説明

鍵駆動装置および鍵盤楽器

【課題】脚桁の上方に鍵盤の一部が位置する鍵盤楽器に対して、脚桁の一部を切断除去せずに、鍵を駆動する鍵駆動装置を取り付けること。
【解決手段】本発明の実施形態における鍵駆動装置10は、2台の駆動ユニット10−L、10−Uに分割されている。グランドピアノに鍵駆動装置10が取り付けられるときには、駆動ユニット10−L、10−Uは、棚板3に構成された脚桁4の上方における空間30bにソレノイド収納部100bが挿入される。また、ソレノイドの動作を制御する基板が収納された基板収納部200aを下部にもつソレノイド収納部100aについては、棚板3に構成された空間30b以外の空間30aに挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤楽器の鍵を駆動させる鍵駆動装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アコースティックピアノに自動演奏機能をもたせるために、鍵の下方に存在する棚板を削って空間を作り、鍵を駆動させるソレノイドを有する鍵駆動装置(キードライブユニット)を、その空間に取り付けることが行われている。この鍵駆動装置は、演奏内容に応じた制御信号によりソレノイドを動作させて、各鍵の後端部(バックチェック側)付近において、鍵の下面側から駆動力を伝達する。これにより、あたかも演奏者によって押下されたかのように鍵が駆動され、ハンマによる打弦が行われて音が発生する。
このような鍵駆動装置は、その取り付け位置の関係から、アコースティックピアノに対する大掛かりな加工が必要であり、取り付け時間もかかっていた。そのため、鍵駆動装置のアコースティックピアノに対する取り付け処理を容易にする技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−252302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アコースティックピアノの中には、例えば、デザイン上の観点から、鍵盤の両端部分については、鍵の下方に棚板だけではなく、脚と棚板とを接続する脚桁が存在することがある。特許文献1に開示された技術においては、鍵駆動装置の全てが棚板内に収まらないため、棚板よりも下方に鍵駆動装置が突出する部分が存在することになる。ここで、鍵の下方において、棚板を介して脚桁が存在する場合には、突出する部分が脚桁にかかってしまうことから、鍵駆動装置を取り付ける前に、脚桁の一部を切断除去しておく必要があった。このようなアコースティックピアノに鍵駆動装置を取り付ける場合には、加工に時間がかかることになるほか、ピアノの外観が変わってしまうことになっていた。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、脚桁の上方に鍵盤の一部が位置する鍵盤楽器に対して、脚桁の一部を切断除去せずに、鍵を駆動する鍵駆動装置を取り付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、脚桁の上方に棚板を介して鍵盤の一部が位置するように構成された鍵盤楽器に取り付けられ、入力される制御信号に応じて前記鍵盤を構成する複数の鍵を駆動する鍵駆動装置であって、前記鍵を各々駆動する複数のアクチュエータ、および前記複数のアクチュエータの動作を前記制御信号に応じて制御する制御回路を有し、前記棚板の一部を除去して構成される上下方向に貫通した除去空間に挿入されて前記鍵盤楽器に取り付けられる駆動ユニットを複数具備し、前記鍵盤楽器に複数の前記駆動ユニットが取り付けられる場合に、前記脚桁の上方に位置する鍵を駆動対象に含む前記駆動ユニットは、前記除去空間のうち前記脚桁と前記鍵盤との間の挿入空間に挿入され、前記アクチュエータが配置された第1部分と、上下方向および水平短手方向の少なくともいずれか一方の長さが前記第1部分よりも長く構成され、前記挿入空間には挿入されず、前記アクチュエータおよび前記制御回路が配置された第2部分とを有することを特徴とする鍵駆動装置を提供する。
【0007】
また、別の好ましい態様において、前記駆動ユニットは長尺状であり、前記第1部分は前記駆動ユニットの長手方向の一端部に位置し、前記第1部分が脚桁に支持された状態で前記駆動ユニットの他端側で他の前記駆動ユニットと連結されることを特徴とする。
【0008】
また、別の好ましい態様において、前記第2部分は、前記駆動ユニットが鍵盤楽器に取り付けられた場合に、前記棚板の下方に突出する部分を有することを特徴とする。
