長周期格子センサ方法および装置
本発明は、光センサならびに光センサを用いて試験媒体中の一つまたは複数の対象化合物を検出するためのシステムおよび方法に関する。一つの態様では、長周期格子および固相マイクロ抽出(SPME)膜を含む光センサを試験媒体に暴露して、一つまたは複数の対象化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配されるようにする。試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較し、ここで光学的性質の差違が試験媒体中の一つまたは複数の対象化合物の検出を示す。方法およびシステムは、SPME膜を有するまたは有しない長周期格子センサ、およびファイバループリングダウン分光法を用いてセンサの光学的性質を計測することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、長周期格子に基づく光センサに関する。特に、本発明は、光導波ループリングダウン分光法によってインタロゲーションされ、かつ/または固相マイクロ抽出膜(microextraction film)によってコートされている長周期格子に基づく光センサのための方法、センサおよびシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
長周期格子(LPG)は、ファイバブラッグ格子(FBG)と同様、光導波路(典型的には単一モード光ファイバ)のコアの屈折率の周期的変調であるが、LPGは、ブラッグ格子(<1μm)に比べてはるかに長い周期(典型的には10μm〜1mm)を有している。LPGは、ファイバコアに沿って伝搬するモードからファイバの共伝搬クラッディングモードに対応するモードまで光を結合する。クラッディングモードが典型的にこうむる高い損失のせいで、LPGはノッチフィルタとして働く。したがって、格子の周期性によって選択される波長を光ファイバのコアに沿って反射するFBGとは違って、LPGは、後方反射が低いノッチフィルタとして作用する。格子周期の規則性および格子の長さに依存して、LPGの拒絶帯は典型的に30nmの幅を有し得、ピークにおける損失は-30dBに近づき得る(James et al. 2003)。
【0003】
LPGの場合、クラッディングモードに結合するコアモードの波長は、以下の位相整合条件によって特性決定される。
【0004】
式中、neff,coreは、波長、コア屈折率n1およびクラッディング屈折率n2の関数である有効コア屈折率であり、neff,claddingは、波長、クラッディング屈折率n2および周囲屈折率n3の関数であるi番目のモードの有効クラッディング屈折率であり、ΛはLPGの周期である。この式から、有効屈折率を示差的に変化させることができる物理的、機械的もしくは環境的パラメータ(たとえば周囲媒体の屈折率)または格子の周期を変化させることができる物理的、機械的もしくは環境的パラメータ(たとえば機械的ひずみ)がLPGの減衰スペクトルの変化をもたらすということは明らかである。そして、適切な較正が施されると、減衰ラインのシフトを使用して環境パラメータをインタロゲーションすることができる(James et al., 2003を参照)。この計測原理は、数多くの刊行物で論じられており、LPGを廉価、堅調で高感度のセンサとして使用することにおける相当な関心を招いた(Allsop et al. 2001; Bhatia et al. 1996; Bhatia 1999; Chong et al. 2004; DeLisa et al. 2000, Grubsky et al. 2000; James et al. 2003; Khaliq et al. 2001; Khaliq et al. 2002; Lee et al. 2003; Shu et al. 1999)。
【0005】
LPGを化学的センサとして使用する場合、屈折率の示差的変化は典型的には、クラッディングを包囲する媒体の屈折率を変化させることによって誘発される。クラッディングモードのエバネッセント波はファイバの外側の媒体を効果的に「探る」ため、その屈折率は、クラッディングの有効屈折率にも影響する。たとえば、極端な場合、クラッディングの屈折率と周囲媒体の屈折率とが同一であるならば、クラッディングは、光を誘導するその能力を失い、本質的に無限に延長する。したがって、LPGは、屈折率の変化のための高感度センサとして使用することができる(Bhatia 1999; Chong et al. 2004; Lee et al. 2003; Shu et al. 1999)。たとえば、炭化水素マトリックス中の芳香族化合物は、パラフィン溶液中0.5容量%のキシレン濃度の場合で約0.4nmの波長変化を生じさせるLPGスペクトルの変化によって検出されてきた(Allsop et al. 2001)。検出限界は0.04% (約400ppm)と報告されている。
【0006】
LPGをセンサとして使用するための一つの手法は、分析対象物に暴露されると化学的および/または物理的変化を起こす反応性コーティングでLPGをコートすることであった。たとえば、Luoら(2002)は、湿度を検出するためにカルボキシメチルセルロース(CMC)でコートされたLPGを使用し、硫化物系化学兵器を検出するためにポリエチレンイミン(PEI)に埋め込まれた金属ナノクラスタでコートされたLPGを使用した。しかし、CMC LPGセンサは強い温度依存性を示し、PEI LPGセンサは、硫化物との不可逆性反応を起こし、その結果、再利用できなかった。また、PEI LPGセンサは、他の硫化物/チオール類と交差反応する可能性が高く、標的化合物に対する特異性に劣ることが示唆されている。同様に、Murphyら(1999年1月26日発行の米国特許第5,864,641号)は、LPGセンサのための物理的、電気的および化学的に反応性のコーティングを発案した。Murphyらは、タンパク質の結合、ひいては検出のための反応部位が散在するそのようなコーティングを論じたが、特定のタンパク質に対するいかなる特異性も実証してはいない。
【0007】
LPGがセンサとして実用化されることができる前に解決しなければならない、感温性、標的種に対する特異性、標的種との相互作用の可逆性および屈折率に対する感度のような要因に関する数多くの障害があることは明白である。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明の一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための方法であって、長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む光センサを提供する段階、光センサを試験媒体に暴露して該一つまたは複数の対象化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配されるようにする段階、および試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、該少なくとも一つの光学的性質の差違が該一つまたは複数の化合物の検出を示す、方法が提供される。
【0009】
一つの態様で、長周期格子は光ファイバに配置される。様々な態様では、光ファイバは単一モード光ファイバであり、固相マイクロ抽出膜はPDMSを含む。好ましい態様では、一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配は可逆性である。
【0010】
さらなる態様で、方法は、それぞれが長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む2個またはそれ以上の光センサのアレイを設ける段階をさらに含む。
【0011】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための光センサであって、長周期格子を含む光導波路および該長周期格子に配置された固相マイクロ抽出膜を含み、該一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配され、該一つまたは複数の化合物の該分配が長周期格子の少なくとも一つの光学的性質を変化させる、光センサが提供される。
【0012】
一つの態様で、光導波路は光ファイバである。様々な態様では、光ファイバは単一モード光ファイバであり、固相マイクロ抽出膜はPDMSを含む。好ましい態様では、一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配は可逆性である。もう一つの態様では、センサは、それぞれが長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む2個またはそれ以上の光センサのアレイをさらに含む。
【0013】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するためのシステムであって、先に記載した一つまたは複数の光センサ、光源、該一つまたは複数のセンサを通過した光を検出するための検出器および該検出された光の一つまたは複数の性質を評価するための手段を含む、システムが提供される。
【0014】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための方法であって、長周期格子を含む光センサを提供する段階、試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を計測し、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、該比較の結果が一つまたは複数の化合物の検出を示し、少なくとも一つの光学的性質の計測が、ファイバループリングダウン分光法を使用する段階を含む、方法が提供される。
【0015】
一つの態様では、方法は、固相マイクロ抽出膜を長周期格子に配置する段階をさらに含む。
【0016】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための方法であって、長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む光センサを提供する段階、光センサを試験媒体に暴露して該一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配されるようにする段階、および試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を計測し、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、該比較の結果が一つまたは複数の化合物の検出を示し、少なくとも一つの光学的性質の計測が、ファイバループリングダウン分光法を使用する段階を含む、方法が提供される。
【0017】
一つの態様では、該ファイバループリングダウン分光法は、該光センサに取り付けられた光導波ループを提供する段階、輝度変調された基準位相の光を光導波ループ中に発する段階、光導波ループに沿って該光の位相を検出する段階、およびループに沿って検出された該光の位相を基準位相と比較する段階を含み、検出された位相と基準位相との比較が光センサの該少なくとも一つの光学的性質に関する情報を提供する。
【0018】
もう一つの態様では、該ファイバループリングダウン分光法は、該光センサに取り付けられた光導波ループを提供する段階、光導波ループを複数の光パルスで照射する段階、ループに沿った一つまたは複数の場所で該光パルスの往復を検出する段階、および該光パルスのリングダウン時間を測定する段階を含み、該リングダウン時間が光センサの少なくとも一つの光学的性質を示す。
【0019】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するためのシステムであって、一つまたは複数の化合物に暴露されると変化する光学的性質を有する、長周期格子を含む光センサ、該光センサに取り付けられた光導波ループ、輝度変調された基準位相の光を光導波ループ中に発するための光源、光導波ループに沿って該光の位相を検出するための検出器、およびループに沿って検出された該光の位相を基準位相と比較するための手段を含み、検出された位相と基準位相との比較が光センサの該光学的性質に関する情報を提供する、システムが提供される。
【0020】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するためのシステムであって、一つまたは複数の化合物に暴露されると変化する光学的性質を有する、長周期格子を含む光センサ、該光センサに取り付けられた光導波ループ、光導波ループを複数の光パルスで照射するための光源、ループに沿った一つまたは複数の場所で該光パルスの往復を検出するための検出器、および該光パルスのリングダウン時間を測定するための手段を含み、該リングダウン時間が光センサの少なくとも一つの光学的性質を示す、システムが提供される。
【0021】
様々な態様では、上記システムは、該長周期格子に配置された固相マイクロ抽出膜をさらに含むことができ;該一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配され、一つまたは複数の化合物の該分配が長周期格子の少なくとも一つの光学的性質を変化させる。上記の好ましい態様では、一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配は可逆性である。
