説明

鑑賞植物の栽培容器、鑑賞植物の苗木及び鑑賞植物の冬季生育方法

【課題】 鑑賞植物の栽培容器において、栽培容器の内外に連通する貫通穴を生育段階や使用環境に合わせて自由に開放又は閉鎖できるようにして、良好な苗木の生育と簡便な植え替えとを可能にする。
【解決手段】
本発明の鑑賞植物Pの栽培容器1は、有底筒状に形成されると共に側面に貫通穴8が形成された容器本体2と、貫通穴8の開口を閉鎖可能に形成されたカバー部材3とを備え、カバー部材3を容器本体2に対して相対移動させることで、貫通穴8の開口がカバー部材3によって閉鎖された閉鎖状態から、貫通穴8が外側に向かって開口して容器本体2の内部に栄養分を取り込むことが可能となる開放状態に切り替わることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鑑賞植物の栽培容器、及びこの栽培容器を用いて生育された鑑賞植物の苗木、並びにこの栽培容器を用いて鑑賞植物を冬季に生育させる鑑賞植物の冬季生育方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポインセチア、シクラメン、クリスマスベゴニアなどの赤色やピンク色が鮮やかな鑑賞植物(以降、単に植物という)は、クリスマス前後の冬季に屋内で鑑賞することが多い。これらの植物は、観葉植物の中でも比較的耐寒性に優れるものではあるが、冬季に屋外で生育させることは困難であり、屋内で生育できるように鉢植えで12月の初旬頃から販売等されている。
ところが、これらの植物の観賞方法は屋内に限られたものではない。例えば、ポインセチアを例に挙げれば、秋季(以下の説明において、夜間の最低温度が10〜15℃以上の期間、例えば秋口(9月)〜晩秋(11月)を示す)であれば、屋外の環境でも十分に生育させることができる。そして、冬季(以下の説明において、夜間の最低温度が10℃未満の期間、例えば12月〜2月を示す)になる前に屋外の土壌から屋内用の植木鉢などに植え替えれば、その鮮やかな花弁を長期間に亘って鑑賞することができる。
【0003】
しかし、一旦屋外の植木鉢や露地に植え付けられた植物を植え替えることは面倒なことであるし、植え替え後に根付きが悪く植物が枯死してしまう虞もある。このような問題を解決するためには、植木鉢や露地に容器ごと植え付けられる栽培容器に植え付けた状態で苗木を販売する方法が考えられる。
例えば、特許文献1には側面に貫通穴が形成された栽培容器が開示されている。特許文献1の栽培容器では、貫通穴を通じて水分や栄養分の流通が可能となっており、貫通穴を介して根を伸ばすことができるので、苗木を屋外の植木鉢や露地に容器ごと植え付けることができる。そして、植え替えの際には容器ごと植物を抜き取り、屋内用の植木鉢にそのまま植え付けできる。このようにすれば、植え替えに手間がかからず、また根付きの問題を起こす虞も少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−283525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、苗木の販売の際には栽培容器は店頭などに陳列され、光が射し込む明るい環境に置かれることが多い。また、播種から育苗までは光を潤沢に与えなければ植物を十分に生育させることは困難であり、当然栽培容器も明るい環境に置かれることになる。
ところが、側面に形成された貫通穴から光が土壌に直接当たると、嫌光性植物では発芽や根の生育が阻害される虞があり、苗木を良好に生育できなくなる可能性が高い。苗木の生育には遮光性の容器を使用し、販売に貫通穴のある栽培容器を用いることもできるが、遮光性の容器から貫通穴のある容器への植え替えに手間がかかり、苗木の販売コストを高くする虞があるので好ましくない。このような点から、特許文献1の栽培容器に植え付けた状態で苗木を販売することは困難であった。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、生育段階や使用環境に合わせて貫通孔を自由に開放又は閉鎖して、鑑賞植物の良好な苗木の生育と簡便な植え替えとが可能となる鑑賞植物の栽培容器を提供することを目的とする。
