説明

長ねぎ凍結乾燥品の製造方法

【課題】長ねぎの旨み成分を十分含有し、製品の壊れが少ない、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等を使用せずに衛生性を確保できる、商品価値が高い長ねぎ凍結乾燥品を製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】長ねぎ凍結乾燥品の製造方法は、長ねぎの不要部分を切除して棒状ねぎ1aとし、その棒状ねぎ1aを洗浄処理する材料準備工程S1と、洗浄された棒状ねぎ1aの温度が75℃以上となって、その温度が1分間以上保持されるように、棒状ねぎ1aを煮沸または蒸して殺菌処理する殺菌工程S2と、殺菌処理された棒状ねぎ1b、1cを凍結処理する凍結工程S3と、凍結された棒状ねぎ1dを所定長さに切断処理する切断工程S4と、切断処理された棒状ねぎ1eを凍結乾燥処理して長ねぎ凍結乾燥品2とする凍結乾燥工程S5とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席味噌汁等の具材として使用される長ねぎ凍結乾燥品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、即席味噌汁等の具材として使用される長ねぎ凍結乾燥品の製造方法として、非特許文献1、2には、以下のような製造方法が記載されている。図3は、従来の長ねぎ凍結乾燥品(非特許文献1では乾燥ネギ、非特許文献2では乾燥野菜と記載されている)の製造方法を示す工程フローである。
【0003】
図3に示すように、長ねぎ凍結乾燥品の製造方法は、原料となる長ねぎを所定長さに裁断処理(ダイス切り、スライス切り)する裁断工程S101と、前記裁断工程S101で裁断処理された棒状ねぎ10aを98℃×30〜60秒でブランチング(煮沸)するブランチング工程S102と、前記ブランチング工程S102でブランチングされた棒状ねぎ10bを凍結処理する予備凍結工程S103と、前記予備凍結工程S103で凍結処理された棒状ねぎ10cを凍結乾燥処理して長ねぎ凍結乾燥品(以下、製品と称する場合がある)11とする凍結乾燥工程S104とを含む。
【0004】
また、非特許文献1には、長ねぎ凍結乾燥品の製造方法が、裁断工程S101の前に、
原料となる長ねぎの不要部(根部、枯葉部、腐り部、傷み部等)を除去する前処理工程Saと、前処理された長ねぎを水洗処理する水洗工程Sbとを含んでもよいことが記載されている。さらに、非特許文献1、2には、長ねぎ凍結乾燥品の製造方法が、凍結乾燥工程S104の後に、長ねぎ凍結乾燥品を解砕(粉砕)処理して寸法(メッシュ)を揃える解砕(粉砕)工程Scと、解砕(粉砕)処理された長ねぎ凍結乾燥品を包装する包装工程Sdとを含んでもよいことが記載されている。
【0005】
非特許文献1、2では、ブランチング工程S102における煮沸によって、棒状ねぎ10aを殺菌処理し、棒状ねぎ10b(長ねぎ凍結乾燥品11)の衛生性(殺菌性)を確保している。殺菌処理方法としては、煮沸以外には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いる方法が一般的である。そして、長ねぎ凍結乾燥品の製造方法において、次亜塩素酸ナトリウム水溶液で殺菌処理を行う製造方法が特許文献1に記載されている。なお、特許文献1では、長ねぎ凍結乾燥品として、ねぎ表面に焦げ目を付けた焼ねぎを凍結乾燥処理したものが記載されている。
【0006】
特許文献1における長ねぎ凍結乾燥品の製造方法は、図示しないが、長ねぎの根部分および青味部分を切除して白味の棒状ねぎを得る不要部カット工程と、不要部カット後の棒状ねぎを水洗処理する洗浄工程と、前工程で水洗処理された棒状ねぎを次亜塩素酸ナトリウム水溶液で殺菌処理する殺菌工程と、前工程で殺菌処理された棒状ねぎを水洗処理する洗浄工程と、前工程で水洗処理された棒状ねぎに焼成処理によって焦げ目を付ける焼成工程と、前工程で焼成処理された棒状ねぎを急速凍結する凍結工程と、前工程で凍結された棒状ねぎを所定寸法に切断するカット工程と、前工程で切断された棒状ねぎを凍結乾燥処理して長ねぎ凍結乾燥品とする凍結乾燥工程とを含む。
