵の押圧突起部が弾性部材を押し下げるときには、導電性を有する押圧突起部が、弾性部材の絶縁性弾性部を挟んで隣接する導電性弾性部同士を、導通させることができるので、発音開始を指示するためのスイッチ信号を得ることができる。
【0015】
このため、鍵にクリック感を付与するクリック感付与機能と、発音開始を指示するためのスイッチ信号を得るスイッチ機能とを一体化することができる。これにより、クリック感付与部材によって鍵にクリック感を付与するタイミングと、発音の開始を指示するタイミングとをほぼ一致させることができると共に、部品点数を削減して組立作業の簡素化を図ることができ、これにより生産性を向上させて製品の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態1において、鍵が押鍵されていない初期状態を示した断面図である。
【図2】図1に示された電子鍵盤楽器において、鍵の押圧突起部が弾性部材の上方に位置している状態を示した要部の拡大断面図である。
【図3】図2に示された電子鍵盤楽器における弾性部材を示した要部の拡大斜視図である。
【図4】図3に示された弾性部材の一部を段階的に破断した状態を示した要部の拡大斜視図である。
【図5】図3に示された弾性部材を分解して示した要部の拡大斜視図である。
【図6】図2に示された電子鍵盤楽器において、鍵が押されて押圧突起部が弾性部材を押し下げて撓み変形させた状態を示した要部の拡大断面図である。
【図7】図6に示された電子鍵盤楽器において、鍵が更に押されて押圧突起部が弾性部材を乗り越えて鍵にクリック感を付与した際に、弾性部材が元の位置に弾性復帰した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図8】図7に示された電子鍵盤楽器において、鍵が初期位置に戻る際に、鍵の押圧突起部が弾性部材を下側から上側に向けてすり抜ける状態を示した要部の拡大断面図である。
【図9】図1に示された電子鍵盤楽器の押鍵操作時における鍵荷重と鍵ストロークとの特性を示した図である。
【図10】図1に示された電子鍵盤楽器において、鍵の動作位置、第1、第2の各電極配線の導通状態、およびそのときの発音状態を表に示した図である。
【図11】この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態2において、弾性部材を示した要部の拡大斜視図である。
【図12】図11に示された弾性部材を分解して示した要部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
以下、図1〜図10を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態1について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1に示すように、楽器ケースの下部ケースを兼ねる鍵盤シャーシ1を備えている。この鍵盤シャーシ1の上部には、複数の鍵2(図1では1つのみを示す)が音階順に並列に配列された状態で、上下方向に回転可能に取り付けられている。
【0018】
この複数の鍵2は、白鍵と黒鍵とからなっている。ただし、この実施形態1では白鍵のみを示す。これらの鍵2の各後端部(図1では左端部)には、図1に示すように、回転支点である肉厚の薄い屈曲部3がそれぞれ設けられている。この屈曲部3は、鍵2の配列方向(図1では紙面の表裏面方向)に沿って連続する共通連結部4に連結されている。この共通連結部4は、図1に示すように、鍵盤シャーシ1の後端上部(図1では左端上部)に設けられた鍵支持部5上にビス5aによって取り付けられている。
【0019】
この場合、共通連結部4は、図1に示すように、白鍵用の共通連結部4と黒鍵用の共通連結部4とを有し、これらが上下に重ね合わされた状態で、鍵支持部5上にビス5aによって取り付けられている。これにより、鍵2は、図6および図7に示すように、押鍵操作されると、回転支点である屈曲部3が上下方向に弾性変形することにより、この屈曲部3を中心に上下方向に回転するように構成されている。
【0020】
また、この鍵2の前側内部(図1では右側内部)には、図1に示すように、鍵盤シャーシ1にその上方に向けて突出して設けられた鍵ガイド部6が下側から挿入されている。これにより、鍵2は、押鍵操作された際に、鍵ガイド部6が鍵2の前側内部を相対的に上下方向に摺動することにより、横振れしないように構成されている。
【0021】
さらに、この鍵2は、図1に示すように、そのほぼ中間部に鍵2の上下位置を規制するための位置規制部7が下側に突出して設けられている。この位置規制部7は、その下部後端にフック部7aが設けられ、このフック部7aが鍵盤シャーシ1の立上り部8に設けられた開口部8a内に挿入した状態で、上下方向に移動するように構成されている。
【0022】
これにより、位置規制部7は、図1に示すように、鍵2が押鍵されていない初期状態の際に、位置規制部7のフック部7aが鍵盤シャーシ1の立上り部8における開口部8aの上部に設けられた上限ストッパ10に当接することにより、鍵2の上限位置を規制するように構成されている。また、この位置規制部7は、図7に示すように、鍵2が押し下げられた際に、位置規制部7の下端が鍵盤シャーシ1の立上り部8における開口部8aの下部に設けられた下限ストッパ11に当接することにより、鍵2の下限位置を規制するように構成されている。
【0023】
ところで、この電子鍵盤楽器は、図1および図2に示すように、押鍵操作時に鍵2にクリック感を付与するクリック感付与部材12を備えている。このクリック感付与部材12は、押鍵操作時に鍵2にクリック感を付与すると共に、楽音の発音を開始させるためスイッチ信号を得るように構成されている。