【0009】
また、別の好ましい態様において、前記駆動ユニットは、前記鍵盤楽器に複数の前記駆動ユニットが取り付けられた場合に、他の前記駆動ユニットと隣接する側に上下方向の長さが前記第2の部分より短く、前記アクチュエータが配置された第3部分を有することを特徴とする。
【0010】
また、別の好ましい態様において、前記第2部分には、前記棚板の下面と接続するための接続部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、脚桁と、前記脚桁の上方に一部が位置する鍵盤と、一部に空間が構成され、前記鍵盤の下方かつ前記脚桁の上方に設けられた棚板と、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の鍵駆動装置とを具備し、前記鍵駆動装置の前記駆動ユニットが挿入される前記除去空間は、前記棚板に構成された前記空間であることを特徴とする鍵盤楽器を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、脚桁の上方に鍵盤の一部が位置する鍵盤楽器に対して、脚桁の一部を切断除去せずに、鍵を駆動する鍵駆動装置を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における自動演奏ピアノの外観を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態における自動演奏ピアノにおける脚桁を含まない部分の断面構成を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態における自動演奏ピアノにおける脚桁を含む部分の断面構成を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態における自動演奏ピアノ正面方向から見た場合の棚板、脚桁および鍵駆動装置の位置関係を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態における鍵駆動装置の構成を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態における鍵駆動装置が駆動ユニット毎に分離した場合の構成を説明する図である。
【図7】図6に示す矢視VII−VII方向から見た鍵駆動装置の断面図である。
【図8】図6に示す矢視VIII−VIII方向から見た鍵駆動装置の断面図である。
【図9】本発明の実施形態における鍵駆動装置をグランドピアノに取り付ける例を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態における鍵駆動装置をグランドピアノに取り付ける例を説明する図9に続く図である。
【図11】本発明の実施形態における鍵駆動装置をグランドピアノに取り付ける例を説明する図10に続く図である。
【図12】図11に示す鍵駆動装置を下方から見た場合の鍵駆動装置と棚板との関係を示す図である。
【図13】本発明の変形例1における鍵駆動装置の構成を説明する図である。
【図14】本発明の変形例2における鍵駆動装置の構成を説明する図である。
【図15】図14に示す矢視XV−XV方向から見た鍵駆動装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
[自動演奏ピアノの外観]
図1は、本発明の実施形態における自動演奏ピアノ1の外観を説明する図である。自動演奏ピアノ1は、正面に複数(この例においては、88個)の鍵20が並んで配列された鍵盤2を有し、また、鍵盤2の下方に位置する棚板3、脚部5と棚板3とを接続する脚桁4、ペダル8およびコントローラ11を有する。脚桁4は、鍵盤2の鍵20が並んだ方向の両端側(自動演奏ピアノ1の左右端部側)に位置する。すなわち、鍵盤2の両端の一部は、脚桁4の上方の棚板3を介して位置するように構成されている。自動演奏ピアノ1は、一般的なグランドピアノに、本発明の鍵駆動装置が取り付けられて構成されている。自動演奏ピアノ1の鍵20は、この鍵駆動装置によって駆動される。
【0015】
コントローラ11は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などを有し、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)形式などの演奏情報を取得して、この演奏情報に応じて鍵20の駆動態様を指示する制御信号を鍵駆動装置に出力する。演奏情報は、外部入力端子などから入力されたものであってもよいし、予め記憶部などに記憶しておいたものであってもよい。