【0022】
上記システムの様々な態様では、少なくとも一つの光学的性質は屈折率であり、光は、赤外線(IR)、可視光線および紫外線から選択される少なくとも一つの波長の光であり得、光学導波ループは単一モード光ファイバを含み得る。
【0023】
本発明の方法およびシステムは、複数の対象化合物を検出するために、多重化および/またはアレイ化されている複数の上記光センサを用いることもできる。さらなる態様では、個々のセンサまたはセンサの群それぞれが、別個の対象化合物に対応する固相マイクロ抽出膜を有することもできる。
【0024】
好ましい実施態様の詳細な説明
たとえば環境および化学的用途におけるセンサとしてのLPGの実用は、LPGを包囲する媒体の組成の関数としてLPGの減衰スペクトルの変化をモニタすることを要する。ここで、五つの障害に向き合わなければならない。
【0025】
(i)減衰スペクトルの変化は、クラッディングの屈折率と周囲媒体の屈折率とが近似するとき最大になる。これは、汚染物質を計測することができるマトリックスとしての水および他の溶媒を排除する。理由は、それらの屈折率がクラッディングの屈折率よりも相当に低いからである。
【0026】
(ii)屈折率適合条件が満たされないならば、減衰スペクトルの変化は非常に小さくなり、分解能が高いスペクトル分析器を用いてしか計測できなくなる。
【0027】
(iii)どの化合物が減衰スペクトルのシフトを誘発したのかをオペレータが特定することを可能にする化学的特異性がない。
【0028】
(iv)減衰スペクトルの変化を測定するために必要な設備が高価であり、必ずしも現場適合性ではない。
【0029】
(v)計測可能な屈折率変化は、典型的には、周囲媒体における高い濃度変化(数百ppm)を要する。したがって、LPGは、極微量の汚染物質を伴う用途のための検出器として適さない。
【0030】
本発明は、LPGを固相マイクロ抽出およびファイバループリングダウン分光法の少なくとも一方とともに用いる廉価、堅調で高感度のセンサを提供する際のこれらの問題点に対処する。
【0031】
本明細書で使用する「固相マイクロ抽出(SPME)」とは、固相に対する対象化合物の親和力に基づく、化合物の混合物から固相中への対象化合物(たとえば分析対象物または標的種)の抽出または分配をいう。好ましくは、固相材料中への対象化合物の分配は可逆性である。SPMEはタンパク質−リガンド複合体に特徴的な相互作用を伴わないため、本明細書で使用する「親和力」は、そのような反応をいうものではない。固相材料は、対象化合物とは反応せず、したがって、対象化合物に暴露されても化学変化を起こさない。むしろ、SPMEは、混合物または媒体から固相中への対象化合物の分配に基づく。このような分配は、化合物を固相中に溶解させ、化合物粒子が固相によって実質的に包囲された状態にすることを含み得る。理論によって拘束されることなく、少なくともいくつかの状況で、そのような分配は、対象分子が混合物または媒体を離れ、固相中に移動するときの系の自由エネルギー増加に基づくと考えられる。たとえば、水性系では、対象化合物と水との好ましくない相互作用が移動(すなわちエントロピー)を駆動し得る。化合物の混合物は典型的には流体であり、気体または液体であり得る。流体が液体である場合、混合物は水性であり得る。対象化合物そのものは、たとえば化合物の混合物中に粒子として分散した固体、液体または気体であり得る。
【0032】
光センサ用途では、固相材料は、たとえば膜として、光導波路、たとえば光ファイバの外面に被着される。固相材料中に分配された対象化合物は、光ファイバの少なくとも一つの光学的性質を検出可能に変化させて、それにより、その光ファイバを対象化合物のための光センサにする。固相材料に対する対象化合物の親和力は、平衡状態の溶液中の化合物の濃度に対する膜中の化合物の濃度の比と定義される、膜:溶液分配定数(Kfs)として特性決定される。そして、一つの化合物に対して別の化合物よりも高い膜の選択性がKfs値の比(=Kfs,a/Kfs,b)と定義される。
【0033】
SPME膜材料の例は、疎水性と密接に相関させながら化合物の混合物から化合物を抽出するポリマーポリジメチルシロキサン(PDMS)である。これは、PDMS膜中の化合物のKfsと、オクタノール:水分配定数Kowとの間の密接な相関によってわかりやすく説明される(Mayer et al. 2000)。大きなKfs値は、ポリマーマトリックス中の分析対象物の予備濃縮を示し、多環式芳香族炭化水素(PAH)のような有機化合物の場合に典型的なlogKfs値は2〜5の範囲である(Mayer et al. 2000; Brown et al. 2001)。ポリマーマトリックス膜が厚さ数ミリメートル未満である限り、分配過程は数分の内に平衡する。
【0034】
PDMSのようなポリマー膜の選択性パターンは、ポリマーをドープすることによって変化させることができる。これは、特定の化学官能基を様々なレベルでポリマーに組み込むことによって達成することができる。たとえば、フェニル基でドープされたPDMS膜が芳香族化合物トルエンに対して親和力を有することが示されている(Matejec et al. 2003)。
【0035】
光ファイバ上のポリマーコーティングに基づくSPMEは、SPMEコーティング中のエバネッセント放射線の吸収による抽出された化合物の検出のために使用されてきた(Krska et al. 1993; Mizaikoff 1999)。PDMSは、その光学的性質により、これらの計測に良好なマトリックスである。透明であり、導波路中の光伝搬を維持するためのクラッディングとして働く屈折率(典型的には1.41)を有する。これらの手法の主な欠点は、抽出された化合物による放射線の直接吸収の必要性である。これは、使用することができる光源および検出器に対して有意な制限を課す。
【0036】
代替法は、より汎用的なパラメータ、たとえば膜屈折率をポリマー膜から計測することである。屈折率変化の検出は導波路中を伝搬する光の変化の検出を要するため、これは、上述したエバネッセント検出方式とは異なる。化合物が膜中に抽出されるにつれ、膜の屈折率および導波路中を伝搬するシグナルが変化し、これが、抽出された化合物を検出するために使用されてきた(Tobiska et al. 1998; Chomat et al. 2002)。この手法に伴う問題は、使用される屈折率計測の感度が低いこと、および使用されるポリマーの選択性の欠如である。
【0037】
本発明の第一の局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の対象化合物を検出するための方法であって、LPGおよびSPME膜を含む光センサを使用する方法が提供される。方法は、光センサを試験媒体に暴露して該一つまたは複数の対象化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配されるようにする段階、および試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、比較が一つまたは複数の対象化合物の検出を示す。本発明はまた、LPGおよびSPME膜を含む光センサならびに一つ以上の対象化合物を検出する方法を実施するためのシステムを提供する。
【0038】
本発明にしたがって、SPME膜はLPG全体またはLPGの一部分に被着される。LPGとSPMEコーティングとの組み合わせは、LPGの光学スペクトルに影響するコーティングの光学的性質を測定することを提供する。用途によっては、コーティングの光学的性質(たとえば屈折率)の変化が分析対象物の光学的性質(たとえば分析対象物の屈折率)に関連することがあり得るが、これが必ずしも当てはまるわけではない。
【0039】
本明細書で使用する「検出」とは、一つまたは複数の対象化合物(すなわち一つまたは複数の分析対象物)の存在および/または濃度および/または実体および/または光学的性質の決定を意味すると意図される。
【0040】
本明細書で使用する「試験媒体」は、一つまたは複数の対象化合物を中に見いだすことができ、分析対象物の検出を容易にするために光センサを実質的に包囲することができる任意の媒体を指すと意図される。試験媒体は、固体、半固体または液体もしくは気体のような流体であることができる。
【0041】
本発明のこの局面は、LPGの光学損失スペクトルにおいて得られるシフトを使用して、SPME膜中に分配された分析対象物の存在、濃度、光学的性質および/または実体を決定することを提供する。これは、波長のスペクトルを記録することによって決定することもできるし、固定波長における損失を記録することによって決定することもできる。SPMEは、分析対象物に対する選択性を提供するだけでなく、膜中の分析対象物の局所濃度を何桁ものレベル(たとえば100〜1000倍)高める。
【0042】
計測の化学的選択性は、SPME膜の化学的特異性(すなわち配合(formulation))から生じる。したがって、膜の配合は、分析対象物に対する選択性を最大にするように調製することができる。一つの態様では、SPME膜はポリマー、たとえばPDMSである。このような態様は、化合物の水性混合物に特に適している。様々な態様では、SPME材料の選択性は、分析対象物とポリマーマトリックスとの特異的な化学的または物理的相互作用を提供することによって高めることができる。例とえば、SPME材料は、例として分析対象物に対する特異性を高めるための官能基でドープすることができる(実施例4を参照)。他の態様では、膜は、表1に列挙するものから選択される、示された種々の分析対象物に対して対応する選択性を有するポリマーまたは複合材料であってもよい。さらなる態様で、SPME膜は、たとえばポリマー、ゼオライト、多孔質ガラス、抗体、イオン交換樹脂、ゾルゲルおよびリガンドから選択される材料または材料の組み合わせである。
【0043】
計測の選択性は、2個またはそれ以上のLPG-SPMEセンサをセンサアレイに多重化し、たとえば多変量解析を使用して混合物の化学組成を抽出することによって高めることができる。
【0044】
(表1)SPME膜としての使用に適した材料および対応する分析対象物(Bulletin 923, Supelco Inc., Bellefonte, PA 16823)
【0045】
好ましい態様にしたがって、ポリマー膜を使用するSPMEは、三つの目的を達成するように最適化される。
【0046】
(i)減衰スペクトルのシフトが最大化されるよう、ファイバの屈折率に近い屈折率のポリマーマトリックスを使用する。
【0047】
(ii)SPMEは、ファイバクラッディングの近くの分析対象物濃度を混合物中の分析対象物濃度に対して二桁または三桁のレベルまで高める。これは、溶液中の濃度変化に直接依存するポリマーマトリックスの屈折率の大きな変化につながる。
【0048】
(iii)粗製化学物質選択性を提供する、特定のクラスの化学物質に対して親和力を有するポリマーを使用する。効果は、それぞれがわずかに異なるポリマー選択性を有するそのようなセンサ2個またはそれ以上のアレイを多重化し、多変量解析を使用して正確な組成を抽出することによって高めることができる。
【0049】
ファイバループリングダウン分光法(FLRDS)は、光導波路中の光学損失の非常に小さな変化を計測することができる。この技術は、LPGのために典型的に使用される単一モード光ファイバと完全に適合性である。単一経路実験では、FLRDSは、光源の電力変動から独立した絶対光学損失の計測を可能にする。2005年1月11日発行の本発明者らの米国特許第6,842,548号およびBrownら(2002)で詳細に記載されている、本明細書中で「パルスFLRDS」と呼ぶ一つの態様では、ナノ秒レーザパルスを光導波ループに注入し、往復シグナルの強さがその初期値の1/eまで減衰するのに要する時間、すなわちリングダウン時間から光学損失を測定する。この技術は非常に堅調かつ廉価である。2005年3月15日出願の本発明者らの米国特許出願第11/079,478号およびTongら(2004)で詳細に記載されている最近の改良法は、ファイバ中に結合される、輝度変調された連続波(cw)レーザビームの使用を含む。リングダウン時間は、注入された光とループから放出された光との位相における差違から間接的に得られる。この位相ずれは以下の関係によってリングダウン時間τと関連する。
【0050】
式中、Ωは変調周波数であり、φ0は、電子部品および光学部品に固有の時間遅延に依存する周波数依存性オフセット位相角である。放出される光の輝度に依存して、位相角計測を非常に速やかに実施することができ、本発明者らは、最適化されていないシステムで200msの時間分解能を実証した。
【0051】
本発明の第二の局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための方法であって、長周期格子を含む光センサを提供する段階、試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を計測し、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、該比較が一つまたは複数の化合物の検出を示し、少なくとも一つの光学的性質の計測が、ファイバループリングダウン分光法を使用する段階を含む、方法が提供される。本発明はまた、このような方法を実施するためのシステムを提供する。