【非特許文献1】吉田照男著、「食品加工プロセス」、工業調査会、2003年、p.35−36
【非特許文献2】亀和田光男、他2名著、「乾燥食品の基礎と応用」、幸書房、1997年、p.113−115
【特許文献1】特開2002−85006号公報(請求項1、段落0015、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1、2の製造方法では、棒状ねぎ(製品)の衛生性を確保するために、ブランチング工程S102において、所定長さ(例えば、3〜30mm)に裁断処理された棒状ねぎ10aを煮沸することによって、棒状ねぎ10aを殺菌処理している。このような煮沸による殺菌処理では、棒状ねぎ10aの長さが短いと、長ねぎの旨み成分が棒状ねぎ10aから湯中に流出してしまう。また、旨み成分の流出によって、旨み成分による結着作用が低下して、棒状ねぎ10bの形状が保てなくなり、次工程S103、S104の凍結処理、および、凍結乾燥処理によって構造が脆くなる。
【0008】
また、特許文献1の製造方法では、棒状ねぎ(製品)の衛生性を確保するために、次亜塩素酸ナトリウム水溶液で棒状ねぎを殺菌処理している。このような次亜塩素酸ナトリウム水溶液による殺菌処理では、棒状ねぎの繊維組織の間に入り込んだ細菌(大腸菌等)まで殺菌することが困難である。また、焦げ目を付ける焼成工程に於いても、内部に斑なく殺菌に必要な加熱が行えるかは保証できない。
【0009】
その結果、従来の製造方法で製造された製品は、長ねぎの旨み成分が不足したものとなり、また、製品形状も壊れやすくなるため、見た目が悪い、または衛生性を欠く、商品価値が低下したものとなるという問題があった。また、従来の製品では、このような壊れやすい性質を補うために、糖類を製品に添加する必要があった。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その目的は、長ねぎの旨み成分を十分含有し、製品の壊れが少ない、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等を使用せずに衛生性を確保できる、商品価値が高い長ねぎ凍結乾燥品を製造できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係る長ねぎ凍結乾燥品の製造方法は、長ねぎの不要部分を切除して棒状ねぎとし、その棒状ねぎを洗浄処理する材料準備工程と、前記材料準備工程で洗浄された棒状ねぎの温度が75℃以上となって、その温度が1分間以上保持されるように、前記棒状ねぎを煮沸または蒸して殺菌処理する殺菌工程と、前記殺菌工程で殺菌処理された棒状ねぎを凍結処理する凍結工程と、前記凍結工程で凍結された棒状ねぎを所定長さに切断処理する切断工程と、前記切断工程で切断処理された棒状ねぎを凍結乾燥処理して長ねぎ凍結乾燥品とする凍結乾燥工程とを含むこととした。
【0012】
前記手順によれば、所定条件で煮沸または蒸して殺菌処理する殺菌工程を含むことによって、棒状ねぎの繊維組織間に入り込んだ細菌(大腸菌等)まで殺菌でき、棒状ねぎ、ひいては長ねぎ凍結乾燥品の殺菌性(衛生性)を保障することが可能となる。また、殺菌処理後に棒状ねぎの切断処理が行われるため、殺菌処理される棒状ねぎは十分な長さを持っている。そのため、長ねぎの旨み成分が、棒状ねぎから流出することを低減できる。さらに、結着作用を有する旨み成分の流出が低減されるため、棒状ねぎの形状が保持される。