また、本発明は、種播から販売までの間に使用されてきた容器をそのまま用いて、容器ごと簡単に植え付けや植え替えができる鑑賞植物の苗木を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、植え付けや植え替えに適した穴あき容器を用いて嫌光性の鑑賞植物の苗木を良好に生育させることができる鑑賞植物の冬季生育方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の鑑賞植物の栽培容器は、有底筒状に形成されると共に側面に貫通穴が形成された容器本体と、当該貫通穴の開口を閉鎖可能に形成されたカバー部材とを備え、前記カバー部材を前記容器本体に対して相対移動させることで、前記貫通穴の開口がカバー部材によって閉鎖された閉鎖状態から、前記貫通穴が外側に向かって開口して容器本体の内部に栄養分を取り込むことが可能となる開放状態に切り替わることを特徴とするものである。
【0008】
このようにすれば、貫通穴の開口を閉鎖した状態で鑑賞植物を種播から苗木の生育・販売までを行い、その後貫通穴の開口を開放した状態で植え付けや植え替えができる。その結果、生育段階や使用環境に合わせて貫通孔を自由に開放又は閉鎖して、鑑賞植物の良好な生育と簡便な植え替えとが可能となる。
上述の鑑賞植物の栽培容器としては、例えば前記カバー部材が前記容器本体に外嵌可能な有底筒状に形成されており、前記容器本体に外嵌されたカバー部材を当該容器本体から外すことで、前記貫通穴が閉鎖状態から開放状態に切り替わる構成を採用することができる。
【0009】
このようにすれば、カバー部材を容器本体から離脱させるだけで貫通穴が開放し、またカバー部材を容器本体に装着するだけで貫通穴が閉鎖するので、貫通孔を容易に開放又は閉鎖することができる。
また、鑑賞植物の栽培容器としては、例えば前記カバー部材が前記貫通穴の開口を被覆可能な板状に形成されると共に前記容器本体の外周面にスライド自在に取り付けられており、前記カバー部材を前記貫通穴の開口を被覆する位置から離間方向に向かってスライドさせることで、前記貫通穴が閉鎖状態から開放状態に切り替わる構成を採用することができる。また、例えば前記カバー部材が前記貫通穴の開口を被覆可能な板状に形成されると共に前記容器本体の外周面にヒンジ部を介して揺動自在に取り付けられており、前記カバー部材を前記貫通穴の開口を被覆する位置から離間方向に向かって揺動させることで、前記貫通穴が閉鎖状態から開放状態に切り替わる構成を採用することもできる。
【0010】
このようにすれば、カバー部材を容器本体に対してスライド又は揺動させるだけで貫通穴を開放又は閉鎖することができる。また、カバー部材は、容器本体における貫通穴がある部分だけを覆えるサイズに形成されれば良く、カバー部材に必要な材料コストを低減させることも可能となる。
なお、前記容器本体とカバー部材とは、連結帯を介して互いに連結されており、同じ合成樹脂を用いて一体成形されていても良い。このようにすれば、合成樹脂を用いた一体成形法で容器本体とカバー部材とを一度に成形することができ、安価な製造コストで栽培容器を製造できるからである。
【0011】
また、容器本体とカバー部材とが一体成形される場合には、前記カバー部材が前記貫通穴の開口を被覆可能な板状に形成されると共に前記容器本体の外周面に切り離し部を介して前記貫通穴の開口を被覆するように取り付けられており、前記カバー部材を前記切り離し部の所から前記容器本体に対して切り離すことで、前記貫通穴が閉鎖状態から開放状態に切り替わる構成とされていても良い。このようにすれば、カバー部材を付けたまま誤って植え付けや植え替えが行われることを予防でき、利便性に優れた栽培容器を提供することができる。
【0012】
なお、前記鑑賞植物は、ポインセチア、シクラメン、またはクリスマスベゴニアのいずれかであるのが好ましい。このようなポインセチア、シクラメン、またはクリスマスベゴニアなどの鑑賞植物は、いずれも秋季には屋外で生育しつつ鑑賞することができ、またクリスマス前後の冬季には屋内で鑑賞することができるため、植え付けや植え替えが簡単な上述の栽培容器を用いるのが特に好ましい。
また、本発明の鑑賞植物の苗木は、上述の栽培容器を用いて、前記カバー部材を閉鎖状態としたまま前記容器本体内で播種から育苗まで生育されたものである。このようにすれば、種播から販売までの間に使用されてきた容器をそのまま用いて容器ごと簡単に植え付けや植え替えができ、秋季からクリスマス前後の冬季までの長期間に亘って屋内外を問わず鑑賞することができる。