【0052】
本発明のこの局面は、パルスまたは位相ずれFLRDSを使用して、LPGによって光ファイバループに導入された光学損失を測定することを提供する。そのような光学損失は、LPGに作用する機械的要因(たとえば応力、ひずみ、振動)および/または環境的要因(たとえば化学的、熱的)のような変数によって生じる可能性があるため、本発明は、そのような要因を正確かつ速やかに検出、特性決定および/または定量するための方法および装置を提供する。計測は、光源をスキャンし、得られたスペクトルをそのような変数に対して測定することによって実施することもできるし、光源波長を一定に維持し、較正後、そのような変数から生じた光学損失を測定することによって実施することもできる。
【0053】
屈折率およびエバネッセント波吸収の両方がLPGの損失性を変化させるということが注記されるべきである。たとえば、分析対象物によって誘発された屈折率変化が、LPGの減衰バンドをFLRDS(またはLPGをインタロゲーションするための任意の他の手段)によってインタロゲーションされる波長領域の中へとシフトさせる可能性があり、それにより、この波長における損失を増大させる。レーザが、分析対象物の非存在下でLPGの減衰バンドが最大限になる波長にチューニングされると、分析対象物の存在におけるLPGの減衰スペクトルのシフトがこの波長での損失を減少させる。
【0054】
本発明のこの態様の利益は、光源または検出器の線形性および安定性に頼る必要なくLPGの光学損失を得ることができ、典型的な輝度ベースの計測と比べてシステムを相当により堅調かつ現場適合性にすることである。もう一つの利益は、FLRDSが、大部分の他の光学損失計測に比べて低い光学損失で最大感度を有するということである。さらには、FLRDSは、走査レーザ光源または固定波長光源を使用して実現することができる。前者の場合、低光学損失の領域に対して特に感度を示す完全減衰スペクトルを得ることができ、後者は、現場展開可能な用途でより適当であるかもしれない。ここで、光学損失の変化は、FLRDSにより、環境パラメータ、たとえばLPGを包囲する媒体の屈折率の変化にしたがってモニタされる。
【0055】
本発明の第三の局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための方法が提供され、長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む光センサを提供する段階、光センサを試験媒体に暴露して該一つまたは複数の対象化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配されるようにする段階、および試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を計測し、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、比較が一つまたは複数の化合物の検出を示し、ここで少なくとも一つの光学的性質の計測が、ファイバループリングダウン分光法を使用する段階を含む。本発明はまた、このような方法を実施するためのセンサおよびシステムを提供する。
【0056】
本発明のこの局面にしたがって、LPGによって光ループに導入された光学損失を測定するためにFLRDSが使用され、光学損失は、分析対象物をLPGのSPME膜中に分配することから生じる。FLRDSは、上記のように、すなわち、位相ずれまたはパルス動作において、光源をスキャンすることによって使用することもできるし、それを一定波長に維持することによって使用することなどもできる。LPGおよびSPMEは上記のように使用され、計測の化学的選択性は、上記のようにして高めることができる、SPME配合の化学的特異性から生じる。
【0057】
以下の非限定的な実施例によって本発明をさらに説明する。
【0058】
実施例
実施例1. 長周期格子およびファイバループリングダウン分光法を使用するセンサ
実験装置
実験装置が図1に示されている。その中心には、Avensys Inc. (Pointe-Claire, Quebec, Canada)によってDow Corning SMF-28単一モード光ファイバを使用してカスタムメイドされた長さ22mm、周期274μmのLPG10がある。空気中、約1.5μmでのLPGの減衰スペクトルが図2に示されている。フュージョンスプライサを使用してLPGを同じSMF-28ファイバ製のループ12につないで、全長約11mのループを製造した。関数発生器24を使用してANDO AQ4320Dチューニング可能ダイオードレーザ14を変調し、99.5/0.5 2x2方向性結合器16 (Lightel Technologies)を使用して5mWの出力および200MHzのバンド幅を有する振幅変調された光をループ中に結合した。99.5/0.5 2x1タップ18 (Lightel Technologies)および高速InGaAsフォトダイオード検出器20を使用してループ内を循環する光の輝度をモニタした。
【0059】
200MHzロックイン増幅器22 (Stanford Research Systems 844)を使用して位相角シフトφを計測し、その際、参照は、変調レーザダイオードの同期化出力から得たものであった。製造業者によると、計測における誤差は約0.02度であった。変調周波数Ωに対するタンジェント(tan)φのプロットの傾きからファイバループのリングダウン時間を測定した(Tong et al. 2004)。
【0060】
図1の挿入図は、実施例3に記載するように、分析対象物粒子がLPGに配置されたSPME膜中に分配される様子を模式的に示す。
【0061】
結果
信頼しうる光学減衰定数をFLRDS計測から得るためには、計測器(instrumentation)の時間応答およびオフセット位相角を決定しなければならない。パッチコードを使用してレーザ出力をまっすぐ光検出器中に結合して、周波数依存性計器位相オフセットを計測した(図3)。
【0062】
任意のオフセットの非存在下では、位相角のタンジェントは変調周波数と共に線形に変化するはずであり、傾きがリングダウン時間τをもたらすであろう。周波数依存性オフセットおよび周波数非依存性オフセットの両方を含めなければならないことが見出された。この補正を使用してリングダウン時間を得た。LPGなしで1520nmで計測したリングダウン時間(図4;△)は998nsであった。ループ中にLPGを用いると(■)、1520nmにおけるリングダウン時間は683nsであり、1527nmで計測されたもの(○)は520nsであった。図2を吟味すると、1520nmにおけるものと比べて1527nmにおけるLPGの高い損失が、このレーザ波長でのより短いリングダウン時間の原因であることがわかる。
【0063】
ジメチルスルホキシド(DMSO)水溶液にLPGを浸漬し、DMSO中のモル分率を30%から100%に変化させることにより、LPGの減衰スペクトルにおける屈折率の変化の影響を測定した。モル分率から、ローレンツ−ローレンス式を使用して屈折率を計算した。図5Aは、減衰スペクトルに対する周囲屈折率の影響を示す。周囲溶液の屈折率がクラッディングの屈折率に近づき、次いでそれと合致するにつれ、高次クラッディングモードに対応する減衰極大値(長めの波長での極大値)が劇的にシフトした。
【0064】
図5AおよびBから見られるように、屈折率が変化すると同時に光学損失が劇的に変化した。たとえば、図5Aは、周囲溶液の屈折率が増大するにつれ、1550nmにおける光学損失が1dB超増大することを示す。したがって、レーザ波長を1520nmで固定して維持し、LPGをファイバループ中につなぎ、DMSOおよび水の異なるモル分率に関して位相角による光学損失を計測した(図6)。0.02°の位相分解能を仮定して、最大傾きの領域で0.000015の屈折率の変化を検出することができる。
【0065】
任意の特定の理論に拘束されて他を排除することなく、図6の曲線の形状の一つの説明は、DMSOの体積分率が増大すると、試験媒体の屈折率が光ファイバクラッディングの屈折率に近づくとともにリングダウン時間が急激に減少するということである。DMSOの体積分率がさらに増大すると、試験媒体の屈折率が光ファイバクラッディングの屈折率を超えるとともにリングダウン時間は増大する。
【0066】
実施例2. 長周期格子および固相マイクロ抽出を使用するセンサ
固相マイクロ抽出を長周期格子と組み合わせたものを、ただし光学リングダウン検出を使用せずに、予備実験で試験した。塩化メチレン中PDMS前駆体物質の100mg/ml溶液から溶媒を蒸発させることにより、LPGをPDMS (Dow Corning 100%シリコーンゴム)でコートした。得られた膜の厚さは10〜500μmの間であると推定され、その屈折率はn3=1.41に近かった(Chomat et al. 2002)。膜をトルエンの飽和水溶液(濃度約500ppm)に沈めている間に、LPGの減衰スペクトルを直線伝播で記録した。減衰極大値の位置の変化を時間の関数として記録し(図7A)、簡単な指数増大関数を使用して当てはめた。分配時間定数tfsは、ポリマー中へのトルエンの分配に対しては19分であり、水洗中のトルエンの除去の場合にはわずか1.55分であった。PDMS中のトルエンの濃度は、オクタノール−水分配係数(pKow=2.7)を使用して推定することができる。水中の濃度が約500ppmであったとすると、PDMS中のその濃度は1%に近いと推定された。飽和トルエン中の長い見かけ平衡時間は、ポリマー膜の遅い膨潤に起因するものである。
【0067】
より低いトルエン濃度への暴露は、より小さな波長シフトでより速やかな平衡(5分)を提供した(図7B)。5分後のシフトは、水中のトルエン濃度に対して線形に比例するものであった。水中のキシレン類(異性体の混合物)を添加した場合にも、図7Cに見られるような同様な波長シフトが認められた。
【0068】
実施例3. 長周期格子、固相マイクロ抽出およびファイバループリングダウン分光法を使用するセンサ
本実施例では、LPGとSPMEとの組み合わせに基づき、FLRDSによってインタロゲーションされるセンサを説明する。特に、本実施例は、水中の疎水性汚染物質を検出するためのセンサに関する。図1の挿入図は、分析対象物粒子がLPGに配置されたSPME膜に分配される様子を模式的に示す。
【0069】
塩化メチレン中PDMS前駆体物質の100mg/ml溶液から溶媒を蒸発させることにより、比較的弱い減衰スペクトルを有するLPGをPDMS (Dow Corning 100%シリコーンゴム)でコートした。得られた膜の厚さは約10〜500μmの間であり、その屈折率は1.41に近かった。ファイバループリングダウン分光法を連続波(すなわち位相ずれ)実施で使用してLPGの減衰スペクトルを記録した。特に、周期的に駆動されるレーザからの同期化出力の位相角を検出器出力と照合し、位相角の差違からリングダウン時間を計算した(図8A)。
【0070】
リングダウン時間は、LPGの減衰スペクトルの一部で記録されたため、光学損失の非常に高感度な測定を提供した。その後、ポリマーコートされたLPGを試験媒体に浸漬することによって減衰スペクトルを変化させた。たとえば、異なる濃度のキシレン水溶液を使用してこの技法を評価した。多くの異なる波長でリングダウン時間を計測することにより(位相角差により)、減衰スペクトルの変化を記録した。減衰極大値のシフトから、較正後、キシレン濃度を得た。
【0071】
さらには、固定波長でFLRDSを使用してLPGの減衰を記録し、リングダウン時間から、較正後、水中のキシレン濃度を得た。図8Bには、位相角から導出されたリングダウン時間の、キシレン濃度に対する依存性が示されている。
【0072】
実施例4. 膜:改質PDMS膜の溶液分配定数(Kfs)
図9は、高純度PDMS膜および改質PDMS膜中の多様な分析対象物に関して計測されたlogKfs値を示す。改質PDMS膜をアミン基(膜形成の前に10%(v/v)3-アミノプロピルトリエトキシシランをPDMS前駆体に加えることにより)(APTES)、およびフェニル基(膜形成の前に10%(v/v)ジフェニルジエトキシシランをPDMS前駆体に加えることにより)(PDPS)でドープした。これらの結果は、分析対象物に対する3種のポリマーの異なる親和力を示す。たとえば、APTESポリマー中のアミン基の、ヒドロキシピレン分配に対するプラスの効果は劇的である。極性ヒドロキシル化分子は通常、PDMS中に弱く分配するが、アミン基の添加は、Kfs値を劇的に増大させる特異的な水素結合相互作用の機会を提供する。
【0073】
実施例5. 膜における屈折率変化
表2は、いくつかのPDMSおよび改質PDMSポリマー膜の屈折率(1.55μm波長における)を示す。改質膜は、ジクロロジメチルシランと以下の一つまたは複数との重合から製造した:トリクロロメチルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランまたはテトラエトキシチタン(IV)。表2におけるすべての%値はモル%である。図10は、膜中のチタン(図10A)またはジフェニルシロキサン(図10B)置換基のレベルを変えることによって膜屈折率を指定の値に変更する能力を示す。
【0074】