続いて、自動演奏ピアノ1に取り付けられた鍵駆動装置の位置について図2、図3および図4を用いて説明する。
【0016】
[鍵駆動装置10の位置]
図2は、本発明の実施形態における自動演奏ピアノ1における脚桁4を含まない部分の断面構成を説明する図である。この断面構成は、鍵20の延びている方向に沿った断面について、鍵20が並ぶ方向に沿って見た場合における構成を示している。鍵20は、バランスピン7により回動自在に支持されている。鍵20の前端部(演奏者によって押下される側(図2左側))が押下されると、バランスピン7を中心に回動して、鍵20の後端部(バランスピン7に対して前端部と反対側の端部)が上昇する。そして、アクション機構6が動作してハンマが打弦することにより、音が発生するようになっている。
【0017】
棚板3は、鍵20の後端部の下方に空間30aが構成されている。この空間30aは、棚板3の一部を上下方向に貫通するように削って構成され、鍵20の並ぶ方向に沿って延在する略直方体形状となっている。鍵駆動装置10は、鍵20に駆動力を与えて鍵20を駆動するアクチュエータの一例であるソレノイドが収納されているソレノイド収納部100a、および上述した制御信号に基づいてソレノイドを動作させる制御回路が構成された基板210(図7参照)を収納する基板収納部200aを有している。また、鍵駆動装置10は、棚板3にネジ15によりネジ止めされ、棚板3に固定されている。
鍵駆動装置10は、コントローラ11からの制御信号に基づいてソレノイドを動作させて、鍵20の後端部を突き上げることによって鍵20を回動させ、演奏者が鍵20の前端部を押下したときと同様な動作を実現する。
【0018】
図3は、本発明の実施形態における自動演奏ピアノ1における脚桁4を含む部分の断面構成を説明する図である。図2に示す場合とは異なり、棚板3の下方には脚桁4が存在している。棚板3は、鍵20の後端部の下方に空間30bが構成されている。この空間30bは、棚板3を上下方向に貫通するように削って構成され、鍵20の並ぶ方向に沿って延在する略直方体形状となっている。空間30bは、空間30aと異なり、下方に脚桁4が存在し、鍵盤2と脚桁4との間に構成される空間を含んでいる。
上述した空間30aと空間30bとは、連続した空間を構成し、全体として略直方体形状となっている。以下、空間30aと空間30bとを総称して空間30という。
【0019】
この部分における鍵駆動装置10は、ソレノイドが収納されているソレノイド収納部100bを有しているが、制御回路が構成された基板を収納する基板収納部200aに相当する構成については有していない。ソレノイド収納部100bは、ソレノイド収納部100aと連続して構成され、下部に基板収納部200aに相当する構成を有しない部分をいう。図3においては、ソレノイド収納部100bは、他の構成と接触していないが、ソレノイド収納部100aと連続して構成されているため、他の構成との位置関係は固定されている。
【0020】
図4は、本発明の実施形態における自動演奏ピアノ1の正面方向から見た場合の棚板3、脚桁4および鍵駆動装置10の位置関係を説明する図である。鍵駆動装置10は、低音側の鍵20を駆動する駆動ユニット10−L、高音側の鍵20を駆動する駆動ユニット10−U、および、駆動ユニット10−Lと駆動ユニット10−Uと連結する連結部300を有する。駆動ユニット10−L、10−Uは、それぞれ長尺状に構成され、上述したソレノイド収納部100a、100bの他、ソレノイド収納部100cを有している。上述したように、ソレノイド収納部100aの下部に基板収納部200aが存在し、ソレノイド収納部100b、100cの下部には存在しない。なお、基板収納部200aの側面には、空気が通過可能な複数の孔が設けられているが、設けられていなくてもよい。
【0021】
ソレノイド収納部100cは、ソレノイド収納部100bと同様に、ソレノイド収納部100aと連続して構成されている。また、ソレノイド収納部100cは、隣接する駆動ユニットと連結するための連結部300を取り付け可能に構成されている。この例においては、ソレノイド収納部100cは、下部に連結部300をネジ止めするためのネジ孔(図示略)を有している。
【0022】
また、図4に示すように、ソレノイド収納部100cの下方には、ペダルレバー80が存在する。ペダルレバー80は、ペダル8が押下されると、ペダル8の動きに連動して動作し、アクション機構6に動作を伝達する。