【0024】
すなわち、このクリック感付与部材12は、図1および図2に示すように、鍵2に設けられた導電性を有する押圧突起部13と、鍵盤シャーシ1の基板支持部9上に設けられた配線基板14と、この配線基板14上に片持ち梁状態で設けられた弾性部材15とを備えている。この場合、基板支持部9は、鍵盤シャーシ1の前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間に位置する箇所に設けられ、その上部に配線基板14が配置されている。
【0025】
この配線基板14は、図1および図2に示すように、鍵2の配列方向(図1では紙面の表裏面方向)に沿って連続する帯板状に形成されている。この配線基板14の上面には、弾性部材15が配線基板14の前端部(図1では右端部)から前側(図1では右側)に突出した片持ち梁状態で、鍵2にそれぞれ対応して設けられている。
【0026】
鍵2の押圧突起部13は、図1および図2に示すように、鍵2の前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部にその下側に向けて突出して設けられている。この押圧突起部13は、その下端部が配線基板14の前端部から前側に突出した弾性部材15の前端部(図1では右端部)の上方に位置し、この状態で鍵2が押鍵操作された際に弾性部材15の前端部を押し下げて、弾性部材15を撓み変形させるように構成されている。
【0027】
この押圧突起部13の下部には、図2および図6〜図8に示すように、鍵2が押鍵操作された際に弾性部材15を押し下げて撓み変形させる第1斜面13aと、この第1斜面13aが弾性部材15を乗り越えて鍵2が初期位置に戻る際に弾性部材15に下側から接触して弾性部材15をすり抜ける第2斜面13bとが、設けられている。
【0028】
この押圧突起部13の第1斜面13aは、図2および図6に示すように、水平方向に対して後上がり(図2では左上がり)に緩やかな角度(例えば、約30度)で傾斜する傾斜面に形成されている。また、第2斜面13bは、第1斜面13aの後側上部(図2では左上側部)から水平方向に対して前上がり(図2では右上がり)に急な角度(例えば、約60度)で傾斜する傾斜面に形成されている。
【0029】
この場合、第2斜面13bの上側に位置する押圧突起部13の後部面(図7では左側面)は、図7に示すように、弾性部材15の前端部が接触するのを防ぐために、湾曲した窪み部13cに形成されている。また、第1、第2の各斜面13a、13bには、それぞれ導電層16が形成されている。この導電層16は、カーボンインクなどの導電性インクを塗布することによって形成されたものであっても良く、またアルミニウムなどの導電性金属を蒸着やめっきなどによって形成されたものであっても良い。
【0030】
一方、弾性部材15は、図6に示すように、鍵2が押鍵操作されて、鍵2の押圧突起部13の第1斜面13aが上方から当接して押し下げられた際に、下側に向けて撓み変形して鍵2に負荷を付与した後、図7に示すように、押圧突起部13が乗り越えるように構成されている。また、この弾性部材15は、図8に示すように、押鍵操作された鍵2の押圧突起部13が乗り越えた後に、鍵2が初期位置に戻る際に、鍵2の押圧突起部13の第2斜面13bが下側から接触して上側に向けて少し撓み変形するが、鍵2にほとんど負荷を付与せずに押圧突起部13がすり抜けるように構成されている。
【0031】
この弾性部材15は、図3〜図5に示すように、絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とが鍵2の前後方向(図1では左右方向)に対し直交する方向(つまり鍵2の配列方向)に沿って交互に配列された状態で一体に形成された第1弾性体20と、絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とが鍵2の前後方向(図1では左右方向)に対し直交する方向(つまり鍵2の配列方向)に沿って交互に配列された状態で一体に形成された第2弾性体21とを有し、この第1、第2の各弾性体20、21が絶縁層22を介して積層された構成になっている。
【0032】
この場合、絶縁性弾性部17は、ゴムやエラストマなどの絶縁性を有する合成樹脂製の弾性材料からなり、細長い縦板状に形成されている。導電性弾性部18は、ゴムやエラストマなどの合成樹脂製の弾性材料中にカーボン粒子や金属粒子などの導電粒子を混入させた導電性を有する弾性材料からなり、絶縁性弾性部17と同じ大きさの縦板状に形成されている。この絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とは、図3〜図5に示すように、平面上において交互に配列されて一体化されていることにより、ゼブラ状のほぼ平板に形成されている。
【0033】
これにより、第1弾性体20は、図3〜図5に示すように、絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とが鍵2の前後方向と直交する方向、つまり鍵2の配列方向に沿って交互に配列されたほぼ平板状に形成されている。また、第2弾性体21も、第1弾性体20と同様に、絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とが鍵2の前後方向と直交する方向、つまり鍵2の配列方向に沿って交互に配列されたほぼ平板状に形成されている。
【0034】