分析対象物を膜中に分配すると、膜屈折率に変化が生じた。図11は、12.2%チタンPDMS膜または7.7% APTES PDMS膜中に分配された種々の分析対象物に関する屈折率の変化を示す。分析対象物で飽和させた水に膜を暴露した。屈折率の対応する変化を100ppmの分析対象物溶液の場合の変化に対して正規化した。これらの結果は、分析対象物の間の区別を提供する、これら二つの改質ポリマー膜の異なる応答を示す。したがって、改質および非改質ポリマー、たとえばPDMSを含み得る、それぞれが異なるSPME膜を有するセンサのアレイは、種々の分析対象物の示差的検出/同定を提供するであろう。
【0075】
(表2)いくつかのPDMSおよび改質PDMSポリマー膜の屈折率(1.55μm波長)。膜の詳細は本文中に記載。
【0076】
特許文献を含むすべての引用刊行物の内容は、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0077】
当業者は、本明細書に記載した態様の変形を認識し、または日常実験を使用してそれを確認することができるであろう。そのような変形は本発明の範囲内であり、特許請求の範囲に包含される。
【0078】
引用文献
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明は、例として添付の図面を参照しながら説明される。
【図1】LPGを光ファイバリングダウン分光ループに組み込む実験装置の略図である。
【図2】図1に示す装置のファイバループ中につながれたLPGの空気中の伝播スペクトルのプロットである。
【図3】計器位相角オフセット修正のプロットである。レーザと検出器とを接続するファイバループ(図1を参照)に代えて、短い距離のSMF-28光ファイバからなるパッチを用いた。フォトダイオード検出器シグナルとレーザ変調との間の変調周波数依存性位相ずれが、ファイバループを使用して実施された位相ずれ計測から差し引かなければならない計器修正係数を構成する。
【図4】三つの異なるレーザ周波数における、図1のファイバループと図3のデータを得るために使用されるパッチとの間の位相角差の変調周波数依存性のプロットである。これらのプロットの傾きがファイバループの負のリングダウン時間を与える。△、ループ中のLPGなしで1520nmの場合;■、ループ中にLPGを用いて1520nmの場合;○、ループ中にLPGを用いて1527nmの場合。
【図5A】異なる屈折率を有する3種のDMSO溶液に沈めたΛ=274μmの周期を有するLPGの減衰スペクトルを示すプロットである。
【図5B】図のように異なる周期性を有する二つのLPGに関して、屈折率に対する減衰極大波長の変化を示すプロットである。周囲溶液の屈折率をクラッディングの屈折率に適合するように変化させたとき、図5Aで使用されたLPGの約1570nmにおける減衰極大値が約16nmシフトする。周期性は、252μm LPGの場合のより大きな波長応答として見られる、屈折率に対するモニタされたモードの感度に影響する。極大波長応答は、屈折率が、周期性から独立したクラッディングの屈折率に近づくときである。
【図6】図1の装置を使用して得られた、LPGを包囲する溶液の組成に対するファイバループリングダウン時間の依存性を示すプロットである。LPGを包囲する、ジメチルスルホキシド(DMSO)および水を含有する溶液の体積分率を変化させ、キャビティリングダウン時間を測定した。溶液温度は22℃であった。レーザ波長は1520nmにセットし、変調周波数は130kHzであった。
【図7A】LPGの減衰極大値の位置の時間的進展を示すプロットである。LPG全体をPDMSの薄膜でコートし、トルエンの飽和水溶液に沈めた。トルエンがPDMS中に分配されるにつれ、PDMSマトリックスの屈折率は増大し、その結果、減衰スペクトルがシフトした。実線の曲線は、それぞれ19分および1.55分の時間定数を有する指数関数的な上昇曲線および減衰曲線である。
【図7B】図7AのLPGに関して低めのトルエン濃度の場合の、約5分平衡させたときの減衰極大波長の時間的進展を示す。5分間の暴露後の波長におけるシフトはトルエン濃度と線形に相関する(データ図示せず)。シグナルは1000ppmトルエン濃度で安定しなかった。
【図7C】PDMSの膜でコートされたLPGを空気、水に浸漬し、キシレン類(異性体の混合物)の飽和水溶液に沈めたのちに計測したスペクトルのプロットである。
【図8A】位相ずれ光ループリングダウン技術(明細書を参照)を使用して得られた、PDMS膜でコートされたLPG(Λ=282μm)の減衰スペクトルのプロットである。図示するものは、μs単位のリングダウン時間、レーザ波長の関数としての、ファイバーループに入る光とファイバループを出る光との間の位相角差および式2を使用して測定したマイクロ秒単位のリングダウン時間である。
【図8B】水中のキシレン濃度の関数としての、図8AのPDMSコートされたLPGのリングダウン時間の変化のプロットである。レーザ波長は1590nmで固定した。キシレンがPDMSポリマー中に分配されるにつれ、ポリマーの屈折率は変化し、図8Aに示すスペクトルはシフトし、それにより、1590nmにおける光学損失を増大させた。
【図9】水から3種のシロキサン膜:高純度ポリジメチルシロキサン(PDMS)、膜形成の前に10%(v/v) 3-アミノプロピルトリエトキシシランをPDMS前駆体に加えることによってアミン基でドープされたPDMS (APTES)および膜形成の前に10%(v/v)ジフェニルジエトキシシランをPDMS前駆体に加えることによってフェニル基でドープされたPDMS(PDPS)に分配される種々の化合物の膜:溶液分配定数(Kfs)値を示す。
【図10A】PDMSのチタンドープのモル%の関数としてPDMS膜の屈折率を示すプロットである。ドープされたPDMSは、重合中にテトラエトキシチタンをPDMSに加えることによって調製した。膜をガラススライドに付着させ、屈折計を使用して屈折率を計測した。
【図10B】PDMSのモル%ジフェニルシロキサンドーピングの関数として、6モル%チタンでドープされたPDMS膜の屈折率を示すプロットである。ドープされたPDMSは、重合中にジエトキシジフェニルシランおよびテトラエトキシチタンを加えることによって調製した。膜をガラススライドに付着させ、屈折計を使用して屈折率を計測した。
【図11】種々の分析対象物に関して、12.2%チタンPDMS膜または7.7% APTES PDMS膜の屈折率の変化を示す。膜をガラススライドに付着させ、屈折計を使用して屈折率を計測した。分析対象物で飽和した水にスライドを暴露し、屈折率の変化を100ppm溶液濃度に対して正規化した。括弧内の数字は、純粋な液体形態における分析対象物の屈折率を示す。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、長周期格子に基づく光センサに関する。特に、本発明は、光導波ループリングダウン分光法によってインタロゲーションされ、かつ/または固相マイクロ抽出膜(microextraction film)によってコートされている長周期格子に基づく光センサのための方法、センサおよびシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
長周期格子(LPG)は、ファイバブラッグ格子(FBG)と同様、光導波路(典型的には単一モード光ファイバ)のコアの屈折率の周期的変調であるが、LPGは、ブラッグ格子(<1μm)に比べてはるかに長い周期(典型的には10μm〜1mm)を有している。LPGは、ファイバコアに沿って伝搬するモードからファイバの共伝搬クラッディングモードに対応するモードまで光を結合する。クラッディングモードが典型的にこうむる高い損失のせいで、LPGはノッチフィルタとして働く。したがって、格子の周期性によって選択される波長を光ファイバのコアに沿って反射するFBGとは違って、LPGは、後方反射が低いノッチフィルタとして作用する。格子周期の規則性および格子の長さに依存して、LPGの拒絶帯は典型的に30nmの幅を有し得、ピークにおける損失は-30dBに近づき得る(James et al. 2003)。
【0003】
LPGの場合、クラッディングモードに結合するコアモードの波長は、以下の位相整合条件によって特性決定される。
【0004】
式中、neff,coreは、波長、コア屈折率n1およびクラッディング屈折率n2の関数である有効コア屈折率であり、neff,claddingは、波長、クラッディング屈折率n2および周囲屈折率n3の関数であるi番目のモードの有効クラッディング屈折率であり、ΛはLPGの周期である。この式から、有効屈折率を示差的に変化させることができる物理的、機械的もしくは環境的パラメータ(たとえば周囲媒体の屈折率)または格子の周期を変化させることができる物理的、機械的もしくは環境的パラメータ(たとえば機械的ひずみ)がLPGの減衰スペクトルの変化をもたらすということは明らかである。そして、適切な較正が施されると、減衰ラインのシフトを使用して環境パラメータをインタロゲーションすることができる(James et al., 2003を参照)。この計測原理は、数多くの刊行物で論じられており、LPGを廉価、堅調で高感度のセンサとして使用することにおける相当な関心を招いた(Allsop et al. 2001; Bhatia et al. 1996; Bhatia 1999; Chong et al. 2004; DeLisa et al. 2000, Grubsky et al. 2000; James et al. 2003; Khaliq et al. 2001; Khaliq et al. 2002; Lee et al. 2003; Shu et al. 1999)。
【0005】
LPGを化学的センサとして使用する場合、屈折率の示差的変化は典型的には、クラッディングを包囲する媒体の屈折率を変化させることによって誘発される。クラッディングモードのエバネッセント波はファイバの外側の媒体を効果的に「探る」ため、その屈折率は、クラッディングの有効屈折率にも影響する。たとえば、極端な場合、クラッディングの屈折率と周囲媒体の屈折率とが同一であるならば、クラッディングは、光を誘導するその能力を失い、本質的に無限に延長する。したがって、LPGは、屈折率の変化のための高感度センサとして使用することができる(Bhatia 1999; Chong et al. 2004; Lee et al. 2003; Shu et al. 1999)。たとえば、炭化水素マトリックス中の芳香族化合物は、パラフィン溶液中0.5容量%のキシレン濃度の場合で約0.4nmの波長変化を生じさせるLPGスペクトルの変化によって検出されてきた(Allsop et al. 2001)。検出限界は0.04% (約400ppm)と報告されている。
【0006】
LPGをセンサとして使用するための一つの手法は、分析対象物に暴露されると化学的および/または物理的変化を起こす反応性コーティングでLPGをコートすることであった。たとえば、Luoら(2002)は、湿度を検出するためにカルボキシメチルセルロース(CMC)でコートされたLPGを使用し、硫化物系化学兵器を検出するためにポリエチレンイミン(PEI)に埋め込まれた金属ナノクラスタでコートされたLPGを使用した。しかし、CMC LPGセンサは強い温度依存性を示し、PEI LPGセンサは、硫化物との不可逆性反応を起こし、その結果、再利用できなかった。また、PEI LPGセンサは、他の硫化物/チオール類と交差反応する可能性が高く、標的化合物に対する特異性に劣ることが示唆されている。同様に、Murphyら(1999年1月26日発行の米国特許第5,864,641号)は、LPGセンサのための物理的、電気的および化学的に反応性のコーティングを発案した。Murphyらは、タンパク質の結合、ひいては検出のための反応部位が散在するそのようなコーティングを論じたが、特定のタンパク質に対するいかなる特異性も実証してはいない。
【0007】
LPGがセンサとして実用化されることができる前に解決しなければならない、感温性、標的種に対する特異性、標的種との相互作用の可逆性および屈折率に対する感度のような要因に関する数多くの障害があることは明白である。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明の一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための方法であって、長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む光センサを提供する段階、光センサを試験媒体に暴露して該一つまたは複数の対象化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配されるようにする段階、および試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、該少なくとも一つの光学的性質の差違が該一つまたは複数の化合物の検出を示す、方法が提供される。
【0009】
一つの態様で、長周期格子は光ファイバに配置される。様々な態様では、光ファイバは単一モード光ファイバであり、固相マイクロ抽出膜はPDMSを含む。好ましい態様では、一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配は可逆性である。
【0010】
さらなる態様で、方法は、それぞれが長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む2個またはそれ以上の光センサのアレイを設ける段階をさらに含む。
