説明

長いRNA分子の反復送達を可能にする自然免疫抑制

外因性核酸のトランスフェクションに対する細胞の自然免疫応答を抑制する方法が開示される。外因性核酸を細胞に反復送達することにより外因性核酸によりコードされるタンパク質の発現を増加させる方法、および規定されるタンパク質をコードする1つもしくは複数の核酸を反復送達することにより細胞を分化、分化転換または脱分化させることにより細胞の表現型を変更する方法がさらに開示される。in vitro転写RNA(「ivT−RNA」)を細胞に反復送達して、ivT−RNA転写物によりコードされるタンパク質の発現の高い持続されたレベルを達成することによる延長一過性トランスフェクションのための方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞により発現されるタンパク質またはRNA分子をコードする核酸の細胞トランスフェクションに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト胚性幹(hES)細胞を、広範囲の疾患および損傷に罹患する患者への移植のための組織特異的細胞の制限されない供給源として用いる可能性が、急速に現実味を帯びてきている。多くの衰弱性疾患は、単独の型の組織特異的細胞の喪失を特徴とし(パーキンソン病、ドパミン作動性ニューロン;多発性硬化症、オリゴデンドロサイト;1型糖尿病、インスリン生成β細胞)、いくつかの対照ありの臨床試験を含むいくつかの最近の研究は、細胞型特異的疾患の影響の多くを、欠損している細胞型または関連する細胞型の細胞を、体の患部領域に移植することにより種々の程度で反転できることを示している1〜8(非特許文献1〜非特許文献8)。最終分化した多くの細胞型は培養で容易に増殖しないので、多能性細胞は、まず、拡張させ、次いで、in vitroで分化させて、移植に必要な多量のこれらの組織特異的細胞を生成させなければならない。この理由から、無限に増殖し、任意の細胞型に分化できるヒトES細胞の培養物の確立は、新しい細胞置換療法の開発において主要な事項であった。
【0003】
しかし、hES細胞を、スクリーニングおよび再生医療の両方の用途のための組織特異的細胞の純粋な集団にin vitro分化させるためのプロトコールを開発することは困難であることが示されている9〜14。利用可能なプロトコールは、望ましくない細胞型を含む培養物を生成し、多くの組織特異的細胞型の効率的な精製のために必要なマーカーがまだ発見されていない。幹細胞を任意の所望の細胞型に高い効率で分化させ、分化細胞を所望の細胞型に分化転換または脱分化もさせるための新しい技術が必要とされている。
【0004】
細胞型は、エピゲノム、一連のクロマチン修飾、および細胞の遺伝子のそれぞれが発現される程度を確立し、有糸分裂中に娘細胞に伝達され得るその他の因子により決定される15〜18、27〜30。集合的に細胞型を決定するエピジェネティックなしるしは永続的でなく19〜21、生殖細胞形成および早期の発生中の両方22〜26、ならびに成体の生涯にわたって書き込まれ、消去される。これらの幹細胞ニッチおよび胚性幹細胞において生じる分化は、細胞内シグナル伝達のカスケードを開始する細胞外の合図により制御され、これらは最終的に、いくつかの遺伝子を選択的にサイレンシングさせながら他のものを活性化するエピジェネティックな移行をもたらす。
【0005】
細胞が培養において分化するにつれて受ける特異的な移行の効率を増加させる化合物について小分子のライブラリーをスクリーニングするよりもむしろ、標的細胞表現型を維持する公知の因子の発現を一過的に増加させることにより細胞の遺伝子発現プログラムを直接的に変化させる方法が必要とされる。RNAトランスフェクションは、ivT−RNAにコードされるタンパク質の発現を一過的に増加できるが、細胞を遺伝子的に改変することなく、この初期の発現の高いレベルを数時間超または複数回の細胞分裂中ずっと維持する技術は存在しない。
【0006】
よって、ivT−RNAによりコードされるタンパク質の発現を、同期化または非同期化細胞を用いて数日間、多くの場合複数の世代にわたって、すなわち1回より多い細胞周期にわたって持続させて、細胞のタンパク質の発現を変更させることができ、このことが次いで、遺伝子発現プログラムおよび最終的な細胞表現型の調節を可能にする技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Thomson, J.A.ら、Embryonic stem cell lines derived from human blastocysts. Science(1998)282, 1145−1147
【非特許文献2】Freed, C.R.ら、Transplantation of embryonic dopamine neurons for severe Parkinson’s disease. N Engl J Med(2001)344, 710−719
【非特許文献3】Olanow, C.W.ら、A double−blind controlled trial of bilateral fetal nigral transplantation in Parkinson’s disease. Ann Neurol(2003)54, 403−414
【非特許文献4】Keirstead, H.S.ら、Human embryonic stem cell−derived oligodendrocyte progenitor cell transplants remyelinate and restore locomotion after spinal cord injury. J Neurosci(2005)25, 4694−4705
【非特許文献5】Cummings, B.J.ら、Human neural stem cells differentiate and promote locomotor recovery in spinal cord−injured mice. Proc Natl Acad Sci U S A(2005)102, 14069−14074
【非特許文献6】Iwanami, A.ら、Transplantation of human neural stem cells for spinal cord injury in primates. J Neurosci Res(2005)80, 182−190
【非特許文献7】Shapiro, A.M.ら、Islet transplantation in seven patients with type 1 diabetes mellitus using a glucocorticoid−free immunosuppressive regimen. N Engl J Med(2000)343, 230−238
【非特許文献8】Ryan, E.A.ら、Clinical outcomes and insulin secretion after islet transplantation with the Edmonton protocol. Diabetes(2001)50, 710−719
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明を、添付の図面の図において例として、そして限定としてではなく説明する。これらの図面においては、以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のHUSK ivT−RNA実施形態を示す図である。
【図2】図2Aは、本発明のHUSK ivT−RNAの細胞内安定性を示す図である。MRC−5線維芽細胞に、2μgのHUSK転写物AもしくはFまたは全長転写物Aをトランスフェクトし、それぞれの転写産物の細胞内濃度を、トランスフェクションの2、4、12および24時間後に測定した。GAPDHを、ローディング対照として用いた。指数回帰を、HUSK転写物(実線)および全長転写物(点線)について示す。誤差バーは、反復試料のプールされた標準偏差を示す。図2Bは、IFNB1、EIF2AK2、STAT2およびTLR3を標的にするsiRNA カクテル(本文および方法を参照されたい)を予備トランスフェクトし、次いで、時間0にて0.5μgのLin28 ivT−RNAおよびさらなるsiRNAを同時トランスフェクトしたMRC−5線維芽細胞を示す図である。細胞が接着した後に、200μg/mLのRNアーゼAを培養培地に加えて、細胞外RNAを分解した。細胞を、記載する時間に溶解し、Lin28 ivT−RNAの量を、外因性転写物に特異的なプライマーを用いるRT−PCRにより測定した。指数回帰(黒色の線、R=0.96)を示す。GAPDHを内因性対照として用いた。誤差バーは、反復試料の標準偏差を示す。
【図3】図3Aは、HUSK ivT−RNAのトランスフェクションの後の翻訳タンパク質EAQの発現の時間発展の例を示す図である。転写物A、BまたはFを、MRC−5線維芽細胞にエレクトロポレーションにより送達し、全細胞可溶化液を、記載する時間に調製した。ウェスタンブロットを行って、コードされるタンパク質の発現の時間発展を測定した(方法を参照されたい)。コードされるタンパク質を通常発現する細胞の試料(H9ヒト胚性幹細胞)を、比較のために用いた。β−アクチン(ACTB)をローディング対照として用いた。図3Bは、より詳細なタンパク質発現時間経過の例を示し、本発明のHUSK ivT−RNAのトランスフェクション後のタンパク質発現の用量応答性を示すデータを含む図である。MRC−5線維芽細胞に、記載するHUSK ivT−RNAをトランスフェクトし、全細胞可溶化液を、記載する時間に調製した。タンパク質は、ウェスタンブロッティングにより検出した。
【図4】図4は、異なるRNA転写物により惹起される自然免疫応答を比較する棒グラフである。A:MRC−5線維芽細胞に、2μgの本発明のHUSK転写物A、BもしくはFまたは全長転写物Aをトランスフェクトし、IFNB1発現のレベルを24時間後に測定した。GAPDHをローディング対照として用いた。誤差バーは、反復試料のプールされた標準偏差を示す。B:トランスフェクトした細胞を数日間監視し、集密度の推定を、記載する時間に行った。データ点は、明確化のためにつないでいる。
【図5】図5は、記載するように200nMのTP53 siRNAをトランスフェクトしたMRC−5線維芽細胞に対する、本発明のHUSK ivT−RNA HUSK ivT−RNAのトランスフェクションの細胞分裂停止効果を示す図である。2日後に、細胞をトリプシン処理により懸濁し、記載するようにして3.5μgのHUSK ivT−RNAまたは3.5μgのHUSK ivT−RNAと200nMのTP53 siRNAを用いてエレクトロポレーションした。第0日にsiRNAを受けた細胞だけが、第2日にさらなるsiRNAを受けた。データ点は、明確化のためにつないでいる。
【図6】図6は、定量RT−PCRによりHUSK ivT−RNAのトランスフェクションの24時間後に測定し、模擬トランスフェクトした細胞と比較した、本発明のHUSK ivT−RNAのトランスフェクション後の自然免疫関連遺伝子発現パターンを示す棒グラフである。GAPDHをローディング対照として用いた。誤差バーは、反復試料のプールされた標準偏差を示す。
【図7】図7は、インターフェロン−βノックダウン後の遺伝子発現を示す一連の棒グラフを示す図である。A:MRC−5線維芽細胞に、IFNB1 siRNAを予備トランスフェクトし、次いで、本発明のHUSK ivT−RNAとsiRNAとを2日後に同時トランスフェクトした。遺伝子発現を、2回目のトランスフェクションの24時間後に測定した。B:MRC−5線維芽細胞に、本発明のHUSK ivT−RNAとIFNB1 siRNAとを同時トランスフェクトし、TLR3、RARRES3およびIFNB1の発現を24時間後に測定した。誤差バーは、反復試料のプールされた標準偏差を示す。
【図8】図8は、インターフェロン−βノックダウン後の細胞増殖を示す図である。MRC−5線維芽細胞に、記載するsiRNAを第0日にトランスフェクトし、次いで、2.5μgの本発明のHUSK ivT−RNAとsiRNAとを第3日に同時トランスフェクトした。A、B:IFNB1およびTP53の発現を、2回目のトランスフェクションの24時間後に測定した。GAPDHをローディング対照として用いた。誤差バーは、反復試料のプールされた標準偏差を示す。C:細胞のそれぞれの皿の集密度を、記載する時間に推定した。図5に記載する実験と同様に、HUSK ivT−RNAを受けなかった細胞(菱形)は、2回目のエレクトロポレーションの後に迅速に回復したが、HUSK ivT−RNAを受けた細胞(四角)は、およそ48時間遅延した増殖を示した。これもまた前と同様に、TP53ノックダウン(三角、丸)は、回復時間を約半分に短くした。しかし、IFNB1ノックダウン(×、丸)は、増殖に対してほとんどまたは全く影響しなかった。データ点は、明確化のためにつないでいる。
【図9】図9は、(1)の場合の自然免疫応答に関与する遺伝子のノックダウンの影響を示す図である。MRC−5線維芽細胞に、記載するsiRNA(エレクトロポレーションにより200nM)を予備トランスフェクトし、次いで、siRNAと2.5μgの本発明のHUSK ivT−RNAとの両方を48時間後に同時トランスフェクトした。遺伝子発現を、2回目のトランスフェクションの24時間後に測定したが、模擬トランスフェクトした細胞と比べて示す。A:TLR3、STAT2、VISA、TBK1およびIRF3の遺伝子発現を、各遺伝子をノックダウンした後に測定した。B:TLR3、TICAM1およびTICAM2の遺伝子発現を、3つ全ての遺伝子の組み合わせたノックダウンの後に測定した。C:記載するsiRNAをトランスフェクトした細胞のIFNB1発現。D:トランスフェクトした細胞の集密度を、記載する時間に推定した。STAT2以外の遺伝子を標的にするsiRNAをトランスフェクトした細胞の増殖は、siRNAなし対照と区別できなかった。A〜Cの誤差バーは、反復試料のプールされた標準偏差を示す。Dのデータ点は、明確化のためにつないでいる。
【図10】図10は、(2)の場合の自然免疫応答に関与する遺伝子のノックダウンの影響を示す図である。A、B:前の図と同様にMRC−5線維芽細胞にトランスフェクトし、遺伝子発現を測定した。C:トランスフェクトした細胞の集密度を、記載する時間に推定した。EIF2AK2以外の遺伝子を標的にするsiRNAをトランスフェクトした細胞の増殖は、siRNAなし対照と区別できなかった。この実験と前の実験との間のトランスフェクション後の集密度の差(第0日および第2+日)は、エレクトロポレーション後の異なる播種密度の結果である。A〜Bの誤差バーは、反復試料のプールされた標準偏差を示す。Cのデータ点は、明確化のためにつないでいる。
【図11−1】図11Aは、自然免疫関連遺伝子の組み合わせたノックダウン後の遺伝子発現を示す図である。ここでは、MRC−5線維芽細胞に、siRNA混合物1(400nM TP53、200nM STAT2および200nM EIF2AK2)またはsiRNA混合物2(400nM TP53、200nM STAT2、200nM EIF2AK2、00nM IFNB1、200nM TLR3および200nM CDKN1A)を第0日にトランスフェクトし、次いで、0.5μgの本発明のHUSK転写物BまたはFおよびさらなるsiRNAを48後にトランスフェクトした。遺伝子発現を、2回目のトランスフェクションの24時間後に測定した。GAPDHをローディング対照として用いた。誤差バーは、反復試料のプールされた標準偏差を示す。図11Bは、0.5μgの本発明のLin28をコードするHUSK ivT−RNAを48時間間隔で2回トランスフェクトしたMRC−5線維芽細胞の応答を示す図である。RNAをトランスフェクトした細胞(灰色の丸)および模擬トランスフェクトした細胞(黒色の四角)の試料をトリプシン処理し、記載する時間に計数した。データ点および誤差バーは、2回の独立した実験の平均および標準誤差を表す。データ点は、明確化のためにつないでいる。
【図11−2】図11Cは、(11B)と同様にしてトランスフェクトしたが、第2日に模擬トランスフェクトし、第4日に0.5μgのLin28またはMyoD1をコードするHUSK ivT−RNAのいずれかをトランスフェクトしたMRC−5線維芽細胞およびCCD−1109Sk線維芽細胞を示す図である。遺伝子発現を、2回目のトランスフェクションの24時間後にRT−PCRにより測定した(第5日)。値は、模擬トランスフェクトした細胞と比べて示す。図11Dは、(11B)と同様にしてトランスフェクトしたが、IFNB1、EIFAK2、STAT2およびTLR3を標的にするsiRNAのカクテルを第2日に、そして0.5μgのLin28またはMyoD1をコードするHUSK ivT−RNAのいずれかとさらなるsiRNAとを第4日にトランスフェクトした細胞を示す図である。遺伝子発現を、2回目のトランスフェクションの24時間後に測定した(第5日)。値は、siRNAを受けなかった細胞と比べて示す。GAPDHを内因性対照として用いた。誤差バーは、反復試料の標準偏差を示す。
【図12】図12は、本発明のHUSK ivT−RNAの反復トランスフェクション後の細胞増殖の量を示す図である。A:MRC−5線維芽細胞に、siRNA混合物1(400nM TP53、200nM STAT2および200nM EIF2AK2)またはsiRNA混合物2(400nM TP53、200nM STAT2、200nM EIF2AK2、200nM IFNB1、200nM TLR3および200nM CDKN1A)を第0日にトランスフェクトし、0.5μgのHUSK転写物Bを第2、3および4日にトランスフェクトした。さらなるsiRNAを第2日および第4日に含めた。それぞれのトランスフェクション後に、細胞のおよそ10〜15%をタンパク質およびRNA分析のために保存し、残りを10cm皿に播種した。それぞれの皿の集密度を、記載する時間に推定した。B:細胞に、Aと同様にしてトランスフェクトしたが、0.5μgのHUSK転写物Fをトランスフェクトし、第3日にトランスフェクションを行わなかった。データ点は、明確化のためにつないでいる。
【図13−1】図13Aは、IFNB1、EIF2AK2、STAT2およびTLR3を標的にするsiRNAのカクテルを予備トランスフェクトした後に、0.5μgのLin28をコードするHUSK ivT−RNAとさらなるsiRNAとを48時間間隔で5回トランスフェクトしたMRC−5線維芽細胞の応答を示す図である。細胞を、記載する時間に溶解し、各試料中のLin28タンパク質の量を、ウェスタンブロットにより評価した。ACTBをローディング対照として用いた。図13Bは、トランスフェクションの18時間後に測定した、模擬トランスフェクトした細胞におけるレベルと比べた成熟let7a miRNAのレベルを示す図である。平滑化した線は、1回(実線)および5回(点線)トランスフェクトした細胞に相当するデータ点をつないで描かれる。U47 RNAを内因性対照として用いた。誤差バーは、反復試料の標準誤差を示す。
【図13−2】図13Cは、let7a miRNAを標的にするsiRNAと、記載する本発明のHUSK ivT−RNAとをトランスフェクトした細胞によるHMGA2発現の量を示す図である。HMGA2発現をRT−PCRにより測定したが、これを、RNAを受けなかった細胞と比べて示す。図13Dは、Sox2(黒色の四角)、Lin28(黒色の丸)またはSox2とLin28との両方(中抜きの三角)をコードするHUSK ivT−RNAを24時間間隔で3回トランスフェクトした細胞によるHMGA2発現の量を示す図である。HMGA2発現を、RT−PCRにより記載する時間に測定したが、これを、模擬トランスフェクトした細胞と比べて示す。
【図13−3】図13Eは、MyoD1をコードするHUSK ivT−RNAをトランスフェクトした、5−アザ−dCを用いてまたは用いずに培養したCCD−1109Sk成体皮膚線維芽細胞を示す図である。CDH15およびDESの発現を、RT−PCRにより記載する時間に測定した。図13Fは、(13E)と同様にしてトランスフェクトした試料から回収した全細胞可溶化液中でウェスタンブロットにより測定したMyoD1タンパク質のレベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
「自然免疫応答」および「自然免疫応答」経路により、プラスミド、ベクター、ivT−RNA転写物としての形態を含む任意の形態のDNA、RNAもしくはDNA/RNAキメラを含む外因性核酸のトランスフェクション、または細胞から取り出され、同じ細胞もしくは異なる細胞に再トランスフェクトし、かつ2’−O−メチル化ヌクレオチドのような1つもしくは複数の改変を含有する核酸を含む内因性核酸に対して細胞により開始される免疫応答を意味する。
【0011】
「自然免疫応答経路のタンパク質」または「免疫抑制タンパク質」により、タンパク質TP53、TLR3、TLR7、RARRES3、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNK、IFNB1、IL6、TICAM1、TICAM2、MAVS、STAT1、STAT2、EIF2AK2、IRF3、TBK1、CDKN1A、CDKN2A、RNASEL、IFNAR1、IFNAR2、OAS1、OAS2、OAS3、OASL、RB1、ISG15、ISG20、IFIT1、IFIT2、IFIT3およびIFIT5、またはそれらの生物学的に活性な断片、類似体もしくは改変体を意味する。免疫抑制タンパク質は、さらに、I型インターフェロンの発現を増加するか、もしくはその発現が細胞をI型インターフェロンに曝露することにより増加する任意のタンパク質またはペプチドをさらに含む。タンパク質の完全な名称は、TP53=腫瘍タンパク質p53;TLR3=toll様受容体3;TLR7=toll様受容体7;RARRES3=レチノイン酸受容体応答因子(タザロテン誘導)3;IFNA1=インターフェロン、アルファ1;IFNA2=インターフェロン、アルファ2;IFNA4=インターフェロン、アルファ4;IFNA5=インターフェロン、アルファ5;IFNA6=インターフェロン、アルファ6;IFNA7=インターフェロン、アルファ7;IFNA8=インターフェロン、アルファ8;IFNA10=インターフェロン、アルファ10;IFNA13=インターフェロン、アルファ13;IFNA14=インターフェロン、アルファ14;IFNA16=インターフェロン、アルファ16;IFNA17=インターフェロン、アルファ17;IFNA21=インターフェロン、アルファ21;IFNK=インターフェロン、カッパ;IFNB1=インターフェロン、ベータ1、線維芽細胞;IL6=インターロイキン6(インターフェロン、ベータ2);TICAM1 toll様受容体アダプター分子1;TICAM2=toll様受容体アダプター分子2;MAVS=ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質;STAT1=シグナル伝達性転写因子1、91kDa;STAT2=シグナル伝達性転写因子2、113kDa;EIF2AK2=真核生物翻訳開始因子2−アルファキナーゼ2;IRF3=インターフェロン調節因子3;TBK1=TANK結合キナーゼ1;CDKN1A=サイクリン依存性キナーゼ阻害因子1A(p21、Cip1);CDKN2A=サイクリン依存性キナーゼ阻害因子2A(メラノーマ、p16、CDK4を阻害する);RNASEL=リボヌクレアーゼL(2’,5’−オリゴイソアデニル酸合成酵素依存性);IFNAR1=インターフェロン(アルファ、ベータおよびオメガ)受容体1;IFNAR2=インターフェロン(アルファ、ベータおよびオメガ)受容体2;OAS1=2’,5’−オリゴアデニル酸合成酵素1、40/46kDa;OAS2=2’,5’−オリゴアデニル酸合成酵素2、69/71kDa;OAS3=2’,5’−オリゴアデニル酸合成酵素3、100kDa;OASL=2’,5’−オリゴアデニル酸合成酵素様;RB1=網膜芽細胞腫1;ISG15=ISG15ユビキチン様修飾因子;ISG20=インターフェロン活性化エキソヌクレアーゼ遺伝子20kDa;IFIT1=テトラトリコペプチドリピートを有するインターフェロン誘導タンパク質1;IFIT2=テトラトリコペプチドリピートを有するインターフェロン誘導タンパク質2;IFIT3=テトラトリコペプチドリピートを有するインターフェロン誘導タンパク質3;ならびにIFIT5=テトラトリコペプチドリピートを有するインターフェロン誘導タンパク質5である。
【0012】
「コザック」により、mRNAがタンパク質に翻訳される効率を決定する役割を有するmRNA分子の開始コドンの周囲の配列を意味する46
【0013】
「強力なコザック」により、(1)最大の翻訳効率を生じることが公知のコザックコンセンサス配列RCC(AUG)G(括弧内は開始コドン、−3位の「R」はプリン(AまたはG)を表す)、および(2)一般式RXY(AUG)(式中、Rはプリン(AまたはG)であり、YはCまたはGのいずれかであり、Xは任意の塩基である)を有するその他の強力なコザック配列も意味する。ノンコーディングヌクレオチドのうち、−3位および−1位の塩基は、強いコンセンサスおよび効率的翻訳のために最も重要である。
【0014】
対象のタンパク質をコードする「in vitro転写RNA」または「ivT−RNA」により、細胞に導入でき、in vitroもしくはin vivoのいずれかでタンパク質に翻訳できる任意のivT−RNA構築物または転写物を意味する。構築物および転写物は、HUSK ivT−RNAに言及する場合は本明細書において交換可能に用いられる。
【0015】
「HUSK ivT−RNA」により、コードされるタンパク質の発現の高いレベルを達成するようにカスタマイズされたivT−RNA転写物または構築物を意味する。新しいivT−RNA転写物の名称は、それらの5’端にHBB UTRを有するのでBB−TRで安定化され(tabilized)、かつコザック(ozak)コンセンサス配列を含む(HUSK)本明細書で用いる転写物に由来する。HUSK ivT−RNAの実施形態の例は、模式図における以下のものを含み、ここで、「CDS」はタンパク質コード配列を意味し、「安定UTR」は、高度安定mRNA分子、好ましくはアルファもしくはベータグロビンからの非翻訳領域を意味し、5’UTRは、強力なコザック配列の5’側の1つ目のUTRを意味し、3’UTRは、CDSの3’側の2つ目のUTRを意味し、「IRES」は、配列内リボソーム進入部位を意味し、「m7G」は、7グアノシンを意味し、「ポリ(A)」は、分子の3’端のポリアデノシンテイルを意味する。
5’ 安定5’UTR−強力なコザック−CDS 3’
5’ IRESを有する安定5’UTR−強力なコザック−CDS 3’
5’ 安定5’UTR−強力なコザック−−−(CDS)−安定3’UTR 3’
5’ 安定5’UTR−強力なコザック−−−(CDS)−安定3’UTR 3’ 。
【0016】
実施形態は、転写物の3’端にポリ(A)テイルをさらに含む上記のいずれか、および転写物の5’端にm7Gキャップをさらに含む上記のいずれか、および転写物の5’端にm7Gキャップと3’端にポリ(A)テイルとをともに有する上記のいずれかをさらに含む。転写物がm7Gキャップを有する場合、その後の2番目のヌクレオチドは、所望により、2’−O−メチル改変を有することができる。
【0017】
「安定UTR」により、高度安定mRNAからのUTR、好ましくはアルファまたはベータグロビンUTRを意味する。一般的に、UTRは、ivT−RNAによりコードされるタンパク質と比べて異種の供給源からである。しかし、安定5’UTRは、HUSK ivT−RNA中のコードされるタンパク質が例えばベータまたはアルファグロビンであるならば、天然に存在するものであり得る。
【0018】
「HUSK ivT−RNA鋳型」により、ivT−RNAを生成する構築物に作動可能に連結した強力な転写プロモーターを有するようにカスタマイズされ、その構築物が、安定5’UTRを強力なコザック配列につなぐ第1制限部位(例えば酵素NheIのためのもの)と、具体的な実施形態に応じて必要であればCDSを安定3’UTRにつなぐ第2制限部位(例えば酵素Anglのためのもの)とを有するDNA分子を意味する。HUSK ivT−RNA転写物は、HUSK ivT−RNA鋳型から転写される。
【0019】
「強いプロモーター」により、同じDNA鋳型上で同じ反応条件においてT7、T3、SP6プロモーターの活性の少なくとも約80%〜90%またはそれより多くを示すプロモーターを意味する。
【0020】
発明の要旨
本発明のあるいくつかの実施形態は、本明細書で定義される自然免疫応答経路中の1つまたは複数のタンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片もしくは類似体の発現を低減する作用物質(agent)の有効量を細胞に導入することにより、核酸のトランスフェクションに対する細胞の自然免疫応答を抑制するための方法を対象とする。ある実施形態において、作用物質は、siRNA、1つもしくは複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそれらの任意の組合せであり、細胞は、動物細胞、好ましくはヒト細胞である。あるいくつかの実施形態において、作用物質は、自然免疫応答経路中のタンパク質またはその生物学的に活性な断片と選択的に結合し、それによりその生物学的な活性を低減する抗体である。核酸を導入することは、エレクトロポレーション、脂質媒介トランスフェクション、衝撃トランスフェクション(ballistic transfection)、マグネトフェクション(magnetofection)、ペプチド媒介トランスフェクション、マイクロインジェクションまたはそれらの組合せを含む当技術分野において公知の任意の方法を用いて遂行できる。
【0021】
その他の実施形態は、a.)細胞の自然免疫応答を抑制し、b.)前記細胞に核酸を導入することにより細胞に核酸分子をトランスフェクトする方法を対象とする。好ましい実施形態において、核酸分子は、タンパク質もしくはその生物学的断片またはRNA分子をコードし、これは、1本鎖DNAもしくはRNA分子(好ましくはivT−RNA)、および2本鎖DNAもしくはRNA分子または1本鎖もしくは2本鎖DNA/RNAキメラを含む。ステップa.)およびb.)は、同時または連続的であり得、好ましい実施形態において、ステップa.)およびb.)は、2回以上反復される。好ましい実施形態において、細胞は、動物細胞、好ましくはヒトである。トランスフェクションは、in vitroまたはin vivoで遂行できる。別の好ましい実施形態において、核酸のトランスフェクションは、1つまたは複数のタンパク質の発現を引き起こし、これが次いで、幹細胞もしくは分化細胞の分化、分化転換または脱分化を含む細胞の所望の表現型変化を引き起こす。
【0022】
その他の実施形態は、自然免疫応答経路中の2つ以上のタンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片もしくは類似体をコードするmRNAあるいはDNA分子と特異的にハイブリダイズし、それにより前記2つ以上のタンパク質の発現を低減する、複数の異なるsiRNA、1つもしくは複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそれらの組合せを含む組成物を対象とする。好ましい組成物において、siRNAの混合物は、TP53、STAT2およびEIF2AK2をコードするmRNAもしくはDNA分子、またはTP53、STAT2、EIF2AK2およびIFNB1をコードするmRNAもしくはDNA分子と特異的にハイブリダイズするsiRNAの混合物と特異的にハイブリダイズする。その他の実施形態は、免疫抑制およびトランスフェクション法により生成される細胞を対象とする。
【0023】
あるいくつかのその他の実施形態は、対象のタンパク質をコードする種々の高度に安定で効率的に翻訳されるin vitro転写RNA転写物であって、その構築物が作動可能な組合せで(i)安定5’UTRと、(ii)タンパク質コード配列(CDS)に連結した強力なコザック配列とを有する転写物を対象とする。いくつかの実施形態において、転写物は、(iii)安定3’UTRをさらに含む。好ましいUTRは、ベータおよびアルファグロビンUTRである。転写物は、以下のエレメントの1つまたは複数をさらに含むことができる:転写物の3’端にポリ(A)テイル、転写物の5’端に7−メチルグアノシンキャップ、および配列内リボソーム進入部位。
【0024】
その他の実施形態は、ivT−RNAを作製するためのDNA鋳型と、使用者が、その第1鎖が作動可能な組合せで(i)安定5’UTRと、(ii)前記5’UTRをコザックコンセンサス配列につなぐことができる第1制限部位とを含むin vitro転写RNAを生成する構築物に作動可能に連結した強力な転写プロモーターを有する鋳型に対象のCDSを挿入することを可能にするキットとを対象とする。
【0025】
詳細な説明
本発明は、外因性核酸のトランスフェクションに対する細胞の自然免疫応答を抑制する方法、細胞への外因性核酸の反復送達により外因性核酸によりコードされるタンパク質の発現を増加する方法、および規定されたタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸を反復送達することによって細胞を分化、分化転換または脱分化させることにより細胞の表現型を変更する方法に部分的に関する。好ましい実施形態において、核酸は、in vitro転写RNA(「ivT−RNA」)であり、ivT−RNA転写物によりコードされるタンパク質(「コードされるタンパク質」)の発現の高く持続したレベルは、コードされるタンパク質の発現の所望のレベルを持続するために必要なivT−RNAを反復して細胞にトランスフェクトすることにより複数の細胞世代にわたって達成されかつ維持される。
【0026】
好ましい実施形態において、ivT−RNAにコードされるタンパク質の発現は、好ましくはトランスフェクションの前に、好ましくは本明細書で定義される自然免疫応答経路中の1つもしくは複数のタンパク質をコードするmRNAまたはDNA分子と特異的にハイブリダイズ可能なsiRNAおよび/あるいはアンチセンスオリゴヌクレオチドの量を細胞に導入し、それにより標的タンパク質の発現を低減することによって、細胞の自然免疫応答を抑制することによりさらに増加する。自然免疫応答経路中の1つもしくは複数のタンパク質の生物学的な活性を低減する抗体または小分子も、単独またはsiRNAもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドと組み合わせて用いることができる。好ましい実施形態において、自然免疫応答は、1回目のivT−RNAトランスフェクションの約24〜48時間前に抑制され、免疫応答抑制は、必要により、好ましくは少なくとも約48時間ごとに反復して、後続の回のivT−RNAトランスフェクション中にコードされるタンパク質の発現の高いレベルを持続する。
【0027】
その他の実施形態は、任意の対象のタンパク質をコードするようにカスタマイズできる、安定で効率的に翻訳されるivT−RNA転写物または構築物(以下、「HUSK ivT−RNA転写物」という)と、それらを作製するために用いられるDNA鋳型とを対象とする。HUSK ivT−RNA転写物の種々の実施形態が、定義に記載され、以下により詳細に記載される。好ましいHUSK ivT−RNAの例において、コードされるタンパク質の天然に存在する5’UTRは、ベータグロビン(「HBB」)またはアルファグロビンをコードするもののような高度安定mRNAに由来する5’UTR(以下、「安定5’UTR」)で置き換えられ、天然に存在するコザック配列は、「強力なコザック」コンセンサス配列、好ましくは(RCC(AUG))で置き換えられる。ivT−RNA転写物の名称は、それらの5’端にHBB UTRを有し、よって、BB−TRで安定化されており(tabilized)、かつ強力なコザック(ozak)コンセンサス配列を含む(HUSK)本明細書で用いる転写物に由来する。
【0028】
別の好ましい実施形態において、HUSK ivT−RNA転写物は、タンパク質コード配列(以下、「CDS」)の3’側に第2安定UTR(安定3’UTR)、3’端に翻訳を促進するためのポリ(A)テイル、5’端に7−メチルグアノシンキャップ、または安定5’UTR中に位置する配列内リボソーム進入部位(以下、「IRES」)も有する。IRESは、ivT−RNAへのリボソームの接着を促進して、翻訳効率を増加させる。さらにその他の実施形態は、使用者が、任意の核酸を挿入することにより鋳型およびそれらから転写されるHUSK ivT−RNAをカスタマイズすることを可能にするキットを対象とする。
【0029】
その他の実施形態は、細胞表現型に影響するかもしくはそれを制御することが公知の1つまたは複数のタンパク質をコードするHUSK ivT−RNAの反復送達による延長一過性トランスフェクションにより細胞の表現型を変更する方法を対象とする。例えば、所望の表現型を有する細胞に幹細胞を分化させること、または所望の表現型を有する細胞に分化細胞を分化転換させるかもしくは幹細胞もしくはその他の前駆細胞に脱分化させること。その他の実施形態は、規定されたタンパク質をコードするHUSK ivT−RNAをトランスフェクトした細胞、ならびにsiRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドの種々の組成物を対象とする。
【0030】
HUSK ivT−RNA設計
本発明は、コードされるタンパク質の発現の一貫して高く持続したレベルを延長された期間達成するように効率的に翻訳されるHUSK ivT−RNAとよばれる改良ivT−RNAを提供する。IvT−RNAトランスフェクションは、特に1つもしくは複数のタンパク質または特定の遺伝子の一過性過剰発現が所望される種々の細胞プロセスを研究するために広く用いられる32〜34。ivT−RNAを用いるヒト胚性幹細胞(hES)の高効率で高生存性のトランスフェクションが、最近、証明されている35。キャップ付加ポリアデニル化ivT−RNAの多量のin vitro合成のための技術が、エレクトロポレーションおよび脂質媒介トランスフェクションを含む種々の送達技術40〜45と同様に、最近、利用可能になっている36〜39
【0031】
ほとんどのmRNA分子の細胞内寿命は数時間だけであるが、mRNA分子の分解速度は、その非翻訳領域(UTR)に存在する配列エレメントにより強く影響される。ivT−RNA転写物のUTRを、より安定なmRNA分子のものに置き換えることにより、ivT−RNA転写物の細胞内安定性が増加し、よって、翻訳され得るタンパク質の量が増加することが示されている42。mRNA分子の安定性は、主に、その5’−および3’−UTRの配列により決定され、これらは、特定の因子と関連することにより分解を調節する47〜49。不安定なRNA分子の5’−または3’−UTRのいずれかを、より安定なmRNA分子からのUTRで置き換えることにより、その安定性が著しく増加し、両方のUTRを置き換えることにより、さらに安定性が増加することが示されている。
【0032】
mRNA分子の開始コドンの周囲の配列(「コザック配列」として公知)も、mRNAがタンパク質に翻訳される効率を決定することにおいて重要な役割を有することが示されている46。最大翻訳効率を生じる最強のコザックコンセンサス配列は、RCC(AUG)G(以下、「コザックコンセンサス配列」という)(括弧内は開始コドンであり、−3位の「R」は、プリン(AまたはG)を表す)である。より一般的には、配列RXY(AUG)(式中、Rはプリン(AまたはG)であり、YはCまたはGのいずれかであり、Xは任意の塩基である)が効率的、よって、本発明の目的について「強力なコザック配列」であると考えられる。ノンコーディングヌクレオチドのうち、−3位および−1位の塩基は、強いコンセンサスおよび効率的な翻訳のために最も重要である。理論と結び付けられることなく、開始コドンの周囲の配列に翻訳効率が依存することは、リボソームに相補的なmRNA配列のある部分が、開始コドン付近で翻訳複合体を休止させ、翻訳開始の可能性を増加させることができる翻訳モデルにより説明されている。
【0033】
本発明のあるいくつかの実施形態は、対象の任意のタンパク質をコードするようにカスタマイズできる安定で効率的に翻訳される改良ivT−RNA転写物(以下、「HUSK ivT−RNA転写物または構築物」という)と、それらを作製するために用いられるDNA鋳型とを対象とする。HUSK ivT−RNA転写物の種々の実施形態は、定義に記載される。HUSK ivT−RNAの最も単純な実施形態において、コードされるタンパク質の天然に存在するコザック配列を、強力なコザック配列、好ましくはコザックコンセンサス配列(RCC(AUG)で置き換え、天然に存在する5’UTRを、所望により配列内リボソーム進入部位(「IRES」)を含む「安定5’UTR」で置き換える。好ましい実施形態において、コードされるタンパク質の天然に存在する5’UTRと3’UTRとの両方の配列を、好ましくはベータグロビン(HBB)および/またはアルファグロビンからの安定UTRで置き換える。別の好ましい実施形態において、HUSK ivT−RNA転写物は、3’端にポリ(A)テイルも有して、翻訳を促進する。ある例の実施形態を、以下に記載する。
【0034】
IRESを有するかまたは有さない安定5’UTR−強力なコザック−CDS−安定3’U TR−ポリ(A)3’
安定UTRを5’位および3’位の両方に有する実施形態において、それぞれのUTRは、同じまたは異なることができるが、それぞれは、安定mRNAに由来し、それ自体は、コードされるタンパク質をコードする内因性mRNAの対応する天然に存在するUTRとは異なる。β−グロビン遺伝子(HBB)を、以下に記載する実験において用いた。なぜなら、これは、公知の最も安定なmRNA分子の1つをコードするからである49。HBB UTRは短く(5’−UTR=50nt、3’−UTR=132nt)、よって、平均的な長さのタンパク質をコードする転写物の質量に少量しか寄与せず、高いコピー数−対−質量比率を完全転写産物に与える。例示する実施形態において、HUSK ivT−RNA転写物は、HBB UTRを5’位と3’位との両方に含んで、細胞内安定性を最大限にした。(参考文献42、47〜49を参照されたい)。ベータ−グロビンに加えて、アルファ−グロビンmRNAは、そのUTR中の特定のエレメントの結果として高い細胞内安定性を有することが公知であり、HUSK ivT−RNAを作製するために用いることができる。(参考文献47と、Russellら、「Sequence Divergence in the 3’ Untranslated Regions of Human ζ− and α−Globin mRNAs Mediates a Difference in Their Stabilities and Contributes to Efficient α−to−ζ Gene Developmental Switching.」Mol Cell Biol. 18巻(4号)2173〜2183頁、1998年も参照されたい)。アクチン、コラーゲンおよび結晶体のようなその他の構造タンパク質からのUTRは、長い細胞内半減期を有し(47で引用される参考文献を参照されたい)、よって、これもまた用いることができるmRNAを有する。
【0035】
翻訳を増加させるその他の特徴も含むことができる。例えば、ある実施形態において、構築物は、転写物へのリボソームの接着を促進して翻訳を増加させる配列内リボソーム進入部位(IRES)を有する。IRESは、5’UTR中のエレメントであり、よって、これは、ivT−RNA転写物の5’端と強力なコザック配列との間である。HUSK ivT−RNAの別の任意選択の特徴は、5’端の7−メチルグアノシン(m7G)キャップである。転写物がIRESを有する場合、これはm7Gキャップを有する必要はないが、両方のエレメントを用いることもできる。別の実施形態において、HUSK ivT−RNAは、5’ m7Gキャップの直後に続く2’−O−メチル改変を含有する2番目のヌクレオチドを有する。この改変は、高等真核生物の多くのmRNAの成分であり、ivT−RNA転写物がタンパク質に翻訳される効率を増加させることが公知である。
【0036】
あるいくつかの実施形態は、本明細書に記載する7つの異なるHUSK ivT−RNAに向けられ、そのそれぞれは、その公知の遺伝子標的、細胞分化におけるその参加、細胞型特異性の維持および遺伝子発現プログラム、ならびにそのコード配列の長さに基づいて選択されたタンパク質をコードする。7つのivT−RNAにコードされるタンパク質は、5つの転写因子と1つのmRNA結合タンパク質と1つの支配的遺伝子とを含む。転写物A〜Gは、以下のそれぞれのヒトタンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片、類似体もしくは改変体をそれぞれがコードするHUSK ivT−RNA構築物のことをいう。
転写物A:OCT4(mRNA配列番号1)、
転写物B:SOX2(mRNA配列番号2)、
転写物C:KLF4(mRNA配列番号3)、
転写物D:MYC(mRNA配列番号4)、
転写物E:NANOG(mRNA配列番号5)、
転写物F:LIN28(mRNA配列番号6)および
転写物G:MYOD1(mRNA配列番号7)。
【0037】
ivT−RNAにコードされるのが望ましいその他のタンパク質は、以下に論じるように表現型決定において役割を有する以下のものを含む:Ascl1(mRNA配列番号8)、PU.1(mRNA配列番号9)、C/EBPα(mRNA配列番号10)、C/EBPβ(mRNA配列番号11)、Ngn3(mRNA配列番号12)、Pdx1(mRNA配列番号13)、Mafa(mRNA配列番号14)およびEsrrb(mRNA配列番号15)またはそれらの生物学的に活性な断片もしくは改変体。
【0038】
タンパク質の完全な名称は:OCT4=POUクラス5ホメオボックス1;SOX2=SRY(性決定領域Y)−ボックス2;KLF4=クルッペル様因子4(腸);MYC=v−myc骨髄細胞腫症ウイルス癌遺伝子相同体(トリ);NANOG=Nanogホメオボックス;LIN28=lin−28相同体(C.elegans);MYOD1=筋原性分化1;ASCL1=achaete−scute複合体相同体1(Drosophila);SPI1=脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロウイルス組み込み癌遺伝子spi1;CEBPA=CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)、アルファ;CEBPB=CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)、ベータ;NEUROG3=ニューロゲニン3;PDX1=膵臓および十二指腸ホメオボックス1;MAFA=v−maf筋腱膜線維腫症癌遺伝子相同体A(トリ);ならびにESRRB=エストロゲン関連受容体ベータである。
【0039】
表1は、試験したか(それらの具体的な例を含める)またはこれらの遺伝子の1つもしくは複数の同じファミリーの密接に関連するメンバーであるかのいずれかのタンパク質をコードする遺伝子の名称を示す。本明細書において「類似体」という密接に関連する遺伝子ファミリーメンバーが、しばしば、同じ生物学的な活性を有し、よって、これらは交換可能に用いることができることが公知である。それぞれのタンパク質の遺伝子記号を第1列に示す。このリストは、あるいくつかの類似体および改変体を、それらのmRNA受託番号とともに含む。
【0040】
あるいくつかの実施形態は、表1のタンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片、類似体もしくは改変体のいずれかをコードするHUSK ivT−RNAを対象とする。
【0041】
【表1−1】

