説明

長尺シート体のガイド装置

【課題】 高速で移送される長尺シート体の蛇行を低コストで確実に防止することができる長尺シート体のガイド装置を提供する。
【解決手段】 サーボモータ2により駆動される入力軸13および鉛直方向に延びる出力軸14を有する減速機3と、水平面に沿って揺動可能となるように出力軸14の上端に固定された揺動体4と、長尺シート体wの移送を案内する一対のガイドローラ5,6と、移送される長尺シート体の位置検出を行う位置検出器7とを備える長尺シート体のガイド装置1であって、減速機3は、入力軸13に設けられたウォーム17が出力軸14に設けられたウォームホイール22に噛合するように配置され、揺動体4の揺動に伴う出力軸14側からの入力軸13の回転を防止するように構成されたセルフロック機能を有するウォーム減速機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺シート体のガイド装置に関し、より詳しくは、不織布、紙、フィルム等の長尺シート体の移送時における蛇行を防止するための長尺シート体のガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺シート体の移送中の蛇行を防止する装置として、例えば特許文献1に開示された構成が知られている。このガイド装置は、図5に示すように、ウェブの受け取りおよび排出を行う搬入ロール50および排出ロール51が、揺動フレーム52に回転可能に支持されており、揺動フレーム52は固定部53に対して揺動可能に設けられている。走行中のウェブの位置ずれ量は、ウェブの側縁近傍に設置されたセンサ54により検出され、この検出に基づいて揺動装置60(図6)が揺動フレーム52を揺動させることにより、ウェブの蛇行を防止する。
【0003】
揺動装置60は、図6に平面図で示すように、動力部61の出力軸に設けられたピニオン62と、ピニオン62に噛合する円弧状のラック63とを備えており、動力部61およびラック63は、それぞれ固定部53および揺動フレーム52に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−43179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、長尺シート体の移送には、生産効率の向上等を目的として高速化のニーズが高まっているため、ガイド装置に対しても、高速で走行するシート体を適切に案内することが必要とされる。
【0006】
ところが、上記特許文献1の構成において、揺動フレーム52は、揺動装置60のピニオン62およびラック63を介して固定フレーム53に揺動可能に設けられているため、揺動フレーム52が高速駆動により激しく揺動すると、慣性力等による揺動フレーム52側からの逆入力トルクが動力部61に伝達されるおそれがあり、モータの負荷や消費電力が増大すると共に、揺動フレーム52の正確な位置決め制御が困難なものとなっていた。
【0007】
そこで、本発明は、高速で移送される長尺シート体の蛇行を低コストで確実に防止することができる長尺シート体のガイド装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、駆動手段により駆動される入力軸および鉛直方向に延びる出力軸を有する減速機と、水平面に沿って揺動可能となるように前記出力軸の上端に固定された揺動体と、前記揺動体に回転自在に設けられ、長尺シート体の移送を案内する一対のガイドローラと、移送される長尺シート体の位置検出を行う位置検出器と、前記位置検出器の検出に基づいて前記駆動手段の駆動を制御する制御装置とを備え、前記減速機は、前記入力軸に設けられたウォームが前記出力軸に設けられたウォームホイールに噛合するように配置され、前記揺動体の揺動に伴う前記出力軸側からの前記入力軸の回転を防止するように構成されたセルフロック機能を有するウォーム減速機である、長尺シート体のガイド装置により達成される。
【0009】
この長尺シート体のガイド装置において、前記出力軸は、一対の前記ガイドローラのうち、前記長尺シート体の移送方向上流側の前記ガイドローラが、平面視において重なるように配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、揺動体を駆動するための構成を単純化できると共に、駆動制御を高い精度で行うことができるので、高速で移送される長尺シート体の蛇行を低コストで確実に防止することができる長尺シート体のガイド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る長尺シート体のガイド装置を一部断面で示す側面図である。
【図2】図1に示す長尺シート体のガイド装置の平面図である。
【図3】図1に示す長尺シート体のガイド装置における制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る長尺シート体のガイド装置を一部断面で示す要部側面図である。
【図5】従来のガイド装置の斜視図である。
【図6】図5に示すガイド装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る長尺シート体のガイド装置を一部断面で示す側面図であり、図2は、図1の平面図である。図1および図2に示すように、長尺シート体のガイド装置1は、駆動手段としてのサーボモータ2、減速機3、揺動体4、一対のガイドローラ5,6、位置検出器7および制御装置(図示せず)を主な構成要素として備えている。サーボモータ2は、本実施形態では高速対応や高精度化の観点から三相のACサーボモータを使用しており、各相の磁極位置がエンコーダ2aにより検出されるように構成されており、台板8上にブラケット8aにより固定されている。サーボモータ2は、DCブラシレスモータやステッピングモータ等、他の安価な駆動手段を使用することもできる。