また、この第1弾性体0と第2弾性体21との間に配置された絶縁層22は、図3〜図5に示すように、第1弾性体20の導電性弾性部18と第2弾性体21の導電性弾性部18とが接触して相互に導通するのを防ぐように構成されている。この場合、第1弾性体20の前端部(図4では右端部)には、鍵2の押圧突起部13の下部に設けられた第1斜面13aが上方から当接する上側当接部20aが上方に向けて山形状に突出して形成されている。また、この第1弾性体20の後端部(図4では左端部)には、配線基板14上に接触する接触突起部20bが下側に突出して形成されている。
【0035】
同様に、第2弾性体21の前端部(図4では右端部)には、図3〜図5、および図8に示すように、鍵2の押圧突起部13の下部に設けられた第2斜面13bが下方から接触する下側当接部21aが下方に向けて逆山形状に突出して形成されている。この第2弾性体21は、その後端部(図4では左端部)が第1弾性体20の接触突起部20bの側面に絶縁層22を介して対応した状態で、第1弾性体20の下側に配置されている。
【0036】
これにより、弾性部材15は、図2〜図5に示すように、第2弾性体21の後側部(図2では左側部)が配線基板14上に位置し、第1弾性体20と第2弾性体21との各前側部が配線基板14の前端部から前側に突出した片持ち梁状態で、配線基板14上に配置されている。このため、この弾性部材15は、図6に示すように、配線基板14の前端部から前側に突出した部分が上下方向に撓み変形するように構成されている。
【0037】
この場合、配線基板14の上面には、図3〜図5に示すように、第1弾性体20の接触突起部20bの下面に位置する各導電性弾性部18がそれぞれ接触する複数の第1電極配線U1〜Unと、第2弾性体21の各導電性弾性部18がそれぞれ接触する複数の第2電極配線L1〜Lnとが形成されている。複数の第1電極配線U1〜Unは、図5に示すように、第1弾性体20の接触突起部20bに対する箇所から鍵2の前後方向に沿って配線基板14の後側(図5では左端部)に向けて延出されている。
【0038】
また、複数の第2電極配線L1〜Lnは、図5に示すように、第2弾性体21の各導電性弾性部18に対応する箇所から鍵2の配列方向に沿って配線基板14の左右方向(図5では右下側)に向けて延出されている。この場合、複数の第2電極配線L1〜Lnは、第2弾性体21の各導電性弾性部18を横切るため、図5に2点鎖線で示すように、複数の導電性弾性部18がそれぞれ接触する箇所を除いて、絶縁膜23で覆われている。
【0039】
すなわち、この絶縁膜23は、ウレタン系の絶縁性樹脂からなり、図5に示すように、第1電極配線U1〜Unを除くと共に、第2電極配線L1〜Lnのうち、第2弾性体1の導電性弾性部18に接触する第2電極配線L1〜Lnの各先端部を除いて、配線基板14の上面に塗布されている。これにより、弾性部材15は、第1弾性体20の接触突起部20bに位置する絶縁性弾性部17と、第2弾性体21の各絶縁性弾性部17とがそれぞれ絶縁膜23を介して超音波溶着によって溶着されることにより、配線基板14上に固定されている。
【0040】
また、この弾性部材15は、配線基板14上に超音波溶着によって固定される際に、第1弾性体20の接触突起部20bに位置する各導電性弾性部18が配線基板14の第1電極配線U1〜Unに圧接して電気的に接続されると共に、第2弾性体21の各導電性弾性部18が配線基板14の第2電極配線L1〜Lnに圧接して電気的に接続されるように構成されている。
【0041】
次に、この電子鍵盤楽器の作用について説明する。
鍵2が押鍵されていない初期状態では、図1および図2に示すように、鍵2の後端部に設けられた屈曲部3の弾性復帰力によって鍵2が上方に押し上げられている。これにより、鍵2の位置規制部7のフック部7aが鍵盤シャーシ1の立上り部8における開口部8aの上部に設けられた上限ストッパ10に下側から当接する。これにより、鍵2は上限位置に規制されている。この状態では、鍵2の押圧突起部13の第1斜面13aが、弾性部材15の第1弾性体20の前端部に設けられた上側当接部20aに対応している。
【0042】
この状態で、鍵2が押鍵されると、まず、鍵2が回転支点である屈曲部3を中心に図1において時計回りに回転する。このときには、鍵2の屈曲部3が弾性変形するので、図9の曲線部Aに示すように、鍵荷重が徐々に重くなった後に、鍵荷重が少し軽くなる。そして、鍵2が更に押し下げられると、図6に示すように、鍵2の押圧突起部13が弾性部材15を押圧する。
【0043】
このときには、鍵2の押圧突起部13の第1斜面13aが弾性部材15の第1弾性体20の前端部に設けられた上側当接部20aに上方から当接して弾性部材15を撓み変形させる。すなわち、弾性部材15は、配線基板14の前端部(図2では右端部)からその前側に向けて突出した片持ち梁状態の第1弾性体20と第2弾性体21とが絶縁層22と共に下側に向けて撓み変形するので、図9の曲線部Bに示すように、鍵荷重が急激に重くなる。
【0044】
このときに、押圧突起部13の第1斜面13aが弾性部材15の第1弾性体20の上側当接部20aに当接すると、第1斜面13aの表面に設けられた導電層16が第1弾性体20の上側当接部20aに接触する。これにより、第1弾性体20における絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士が第1斜面13aの導電層16によって導通する。
【0045】
すなわち、第1弾性体20の導電性弾性部18同士が第1斜面13aの導電層16によって導通すると、図5に示すように、配線基板14の第1電極配線U1〜Unのうち、第1電極配線U1、U2同士、第1電極配線U3、U4同士、および第1電極配線Un−1、Un同士がそれぞれ導通する。これにより、図10に示すように、スイッチがオンになり、スイッチ信号が制御部(図示せず)に出力され、この制御部が楽音の発音開始を指示する。