【0011】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための光センサであって、長周期格子を含む光導波路および該長周期格子に配置された固相マイクロ抽出膜を含み、該一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配され、該一つまたは複数の化合物の該分配が長周期格子の少なくとも一つの光学的性質を変化させる、光センサが提供される。
【0012】
一つの態様で、光導波路は光ファイバである。様々な態様では、光ファイバは単一モード光ファイバであり、固相マイクロ抽出膜はPDMSを含む。好ましい態様では、一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配は可逆性である。もう一つの態様では、センサは、それぞれが長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む2個またはそれ以上の光センサのアレイをさらに含む。
【0013】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するためのシステムであって、先に記載した一つまたは複数の光センサ、光源、該一つまたは複数のセンサを通過した光を検出するための検出器および該検出された光の一つまたは複数の性質を評価するための手段を含む、システムが提供される。
【0014】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための方法であって、長周期格子を含む光センサを提供する段階、試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を計測し、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、該比較の結果が一つまたは複数の化合物の検出を示し、少なくとも一つの光学的性質の計測が、ファイバループリングダウン分光法を使用する段階を含む、方法が提供される。
【0015】
一つの態様では、方法は、固相マイクロ抽出膜を長周期格子に配置する段階をさらに含む。
【0016】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための方法であって、長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む光センサを提供する段階、光センサを試験媒体に暴露して該一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配されるようにする段階、および試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を計測し、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、該比較の結果が一つまたは複数の化合物の検出を示し、少なくとも一つの光学的性質の計測が、ファイバループリングダウン分光法を使用する段階を含む、方法が提供される。
【0017】
一つの態様では、該ファイバループリングダウン分光法は、該光センサに取り付けられた光導波ループを提供する段階、輝度変調された基準位相の光を光導波ループ中に発する段階、光導波ループに沿って該光の位相を検出する段階、およびループに沿って検出された該光の位相を基準位相と比較する段階を含み、検出された位相と基準位相との比較が光センサの該少なくとも一つの光学的性質に関する情報を提供する。
【0018】
もう一つの態様では、該ファイバループリングダウン分光法は、該光センサに取り付けられた光導波ループを提供する段階、光導波ループを複数の光パルスで照射する段階、ループに沿った一つまたは複数の場所で該光パルスの往復を検出する段階、および該光パルスのリングダウン時間を測定する段階を含み、該リングダウン時間が光センサの少なくとも一つの光学的性質を示す。
【0019】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するためのシステムであって、一つまたは複数の化合物に暴露されると変化する光学的性質を有する、長周期格子を含む光センサ、該光センサに取り付けられた光導波ループ、輝度変調された基準位相の光を光導波ループ中に発するための光源、光導波ループに沿って該光の位相を検出するための検出器、およびループに沿って検出された該光の位相を基準位相と比較するための手段を含み、検出された位相と基準位相との比較が光センサの該光学的性質に関する情報を提供する、システムが提供される。
【0020】
本発明のもう一つの局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するためのシステムであって、一つまたは複数の化合物に暴露されると変化する光学的性質を有する、長周期格子を含む光センサ、該光センサに取り付けられた光導波ループ、光導波ループを複数の光パルスで照射するための光源、ループに沿った一つまたは複数の場所で該光パルスの往復を検出するための検出器、および該光パルスのリングダウン時間を測定するための手段を含み、該リングダウン時間が光センサの少なくとも一つの光学的性質を示す、システムが提供される。
【0021】
様々な態様では、上記システムは、該長周期格子に配置された固相マイクロ抽出膜をさらに含むことができ;該一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配され、一つまたは複数の化合物の該分配が長周期格子の少なくとも一つの光学的性質を変化させる。上記の好ましい態様では、一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配は可逆性である。
【0022】
上記システムの様々な態様では、少なくとも一つの光学的性質は屈折率であり、光は、赤外線(IR)、可視光線および紫外線から選択される少なくとも一つの波長の光であり得、光学導波ループは単一モード光ファイバを含み得る。
【0023】
本発明の方法およびシステムは、複数の対象化合物を検出するために、多重化および/またはアレイ化されている複数の上記光センサを用いることもできる。さらなる態様では、個々のセンサまたはセンサの群それぞれが、別個の対象化合物に対応する固相マイクロ抽出膜を有することもできる。
【0024】
好ましい実施態様の詳細な説明
たとえば環境および化学的用途におけるセンサとしてのLPGの実用は、LPGを包囲する媒体の組成の関数としてLPGの減衰スペクトルの変化をモニタすることを要する。ここで、五つの障害に向き合わなければならない。
【0025】
(i)減衰スペクトルの変化は、クラッディングの屈折率と周囲媒体の屈折率とが近似するとき最大になる。これは、汚染物質を計測することができるマトリックスとしての水および他の溶媒を排除する。理由は、それらの屈折率がクラッディングの屈折率よりも相当に低いからである。
【0026】
(ii)屈折率適合条件が満たされないならば、減衰スペクトルの変化は非常に小さくなり、分解能が高いスペクトル分析器を用いてしか計測できなくなる。
【0027】
(iii)どの化合物が減衰スペクトルのシフトを誘発したのかをオペレータが特定することを可能にする化学的特異性がない。
【0028】
(iv)減衰スペクトルの変化を測定するために必要な設備が高価であり、必ずしも現場適合性ではない。
【0029】
(v)計測可能な屈折率変化は、典型的には、周囲媒体における高い濃度変化(数百ppm)を要する。したがって、LPGは、極微量の汚染物質を伴う用途のための検出器として適さない。
【0030】
本発明は、LPGを固相マイクロ抽出およびファイバループリングダウン分光法の少なくとも一方とともに用いる廉価、堅調で高感度のセンサを提供する際のこれらの問題点に対処する。
【0031】
本明細書で使用する「固相マイクロ抽出(SPME)」とは、固相に対する対象化合物の親和力に基づく、化合物の混合物から固相中への対象化合物(たとえば分析対象物または標的種)の抽出または分配をいう。好ましくは、固相材料中への対象化合物の分配は可逆性である。SPMEはタンパク質−リガンド複合体に特徴的な相互作用を伴わないため、本明細書で使用する「親和力」は、そのような反応をいうものではない。固相材料は、対象化合物とは反応せず、したがって、対象化合物に暴露されても化学変化を起こさない。むしろ、SPMEは、混合物または媒体から固相中への対象化合物の分配に基づく。このような分配は、化合物を固相中に溶解させ、化合物粒子が固相によって実質的に包囲された状態にすることを含み得る。理論によって拘束されることなく、少なくともいくつかの状況で、そのような分配は、対象分子が混合物または媒体を離れ、固相中に移動するときの系の自由エネルギー増加に基づくと考えられる。たとえば、水性系では、対象化合物と水との好ましくない相互作用が移動(すなわちエントロピー)を駆動し得る。化合物の混合物は典型的には流体であり、気体または液体であり得る。流体が液体である場合、混合物は水性であり得る。対象化合物そのものは、たとえば化合物の混合物中に粒子として分散した固体、液体または気体であり得る。
【0032】
光センサ用途では、固相材料は、たとえば膜として、光導波路、たとえば光ファイバの外面に被着される。固相材料中に分配された対象化合物は、光ファイバの少なくとも一つの光学的性質を検出可能に変化させて、それにより、その光ファイバを対象化合物のための光センサにする。固相材料に対する対象化合物の親和力は、平衡状態の溶液中の化合物の濃度に対する膜中の化合物の濃度の比と定義される、膜:溶液分配定数(Kfs)として特性決定される。そして、一つの化合物に対して別の化合物よりも高い膜の選択性がKfs値の比(=Kfs,a/Kfs,b)と定義される。
【0033】
SPME膜材料の例は、疎水性と密接に相関させながら化合物の混合物から化合物を抽出するポリマーポリジメチルシロキサン(PDMS)である。これは、PDMS膜中の化合物のKfsと、オクタノール:水分配定数Kowとの間の密接な相関によってわかりやすく説明される(Mayer et al. 2000)。大きなKfs値は、ポリマーマトリックス中の分析対象物の予備濃縮を示し、多環式芳香族炭化水素(PAH)のような有機化合物の場合に典型的なlogKfs値は2〜5の範囲である(Mayer et al. 2000; Brown et al. 2001)。ポリマーマトリックス膜が厚さ数ミリメートル未満である限り、分配過程は数分の内に平衡する。
【0034】
PDMSのようなポリマー膜の選択性パターンは、ポリマーをドープすることによって変化させることができる。これは、特定の化学官能基を様々なレベルでポリマーに組み込むことによって達成することができる。たとえば、フェニル基でドープされたPDMS膜が芳香族化合物トルエンに対して親和力を有することが示されている(Matejec et al. 2003)。
【0035】
光ファイバ上のポリマーコーティングに基づくSPMEは、SPMEコーティング中のエバネッセント放射線の吸収による抽出された化合物の検出のために使用されてきた(Krska et al. 1993; Mizaikoff 1999)。PDMSは、その光学的性質により、これらの計測に良好なマトリックスである。透明であり、導波路中の光伝搬を維持するためのクラッディングとして働く屈折率(典型的には1.41)を有する。これらの手法の主な欠点は、抽出された化合物による放射線の直接吸収の必要性である。これは、使用することができる光源および検出器に対して有意な制限を課す。
【0036】
代替法は、より汎用的なパラメータ、たとえば膜屈折率をポリマー膜から計測することである。屈折率変化の検出は導波路中を伝搬する光の変化の検出を要するため、これは、上述したエバネッセント検出方式とは異なる。化合物が膜中に抽出されるにつれ、膜の屈折率および導波路中を伝搬するシグナルが変化し、これが、抽出された化合物を検出するために使用されてきた(Tobiska et al. 1998; Chomat et al. 2002)。この手法に伴う問題は、使用される屈折率計測の感度が低いこと、および使用されるポリマーの選択性の欠如である。
【0037】
本発明の第一の局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の対象化合物を検出するための方法であって、LPGおよびSPME膜を含む光センサを使用する方法が提供される。方法は、光センサを試験媒体に暴露して該一つまたは複数の対象化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配されるようにする段階、および試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、比較が一つまたは複数の対象化合物の検出を示す。本発明はまた、LPGおよびSPME膜を含む光センサならびに一つ以上の対象化合物を検出する方法を実施するためのシステムを提供する。
【0038】
本発明にしたがって、SPME膜はLPG全体またはLPGの一部分に被着される。LPGとSPMEコーティングとの組み合わせは、LPGの光学スペクトルに影響するコーティングの光学的性質を測定することを提供する。用途によっては、コーティングの光学的性質(たとえば屈折率)の変化が分析対象物の光学的性質(たとえば分析対象物の屈折率)に関連することがあり得るが、これが必ずしも当てはまるわけではない。