【0013】
さらに、本発明の鑑賞植物の冬季生育方法は、上述の栽培容器を用いて、前記カバー部材が閉鎖状態にある前記容器本体内で、播種から育苗まで生育し、前記カバー部材を閉鎖状態から開放状態に切り替え、前記容器本体に植え付けたまま屋外環境の土壌に植え替え、前記屋外環境が植物の生育に適さない冬季になった後は、前記容器本体に植え付けたまま屋内用の植木鉢に植え替えて室内環境で生育することを特徴とするものである。
このようにすれば、植え付けや植え替えに適した上述の栽培容器(穴あき容器)を用いて嫌光性の鑑賞植物の苗木を冬季に良好に生育させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鑑賞植物の栽培容器によれば、生育段階や使用環境に合わせて貫通孔を自由に開放又は閉鎖して、鑑賞植物の良好な苗木の生育と簡便な植え替えとが可能となる。また、本発明の鑑賞植物の苗木によれば、種播から販売までの間に使用されてきた容器をそのまま用いて、容器ごと簡単に植え付けや植え替えができる。さらに、本発明の鑑賞植物の冬季生育方法によれば、植え付けや植え替えに適した穴あき容器を用いて嫌光性の鑑賞植物の苗木を良好に生育させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態の栽培容器及び苗木の斜視図である。
【図2】第1実施形態の栽培容器におけるカバー部材の開閉を示す説明図である。
【図3】第1実施形態の栽培容器の使用方法を示す説明図である。
【図4】第2実施形態の栽培容器及び苗木の斜視図である。
【図5】第2実施形態の栽培容器におけるカバー部材の開閉を示す説明図である。
【図6】第3実施形態の栽培容器及び苗木の斜視図である。
【図7】第3実施形態の栽培容器におけるカバー部材の開閉を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る鑑賞植物Pの栽培容器1及びその苗木Sの実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。図1に示されるように、鑑賞植物Pの苗木Sは栽培容器1に収容された土壌Mに植えられている。第1実施形態の苗木Sは、鑑賞植物Pの一例としてポインセチアを植えており、既に種子から生育されて苗木Sとなったものである。この苗木Sが植えられた栽培容器1は、有底円筒状に形成された容器本体2と、容器本体2の外周面に設けられたカバー部材3とを備えている。
なお、以下の説明において、図1の紙面の上下を栽培容器1を説明する際の上下とする。
【0017】
鑑賞植物Pとしては、植え替えが必要な植物であればどのような植物でも良いが、特に上述したポインセチア、シクラメン、クリスマスベゴニアなどのようにクリスマス前後の寒期に鑑賞に使われる植物、あるいはユッカやオーガスタなどのように耐寒性を備えた観葉植物が挙げられる。
図1に示されるように、容器本体2は、上方に向かって末広がり状な有底の略円筒状に形成されており、内部に土壌Mを収容して植物を生育できるようになっている。容器本体2の外周面には、容器本体2を摘んで持ち上げやすいようにつまみ部4が上端側に形成されている。また、容器本体2の底面には、複数(本実施形態では4箇所)の脚部5と水分を抜くための水抜き穴(図示略)とが形成されており、水抜き穴から容器外に流れ出た水を脚部5により形成された容器本体2の底面と床面との間に形成された隙間から簡単に排水できるようになっている。
【0018】
容器本体2の外周面には、カバー取付面6が形成されている。このカバー取付面6は、周方向の一部の外周壁が他の外周壁より薄肉に形成されたような部分であり、上下方向の中途側から下端にかけて上下方向に沿って形成されている。カバー取付面6は、このカバー取付面6以外の容器本体2の外周面から上側と左右側との段差を介して連続するように形成されている。これらの段差のうち左右側の段差にはカバー部材3を案内する案内溝7が上下方向に亘って形成されており、この案内溝7に沿ってカバー部材3を上下方向にスライドできるようになっている。また、カバー取付面6の上端側には貫通穴8が複数形成されている。