【0046】
この状態で、鍵2が更に押し下げられると、図7に示すように、鍵2の押圧突起部13の第1斜面13aが弾性部材15の第1弾性体20の上側当接部20aを乗り越える。このときには、図6に示すように、押圧突起部13の第1斜面13aが、弾性部材15の第1弾性体20における上側突起部20aを押し下げながら摺動して乗り越える。すると、鍵2に対する弾性部材15の反発力による負荷がなくなるので、図9の曲線部Cに示すように、鍵荷重が急激に軽くなり、鍵2に鍵荷重が抜ける感覚のクリック感が付与される。
【0047】
また、このときには、図7に示すように、弾性部材15が弾性復帰して元の状態に戻る。この状態では、弾性部材15の第1弾性体20の上側当接部20aおよび第2弾性体21の下側当接部21aが、鍵2の押圧突起部13に接触することなく、押圧突起部13の第2斜面13bの上方に位置する。このため、押圧突起部13の第1斜面13aの導電層16による第1弾性体201の各導電性弾性部18同士の導通が解除される。
【0048】
これにより、図10に示すように、スイッチがオフ状態になる。このときには、制御部が楽音の発音を指示し続ける。この後、更に鍵2が押し下げられると、鍵2の位置規制部7の下端が鍵盤シャーシ1の立上り部8における開口部8aの下部に設けられた下限ストッパ11に当接する。これにより、鍵2は下限位置に規制される。このため、図9の曲線部Dに示すように、鍵2の鍵荷重が再び急激に重くなる。
【0049】
一方、押鍵された鍵2が初期位置に復帰する際には、図7および図8に示すように、鍵2の後端部に設けられた屈曲部3の弾性復帰力によって鍵2が上方に押し上げられる。これにより、図9の曲線部Eに示すように、鍵荷重が急激に軽くなる。このように、鍵2が屈曲部3を中心に図7において反時計回りに回転する際には、図8に示すように、鍵2の押圧突起部13が上方に移動し、この押圧突起部13の第2斜面13bが弾性部材15の第2弾性体21の下側当接部21aに接触しながら第2弾性体21の下側当接部21aをすり抜けて上方に移動する。
【0050】
このときには、押圧突起部13の第2斜面13bが弾性部材15の第2弾性体21の下側当接部21aに接触すると、図8に示すように、第2弾性体21の下側当接部21aが押圧突起部13の第2斜面13bによって僅かに引き上げられるので、弾性部材15が上側に少し撓み変形する。これにより、押圧突起部13の第2斜面13bが第2弾性体21の下側当接部21aをすり抜けて上方に移動する。このときには、図9の曲線部Fに示すように、鍵荷重が少し重くなる。
【0051】
また、このときに、押圧突起部13の第2斜面13bが弾性部材15の第2弾性体21の下側当接部21aに接触すると、第2斜面13bの表面に設けられた導電層16が第2弾性体21の下側当接部21aに接触する。これにより、第2弾性体21における絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士が第2斜面13bの導電層16によって導通する。
【0052】
すなわち、第2弾性体21の導電性弾性部18同士が第2斜面13bの導電層16によって導通すると、図5に示すように、配線基板14の第2電極配線L1〜Lnのうち、第2電極配線L1、L2同士、第2電極配線L3、L4同士、および第2電極配線Ln−1、Ln同士がそれぞれ導通する。
【0053】
これにより、図10に示すように、スイッチがオンになり、スイッチ信号が制御部に出力され、この制御部が楽音の発音停止を指示する。この後は、鍵2がその回転支点である屈曲部3の弾性復帰力によって鍵2が上方に押し上げられるので、図9の曲線部Gに示すように、鍵荷重が少し重くなった後、徐々に軽くなり、図1および図2に示すように、鍵2が初期位置に戻る。
【0054】
このように、この電子鍵盤楽器によれば、鍵盤シャーシ1上に上下方向に回転可能に設けられた鍵2の押鍵操作時に鍵2にクリック感を付与するクリック感付与部材12を備え、このクリック感付与部材12が、鍵2に設けられた導電性を有する押圧突起部13と、鍵盤シャーシ1の配線基板14上に片持ち梁状態で設けられ、鍵2を押鍵操作した際に押圧突起部13によって押し下げられて撓み変形することにより、押圧突起部13が乗り越える弾性部材15とを備え、この弾性部材15が、絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とを鍵2の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列させた状態で一体に形成した構成であるから、鍵2にクリック感を付与する機能とスイッチ機能とを一体化することができる。
【0055】
すなわち、この電子鍵盤楽器では、鍵2が押鍵操作されて鍵2の押圧突起部13が鍵盤シャーシ1の弾性部材15を上方から押し下げるときに、鍵荷重を急激に重くすることができ、鍵2の押圧突起部13が弾性部材15を撓み変形させて乗り越えると、鍵荷重を急激に軽くすることができるので、鍵2に鍵荷重が抜ける感覚のクリック感を付与することができる。また、鍵2の押圧突起部13が弾性部材15を押し下げるときには、導電性を有する押圧突起部13が弾性部材15の絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士を導通させることができるので、発音開始を指示するためのスイッチ信号を得ることができる。
【0056】