以下、ソレノイド収納部100a、100b、100cを総称してソレノイド収納部100という。続いて、鍵駆動装置10の構成について説明する。
【0023】
[鍵駆動装置10の構成]
図5は、本発明の実施形態における鍵駆動装置10の構成を説明する図である。図5(a)は、鍵駆動装置10を上方から見た図である。図5(b)は、鍵駆動装置10を自動演奏ピアノ1の正面(図4と同じ方向)から見た図である。鍵駆動装置10は、基板収納部200aの上面側(ソレノイド収納部100側)に、棚板3と接続して固定するときのネジ止めに用いられる開口部400を有する。また、ソレノイド収納部100の上面側には、鍵20に駆動力を与えるソレノイド101(図6、図7参照)におけるプランジャヘッド110の先端部分が突出している。この例においては、全ての鍵20に対応して88個のソレノイド101が存在するため、88個のプランジャヘッド110が突出している。ソレノイド収納部100は、これらのソレノイド101を鍵20の並ぶ方向に沿って2列に並んだ状態で収納するように、一方向に延びた形状になっている。
【0024】
鍵駆動装置10は、上述したように、連結部300により連結された駆動ユニット10−L、10−Rを有している。駆動ユニット10−Lと駆動ユニット10−Uとは、連結部300を取り外すことにより、境界部Pにおいて分離可能に構成されている。
【0025】
図6は、本発明の実施形態における鍵駆動装置10が駆動ユニット毎に分離した場合の構成を説明する図である。図6(a)は、鍵駆動装置10を上方から見た図である。図6(b)は、鍵駆動装置10を自動演奏ピアノ1の正面(図4と同じ方向)から見た図である。図6に示すように、鍵駆動装置10は、連結部300を取り外すと、境界部Pにおいて駆動ユニット10−Lと駆動ユニット10−Uとに分離可能になっている。この境界部Pは、プランジャヘッド110(ソレノイド101)の配置に応じて、上方から見た場合に段差のある形状になっている。
【0026】
図7は、図6に示す矢視VII−VII方向から見た鍵駆動装置10の断面図である。ソレノイド収納部100bには、上述したように、ソレノイド101が収納されている。ソレノイド101は、プランジャヘッド110が先端に取り付けられたプランジャ120とコイル130とを有している。プランジャ120は、コイル130に供給される電流に応じて上方に移動し、プランジャヘッド110を介して鍵20の後端部を突き上げる。なお、ソレノイド収納部100cについても、ソレノイド収納部100aと内部構成は同様である。
【0027】
図8は、図6に示す矢視VIII−VIII方向から見た鍵駆動装置10の断面図である。ソレノイド収納部100aには、ソレノイド収納部100bと同様にソレノイド101が収納されている。基板収納部200aには、制御回路が構成された基板210が収納されている。制御回路は、コントローラ11から出力される制御信号に基づいて、ソレノイド101のコイル130に電流を供給してプランジャ120を動作させる回路である。この基板210には、ソレノイド収納部100aに収納されているソレノイド101のコイル130に電流を供給するだけでなく、ソレノイド収納部100b、100cに収納されているソレノイド101のコイル130に対しても電流を供給するように制御回路が構成されている。なお、各図の記載においては、基板210からソレノイド101のコイル130へ電流を供給する配線についての記載を省略している。また、この例においては、基板210は、1層で構成されているが、複数の層で構成されていてもよい。
【0028】
[鍵駆動装置10の取り付け例]
自動演奏ピアノ1は、鍵駆動装置10をグランドピアノに取り付けて構成されたものである。一般的なグランドピアノへの鍵駆動装置10の取り付け例について、図9、図10、図11を用いて説明する。
【0029】
図9は、本発明の実施形態における鍵駆動装置10をグランドピアノに取り付ける例を説明する図である。図9は、グランドピアノの正面方向から見た場合の棚板3と脚桁4との位置関係を示している。一度も鍵駆動装置10を取り付けていないグランドピアノにおける棚板3は、空間30が存在しない状態である。そのため、作業者は、棚板3に対して上下方向に貫通するように削るなどの加工をして、図9に示すように、空間30を形成する。この空間30は、上述したように略直方体形状であり、鍵駆動装置10のソレノイド収納部100が挿入可能な大きさになっている。また、空間30の両端側は、鍵盤2の両端の鍵20よりも外側まで広がるように構成されている。なお、棚板3に構成される空間30のうち脚桁4の上方部分(空間30b)については、脚桁4を一旦取り外してから加工してもよい。また、この状態においては、ペダルレバー80は取り外されている。