その結果、凍結乾燥処理によって得られる長ねぎ凍結乾燥品の壊れが少なくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る長ねぎ凍結乾燥品の製造方法によれば、長ねぎの旨み成分を十分含有し、製品の壊れが少なく、製品形状を保持するための糖類添加も必要ない、さらに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等を使用せずに衛生性を確保できる、商品価値が高い長ねぎ凍結乾燥品を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る長ねぎ凍結乾燥品の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、長ねぎ凍結乾燥品の製造方法を説明する工程フロー、図2は長ねぎ凍結乾燥品の製造方法を模式的に示す概略図である。
【0015】
図1、図2に示すように、長ねぎ凍結乾燥品の製造方法は、材料準備工程S1と、殺菌工程(煮沸または蒸す)S2と、凍結工程S3と、切断工程S4と、凍結乾燥工程S5とを含む。以下、各工程について説明する。
【0016】
(材料準備工程:S1)
材料準備工程S1は、原料である長ねぎの不要部分を切除して棒状ねぎ1aとし、その棒状ねぎ1aを洗浄処理する工程である。具体的には、長ねぎの一端側の不要部分である根部分3a、および、他端側の不要部分である青味部分3bを切断し、大部分が白味部分から構成される棒状ねぎ1aとする。ここで、棒状ねぎ1aは、青味部分3bを少し含んでもよいが、異物混入を避けるため、青味部分はできるだけ除去することが好ましい。また、棒状ねぎ1aは、最外皮1枚だけを除去することが好ましい。そして、棒状ねぎ1aは、公知の方法で洗浄処理される。洗浄処理方法としては、流水、オーバーフロー水槽、シャワー等により3回以上水洗処理することが好ましい。この洗浄処理によって、棒状ねぎ1aに付着している切りかす等の付着物が洗い流されたものが得られる。
【0017】
(殺菌工程(煮沸または蒸す):S2)
殺菌工程S2は、材料準備工程S1で洗浄された棒状ねぎ1aを煮沸または蒸して殺菌処理し、図示しないが、殺菌処理された棒状ねぎ1bを次工程(凍結工程S3)で使用される凍結トレー24上に並べる工程である。煮沸または蒸しによる殺菌処理条件は、棒状ねぎ1aの温度(品内温度)が75℃以上となって、その温度が1分間以上保持される必要がある。
【0018】
殺菌処理温度(品内温度)が75℃未満であると、殺菌処理された棒状ねぎ1bの繊維組織内に細菌等、例えば、大腸菌が残留し、殺菌性が低下する。また、殺菌処理時間(保持時間)が1分間未満であると、殺菌処理された棒状ねぎ1bの繊維組織内に細菌等が残留し、殺菌性が低下する。
【0019】
煮沸による殺菌処理には、公知の煮沸手段、例えば、煮沸釜21を用いる。そして、熱湯約200kg入りの煮沸釜21を用いた場合には、棒状ねぎ1aの煮沸処理量は、3〜5kgが好ましい。この煮沸処理量は、後記する凍結庫(図示せず)の台車26内に収納される1つの凍結トレー24上に並べられる棒状ねぎ1cの量に相当する。
【0020】
蒸しによる殺菌処理には、公知の蒸し手段、例えば、蒸し器37を用いる。棒状ねぎ1aの蒸し処理量は、蒸しトレー35の1枚当たり3〜5kgが好ましい。この蒸し処理量は、後記する凍結庫(図示せず)の台車26内に収納される1つの凍結トレー24上に並べられる棒状ねぎ1bの量に相当する。
【0021】
殺菌工程S2での煮沸による殺菌処理は、洗浄された棒状ねぎ1aをザル等の容器22に収納し、容器22を煮沸釜21内の湯中で上下および/または左右に動かすことが好ましい。これにより、容器22内に収納された棒状ねぎ1aに熱がよく通り、殺菌処理が十分行われた棒状ねぎ1bが得られやすくなる。
【0022】