【0019】
貫通穴8は、カバー取付面6に上下方向に沿って長穴状に形成されており、本実施形態では6箇所設けられている。貫通穴8は、容器本体2の内外を貫通しており、水分、栄養分などに加えて根の通過を許容できるようになっている。
カバー部材3は、カバー取付面6に対応した左右方向(周方向)の幅を備えた板部材であり、その両端が左右側の段差に形成された案内溝7に嵌り込んでおり、これらの案内溝7に沿って上下方向にスライド自在となっている。
カバー部材3は、その上下方向の幅はカバー取付面6の半分程度に形成されており、カバー取付面6の上端側に形成された複数の貫通穴8のすべてを覆うことができる面積に形成されている。
【0020】
それゆえ、図2(a)及び図2(b)に示されるように、カバー部材3を案内溝7に沿って上側にスライドさせたときには、カバー取付面6の上側に設けられたすべての貫通穴8がカバー部材3に覆われることになる。そして、複数の貫通穴8がカバー部材3によりすべてが閉鎖状態になり、植物の生育を阻害する光が容器内に射し込まなくなり、鑑賞植物Pを種播から苗木Sの生育までを行ったり販売の際に店頭に陳列したりしても生育が阻害されることはない。
また、図2(c)及び図2(d)に示されるように、カバー部材3を下側にスライドさせると、貫通穴8が設けられているカバー取付面6の上側からカバー部材3が下側に移動し、カバー部材3により閉鎖されていた複数の貫通穴8のすべてが開放(開口)状態になる。その結果、貫通穴8を通じて栄養分、水分等の流通や通気が可能となり、また鑑賞植物Pが貫通穴8から容器外に根を伸ばすことも可能となる。それゆえ、鑑賞植物Pを容器本体2に収容したまま屋外の植木鉢や露地に植え付けても、この貫通穴8から栄養分や水分が容器内に供給され、鑑賞植物Pを秋季に屋外で良好に生育することができる。そして、冬季になった際には、植え付けられていた屋外の植木鉢や露地から容器本体2ごと鑑賞植物Pを抜き取り、屋内用の植木鉢に植え替えれば良く、植え替えに手間がかかることもない。
【0021】
次に、栽培容器1の使用方法、言い替えれば鑑賞植物Pの冬季生育方法について説明する。
図3(a)に示されるように、カバー部材3を上側にスライドさせて貫通穴8が閉鎖状態とされた栽培容器1に土壌Mを入れ、この土壌Mに鑑賞植物Pの種子を蒔き、貫通穴8を閉鎖状態としたまま種播から育苗までを行う。このように貫通穴8を閉鎖状態としておけば、植物の生育を阻害する光が容器内に射し込むことがなくなり、発芽や根の生育が阻害される虞はない。
【0022】
図3(b)に示されるように、上述のようにして育苗した鑑賞植物Pの苗木Sは、貫通穴8を閉鎖状態としたまま店頭などで陳列して販売される。このように貫通穴8を閉鎖状態としておけば、苗木Sの根に光が当たって苗木Sが弱ったり枯死したりすることがない。
図3(c)に示されるように、このようにして生育された苗木Sを屋外の植木鉢や露地に植え付ける際には、カバー部材3を下側にスライドさせて貫通穴8の開口を開放状態としたうえで植え付けを行う。このようにすれば、貫通穴8を通じて容器外から栄養分や水分が補給され、また根も伸ばすことができるので、苗木Sの良好な生育が可能となり、鑑賞植物Pを庭植え状態で秋季に鑑賞することが可能となる。
【0023】
図3(d)に示されるように、冬季になって植え替えを行う際には、つまみ部4を摘んで容器本体2を持ち上げながら屋外の土壌Mから引き抜く。そして、屋内用の植木鉢に容器本体2を植え替えれば、植え替えを手間をかけずに行うことができ、植え替えの際に鑑賞植物Pがダメージを負うこともない。また、カバー部材3を上側にスライドさせて貫通穴8を閉鎖すれば、屋内用の植木鉢を新たに用意しなくても屋内で鑑賞植物Pを継続して生育でき、鉢植え状態で冬季に鑑賞することが可能となる。
図3(a)〜図3(b)のようにして生育された鑑賞植物Pの苗木Sは、種播から販売までの間に使用されてきた栽培容器1をそのまま用いてこの栽培容器1ごと簡単に植え付けや植え替えができ、秋季からクリスマス前後の冬季までの長期間に亘って屋内外を問わず鑑賞することができる。
【0024】