【0039】
本明細書で使用する「検出」とは、一つまたは複数の対象化合物(すなわち一つまたは複数の分析対象物)の存在および/または濃度および/または実体および/または光学的性質の決定を意味すると意図される。
【0040】
本明細書で使用する「試験媒体」は、一つまたは複数の対象化合物を中に見いだすことができ、分析対象物の検出を容易にするために光センサを実質的に包囲することができる任意の媒体を指すと意図される。試験媒体は、固体、半固体または液体もしくは気体のような流体であることができる。
【0041】
本発明のこの局面は、LPGの光学損失スペクトルにおいて得られるシフトを使用して、SPME膜中に分配された分析対象物の存在、濃度、光学的性質および/または実体を決定することを提供する。これは、波長のスペクトルを記録することによって決定することもできるし、固定波長における損失を記録することによって決定することもできる。SPMEは、分析対象物に対する選択性を提供するだけでなく、膜中の分析対象物の局所濃度を何桁ものレベル(たとえば100〜1000倍)高める。
【0042】
計測の化学的選択性は、SPME膜の化学的特異性(すなわち配合(formulation))から生じる。したがって、膜の配合は、分析対象物に対する選択性を最大にするように調製することができる。一つの態様では、SPME膜はポリマー、たとえばPDMSである。このような態様は、化合物の水性混合物に特に適している。様々な態様では、SPME材料の選択性は、分析対象物とポリマーマトリックスとの特異的な化学的または物理的相互作用を提供することによって高めることができる。例とえば、SPME材料は、例として分析対象物に対する特異性を高めるための官能基でドープすることができる(実施例4を参照)。他の態様では、膜は、表1に列挙するものから選択される、示された種々の分析対象物に対して対応する選択性を有するポリマーまたは複合材料であってもよい。さらなる態様で、SPME膜は、たとえばポリマー、ゼオライト、多孔質ガラス、抗体、イオン交換樹脂、ゾルゲルおよびリガンドから選択される材料または材料の組み合わせである。
【0043】
計測の選択性は、2個またはそれ以上のLPG-SPMEセンサをセンサアレイに多重化し、たとえば多変量解析を使用して混合物の化学組成を抽出することによって高めることができる。
【0044】
(表1)SPME膜としての使用に適した材料および対応する分析対象物(Bulletin 923, Supelco Inc., Bellefonte, PA 16823)
【0045】
好ましい態様にしたがって、ポリマー膜を使用するSPMEは、三つの目的を達成するように最適化される。
【0046】
(i)減衰スペクトルのシフトが最大化されるよう、ファイバの屈折率に近い屈折率のポリマーマトリックスを使用する。
【0047】
(ii)SPMEは、ファイバクラッディングの近くの分析対象物濃度を混合物中の分析対象物濃度に対して二桁または三桁のレベルまで高める。これは、溶液中の濃度変化に直接依存するポリマーマトリックスの屈折率の大きな変化につながる。
【0048】
(iii)粗製化学物質選択性を提供する、特定のクラスの化学物質に対して親和力を有するポリマーを使用する。効果は、それぞれがわずかに異なるポリマー選択性を有するそのようなセンサ2個またはそれ以上のアレイを多重化し、多変量解析を使用して正確な組成を抽出することによって高めることができる。
【0049】
ファイバループリングダウン分光法(FLRDS)は、光導波路中の光学損失の非常に小さな変化を計測することができる。この技術は、LPGのために典型的に使用される単一モード光ファイバと完全に適合性である。単一経路実験では、FLRDSは、光源の電力変動から独立した絶対光学損失の計測を可能にする。2005年1月11日発行の本発明者らの米国特許第6,842,548号およびBrownら(2002)で詳細に記載されている、本明細書中で「パルスFLRDS」と呼ぶ一つの態様では、ナノ秒レーザパルスを光導波ループに注入し、往復シグナルの強さがその初期値の1/eまで減衰するのに要する時間、すなわちリングダウン時間から光学損失を測定する。この技術は非常に堅調かつ廉価である。2005年3月15日出願の本発明者らの米国特許出願第11/079,478号およびTongら(2004)で詳細に記載されている最近の改良法は、ファイバ中に結合される、輝度変調された連続波(cw)レーザビームの使用を含む。リングダウン時間は、注入された光とループから放出された光との位相における差違から間接的に得られる。この位相ずれは以下の関係によってリングダウン時間τと関連する。
【0050】
式中、Ωは変調周波数であり、φ0は、電子部品および光学部品に固有の時間遅延に依存する周波数依存性オフセット位相角である。放出される光の輝度に依存して、位相角計測を非常に速やかに実施することができ、本発明者らは、最適化されていないシステムで200msの時間分解能を実証した。
【0051】
本発明の第二の局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための方法であって、長周期格子を含む光センサを提供する段階、試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を計測し、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、該比較が一つまたは複数の化合物の検出を示し、少なくとも一つの光学的性質の計測が、ファイバループリングダウン分光法を使用する段階を含む、方法が提供される。本発明はまた、このような方法を実施するためのシステムを提供する。
【0052】
本発明のこの局面は、パルスまたは位相ずれFLRDSを使用して、LPGによって光ファイバループに導入された光学損失を測定することを提供する。そのような光学損失は、LPGに作用する機械的要因(たとえば応力、ひずみ、振動)および/または環境的要因(たとえば化学的、熱的)のような変数によって生じる可能性があるため、本発明は、そのような要因を正確かつ速やかに検出、特性決定および/または定量するための方法および装置を提供する。計測は、光源をスキャンし、得られたスペクトルをそのような変数に対して測定することによって実施することもできるし、光源波長を一定に維持し、較正後、そのような変数から生じた光学損失を測定することによって実施することもできる。
【0053】
屈折率およびエバネッセント波吸収の両方がLPGの損失性を変化させるということが注記されるべきである。たとえば、分析対象物によって誘発された屈折率変化が、LPGの減衰バンドをFLRDS(またはLPGをインタロゲーションするための任意の他の手段)によってインタロゲーションされる波長領域の中へとシフトさせる可能性があり、それにより、この波長における損失を増大させる。レーザが、分析対象物の非存在下でLPGの減衰バンドが最大限になる波長にチューニングされると、分析対象物の存在におけるLPGの減衰スペクトルのシフトがこの波長での損失を減少させる。
【0054】
本発明のこの態様の利益は、光源または検出器の線形性および安定性に頼る必要なくLPGの光学損失を得ることができ、典型的な輝度ベースの計測と比べてシステムを相当により堅調かつ現場適合性にすることである。もう一つの利益は、FLRDSが、大部分の他の光学損失計測に比べて低い光学損失で最大感度を有するということである。さらには、FLRDSは、走査レーザ光源または固定波長光源を使用して実現することができる。前者の場合、低光学損失の領域に対して特に感度を示す完全減衰スペクトルを得ることができ、後者は、現場展開可能な用途でより適当であるかもしれない。ここで、光学損失の変化は、FLRDSにより、環境パラメータ、たとえばLPGを包囲する媒体の屈折率の変化にしたがってモニタされる。
【0055】
本発明の第三の局面にしたがって、試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための方法が提供され、長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む光センサを提供する段階、光センサを試験媒体に暴露して該一つまたは複数の対象化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配されるようにする段階、および試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を計測し、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階を含み、比較が一つまたは複数の化合物の検出を示し、ここで少なくとも一つの光学的性質の計測が、ファイバループリングダウン分光法を使用する段階を含む。本発明はまた、このような方法を実施するためのセンサおよびシステムを提供する。
【0056】
本発明のこの局面にしたがって、LPGによって光ループに導入された光学損失を測定するためにFLRDSが使用され、光学損失は、分析対象物をLPGのSPME膜中に分配することから生じる。FLRDSは、上記のように、すなわち、位相ずれまたはパルス動作において、光源をスキャンすることによって使用することもできるし、それを一定波長に維持することによって使用することなどもできる。LPGおよびSPMEは上記のように使用され、計測の化学的選択性は、上記のようにして高めることができる、SPME配合の化学的特異性から生じる。
【0057】
以下の非限定的な実施例によって本発明をさらに説明する。
【0058】
実施例
実施例1. 長周期格子およびファイバループリングダウン分光法を使用するセンサ
実験装置
実験装置が図1に示されている。その中心には、Avensys Inc. (Pointe-Claire, Quebec, Canada)によってDow Corning SMF-28単一モード光ファイバを使用してカスタムメイドされた長さ22mm、周期274μmのLPG10がある。空気中、約1.5μmでのLPGの減衰スペクトルが図2に示されている。フュージョンスプライサを使用してLPGを同じSMF-28ファイバ製のループ12につないで、全長約11mのループを製造した。関数発生器24を使用してANDO AQ4320Dチューニング可能ダイオードレーザ14を変調し、99.5/0.5 2x2方向性結合器16 (Lightel Technologies)を使用して5mWの出力および200MHzのバンド幅を有する振幅変調された光をループ中に結合した。99.5/0.5 2x1タップ18 (Lightel Technologies)および高速InGaAsフォトダイオード検出器20を使用してループ内を循環する光の輝度をモニタした。
【0059】
200MHzロックイン増幅器22 (Stanford Research Systems 844)を使用して位相角シフトφを計測し、その際、参照は、変調レーザダイオードの同期化出力から得たものであった。製造業者によると、計測における誤差は約0.02度であった。変調周波数Ωに対するタンジェント(tan)φのプロットの傾きからファイバループのリングダウン時間を測定した(Tong et al. 2004)。
【0060】
図1の挿入図は、実施例3に記載するように、分析対象物粒子がLPGに配置されたSPME膜中に分配される様子を模式的に示す。
【0061】
結果
信頼しうる光学減衰定数をFLRDS計測から得るためには、計測器(instrumentation)の時間応答およびオフセット位相角を決定しなければならない。パッチコードを使用してレーザ出力をまっすぐ光検出器中に結合して、周波数依存性計器位相オフセットを計測した(図3)。
【0062】
任意のオフセットの非存在下では、位相角のタンジェントは変調周波数と共に線形に変化するはずであり、傾きがリングダウン時間τをもたらすであろう。周波数依存性オフセットおよび周波数非依存性オフセットの両方を含めなければならないことが見出された。この補正を使用してリングダウン時間を得た。LPGなしで1520nmで計測したリングダウン時間(図4;△)は998nsであった。ループ中にLPGを用いると(■)、1520nmにおけるリングダウン時間は683nsであり、1527nmで計測されたもの(○)は520nsであった。図2を吟味すると、1520nmにおけるものと比べて1527nmにおけるLPGの高い損失が、このレーザ波長でのより短いリングダウン時間の原因であることがわかる。
【0063】
ジメチルスルホキシド(DMSO)水溶液にLPGを浸漬し、DMSO中のモル分率を30%から100%に変化させることにより、LPGの減衰スペクトルにおける屈折率の変化の影響を測定した。モル分率から、ローレンツ−ローレンス式を使用して屈折率を計算した。図5Aは、減衰スペクトルに対する周囲屈折率の影響を示す。周囲溶液の屈折率がクラッディングの屈折率に近づき、次いでそれと合致するにつれ、高次クラッディングモードに対応する減衰極大値(長めの波長での極大値)が劇的にシフトした。
【0064】
図5AおよびBから見られるように、屈折率が変化すると同時に光学損失が劇的に変化した。たとえば、図5Aは、周囲溶液の屈折率が増大するにつれ、1550nmにおける光学損失が1dB超増大することを示す。したがって、レーザ波長を1520nmで固定して維持し、LPGをファイバループ中につなぎ、DMSOおよび水の異なるモル分率に関して位相角による光学損失を計測した(図6)。0.02°の位相分解能を仮定して、最大傾きの領域で0.000015の屈折率の変化を検出することができる。