殺菌工程S2での蒸しによる殺菌処理は、洗浄された棒状ねぎ1aを蒸しトレー35に一定の間隔を空けて一本づつ並べる。次に、この蒸しトレー35を、蒸し器37の台車36内に所定の間隔を隔てて複数段に収納する。なお、蒸しトレー35、台車36として、次工程(凍結工程S3)の凍結トレー24、台車26を使用してもよい。これにより、蒸しトレー35上の棒状ねぎ1aに熱がよく通り、殺菌処理が十分行われた棒状ねぎ1bが得られやすくなる。
【0023】
従来、煮沸または蒸しによる殺菌処理は、所定長さ(例えば、3〜30mm)に切断処理された棒状ねぎに対して行われる。その場合、棒状ねぎの長さが短いため、殺菌処理による棒状ねぎからの旨み成分の流出を防止することができず、棒状ねぎの形状が保持できなかった。しかしながら、本発明の殺菌工程S2における殺菌処理(煮沸または蒸す)は、十分な長さを有する棒状ねぎ1aを用いて行われるため、棒状ねぎ1aからの旨み成分の流出を低減でき、殺菌処理された棒状ねぎ1bの形状が保持できる。その結果、旨み成分を多く含んだ棒状ねぎ1bを得ることができる。
【0024】
本発明において、殺菌処理には、以下の水切り処理を含んでもよい。特に、煮沸による殺菌処理を行った場合には、水切り処理を行うことが好ましい。一方、蒸しによる殺菌処理を行った場合には、蒸しトレー35として、多数の穴が開口したトレーを使用することによって、水切り処理を省略することが可能となる。
【0025】
(水切り処理)
煮沸または蒸された棒状ねぎ1bを水切り処理し、水切り処理された棒状ねぎ1cを所定の凍結トレー24上に並べる。この際、凍結直後に棒状ねぎ1dが凍結トレー24に付着することを避けるために、凍結トレー24上にビニールシート25等を敷いてもよい。水切り処理は、公知の手段を用いて行い、例えば、棒状ねぎ1bを収納したザル等の容器22を水切り手段23の上で傾斜するように載置することによって、水切りが十分行われた棒状ねぎ1cが得られる。水切り処理時間は、水切り処理された棒状ねぎ1cが、次工程(凍結工程)S3の凍結処理において、棒状ねぎ1cに残存する水の凍結によって、凍結した棒状ねぎ1dに不具合、例えば、亀裂、二次汚染等の欠陥が生じないように、適宜設定すればよい。
【0026】
なお、前記殺菌工程S2は、後記する凍結庫の台車26内に収納される凍結トレー24の数だけ、繰り返し行うことが好ましい。
【0027】
(凍結工程:S3)
凍結工程S3は、殺菌工程S2で凍結トレー24上に並べられらた殺菌処理された棒状ねぎ1b(水切り処理された棒状ねぎ1cを含む)を凍結処理する工程である。凍結処理条件は、棒状ねぎ1b、1cが凍結する所定温度(例えば、−25℃)以下で、3時間以上凍結処理することが好ましい。凍結処理温度が3時間未満であると、凍結処理された棒状ねぎ1d(凍結した棒状ねぎ1d)の凍結状態が不十分となる。その結果、凍結した棒状ねぎ1dが柔らかいため、次工程(切断工程)S4での切断処理において、凍結した棒状ねぎ1dから芯が抜け出たり、凍結した棒状ねぎ1dの切断面が綺麗に切れず、切断処理された棒状ねぎ1eの見た目が悪くなる等の不具合が生じやすくなる。
【0028】
凍結工程S3は、公知の凍結庫(図示せず)を用いて行う。具体的には、棒状ねぎ1cが並べられた複数の凍結トレー24、24・・・を、凍結庫の台車26内に所定の間隔を隔てて複数段に収納し、凍結庫内で前記凍結処理条件にしたがって凍結処理することによって、十分に凍結した棒状ねぎ1dが得られる。
【0029】
(切断工程:S4)
切断工程S4は、凍結工程S3で凍結処理された棒状ねぎ1dを所定長さ(例えば、3〜30mm)に切断処理する工程である。切断処理は、公知のスライサー27を用いて行い、切断処理された棒状ねぎ1eは所定の容器28内に集められる。また、切断処理をスムーズに行うために、凍結した棒状ねぎ1dを室温にて数分間放置して、棒状ねぎ1dの表面が解凍した時点で、切断処理を開始することが好ましい。そして、棒状ねぎ1dの切断処理を凍結状態で行うことによって、棒状ねぎ1dの形状が崩れたり、芯が抜け出たりすることがない。その結果、綺麗な切断面をもった棒状ねぎ1eを得ることが可能となる。また、前記したように、切断処理を従来のように殺菌工程(煮沸)S2の前に行なわないため、煮沸による旨み成分の流出が低減でき、旨み成分による結着作用も維持できるため、旨み成分を十分含有し、形状も保持された棒状ねぎ1eを得ることが可能となる。