また、植え付けや植え替えに便利な穴あき容器を用いると、鑑賞植物Pの苗木S、特に嫌光性の鑑賞植物Pの苗木Sは穴から容器内に射し込む光のために十分に生育させられないことが多く、少なくとも穴あき容器と穴なし容器との2種類の栽培容器が必要となる。しかし、本発明の栽培容器1を用いて上述のように生育すれば、このような嫌光性の鑑賞植物Pの苗木Sであっても良好に生育させることができ、栽培容器1を替えることなく植え付けや植え替えも行える。
次に第2実施形態の栽培容器1について説明する。
【0025】
図4及び図5に示されるように、第2実施形態の栽培容器1が第1実施形態と異なっている点は、カバー部材3が容器本体2の外周面にヒンジ部9を介して揺動自在に取り付けられており、カバー部材3を貫通穴8の開口を被覆する位置から離間方向に向かって揺動させることで、貫通穴8が閉鎖状態から開放状態に切り替わる構成とされている点である。
第2実施形態の容器本体2の外周面には、カバー部材3が面状態で接するカバー取付面6が形成されている。このカバー取付面6は、容器本体2の上端から下端にかけて平坦に形成されており、その上端にはヒンジ部9を介してカバー部材3が揺動自在に取り付けられている。カバー取付面6の上端側には上下方向に沿って長穴状の貫通穴8が複数形成されている。第2実施形態の容器本体2は、言い替えれば容器本体2とカバー部材3とをヒンジ部9(連結帯)を介して互いに折り曲げ自在に連結したものということもできる。
【0026】
カバー部材3は、カバー取付面6に面で接触できるように平坦な板状に形成されている。カバー部材3は、カバー取付面6の上端側に設けられた複数の貫通穴8のすべてに蓋をできるようにカバー取付面6の上端側を被覆できる程度の大きさに形成されている。カバー部材3のカバー取付面側に面した表面には貫通穴8に嵌入可能な突起部10が形成されており、突起部10を貫通穴8に嵌入させることで貫通穴8を水密に閉じられるようになっている。
貫通穴8は、カバー取付面6に上下方向に沿って長穴状に形成されており、本実施形態では6箇所設けられている。貫通穴8は、容器本体2の内外を貫通しており、水分、栄養分、光などに加えて根の通過を許容できるようになっている。
【0027】
第2実施形態の栽培容器1を使用する際には、図5(a)に示されるように、カバー部材3をヒンジ部9を境に容器本体2の内側から外側に向かって揺動し、カバー部材3がカバー取付面6に重なるように折り返せば、カバー取付面6の貫通穴8にカバー部材3の突起部10が嵌入し、貫通穴8を閉鎖状態にすることができる。また、図5(b)に示されるように、カバー部材3をヒンジ部9を境に容器本体2の外側から内側に向かって揺動させれば、カバー部材3がカバー取付面6から離れて、カバー取付面6の貫通穴8からカバー部材3の突起部10が抜け出て、貫通穴8を開放状態にすることができる。
【0028】
上述のように、容器本体2に対してカバー部材3がヒンジ部9(連結帯)を介して連結されていれば、容器本体2とカバー部材3とを同じ合成樹脂を用いて一体成形法で一度に成形することができ、安価な製造コストで栽培容器1を製造できる。
また、第2実施形態のカバー部材3は容器本体2に連結されているので、カバー部材3が容器本体2から外れる心配がなく、カバー部材3の紛失を防止することもできる。
なお、第2実施形態における栽培容器1のその他の構成及び使用方法については、第1実施形態と同じである。
【0029】
次に第3実施形態の栽培容器1について説明する。
図6及び図7に示されるように、第3実施形態の栽培容器1が第1実施形態と異なっている点は、カバー部材3が容器本体2の外周面に薄肉の切り離し部11(連結帯)を介して一体に取り付けられており、カバー部材3を切り離し部11の所から切り離すことで、カバー部材3に覆われていた貫通穴8が閉鎖状態から開放状態に切り替わる点である。
第3実施形態の容器本体2の外周面には、カバー部材3が取り付けられたカバー取付面6が形成されている。このカバー取付面6は、容器本体2の外周面に平坦面状に形成されており、容器本体2の上下方向の中途側から下端に向けて形成されている。カバー取付面6は、正面視で下側に向かって逆Uの字状に形成されており、その中央側にはカバー取付面6の外縁に沿って切り離し部11が線状に形成されている。そして、カバー取付面6における切り離し部11の内側にはカバー部材3が設けられている。
【0030】