【0042】
【表1−2】

MYOD1は、支配的遺伝子である。MYOD1を線維芽細胞(非筋細胞)に形質導入することが、それらを筋芽細胞(筋細胞)に分化転換させるために十分であることが示されている。支配的遺伝子は、細胞の遺伝子発現プログラムを制御する調節ネットワークの最高レベルにある遺伝子である。支配的遺伝子は、通常、複数の遺伝子の発現を直接制御する転写因子であり、それらの遺伝子の多くが、次いで、より多くの遺伝子の発現を制御して、細胞の遺伝子発現プログラムを確立する。1つまたは複数の支配的遺伝子の発現を誘導することは、多くの場合において、支配的遺伝子を通常発現する細胞型への細胞の分化、分化転換または脱分化を誘導することが示されている。7つの2本鎖DNA鋳型も設計したが、これらは、それぞれのHUSK ivT−RNA転写物を作製するように転写された。本明細書に記載する実験で用いた7つのivT−RNA転写物は、
5’ m7Gキャップ2’−O−メチル化第2ヌクレオチド−IRESを有する安定5’UTR/強力なコザック/コードされるタンパク質配列(CDS)/安定3’UTR/ポリAテイル 3’
という構造を有した。
【0043】
ivT−鋳型アセンブリおよびin vitro転写
HUSK鋳型を設計して作製するための詳細を、実施例2に示す。本明細書に記載する実験で用いたHUSK鋳型は、in vitro転写RNAを生成する構築物に作動可能に連結した強いT7プロモーターを5’端に含むDNA分子であり、該in vitro転写RNAは、最も単純な実施形態において(i)安定5’UTRと、(ii)タンパク質コード配列(CDS)に連結した強力なコザックコンセンサス配列RCC(AUG)Gとを有する。鋳型は、さらに、5’UTRをコザックコンセンサス配列につなぐ第1制限部位(以下に示すようにNhel部位)と、CDSを3’UTRにつなぐ第2制限部位(以下に示すようにAgel部位)とを含んだ。
【0044】
その他の強いプロモーターは、T3およびSP6を含む。例示的な鋳型は、安定HBB UTRを有する。強力なコザック配列、CDSおよび安定3’UTRを適切な部位に挿入できる任意の制限部位を用いることができる。実施形態は、以下に示す鋳型を対象とする。
【0045】
【化1】