【0065】
任意の特定の理論に拘束されて他を排除することなく、図6の曲線の形状の一つの説明は、DMSOの体積分率が増大すると、試験媒体の屈折率が光ファイバクラッディングの屈折率に近づくとともにリングダウン時間が急激に減少するということである。DMSOの体積分率がさらに増大すると、試験媒体の屈折率が光ファイバクラッディングの屈折率を超えるとともにリングダウン時間は増大する。
【0066】
実施例2. 長周期格子および固相マイクロ抽出を使用するセンサ
固相マイクロ抽出を長周期格子と組み合わせたものを、ただし光学リングダウン検出を使用せずに、予備実験で試験した。塩化メチレン中PDMS前駆体物質の100mg/ml溶液から溶媒を蒸発させることにより、LPGをPDMS (Dow Corning 100%シリコーンゴム)でコートした。得られた膜の厚さは10〜500μmの間であると推定され、その屈折率はn3=1.41に近かった(Chomat et al. 2002)。膜をトルエンの飽和水溶液(濃度約500ppm)に沈めている間に、LPGの減衰スペクトルを直線伝播で記録した。減衰極大値の位置の変化を時間の関数として記録し(図7A)、簡単な指数増大関数を使用して当てはめた。分配時間定数tfsは、ポリマー中へのトルエンの分配に対しては19分であり、水洗中のトルエンの除去の場合にはわずか1.55分であった。PDMS中のトルエンの濃度は、オクタノール−水分配係数(pKow=2.7)を使用して推定することができる。水中の濃度が約500ppmであったとすると、PDMS中のその濃度は1%に近いと推定された。飽和トルエン中の長い見かけ平衡時間は、ポリマー膜の遅い膨潤に起因するものである。
【0067】
より低いトルエン濃度への暴露は、より小さな波長シフトでより速やかな平衡(5分)を提供した(図7B)。5分後のシフトは、水中のトルエン濃度に対して線形に比例するものであった。水中のキシレン類(異性体の混合物)を添加した場合にも、図7Cに見られるような同様な波長シフトが認められた。
【0068】
実施例3. 長周期格子、固相マイクロ抽出およびファイバループリングダウン分光法を使用するセンサ
本実施例では、LPGとSPMEとの組み合わせに基づき、FLRDSによってインタロゲーションされるセンサを説明する。特に、本実施例は、水中の疎水性汚染物質を検出するためのセンサに関する。図1の挿入図は、分析対象物粒子がLPGに配置されたSPME膜に分配される様子を模式的に示す。
【0069】
塩化メチレン中PDMS前駆体物質の100mg/ml溶液から溶媒を蒸発させることにより、比較的弱い減衰スペクトルを有するLPGをPDMS (Dow Corning 100%シリコーンゴム)でコートした。得られた膜の厚さは約10〜500μmの間であり、その屈折率は1.41に近かった。ファイバループリングダウン分光法を連続波(すなわち位相ずれ)実施で使用してLPGの減衰スペクトルを記録した。特に、周期的に駆動されるレーザからの同期化出力の位相角を検出器出力と照合し、位相角の差違からリングダウン時間を計算した(図8A)。
【0070】
リングダウン時間は、LPGの減衰スペクトルの一部で記録されたため、光学損失の非常に高感度な測定を提供した。その後、ポリマーコートされたLPGを試験媒体に浸漬することによって減衰スペクトルを変化させた。たとえば、異なる濃度のキシレン水溶液を使用してこの技法を評価した。多くの異なる波長でリングダウン時間を計測することにより(位相角差により)、減衰スペクトルの変化を記録した。減衰極大値のシフトから、較正後、キシレン濃度を得た。
【0071】
さらには、固定波長でFLRDSを使用してLPGの減衰を記録し、リングダウン時間から、較正後、水中のキシレン濃度を得た。図8Bには、位相角から導出されたリングダウン時間の、キシレン濃度に対する依存性が示されている。
【0072】
実施例4. 膜:改質PDMS膜の溶液分配定数(Kfs)
図9は、高純度PDMS膜および改質PDMS膜中の多様な分析対象物に関して計測されたlogKfs値を示す。改質PDMS膜をアミン基(膜形成の前に10%(v/v)3-アミノプロピルトリエトキシシランをPDMS前駆体に加えることにより)(APTES)、およびフェニル基(膜形成の前に10%(v/v)ジフェニルジエトキシシランをPDMS前駆体に加えることにより)(PDPS)でドープした。これらの結果は、分析対象物に対する3種のポリマーの異なる親和力を示す。たとえば、APTESポリマー中のアミン基の、ヒドロキシピレン分配に対するプラスの効果は劇的である。極性ヒドロキシル化分子は通常、PDMS中に弱く分配するが、アミン基の添加は、Kfs値を劇的に増大させる特異的な水素結合相互作用の機会を提供する。
【0073】
実施例5. 膜における屈折率変化
表2は、いくつかのPDMSおよび改質PDMSポリマー膜の屈折率(1.55μm波長における)を示す。改質膜は、ジクロロジメチルシランと以下の一つまたは複数との重合から製造した:トリクロロメチルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランまたはテトラエトキシチタン(IV)。表2におけるすべての%値はモル%である。図10は、膜中のチタン(図10A)またはジフェニルシロキサン(図10B)置換基のレベルを変えることによって膜屈折率を指定の値に変更する能力を示す。
【0074】
分析対象物を膜中に分配すると、膜屈折率に変化が生じた。図11は、12.2%チタンPDMS膜または7.7% APTES PDMS膜中に分配された種々の分析対象物に関する屈折率の変化を示す。分析対象物で飽和させた水に膜を暴露した。屈折率の対応する変化を100ppmの分析対象物溶液の場合の変化に対して正規化した。これらの結果は、分析対象物の間の区別を提供する、これら二つの改質ポリマー膜の異なる応答を示す。したがって、改質および非改質ポリマー、たとえばPDMSを含み得る、それぞれが異なるSPME膜を有するセンサのアレイは、種々の分析対象物の示差的検出/同定を提供するであろう。
【0075】
(表2)いくつかのPDMSおよび改質PDMSポリマー膜の屈折率(1.55μm波長)。膜の詳細は本文中に記載。
【0076】
特許文献を含むすべての引用刊行物の内容は、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0077】
当業者は、本明細書に記載した態様の変形を認識し、または日常実験を使用してそれを確認することができるであろう。そのような変形は本発明の範囲内であり、特許請求の範囲に包含される。
【0078】
引用文献
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明は、例として添付の図面を参照しながら説明される。
【図1】LPGを光ファイバリングダウン分光ループに組み込む実験装置の略図である。
【図2】図1に示す装置のファイバループ中につながれたLPGの空気中の伝播スペクトルのプロットである。
【図3】計器位相角オフセット修正のプロットである。レーザと検出器とを接続するファイバループ(図1を参照)に代えて、短い距離のSMF-28光ファイバからなるパッチを用いた。フォトダイオード検出器シグナルとレーザ変調との間の変調周波数依存性位相ずれが、ファイバループを使用して実施された位相ずれ計測から差し引かなければならない計器修正係数を構成する。
【図4】三つの異なるレーザ周波数における、図1のファイバループと図3のデータを得るために使用されるパッチとの間の位相角差の変調周波数依存性のプロットである。これらのプロットの傾きがファイバループの負のリングダウン時間を与える。△、ループ中のLPGなしで1520nmの場合;■、ループ中にLPGを用いて1520nmの場合;○、ループ中にLPGを用いて1527nmの場合。
【図5A】異なる屈折率を有する3種のDMSO溶液に沈めたΛ=274μmの周期を有するLPGの減衰スペクトルを示すプロットである。
【図5B】図のように異なる周期性を有する二つのLPGに関して、屈折率に対する減衰極大波長の変化を示すプロットである。周囲溶液の屈折率をクラッディングの屈折率に適合するように変化させたとき、図5Aで使用されたLPGの約1570nmにおける減衰極大値が約16nmシフトする。周期性は、252μm LPGの場合のより大きな波長応答として見られる、屈折率に対するモニタされたモードの感度に影響する。極大波長応答は、屈折率が、周期性から独立したクラッディングの屈折率に近づくときである。
【図6】図1の装置を使用して得られた、LPGを包囲する溶液の組成に対するファイバループリングダウン時間の依存性を示すプロットである。LPGを包囲する、ジメチルスルホキシド(DMSO)および水を含有する溶液の体積分率を変化させ、キャビティリングダウン時間を測定した。溶液温度は22℃であった。レーザ波長は1520nmにセットし、変調周波数は130kHzであった。
【図7A】LPGの減衰極大値の位置の時間的進展を示すプロットである。LPG全体をPDMSの薄膜でコートし、トルエンの飽和水溶液に沈めた。トルエンがPDMS中に分配されるにつれ、PDMSマトリックスの屈折率は増大し、その結果、減衰スペクトルがシフトした。実線の曲線は、それぞれ19分および1.55分の時間定数を有する指数関数的な上昇曲線および減衰曲線である。
【図7B】図7AのLPGに関して低めのトルエン濃度の場合の、約5分平衡させたときの減衰極大波長の時間的進展を示す。5分間の暴露後の波長におけるシフトはトルエン濃度と線形に相関する(データ図示せず)。シグナルは1000ppmトルエン濃度で安定しなかった。
【図7C】PDMSの膜でコートされたLPGを空気、水に浸漬し、キシレン類(異性体の混合物)の飽和水溶液に沈めたのちに計測したスペクトルのプロットである。
【図8A】位相ずれ光ループリングダウン技術(明細書を参照)を使用して得られた、PDMS膜でコートされたLPG(Λ=282μm)の減衰スペクトルのプロットである。図示するものは、μs単位のリングダウン時間、レーザ波長の関数としての、ファイバーループに入る光とファイバループを出る光との間の位相角差および式2を使用して測定したマイクロ秒単位のリングダウン時間である。
【図8B】水中のキシレン濃度の関数としての、図8AのPDMSコートされたLPGのリングダウン時間の変化のプロットである。レーザ波長は1590nmで固定した。キシレンがPDMSポリマー中に分配されるにつれ、ポリマーの屈折率は変化し、図8Aに示すスペクトルはシフトし、それにより、1590nmにおける光学損失を増大させた。
【図9】水から3種のシロキサン膜:高純度ポリジメチルシロキサン(PDMS)、膜形成の前に10%(v/v) 3-アミノプロピルトリエトキシシランをPDMS前駆体に加えることによってアミン基でドープされたPDMS (APTES)および膜形成の前に10%(v/v)ジフェニルジエトキシシランをPDMS前駆体に加えることによってフェニル基でドープされたPDMS(PDPS)に分配される種々の化合物の膜:溶液分配定数(Kfs)値を示す。
【図10A】PDMSのチタンドープのモル%の関数としてPDMS膜の屈折率を示すプロットである。ドープされたPDMSは、重合中にテトラエトキシチタンをPDMSに加えることによって調製した。膜をガラススライドに付着させ、屈折計を使用して屈折率を計測した。
【図10B】PDMSのモル%ジフェニルシロキサンドーピングの関数として、6モル%チタンでドープされたPDMS膜の屈折率を示すプロットである。ドープされたPDMSは、重合中にジエトキシジフェニルシランおよびテトラエトキシチタンを加えることによって調製した。膜をガラススライドに付着させ、屈折計を使用して屈折率を計測した。
【図11】種々の分析対象物に関して、12.2%チタンPDMS膜または7.7% APTES PDMS膜の屈折率の変化を示す。膜をガラススライドに付着させ、屈折計を使用して屈折率を計測した。分析対象物で飽和した水にスライドを暴露し、屈折率の変化を100ppm溶液濃度に対して正規化した。括弧内の数字は、純粋な液体形態における分析対象物の屈折率を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験媒体中の一つまたは複数の対象化合物を検出するための方法であって、
長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む光センサを提供する段階、
光センサを試験媒体に暴露し、該一つまたは複数の対象化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配する段階、および
試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階
を含み、該少なくとも一つの光学的性質の差違が該一つまたは複数の対象化合物の検出を示す、方法。
【請求項2】
長周期格子が光ファイバに配置される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
光ファイバが単一モード光ファイバである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