このため、鍵2にクリック感を付与するクリック感付与機能と、発音開始を指示するためのスイッチ信号を得るスイッチ機能とを一体化することができる。これにより、クリック感付与部材12によって鍵2にクリック感を付与するタイミングと、発音の開始を指示するタイミングとを一致させることができるので、アコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。また、鍵2にクリック感を付与する機能とスイッチ機能とを一体化したことにより、部品点数を削減して組立作業の簡素化を図ることができ、これにより生産性を向上させて製品の低コスト化を図ることができる。
【0057】
この場合、押圧突起部13は、鍵2が押鍵操作された際に弾性部材15を押し下げて撓み変形させる第1斜面13aと、この第1斜面13aが弾性部材15を乗り越えて鍵2が初期位置に戻る際に弾性部材15に下側から接触して弾性部材15をすり抜ける第2斜面13bとを備えていることにより、鍵2を押鍵操作した際に押圧突起部13の第1斜面13aによって弾性部材15を確実に押し下げて撓ますことができ、これにより鍵2に負荷を付与して鍵荷重を十分に重くすることができる。
【0058】
また、この押圧突起部13は、第1斜面13aが弾性部材15を撓み変形させて乗り越えることにより、鍵荷重を急激に軽くして鍵荷重が抜ける感覚のクリック感を鍵2に確実に且つ良好に付与することができると共に、第1斜面13aが弾性部材15を乗り越えて鍵2が初期位置に戻る際に、押圧突起部13の第2斜面13bが弾性部材15に接触してすり抜けるので、弾性部材15が上方に少し撓むだけで、鍵2に大きな負荷が付与されないようにすることができ、これによっても、アコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
【0059】
この場合、押圧突起部13は、その第1斜面13aと第2斜面13bとの各表面に、弾性部材15に弾接した際に、絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士を導通させるための導電層16がそれぞれ設けられていることにより、鍵2が押鍵操作された際に、第1斜面13aの導電層16が弾性部材15における絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士を導通させることができ、これにより楽音の発音開始を指示するためのスイッチ信号を得ることができる。
【0060】
また、この押圧突起部13は、第1斜面13aが弾性部材15を乗り越えて鍵2が初期位置に戻る際に、第2斜面13bの導電層16が弾性部材15に接触してすり抜けることにより、第2斜面13bの導電層16が弾性部材15における絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士を導通させることができ、これにより楽音の発音停止を指示するためのスイッチ信号を得ることができる。
【0061】
また、この電子鍵盤楽器では、弾性部材15が、絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とを鍵2の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列させた状態で一体に形成してなる第1弾性体20と、絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とを鍵2の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列させた状態で一体に形成してなる第2弾性体21とを有し、この第1、第2の各弾性体20、21が絶縁層22を介して積層されていることにより、鍵2が押鍵操作された際と、第1斜面13aが弾性部材15を乗り越えて鍵2が初期位置に戻る際とで、異なるスイッチ信号を得ることができる。
【0062】
すなわち、鍵2が押鍵操作された際には、押圧突起部13の第1斜面13aの導電層16が第1弾性体20における絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士を導通させることができるので、楽音の発音開始を指示するためのスイッチ信号を得ることができる。また、押圧突起部13の第1斜面13aが弾性部材15を乗り越えて鍵2が初期位置に戻る際には、押圧突起部13の第2斜面13bの導電層16が第2弾性体21における絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士を導通させることができるので、楽音の発音停止を指示するためのスイッチ信号を得ることができる。
【0063】
さらに、この電子鍵盤楽器では、配線基板14の上面にウレタン系の絶縁性樹脂からなる絶縁膜23が、第1電極配線U1〜Unを除くと共に、第2電極配線L1〜Lnのうち、第2弾性体1の導電性弾性部18に接触する第2電極配線L1〜Lnの各先端部を除いて、塗布されており、この絶縁膜23を介して弾性部材15の第1弾性体20の接触突起部20bに位置する絶縁性弾性部17と、第2弾性体21の各絶縁性弾性部17とが超音波溶着によって溶着されていることにより、弾性部材15を配線基板14上に確実且つ良好に固定することができる。
【0064】
このため、弾性部材15は、配線基板14上に超音波溶着によって固定される際に、第1弾性体20の接触突起部20bに位置する各導電性弾性部18を配線基板14の第1電極配線U1〜Unに圧接させて確実に且つ良好に電気的に接続することができると共に、第2弾性体21の各導電性弾性部18を配線基板14の第2電極配線L1〜Lnに圧接させて確実に且つ良好に電気的に接続することができる。
【0065】
(実施形態2)
次に、図11および図12を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態2について説明する。