あるいくつかの実施形態は、本明細書に記載する7つの鋳型(ならびに当技術分野において公知の異なるプロモーター、安定UTR、制限部位および強力なコザック配列を有する改変体)を対象とする。好ましい実施形態において、鋳型は、タンパク質Oct4、Sox2、Klf4、Myc、Nanog、Lin28およびMyoDまたはそれらの生物学的に活性な断片、類似体もしくは改変体をコードする。
【0046】
その他の実施形態は、使用者が、対象のタンパク質をコードする任意の核酸、好ましくはmRNAを挿入することを可能にするキットを対象とする。in vitro転写RNAを用いてタンパク質またはペプチドを発現するためのこのようなキットは、in vitro転写RNAを生成する構築物に作動可能に連結した強力な転写プロモーターを有し、その第1鎖が、作動可能な組合せで(i)安定5’UTRと、(ii)該5’UTRをコザックコンセンサス配列につなぐ第1制限部位とを含むDNA鋳型を含む。使用者は、強力なコザックを有するCDSと適当な相補的制限部位とを設計して、CDSを鋳型に結合させることができる。キットは、さらにプライマーを含んで、逆転写RNAからCDSを創出してよい。CDSは、制限部位と接続されなければならず、コザックとCDSとの間にいずれの間隔もあり得ないので、制限部位はコザックの5’端上になければならず、よって、コザックは、使用者のCDSと接続されなければならない。
【0047】
その他の実施形態において、キットは、以下の1つまたは複数を含んでよい:プロモーターを認識してそれと結合するポリメラーゼ、in vitro転写反応を行うために適切な緩衝液、ヌクレオチド三リン酸(NTP)の混合物、第1および第2制限部位を認識する制限酵素、in vitro転写反応が一旦完了したら用いた鋳型を分解するためのDNアーゼ酵素溶液、5’ m7Gキャップを生成するためのキャップ付加酵素、2番目のヌクレオチドにメチル基を付加するための2−O−メチルトランスフェラーゼ酵素、GTPの溶液、S−アデノシルメチオニン(SAM)の溶液、ポリ(A)ポリメラーゼ酵素(例えばE.coliポリ(A)ポリメラーゼ)、ATPの溶液、およびポリ(A)テイル付加反応のための緩衝液。キットは、さらに、陽性対照として用いるためのDNA鋳型を含んでよい。
【0048】
転写物合成
種々のHUSK ivT−RNA鋳型を作製するために用いるメッセンジャーRNA(mRNA)は、実施例2に記載するようにH9ヒト胚性幹細胞から得られ、逆転写ポリ(A)+mRNA:転写物A=OCT4、転写物B=SOX2、転写物C=KLF4、転写物D=MYC、転写物E=NANOG、転写物F=LIN28および転写物G=MYOD1から増幅された。高忠実度ポリメラーゼを、dsDNA鋳型合成の全ての段階において用いて、配列の誤りを最小限にした。変性ホルムアルデヒド−アガロースゲル電気泳動を行って、転写物がポリアデニル化の前に予測されたサイズを有し、これらが分解されておらず、ポリアデニル化反応が、効率的な翻訳を推進するために十分な長さのポリ(A)テイルを付加したことを確認した。全長転写物は、それぞれの鋳型から生成されたが、完了した反応も、早期終結転写物および分解転写物の組合せとして同定される多量の低分子量生成物を含有した。in vitro転写反応(すなわちivT−RNAへの鋳型の転写)を約4〜37℃、好ましくは10℃に約20時間下げることにより、生成される全長転写物の画分の量が劇的に増加した。4℃と15℃の間の温度が推奨されるが、実験条件に基づいて変動してよい。キャップ付加ポリ(A)+転写物は、T7 in vitro転写反応において、上記の7つの直鎖状dsDNA鋳型から合成した。
【0049】
細胞へのin vitro転写RNAの送達
MRC−5ヒト胎児肺線維芽細胞を、この研究のHUSK ivT−RNAのトランスフェクションのためのモデルとして選択した。なぜなら、これらは、培養が容易であり、老化の開始前に数世代の倍加を経ており、初代細胞として、腫瘍形成の可能性により患者に対して安全性におけるリスクを示し得る不死化細胞系よりも細胞に基づく療法の開発のためにより適当なモデルであるからである。さらに、MRC−5線維芽細胞は、転写物A〜Fによりコードされるタンパク質を内因的に発現せず、このことは、ivT−RNAからのタンパク質翻訳の分析を容易にする。
【0050】
2つの核酸送達技術、すなわち脂質媒介トランスフェクションおよびエレクトロポレーションが、細胞に一過的にトランスフェクトするために一般的に用いられる。脂質媒介トランスフェクションは、エンドサイトーシスによる核酸の能動的な取り込みを刺激するが、エレクトロポレーションは、核酸が高濃度で存在する溶液中に細胞が存在する間に細胞膜中の孔を一過的に開放することにより核酸を送達する。この違いのために、一般的に、脂質媒介トランスフェクションは、通常の成長に近い条件下(しばしば血清を含まないが通常の培養培地、通常の播種密度および細胞が付着培養で成長するならば培養皿に接着する)で細胞に核酸を送達するために、より適切である。
【0051】
エレクトロポレーションおよび脂質トランスフェクション以外のトランスフェクション技術を用いることができる。これらは、1.衝撃トランスフェクション(遺伝子銃としても、微粒子銃トランスフェクションとしても知られる)、2.マグネトフェクション(Schererら、「Magnetofection: enhancing and targeting gene delivery by magnetic force in vitro and in vivo.」Gene Therapy. 9巻、102〜109頁、2002年を参照されたい)、3.ペプチド媒介トランスフェクション(Sigma−AldrichからのN−TER(商標)トランスフェクションシステムのような非共有結合ペプチド/RNAナノ粒子に基づくトランスフェクション、またはRNAへのペプチドの共有的接着による)および4.マイクロインジェクションを含む。連続的にまたは同時にこれらの技術を用いる組合せも用いることができる。細胞に核酸を導入するための当技術分野において公知の任意の方法を、本発明の実施形態において用いてよい。
【0052】
生成されたHUSK ivT−RNAが初代細胞により、コードされるタンパク質に容易に翻訳されるかを決定するために、転写物A、BおよびFを、MRC−5線維芽細胞の培養物に、脂質媒介トランスフェクション試薬(TransIT、Mirus Bio、方法を参照されたい)を用いて送達し、細胞を24時間後に、各転写物によりコードされるタンパク質に対する抗体を用いて染色した。HUSK ivT−RNAをトランスフェクトした培養細胞の多くは明るく染色され、染色は正しく局在化されたが、模擬トランスフェクトした細胞は、低いレベルのバックグラウンド蛍光だけを示した。転写物A〜Fによりコードされるタンパク質を通常発現するH9 hES細胞は、同様の染色パターンおよび強度を示し、HUSK ivT−RNAからMRC−5線維芽細胞においてトランスフェクションの24時間後にこれらの条件下で発現される、コードされるタンパク質のレベルが、H9細胞により内因的に発現されるレベルに匹敵することを示した。ウェスタンブロット分析は、同様の結果を生じた。
【0053】
脂質媒介トランスフェクションは、細胞にRNAを送達するための単純な方法であるが、一般的に低いレベルのエンドサイトーシスを示す初代細胞の培養物にトランスフェクトするために用いる場合は効率が悪いことが公知である。さらに、脂質は、脂質媒介トランスフェクション効率を増加させるためにしばしば用いられる補助的な核酸縮合化合物と同様に、ある程度の細胞傷害性を有する。脂質を用いてトランスフェクトされた細胞は迅速に回復し得るが、脂質媒介トランスフェクション試薬に関連するいずれの細胞傷害性も、反復してトランスフェクトされる細胞において悪化し得る。
【0054】
上記のMRC−5線維芽細胞において達成されたHUSK ivT−RNAにコードされるタンパク質発現の所望のレベルに到達するために、高濃度の脂質−RNA複合体を用いるトランスフェクションが必要であった。このレベルを超えて細胞に送達されるHUSK ivT−RNAの量を増加させることにより、生存性が減少した。よって、懸濁物中の細胞のエレクトロポレーションを試した。エレクトロポレーションは能動的な取り込みを必要としないが、代わりに、細胞膜をとおして核酸を直接送達する。細胞膜をエレクトロポレーションの間だけ一過的に透過にするので付着細胞にエレクトロポレーションすることができるが、エレクトロポレーション緩衝液中の核酸の濃度は、効率的な細胞内濃度を達成するために高くなければならない(100μg/mL RNAの値がしばしば用いられる)。この理由から、エレクトロポレーションは、一般的に、懸濁細胞にトランスフェクトするために最も適切であり、エレクトロポレーション手順中に細胞を高濃度で懸濁できるので、少量のRNAを用いた多数の細胞へのトランスフェクションを可能にする。
【0055】
エレクトロポレーションのパラメータは、MRC−5線維芽細胞にivT−RNAをトランスフェクトし、外因性転写物を特異的に検出するように設計されたプライマーを用いる定量RT−PCRによりトランスフェクション効率を測定することにより最適化した。2mmギャップを有する標準的なエレクトロポレーションキュベット中で、145Vまで充電した150uFコンデンサから、50μLのOpti−MEM(Invitrogen)に懸濁した2.5×10の細胞に放電することにより、高い生存性(播種の2時間後に細胞の70〜90%が付着性)を維持しながら、標準曲線法を用いて決定して10,000コピーを超えるHUSK ivT−RNAが細胞あたりに十分に反復送達された。さらなる実験により、細胞にHUSK ivT−RNAを効率的にトランスフェクトするために必要な電圧が、エレクトロポレーションの間の細胞密度に依存することが明らかになった。145Vが2.5×10細胞/50μLの密度の細胞にトランスフェクトするために必要であったが、同じ効率(細胞あたり同じコピー数)で1×10細胞/50μLの密度で細胞にトランスフェクトするためにわずかに110Vを用いた。日常的な実験により、それぞれの具体的なトランスフェクションについての最適条件が決定される。
【0056】
HUSK ivT RNAは、高い細胞内安定性を有し、HUSK ivT−RNAからのタンパク質翻訳は高度に効率的である。
【0057】
未改変mRNAをコードするivT−RNAに対してHUSK ivT−RNAの安定性および翻訳効率を比較するために、OCT4をコードする全長転写物Aを、天然に存在する内因性UTRと、内因性OCT4 mRNAに関連する未改変コザック配列とを含む内因性mRNA の完全配列を含む鋳型を用いて合成した。対照的に、HUSK転写物は、HBB UTRと強力なコザックコンセンサス配列とを有した。RNアーゼAを培養培地に100μg/mLの濃度で加えて、測定を行う前に細胞外HUSK ivT−RNAを排除した。それぞれのHUSK転写物の濃度は、トランスフェクションのおよそ17〜18時間後に、2時間でのそのレベルの25%に達したが、全長転写物の濃度は、トランスフェクションのおよそ10時間後に、2時間でのそのレベルの25%に達し、このことは、HUSK転写物の細胞内安定性が、対応する全長転写物のものより著しく高く、2つのHUSK転写物A/OCT4およびF/LIN28の安定性が同等であることを示した。
【0058】
図2Bは、HUSK ivT RNA細胞内安定性のより詳細な測定を示す。簡単に述べると、IFNB1、EIF2AK2、STAT2およびTLR3を標的にするsiRNAカクテルを予備トランスフェクトしたMRC−5線維芽細胞(以下の本文および方法を参照されたい)に、0.5μgのLIN28をコードするHUSK ivT RNAとさらなるsiRNAとを時間0にて同時トランスフェクトした。細胞が接着した後に、200μg/mLのRNアーゼAを培養培地に加えて、細胞外RNAを分解した。細胞を、記載する時間に溶解し、LIN28をコードするHUSK ivT RNAの量を、外因性転写物に特異的なプライマーを用いるRT−PCRにより測定した。指数回帰(黒色の線、R=0.96)を示す。GAPDHを内因性対照として用いた。誤差バーは、反復試料の標準偏差を示す。
【0059】
HUSK ivT−RNAの翻訳効率を、HBB UTRまたは改変コザックコンセンサス配列を有さない対応する全長転写物のものと比較するために、MRC−5線維芽細胞に、キャップ付加ポリ(A)テイル付加HUSK転写物A/OCT4または全長内因性転写物A/OCT4のいずれかをトランスフェクトし、コードされるタンパク質を12時間後に抽出し、ウェスタンブロットにより分析した。結果は、エレクトロポレーションの12時間後に、HUSK転写物Aをトランスフェクトした細胞は、全長転写物をトランスフェクトした細胞のおよそ2倍多くのコードされるタンパク質を含有したことを示し、このことは、HUSK設計に基づくivT−RNAを細胞にトランスフェクトすることが、全長内因性未改変転写物のトランスフェクションよりも、転写物あたり著しくより多くのコードされるタンパク質の産生をもたらすことを示した。
【0060】
コードされるタンパク質の濃度が、ivT−RNAを1回だけトランスフェクトした細胞において経時的にどのように変化するかを理解するために、細胞に、HUSK転写物A/OCT4、転写物B/SOX2または転写物F/LIN28をトランスフェクトした。タンパク質を6時間ごとに48時間抽出し、ウェスタンブロットにより分析した。HUSK転写物AまたはBのいずれかをトランスフェクトした細胞におけるコードされるタンパク質のレベルは迅速に増加し、トランスフェクションのおよそ12時間後にピークになり、次いで、30時間後にほとんど検出不可能なレベルまで迅速に減少した。図3A。対照的に、HUSK転写物Fによりコードされるタンパク質のレベルは迅速に増加し、その最大値にトランスフェクションのおよそ18〜24時間後に達し、次いで48時間の間かなり一定のままであり、このことは、HUSK転写物F/LIN28によりコードされるタンパク質が、HUSK転写物A/OCT4およびB/SOX2によりコードされるタンパク質よりも著しくより安定であったことを示した。さらなる分析により、HUSK転写物F/LIN28によりコードされるタンパク質が、これらの条件下でトランスフェクトした場合におよそ3日の細胞内半減期を有したことを明らかにした(示さず)。図3Bは、より詳細なタンパク質発現分析の例を示し、本発明のHUSK ivT−RNAのトランスフェクション後のタンパク質発現の用量応答性を示すデータを含む。簡単に述べると、MRC−5線維芽細胞に、記載するHUSK ivT RNAをトランスフェクトし、全細胞可溶化液を、記載する時間に調製した。代わりに、MRC−5線維芽細胞に、記載する量のHUSK ivT RNAをトランスフェクトし、全細胞可溶化液をピークタンパク質発現の時間に調製した。次いで、コードされるタンパク質をウェスタンブロットにより検出した。
【0061】
自然免疫応答の抑制は、ivT−RNAトランスフェクションから細胞をレスキューする
m7Gキャップ付加ポリ(A)テイル付加HUSK ivT−RNAをトランスフェクトしたMRC−5線維芽細胞は、予測されたように自然免疫応答を開始した54。模擬トランスフェクトした細胞は、24時間以内に通常の集団倍加時間を達成して迅速に回復したが、HUSK ivT−RNAをトランスフェクトした細胞は、およそ36時間増殖できなかった。これらは次いで回復し、トランスフェクションの48時間後にしか通常の倍加時間を達成しなかった。HUSK ivT−RNAトランスフェクションの細胞分裂停止効果の持続期間は、HUSK ivT−RNAの測定された細胞内寿命に大まかに相当した(図2A)。短い(24時間未満)および長い(48時間より長い)寿命の両方を有するタンパク質をコードする転写物のトランスフェクションは、同様の結果を生じた(図4B)。これらの結果は、細胞増殖の低減が、コードされるタンパク質ではなくHUSK ivT−RNA自体に対する反応であることを示す。
【0062】
p53のsiRNA媒介ノックダウンが、ivT−RNAをトランスフェクトした細胞の回復速度を増加し、p53媒介細胞周期抑止および/またはアポトーシスが、HUSK ivT−RNAトランスフェクションの観察された細胞分裂停止効果に寄与することを示すことが発見された(図5)。200nMのTP53 siRNAを含有するOpti−MEM(Invitrogen)中でエレクトロポレーションされたMRC−5線維芽細胞において決定されたHUSK ivT−RNAトランスフェクションの細胞分裂停止効果は、この図に示される。細胞を、10cm皿に、皿あたり2.5×10細胞の密度で第0日に播種した。2日後に、細胞をトリプシン処理により懸濁し、記載するようにして3.5μgのHUSK ivT RNAまたは3.5μgのHUSK ivT RNAと200nM TP53 siRNAとをエレクトロポレーションした。第0日にsiRNAを受けた細胞だけが、第2日にさらなるsiRNAを受けた。それぞれの皿の集密度を、数日間監視した。HUSK ivT RNAをトランスフェクトしなかった細胞(四角、菱形)は、2回目のエレクトロポレーション後に迅速に回復して第3.5日に集密に近付いたが、HUSK ivT RNAをトランスフェクトした細胞(三角)は、成長の遅延を示し、第6日にしか集密に近付かなかった。興味深いことに、TP53 siRNAをトランスフェクトした細胞(×)は、HUSK ivT−RNA送達後に回復速度の増加を示し、第5日に集密に近付いたが、このことは、HUSK ivT−RNAトランスフェクションの細胞分裂停止効果が、p53依存性経路の活性化を部分的に原因とし得ることを示した。TP53は、p53として公知のタンパク質をコードするヒト遺伝子の名称である。データ点は、明確化のためにつないでいる。
【0063】
外因性RNAトランスフェクションにより活性化されるいくつかの自然免疫経路が公知である。Toll様受容体3(TLR3)53、54、toll様受容体7(TLR7)55およびレチノイン酸受容体応答因子(タザロテン誘導)3(RARRES3)56〜58は、ヒトにおいてRNAが公知の病原体関連分子パターン(PAMP)である3パターン認識受容体(PRR)である。外因性RNAがこれらの受容体により一旦検出されると、これらは、培養培地中に分泌され、そこで細胞膜関連受容体と結合するサイトカインであるインターフェロン−β(IFNB1)を上方制御する細胞内シグナル伝達のカスケードを始動する。これらの受容体は、次いで、成長阻害、真核生物翻訳開始因子2−アルファキナーゼ2(EIF2AK2)媒介翻訳阻害59、60、細胞をPAMPに対して過敏化するPRRの上方制御、および細胞により分泌されるI型インターフェロンの上方制御(これらは全て、免疫応答を増幅する)を特徴とする完全な自然免疫応答を導くシグナル伝達カスケードを始動する。さらに、OAS1、OAS2、OAS3、OASL、ISG20およびIFIT1のような多くのインターフェロン活性化遺伝子(ISG、インターフェロン応答性遺伝子またはIRGとしても公知である)が、I型インターフェロンへの曝露に応答して上方制御されるようになる。制御されなければ、自然免疫応答はアポトーシスを導くことができる。
【0064】
IFNB1発現を測定するために行った定量RT−PCRにより、IFNB1が、HUSK ivT−RNAをトランスフェクトした細胞において、模擬トランスフェクトした細胞と比較して、トランスフェクションの24時間後に7500倍過剰発現されたことが明らかになった。TLR3およびRARRES3の>50倍の過剰発現、シグナル伝達性転写因子1(STAT1)の>10倍の過剰発現、ならびにシグナル伝達性転写因子2(STAT2)およびEIF2AK2の>5倍の過剰発現もあり、これらのことは、I型インターフェロン応答および外因性RNAに対する細胞の過敏化を示す(図6)。
【0065】
HUSK ivT−RNAトランスフェクションにより惹起される自然免疫応答が、RNAの長さまたは配列により影響されるかを決定するために、細胞にHUSK転写物A、BもしくはFまたは全長未改変内因性転写物Aをトランスフェクトした。IFNB1発現を、24時間後に測定した(図4A)。驚くべきことに、HUSK転写物Fと全長転写物Aは、HUSK転写物AまたはBよりも模擬トランスフェクトした細胞と比較して10〜20倍少ないIFNB1過剰発現を惹起した。全長内因性転写物AのトランスフェクションがHUSK転写物Aのトランスフェクションよりも少ないIFNB1過剰発現をもたらしたという観察結果は、全長転写物の細胞内寿命がより短いことにより説明できるとみられる。しかし、HUSK転写物FのトランスフェクションがHUSK転写物AまたはBのいずれかのトランスフェクションよりも20倍少ないIFNB1過剰発現をもたらしたという観察結果は、自然免疫応答が、3つ全ての転写物に存在するHBB UTRにより主に引き起こされたのでないことを示した。代わりに、これらのデータは、自然免疫応答の強さが、RNAの全体の長さまたはCDS中の配列エレメントに依存することを示す。
【0066】
1本鎖RNAが公知のPAMPであるPRRであるtoll様受容体7(TLR7)がMRC−5線維芽細胞において発現されないという事実に基づいて(RT−PCRデータは示さず)、1本鎖RNAがTLR3を活性化することが示された。対照的に、2本鎖RNAが公知のPAMPである2つのPRRであるTLR3およびRARRES3は発現され、他者による以前の観察結果も、ivT−RNAおよびmRNAがTLR3依存性自然免疫応答を惹起できることを示した54、61。理論によって拘束されるものではないが、長いssRNA分子が、TLR3および/またはその他のdsRNA特異的PRRと結合して、それによりそれらを活性化し得る重要な2次構造を有することができる可能性がある。より2次的な構造を有するより長いssRNA分子は、より2次的でない構造を有するより短いssRNA分子よりも強い自然免疫応答を惹起する可能性がある。この仮説は、HUSK転写物Aと比較してHUSK転写物F転写物のトランスフェクションに起因するIFNB1の過剰発現のより低いレベルを説明できる。なぜなら、HUSK転写物Aは、HUSK転写物Fよりおよそ2倍長いからである。また、IFNB1過剰発現の観察された差は、試験した3つのHUSK転写物中に存在する特定の配列エレメントによる可能性がある。
【0067】
自然免疫応答は、公知のPAMPである外因性RNAの頻繁な反復送達に基づく延長一過性トランスフェクションのいずれの方策にとっても著しい障害になる。自然免疫応答を妨害するために、IFNB1を標的にするsiRNAを細胞に導入して、その発現をノックダウンした。IFNB1 siRNAをMRC−5線維芽細胞に、エレクトロポレーションにより、HUSK ivT−RNAとともにまたはそれなしで送達した。siRNAを受けなかった細胞が、HUSK ivT−RNAトランスフェクションの24時間後に模擬トランスフェクトした細胞と比較して10,000倍のIFNB1の過剰発現を示したが、siRNAとHUSK ivT−RNAとの両方を受けた細胞は、模擬トランスフェクトした細胞と比較してわずか50〜100倍のIFNB1の過剰発現を示し、これは、99〜99.5%のノックダウン効率に相当した(図7B)。
【0068】
RNAi機構に、HUSK ivT−RNAトランスフェクションの前にsiRNAの位置を定めてそれを結合させるより長い時間を与えるために、細胞にsiRNAをエレクトロポレーションし、48時間成長させ、次いで、siRNAとHUSK ivT−RNAとの両方を再びエレクトロポレーションした。日常的な実験により、siRNA施与と最初のトランスフェクションとの間のより短いかまたはより長い間隔を用いることができるかを決定できる。この実験において、siRNAを受けなかった細胞は、模擬トランスフェクトした細胞と比べて7500倍のIFNB1の過剰発現を示したが、siRNAを受けた細胞は、模擬トランスフェクトした細胞と比べて15倍のIFNB1の過剰発現を示し、これは、99.8%のノックダウン効率に相当した(図7A)。HUSK ivT−RNAだけを受けた細胞においてIFNB1過剰発現が異なることは、MRC−5細胞により内因的に発現されるIFNB1の非常に低いレベルにおける小さい変動による可能性がある。この理由のために、過剰発現のレベルは、実験間ではなく実験内でのみ比較すべきである。なぜなら、それぞれの実験は、独立した模擬トランスフェクション対照を有し、これに対してその実験内の全ての発現データを標準化するからである。
【0069】
他の公知の遺伝子またはmRNAを標的にする同じ業者から商業的に入手可能なsiRNAを用いるMRC−5線維芽細胞におけるエレクトロポレーションで観察されたノックダウン効率は、典型的には、80%と90%の間である(図9および図10)。用いた商業的に入手可能なsiRNAを、それらの製品番号とともに表A1に列挙する。siRNA業者は、Applied Biosystems、Ambion、PromegaおよびSanta Cruz Biotechnologyを含む。我々が用いたsiRNAは全て、Applied Biosystemsからの「Silencer Select」siRNAであった。
【0070】
観察されたIFNB1ノックダウンの高い効率は、十分なIFNB1 mRNAが、RNAi機構により破壊されて、HUSK ivT−RNAトランスフェクションにより惹起された自然免疫応答のインターフェロン−β媒介増幅が妨害されたことを示す。このことは、自然免疫応答に関与するいくつかのその他の遺伝子が、模擬トランスフェクトした細胞と比べてまだ過剰発現しているが、siRNAを受けなかった細胞よりもIFNB1を標的にするsiRNAを受けた細胞において著しくより少なく過剰発現されるとの観察結果と一貫している(図7)。特に、HUSK ivT−RNAだけを受けた細胞において50〜60倍過剰発現しているPRRであるTLR3およびRARRES3は、HUSK ivT−RNAとIFNB1 siRNAとの両方を受けた細胞において20〜30倍過剰発現している。さらに、STAT1、STAT2およびEIF2AK2は全て、細胞にHUSK ivT−RNAとIFNB1 siRNAとを同時トランスフェクトした場合に、模擬トランスフェクトした細胞と比べて過剰発現のレベルの同様の低減を示した。
【0071】
siRNAにより媒介されるIFNB1ノックダウンは、MRC−5細胞においてHUSK ivT−RNAトランスフェクションにより惹起される自然免疫応答に関与するいくつかのタンパク質の過剰発現を低減させたが、自然免疫は、PRRであるTLR3およびRARRES3の>20倍の過剰発現、ならびにIFNB1、STAT1およびEIF2AK2の>5倍の過剰発現の残存により示されるように、これらの細胞において完全に阻害されなかった。IFNB1ノックダウンについての実験は、ivT−RNAトランスフェクト細胞において観察される増殖の阻害にほとんどまたは全く影響しないことが観察され(図8)、このことは、HUSK ivT−RNAとIFNB1 siRNAとの両方をトランスフェクトした細胞において、IFNB1発現の低い残存レベルが細胞の増殖を妨げるために十分であるか、またはインターフェロン−αシグナル伝達のようなインターフェロン−βとは独立した仕組みにより、細胞が増殖することが妨げられているかのいずれかであることを示す。詳細は、実施例3に示す。
【0072】
ヒト自然免疫応答経路における公知のタンパク質は、TP53、TLR3、TLR7、RARRES3、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNK、IFNB1、IL6、TICAM1、TICAM2、MAVS、STAT1、STAT2、EIF2AK2、IRF3、TBK1、CDKN1A、CDKN2A、RNASEL、IFNAR1、IFNAR2、OAS1、OAS2、OAS3、OASL、RB1、ISG15、ISG20、IFIT1、IFIT2、IFIT3およびIFIT5、ならびにそれらの生物学的に活性な断片、類似体および改変体を含む。siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて標的にできるこれらの自然免疫応答タンパク質をコードするmRNAおよび遺伝子配列を表3に列挙し、ここでは、これらを公式受託番号で指定する。完全mRNAおよび遺伝子配列は、容易に入手可能である。当業者は、アンチセンスまたはsiRNAを作製して、以下に記載されるような日常的な実験を用いて、種々の標的タンパク質をコードする遺伝子もしくはmRNAまたはその両方の転写に干渉することにより、これらのタンパク質のいずれの発現も低減できる。その他の動物は、ヒトタンパク質と高い程度の配列相同性を有する密接に関連するタンパク質を発現する。これらの類似体も、抑制の標的にできる。自然免疫応答を開始するいずれの細胞も、ヒト細胞と同様に処理でき、ヒトにおいて働くsiRNAおよびアンチセンスヌクレオチドの多くは、応答を抑制するためにその他の動物細胞において働く。
【0073】
自然免疫応答は、多くの重複性を含む細胞内および細胞外のシグナル伝達経路により始動して調節されるが、多くのウイルスは、自然免疫シグナル伝達を妨害する仕組みを進化させて、持続感染を可能にしている(ssRNAウイルスであるC型肝炎による自然免疫妨害の最近の概説については、Bode、2007年を参照されたい)。自然免疫シグナル伝達に関与する1つまたは複数の因子のRNAiノックダウンが、HUSK ivT−RNAトランスフェクションにより惹起される自然免疫応答を阻害するかを試験するために、TLR3、TICAM1、TICAM2、VISA、TBK1、IRF3、STAT1、STAT2、EIF2AK2、TP53およびCDKN1Aを標的にするsiRNAの種々の組合せを、細胞にエレクトロポレーションにより送達し、48時間後に、HUSK ivT−RNAとさらなるsiRNAとの2回目のエレクトロポレーションを行った。IFNB1およびノックダウンについて標的にされる遺伝子の発現のレベルを、定量RT−PCRにより2回目のエレクトロポレーションの24時間後に測定した(図9A〜C;図10A、B)。トランスフェクションは、2回の独立した実験に分けて、試料取り扱い時間を最小限にした。トランスフェクトした細胞を数日間監視し、集密度の推定を各日に行って、選択した遺伝子のノックダウンが細胞増殖に対して影響を有したかを決定した(図9D、図10C)。
【0074】
選択した遺伝子のいずれのノックダウンも、IFNB1過剰発現の著しい低減をもたらしたが、STAT2またはEIF2AK2のノックダウンだけについて、細胞増殖に対する影響が観察された。よって、実施形態において、ノックダウンカクテルは、STAT2もしくはEIF2AK2の発現を低減するsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。STAT2またはEIF2AK2のいずれかをノックダウンすることの影響は、HUSK ivT−RNAトランスフェクション後の回復時間の短縮を特徴とした。両方の場合において、siRNAとHUSK ivT−RNAとを同時トランスフェクトした細胞は、siRNAのない対照について必要であった48時間とは反対に、およそ36時間後に模擬トランスフェクトした細胞と同じレベルの集密度に達することが観察された。トランスフェクションのわずか24時間後にsiRNAのない対照と比較してノックダウン細胞の集密度の増加をもたらした(図5)TP53ノックダウンとは反対に、siRNAのない対照と比較してSTAT2およびEIF2AK2ノックダウン細胞の集密度の増加が、トランスフェクションの48時間後に最初に観察され、このことは、STAT2またはEIF2AK2のノックダウン単独が、HUSK ivT−RNAトランスフェクションにより惹起される自然免疫応答を阻害するために不十分であり、これらの遺伝子をノックダウンすることが、HUSK ivT−RNAが細胞により分解された後の回復速度の増加に寄与し得ることを示した。
【0075】
自然免疫応答は、培養培地中にインターフェロン−βのような炎症性サイトカインの蓄積を伴うので、培養培地を、トランスフェクション後すぐに少なくとも1回置き換えて(好ましくはトランスフェクション後の15分と48時間との間、より好ましくはトランスフェクション後の2時間と12時間との間)、これらのサイトカインを除去し、よって、自然免疫応答をさらに抑制できる。
【0076】
小分子阻害剤およびsiRNAの使用に加えて、ivT−RNAトランスフェクション後に放出されるサイトカイン(例えばI型インターフェロン)に対する抗体、およびこれらのサイトカインの受容体(例えばインターフェロン−アルファ受容体)に対する抗体を培養培地に加えて、ivT−RNAトランスフェクションにより惹起される自然免疫応答を抑制できる(LaFleurら、「Interferon−κ, a Novel Type I Interferon Expressed in Human Keratinocytes.」J. of Biol. Chem. 276巻、43号、2001年を参照されたい)。siRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドとともにまたは単独で抗体を用いて、免疫応答を抑制できる。好ましい実施形態において、抗体は、マウス抗ヒトIFN−α/β受容体鎖2(CD118)(クローン:MMHAR−2、IgG2a、PBL Biomedical Laboratories、New Brunswick、NJ)のようなモノクローナル抗体である。
【0077】
in vitro転写RNAの反復送達による延長一過性トランスフェクションは、複数回の細胞分裂をとおして、コードされるタンパク質発現の高いレベルを維持する
本明細書に記載する結果は、ivT−RNAにコードされるタンパク質の準安定発現(形質導入タンパク質発現ともいう)の増加が、培養細胞に適切なHUSK ivT−RNAを、例えば約24〜48時間離れた間隔で頻繁に反復してトランスフェクトすることにより達成されたことを示す。この範囲は、細胞型、発現されるタンパク質などに基づいて変動する。(1)MRC−5ヒト線維芽細胞の外因性RNAに対する自然免疫応答が、好ましくは1回目のトランスフェクション前に、自然免疫応答経路中のいくつかのタンパク質を標的にするsiRNAカクテルを用いる組み合わせたノックダウンにより抑制され、(2)トランスフェクションが、細胞ストレスを最小限にするように設計されたエレクトロポレーションプロトコールを用いて遂行されたならば、模擬トランスフェクトした細胞と比較した、24時間間隔での反復HUSK ivT−RNAトランスフェクション後の細胞増殖の通常の速度が維持できたこともさらに見出された。
【0078】
HUSK転写物AおよびBでの1回目のトランスフェクションの後の最初の18〜24時間中に初期に達成された発現の高いレベルを細胞の複数の世代、すなわち複数回の細胞分裂をとおして維持するために、前のトランスフェクションから例えば24〜48時間の間隔でさらなるトランスフェクションを行った。発現されたHUSK ivT−RNAにコードされるタンパク質の量は、免疫応答抑制を好ましくは少なくとも約48時間ごとに反復することにより、複数回の細胞分裂にわたってさらに増加し、安定した。反復トランスフェクション法は、HUSK ivT−RNAの反復送達による延長一過性トランスフェクションとよばれ、以下により詳細に記載される。コードされるタンパク質の長期の発現を複数回の細胞分裂をとおして達成することは、細胞を同期化し得るが、同期化させることを必要としないことに留意すべきである。免疫抑制およびトランスフェクションの頻度は、例えば細胞型および発現されるタンパク質に基づいて変動する。
【0079】
IFNB1発現の低減およびトランスフェクション後の回復時間の短縮の両方により測定される、HUSK ivT−RNAトランスフェクションにより惹起される自然免疫応答をある程度までそれぞれ軽減する3つの方法が同定された:1.TP53ノックダウン、2.IFNB1ノックダウンによる自然免疫応答増幅妨害、および3.本明細書に記載される自然免疫抑制経路中のタンパク質を含む自然免疫シグナル伝達に関与するさらなる遺伝子のノックダウンによる自然免疫応答阻害。これらの3つの方法を組み合わせて、細胞にHUSK ivT−RNAを、それぞれのコードされるタンパク質の細胞内寿命と同等のトランスフェクション頻度を用いて反復してトランスフェクトして、複数回の細胞分裂をとおして持続された高いレベルの発現を達成できるかを決定した。反復トランスフェクションの好ましい頻度は、それぞれのコードされるタンパク質の細胞内寿命とほぼ等しい。コードされるタンパク質の下流の標的が高度に安定であるならば、トランスフェクションの頻度は、例えばその下流のタンパク質の細胞内寿命により決定してよい。このことは、トランスフェクトした細胞の表現型を変更することが目標である場合に特に重要である。
【0080】
MRC−5線維芽細胞に、siRNA混合物1(400nM TP53、200nM STAT2および200nM EIF2AK2)またはsiRNA混合物2(400nM TP53、200nM STAT2、200nM EIF2AK2、200nM IFNB1、200nM TLR3および200nM CDKN1A)をトランスフェクトし、次いで、数日の期間にわたってHUSK ivT−RNAを反復してトランスフェクトした。ivT−RNAをトランスフェクトした細胞において>5倍過剰発現されることが以前に見出された遺伝子(TLR3、RARRES3、IFNB1、STAT1、STAT2およびEIF2AK2)の発現と、TP53およびCDKN1Aの発現とを、HUSK ivT−RNAでの1回目のトランスフェクションの24時間後に測定して、これらの条件下でのそれぞれのsiRNAのノックダウン効率と、HUSK ivT−RNAトランスフェクションにより惹起される自然免疫応答を阻害する各siRNA混合物の効率とをともに決定した(図11A)。
【0081】
図13A〜Fは、それぞれの核酸での単独または反復トランスフェクション後の種々のHUSK ivT RNAによりコードされるタンパク質の下流の標的の応答を示す。これらの結果は一緒に、HUSK ivT RNAでの反復トランスフェクションが、多くの日数にわたって持続できる機能的タンパク質の高いレベルを生じることを示す。
【0082】
siRNA混合物1をトランスフェクトした細胞において、測定した全ての遺伝子の発現は、模擬トランスフェクトした細胞と比較して低減し、いくつかの遺伝子(TLR3、IFNB1、STAT2およびEIF2AK2)は>90%ノックダウンを示した。siRNA混合物2をトランスフェクトした細胞において、測定した遺伝子の多くの発現は、さらに低減され、これらの細胞においてRARRES3およびSTAT1(siRNAが標的にしない2つの遺伝子)だけが、模擬トランスフェクトした細胞と比較して、>5倍過剰発現されたが、これらはともに、siRNAを受けなかった細胞におけるよりも著しく少なく過剰発現された。
【0083】
図11B、11Cおよび11Dならびに表1は、HUSK ivT−RNAトランスフェクションからのsiRNAトランスフェクションによるレスキューのより詳細な分析について記載する。図11B。MRC−5線維芽細胞に、0.5μgのLin28をコードするHUSK ivT−RNAを48時間間隔で2回トランスフェクトした。図11Cは、(11B)と同様にしてトランスフェクトしたが、第2日に模擬トランスフェクトし、第4日に0.5μgのLin28またはMyoD1をコードするHUsKe ivT−RNAのいずれかをトランスフェクトした細胞を示す。遺伝子発現を、2回目のトランスフェクションの24時間後にRT−PCRにより測定した(第5日)。値は、模擬トランスフェクトした細胞と比べて示す。図11Dは、(11B)と同様にしてトランスフェクトしたが、第2日にIFNB1、EIF2AK2、STAT2およびTLR3を標的にするsiRNAのカクテルで、そして第4日に0.5μgのLin28またはMyoD1をコードするHUSK ivT−RNAのいずれかとさらなるsiRNAとをトランスフェクトした細胞を示す。遺伝子発現を、2回目のトランスフェクションの24時間後に測定した(第5日)。値は、siRNAを受けなかった細胞と比較して示す。これらの結果は、ivT−RNAトランスフェクションが、増殖の低減および自然免疫経路における遺伝子の過剰発現を特徴とする自然免疫応答を惹起し、自然免疫経路中の遺伝子を標的にするsiRNAの組合せを細胞にトランスフェクトすることにより、siRNAが標的にする遺伝子の過剰発現が低減されるだけでなく、自然免疫経路中のその他の遺伝子の過剰発現も低減し、このことが、自然免疫応答の全般的な抑制を示すことも示した。表1のデータは、自然免疫経路中の少数の遺伝子(具体的にIFNB1、EIF2AK2およびSTAT2)を同時にノックダウンすることが、ivT−RNAトランスフェクションから細胞をレスキューするために十分であることを明確に証明する。これらの遺伝子の組み合わせたノックダウンは、これらの条件下でivT−RNAトランスフェクションにより引き起こされた増殖の低減を排除し、よって、ivT RNAでの頻繁な反復されたトランスフェクションを特に可能にした(細胞はそうでなければ生存しなかった)。
【0084】
表2は、IFNB1、EIF2AK2およびSTAT2の組み合わせたノックダウンが、ivT−RNAをトランスフェクトした細胞をレスキューすることを示す表を示す。MRC−5線維芽細胞に、図11Bと同様にしてトランスフェクトしたが、第0日にsiRNAを、そして第2日および第4日に0.5μgのLin28をコードするHUSK ivT−RNAとさらなるsiRNAとをトランスフェクトした。2回目のivT−RNAトランスフェクションの24時間後に(第5日)、細胞の試料をトリプシン処理して計数した。値は、模擬トランスフェクトした細胞と比べた細胞密度を表す。
【0085】
【表2】