【0013】
減速機3は、サーボモータ2の出力軸11と軸心が一致するようにカップリング12により結合された入力軸13と、揺動体4に結合された出力軸14とを備えており、台板8上に設けられている。入力軸13は、水平に延びるように配置され、先端側がハウジング15内に収容されており、ハウジング15の側壁に軸受16を介して回転可能に支持されている。入力軸13のハウジング15内に収容される部分には、ウォーム17が固定されている。減速機3の入力軸13は、カップリング12によりサーボモータ2に直結する以外に、サーボモータ2の出力軸自体を減速機3の入力軸13とすることも可能である。また、図1では図示していないが、入力軸13の先端側も軸受により回転自在に支持することができる。
【0014】
出力軸14は、ハウジング15内で鉛直方向に延びるように配置されており、出力軸14の上端には、拡径された嵌入部18が、ハウジング15の上方に突出するように設けられている。ハウジング15の上部と嵌入部18との間にはスラスト軸受19が介在されている。また、ハウジング15の下部と出力軸14の下部との間には軸受20が介在されている。このような構成により、出力軸14は、上方から荷重を受けた状態で回転可能となるように、ハウジング15の上部および下部において支持されている。出力軸14の下端には、軸受20を固定するためのカラー21が設けられている。また、出力軸14には、ウォーム17と噛合するようにウォームホイール22が固定されており、入力軸13の回転力が出力軸14に伝達されるように構成されている。
【0015】
本実施形態の減速機3は、後述する揺動体4の揺動に伴う出力軸14側からの入力軸13の回転を防止するように構成されたセルフロック機能を有している。具体的には、ウォーム17の進み角を小さい値(例えば、約3度)に設定し、出力軸14に逆入力トルクが作用した時に、ウォーム17とウォームホイール22との間に大きな摩擦力が生じるように構成される。
【0016】
揺動体4は、水平な底板23と、底板23の両側から起立する一対の側板24,25とを備えており、一対の側板24,25の間に一対のガイドローラ5,6が回転自在に支持されている。一対のガイドローラ5,6は、同じ高さ位置に間隔をあけて並設されており、長尺シート体であるウェブwの移送を矢示A方向に案内する。底板23には下方に突出する中空筒状の嵌合受部26が設けられており、嵌合受部26に出力軸14の嵌入部18が嵌合することで、出力軸14の正逆回転に伴い、揺動体4が水平面に沿って図2の矢示B方向に揺動する。出力軸14の嵌入部18は、2つのガイドローラ5,6のうち、ウェブwの移送方向(矢示A方向)の上流側に位置するガイドローラ5と、少なくとも一部が平面視において重なり合うことが好ましく、更に、このガイドローラ5の軸方向中央に位置することが好ましい。嵌入部18がこのような配置となるように嵌合受部26を設けることで、出力軸14の僅かな回動により移送方向下流側のガイドローラ6の軸線を大きく傾斜させることができ、揺動体4を高速で揺動させる場合に特に効果的である。
【0017】
位置検出器7は、ウェブwの側縁を検出する公知のエッジ検出器であり、不図示のブラケットに支持されて、ウェブwの移送方向と直交する幅方向の所定位置からのずれを検出する。位置検出器7は、本実施形態ではウェブwの一方側縁を検出するように配置しているが、ウェブwの両側縁を検出するように複数配置してもよい。
【0018】
図3に示すように、位置検出器7で検出されたウェブwのエッジ位置は、エッジセンサ増幅器31を経て、PLC(Programmable Logic Controller)等の制御装置32にリアルタイムに入力される。制御装置32においては、位置検出器7が検出するウェブwの基準位置Sが設定値としてメモリ33に格納されており、比較器34において位置検出器7からの測定値(現在値)とメモリ33内の設定値とが比較され、この偏差が演算器35に入力される。演算器35は、比較器34から入力された偏差に対してPID演算等の演算処理を行い、制御値を出力する。この制御値は、サーボ増幅器36を経てサーボモータ2に入力され、エンコーダ2aの検出に基づくフィードバック制御により、サーボモータ2の駆動制御が行われる。すなわち、図2において、ウェブwがローラ6上で左側に片寄っている場合、支持軸18を左回転させて揺動体4を矢示C方向に揺動させる一方、ウェブwがローラ6上で右側に片寄っている場合、支持軸18を右回転させて揺動体4を矢示D方向に揺動させ、サーボモータ2に対して設定値からの偏差に応じた揺動速度を与える。
【0019】
また、ハウジング15の上面には、ブラケットを介してリミットスイッチ27が設けられていると共に、揺動体4の下面側には、リミットスイッチ27を挟んで揺動方向両側にドク28(図1に手前側の一方のみを示す)が設けられており、異常揺動時にはドク28がリミットスイッチ27を作動させることにより、揺動体4の過剰な揺動を抑制することができる。
【0020】
上記の構成を備える長尺シート体のガイド装置1によれば、減速機3がウォーム減速機であることから、噛み合い部であるウォーム17とウォームホイール22間におけるバックラッシを、従来のラック・ピニオン機構等に比べて容易に小さくすることができる(例えば、0.9度)。したがって、サーボモータ2の正逆回転による揺動体4の揺動を、高速で制御することが可能である。