この電子鍵盤楽器は、弾性部材40が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。すなわち、この弾性部材40は、絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とを鍵2の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列した状態で一体に形成した1層構造になっている。
【0066】
この場合にも、絶縁性弾性部17は、実施形態1と同様、ゴムやエラストマなどの絶縁性を有する合成樹脂製の弾性材料からなり、細長い縦板状に形成されている。導電性弾性部18は、ゴムやエラストマなどの合成樹脂製の弾性材料中にカーボン粒子や金属粒子などの導電粒子を混入させた導電性を有する弾性材料からなり、絶縁性弾性部17と同じ大きさの縦板状に形成されている。
【0067】
この絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とは、図11および図12に示すように、平面上において交互に配列されて一体化されていることにより、ゼブラ状のほぼ平板に形成されている。これにより、弾性部材40は、絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とが鍵2の前後方向に対し直交する方向、つまり鍵2の配列方向に沿って交互に配列されたほぼ平板状に形成されている。
【0068】
この弾性部材40の前端上部(図11では右端部)には、図11および図12に示すように、鍵2の押圧突起部13の下部に設けられた第1斜面13aが上方から当接する上側当接部40aが上方に向けて山形状に突出して形成されている。また、この弾性部材40の前端下部には、鍵2の押圧突起部13の下部に設けられた第2斜面13bが下方から接触する下側当接部40bが下方に向けて逆山形状に突出して形成されている。
【0069】
また、この弾性部材40は、図11および図12に示すように、その後側部(図11では左側部)が配線基板14上に配置され、且つ第1弾性体20と第2弾性体21との各前側部(図11では右側部)が配線基板14の前端部(図11では右端部)からその前側に突出した片持ち梁状態で、実施形態1と同様、配線基板14上に超音波溶着によって固定されている。このため、この弾性部材40は、配線基板14の前端部から前側に突出した片持ち梁状態の部分が上下方向に撓み変形するように構成されている。
【0070】
この場合、配線基板14の上面には、図12に示すように、弾性部材40の各導電性弾性部18がそれぞれ接触する複数の電極配線P1〜Pnが形成されている。この複数の電極配線P1〜Pnも、実施形態1と同様、弾性部材40の各導電性弾性部18の後端部(図12では左端部)に対する箇所から鍵2の前後方向に沿って配線基板14の後側に向けて延出されている。
【0071】
次に、この電子鍵盤楽器の作用について説明する。
この電子鍵盤楽器においても、鍵2が押鍵されると、実施形態1と同様、まず、鍵2が回転支点である屈曲部3を中心に図1において時計回りに回転する。このときには、鍵2の屈曲部3が弾性変形するので、鍵荷重が徐々に重くなった後に、鍵荷重が少し軽くなる。そして、鍵2が更に押し下げられると、鍵2の押圧突起部13が弾性部材40を押圧する。
【0072】
このときには、鍵2の押圧突起部13の第1斜面13aが弾性部材40の前端部に設けられた上側当接部40aに上方から当接して弾性部材40を撓み変形させる。すなわち、弾性部材40は、配線基板14の前端部から前側に向けて突出した片持ち梁状態の部分が下側に向けて撓み変形する。このため、鍵荷重が急激に重くなる。
【0073】
このときに、押圧突起部13の第1斜面13aが弾性部材15の上側当接部40aに当接すると、実施形態1と同様、第1斜面13aの表面に設けられた導電層16が弾性部材40の上側当接部40aに接触する。これにより、弾性部材40における絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士が第1斜面13aの導電層16によって導通する。
【0074】
すなわち、弾性部材40の導電性弾性部18同士が第1斜面13aの導電層16によって導通すると、図12に示すように、配線基板14の電極配線P1〜Pnのうち、電極配線P1、P2同士、電極配線P3、P4同士、および電極配線Pn−1、Pn同士がそれぞれ導通する。これにより、スイッチがオンになり、スイッチ信号が制御部(図示せず)に出力され、この制御部が楽音の発音開始を指示する。
【0075】
この状態で、鍵2が更に押し下げられると、実施形態1と同様、鍵2の押圧突起部13の第1斜面13aが弾性部材40の上側当接部40aを乗り越える。すると、鍵2に対する弾性部材40の反発力による負荷がなくなるので、鍵荷重が急激に軽くなり、鍵2に鍵荷重が抜ける感覚のクリック感が付与される。
【0076】
このときには、弾性部材40が弾性復帰して元の状態に戻り、弾性部材40の上側当接部40aおよび下側当接部40bが、鍵2の押圧突起部13に接触することなく、押圧突起部13の第2斜面13bの上方に位置する。このため、押圧突起部13の第1斜面13aの導電層16による弾性部材40の各導電性弾性部18同士の導通が解除される。これにより、スイッチがオフ状態になる。このときには、制御部が楽音の発音を指示し続ける。
【0077】
この後、更に鍵2が押し下げられると、実施形態1と同様、鍵2の位置規制部7の下端が鍵盤シャーシ1の立上り部8における開口部8aの下部に設けられた下限ストッパ11に当接する。これにより、鍵2が下限位置に規制される。このため、鍵2の鍵荷重が再び急激に重くなる。