図3に示すように、HUSK転写物Bのトランスフェクションは、およそ18〜24時間の著しいタンパク質発現をもたらしたが、HUSK転写物Fのトランスフェクションは、48時間を超える著しいタンパク質発現をもたらした。HUSK転写物Fのトランスフェクション後の発現の時間発展のさらなる分析により、この転写物によりコードされるタンパク質が、そのピークレベルのおよそ50%に、トランスフェクションの3日後に達したことが明らかになった。HUSK ivT−RNAのトランスフェクションは、増殖の低下をもたらしたので、これらの実験において測定したタンパク質発現の持続期間は、細胞が活性に増殖した場合よりも著しくより長かったと考えられる。
【0086】
タンパク質の持続した高いレベルを達成するために、細胞にHUSK転写物Bを24時間間隔で3回、またはHUSK転写物Fを48時間間隔で2回トランスフェクトした。トランスフェクトした細胞のそれぞれの皿の集密度を監視して、HUSK ivT−RNAとsiRNA混合物1または2との同時トランスフェクションの細胞増殖に対する影響を決定した(図12)。細胞は、HUSK ivT−RNAでの1回目のトランスフェクションから回復したが、siRNAを受けなかった細胞の多くは、2回目のHUSK ivT−RNAトランスフェクションの後に、模擬トランスフェクトした細胞と比較して>100倍のTLR3の過剰発現および>50倍のRARRES3の過剰発現により示されるように、おそらく外因性RNAに対する過敏化のために死滅した。siRNA混合物1または2のいずれかを受けた細胞は、各トランスフェクション後に高い生存性を示し、増殖の指標であるこれらの培養物の集密度は、実験をとおして模擬トランスフェクトした細胞のものの10%以内のままであった。興味深いことに、HUSK ivT−RNAおよびsiRNAを24時間間隔で3回トランスフェクトした細胞は、これらの培養物の集密度が各日におよそ10%しか低下しないほど十分に迅速に回復した。取り扱いによる試料損失(トリプシン処理、エレクトロポレーションキュベットへのまたはそこからの移動など)と、各トランスフェクション後に細胞のおよそ10〜15%をタンパク質およびRNA分析のために保存したこととにより、観察された回復速度は、24時間間隔での無限の数のトランスフェクションを可能にするのに十分高い可能性がある。
【0087】
全細胞可溶化液を、HUSK ivT−RNAでの1回目のトランスフェクション(第2日)後の12時間ごとに調製し、HUSK ivT−RNAによりコードされるタンパク質のレベルを、ウェスタンブロットにより評価した。細胞に、siRNAだけを第0日にトランスフェクトし、HUSK ivT−RNAでの1回目のトランスフェクションを第2日に行った。ACTBをローディング対照として用いた。転写物Fによりコードされるタンパク質のレベルは、そのピークレベルのおよそ50%に、単独トランスフェクションの3日後に達した。対照的に、転写物Fで2回トランスフェクトした細胞は、1回目のトランスフェクション後の第3日をとおしてタンパク質発現の高いレベルを維持し、これは、2回目のトランスフェクション後にわずかに増加し、次いで、そのピークレベルのおよそ50%に、第7日、すなわち1回目のトランスフェクションの5日後であって2回目(そして最後)のトランスフェクションの3日後に下落した。このタンパク質発現プロファイルは、トランスフェクトした細胞が迅速に増殖する(図12B)という事実と一緒に、転写物Fによりコードされるタンパク質のほぼ定常状態レベルが、48時間間隔の反復トランスフェクションによってさえ多くの細胞分裂にわたって維持されたことを示す。
【0088】
しかし、対照的に、転写物Bによりコードされるタンパク質は、各トランスフェクションの12時間後に高度に発現されたが、各トランスフェクションの24時間後にはほとんど検出不可能であり、各トランスフェクションの結果として生成されたタンパク質のほとんどが、次のトランスフェクションを行う時間までに分解されたことを示した。日常的な実験により、より頻繁なトランスフェクションまたはより多量のHUSK ivT−RNAのトランスフェクションのようなタンパク質発現の所望のレベルを達成するための最良のプロトコールが決定される。
【0089】
3日間の半減期を有するタンパク質(LIN28−転写物F)について、この技術を用いる2回のトランスフェクション(48時間)は、有効タンパク質半減期を5日間に延長し、トランスフェクション後の最初の3日間にタンパク質発現の安定で高いレベルが観察された。より不安定なタンパク質(18〜24時間の細胞内寿命、転写物B−SOX2)の24時間間隔での反復トランスフェクションは、それぞれのトランスフェクションの12時間後にタンパク質発現の高いレベルを生じ、これは次のトランスフェクションの前に低下し、このことは、より頻繁なトランスフェクションが、短い細胞内寿命を有するタンパク質の発現の安定したレベルを達成するために要求され得ることを示した。1つまたは複数のタンパク質を、トランスフェクトした細胞において表現型変化を誘導するレベルで発現させることをが目標である場合、タンパク質発現の高いレベルは、標的遺伝子のエピジェネティックな状態を改変するために各細胞周期中の短い時間だけ必要であると考えられる。日常的な実験により、遺伝子活性化を達成するために十分なタンパク質発現の安定したレベルをどのように達成するかが示される。
【0090】
あるいくつかの実施形態は、a.TP53、TLR3、TLR7、RARRES3、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNK、IFNB1、IL6、TICAM1、TICAM2、MAVS、STAT1、STAT2、EIF2AK2、IRF3、TBK1、CDKN1A、CDKN2A、RNASEL、IFNAR1、IFNAR2、OAS1、OAS2、OAS3、OASL、RB1、ISG15、ISG20、IFIT1、IFIT2、IFIT3およびIFIT5、またはそれらの生物学的に活性な断片もしくは類似体(以下、「免疫抑制タンパク質」)からなる群より選択される自然免疫応答経路中の1つまたは複数のタンパク質の発現を低減する作用物質の有効量を細胞に導入することにより、1本鎖もしくは2本鎖DNAまたはDNAまたはDNA/RNAキメラのいずれかであり得る核酸のトランスフェクションに対する細胞の自然免疫応答を抑制する方法を対象とする。好ましい実施形態において、作用物質は、siRNA、アンチセンスDNAもしくはRNAまたはそれらの組合せである。この実施形態は、自然免疫応答を、1つもしくは複数の免疫抑制タンパク質、またはタンパク質もしくは小分子の生物学的な活性を低減する抗体を用いて抑制することをさらに含むことができる。siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量により、標的タンパク質の発現を低減する量を意味する。免疫抑制タンパク質のヒトバージョンをコードするmRNAおよび遺伝子の受託番号は、表3に示す。ivT−RNAにコードされるタンパク質を用いる場合と同様に、ヒト免疫抑制タンパク質は、所望の生物学的な活性を有し、よって抑制の標的にできるようにヒトタンパク質との十分な量の配列相同性を有するその他の動物種における類似体を有する。当業者は、以下の関連する項に記載される日常的な実験を用いて任意のこれらのタンパク質の発現を低減するためのsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製できる。
【0091】
本明細書で用いたものを含む、免疫抑制タンパク質の多くを標的にする小型阻害RNAが、商業的に入手可能である。任意の自然免疫応答タンパク質をコードするmRNA または遺伝子の翻訳を遮断する2以上のsiRNAの混合物を含む組成物は、商業的に入手可能なsiRNAの混合物の混合物を含んで、本発明の範囲内である。好ましい組成物は、以下に記載するsiRNA混合物1および2、ならびにIFNB1、EIF2AK2およびSTAT2を標的にするsiRNAの混合物を含む。
【0092】
免疫抑制薬を用いて、ivT−RNAトランスフェクションにより惹起される免疫応答を低減してよい。ほとんどは、特定の免疫細胞(リンパ球など)の活性化を妨げて作用するが、これらの薬物のいくつかは、広範囲の細胞型においてある程度活性な経路に対して作用する。免疫抑制薬の使用は、延長一過性トランスフェクション法をin vivoで用いる場合に特に重要である。一般的な免疫抑制薬は、タクロリムス、シクロスポリン、ピメクロリムス、アベチムス、グスペリムス、サリドマイド、レナリドマイド、アナキンラ、シロリムス、デフォロリムス、エベロリムス、テムシロリムスおよびゾタロリムスを含む。あるいくつかの実施形態は、細胞をこれらの免疫抑制薬の1つと接触させるステップを含む、核酸をトランスフェクトした細胞における免疫応答を抑制する方法を対象とする。
【0093】
「RNA依存性プロテインキナーゼ阻害剤」とよばれるEIF2AK2によりコードされるタンパク質の阻害剤は、EMD Biosciencesにより販売され(RNA依存性プロテインキナーゼ阻害剤、カタログ番号527450)、単独または上記のsiRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドと組み合わせて自然免疫応答を抑制するために用いてもよい。さらに、B18R(「組換えB18Rタンパク質、ワクシニアウイルスによりコードされる中和I型インターフェロン受容体;I型IFN阻害剤」としてeBioscience,Inc.により販売される、カタログ番号14−8185)のようなI型インターフェロンシグナル伝達の阻害剤を、単独または上記のsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびRNA依存性プロテインキナーゼ阻害剤と組み合わせて用いて、自然免疫応答を抑制してもよい。
【0094】
【表3−1】