このように棚板3に空間30が構成された状態において、作業者は、鍵駆動装置10を取り付ける。
【0030】
図10は、本発明の実施形態における鍵駆動装置10をグランドピアノに取り付ける例を説明する図9に続く図である。図10に示すように、鍵駆動装置10は、駆動ユニット10−L、10−Uに分割された状態で、空間30に挿入される。このとき、駆動ユニット10−L、10−Uは、水平面から傾けられた状態で、ソレノイド収納部100bが空間30bに挿入される。駆動ユニット10−Lにおけるソレノイド収納部100の長手方向の全長と、駆動ユニット10−Uにおけるソレノイド収納部100の長手方向の全長との合計の長さは、空間30aの長手方向の長さ(両側にある脚桁4の間の長さ)よりも長い。したがって、作業者は、駆動ユニット10−L、10−Uを傾けた状態にして挿入する必要がある。なお、図10に示していないが、棚板3(空間30)の上方には、図3に示すように、鍵20が存在するため、駆動ユニット10−L、10−Uは、プランジャヘッド110が鍵20に接触しない程度に傾ける量を調整しながら挿入される。
【0031】
図11は、本発明の実施形態における鍵駆動装置10をグランドピアノに取り付ける例を説明する図10に続く図である。図11は、図10に示す状態から、駆動ユニット10−L、10−Uを水平な状態に移動させ、基板収納部200aの上面における開口部400が存在する部分が棚板3の下面3Dと接触した状態を示している。この状態においては、駆動ユニット10−Lと駆動ユニット10−Uとは、互いに分離した状態になっている。
【0032】
この状態において、作業者は、駆動ユニット10−Lと駆動ユニット10−Uとを近づけて接触させる前に、駆動ユニット10−Uにおける基板210と駆動ユニット10−Lにおける基板210とを電気的に接続させる。この例においては、駆動ユニット10−L、10−Uは、それぞれ、隣接する駆動ユニットにおける基板210と自身の基板210とを電気的に接続するためのケーブル(不図示)を有している。このケーブルについては、ソレノイド収納部100cの内部を通過して、境界部Pからソレノイド収納部100の外側に取り出せる構成となっている。それぞれのケーブルの先端に設けられたコネクタにより互いに接続されると、駆動ユニット10−Uにおける基板210と駆動ユニット10−Lにおける基板210とが電気的に接続されるようになっている。
【0033】
図12は、図11に示す鍵駆動装置10を下方から見た場合の鍵駆動装置10と棚板3との関係を示す図である。図12は、鍵駆動装置10を下方から見た場合であるから、棚板3の部分は、脚桁4が存在する部分を除いて、棚板3の下面3Dが見えている。作業者は、この状態から、駆動ユニット10−Lと駆動ユニット10−Uとを近づけて境界部Pを接触させ、連結部300が取り付ける。このとき、境界部Pは、段差のある形状になっているため、接続時の水平方向の位置合わせが容易になる。また、駆動ユニット10−L、10−Uの基板収納部200aの上面と棚板の下面3Dとが接触し、また、ソレノイド収納部100cの下部に取り付けられる連結部300により、さらに水平方向の位置合わせが容易になるとともに、上下方向の位置合わせも容易になる。また、連結部300は、隣接する駆動ユニットを接続するケーブルおよびコネクタのカバーとしても用いることができる。なお、駆動ユニット10−Uにおける基板210と駆動ユニット10−Lにおける基板210とを電気的に接続させるときに、上述のコネクタを用いる接続ではなく、取り付けられた連結部300を介して電気的に接続されるようにしてもよい。
【0034】
また、鍵駆動装置10をネジ15(図2参照)を開口部400に通し、棚板3にネジ止めすることにより、鍵駆動装置10が棚板3に固定される。固定されるときには、プランジャヘッド110の先端と鍵20との距離との調整がなされてもよい。
【0035】
また、このネジ止めは、駆動ユニット10−Lと駆動ユニット10−Uとが離れた状態において仮に行っておいてもよい。これは、駆動ユニット10−Lと駆動ユニット10−Uとを接触させるときに移動させる方向(鍵20が並ぶ方向)に開口部400の開口形状が延びているため、移動前にネジ止めをしても、駆動ユニット10−Lと駆動ユニット10−Uとを接触させる方向に移動させることができるためである。なお、ネジ止めせずに、駆動ユニット10−L、10−Uの空間30bに挿入された部分が脚桁4に支持された状態にして、駆動ユニット10−Lと駆動ユニット10−Uとを連結部300により連結して、その後に棚板3に固定するようにしてもよい。