【0030】
切断工程S4において、凍結した棒状ねぎ1dのスライサー27への供給方向は、製品(長ねぎ凍結乾燥品)2の形状に合わせて行う。具体的には、製品2の形状として切断面が製品軸方向に対して所定の角度で傾斜している場合には、凍結した棒状ねぎ1dを、スライサー27の切断刃に対して所定角度で傾斜するように、供給することが好ましい。なお、切断工程S4における切断処理は、スライサー27による二次汚染が発生しないように、十分注意して行う。
【0031】
(凍結乾燥工程:S5)
凍結乾燥工程S5は、切断工程S4で切断処理された棒状ねぎ1eを凍結乾燥処理して長ねぎ凍結乾燥品(製品)2とする工程である。凍結乾燥条件は、切断された棒状ねぎ1eが凍結乾燥できれば特に限定されないが、処理時間は20〜22時間が好ましい。
【0032】
凍結乾燥工程S5は、公知の凍結乾燥機31を用いて行う。具体的には、容器28内に集められた切断処理された棒状ねぎ1eを、所定の乾燥トレー29上に並べる。なお、凍結乾燥工程S5では、棒状ねぎ1eが凍結乾燥処理の際に焦げやすくなるため、乾燥トレー29上にビニールシート(図示せず)を敷き、そのビニールシート上に棒状ねぎ1eを並べることが好ましい。また、乾燥トレー29の温度が高くなりすぎて、棒状ねぎ1eに焦げが発生することのないように、凍結乾燥条件を設定することが好ましい。そして、棒状ねぎ1eが並べられた複数の乾燥トレー29、29・・・を、凍結乾燥機31の台車30内に所定の間隔を隔てて複数段に収納し、凍結乾燥機31内で前記した凍結乾燥処理条件にしたがって凍結乾燥処理することによって、十分に凍結乾燥した長ねぎ凍結乾燥品(製品)2が得られる。
【0033】
本発明に係る長ねぎ凍結乾燥品の製造方法は、前記した工程(S1〜S5)に加えて、凍結乾燥工程S5での凍結乾燥処理をスムーズに行い、凍結乾燥機31の熱的負荷を軽減させるために、凍結乾燥工程S5の前に、切断された棒状ねぎ1eを予備凍結処理する予備凍結工程S6を行ってもよい。予備凍結工程S6は、前記凍結工程S3と同様の凍結庫を用いて行ってもよい。具体的には、切断処理された棒状ねぎ1eを、所定のトレー24上に並べる。そして、棒状ねぎ1eが並べられた複数のトレー24、24・・・を、凍結庫の台車26内に所定の間隔を隔てて複数段に積み上げ、凍結庫内で所定の条件にしたがって予備凍結処理する。なお、予備凍結処理としては、−20℃以下、5時間以上が好ましい。
【0034】
また、本発明に係る長ねぎ凍結乾燥品の製造方法は、凍結乾燥工程S5の後に、検査工程S7、および/または、梱包工程S8を行ってもよい。ここで、検査工程S7は、金属探知機32を用いて金属が混入した製品を検知・除去する工程、形崩れ品、汚れ付着品、異物混入品に代表される外観不良品を目視で検査・除去する工程等である。また、梱包工程S8は、納入先の仕様に合わせて、ダンボール33等に所定量の製品を梱包する工程である。なお、梱包工程S8において、重量秤34等を用いて、製品梱包量の過不足を確認してもよい。
【実施例】
【0035】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例)
図1に示す工程フローにしたがって長ねぎ凍結乾燥品2を製造した。