【0095】
【表3−2】

別の好ましい実施形態において、免疫抑制は、少なくとも約48時間ごとに反復する。siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、エレクトロポレーション、脂質媒介トランスフェクション、衝撃トランスフェクション、マグネトフェクション、ペプチド媒介トランスフェクション、マイクロインジェクションまたはそれらの組合せにより達成できる。その他の実施形態は、細胞に、1本鎖もしくは2本鎖のDNAまたはRNAあるいはそれらのキメラを含む核酸を、a.)前記細胞の自然免疫応答を抑制し、b.)前記核酸を前記細胞に導入することによりトランスフェクトする方法を対象とする。
【0096】
実施形態において、核酸分子は、タンパク質またはその生物学的に活性な断片もしくは類似体をコードする。核酸がDNA分子である実施形態において、これは、所望のmRNA、siRNAもしくはshRNA(siRNA前駆体である短いヘアピンRNA)、またはlnRNA(遺伝子を開始できる長いノンコーディングRNA)をコードするものであってよい。核酸は、1本鎖DNAもしくはRNA分子および2本鎖DNAもしくはRNA分子または1本鎖もしくは2本鎖のDNA/RNAキメラであり得る。ステップaとbの間に、細胞を、自然免疫応答の抑制およびコードされるタンパク質またはRNAの翻訳をそれぞれ可能にする時間および条件下でインキュベートする。好ましい実施形態において、核酸は、1本鎖ivT−RNA、好ましくはHUSK ivT−RNAである。ステップaおよびbは、逐次的または同時であり得る。好ましい実施形態において、細胞は、コードされるタンパク質または標的タンパク質の発現を所望のレベルに維持するために必要な頻度の反復免疫抑制およびトランスフェクションを受ける。別の実施形態において、ステップa.)を初めて行う場合、これは、ステップb.)の約24〜72時間前まで行う。好ましい実施形態において、トランスフェクションの頻度は、コードされるタンパク質の細胞内寿命とほぼ等しい。別の実施形態において、トランスフェクトするステップa.)は、エレクトロポレーション、脂質媒介トランスフェクション、衝撃トランスフェクション、マグネトフェクション、ペプチド媒介トランスフェクション、マイクロインジェクションまたはそれらの組合せを用いて遂行される。
【0097】
本発明の方法および構築物は、in vivoまたはin vitroで用いることができる。in vivoならば、好ましい構築物は、細胞の永続的な遺伝的改変がないようにRNA、好ましくはHUSK ivT−RNAを含有する。
【0098】
トランスフェクトされる細胞は、動物細胞、好ましくはヒト細胞、または細菌、酵母、真菌および植物であり得る。HUSK ivT−RNAでの反復トランスフェクションは、コードされるタンパク質の発現を増加し、持続させる。動物細胞と同様に、細菌、酵母および真菌は、長いヌクレオチドのトランスフェクションに応答して免疫を開始するが、免疫応答タンパク質は、動物における応答とは異なる。免疫応答の抑制および反復トランスフェクションの新しい方法も、記載される免疫応答タンパク質を標的にすることによりこれらの生物において働く。
【0099】
今日までの実験の結果は、1つのsiRNAトランスフェクションが、免疫応答を約48時間抑制したことを示した。抑制の持続期間は、トランスフェクトされる細胞の型に基づいて変動し得る。よって、日常的な実験により、最適なsiRNA処置スケジュールが決定される。あるいくつかの実施形態において、siRNAまたはアンチセンストランスフェクションステップは、標的タンパク質(自然免疫応答タンパク質)抑制の所望のレベルを維持するのに必要な頻度で反復される。これは、典型的には、少なくとも48時間ごとに1回である。ivT−RNAをトランスフェクトする細胞の自然免疫応答の抑制は、後続の各ivT−RNAトランスフェクションごとに反復できるか、またはivT−RNAトランスフェクションが48時間ごとよりも頻繁であるならば、より少ない頻度であり得る。
【0100】
あるいくつかのその他の実施形態は、in vitro転写RNAのような核酸のトランスフェクションに対する自然免疫応答が抑制された細胞と、免疫抑制されかつ核酸をトランスフェクトした細胞とを対象とする。
【0101】
小分子阻害剤およびsiRNAの使用に加えて、ivT−RNAトランスフェクション後に放出されるサイトカイン(例えばI型インターフェロン)に対する抗体、および任意の自然免疫応答タンパク質またはこれらのサイトカインについての受容体(例えばインターフェロン−アルファ受容体)に対する抗体を培養培地に加えて、ivT−RNAトランスフェクションにより惹起される自然免疫応答を抑制できる(LaFleurら、「Interferon−κ, a Novel Type I Interferon Expressed in Human Keratinocytes.」J. of Biol. Chem. 276巻、43号、2001年を参照されたい)。
【0102】
あるいくつかのその他の実施形態において、核酸送達と組み合わせた自然免疫応答を抑制する方法は、例えば一過性もしくは安定なDNAトランスフェクションまたはshRNAのウイルス形質導入により、あるいはノックアウト動物または自然免疫応答経路中の1つもしくは複数の遺伝子の突然変異を有する動物に由来する細胞の使用またはこれらの任意の組合せにより、免疫応答を遺伝的に抑制するステップを含む。遺伝的に形質転換された細胞は、異なるivT RNAをスクリーニングして、例えば異なる所望の表現型変化を作製するために必要なivT RNAを見出すために用いることができる。
【0103】
ivT−RNAをコードするタンパク質の発現による表現型の変更
図13A〜Fは、それぞれの核酸を用いる単独および反復トランスフェクション後の種々のHUSK ivT RNAによりコードされるタンパク質の下流の標的の応答を示す。これらの結果は一緒に、HUSK ivT RNAでの反復トランスフェクションが、多くの日数にわたって持続できる機能的タンパク質の高いレベルを生じることを示す。
【0104】
より具体的に、図13Aは、IFNB1、EIF2AK2、STAT2およびTLR3を標的にするsiRNAのカクテルを予備トランスフェクトした後に、0.5μgのLin28をコードするHUSK ivT−RNAとさらなるsiRNAとを48時間間隔で5回トランスフェクトしたMRC−5線維芽細胞の応答を示す。細胞を、記載する時間に溶解し、各試料中のLin28タンパク質の量を、ウェスタンブロットにより評価した。ACTBをローディング対照として用いた。この図からわかるように、Lin28タンパク質発現の高いレベルが、1回目のトランスフェクションの後10日を超えて細胞において持続された。図13Bは、トランスフェクションの18時間後に測定した、模擬トランスフェクトした細胞におけるレベルと比較した成熟let7a miRNAのレベルを示す。平滑化した線は、1回(実線)および5回(点線)トランスフェクトした細胞に相当するデータ点をつないで描かれる。U47 RNAを内因性対照として用いた。誤差バーは、反復試料の標準誤差を示す。これらのデータは、トランスフェクトしたHUSK ivT RNAからの細胞により生成されるコードされるタンパク質(この場合はLin28)が、その予測される生物学的機能を保持し、高度に活性であることを明確に示す。let7a miRNAは、Lin28タンパク質の公知の標的である。予測されるように、Lin28タンパク質をivT−RNAトランスフェクションにより発現することは、let7a miRNAの低下を引き起こした。
【0105】
図13Cは、let7a miRNAを標的にするsiRNAと記載する本発明のHUSK ivT−RNAとをトランスフェクトした細胞によるHMGA2発現の量を示す。HMGA2発現をRT−PCRにより測定したが、これを、RNAを受けていない細胞と比較して示す。Sox2タンパク質は、HMGA2の下方制御を引き起こすことが公知であるので、細胞にSox2をコードするHUSK ivT RNAをトランスフェクトした24時間後に観察されるHMGA2の低減は、HUSK ivT RNAから生成されるSox2タンパク質が、転写抑制因子としてのその生物学的な活性を保持し、高度に活性であったことを示す。図13Dは、Sox2(黒色の四角)、Lin28(黒色の丸)またはSox2とLin28との両方(中抜きの三角)をコードするHUSK ivT−RNAを24時間間隔で3回トランスフェクトした細胞によるHMGA2発現の量をさらに示す。HMGA2発現を、RT−PCRにより記載する時間に測定したが、これを、模擬トランスフェクトした細胞と比べて示す。HMGA2は、let7 miRNAの公知の標的であり、let7 miRNAは、Lin28タンパク質の公知の標的であるので、Lin28をコードするHUSK ivT RNAをトランスフェクトした細胞で観察されるHMGA2発現の増加は、単独タンパク質をコードするHUSK ivT RNAのトランスフェクションが、直接の標的と下流の標的との両方の発現の変化を引き起こすために十分であることを示し、このことは、細胞の遺伝子発現パターンの調節におけるHUSK ivT−RNAトランスフェクションの有用性を証明する。
【0106】
図13Eは、MyoD1をコードするHUSK ivT−RNAをトランスフェクトした、5−アザ−dCを用いてまたは用いずに培養したCCD−1109Sk成体皮膚線維芽細胞を示す。CDH15およびDESの発現を、RT−PCRにより記載する時間に測定した。これらの結果は、MyoD1をコードするHUSK ivT RNAをトランスフェクトした細胞が、転写活性化因子としてのその生物学的な活性を維持するMyoD1タンパク質を生成することを示す。さらに、これらの結果は、HUSK ivT−RNAトランスフェクションを、脱メチル化剤5−アザ−dCのような小分子と組み合わせて、コードされるタンパク質の効果を増進することの有用性を証明する。なぜなら、CDH15およびDES(MyoD1の2つの標的)の発現が、5−アザ−dCに曝露した細胞において、この化学物質に曝露していない細胞と比較して、およそ10倍増進されるからである。図13Fは、(13E)と同様にしてトランスフェクトした試料から回収した全細胞可溶化液中でウェスタンブロットにより測定したMyoD1タンパク質のレベルを示す。これらの結果は、HUSK ivT RNAによりコードされるタンパク質は迅速に分解され得るが、下流の標的に対する効果は、コードされるタンパク質が分解された後に長く存続できることを示す(CDH15の発現は、トランスフェクションの24時間後、MyoD1タンパク質が分解された時間後にピークになることに留意されたい)。この結果は、トランスフェクションの目標が、以下に論じることと同様に細胞における表現型変化を引き起こすことである場合は、重要である。
【0107】
表4は、細胞をある型から別の型に変換するために今日までに用いられている公知のタンパク質因子および形質導入法の組合せを列挙する。しかし、これらの細胞型変換法は全て、DNAベクターに依存し、その結果、細胞は、医療用途のために安全でない可能性がある。対照的に、HUSK ivT−RNAの反復送達による延長一過性トランスフェクションは、細胞型に影響するかまたはそれを変更することが公知のあるいくつかの内因性タンパク質の発現を増加することにより、これらのDNAベクターに基づくアプローチに対して、表現型変化を達成するための安全な代替を提供する。HUSK ivT−RNAのトランスフェクションおよび免疫抑制は、in vitroまたはin vivoで行うことができる。
【0108】
本発明のあるいくつかの実施形態は、細胞の表現型変化を引き起こすことが公知の特定のタンパク質をコードするHUSK ivT−RNAの反復送達による延長一過性トランスフェクションにより細胞の表現型を変更する方法を対象とする。例えば、成体海馬幹細胞は、因子Ascl1をコードするHUSK ivT−RNAを用いる自然免疫応答の抑制と組み合わせた反復トランスフェクションにより、オリゴデンドロサイトに分化させることができる。別の例において、膵臓外分泌細胞は、反復トランスフェクションと、因子Ngn3およびPdx1をコードするHUSK ivT−RNAを用いる自然免疫応答の抑制とにより、インスリン生成ベータ細胞に分化転換させることができる。本明細書に記載される新しい技術は、使用者が、1つまたは複数のそれぞれのHUSK ivT−RNAの所望の相対的な量を加えて、コードされるタンパク質の発現の所望のレベルを達成し、所望の表現型変化を引き起こすことを可能にする。その他の例は、表2に列挙される。1より多いタンパク質を発現させる必要がある場合、いくつかのタンパク質を単独転写物または異なる転写物にコードする選択肢があり、このことは、タンパク質発現の相対的な量のより精密な制御をもたらし得る。
【0109】
ivT RNAによりコードされる1つまたは複数のタンパク質の発現を、反復トランスフェクションおよび免疫抑制を用いて増加させることにより細胞の分化、分化転換または脱分化を引き起こすその他の例は、以下の例を含む:
1.細胞が成体海馬幹細胞であり、コードされるタンパク質がAscl1であり、表現型変化が、オリゴデンドロサイトへの前記幹細胞の分化である;
2.細胞が神経幹細胞であり、該細胞に、それぞれOct4、Klf4またはc−Mycタンパク質をコードする異なるivT RNAを各トランスフェクションステップにてトランスフェクトし、表現型変化が、多能性幹細胞への前記神経幹細胞の脱分化である。
3.細胞が非インスリン生成膵臓外分泌細胞であり、該細胞に、それぞれNgn3、Pdx1およびMafaタンパク質をコードする異なるivT RNAを各トランスフェクションステップにてトランスフェクトし、表現型変化が、インスリン生成ベータ島細胞への前記非インスリン生成膵臓外分泌細胞の分化転換である;
4.細胞が線維芽細胞またはケラチノサイトであり、細胞に、それぞれOct4、Sox2、Klf4およびc−Mycタンパク質をコードする異なるivT RNAを各トランスフェクションステップにてトランスフェクトし、表現型変化が、多能性幹細胞への前記線維芽細胞の脱分化である。
5.細胞が、線維芽細胞、軟骨芽細胞、平滑筋細胞および網膜色素上皮細胞を含む群から選択されるメンバーであり、コードされるタンパク質がMyoDであり、所望の表現型変化が、筋芽細胞への前記細胞の分化転換である。
6.細胞が線維芽細胞であり、コードされるタンパク質がPU.1およびC/EBPα/βであり、所望の表現型変化が、マクロファージへの前記線維芽細胞の分化転換である。
【0110】
その他の実施形態において、所望の表現型変化は、軸策のような突起の増殖、接着、遊走または成長である。
【0111】
【表4】