【0036】
その後、ソレノイド収納部100cの下部にペダルレバー80を取り付けた状態が、上述した図4に示す状態となる。その他、コントローラ11などをグランドピアノに取り付けることにより、本発明の自動演奏ピアノ1を構成することができる。
なお、自動演奏ピアノ1から鍵駆動装置10を取り外してメンテナンスなどを行う場合には、作業者は、この手順を逆に行い、メンテナンス済みの鍵駆動装置10を上述の手順で再び取り付ければよい。棚板3に空間30を構成した後であれば、脚桁4を棚板3から取り外さなくても、鍵駆動装置10の着脱が可能である。
【0037】
このように、鍵駆動装置10は、空間30bに位置する部分(ソレノイド収納部100b)においては、基板収納部200aに相当する構成を用いないようにして、棚板3より下方に突出しない構成であり、また、複数の駆動ユニットに分割された構成である。そのため、グランドピアノに鍵駆動装置10を取り付けるときには、複数の駆動ユニットに分割された状態で、ソレノイド収納部100bを空間30bに挿入した後に、駆動ユニットを接続すればよい。したがって、脚桁4の上方に鍵20が位置するグランドピアノに鍵駆動装置10を取り付ける場合であっても、脚桁4を切断除去せず、脚桁4の形状を維持したままにすることができる。さらに、ソレノイド収納部100cの下方にも基板収納部200aに相当する構成を用いないようにすることにより、ペダルレバー80の取り付け位置が大きく下方に変更されなくてもよい。すなわち、ペダルレバー80は、鍵駆動装置10を取り付ける前と後で取り付け位置が変更されないようにすることができ、変更させる必要があったとしても、わずかな移動に留めることができる。
【0038】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
[変形例1]
上述した実施形態においては、ペダルレバー80の位置を大きく下方に移動させないようにするために、駆動ユニット10−L、10−Uにおけるソレノイド収納部100cの下部には、基板収納部200aに相当する構成を有していなかったが、ペダルレバー80の位置を下方に移動させてもよい場合には、ソレノイド収納部100cの下部に基板収納部200aに相当する構成が存在してもよい。
【0039】
図13は、本発明の変形例1における鍵駆動装置10Aの構成を説明する図である。図13(a)は、鍵駆動装置10Aを上方から見た図である。図13(b)は、鍵駆動装置10Aを自動演奏ピアノの正面(図4と同じ方向)から見た図である。この例における鍵駆動装置10Aは、実施形態におけるソレノイド収納部100cが存在せず、駆動ユニット10A−L、10A−Uともに、下部に基板収納部200Aaが存在するソレノイド収納部100Aaが境界部Pまで広がっている。この場合には、連結部300は、例えば、基板収納部200Aaの下部に取り付けるようにすればよい。なお、ソレノイド収納部100Abについては、実施形態におけるソレノイド収納部100bと同じ構成である。
【0040】
[変形例2]
上述した実施形態においては、基板収納部200aは、棚板3の下方に突出する構成になっていたが、ほとんど突出しないように構成されていてもよい。この場合の構成の例について、図14、図15を用いて説明する。
【0041】
図14は、本発明の変形例2における鍵駆動装置10Bの構成を説明する図である。図14(a)は、鍵駆動装置10Bを上方から見た図である。図14(b)は、鍵駆動装置10Bを自動演奏ピアノの正面(図4と同じ方向)から見た図である。図15は、図14に示す矢視XV−XV方向から見た鍵駆動装置10Bの断面図である。
図14、図15に示すように、駆動ユニット10B−L、10B−Uにおける基板収納部200Baは、実施形態における基板収納部200aのようにソレノイド収納部100aの下部に構成されるのではなく、側面から水平方向に、特に長尺状の駆動ユニット10B−L、10B−Uの短手方向(水平短手方向)に延びるように構成されている。なお、基板収納部200Baは、収納するものの大きさにより、上下方向および水平短手方向の双方に延びるように構成されてもよい。
