説明

長尺ロール状偏光板、液晶表示装置の製造方法、及び液晶表示装置

【課題】PET等のポリエステルフィルムを用いた長尺ロール状偏光板の取扱性を改善し、品質の安定した表示装置を効率的に製造する方法、及びそのために用いられる長尺ロール状偏光板を提供する。
【解決手段】PVA偏光子2の一方の面に保護フィルムA1を有し、他方の面に粘着層3を有する偏光板において、該保護フィルムAが平衡含水率0.5〜10%である透湿性ポリエステルフィルムである長尺ロール状偏光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺ロール状偏光板、液晶表示装置の製造方法、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型TV等に利用されている液晶表示装置は、日本のみならず全世界で普及してきている。これまで、大画面化や高精細化が求められてきていたが、一方でコスト低減への要求が増々高まってきている。液晶表示装置のコストの中で、偏光板が占める割合は高くその低コスト化の要望は増々高まってきている。従来の偏光板は、2枚の偏光板保護フィルムで偏光子をサンドイッチした構成であり、偏光板保護フィルムとしては光学的等方性、均一性、偏光子との密着性等の点でセルロースアセテート系フィルムが好ましく用いられてきた。セルロースアセテート系フィルムは取扱容易である半面、引き裂き強度が低く、薄膜フィルムでは取扱が難しい。
【0003】
セルロースアセテート系以外の偏光板保護フィルムとしては、PETやノルボルネン系樹脂が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。これらは水分透過率が低く、環境変動の影響が少ないという利点がある。PET等のポリエステルフィルムなどの汎用フィルムを用いることができれば、偏光板のコスト低減に大きく寄与する。
【0004】
また、最近では、液晶表示装置の製造工程の工夫によるコストダウンのため、ロール状偏光板を液晶パネルに直接貼合する「ロールtoパネル製法」にて液晶パネル加工を行うことも提案されている。しかしながら、PET等のポリエステルフィルムをロール状偏光板の保護フィルムとして用いた場合、巻癖が残ってしまい貼合時の取扱性が悪化し、表示装置の歩留まりの悪化や性能のばらつきが生じやすいという問題があることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−116320号公報
【特許文献2】特開2004−334168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、PET等のポリエステルフィルムを用いた長尺ロール状偏光板の取扱性を改善し、品質の安定した表示装置を効率的に製造する方法、及びそのために用いられる長尺ロール状偏光板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0008】
1.偏光子の一方の面に保護フィルムAを有し、他方の面に粘着層を有する偏光板において、該保護フィルムAが透湿性ポリエステルフィルムであることを特徴とする長尺ロール状偏光板。
【0009】
2.前記偏光子がポリビニルアルコール系樹脂を延伸したものであり、水系接着剤で前記保護フィルムAと貼合されたものであることを特徴とする前記1に記載の長尺ロール状偏光板。
【0010】
3.前記長尺ロール状偏光板がプロテクトフィルムもしくはセパレートフィルムを有し、いずれか一方もしくは両方が透湿性フィルムであることを特徴とする前記1または2に記載の長尺ロール状偏光板。
【0011】
4.偏光板を液晶パネルに貼合する液晶表示装置の製造方法において、
前記1〜3のいずれか1項に記載の長尺ロール状偏光板を液晶パネルに貼合する際に、該偏光板を所望のサイズにレーザーによってカットすることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【0012】
5.前記1〜3のいずれか1項に記載の長尺ロール状偏光板を液晶パネルの少なくとも一方の面に貼合したことを特徴とする液晶表示装置。
【0013】
6.前記液晶表示装置がIPSモード型液晶表示装置であることを特徴とする前記5に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、PET等のポリエステルフィルムを用いた長尺ロール状偏光板の取扱性を改善し、品質の安定した表示装置を効率的に製造する方法、及びそのために用いられる長尺ロール状偏光板を提供することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の長尺ロール状偏光板を用いた液晶表示装置の断面図である。
【図2】液晶表示装置の製造方法のフローチャートの一例を示す。
【図3】液晶表示装置の製造システムの一例の構成図を示す。
【図4】液晶表示装置の製造システムの一例の平面配置図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の長尺ロール状偏光板は、偏光子の一方の面に保護フィルムAを有し、他方の面に粘着層を有する偏光板であり、該保護フィルムAが平衡含水率0.5〜10%である透湿性ポリエステルフィルムであることを特徴とする。
【0018】
PETは、水分透過率が低く、環境変動の影響が少ないという利点があるものの、PET等のポリエステルフィルムをロール状偏光板として用いた場合巻癖が残り易く貼合時の取扱性が悪化するという問題点があったところ、特に好ましくは平衡含水率が0.5〜10%の範囲になるように透湿性を持たせた柔軟なポリエステルフィルムを偏光子の、しかも片面のみに用いることで該巻癖の問題を解決できることを見出し、本発明を成すに至った次第である。
【0019】