JessbergerらおよびZhouらはともに、in vivoで行われた細胞型変換実験について記載している。本発明のHUSK ivT−RNA転写物は、in vivoで用いることができ、細胞の永続的な遺伝的変化を引き起こす危険性を有さない。
【0112】
規定された因子をHUSK ivT−RNAトランスフェクションにより発現させることに加えて、細胞において新しい遺伝子発現プログラムを確立することを、現在の細胞型により発現されるが標的細胞型により発現されないあるいくつかの因子の発現を阻害することにより増進できる。例えば、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるバルプロ酸およびトリコスタチンAは、多能性幹細胞の誘導、すなわち所望の標的細胞型へのそれらの脱分化を増加させることが示されている。(Huangfuら、「Induction of pluripotent stem cells by defined factors is greatly improved by small−molecule compounds.」Nat. Biotech.2008年を参照されたい)。脱メチル化剤5−アザ−2’−デオキシシチジンは、多能性幹細胞への体細胞の脱分化を増進することが示されている。(Mikkelsenら、「Dissecting direct reprogramming through integrative genomic analysis.」Nature. 2008年を参照されたい)、そしてG9aヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤BIX−01294は、多能性幹細胞への神経幹細胞の脱分化を促進することが示されている。(Shiら、「A Combined Chemical and Genetic Approach for the Generation of Induced Pluripotent Stem Cells.」Cell Stem Cell. 2巻、2008年を参照されたい)。さらに、これらの小分子の標的および所望の表現型変化を阻害するその他の標的は、siRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用により直接阻害できる。我々は、例えば、G9aヒストンメチルトランスフェラーゼを標的にするsiRNAを、単独または自然免疫応答およびivT−RNAトランスフェクションを抑制するように設計されたsiRNAカクテルとの組合せで用いて、このタンパク質の発現を著しく低減できることを示している。
【0113】
上記のように、活性な増殖は、頻繁なトランスフェクションに伴う細胞傷害性を最小限にするために重要である。このために、増殖を抑制することが公知のいくつかの遺伝子(CDKN1A、CDKN2A、RB1およびTP53を含む)の発現を、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを用いて低減することも、ivT−RNAにコードされるタンパク質の発現および細胞生存性を改良する。あるいくつかの実施形態は、核酸をトランスフェクトした細胞の細胞増殖を、以下の1つまたは複数を抑制することにより増加することを対象とする:CDKN1A、CDKN2A、RB1およびTP53。その他の実施形態において、細胞の表現型を変更する方法は、前記細胞を、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(バルプロ酸またはトリコスタチンA)、5−アザ−2’−デオキシシチジンのような脱メチル化剤またはG9aヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤BIX−01294と接触させて、所望の表現型変化を最適化するステップをさらに含む。
【0114】
医薬品の将来は、細胞型を制御するための技術に基づく療法を特徴とする。疾患または損傷で失われた細胞、組織および臓器の置換は、体の損傷された領域への移植のために新しい組織特異的細胞をin vitroで作製する方法を必要とする。細胞にDNA、RNAまたはタンパク質をトランスフェクトすることは、これらの組織特異的細胞を、幹細胞の分化をin vitroで導くことにより作製する手段だけでなく、細胞型の特異化および維持を制御する分子経路を、これらのプロセスに関与する種々のタンパク質を選択的に過剰発現させることにより解明する手段も提供する。DNAトランスフェクションにより細胞を形質転換することは、安定な遺伝子発現を達成する単純な方法であるが、遺伝子改変により細胞型を変化させることにより生じる安全性の問題は、再生医薬品の用途におけるこの技術の使用を制限する可能性がある。HUSK ivT−RNAでの一過性トランスフェクションにより細胞型を制御することは、以前の方法に対する改良を提供する。なぜなら、これらの分子は、それらの機能を一旦行うと、細胞により代謝され、提供者から遺伝的に区別不可能なようになるからである。RNAのトランスフェクションは、特に、2つの重要な利点を提供する:1.RNAは、妥当な長さおよび公知の配列の任意のタンパク質についてin vitroで容易に合成でき、2.タンパク質の多くのコピーが、細胞により各RNA分子から合成でき、送達されなければならない物質の量を最小限にし、よって、細胞ストレスを最小限にする。
【0115】
タンパク質改変体
本発明は、典型的に、特に所望の表現型変化を引き起こす対象の内因性タンパク質をコードするmRNAから作製されるivT−RNAを用いることを対象とするが、有用で新規な特徴を提供するこれらの内因性タンパク質の生物学的に活性なタンパク質改変体に翻訳されるivT−RNAを用いることが有用であり得る。あるいくつかのタンパク質改変体またはコードされるタンパク質は、例えば、その他の可能性のある特徴のうちで、安定性を増加させるためまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)のような蛍光タグを含めて蛍光顕微鏡によりコードされるタンパク質のリアルタイムでの視覚化を可能にするために工学的に操作できる融合タンパク質を含む。よって、ivT−RNAは、それぞれの内因性タンパク質に実質的に相同であるタンパク質改変体をコードできる。本発明の目的のために、タンパク質の類似体は、天然に存在し、所望の生物学的な活性を保持する実質的に相同なタンパク質を含む。
【0116】
本明細書で用いる場合、アミノ酸配列が、少なくとも約70〜75%、典型的には少なくとも約80〜85%、最も典型的には少なくとも約90〜95%、97%、98%または99%以上相同である場合に、2つのタンパク質(またはタンパク質の領域)は実質的に相同である。実質的に相同なアミノ酸配列は、対応する核酸配列またはその部分に、以下により詳細に記載されるストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列によりコードされる。
【0117】
ivT−RNAは、芳香族フェニルアラニントリプトファンチロシン疎水性ロイシンイソロイシンバリン極性グルタミンアスパラギン塩基性アルギニンリジンヒスチジン酸性アスパラギン酸グルタミン酸小さいアラニンセリンスレオニンメチオニングリシンのような保存的アミノ酸置換を有する内因性タンパク質のコード配列を含むことができる。
【0118】
改変体ポリペプチドは、1つもしくは複数の置換、欠失、挿入、反転、融合および短縮化またはこれらの任意の組合せによりアミノ酸配列が異なり得る。改変体ポリペプチドは、完全に機能的であり得るか、または1つもしくは複数の活性における機能を欠くことができる。
【0119】
完全に機能的な改変体は、典型的に、保存的変異または重要でない残基もしくは重要でない領域での変異だけを含有する。機能的改変体は、機能の変更をもたらさないかもしくは重要でない変更をもたらす類似のアミノ酸の置換も含有し得る。代わりに、このような置換は、機能にある程度の正または負の影響を与えてよい。
【0120】
実質的な相同性は、対象の内因性タンパク質をコードするmRNA全体、またはその生物学的に活性な断片もしくは改変体をコードするmRNAに対してであり得る。よって、断片は、タンパク質の1つまたは複数の生物学的な活性を保持する任意の長さを含み得る。断片は、不連続であり得る(その他のアミノ酸またはポリペプチドに融合されていない)か、またはより大きいポリペプチド内にあり得る。
【0121】
アンチセンス核酸
本発明のその他の実施形態は、TP53、TLR3、TLR7、RARRES3、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNK、IFNB1、IL6、TICAM1、TICAM2、MAVS、STAT1、STAT2、EIF2AK2、IRF3、TBK1、CDKN1A、CDKN2A、RNASEL、IFNAR1、IFNAR2、OAS1、OAS2、OAS3、OASL、RB1、ISG15、ISG20、IFIT1、IFIT2、IFIT3およびIFIT5またはそれらの生物学的に活性な断片もしくは改変体もしくは類似体(以下、「免疫抑制タンパク質」)を含む自然免疫応答に関連するあるいくつかのタンパク質の発現を低減または阻害するためのアンチセンス核酸(DNAまたはRNAのいずれか)または小型阻害RNA(siRNA)の使用を対象とする。標的にされる免疫抑制タンパク質をコードするmRNAおよび遺伝子配列は、受託番号により本明細書に示される。これらの公知の配列に基づいて、発現を止めるために免疫抑制タンパク質をコードするそれぞれの遺伝子もしくはmRNAと十分にハイブリダイズするアンチセンスDNAまたはRNAを容易に設計して、当技術分野において公知の方法を用いて工学的に作製できる。
【0122】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、動物および人間における疾患状態の治療において治療成分として用いられている。リボザイムを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド薬物は、ヒトに安全にかつ効果的に投与されており、多数の臨床試験が現在進行中である。よって、オリゴヌクレオチドが、細胞、組織および動物、特にヒトの治療のための治療計画において有用であるように構成できる有用な治療様式であり得ることが確立されている。例えばAgrawal, S.およびZhao, Q.(1998年)Curr. Opi. Chemical Biol. 2巻、519〜528頁;Agrawal, SおよびZhang, R.(1997年)CIBA Found. Symp. 209巻、60〜78頁;ならびにZhao, Qら、(1998年)、Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 8巻、451〜458頁(これらの内容全体は、本明細書で完全に述べられているかのごとく本明細書に参照により組み込まれる)を参照されたい。Anderson, K.O.ら、(1996年)Antimicrobial Agents Chemother. 40巻、2004〜2011頁およびBorchersらによる米国特許第6,828,151号。
【0123】
アンチセンス核酸を作製する方法は、当技術分野において周知である。本明細書で用いる場合、「標的核酸」との用語は、免疫抑制タンパク質をコードする核酸(プレmRNAおよびmRNAを含む)および該タンパク質をコードする遺伝子、ならびにそのようなRNAに由来するcDNAも包含する。核酸オリゴマー化合物とその標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションは、標的核酸の通常の機能に干渉し、それにより、例えばivT−RNAの翻訳が低減する。標的核酸と特異的にハイブリダイズする化合物による標的核酸の機能のこの調整は、一般的に「アンチセンス」とよばれる。干渉されるDNAの機能は、複製および転写を含む。干渉されるRNAの機能は、例えばタンパク質翻訳部位へのRNAの転位、RNAからのタンパク質の翻訳およびRNAが従事するかもしくはRNAにより促進され得る触媒活性のような全ての生命機能を含む。標的核酸機能のこのような干渉の全体的な影響は、それぞれのタンパク質の発現の調整である。本発明の関係において、「調整」とは、免疫抑制タンパク質についての遺伝子もしくはmRNAの発現の低減または阻害を意味する。ある実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、cDNAである。
【0124】
標的化プロセスは、アンチセンス相互作用のために、免疫抑制タンパク質をコードする標的遺伝子もしくはmRNA内の1つまたは複数の部位を決定して、所望の阻害効果が達成されるようにするステップを含む。本発明の関係において、好ましい遺伝子内部位は、遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始または終結コドンを包含する領域である。当技術分野において公知であるように、翻訳開始コドンは典型的に5’−AUG(転写mRNA分子中で;対応するDNA分子中で5’−ATG)であるので、翻訳開始コドンは、「AUGコドン」、「開始コドン」または「AUG開始コドン」ともよばれる。遺伝子の少数は、RNA配列5’−GUG、5’−UUGまたは5’−CUGを有する翻訳開始コドンを有し、5’−AUA、5’−ACGおよび5’−CUGは、in vivoで機能することが示されている。よって、「翻訳開始コドン」および「開始コドン」との用語は、それぞれの場合の開始アミノ酸は典型的にメチオニン(真核生物において)またはホルミルメチオニン(原核生物において)であるが、多くのコドン配列を包含できる。真核生物および原核生物の遺伝子は、2以上の代替開始コドンを有することがあり、これらのいずれも、特定の細胞型もしくは組織において、または特定の条件の組の下で翻訳開始のために優先的に利用され得ることも当技術分野において公知である。本発明の関係において、「開始コドン」および「翻訳開始コドン」とは、遺伝子から転写されたmRNA分子の翻訳を開始するためにin vivoで用いられる1つまたは複数のコドンのことをいう。しかし、日常的な実験により、アンチセンスまたはsiRNAの最適配列が決定される。
【0125】
遺伝子の翻訳終結コドン(または「停止コドン」)が、3つの配列、すなわち5’−UAA、5’−UAGおよび5’−UGA(対応するDNA配列は、それぞれ5’−TAA、5’−TAGおよび5’−TGA)のうちの1つを有し得ることも当技術分野において公知である。「開始コドン領域」および「翻訳開始コドン領域」との用語は、翻訳開始コドンからいずれかの方向(すなわち5’または3’)への約25〜約50隣接ヌクレオチドを包含するmRNAまたは遺伝子の部分のことをいう。同様に、「停止コドン領域」および「翻訳終結コドン領域」との用語は、翻訳終結コドンからいずれかの方向(すなわち5’または3’)への約25〜約50隣接ヌクレオチドを包含するmRNAまたは遺伝子の部分のことをいう。
【0126】
翻訳開始コドンと翻訳終結コドンとの間の領域のことをいうことが当技術分野において公知のオープンリーディングフレーム(ORF)または「コード領域」は、効率的に標的にされ得る領域でもある。その他の標的領域は、翻訳開始コドンから5’方向のmRNAの部分のことをいい、よって5’キャップ部位とmRNAの翻訳開始コドンとの間のヌクレオチドまたは遺伝子上の対応するヌクレオチドを含むことが当技術分野において公知の5’非翻訳領域(5’UTR)、ならびに翻訳終結コドンから3’方向のmRNAの部分のことをいい、よって翻訳終結コドンとmRNAの3’端との間のヌクレオチドまたは遺伝子上の対応するヌクレオチドを含むことが当技術分野において公知の3’非翻訳領域(3’UTR)を含む。
【0127】
改変体を、転写を開始または停止するための代替シグナルの使用により生成でき、プレmRNAおよびmRNAが1つより多い開始コドンまたは停止コドンを有することができることも、当技術分野において公知である。代替開始コドンを用いたプレmRNAまたはmRNAを起源とする改変体は、そのプレmRNAまたはmRNAの「代替開始改変体」として公知である。代替停止コドンを用いるこれらの転写物は、そのプレmRNAまたはmRNAの「代替停止改変体」として公知である。代替停止改変体のある具体的な型は、生成される複数の転写物が、転写機構による「ポリA停止シグナル」のうちの1つの代替選択に起因し、それによりユニークポリA部位にて終結する転写物を生成する「ポリA改変体」である。
【0128】
1つまたは複数の標的部位が一旦同定されると、標的に十分に相補的であり、すなわち標的と十分な特異性でハイブリダイズして、遺伝子発現および転写またはmRNA翻訳を阻害する所望の効果を与えるアンチセンス核酸を選択する。
【0129】
本発明の関係において、「ハイブリダイゼーション」は、相補ヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基間のワトソン−クリック、フーグスティーンまたは逆向きフーグスティーン水素結合であり得る水素結合を意味する。例えば、アデニンとチミンとは、水素結合の形成により対形成する相補ヌクレオ塩基である。本明細書で用いる場合、「相補的」とは、2つのヌクレオチド間の正確な対形成の能力のことをいう。例えば、核酸のある位置のヌクレオチドが、DNAまたはRNA分子の同じ位置のヌクレオチドと水素結合できるならば、該核酸と該DNAまたはRNAとは、その位置にて互いに相補的であるとみなされる。該核酸と該DNAまたはRNAとは、各分子中の対応する位置の十分な数が、互いに水素結合できるヌクレオチドで占められている場合、互いに相補的である。よって、「特異的にハイブリダイズ可能」および「相補的」は、核酸とDNAまたはRNA標的との間に安定で特異的な結合が生じるような十分な程度の相補性または正確な対形成を示すために用いられる用語である。アンチセンス化合物は、標的DNAまたはRNA分子との該化合物の結合が、標的DNAまたはRNAの通常の機能に干渉して有用性の喪失を引き起こし、かつ特異的結合が所望される条件下、すなわちin vivoアッセイまたは治療的処置の場合に生理的条件下、およびin vitroアッセイの場合にアッセイまたは細胞培養を行う条件下で非標的配列とのアンチセンス化合物の非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が存在する場合、特異的にハイブリダイズ可能である。
【0130】
ストリンジェンシーの種々の条件を、以下に記載されるようにハイブリダイゼーションのために用いることができる。アンチセンス化合物の配列は、特異的にハイブリダイズ可能であるためにその標的核酸の配列と100%相補的である必要がないと当技術分野において理解されている。アンチセンス化合物は、標的DNAまたはRNA分子との該化合物の結合が、標的DNAまたはRNAの通常の機能に干渉して有用性の喪失を引き起こし、かつ特異的結合が所望される条件下、すなわちin vivoアッセイまたは治療的処置の場合に生理的条件下、およびin vitroアッセイの場合にアッセイを行う条件下で非標的配列とのアンチセンス化合物の非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が存在する場合、特異的にハイブリダイズ可能である。
【0131】
本明細書で用いる場合、「低ストリンジェンシー、中程度ストリンジェンシー、高ストリンジェンシーまたは非常に高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」との用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件について記載する。ハイブリダイゼーション反応を行うための手引きは、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y.(1989年)、6.3.1〜6.3.6(参照により組み込まれる)で見出すことができる。この参考文献に水性または非水性法が記載され、どちらも用いることができる。本明細書で言及する特異的ハイブリダイゼーション条件は、次のとおりである:1)約45℃での6倍の塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、その後に0.2倍SSC、0.1%SDS中で少なくとも50℃での2回の洗浄(洗浄温度は、低ストリンジェンシー条件について55℃まで増加できる)の低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件、2)約45℃での6倍SSC中、その後に0.2倍SSC、0.1%SDS中で60℃での1または複数回の洗浄の中程度ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件、3)約45℃での6倍SSC中、その後に0.2倍SSC、0.1%SDS中で65℃での1または複数回の洗浄の高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件、ならびに好ましくは4)非常に高いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、65℃での0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS、その後の0.2倍SSC、1%SDSで65℃での1または複数回の洗浄である。非常に高いストリンジェンシー条件(4)は、好ましい条件であり、そうでないと記載しない限り用いられるものである。
【0132】
本発明の関係における核酸は、リボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)またはそれらの模倣物のオリゴマーあるいはポリマーのことをいう「オリゴヌクレオチド」を含む。この用語は、天然に存在するヌクレオ塩基と糖と共有的ヌクレオシド間(主鎖)結合とで構成されるオリゴヌクレオチド、および同様に機能する天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。このような改変または置換オリゴヌクレオチドは、例えば細胞取り込みの増進、核酸標的との親和性の増進、およびヌクレアーゼ存在下での安定性の増進のような所望の特性のために、天然形よりもしばしば好まれる。DNA/RNAキメラも含まれる。
【0133】
アンチセンス核酸は、アンチセンス化合物の好ましい形態であるが、本発明は、それらに限定されないがオリゴヌクレオチド模倣物を含むその他のオリゴマーアンチセンス化合物も包含する。本発明に従うアンチセンス化合物は、好ましくは、約8〜約50ヌクレオ塩基(すなわち約8〜約50の連結されたヌクレオシド)を含む。特に好ましいアンチセンス化合物は、約12〜約30ヌクレオ塩基を含むアンチセンス核酸である。アンチセンス化合物は、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)核酸(オリゴザイム)および標的核酸とハイブリダイズしてその発現を調整するその他の短い触媒RNAまたは触媒核酸を含む。
【0134】
当技術分野において公知であるように、ヌクレオシドは、塩基−糖の組合せである。ヌクレオシドの塩基部分は、通常、複素環式塩基である。このような複素環式塩基の2つの最も一般的なクラスは、プリンおよびピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有的に連結したリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むこれらのヌクレオシドについて、リン酸基は、糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分のいずれかに連結し得る。オリゴヌクレオチドの形成において、リン酸基は、隣接ヌクレオシドを互いに共有的に連結して、直鎖状ポリマー化合物を形成する。次いで、この直鎖状ポリマー構造の両端をさらにつないで環状構造を形成できる。しかし、開放直鎖状構造が一般的に好ましい。オリゴヌクレオチド構造内で、リン酸基は、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間主鎖を形成すると一般的にいわれる。RNAおよびDNAの通常の結合または主鎖は、3’から5’へのホスホジエステル結合である。
【0135】
本発明において有用な好ましいアンチセンス化合物の具体的な例は、改変主鎖または非天然ヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドを含む。本明細書で定義されるように、改変主鎖を有するオリゴヌクレオチドは、主鎖中にリン原子を保持するもの、および主鎖中にリン原子を有さないものを含む。本明細書の目的のため、および当技術分野において時折参照されるように、それらのヌクレオシド間主鎖中にリン原子を有さない改変オリゴヌクレオチドも、オリゴヌクレオシドとみなすことができる。好ましい改変オリゴヌクレオチド主鎖は、例えば、通常の3’−5’結合を有するホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキル−ホスホトリエステル、3−アルキレンホスホネート、5’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルおよびその他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデートを含むホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェートならびにボラノホスフェート、これらの2’−5’連結類似体、ならびに1つまたは複数のヌクレオチド間結合が3’から3’、5’から5’または2’から2’結合である反転極性を有するものを含む。反転極性を有する好ましいオリゴヌクレオチドは、最も3’側のヌクレオチド間結合にて単独の3’から3’の結合、すなわち塩基性であり得る単独反転ヌクレオシド残基(ヌクレオ塩基は喪失しているかまたはその代わりにヒドロキシル基を有する)を含む。種々の塩、混合塩および遊離の酸の形態も含まれる。
【0136】
上記のリン含有結合の調製について教示する代表的な米国特許は、それらに限定されないが、米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;第5,194,599号;第5,565,555号;第5,527,899号;第5,721,218号;第5,672,697号および第5,625,050号(これらのあるものは本出願と共通して所有され、これらのそれぞれは本明細書に参照により組み込まれる)を含む。その中にリン原子を含まない好ましい改変オリゴヌクレオチド主鎖は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合複素原子およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つもしくは複数の短鎖複素原子もしくは複素環ヌクレオシド間結合により形成される主鎖を有する。これらは、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される)を有するもの;シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;リボアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖;ならびに混合されたN、O、SおよびCH要素部分を有するその他のものを含む。
【0137】
上記のオリゴヌクレオシドの調製について教示する代表的な米国特許は、それらに限定されないが、米国特許第5,034,506号;第5,166,315号;第5,185,444号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,235,033号;第5,264,562号;第5,264,564号;第5,405,938号;第5,434,257号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,541,307号;第5,561,225号;第5,596,086号;第5,602,240号;第5,610,289号;第5,602,240号;第5,608,046号;第5,610,289号;第5,618,704号;第5,623,070号;第5,663,312号;第5,633,360号;第5,677,437号;第5,792,608号;第5,646,269号および第5,677,439号(これらのあるものは本出願と共通して所有され、これらのそれぞれは本明細書に参照により組み込まれる)を含む。
【0138】
その他の好ましいオリゴヌクレオチド模倣物において、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合、すなわち主鎖はともに、新規な基で置き換えられる。塩基単位は、適当な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。あるこのようなオリゴマー化合物、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣物は、ペプチド核酸(PNA)とよばれる。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖−主鎖は、アミド含有主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖で置き換えられる。ヌクレオ塩基は保持され、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子と直接または間接的に結合する。PNA化合物の調製について教示する代表的な米国特許は、それらに限定されないが、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号(これらのそれぞれは本明細書に参照により組み込まれる)を含む。PNA化合物についてのさらなる教示は、Nielsenら、Science、1991年、254巻、1497〜1500頁で見出すことができる。
【0139】
本発明の最も好ましい実施形態は、ホスホロチオエート主鎖を有するオリゴヌクレオチドと、複素原子主鎖を有するオリゴヌクレオシド、特に上で参照した米国特許第5,489,677号の−CH−−NH−−O−−CH−−、−−CH−−N(CH)−−O−−CH−−[メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖として公知]、−−CH−−O−−N(CH)−−CH−−、−−CH−−N(CH)−−N(CH)−CH−−および−−O−−N(CH)−−CH−−CH−−[ここで、天然ホスホジエステル主鎖は、−−O−−P−−O−−CHと表される]、ならびに上で参照した米国特許第5,602,240号のアミド主鎖である。上で参照した米国特許第5,034,506号のモルホリノ主鎖構造を有するオリゴヌクレオチドも好ましい。
【0140】
改変オリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の置換糖部分も含有してよい。好ましいオリゴヌクレオチドは、以下の1つを2’位に含む:OH;F;O−−、S−−もしくはN−アルキル;O−−、S−−もしくはN−アルケニル;O−−、S−−もしくはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキル(ここで、これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、C〜C10アルキルもしくはC〜C10アルケニルおよびアルキニルで置換されてよいかまたは置換されない)。特に好ましくは、O[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CH).sub.nNH、O(CHCH、O(CHONHおよびO(CHON[(CH).sub.nCH)](ここで、nおよびmは1〜約10である)である。その他の好ましいオリゴヌクレオチドは、以下の1つを2’位に含む:C〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリルもしくはO−アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、介入物、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改良するための基もしくはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改良するための基、ならびに同様の特性を有するその他の置換基である。好ましい改変は、2’−メトキシエトキシ(2’−−O−−(2−メトキシエチル)もしくは2’−MOEとしても公知の2’−−O−−CHCHOCH)(Martinら、Helv. Chim. Acta、1995年、78巻、486〜504頁)、すなわちアルコキシアルコキシ基を含む。さらに好ましい改変は、2’−DMAOEとしても公知の以下の実施例に記載される2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CHON(CH基、およびこれもまた本明細書の実施例に記載される2’−ジメチルアミノ−エトキシエトキシ(当技術分野において2’−O−ジメチルアミノ−エトキシエチルまたは2’−DMAEOEとしても公知)、すなわち2’−−O−−CH−−O−−CH−−N(CHを含む。
【0141】
さらに好ましい改変は、2’−ヒドロキシル基が糖の環の3’または4’炭素原子に連結し、それにより二環式糖部分を形成するロックド核酸(LNA)を含む。結合は、好ましくは、2’酸素原子と4’炭素原子とを橋架けするメチレン(−−CH−−)基(ここで、nは1または2である)である。LNAおよびその調製は、WO98/39352およびWO99/14226に記載される。
【0142】
その他の好ましい改変は、2’−メトキシ(2’−−O−−CH)、2’−アミノプロポキシ(2’−−OCHCHCHNH)、2’−アリル(2’−−CH−CH=CH)、2’−O−アリル(2’−O−−CH−CH=CH)および2’−フルオロ(2’−F)を含む。2’−改変は、アラビノ(上)位またはリボ(下)位にあってよい。好ましい2’−アラビノ改変は、2’−Fである。同様の改変を、オリゴヌクレオチド上のその他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上または2’−5’連結オリゴヌクレオチド中の糖の3’位、および5’末端ヌクレオチドの5’位に作製してもよい。オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖模倣物を有してもよい。このような改変糖構造の調製について教示する代表的な米国特許は、それらに限定されないが、米国特許第4,981,957号;第5,118,800号;第5,319,080号;第5,359,044号;第5,393,878号;第5,446,137号;第5,466,786号;第5,514,785号;第5,519,134号;第5,567,811号;第5,576,427号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,610,300号;第5,627,053号;第5,639,873号;第5,646,265号;第5,658,873号;第5,670,633号;第5,792,747号;および第5,700,920号(これらのあるものは本出願と共通して所有され、これらのそれぞれは本明細書に参照により組み込まれる)を含む。
【0143】
オリゴヌクレオチドは、ヌクレオ塩基(当技術分野において単純に「塩基」としばしばよばれる)改変または置換も含んでよい。本明細書で用いる場合、「未改変」または「天然」ヌクレオ塩基は、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)と、ピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。改変ヌクレオ塩基は、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよびその他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよびその他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニル(−−C.ident.C−−CH)ウラシルおよびシトシンならびにピリミジン塩基のその他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよびその他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよびその他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニンおよび3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンのようなその他の合成および天然のヌクレオ塩基を含む。さらなる改変ヌクレオ塩基は、フェノキサジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾチアジン−2(3H)−オン)のような三環式ピリミジン、置換フェノキサジンシチジン(例えば9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド[4,5−b]インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)のようなG−クランプを含む。改変ヌクレオ塩基は、プリンまたはピリミジン塩基がその他の複素環で置き換えられたもの、例えば7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジンおよび2−ピリドンも含んでよい。さらなるヌクレオ塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering、858〜859頁、Kroschwitz, J. I.編、John Wiley & Sons、1990年に開示されるもの、Englischら、Angewandte Chemie, International Edition、1991年、30巻、613頁により開示されるもの、ならびにSanghvi, Y. S.、15章、Antisense Research and Applications、289〜302頁、Crooke, S. T.およびLebleu, B.編、CRC Press、1993年により開示されるものを含む。これらのヌクレオ塩基のあるいくつかは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増加させるために特に有用である。これらは、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含む5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンならびにN−2、N−6およびO−6置換プリンを含む。5−メチルシトシン置換は、核酸2重鎖安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示されており(Sanghvi, Y. S.、Crooke, S. T.およびLebleu, B.編、Antisense Research and Applications、CRC Press、Boca Raton、1993年、276〜278頁)、2’−O−メトキシエチル糖改変と組み合わせた場合はさらにより特に、現在で好ましい塩基置換である。