棚板3と接する開口部400は、基板収納部200Baの下部に設けられている。したがって、鍵駆動装置10Bにおけるソレノイド収納部100Ba、100Bb、100Bcだけでなく、基板収納部200Baについても、棚板3の空間30に挿入されることになる。なお、棚板3の空間30は、実施形態と同様に直方体形状で容積を大きくした形状に構成されてもよいし、ソレノイド収納部100Ba、100Bb、100Bcおよび基板収納部200Baの外形に沿った形状に構成されてもよい。
【0042】
[変形例3]
上述した実施形態においては、自動演奏ピアノ1は、グランドピアノに鍵駆動装置10が取り付けられた構成であったが、グランドピアノ以外の鍵盤楽器、例えば、チェンバロなどのアコースティック楽器、電子ピアノなどに取り付けられていてもよい。すなわち、鍵盤2の一部が脚桁4の上方に位置する構成を有する鍵盤楽器であれば、どのような鍵盤楽器に対しても、鍵駆動装置10を取り付けることにより、自動演奏ピアノとして構成することができる。なお、鍵盤2の一部とは、必ずしも両端側に限らず、一端側であってもよいし、最高音または最低音の鍵20を必ずしも含むものではない。例えば、最低音から3から6番目までの鍵20の下方に脚桁4が位置するような場合も含む。
【0043】
[変形例4]
上述した実施形態においては、鍵駆動装置10がグランドピアノに取り付けられた状態では、脚桁4とソレノイド収納部100bとは接していなかったが、ソレノイド収納部100bの下部の一部と脚桁4の上面とが接する構成として、脚桁4が駆動ユニット10−L、10−Uを支持するようにしてもよい。この場合には、ソレノイド収納部100bの下部を脚桁4の上面に接する程度まで大きくした構成とすればよい。このようにすると、駆動ユニット10−L、10−Uを固定するときの棚板3にかかる負荷の一部を、脚桁4に分散させることもできる。この場合には、駆動ユニット10−L、10−Uは、棚板3にネジ止めされず、ビス止めなど、位置止めが可能な程度の固定方法であってもよい。
すなわち、上述した実施形態の構成においては、駆動ユニット10−L、10−Uが棚板3にネジ15によって止められ、棚板3は、重量および反力を受けるとともに前後左右の位置決めをした状態で駆動ユニット10−L、10−Uを支持していた。一方、本変形例においては、脚桁4が駆動ユニット10−L、10−Uの重量および反力を受けるため、駆動ユニット10−L、10−Uは、棚板3へのビス止めなどにより前後左右の位置決めがなされて、グランドピアノに取り付けられてもよい。
【0044】
[変形例5]
上述した実施形態においては、鍵駆動装置10は、2台の駆動ユニットに分割されていたが、3台以上に分割されていてもよい。その場合であっても、鍵駆動装置10の両端側に位置し、脚桁4の上方に位置する鍵20を駆動させるソレノイド101を有する駆動ユニットについては、実施形態における下部に基板収納部200aを有しないソレノイド収納部100bが存在する構成とすればよい。一方、両端側に位置しない駆動ユニットについては、その両端が隣接する他の駆動ユニットと連結可能に構成されていればよく、基板収納部200aに相当する構成が、駆動ユニット両端側に存在していてもよい。さらに、前記連結は、駆動ユニット外に設けた制御ユニットを介してそれぞれが連結されるようにしてもよい。
【0045】
[変形例6]
上述した実施形態においては、連結部300により隣接する駆動ユニット10−Lと駆動ユニット10−Uとを連結していたが、棚板3への駆動ユニット10−Lおよび駆動ユニット10−Uの固定により、互いに再分離しないようになっていれば、必ずしも連結部300を有していなくてもよい。また、連結部300に相当する構成が駆動ユニット10−L、10−Uの少なくとも一方に設けられていてもよい。
一方、連結部300が存在する場合に、駆動ユニット10−L、10−Uを連結する以外の機能を有するようにしてもよい。例えば、連結部300の位置の近傍には、ペダルレバー80が位置することになるため、連結部300は、ペダルレバー80を支持する部品などが取り付け可能な構成となっていてもよいし、その部品が取り付けられた構成であってもよい。また、連結部300は、コントローラ11に相当する構成を有していてもよい。
【0046】
[変形例7]
上述した実施形態において、基板収納部200aと同様に、ソレノイド収納部100には、冷却用の空気が通過可能な孔などが設けられていてもよい。
【0047】
[変形例8]
上述した実施形態において、空間30の周囲における棚板3については、金属板などの補強部品を設けるようにして、強度を向上させるようにしてもよい。