【0078】
一方、押鍵された鍵2が初期位置に復帰する際には、実施形態1と同様、鍵2の後端部に設けられた屈曲部3の弾性復帰力によって鍵2が上方に押し上げられるので、鍵荷重が急激に軽くなる。このように、鍵2が屈曲部3を中心に図7において反時計回りに回転する際には、鍵2の押圧突起部13が上方に移動し、この押圧突起部13の第2斜面13bが弾性部材40の下側当接部40bに接触しながら弾性体部材40の下側当接部40bをすり抜けて上方に移動する。
【0079】
このときには、押圧突起部13の第2斜面13bが弾性部材40の下側当接部40bに接触する。このため、実施形態1と同様、弾性部材40の下側当接部40bが押圧突起部13の第2斜面13bによって僅かに引き上げられるので、弾性部材40が上側に少し撓み変形する。これにより、押圧突起部13の第2斜面13bが弾性部材40の下側当接部40bをすり抜けて上方に移動するので、鍵荷重が少し重くなる。
【0080】
このときに、押圧突起部13の第2斜面13bが弾性部材40の下側当接部40bに接触すると、第2斜面13bの表面に設けられた導電層16が弾性部材40の下側当接部40bに接触することにより、弾性部材40における絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士が第2斜面13bの導電層16によって導通する。
【0081】
すなわち、弾性部材40の導電性弾性部18同士が第2斜面13bの導電層16によって導通すると、実施形態1と同様、配線基板14の電極配線P1〜Pnのうち、電極配線P1、P2同士、電極配線P3、P4同士、および電極配線Pn−1、Pn同士がそれぞれ導通する。
【0082】
これにより、スイッチが再びオンになり、スイッチ信号が制御部(図示せず)に出力される。このときには、制御部が楽音の発音停止を指示する。この後は、鍵2がその回転支点である屈曲部3の弾性復帰力によって鍵2が上方に押し上げられるので、実施形態1と同様、鍵荷重が少し重くなった後、徐々に軽くなり鍵2が初期位置に戻る。
【0083】
このように、この電子鍵盤楽器においても、鍵盤シャーシ1上に上下方向に回転可能に設けられた鍵2の押鍵操作時に鍵2にクリック感を付与するクリック感付与部材12を備え、このクリック感付与部材12が、鍵2に設けられた導電性を有する押圧突起部13と、鍵盤シャーシ1の配線基板14上に片持ち梁状態で設けられ、鍵2を押鍵操作した際に押圧突起部13によって押し下げられて撓み変形することにより、押圧突起部13が乗り越える弾性部材40とを備え、この弾性部材40が、絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とを鍵2の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列させた状態で一体に形成した構成であるから、実施形態1と同様、鍵2にクリック感を付与する機能とスイッチ機能とを一体化することができる。
【0084】
すなわち、この電子鍵盤楽器では、鍵2が押鍵操作されて鍵2の押圧突起部13が鍵盤シャーシ1の弾性部材40を上方から押し下げるときに、鍵荷重を急激に重くすることができ、鍵2の押圧突起部13が弾性部材40を撓み変形させて乗り越えると、鍵荷重を急激に軽くすることができるので、鍵2に鍵荷重が抜ける感覚のクリック感を付与することができる。また、鍵2の押圧突起部13が弾性部材40を押し下げるときには、押圧突起部13の導電層16が弾性部材15の絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士を導通させることができるので、発音開始を指示するためのスイッチ信号を得ることができる。
【0085】
このため、鍵2にクリック感を付与するクリック感付与機能と、発音開始を指示するためのスイッチ信号を得るスイッチ機能とを一体化することができる。これにより、クリック感付与部材12によって鍵2にクリック感を付与するタイミングと、発音の開始を指示するタイミングとを一致させることができるので、アコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。また、鍵2にクリック感を付与する機能とスイッチ機能とを一体化したことにより、実施形態1と同様、部品点数を削減して組立作業の簡素化を図ることができ、これにより生産性を向上させて製品の低コスト化を図ることができる。
【0086】
この場合、弾性部材40は、絶縁性弾性部17と導電性弾性部18とを鍵2の前後方向に対し直交する方向、つまり鍵2の配列方向に沿って交互に配列させた状態で一体に形成した1層構造であるから、実施形態1よりも弾性部材40の構造が簡単になり、より一層、製品の低コスト化を図ることができると共に、このように弾性部材40を構成しても、実施形態1と同様、鍵2が押鍵操作された際と、第1斜面13aが弾性部材40を乗り越えて鍵2が初期位置に戻る際とで、異なるスイッチ信号を出力させることができる。
【0087】
すなわち、鍵2が押鍵操作された際には、押圧突起部13の第1斜面13aの導電層16が弾性部材40における絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士を導通させることができるので、楽音の発音開始を指示するためのスイッチ信号を得ることができる。また、押圧突起部13の第1斜面13aが弾性部材40を乗り越えると、押圧突起部13の第1斜面13aの導電層16が弾性部材40から離れるので、絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士の導通を解除することができる。