【0144】
あるいくつかの上記の改変ヌクレオ塩基およびその他の改変ヌクレオ塩基の調製について教示する代表的な米国特許は、それらに限定されないが、上記の米国特許第3,687,808号、ならびに米国特許第4,845,205号;第5,130,302号;第5,134,066号;第5,175,273号;第5,367,066号;第5,432,272号;第5,457,187号;第5,459,255号;第5,484,908号;第5,502,177号;第5,525,711号;第5,552,540号;第5,587,469号;第5,594,121号、第5,596,091号;第5,614,617号;第5,645,985号;第5,830,653号;第5,763,588号;第6,005,096号;および第5,681,941号(これらのあるものは本出願と共通して所有され、これらのそれぞれは本明細書に参照により組み込まれる)、ならびに本出願と共通して所有され、これもまた本明細書に参照により組み込まれる米国特許第5,750,692号を含む。
【0145】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の改変は、オリゴヌクレオチドに、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布もしくは細胞への取り込みを増進する1つもしくは複数の部分またはコンジュゲートを化学的に連結することを含む。本発明の化合物は、第1級または第2級ヒドロキシル基のような官能基と共有結合したコンジュゲート基を含み得る。本発明のコンジュゲート基は、介入物、受容体分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を増進する基、およびオリゴマーの薬物動態特性を増進する基を含む。典型的なコンジュゲート基は、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、フォレート、フェナンスリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリンおよび色素を含む。薬力学的特性を増進する基は、本発明の関係において、オリゴマーの取り込みを改良し、分解に対するオリゴマーの耐性を増進し、かつ/またはRNAとの配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基を含む。薬物動態特性を増進する基は、本発明の関係において、オリゴマーの取り込み、分布、代謝または排出を改良する基を含む。代表的なコンジュゲート基は、1992年10月23日に出願された国際特許出願第PCT/US92/09196号(その開示全体は、本明細書に参照により組み込まれる)に開示される。コンジュゲート部分は、それらに限定されないが、コレステロール部分(Letsingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1989年、86巻、6553〜6556頁)、コール酸(Manoharanら、Bioorg. Med. Chem. Let.、1994年、4巻、1053〜1060頁)、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharanら、Ann. N.Y. Acad. Sci.、1992年、660巻、306〜309頁;Manoharanら、Bioorg. Med. Chem. Let.、1993年、3巻、2765〜2770頁)、チオコレステロール(Oberhauserら、Nucl. Acids Res.、1992年、20巻、533〜538頁)、脂肪鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison−Behmoarasら、EMBO J.、1991年、10巻、1111〜1118頁;Kabanovら、FEBS Lett.、1990年、259巻、327〜330頁;Svinarchukら、Biochimie、1993年、75巻、49〜54頁)、リン脂質、例えばジヘキサデシル−rac−グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharanら、Tetrahedron Lett.、1995年、36巻、3651〜3654頁;Sheaら、Nucl. Acids Res.、1990年、18巻、3777〜3783頁)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharanら、Nucleosides & Nucleotides、1995年、14巻、969〜973頁)、またはアダマンタン酢酸(Manoharanら、Tetrahedron Lett.、1995年、36巻、3651〜3654頁)、パルミトイル部分(Mishraら、Biochim. Biophys. Acta、1995年、1264、229〜237頁)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crookeら、J. Pharmacol. Exp. Ther.、1996年、277、923〜937頁)のような脂質部分を含む。本発明のオリゴヌクレオチドは、薬物活性成分、例えばアスピリン、ワルファリン、フェノルブタゾン、イブプロフェン、スプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、(S)−(+)−プラノプロフェン、カプロフェン、ダンシルサルコシン、2,3,5−トリヨード安息香酸、フルフェナム酸、フォリン酸、ベンゾチアジアジド、クロロチアジド、ジアゼピン、インドメチシン、バルビツレート、セファロスポリン、サルファ剤、抗糖尿病剤、抗菌剤または抗生物質とコンジュゲートしてもよい。オリゴヌクレオチド−薬物コンジュゲートおよびそれらの調製は、米国特許出願第09/334,130号(1999年6月15日にファイル)(本明細書にその全体が参照により組み込まれる)に記載される。
【0146】
このようなオリゴヌクレオチドコンジュゲートの調製について教示する代表的な米国特許は、それらに限定されないが、米国特許第4,828,979号;第4,948,882号;第5,218,105号;第5,525,465号;第5,541,313号;第5,545,730号;第5,552,538号;第5,578,717号、第5,580,731号;第5,580,731号;第5,591,584号;第5,109,124号;第5,118,802号;第5,138,045号;第5,414,077号;第5,486,603号;第5,512,439号;第5,578,718号;第5,608,046号;第4,587,044号;第4,605,735号;第4,667,025号;第4,762,779号;第4,789,737号;第4,824,941号;第4,835,263号;第4,876,335号;第4,904,582号;第4,958,013号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,245,022号;第5,254,469号;第5,258,506号;第5,262,536号;第5,272,250号;第5,292,873号;第5,317,098号;第5,371,241号、第5,391,723号;第5,416,203号、第5,451,463号;第5,510,475号;第5,512,667号;第5,514,785号;第5,565,552号;第5,567,810号;第5,574,142号;第5,585,481号;第5,587,371号;第5,595,726号;第5,597,696号;第5,599,923号;第5,599,928号および第5,688,941号(これらのあるものは本出願と共通して所有され、これらのそれぞれは本明細書に参照により組み込まれる)を含む。
【0147】
所定の化合物中の全ての位置が均一に改変される必要はなく、実際に、上記の改変の1つより多くが、単独化合物またはオリゴヌクレオチド中の単独ヌクレオシドに導入されていればよい。本発明は、キメラ化合物であるアンチセンス化合物も含む。「キメラ」アンチセンス化合物または「キメラ」は、本発明の関係において、それぞれが少なくとも1つのモノマー単位、すなわちオリゴヌクレオチド化合物の場合はヌクレオチドでできている2つ以上の化学的に異なる領域を含有するアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的に、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増加、細胞による取り込みの増加、および/または標的核酸についての結合親和性の増加をオリゴヌクレオチドに与えるようにオリゴヌクレオチドが改変されている少なくとも1つの領域を含有する。オリゴヌクレオチドのさらなる領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断できる酵素の基質としての役割を果たし得る。例えば、RNアーゼHは、RNA:DNAの2重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。RNアーゼHの活性化は、よって、RNA標的の切断をもたらし、このことにより遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害の効率が大きく増進される。その結果として、キメラオリゴヌクレオチドを用いた場合に、同じ標的領域とハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドと比較して、より短いオリゴヌクレオチドを用いて同等の結果をしばしば得ることができる。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動と、必要であれば当技術分野において公知の関連する核酸ハイブリダイゼーション技術とにより日常的に検出できる。
【0148】
本発明のキメラアンチセンス化合物は、上記のような2つ以上のオリゴヌクレオチド、改変オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドおよび/もしくはオリゴヌクレオチド模倣物の複合構造として形成してよいか、またはこれらは、DNAおよびRNAで作製してよい(よってDNA/RNAキメラ)。このような化合物は、当技術分野において、ハイブリッドまたはギャップマーともよばれている。このようなハイブリッド構造の調製について教示する代表的な米国特許は、それらに限定されないが、米国特許第5,013,830号;第5,149,797号;第5,220,007号;第5,256,775号;第5,366,878号;第5,403,711号;第5,491,133号;第5,565,350号;第5,623,065号;第5,652,355号;第5,652,356号;および第5,700,922号(これらのあるものは本出願と共通して所有され、これらのそれぞれは本明細書に参照により組み込まれる)を含む。
【0149】
本発明の化合物は、その他の分子、分子構造もしくは化合物の混合物、例えばリポソーム、受容体標的化分子、経口、直腸、局所もしくはその他の製剤と、取り込み、分布および/または吸収を支援するために混合、カプセル化、コンジュゲートあるいは会合してもよい。このような取り込み、分布および/または吸収を支援する製剤の調製について教示する代表的な米国特許は、それらに限定されないが、米国特許第5,108,921号;第5,354,844号;第5,416,016号;第5,459,127号;第5,521,291号;第5,543,158号;第5,547,932号;第5,583,020号;第5,591,721号;第4,426,330号;第4,534,899号;第5,013,556号;第5,108,921号;第5,213,804号;第5,227,170号;第5,264,221号;第5,356,633号;第5,395,619号;第5,416,016号;第5,417,978号;第5,462,854号;第5,469,854号;第5,512,295号;第5,527,528号;第5,534,259号;第5,543,152号;第5,556,948号;第5,580,575号;および第5,595,756号(これらのそれぞれは本明細書に参照により組み込まれる)を含む。
【0150】
本発明に従って用いられるアンチセンス化合物は、固相合成の周知の技術により簡便にかつ日常的に作製してよい。このような合成のための装置は、例えばApplied Biosystems(Foster City、Calif.)を含むいくつかの業者により販売される。当技術分野において公知のこのような合成のための任意のその他の手段を、さらにまたは代わりに採用してよい。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体のような核酸を調製するために同様の技術を用いることが周知である。本発明のアンチセンス化合物は、in vitroで合成され、生物起源のアンチセンス組成物、またはアンチセンス分子のin vivo合成を導くように設計された遺伝子ベクター構築物を含まない。
【0151】
小型阻害RNA
短い(18〜30bp)RNAの2重鎖を培養哺乳動物細胞に導入した場合に、標的mRNAの配列特異的阻害が、インターフェロン応答を誘導することなく実現できることが示されている。小型阻害RNA(「siRNA」)とよばれるあるいくつかのこれらの短いdsRNAは、モル以下の濃度で触媒として作用して、細胞において95%より多い標的mRNAを切断できる。siRNA活性の仕組みおよびその用途のいくつかの記載は、Provostら、 Ribonuclease Activity and RNA Binding of Recombinant Human Dicer、E.M.B.O. J.、2002年11月1日;21巻(21号):5864〜5874頁;Tabaraら、The dsRNA Binding Protein RDE−4 Interacts with RDE−1, DCR−1 and a DexH−−box Helicase to Direct RNAi in C. elegans、Cell 2002年6月28日;109巻(7号):861〜71頁;Kettingら、Dicer Functions in RNA Interference and in Synthesis of Small RNA Involved in Developmental Timing in C. elegans;Martinezら、Single−Stranded Antisense siRNAs Guide Target RNA Cleavage in RNAi、Cell 2002年9月6日;110巻(5号):563頁;HutvagnerおよびZamore、A microRNA in a multiple−turnover RNAi enzyme complex、Science 2002年、297巻:2056頁に記載されている。
【0152】
米国特許出願第20040023390号(その内容全体は、本明細書で完全に述べられているかのごとく本明細書に参照により組み込まれる)は、2本鎖RNA(dsRNA)が、配列特異的転写後遺伝子サイレンシングを多くの生物において、RNA干渉(RNAi)として公知のプロセスにより誘導できることを教示している。しかし、哺乳動物細胞において、30塩基対以上のdsRNAは、タンパク質合成の停止およびアポトーシスによる細胞死さえ誘発する配列非特異的応答を誘導できる。最近の研究は、RNA断片が、RNAiの配列特異的メディエーターであることを示す(Elbashirら、2001年)。これらの小型阻害RNA(siRNA)による遺伝子発現の干渉は、現在、C.elegans、Drosophila、植物、ならびにマウス胚性幹細胞、卵母細胞および初期胚において遺伝子をサイレンシングするための天然に存在する方策として認識されている(Cogoniら、1994年;Baulcombe、1996年;Kennerdell、1998年;Timmons、1998年;Waterhouseら、1998年;WiannyおよびZernicka−Goetz、2000年;Yangら、2001年;Svobodaら、2000年)。
【0153】
本明細書で用いる場合、RNAiは、RNA干渉のプロセスである。典型的なmRNAは、およそ5,000コピーのタンパク質を生成する。RNAiは、標的タンパク質、好ましくは免疫抑制タンパク質のmRNAにより作製されるタンパク質コピー数に干渉するかまたはそれを著しく低減するプロセスである。例えば、2本鎖の短い干渉RNA(siRNA)分子は、干渉される標的mRNAまたはタンパク質の生物学的に活性な断片のタンパク質をコードするヌクレオチド配列に相補的でそれと整合するように工学的に操作される。細胞内送達の後に、siRNA分子は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と会合する。siRNA会合RISCは、塩基対形成相互作用により標的mRNAと結合してそれを分解する。RISCは、標的mRNAのさらなるコピーを依然として分解できる。短いヘアピンRNAおよびより長いRNA分子のようなRNAのその他の形態を用いることができる。より長い分子は、例えばアポトーシスを扇動し、インターフェロン応答を誘導することにより細胞死を引き起こす。細胞死は、哺乳動物においてRNAiを達成するために大きな障害であった。なぜなら、30ヌクレオチドより長いdsRNAは、RNA転写物の非特異的分解および宿主細胞の全般的な休止をもたらす防御機構を活性化したからである。約20〜約29ヌクレオチドのsiRNAを用いて哺乳動物細胞における遺伝子特異的抑制を媒介することにより、この障害が明らかに克服される。これらのsiRNAは、遺伝子抑制を引き起こすために十分に長いが、インターフェロン応答を誘導する長さではない。
【0154】
抗体
「抗体」または「複数の抗体」は、インタクトな分子、および対象のタンパク質のエピトープと特異的に結合できるそれらの断片を含む。本明細書で用いる場合、「特異的結合」とは、(1)少なくとも1×107M−1、および(2)非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)と結合する親和性よりも優先的に少なくとも2倍、50倍、100倍、1000倍以上大きい親和性で標的タンパク質と結合する抗体の特性のことをいう。好ましい実施形態において、抗体との間の相互作用、例えば結合は、高い親和性(例えば少なくとも107M1、好ましくは108M−1と1010の間、または約109M−1の親和性定数)および特異性で生じる。
【0155】
「エピトープ」との用語は、抗体が結合する抗原上の抗原決定基のことをいう。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面基からなり、典型的に、特定の3次元構造特徴と特定の電荷特徴とを有する。エピトープは、通常、少なくとも5つの隣接アミノ酸を有する。
【0156】
「抗体」および「複数の抗体」との用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化もしくはキメラ抗体、単鎖Fv抗体断片、Fab断片およびF(ab)断片を含む。ポリクローナル抗体は、特定の抗原に特異的な抗体分子の不均質な集団であるが、モノクローナル抗体は、抗原内に含まれる特定のエピトープに対する抗体の均質な集団である。モノクローナル抗体は、特に有用である。
【0157】
対象のポリペプチドに対する特異的結合親和性を有する抗体断片は、公知の技術により作製できる。このような抗体断片は、それらに限定されないが、抗体分子のペプシン消化により生成できるF(ab’)断片、およびF(ab’)断片のジスルフィドブリッジを推測することにより作製できるFab断片を含む。代わりに、Fab発現ライブラリーを構築できる。例えば、Huseら(1989年)Science246巻:1275〜1281頁を参照されたい。単鎖Fv抗体断片は、Fv領域の重鎖断片と軽鎖断片とをアミノ酸ブリッジ(例えば15〜18アミノ酸)により連結して単鎖ポリペプチドをもたらすことにより形成される。単鎖Fv抗体断片は、米国特許第4,946,778号に開示されるもののような標準的な技術により生成できる。
【0158】
一旦生成されると、抗体またはその断片を、標的ポリペプチドの認識について、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)を含む標準的なイムノアッセイ法により試験できる。Short Protocols in Molecular Biology Ausubelら編、Green Publishing Associates and John Wiley & Sons(1992年)を参照されたい。適切な抗体は、典型的に、組換えおよび天然タンパク質について等しい結合親和性を有する。
【0159】
「単一特異性抗体」との用語は、特定の標的、例えばエピトープについて単独の結合特異性および親和性を示す抗体のことをいう。この用語は、本明細書で用いる場合に単独分子組成の抗体またはその断片の調製物のことをいう「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」を含む。
【0160】
「組換え」抗体との用語は、本明細書で用いる場合、宿主細胞をトランスフェクトした組換え発現ベクターを用いて発現される抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子を遺伝子導入した動物(例えばマウス)から単離された抗体、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列をその他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意のその他の手段により調製、発現、創出もしくは単離された抗体のような組換え手段により調製、発現、創出もしくは単離された抗体のことをいう。このような組換え抗体は、ヒト化、CDRグラフト化、キメラ、脱免疫化、in vitroで作製された(例えばファージディスプレイ)抗体を含み、所望により、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する定常領域を含んでよい。
【0161】
ヒトタンパク質を指向するヒトモノクローナル抗体(mAb)は、マウスのシステムよりもむしろヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを用いて作製できる。対象の抗原で免疫化したこれらのトランスジェニックマウスからの脾細胞を用いて、ヒトタンパク質からのエピトープに対する特異的親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを生成する(例えばWoodら、国際出願WO91/00906、Kucherlapatiら、PCTパンフレットWO91/10741;Lonbergら、国際出願WO92/03918;Kayら、国際出願第92/03917号;Lonberg, N.ら、1994年Nature368巻:856〜859頁;Green, L. L.ら、1994年Nature Genet. 7巻:13〜21頁;Morrison, S. L.ら、1994年Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81巻:6851〜6855頁;Bruggemanら、1993年Year Immunol 7巻:33〜40頁;Tuaillonら、1993年 PNAS 90巻:3720〜3724頁;Bruggemanら、1991年 Eur J Immunol 21巻:1323〜1326頁を参照されたい)。
【0162】
本発明において有用な抗体またはその断片は、所望の抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコードするDNAで形質転換された宿主細胞により生成される組換え抗体であってもよい。組換え抗体は、公知の遺伝子工学技術により生成してよい。例えば、組換え抗体は、本発明において有用な抗体を生成するハイブリドーマ細胞からの所望の抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコードするヌクレオチド配列、例えばcDNAもしくはゲノムDNA配列をクローニングすることにより生成してよい。これらのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、次いで、両方の遺伝子がそれら自体の転写および翻訳発現制御配列に作動可能に連結するように発現ベクターに挿入する。発現ベクターおよび発現制御配列は、用いる発現宿主細胞に適合するように選択される。典型的には、両方の遺伝子を同じ発現ベクターに挿入する。原核および真核の宿主細胞を用いてよい。
【0163】
真核宿主細胞での発現が好ましい。なぜなら、このような細胞は、原核細胞よりも、正しく折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立てて分泌する可能性がより高いからである。しかし、正しくない折り畳みにより不活性な、生成されたいずれの抗体も、周知の方法により再生可能であることがある(KimおよびBaldwin、「Specific Intermediates in the Folding Reactions of Small Proteins and the Mechanism of Protein Folding」、Ann. Rev. Biochem. 51巻、459〜89頁(1982年))。宿主細胞が、軽鎖ダイマーまたは重鎖ダイマーのようなインタクトな抗体の部分を生成することが可能であり、これらも本発明による抗体相同体である。
【0164】
キメラ免疫グロブリン鎖を含むキメラ抗体は、当技術分野において公知の組換えDNA技術により生成できる。例えば、マウス(またはその他の種)のモノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子を、制限酵素を用いて消化して、マウスFcをコードする領域を除去し、ヒトFe定常領域をコードする遺伝子の等価部分で置換する(Robinsonら、国際特許公開第PCT/US86/02269号;Akiraら、欧州特許出願第184,187号;Taniguchi, M.、欧州特許出願第171,496号;Morrisonら、欧州特許出願第173,494号;Neubergerら、国際出願WO86/01533;Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Cabillyら、欧州特許出願第125,023号;Betterら(1988年Science 240巻:1041〜1043頁);Liuら(1987年)PNAS 84巻:3439〜3443頁;Liuら、1987年、J. Immunol. 139巻:3521〜3526頁;Sunら(1987年)PNAS 84巻:214〜218頁;Nishimuraら、1987年、Canc. Res.47巻:999〜1005頁;Woodら(1985年)Nature 314巻:446〜449頁;ならびにShawら、1988年、J. Natl Cancer Inst. 80巻:1553〜1559頁を参照されたい)。
【0165】
抗体または免疫グロブリン鎖は、当技術分野において公知の方法によりヒト化できる。マウス抗体が一旦得られると、可変領域の配列決定ができる。CDRおよびフレームワーク残基の位置を決定できる(Kabat, E. A.ら(1991年)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication 第91 3242号およびChothia, C.ら(1987年)J. Mol. Biol.196巻:901〜917頁(これらは本明細書に参照により組み込まれる)を参照されたい)。軽鎖および重鎖の可変領域は、所望により、対応する定常領域にライゲーションできる。
【0166】
本発明を、限定するとみなされるべきでない上記の実験および以下の実施例により本明細書において説明する。本明細書をとおして引用する全ての参考文献、係属中の特許出願および公開された特許の内容は、参照により本明細書に明白に組み込まれる。当業者は、本発明を多くの異なる形態で具体化してよく、本明細書に示す実施形態に限定されるとみなされるべきでないことを理解している。むしろ、これらの実施形態は、本開示が本発明を当業者に十分に伝えるように提供される。上記の記載に示される教示の恩恵を受けた本発明が属する技術分野の当業者は、本発明の多くの改変およびその他の実施形態に想到する。具体的な用語を用いているが、これらは、そうでないと記載しない限り、当技術分野におけるものと同様に用いられる。
【実施例】
【0167】
(実施例1)
材料および方法
マウス胚線維芽細胞(MEF)誘導。マウス胚線維芽細胞を、E13 CF−1マウス(Charles River Laboratories)から誘導した。動物に、250mg/kgのAvertin(登録商標)(2,2,2−トリブロモエタノール)を腹腔内注射により投与し、頸椎脱臼により安楽死させた。各動物からの子宮角を腹膜から取り出し、10cmのペトリ皿に入れ、PBSですすいだ。胚嚢を切断し、胚を取り出し、PBSですすいで計数した。内臓組織を分離して廃棄し、胚をPBSで再びすすいだ。残りの組織を解剖鋏で細かく刻み、2mLのトリプシンを加え、大きい片が残らなくなるまで組織をさらに細かく刻んだ。さらに5mLのトリプシンを加え、皿を37℃、5%COインキュベーターに20〜30分間入れた。ペニシリンおよびストレプトマイシンを補ったMEF培地培地(付録Cを参照されたい)を加え、細胞をT75フラスコで培養した(フラスコあたりおよそ3つの胚)。次の日に、合計6匹のマウスからの細胞を、2つの群MEF1およびMEF2にプールし、10%DMSOを補ったMEF培地中で凍結させ、液体窒素中で貯蔵した。各群からの試料を、マイコプラズマ混入について試験した(試験M−250、Bionique(登録商標)Testing,Inc.)。試験した両方の試料は、DNA蛍光色素染色および生存培養法の両方によりマイコプラズマ混入について陰性であった。
【0168】
線維芽細胞培養。正常胎児肺組織からの初代ヒト線維芽細胞(MRC−5)をATCCから得て、それらの推奨に従って培養した。
【0169】
変性ホルムアルデヒド−アガロースゲル電気泳動。転写物は、ポリ(A)テイル付加の前および後の両方で、変性ホルムアルデヒド−アガロースゲル電気泳動により分析して、これらが予測されたサイズであることを確実にし、ポリ(A)テイルの長さを測定した。3倍容量のホルムアルデヒドロード色素を各試料に加え、試料を70℃にて15分間変性させ、次いで、1.5%ホルムアルデヒド−アガロースゲル(NorthernMax(登録商標)キット、Ambion)のウェルにロードした。RNAラダー(Millennium Markers(商標)Ambion)をサイズ比較のために用いた。
【0170】
脂質媒介トランスフェクション。ivT−RNAをMRC−5線維芽細胞に、製造者の使用説明に従って脂質媒介トランスフェクション(TransIT(登録商標)、Mirus)により送達した。
【0171】
エレクトロポレーション。細胞をトリプシン処理し、Opti−MEM(登録商標)(Invitrogen)で1回洗浄し、2mmギャップを有する標準的なエレクトロポレーションキュベット中で50μLの合計容量のOpti−MEM(登録商標)に再懸濁した。110Vと145Vの間に充電した150μFコンデンサからキュベットに放電して、細胞にエレクトロポレーションした。温かい培地を加え、細胞を10cm皿またはマルチウェルプレートに播種した。
【0172】
定量RT−PCR。プライマーおよび分子ビーコンプローブを設計して、HUSK転写物A〜Fを検出した。停止コドンをまたぐアンプリコンを設計して、内因性転写物の同時増幅を防いだ。標準曲線を作成して、各反応の効率を評価した。TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems、表A.1)を用いて、内因性mRNAのレベルを測定した。RNAを細胞から抽出し、精製した(RNeasyミニキット、Qiagen)後に、RT−PCR(iScript(商標)ワンステップRT−PCRキット、Bio−Rad)を行った。RT−PCRプロトコールは、50℃、10分間の逆転写ステップと、その後に、95℃で5分間の最初の変性ステップと95℃で15秒間および55℃で30秒間の45サイクルとを含んだ。
【0173】
siRNA媒介ノックダウン。細胞に、siRNA(Applied Biosystems、表A.1)を種々の濃度で含有するOpti−MEM(登録商標)中でエレクトロポレーションした(上記のプロトコールを参照されたい)。表A.1は、商業的な業者から購入したいくつかのsiRNA分子を列挙する。自然免疫応答タンパク質を抑制するこれらのsiRNAの混合物は、本発明の範囲内である。
【0174】
免疫細胞化学。細胞をPBSですすぎ、4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定した。細胞を、次いで、0.1%TritonX−100中で透過にし、2%脱脂乳中で30分間ブロッキングした。ブロッキングの後に、細胞を1次抗体と4℃にて1晩インキュベートし、0.05%Tween(登録商標)20中で3回洗浄し、FITC−およびCY3−コンジュゲート2次抗体と室温にて1時間インキュベートした。細胞を、0.05%Tween(登録商標)20中で3回洗浄し、Hoechst33342と1分間インキュベートし、すすぎ、PBS中の50%グリセロールに載せ、蛍光顕微鏡により画像化した。
【0175】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウェスタンブロット。全細胞可溶化液(Qproteome哺乳動物タンパク質調製キット、Qiagen)を、12%ポリアクリルアミドゲル(ProSieve(登録商標)50、Lonza)上で、還元変性条件下で分離した。タンパク質をPVDFメンブレン(Immobilon(商標)−FL、Millipore)にCAPS緩衝液、pH11中で移した。メンブレンをTBST中の3%BSA中でブロッキングし、適切な抗体でプローブ付加した。量子ドットコンジュゲート2次抗体Qdot(登録商標)(Invitrogen)を、多重プローブ付加のために用いた。β−アクチン(Abcam8226)をローディング対照として用いた。
【0176】
(実施例2)
A.ivT−鋳型アセンブリおよびin vitro転写
組換えT7バクテリオファージRNAポリメラーゼは、最小T7プロモーター配列TAATACGACTCACTATAGGG(最後の3塩基(GGG)は、転写物の最初の3ヌクレオチド(これもまたGGG)をコードする)を含有するDNA鋳型からのin vitro転写のために広く用いられている。この酵素を、高収率の全長転写物を生成するように設計された緩衝液および添加物とともに用いるいくつかの商業的in vitro転写キットが入手可能である。直鎖状にしたプラスミド、PCR生成物および1本鎖オリゴヌクレオチドをT7RNA−ポリメラーゼ鋳型として用いることができるが、T7プロモーターは2本鎖でなければならない。この研究について、配列の誤りを最小限にしながら鋳型合成手順を単純化するために、in vitro転写鋳型を、高忠実度DNAポリメラーゼにより逆転写ポリ(A)+mRNAから生成される平滑末端PCR生成物として設計した。PCR生成物を選択することにより、細菌のクローニングを必要とせずに多量の鋳型の生成が容易になり、プラスミド鋳型を用いる場合に直鎖状にするステップの必要がなくなる。逆転写ポリ(A)+mRNAを増幅することにより、ivT−鋳型成分の配列が、成熟内因性転写物のものと確実に整合するようにする。
【0177】
T7 in vitro転写反応のためのdsDNA鋳型を生成するために、付着末端ライゲーションを、組み合わせ消化を可能にするように同じ緩衝液中で活性な2つの制限エンドヌクレアーゼNheI(認識部位:G/CTAG\C)およびAgeI(認識部位:A/CCGG\T)を用いてHBB UTRを任意のCDSと組み合わせるために設計した。T7プロモーター、強いコンセンサスを有するコザック配列および制限酵素認識部位を含有するプライマーを設計して、これらのエレメントがivT−鋳型成分にPCR中に取り込まれることを容易にした。5つのアデノシン残基を、HBB 5’−UTRリバースプライマーおよびHBB 3’−UTRフォワードプライマーの5’端に含めて、消化を容易にした。HBB UTRプライマー配列を以下に示し、T7プロモーターおよび制限酵素認識部位に下線を付す。
【0178】
本発明で用いるための制限酵素のリストは、以下を含む:
【0179】
【化2】