切り離し部11は、カバー取付面6の周壁に対して内側から溝状に切り込みを入れて、切り離し部11以外の周壁に比べて薄肉に形成された部分であり、一定以上の力で切断できるように形成されている。
カバー部材3は、上側が平坦な板状に形成されると共に、下側が湾曲した曲面状に形成されている。このカバー部材3の下端は、容器本体2の底部から一定の距離をあけるように配備されており、容器本体2の底部から切り離せるようになっている。カバー部材3の下端に隣接した容器本体2の底部には、カバー部材3の下端に指先を引っ掛けやすいように上方に向かって凹んだ凹部12が形成されている。
【0031】
それゆえ、例えば指先を凹部12に射し込み、指先をカバー部材3の下端に引っかけるようにして、カバー部材3に容器本体2に対して上方に揺動させる方向に力を加えると、カバー部材3から切り離し部11に力が加わって切り離し部11が切断され、カバー部材3を容器本体2から引き離すことができる。
第3実施形態の栽培容器1を使用する際には、図7(a)〜図7(b)に示されるように、例えば指先を凹部12に射し込み、指先をカバー部材3の下端に引っかけるようにして、カバー部材3に容器本体2に対して上方に揺動させる方向に力を加える。そうすると、カバー部材3から切り離し部11に力が加わって切り離し部11が切断され、カバー部材3を容器本体2から引き離すことができ、貫通穴が閉鎖状態から開放状態になる。
【0032】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
上記実施形態では、容器本体2に取り付けられたカバー部材3が容器本体2に対してスライドしたり、揺動したり、または切り離したりすることで、貫通穴8が閉鎖状態から開放状態に切り替わる栽培容器1を例に挙げて、本発明の栽培容器1を説明した。しかし、カバー部材3は容器本体2に取り付けられていなくても良い。例えば、カバー部材3を容器本体2より大きなサイズの相似形状に形成し、貫通穴8が外周面に形成された容器本体2の外側からこのカバー部材3を被せることができるように構成しても良い。このようなカバー部材3であれば、カバー部材3を容器本体2に対して外側から着脱するだけで貫通穴8を開放状態にしたり閉鎖状態にしたりすることができるし、既存の培養ポットを有効に利用して本発明の栽培容器1を得ることもできる。
【0033】
上記第1実施形態では、カバー部材3が容器本体2に対して上下方向に移動して、貫通穴8が開放状態から閉鎖状態に切り替わる栽培容器1を例示して、本発明の栽培容器1を説明した。しかし、容器本体2に対するカバー部材3の移動方向は上下方向だけに限定されない。例えば、カバー部材3を容器本体2の外周面に沿って周方向にスライドするように構成することもできる。
上記第2実施形態では、カバー部材3が容器本体2に対してヒンジ部9を介して連結されると共にヒンジ部9を中心に揺動することで貫通穴8が開放状態から閉鎖状態に切り替わる栽培容器1を例示して、本発明の栽培容器1を説明した。しかし、カバー部材3と容器本体2とは連結されていなくても良い。例えば、カバー部材3側または容器本体2側の一方に設けられたヒンジ部9を他方側に係脱自在に係合させるように構成しても良い。このようにすれば、カバー部材3と容器本体2とを別の材料で個別に形成することができ、カバー部材3または容器本体2を特殊な材料で形成する際に便利である。
【0034】
上記第1実施形態では、カバー部材3が容器本体2に対して別部材として形成された栽培容器1を例示して、本発明の栽培容器1を説明した。しかし、例えばカバー部材3と容器本体2とを連結帯で連結すると共に同一の合成樹脂で形成すれば、1組の金型を用いるだけでカバー部材3と容器本体2とを一度に射出成形でき、製造の手間やコストを大幅に低減することが可能となるからである。
【符号の説明】
【0035】
1 栽培容器
2 容器本体
3 カバー部材
4 つまみ部
5 脚部
6 カバー取付面
7 案内溝
8 貫通穴
9 ヒンジ部
10 突起部
11 切り離し部
12 凹部
M 土壌
P 鑑賞植物
S 苗木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状に形成されると共に側面に貫通穴が形成された容器本体と、当該貫通穴の開口を閉鎖可能に形成されたカバー部材とを備え、