【0088】
また、押圧突起部13の第1斜面13aが弾性部材40を乗り越えて鍵2が初期位置に戻る際には、押圧突起部13の第2斜面13bの導電層16が弾性部材40の下側当接部40bに接触してすり抜けるので、第2斜面13bの導電層16によって弾性部材40における絶縁性弾性部17を挟んで隣接する導電性弾性部18同士を導通させることができ、これにより楽音の発音停止を指示するためのスイッチ信号を得ることができる。
【0089】
なお、上述した実施形態1、2では、弾性部材15、40の上側当接部20a、40aを均一な高さに形成して押圧突起部13の第1斜面13aが複数の導電性弾性部18にほぼ同時に接触するように構成した場合について述べたが、これに限らず、弾性部材15、40の上側当接部の高さを変えることにより、押圧突起部13の第1斜面13aが複数の導電性弾性部18に時間差をもって順次接触するように構成しても良い。
【0090】
このように構成すれば、弾性部材15、40の上側当接部が押圧突起部13の第1斜面13aによって押し下げられて弾性部材15、40が撓み変形するときに、押圧突起部13の第1斜面13aの導電層16が複数の導電性弾性部18に時間差をもって順次接触して、複数の導電性弾性部18を順次導通させることができる。これにより、鍵2の押鍵強さ、つまり押鍵速度を検出することができるの、楽音の音量や音色などを制御部によって制御することができ、より一層、リアルな楽音を良好に発音させることができる。
【0091】
また、上述した実施形態1、2およびその変形例では、弾性部材15、40の前端部における上面に上側当接部20a、40aを設け、弾性部材15、40の前端部における下面に下側当接部21a、40bを設けた場合について述べたが、必ずしも弾性部材15、40の前端部における上面に上側当接部20a、40aを設ける必要はなく、また必ずしも弾性部材15、40の前端部における下面に下側当接部21a、40bを設ける必要もない。
【0092】
また、上述した実施形態1、2およびその各変形例では、鍵盤シャーシ1の基板支持部9上に配線基板14を設け、この配線基板14上に弾性部材15、40を片持ち梁状態で設けた場合について述べたが、必ずしも配線基板14に弾性部材15、40を設ける必要はなく、鍵盤シャーシ1上に直接、弾性部材15、40を片持ち梁状態で設けた構成でも良い。この場合には、弾性部材15、40の各導電性弾性部18をリード線やフレキシブルな配線基板などの接続部材によって回路基板と電気的に接続するように構成すれば良い。
【0093】
さらに、この発明の鍵盤装置は、上述した実施形態1、2に限らず、鍵盤シャーシ1に複数のハンマー部材を各鍵2に対応させた状態で上下方向に回転可能に設け、鍵2の押鍵操作に応じてハンマー部材を回転させて鍵2にアクション荷重を付与する構成のものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 鍵盤シャーシ
2 鍵
3 屈曲部
4 共通連結部
5 鍵支持部
12 クリック感付与部材
13 押圧突起部
13a 第1斜面
13b 第2斜面
14 配線基板
15、40 弾性部材
16 導電層
17 絶縁性弾性部
18 導電性弾性部
20 第1弾性体
20a、40a 上側当接部
21 第2弾性体
21a、40b 下側当接部
22 絶縁層
23 絶縁膜
U1〜Un 第1電極配線
L1〜Ln 第2電極配線
P1〜Pn 電極配線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に上下方向に回転可能に設けられた鍵と、この鍵の押鍵操作時に前記鍵にクリック感を付与するクリック感付与部材とを備えた鍵盤装置において、
前記クリック感付与部材は、前記鍵に設けられた導電性を有する押圧突起部と、前記鍵盤シャーシに対して片持ち梁状態で設けられ、前記鍵を押鍵操作した際に前記押圧突起部によって押し下げられて撓み変形することにより、前記押圧突起部が乗り越える弾性部材とを備え、
この弾性部材は、絶縁性弾性部と導電性弾性部とが前記鍵の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列された状態で一体に形成されていることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記押圧突起部は、前記鍵が押鍵操作された際に前記弾性部材を押し下げて撓み変形させる第1斜面と、この第1斜面が前記弾性部材を乗り越えて前記鍵が初期位置に戻る際に前記弾性部材に下側から接触して前記弾性部材をすり抜ける第2斜面とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記押圧突起部の前記第1斜面と前記第2斜面との各表面には、前記弾性部材に弾接した際に、前記絶縁性弾性部を挟んで隣接する前記導電性弾性部同士を導通させるための導電層がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、絶縁性弾性部と導電性弾性部とを前記鍵の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列させた状態で一体に形成してなる第1弾性体と、絶縁性弾性部と導電性弾性部とを前記鍵の前後方向に対し直交する方向に沿って交互に配列させた状態で一体に形成してなる第2弾性体とを有し、この第1、第2の各弾性体が絶縁層を介して積層されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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