固相マイクロ抽出膜がPDMSを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配が可逆性である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
それぞれが長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む2個またはそれ以上の光センサのアレイを提供する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための光センサであって、
長周期格子を含む光導波路、および
該長周期格子に配置された固相マイクロ抽出膜
を含み、該一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配され、かつ
該一つまたは複数の化合物の該分配が長周期格子の少なくとも一つの光学的性質を変化させる、光センサ。
【請求項8】
光導波路が光ファイバである、請求項7記載のセンサ。
【請求項9】
光ファイバが単一モード光ファイバである、請求項8記載のセンサ。
【請求項10】
固相マイクロ抽出膜がPDMSを含む、請求項7記載のセンサ。
【請求項11】
それぞれが長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む2個またはそれ以上の光センサのアレイをさらに含む、請求項7記載のセンサ。
【請求項12】
一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配が可逆性である、請求項7記載のセンサ。
【請求項13】
試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出する方法であって、
長周期格子を含む光センサを提供する段階、
試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を計測し、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階
を含み、該比較の結果が一つまたは複数の化合物の検出を示し、
少なくとも一つの光学的性質の計測が、ファイバループリングダウン分光法の使用を含む、方法。
【請求項14】
固相マイクロ抽出膜を長周期格子に配置する段階をさらに含み、
一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ファイバループリングダウン分光法が、
光センサに光学的に接続された光導波ループを提供する段階、
輝度変調された基準位相の光を光導波ループ中に発する段階、
光導波ループに沿って該光の位相を検出する段階、および
ループに沿って検出された該光の位相を基準位相と比較する段階
を含み、検出された位相と基準位相との比較が光センサの少なくとも一つの光学的性質に関する情報を提供する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
ファイバループリングダウン分光法が、
光センサに光学的に接続された光導波ループを提供する段階、
光導波ループを複数の光パルスで照射する段階、
ループに沿った一つまたは複数の場所で該光パルスの往復を検出する段階、および
該光パルスのリングダウン時間を測定する段階
を含み、該リングダウン時間が光センサの少なくとも一つの光学的性質を示す、請求項13記載の方法。
【請求項17】
試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するためのシステムであって、
一つまたは複数の化合物に暴露された場合に変化する少なくとも一つの光学的性質を有する、長周期格子を含む光センサ、
該光センサに光学的に接続された光導波ループ、
光を光導波ループ中に発するための光源、
光導波ループに沿って、光センサを通過した該光を検出するための光検出器、および
検出された光を解析するための手段
を含み、検出された光が光センサの該少なくとも一つの光学的性質に関する情報を提供する、システム。
【請求項18】
光源が、輝度変調された基準位相の光を発し、
光検出器が、光導波ループに沿って該光の位相を検出し、
解析するための手段が、ループに沿って検出された該光の位相を基準位相と比較するための手段を含み、
検出された位相と基準位相との比較が光センサの少なくとも一つの光学的性質に関する情報を提供する、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
光源が光導波ループを複数の光パルスで照射し、
光検出器がループに沿った一つまたは複数の場所で該光パルスの往復を検出し、
解析するための手段が、該光パルスのリングダウン時間を測定するための手段を含み、
リングダウン時間が光センサの少なくとも一つの光学的性質を示す、請求項17記載のシステム。
【請求項20】
長周期格子に配置された固相マイクロ抽出膜をさらに含み、
一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配され、
一つまたは複数の化合物の分配が長周期格子の少なくとも一つの光学的性質を変化させる、請求項17記載のシステム。
【請求項21】
一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配が可逆性である、請求項20記載のシステム。
【請求項22】
少なくとも一つの光学的性質が屈折率である、請求項17記載のシステム。
【請求項23】
光が、赤外線(IR)、可視光線および紫外線から選択される少なくとも一つの波長を有する、請求項17記載のシステム。
【請求項24】
光導波ループが単一モード光ファイバを含む、請求項17記載のシステム。
【請求項1】
試験媒体中の一つまたは複数の対象化合物を検出するための方法であって、
長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む光センサを提供する段階、
光センサを試験媒体に暴露し、該一つまたは複数の対象化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配する段階、および
試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階
を含み、該少なくとも一つの光学的性質の差違が該一つまたは複数の対象化合物の検出を示す、方法。
【請求項2】
長周期格子が光ファイバに配置される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
光ファイバが単一モード光ファイバである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
固相マイクロ抽出膜がPDMSを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配が可逆性である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
それぞれが長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む2個またはそれ以上の光センサのアレイを提供する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するための光センサであって、
長周期格子を含む光導波路、および
該長周期格子に配置された固相マイクロ抽出膜
を含み、該一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配され、かつ
該一つまたは複数の化合物の該分配が長周期格子の少なくとも一つの光学的性質を変化させる、光センサ。
【請求項8】
光導波路が光ファイバである、請求項7記載のセンサ。
【請求項9】
光ファイバが単一モード光ファイバである、請求項8記載のセンサ。
【請求項10】
固相マイクロ抽出膜がPDMSを含む、請求項7記載のセンサ。
【請求項11】
それぞれが長周期格子および固相マイクロ抽出膜を含む2個またはそれ以上の光センサのアレイをさらに含む、請求項7記載のセンサ。
【請求項12】
一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配が可逆性である、請求項7記載のセンサ。
【請求項13】
試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出する方法であって、
長周期格子を含む光センサを提供する段階、
試験媒体に暴露されたセンサの少なくとも一つの光学的性質を計測し、試験媒体の非存在下におけるセンサの少なくとも一つの対応する光学的性質と比較する段階
を含み、該比較の結果が一つまたは複数の化合物の検出を示し、
少なくとも一つの光学的性質の計測が、ファイバループリングダウン分光法の使用を含む、方法。
【請求項14】
固相マイクロ抽出膜を長周期格子に配置する段階をさらに含み、
一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ファイバループリングダウン分光法が、
光センサに光学的に接続された光導波ループを提供する段階、
輝度変調された基準位相の光を光導波ループ中に発する段階、
光導波ループに沿って該光の位相を検出する段階、および
ループに沿って検出された該光の位相を基準位相と比較する段階
を含み、検出された位相と基準位相との比較が光センサの少なくとも一つの光学的性質に関する情報を提供する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
ファイバループリングダウン分光法が、
光センサに光学的に接続された光導波ループを提供する段階、
光導波ループを複数の光パルスで照射する段階、
ループに沿った一つまたは複数の場所で該光パルスの往復を検出する段階、および
該光パルスのリングダウン時間を測定する段階
を含み、該リングダウン時間が光センサの少なくとも一つの光学的性質を示す、請求項13記載の方法。
【請求項17】
試験媒体中の一つまたは複数の化合物を検出するためのシステムであって、
一つまたは複数の化合物に暴露された場合に変化する少なくとも一つの光学的性質を有する、長周期格子を含む光センサ、
該光センサに光学的に接続された光導波ループ、
光を光導波ループ中に発するための光源、
光導波ループに沿って、光センサを通過した該光を検出するための光検出器、および
検出された光を解析するための手段
を含み、検出された光が光センサの該少なくとも一つの光学的性質に関する情報を提供する、システム。
【請求項18】
光源が、輝度変調された基準位相の光を発し、
光検出器が、光導波ループに沿って該光の位相を検出し、
解析するための手段が、ループに沿って検出された該光の位相を基準位相と比較するための手段を含み、
検出された位相と基準位相との比較が光センサの少なくとも一つの光学的性質に関する情報を提供する、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
光源が光導波ループを複数の光パルスで照射し、
光検出器がループに沿った一つまたは複数の場所で該光パルスの往復を検出し、
解析するための手段が、該光パルスのリングダウン時間を測定するための手段を含み、
リングダウン時間が光センサの少なくとも一つの光学的性質を示す、請求項17記載のシステム。
【請求項20】
長周期格子に配置された固相マイクロ抽出膜をさらに含み、
一つまたは複数の化合物が選択的に固相マイクロ抽出膜中に分配され、
一つまたは複数の化合物の分配が長周期格子の少なくとも一つの光学的性質を変化させる、請求項17記載のシステム。
【請求項21】
一つまたは複数の対象化合物の固相マイクロ抽出膜中への分配が可逆性である、請求項20記載のシステム。
【請求項22】
少なくとも一つの光学的性質が屈折率である、請求項17記載のシステム。
【請求項23】
光が、赤外線(IR)、可視光線および紫外線から選択される少なくとも一つの波長を有する、請求項17記載のシステム。
【請求項24】
光導波ループが単一モード光ファイバを含む、請求項17記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−501936(P2008−501936A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513638(P2007−513638)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000876
【国際公開番号】WO2005/119212
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(505458245)クィーンズ ユニバーシティー アット キングストン (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000876
【国際公開番号】WO2005/119212
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(505458245)クィーンズ ユニバーシティー アット キングストン (11)
【Fターム(参考)】
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