前記カバー部材を前記容器本体に対して相対移動させることで、前記貫通穴の開口がカバー部材によって閉鎖された閉鎖状態から、前記貫通穴が外側に向かって開口して容器本体の内部に栄養分を取り込むことが可能となる開放状態に切り替わることを特徴とする鑑賞植物の栽培容器。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記容器本体に外嵌可能な有底筒状に形成されており、
前記容器本体に外嵌されたカバー部材を当該容器本体から外すことで、前記貫通穴が閉鎖状態から開放状態に切り替わる構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の鑑賞植物の栽培容器。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記貫通穴の開口を被覆可能な板状に形成されると共に、前記容器本体の外周面にスライド自在に取り付けられており、
前記カバー部材を前記貫通穴の開口を被覆する位置から離間方向に向かってスライドさせることで、前記貫通穴が閉鎖状態から開放状態に切り替わる構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の鑑賞植物の栽培容器。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記貫通穴の開口を被覆可能な板状に形成されると共に、前記容器本体の外周面にヒンジ部を介して揺動自在に取り付けられており、
前記カバー部材を前記貫通穴の開口を被覆する位置から離間方向に向かって揺動させることで、前記貫通穴が閉鎖状態から開放状態に切り替わる構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の鑑賞植物の栽培容器。
【請求項5】
前記容器本体とカバー部材とは、連結帯を介して互いに連結されており、同じ合成樹脂を用いて一体成形されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鑑賞植物の栽培容器。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記貫通穴の開口を被覆可能な板状に形成されると共に、前記容器本体の外周面に切り離し部を介して前記貫通穴の開口を被覆するように取り付けられており、
前記カバー部材を前記切り離し部の所から前記容器本体に対して切り離すことで、前記貫通穴が閉鎖状態から開放状態に切り替わる構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の鑑賞植物の栽培容器。
【請求項7】
前記鑑賞植物は、ポインセチア、シクラメン、またはクリスマスベゴニアのいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の鑑賞植物の栽培容器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の栽培容器を用いて、
前記カバー部材を閉鎖状態としたまま前記容器本体内で播種から育苗まで生育された鑑賞植物の苗木。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の栽培容器を用いて、
前記カバー部材が閉鎖状態にある前記容器本体内で、播種から育苗まで生育し、
前記カバー部材を閉鎖状態から開放状態に切り替え、前記容器本体に植え付けたまま屋外環境の土壌に植え替え、
前記屋外環境が植物の生育に適さない冬季になった後は、前記容器本体に植え付けたまま屋内用の植木鉢に植え替えて室内環境で生育することを特徴とする鑑賞植物の冬季生育方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−161941(P2010−161941A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4652(P2009−4652)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(501031437)有限会社緑のマーケット (8)
【Fターム(参考)】