また、IPSモード型液晶表示装置の場合液晶パネル側の保護フィルムにはできるだけレターデーションがないフィルムが求められているが、本発明の偏光板の構成の場合、液晶パネル側に粘着層を介して偏光子を貼合するため、実質的にレターデーションのないフィルムを貼合したものと光学特性が同一になることから、IPSモード型液晶表示装置に特に有用である。
【0020】
図1は本発明の長尺ロール状偏光板を用いた液晶表示装置の一例であるが、これに限定されるものではない。
【0021】
液晶パネル5の両側に本発明の長尺ロール状偏光板4を粘着層3を介して貼合する。偏光子2の粘着層3とは反対側には、本発明に係る保護フィルムAである、透湿性ポリエステルフィルム1が貼合されている。
【0022】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0023】
<透湿性ポリエステルフィルム>
本発明に係る透湿性ポリエステルフィルムとは、平衡含水率0.5〜10%のポリエステルフィルムであることが好ましい。(以下、透湿性ポリエステルフィルムを単にポリエステルフィルムという場合がある。)。
【0024】
特に好ましい透湿性ポリエステルフィルムは、スルホン酸基を有するポリエステル樹脂から形成されたポリエステルフィルムであって、その平衡含水率が上記の範囲内にあるポリエステルフィルムである。より好ましくは平衡含水率が0.5〜5%であるポリエステルフィルムである。平衡含水率0.5%未満であると本発明の効果が得有られず、10%を越えると膜面がべたつく場合があり好ましくない。
【0025】
本発明において、平衡含水率0.5〜10%のポリエステルフィルムは平衡含水率0.5〜10%のポリエステル樹脂単独で形成してもよく、当該平衡含水率範囲に維持できる限りにおいて、平衡含水率0.5〜10%のポリエステル樹脂に他種の樹脂成分、各種添加剤等を含有させてもよい。その外、平衡含水率0.5%未満のポリエステル樹脂と積層されていてもよく、また他の材質のフィルム上に積層されていてもよく、支持体に用いられる樹脂は特に限定されない。
【0026】
ここで平衡含水率とは、試料の中に平衡状態で含まれる水分量を試料質量に対する百分率で表したものである。具体的な求め方としては、ポリエステルフィルムを(或いは他のフィルム上に積層されている場合には、基体より引き剥がした該ポリエステルフィルム)23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬させ、しかる後、サンプルを微量水分計(例えば三菱化学(株)製、CA−20型)を用いて温度150℃で、水分を乾燥・気化させた後カールフィッシャー法で定量する方法である。
【0027】
本発明に係るポリエステルフィルムを作成するためのポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分をグリコール成分と直接エステル化反応させる直接エステル化法、また初めに芳香族ジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとグリコール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のグリコール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いて製造できる。この際、必要に応じてエステル交換触媒或いは重合反応触媒を用い、或いは耐熱安定剤等をもちいて製造される。
【0028】
本発明においては、始めにジカルボン酸のジアルキルエステルを用いた場合でも、また一旦ジカルボン酸成分とグリコール成分をエステル化反応させるエステル化法をもちいた場合でも、原料およびその共重合成分に言及する場合、芳香族ジカルボン酸、グリコール換算の量をいうこととする。
【0029】
上記プロセスにおいて、例えば、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸或いはポリアルキレングリコール等の共重合成分をエステル交換反応後に添加し、重縮合を行うことにより、これらの共重合成分を含んだポリエステル樹脂が得られる。
【0030】
従って、本発明に係る平衡含水率0.5〜10%のポリエステルフィルムを形成するポリエステル樹脂としては具体的には、少なくとも芳香族ジカルボン酸とグリコールの反応により得られたポリエステル樹脂であって、ポリエステル樹脂構造中にスルホン酸またはその塩から選ばれる基を有しているポリエステル樹脂が好ましい。
【0031】
これらのスルホン酸基は、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸またはグリコールを所定量テレフタル酸等のジカルボン酸或いはエチレングリコール等のグリコールの共重合成分として混合し、ポリエステルを製造することにより、ポリエステル樹脂中に導入することが出来る。
【0032】
こうして得られるポリエステル樹脂中に含まれる硫黄元素含有量は0.15〜2質量%であることが好ましい。
【0033】
これら硫黄元素含量が2%を越える場合には、スルホン酸基の含有量が多すぎ、機械的強度が劣ったものとなる場合があり、また0.15%未満では、スルホン酸基数が充分な割合で存在せず、本発明の効果を与えない。
【0034】
ポリエステル樹脂中の硫黄元素は全てがスルホン酸基またはその塩から選ばれる基由来である必要はないが、50%以上、好ましくは80%以上がスルホン酸またはその塩としてポリエステル中に含まれるスルホン酸基に由来するものであることが好ましい。
【0035】
ポリエステル樹脂中の硫黄元素の定量方法は特に限定されないが、例えばICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)により定量出来る。具体的には、試料に炭酸ナトリウムを添加して、1000℃で加熱溶融して得られた分解物に水を加えて水溶液とし、これを、セイコー電子工業(株)製SPS−4000を用いて、ICP−AES分析にて求めることが出来る。