【0021】
また、減速機3は、揺動体4の高速揺動による慣性力が逆入力トルクとして出力軸14に作用した場合でも、ウォーム17とウォームホイール22との間に生じる摩擦力によって入力軸13の回転を防止するように構成された、いわゆるセルフロック機能を有するので、サーボモータ2の負荷や消費電力の増大を抑制することができると共に、単純な構成で高速追従性に優れたものとすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0022】
このように、本実施形態の長尺シート体のガイド装置1は、高速(例えば、約300m/分)でウェブwが移送される場合にも、一対のガイドローラ5,6上でのウェブwの片寄りに対して揺動体4の揺動を適切に追従させることができ、ウェブwの蛇行を確実に防止することができる。この結果、生産性の向上や製造設備の小型化を図ることができる等、優れた効果を奏する。
【0023】
また、本実施形態においては、揺動体4の自重および回転によって出力軸14に作用する荷重を、減速機3が備える軸受19,20によって支承するように構成しているが、図4に示すように、減速機3の上面に補強支持具40を設けて、出力軸14に作用するスラスト荷重およびラジアル荷重を補強支持具40により支承するように構成してもよい。図4は、長尺シート体のガイド装置の補強支持具40近傍を示す要部側面図であり、補強支持具40のみを断面で示している。また、図4において図1と同様の構成部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。なお、図4においては減速機3の入力軸を図示していないが、水平方向に配置されていることが好ましく、例えば、図1に示す入力軸13と同様にガイドローラ5,6の回転軸と直交する配置の他、ガイドローラの回転軸と平行な配置であってもよい。
【0024】
補強支持具40は、直方体ブロック状に形成された中空ハウジング41の内壁面41aに軸受44を備えて構成されており、揺動体4の嵌合受部26を収容するように、四隅のボルト孔に挿通されたボルト52によって減速機3に固定されている。出力軸14および嵌合受部26は、キーおよびキー溝によって一体的に回転するように嵌合されている。軸受44は、内輪45と外輪47との間に複数のボール46が周方向に等間隔に配置され、内輪45の外周面と外輪47の内周面にボール46を案内する溝が形成された深溝玉軸受であり、内輪45と外輪47との間でスラスト荷重とラジアル荷重とを支承することができる。内輪45および外輪47は、嵌合受部26およびハウジング41の内壁面41aにそれぞれ形成された段部26a,41bに当接しており、揺動体4の自重および回転によって作用する荷重の一部を、支持具40によって支持することができる。軸受44は、スラスト荷重およびラジアル荷重を支承可能な他の軸受であってもよく、或いは、スラスト荷重およびラジアル荷重をそれぞれ異なる軸受によって支承するように構成してもよい。
【0025】
このような補強支持具40を備えることにより、揺動体4を支持する出力軸14を補強することができ、揺動体4が高速で揺動する場合であっても出力軸14のスムーズな回転を促して、揺動体4の追従性、耐久性を良好に維持することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 長尺シート体のガイド装置
2 サーボモータ(駆動手段)
3 減速機
4 揺動体
5,6 ガイドローラ
7 位置検出器
13 入力軸
14 出力軸
17 ウォーム
22 ウォームホイール
32 制御装置
40 補強支持具
44 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段により駆動される入力軸および鉛直方向に延びる出力軸を有する減速機と、
水平面に沿って揺動可能となるように前記出力軸の上端に固定された揺動体と、
前記揺動体に回転自在に設けられ、長尺シート体の移送を案内する一対のガイドローラと、
移送される長尺シート体の位置検出を行う位置検出器と、
前記位置検出器の検出に基づいて前記駆動手段の駆動を制御する制御装置とを備え、
前記減速機は、前記入力軸に設けられたウォームが前記出力軸に設けられたウォームホイールに噛合するように配置され、前記揺動体の揺動に伴う前記出力軸側からの前記入力軸の回転を防止するように構成されたセルフロック機能を有するウォーム減速機である、長尺シート体のガイド装置。
【請求項2】
前記出力軸は、一対の前記ガイドローラのうち、前記長尺シート体の移送方向上流側の前記ガイドローラが、平面視において重なるように配置されている請求項1に記載の長尺シート体のガイド装置。
【請求項3】
前記揺動体は、下方に突出して前記出力軸と嵌合する嵌合受部を備え、
前記減速機と前記揺動体との間には、前記嵌合受部を収容可能な補強支持具が設けられており、
前記補強支持具は、前記嵌合受部と当接して前記出力軸に作用するスラスト荷重およびラジアル荷重を支承する軸受を備える請求項1または2に記載の長尺シート体のガイド装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−56771(P2012−56771A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36513(P2011−36513)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(510216946)株式会社下中電機 (1)
【Fターム(参考)】