具体的には、直径20mmの長ねぎを、不要部分を切除後、3回水洗して、長さ200mmの棒状ねぎ1aを得た(材料準備工程S1)。棒状ねぎ1a(3kg)を、煮沸釜(熱湯200kg)に投入し、熱湯90℃以上で5分間煮沸した(棒状ねぎ1aの品内温度75℃以上、1分間以上となった)。次に、煮沸後の棒状ねぎ1bを約5分間水切り処理し、水きり処理された棒状ねぎ1cを所定の凍結トレーの上に並べた(殺菌工程S2)。凍結トレーを凍結庫に搬入後、凍結庫内で、棒状ねぎ1cを、−25℃、5時間凍結処理した(凍結工程S3)。凍結処理後の棒状ねぎ1dを凍結庫から搬出し、スライサー(切断面角度45度)を用いて、10mm長さに切断した(切断工程S4)。切断後の棒状ねぎ1eを所定の乾燥トレーの上に並べ、乾燥トレーを凍結乾燥機内に搬入した。搬入後、棒状ねぎ1eを、真空度:0.2Torr(26.7Pa)、処理時間:22時間で凍結乾燥処理して、長ねぎ凍結乾燥品2を得た(凍結乾燥工程S5)。
【0036】
(比較例)
図3に示す工程フローにしたがって長ねぎ凍結乾燥品11を製造した。
具体的には、直径20mmの長ねぎを、不要部分を切除後(前処理工程Sa)、水洗して(水洗工程Sb)、スライサー(切断面角度45度)を用いて、10mm長さに裁断した(裁断工程S101)。裁断処理された棒状ねぎ10aを、煮沸釜投入し、熱湯98℃以上で60秒間煮沸し、棒状ねぎ10aを殺菌処理した(棒状ねぎ10aの品内温度75℃以上、1分間以上となった。ブランチング工程S102)。殺菌処理後、棒状ねぎ10bを所定の乾燥トレーの上に並べ、乾燥トレーを凍結庫内に搬入し、−25℃で凍結処理した(予備凍結工程S103)。凍結後、乾燥トレーを凍結乾燥機内に搬入した。搬入後、棒状ねぎ10cを、真空度:0.2Torr(26.7Pa)、処理時間:22時間で凍結乾燥処理して、長ねぎ凍結乾燥品11を得た(凍結乾燥工程S104)。
【0037】
実施例、比較例において、煮沸直前の棒状ねぎの重量(A)、および、凍結乾燥処理後の長ねぎ凍結乾燥品の重量(B)を測定した。そして、以下の式(1)で凍結乾燥後の固形分比率を算出し、その固形分比率によって、長ねぎの旨み成分の流出量を確認した。
【0038】
固形分比率(%)=B/A×100 ・・・ (1)
【0039】
実施例の固形分比率は9.32%、比較例の固形分比率は6.39%であった。したがって、実施例の長ねぎ凍結乾燥品は、比較例に比して、旨み成分の流出が少なく、旨み成分を多く含有していることが確認された。
【0040】
実施例および比較例の凍結乾燥処理後の長ねぎ凍結乾燥品について、目視にて外観を観察した結果、比較例では形状の壊れたものが多数確認されたが、実施例では形状の壊れたものは確認されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る長ねぎ凍結乾燥品の製造方法を説明する工程フローである。
【図2】本発明に係る長ねぎ凍結乾燥品の製造方法を模式的に示す概略図である。
【図3】従来の長ねぎ凍結乾燥品の製造方法を説明する工程フローである。
【符号の説明】
【0042】
1a、1b、1c、1d、1e 棒状ねぎ
2 長ねぎ凍結乾燥品(製品)
S1 材料準備工程
S2 殺菌工程
S3 凍結工程
S4 切断工程
S5 凍結乾燥工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長ねぎの不要部分を切除して棒状ねぎとし、その棒状ねぎを洗浄処理する材料準備工程と、
前記材料準備工程で洗浄された棒状ねぎの温度が75℃以上となって、その温度が1分間以上保持されるように、前記棒状ねぎを煮沸または蒸して殺菌処理する殺菌工程と、
前記殺菌工程で殺菌処理された棒状ねぎを凍結処理する凍結工程と、
前記凍結工程で凍結された棒状ねぎを所定長さに切断処理する切断工程と、
前記切断工程で切断処理された棒状ねぎを凍結乾燥処理して長ねぎ凍結乾燥品とする凍結乾燥工程とを含むことを特徴とする長ねぎ凍結乾燥品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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