【0048】
[変形例9]
上述した実施形態においては、駆動ユニット10−L、10−Uの境界部Pの近傍にペダルレバー80が位置するように構成されていたが、境界部Pが必ずしもペダルレバー80の近傍に位置しなくてもよい。例えば、駆動ユニット10−Lが駆動ユニット10−Uよりも長く、駆動ユニット10−Lの下方にペダルレバー80が位置する場合には、ペダルレバー80近傍において基板収納部200aがソレノイド収納部100の下部に位置しないように構成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…自動演奏ピアノ、2…鍵盤、3…棚板、4…脚桁、5…脚部、6…アクション機構、7…バランスピン、8…ペダル、10,10A,10B…鍵駆動装置、10−L,10A−L,10B−L,10−U,10A−U,10B−U…駆動ユニット、11…コントローラ、15…ネジ、20…鍵、30,30a,30b…空間、80…ペダルレバー、100,100a,100Aa,100Ba,100b,100Ab,100Bb,100c,100Bc…ソレノイド収納部、101…ソレノイド、110…プランジャヘッド、120…プランジャ、130…コイル、200a,200Aa,200Ba…基板収納部、210…基板、300…連結部、400…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚桁の上方に棚板を介して鍵盤の一部が位置するように構成された鍵盤楽器に取り付けられ、入力される制御信号に応じて前記鍵盤を構成する複数の鍵を駆動する鍵駆動装置であって、
前記鍵を各々駆動する複数のアクチュエータ、および前記複数のアクチュエータの動作を前記制御信号に応じて制御する制御回路を有し、前記棚板の一部を除去して構成される上下方向に貫通した除去空間に挿入されて前記鍵盤楽器に取り付けられる駆動ユニットを複数具備し、
前記鍵盤楽器に複数の前記駆動ユニットが取り付けられる場合に、前記脚桁の上方に位置する鍵を駆動対象に含む前記駆動ユニットは、
前記除去空間のうち前記脚桁と前記鍵盤との間の挿入空間に挿入され、前記アクチュエータが配置された第1部分と、
上下方向および水平短手方向の少なくともいずれか一方の長さが前記第1部分よりも長く構成され、前記挿入空間には挿入されず、前記アクチュエータおよび前記制御回路が配置された第2部分と
を有する
ことを特徴とする鍵駆動装置。
【請求項2】
前記駆動ユニットは長尺状であり、
前記第1部分は前記駆動ユニットの長手方向の一端部に位置し、前記第1部分が脚桁に支持された状態で前記駆動ユニットの他端側で他の前記駆動ユニットと連結される
ことを特徴とする請求項1に記載の鍵駆動装置。
【請求項3】
前記第2部分は、前記駆動ユニットが鍵盤楽器に取り付けられた場合に、前記棚板の下方に突出する部分を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵駆動装置。
【請求項4】
前記駆動ユニットは、前記鍵盤楽器に複数の前記駆動ユニットが取り付けられた場合に、他の前記駆動ユニットと隣接する側に上下方向の長さが前記第2の部分より短く、前記アクチュエータが配置された第3部分を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の鍵駆動装置。
【請求項5】
前記鍵盤楽器に複数の前記駆動ユニットが取り付けられた場合に、前記第1の部分の少なくとも一部は、前記脚桁に接触している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の鍵駆動装置。
【請求項6】
脚桁と、
前記脚桁の上方に一部が位置する鍵盤と、
一部に空間が構成され、前記鍵盤の下方かつ前記脚桁の上方に設けられた棚板と、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の鍵駆動装置と
を具備し、
前記鍵駆動装置の前記駆動ユニットが挿入される前記除去空間は、前記棚板に構成された前記空間である
ことを特徴とする鍵盤楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−145773(P2012−145773A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4082(P2011−4082)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】