基本的な組み立てられたHBB−UTR安定化コザック+(HUSK)in vitro転写鋳型の図を、以下に示す。
HBB 5’−UTRフォワードプライマー:配列番号15
【0180】
【化3】

HBB 5’−UTRリバースプライマー:配列番号16
【0181】
【化4】

生成物の長さ:75bp
HBB 3’−UTRフォワードプライマー:配列番号17
【0182】
【化5】

HBB 3’−UTRリバースプライマー:配列番号18
【0183】
【化6】

生成物の長さ:143bp
【0184】
【化7】

B.HUSK ivT−RNA鋳型についてのコード配列および非翻訳領域
ヒト胚性幹(hES)細胞培養。H9ヒト胚性幹細胞を、National Stem Cell Bankから第24代で得て、記載される(方法を参照されたい)ようにしてE13 CF−1マウス(Charles River Laboratories)から誘導した照射マウス胚線維芽細胞(MEF)上で培養した。hES細胞は、細胞質をほとんど有さない緊密細胞の大きいコロニーとして成長した。MEF上で成長した細胞を、多能性マーカーであるOct4およびNanogに対する抗体を用いて染色した。hES細胞コロニーは、多くの明るく染色された細胞を含んだが、MEFは染色されなかった。数世代の継代後に、いくらかの細胞を、BME基底膜マトリクス(Trevigen)で被覆した皿上に播種し、照射MEF上で4ng/mL bFGF(Invitrogen)および10μMのROCK阻害剤Y−27632(Cayman Chemical)50を補って24時間馴化した培地で培養した。Y−27632を含む馴化培地で成長した細胞は、MEF上またはY−27632を含まない馴化培地で成長した細胞で観察される自発的分化のレベルが非常に低かった。
【0185】
トータルRNAを、BME被覆プレート上で馴化培地において培養したH9 hES細胞から、RNeasyミニキット(Qiagen)をカラム上でのDNアーゼI消化とともに用いて抽出した。ポリ(A)+mRNAを、ポリ(dT)ラテックスビーズ(Oligotex Qiagen)を用いて濃縮し、定量し(Quant−iT(商標)、Invitrogen)、4℃にて5mM Tris−HCl、pH7.5中で貯蔵した。対象のポリ(A)+mRNA転写物およびβ−グロビンを、別々の反応において、RNアーゼH−逆転写酵素(MonsterScript(商標)、Epicentre(登録商標))と、HBB 3’−UTRおよびこの研究のために選択した7つの遺伝子のCDSの3’端にアニールするように設計したプライマーとを用いて逆転写した(表B.1)。鋳型成分を、高忠実度ポリメラーゼ(Phusion(商標)ホットスタート、NEB)を用いて増幅し、E.coli DNAリガーゼ(NEB)でライゲーションした。ライゲーション生成物を増幅し、in vitro転写のための調製においてゲル精製した(ゲル抽出キット、Qiagen)。
【0186】
HBB 3’−UTRおよび7つのCDSを、次いで、高忠実度ポリメラーゼ(Phusion(商標)ホットスタート、NEB)を用いて増幅して、配列の誤りを最小限にした(表B.2〜B.4)。HBB 5’−UTRプライマーは、PCR生成物全体をまたぐものであり、HBB 5’−UTR増幅反応におけるcDNA鋳型の必要性を排除した。プライマーを、T7プロモーター配列をHBB 5’−UTRの5’端に、そして制限酵素認識配列をHBB 5’−UTRの3’端、HBB 3’−UTRの5’端およびCDSの両端に接着させるように設計した。反応生成物を1.5%(CDS)または3%(HBB UTR)アガロースゲル上で分離し、適当なバンドを切り出し、DNAを抽出した(ゲル抽出キット、Qiagen)。
【0187】
PCR生成物を、NheIおよびAgeIの制限酵素を用いて消化し(表B.5)、精製し(ゲル抽出キット、Qiagen)、ライゲーションして、完全ivT鋳型を形成した(表B.6)。ライゲーション反応物を1.5%アガロースゲル上で分離し、適当なバンドを切り出し、DNAを抽出した。抽出DNAを、HBB 5’−UTRフォワードプライマーおよびHBB 3’−UTRリバースプライマーを用いて増幅して、マイクログラム量の組み立てられたivT鋳型を得た(表B.7)。
【0188】
大規模増幅を、次いで行って、in vitro転写のために必要な量の各鋳型を生成した(表B.8)。完了した増幅反応物を、2回の逐次的ゲル精製に供して、非特異的生成物を除去した。
【0189】
C.HUSK ivT−RNA転写物合成
高忠実度ポリメラーゼをdsDNA鋳型合成の全ての段階において用いて、配列の誤りを最小限にした。変性ホルムアルデヒド−アガロースゲル電気泳動を行って、HUSK ivT−RNA鋳型から転写された転写物がポリアデニル化前に予測されたサイズを有し、これらが分解されず、ポリアデニル化反応により効率的な翻訳を促進するために十分な長さのポリ(A)テイルが付加されたことを確認した。全長転写物は各鋳型から生成されたが、完了した反応物は、早期終結転写物および分解転写物の組合せとして同定される多量の低分子量生成物も含有した。in vitro転写反応の温度を低減することにより、生成される全長転写物の画分が劇的に増加した。
【0190】
いくつかの論文は、1本鎖結合タンパク質(SSB)を加える51かまたは反応温度を低減する52ことによってivT反応を改変することにより、早期終結を低減でき、生成される全長転写物の画分を増加できることを示している。T7 RNA−ポリメラーゼの処理能力は、37℃未満の温度で著しく低減する。しかし、反応の特異性は増加し、37℃で得られるものと等しい収率を、反応持続期間を1時間から20時間に増加させることにより10℃で得ることができる。
【0191】
各HUSK ivT鋳型を、T7 ivT反応に加え(mScript(商標)mRNA生成システム、Epicentre(登録商標)、表B.9)、得られたRNAを精製し(RNeasyミニキット、Qiagen)、定量し、キャップ付加し、ポリアデニル化した(mScript、Epicentre(登録商標)、表B.10およびB.11)。キャップ付加ポリ(A)+HUSK ivT−RNAを、mScript mRNA生成システム(Epicentre(登録商標))を用いて合成した。in vitro転写反応の温度および持続期間を、特異性および収率について、所定の細胞およびタンパク質についての日常的な実験に基づいて最適化した。キャップ付加ポリ(A)+HUSK ivT−RNAを精製し、定量し、4℃にてRNアーゼ阻害剤(SUPERaseIn(商標)、Ambion)を含むRNアーゼフリー水中で貯蔵した。ポリ(A)テイル付加の前および後の両方での1μgの各転写物を変性ホルムアルデヒド−アガロースゲル電気泳動(方法を参照されたい)により分析して、各転写物がポリ(A)テイル付加の前に予測されたサイズを有することを確認し、分解のレベルを評価し、ポリ(A)テイルの長さを測定した。ポリアデニル化反応の持続期間は、およそ150ヌクレオチドのポリ(A)テイルを生じるように調節し、この長さは、実験条件およびコードされるタンパク質に基づいて必要により変動できる。
【0192】
7つのHUSK転写物に加えて、全長の内因性未改変転写物Aを、内因性mRNAの完全配列を含有する鋳型(内因性UTRおよび未改変コザック配列)を用いて合成した。全ての反応において、低分子量生成物は、ポリアデニル化の後に出現した(濃いバンドの下の薄暗い形)。ポリアデニル化反応は、RNアーゼ阻害剤を含有し、ポリアデノシンポリメラーゼ自体が低レベルのRNアーゼ活性を有し得ることを示す。
【0193】
(実施例3)
IFNB1発現のsiRNAノックダウン
IFNB1を標的にするsiRNAを用いて、自然免疫応答を抑制するためにその発現をノックダウンした。siRNAをMRC−5線維芽細胞に、エレクトロポレーションにより、ivT−RNAとともにまたはそれなしで送達した。siRNAを受けなかった模擬トランスフェクトした細胞は、HUSK ivT−RNAトランスフェクションの24時間後に10,000倍のIFNB1の過剰発現を示した。対照的に、抗IFNB1 siRNAとHUSK ivT−RNAとの両方を受けた細胞は、50〜100倍のIFNB1過剰発現しか示さず、これは、99〜99.5%のノックダウン効率に相当した(図7B)。RNAi機構に、HUSK ivT−RNAトランスフェクションの前にsiRNAの位置を定めてそれを結合させるより長い時間を与えるために、細胞にsiRNAをエレクトロポレーションし、48時間成長させ、次いで、siRNAとHUSK ivT−RNAとの両方をエレクトロポレーションした。この実験において、siRNAを受けなかった細胞は、模擬トランスフェクトした細胞と比べて7500倍のIFNB1の過剰発現を示したが、siRNAを受けた細胞は、模擬トランスフェクトした細胞と比べて15倍のIFNB1の過剰発現を示し、これは99.8%のノックダウン効率に相当した(図7A)。これらの2つの実験において測定された、HUSK ivT−RNAだけを受けた細胞におけるIFNB1過剰発現の差と、本文中の他の場所に記載するものの差は、MRC−5細胞により内因的に発現されるIFNB1の非常に低いレベルにおける小さい変動による可能性があった。この理由から、過剰発現のレベルは、実験間ではなく実験内でのみ比較した。なぜなら、各実験は、独立した模擬トランスフェクション対照を有し、これに対してその実験における全ての発現データが標準化されるからである。
【0194】
その他の遺伝子を標的にする、同じ業者からのsiRNAを用いるMRC−5線維芽細胞におけるエレクトロポレーションで観察されたノックダウン効率が、典型的に80%と90%の間であるので(図9および図10)、これらの実験において観察されたIFNB1ノックダウンの高い効率は、十分なIFNB1 mRNAが、RNAi機構により破壊されて、HUSK ivT−RNAトランスフェクションにより惹起される自然免疫応答のインターフェロン−β媒介増幅が妨害されたことを示した。この仮説は、自然免疫応答に関与するいくつかのその他の遺伝子が、模擬トランスフェクトした細胞と比べてまだ過剰発現されているが、IFNB1を標的にするsiRNAを受けた細胞において、siRNAを受けなかった細胞のものよりも著しく少なく過剰発現されたという観察結果により支持される(図7A)。特に、HUSK ivT−RNAだけを受けた細胞において50〜60倍過剰発現されるPRRであるTLR3およびRARRES3は、HUSK ivT−RNAとIFNB1 siRNAとをともに受けた細胞において20〜30倍過剰発現される。さらに、STAT1、STAT2およびEIF2AK2は全て、細胞にHUSK ivT−RNAとIFNB1 siRNAとを同時トランスフェクトした場合に、模擬トランスフェクトした細胞と比べて同様の過剰発現レベルの低減を示した。
【0195】
siRNAにより媒介されるIFNB1ノックダウンは、MRC−5細胞においてHUSK ivT−RNAトランスフェクションにより惹起される自然免疫応答に関与するいくつかの遺伝子の過剰発現を低減させたが、PRRであるTLR3およびRARRES3の>20倍の過剰発現、ならびにIFNB1、STAT1およびEIF2AK2の>5倍の過剰発現の残存により示されるように、これらの細胞において自然免疫は完全に阻害されなかった。実際に、IFNB1ノックダウンは、ivT−RNAをトランスフェクトした細胞において観察される増殖の阻害にほとんどまたは全く影響しないことが観察され(図8)、このことは、HUSK ivT−RNAとIFNB1 siRNAとの両方をトランスフェクトした細胞において、IFNB1発現の低い残存レベルが細胞の増殖を妨げるために十分であるか、またはインターフェロン−βシグナル伝達とは独立した仕組みにより、細胞が増殖することが妨げられているかのいずれかであることを示す。
【0196】
【表5】

TaqManアッセイおよびSilencer Select siRNAは、Applied Biosystems,Inc.から購入した。
【0197】
【表6−1】

【0198】
【表6−2】

【0199】
【表6−3】

【0200】
【表6−4】

【0201】
【表6−5】

【0202】
【表6−6】

【0203】
【表6−7】

【0204】
【表6−8】

【0205】
【表6−9】

【0206】
【表6−10】

【0207】
【表6−11】

【0208】
【表6−12】

【0209】
【表6−13】

【0210】
【表6−14】

【0211】
【表6−15】

【0212】
【化8】

【0213】
【化9】

【0214】
【化10】

【0215】
【化11】

【0216】
【化12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
TP53、TLR3、TLR7、RARRES3、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNK、IFNB1、IL6、TICAM1、TICAM2、MAVS、STAT1、STAT2、EIF2AK2、IRF3、TBK1、CDKN1A、CDKN2A、RNASEL、IFNAR1、IFNAR2、OAS1、OAS2、OAS3、OASL、RB1、ISG15、ISG20、IFIT1、IFIT2、IFIT3およびIFIT5またはそれらの生物学的に活性な断片、類似体もしくは改変体からなる群より選択される自然免疫応答経路中の1つまたは複数のタンパク質の発現を低減する作用物質の有効量を細胞に導入することにより、核酸のトランスフェクションに対する前記細胞の自然免疫応答を抑制するための方法。
【請求項2】
前記作用物質が、siRNA、1つもしくは複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそれらの任意の組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が動物細胞であり、前記siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドが、ヒトTP53、TLR3、TLR7、RARRES3、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNK、IFNB1、IL6、TICAM1、TICAM2、MAVS、STAT1、STAT2、EIF2AK2、IRF3、TBK1、CDKN1A、CDKN2A、RNASEL、IFNAR1、IFNAR2、OAS1、OAS2、OAS3、OASL、RB1、ISG15、ISG20、IFIT1、IFIT2、IFIT3およびIFIT5をコードするmRNAまたはこれらのタンパク質のいずれかをコードするDNAもしくはRNA分子と特異的にハイブリダイズ可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞を、自然免疫応答経路中のタンパク質またはその生物学的に活性な断片、改変体もしくは類似体と選択的に結合する抗体と接触させ、それによりその生物学的な活性を低減することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞を、自然免疫応答経路中のタンパク質もしくはその生物学的に活性な断片の生物学的な活性を低減するタンパク質または小分子と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入することが、エレクトロポレーション、脂質媒介トランスフェクション、衝撃トランスフェクション、マグネトフェクション、ペプチド媒介トランスフェクション、マイクロインジェクションまたはそれらの組合せにより達成される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
細胞に核酸分子をトランスフェクトするための方法であって、
a.前記細胞の自然免疫応答を抑制するステップと、
b.前記核酸を前記細胞に導入するステップと
を含む方法。
【請求項8】
前記核酸分子が、タンパク質もしくはその生物学的断片またはRNA分子をコードし、前記核酸を導入するステップが、トランスフェクションによる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記核酸が、1本鎖DNAもしくはRNA分子、2本鎖DNAもしくはRNA分子、または1本鎖もしくは2本鎖DNA/RNAキメラを含む群から選択されるメンバーである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記1本鎖RNA分子が、対象のタンパク質をコードするin vitro転写RNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップaおよびbが、同時である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
ステップaが、2回以上反復される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
ステップbが、2回以上反復される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
ステップaが、ステップbの約24〜72時間前まで行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
ステップaが、TP53、TLR3、TLR7、RARRES3、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNK、IFNB1、IL6、TICAM1、TICAM2、MAVS、STAT1、STAT2、EIF2AK2、IRF3、TBK1、CDKN1A、CDKN2A、RNASEL、IFNAR1、IFNAR2、OAS1、OAS2、OAS3、OASL、RB1、ISG15、ISG20、IFIT1、IFIT2、IFIT3およびIFIT5またはそれらの生物学的に活性な断片、改変体もしくは類似体からなる群より選択される自然免疫応答経路中の1つまたは複数のタンパク質の発現を低減する作用物質の有効量を前記細胞に導入することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記作用物質が、トランスフェクションにより導入されるsiRNA、1つもしくは複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそれらの任意の組合せである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が動物細胞であり、前記siRNAまたは1つもしくは複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドが、ヒトTP53、TLR3、TLR7、RARRES3、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNK、IFNB1、IL6、TICAM1、TICAM2、MAVS、STAT1、STAT2、EIF2AK2、IRF3、TBK1、CDKN1A、CDKN2A、RNASEL、IFNAR1、IFNAR2、OAS1、OAS2、OAS3、OASL、RB1、ISG15、ISG20、IFIT1、IFIT2、IFIT3およびIFIT5またはそれらの生物学的に活性な断片、改変体もしくは類似体をコードするmRNA、あるいはこれらのタンパク質のいずれかをコードするDNAもしくはRNA分子と特異的にハイブリダイズ可能である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞を、自然免疫応答経路中のタンパク質またはその生物学的に活性な断片、改変体もしくは類似体と選択的に結合する抗体と接触させ、それによりその生物学的な活性を低減することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞を、自然免疫応答経路中のタンパク質もしくはその生物学的に活性な断片の生物学的な活性を低減するタンパク質または小分子と接触させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞が動物細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項21】
前記動物がヒトである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップaおよびbが、エレクトロポレーション、脂質媒介トランスフェクション、衝撃トランスフェクション、マグネトフェクション、ペプチド媒介トランスフェクション、マイクロインジェクションまたはそれらの組合せにより達成される、請求項7に記載の方法。
【請求項23】
前記核酸が、そのmRNAが配列番号1を含むOCT4;そのmRNAが配列番号2を含むSOX2;そのmRNAが配列番号3を含むKLF4;そのmRNAが配列番号4を含むMYC;そのmRNAが配列番号5を含むNANOG;そのmRNAが配列番号6を含むLIN28;そのmRNAが配列番号7を含むMYOD1;そのmRNAが配列番号8を含むAscl1;そのmRNAが配列番号9を含むPU.1;そのmRNAが配列番号10を含むC/EBPα;そのmRNAが配列番号11を含むC/EBPβ;そのmRNAが配列番号12を含むNgn3;そのmRNAが配列番号13を含むPdx1;そのmRNAが配列番号14を含むMafa;およびそのmRNAが配列番号15を含むEsrrb、またはそれらの生物学的に活性な断片、類似体もしくは改変体からなる群より選択されるタンパク質をコードする、請求項8に記載の方法。
【請求項24】
前記コードされるタンパク質またはRNA分子の発現が、前記細胞における所望の表現型変化を引き起こす、請求項8に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が動物細胞であり、前記所望の表現型変化が細胞の分化、分化転換または脱分化である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記動物が哺乳動物であり、前記細胞が成体海馬幹細胞であり、前記コードされるタンパク質がAscl1であり、前記表現型変化がオリゴデンドロサイトへの前記細胞の分化である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記動物が哺乳動物であり、前記細胞が神経幹細胞であり、前記細胞に、それぞれOct4、Klf4またはc−Mycタンパク質をコードする複数の異なるin vitro転写RNAがトランスフェクトされ、前記表現型変化が多能性幹細胞への前記神経幹細胞の脱分化である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記動物が哺乳動物であり、前記細胞が非インスリン生成膵臓外分泌細胞であり、前記細胞に、それぞれNgn3、Pdx1またはMafaタンパク質をコードする複数の異なるin vitro転写RNAがトランスフェクトされ、前記表現型変化が、インスリン生成ベータ島細胞への前記非インスリン生成膵臓外分泌細胞の分化転換である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記動物が哺乳動物であり、前記細胞が線維芽細胞であり、前記細胞に、それぞれOct4、Sox2、Klf4およびc−Mycタンパク質をコードする複数の異なるin vitro転写RNAがトランスフェクトされ、前記表現型変化が多能性幹細胞への前記線維芽細胞の脱分化である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記動物が哺乳動物であり、前記細胞が、線維芽細胞、軟骨芽細胞、平滑筋細胞および網膜色素上皮細胞を含む群から選択されるメンバーであり、前記コードされるタンパク質がMyoDであり、前記所望の表現型変化が筋芽細胞への前記細胞の分化転換である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記動物が哺乳動物であり、前記細胞が線維芽細胞であり、前記細胞に、それぞれPU.1またはC/EBPα/βをコードする複数の異なるin vitro転写RNAがトランスフェクトされ、前記所望の表現型変化がマクロファージへの前記線維芽細胞の分化転換である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
TP53、TLR3、TLR7、RARRES3、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNK、IFNB1、IL6、TICAM1、TICAM2、MAVS、STAT1、STAT2、EIF2AK2、IRF3、TBK1、CDKN1A、CDKN2A、RNASEL、IFNAR1、IFNAR2、OAS1、OAS2、OAS3、OASL、RB1、ISG15、ISG20、IFIT1、IFIT2、IFIT3、IFIT5またはそれらの生物学的に活性な断片、改変体もしくは類似体を含む群から選択される自然免疫応答経路中の2つ以上のタンパク質をコードするmRNAまたはDNA分子、あるいは列挙したタンパク質のいずれかをコードするDNAもしくはRNA分子と特異的にハイブリダイズし、それにより前記2つ以上のタンパク質の発現を低減する、複数の異なるsiRNA、1つもしくは複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそれらの組合せを含む組成物。
【請求項33】
TP53、STAT2およびEIF2AK2をコードするmRNAもしくはDNA分子と特異的にハイブリダイズするsiRNAの混合物、またはTP53、STAT2、EIF2AK2およびIFNB1をコードするmRNAもしくはDNA分子と特異的にハイブリダイズするsiRNAの混合物を含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
請求項1に記載の方法により生成される細胞。
【請求項35】
請求項7に記載の方法により生成される細胞。
【請求項36】
(i)安定5’UTRと、
(ii)タンパク質コード配列(CDS)に連結した強力なコザックコンセンサス配列と
を含むin vitro転写RNAを生成する構築物に作動可能に連結した転写プロモーターを含むDNA鋳型。
【請求項37】
前記構築物が、前記安定5’UTRを前記強力なコザックコンセンサス配列につなぐ第1制限部位を有する、請求項36に記載の鋳型。
【請求項38】
前記第1制限部位がNheI部位である、請求項37に記載の鋳型。
【請求項39】
(iii)安定3’UTRをさらに含む、請求項36に記載の鋳型。
【請求項40】
前記安定3’UTRおよび前記安定5’UTRが、ベータグロビンUTRまたはアルファグロビンUTRである、請求項39に記載の鋳型。
【請求項41】
前記構築物が、前記CDSを前記安定3’UTRにつなぐ第2制限部位を有する、請求項39に記載の鋳型。
【請求項42】
前記第2制限部位がAgeI部位である、請求項41に記載の鋳型。
【請求項43】
配列内リボソーム進入部位をさらに含む、請求項36に記載の鋳型。
【請求項44】
前記プロモーターが、T7、T3およびSP6を含む群から選択されるメンバーである、請求項36に記載の鋳型。
【請求項45】
対象のタンパク質をコードするin vitro転写RNA転写物であって、作動可能な組合せで、
(i)安定5’UTRと、
(ii)タンパク質コード配列(CDS)に連結した強力なコザック配列と
を含む転写物。
【請求項46】
(iii)安定3’UTRをさらに含む、請求項45に記載の転写物。
【請求項47】
前記安定3’UTRおよび前記安定5’UTRが、ベータグロビンUTRもしくはアルファグロビンUTRまたはこれらの任意の組合せである、請求項46に記載の転写物。
【請求項48】
以下のエレメント:前記転写物の3’端のポリ(A)テイル、前記転写物の5’端の7−メチルグアノシンキャップおよび配列内リボソーム進入部位のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項45に記載の転写物。
【請求項49】
前記対象のタンパク質が、そのmRNAが配列番号1を含むOCT4、そのmRNAが配列番号2を含むSOX2、そのmRNAが配列番号3を含むKLF4、そのmRNAが配列番号4を含むMYC、そのmRNAが配列番号5を含むNANOG、そのmRNAが配列番号6を含むLIN28、そのmRNAが配列番号7を含むMYOD1、そのmRNAが配列番号8を含むAscl1、そのmRNAが配列番号9を含むPU.1、そのmRNAが配列番号10を含むC/EBPα、そのmRNAが配列番号11を含むC/EBPβ、そのmRNAが配列番号12を含むNgn3、そのmRNAが配列番号13を含むPdx1、そのmRNAが配列番号14を含むMafa、およびそのmRNAが配列番号15を含むEsrrb、またはそれらの生物学的に活性な断片、類似体もしくは改変体からなる群より選択される、請求項45に記載の転写物。
【請求項50】
(i)安定5’UTRと、
(ii)前記5’UTRをコザックコンセンサス配列につなぐことができる第1制限部位と
を含むin vitro転写RNAを生成する構築物に作動可能に連結した強力な転写プロモーターを有するDNA鋳型を含むキット。
【請求項51】
前記プロモーターを認識して結合するポリメラーゼ、in vitro転写反応を行うために適切な緩衝液、ヌクレオチド三リン酸(NTP)の混合物、前記第1制限部位および第2制限部位を認識する制限酵素、in vitro転写反応が完了したら用いた前記鋳型を分解するためのDNアーゼ酵素溶液、5’ m7Gキャップを生成するためのキャップ付加酵素、2番目のヌクレオチドにメチル基を付加するための2−O−メチルトランスフェラーゼ酵素、GTPの溶液、S−アデノシルメチオニン(SAM)の溶液、ポリ(A)ポリメラーゼ酵素(例えばE.coliポリ(A)ポリメラーゼ)、ATPの溶液、およびポリ(A)テイル付加反応のための緩衝液のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項50に記載のキットであって、前記キットは、陽性対照として用いられるDNA鋳型をさらに含んでよい、キット。

【図1】
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【図5】
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【図13−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−3】
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【公表番号】特表2012−524777(P2012−524777A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507187(P2012−507187)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/041453
【国際公開番号】WO2010/123501
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】