【0036】
上記スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂は、従って、少なくとも芳香族ジカルボン酸とグリコールの反応により製造される際に用いられる全芳香族ジカルボン酸に対して、1〜10モル%のスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸或いはグリコールを共重合成分として用いることにより得ることが出来る。また、スルホン酸をポリエステル樹脂に導入するには、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸を、全芳香族ジカルボン酸に対し1〜10モル%用いて製造することが原料の入手のしやすさ等から見てより好ましい。
【0037】
また、本発明に用いられるポリエステル樹脂は、更にポリアルキレングリコールを、生成したポリエステルフィルムの全量に対して0.1〜10質量%共重合成分として用いて製造されることが好ましい。
【0038】
本発明に用いるポリエステル樹脂においては、特にポリエステル構造の主成分がテレフタル酸およびエチレングリコールを用いて得られるポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0039】
本発明に係るポリエステルフィルムの製造に用いられる芳香族ジカルボン酸としては、前記テレフタル酸のほか、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などがあり、またこれらの低級アルキルエステル(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)を使用することができる。グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、p−キシリレングリコールなどがある。なかでもテレフタル酸とエチレングリコールの反応により得られたポリエチレンテレフタレートを主成分とすることが好ましい。
【0040】
主成分がポリエチレンテレフタレートであるとは、ポリエチレンテレフタレートの繰返し単位が80モル%以上の共重合体、あるいはブレンドされている場合は、ポリエチレンテレフタレートを80質量%以上含有していることをいう。
【0041】
本発明においてポリエステル樹脂中にスルホン酸基を含有させるために用いられるスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体、およびこれらのナトリウムを他の金属(例えばカリウム、リチウムなど)で置換した化合物が用いられる。
【0042】
また、グリコール中にスルホン酸およびその塩から選ばれる基を導入したものを用いてもよいが、ポリエステル樹脂中にスルホン酸基を含有させるために好ましい化合物として好ましいのは、前記スルホン酸基またはその塩を有する芳香族ジカルボン酸である。
【0043】
これらのスルホン酸基またはその塩を有する芳香族ジカルボン酸成分が製造時に用いられる全芳香族ジカルボン酸の10モル%を越えると延伸性、機械的強度が劣ったものとなる場合があり、また1モル%未満では、十分な乾燥性が得られない場合がある。
【0044】
更に、本発明に用いられるポリエステル樹脂は、ポリアルキレングリコールを共重合成分として含有することが好ましく、前述したように、ポリエステル樹脂が、反応生成物のポリエステル樹脂全量に対してポリアルキレングリコールを0.1〜10質量%用い製造されることが好ましい。また、更に好ましくは0.2〜8質量%である。ポリアルキレングリコールが0.1質量%未満では十分な乾燥性が得られない場合があり、10質量%を越えるとヤング率が低下し、機械的強度に劣ったものとなる場合がある。
【0045】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが用いられるが、このうちポリエチレングリコールが好ましく、分子量(数平均分子量)としては特に限定されないが300〜20000が好ましく、さらに好ましくは600〜10000、特に1000〜5000のものが好ましく用いられる。これらの分子量はGPCを用いることにより測定できる。
【0046】
本発明に用いられるポリエステル樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに他の成分が共重合されていても良いし、他のポリマーがブレンドされていても良い。
【0047】
上記以外の他の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体として、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸及びその低級アルキルエステル(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)を用いることができる。また製造の際、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸及びヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸及びその誘導体(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、アゼライン酸、セバシン酸及びダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体(無水物、低級アルキルエステルなどのエステル形成可能な誘導体)を全ジカルボン酸の10モル%以下の量で使用しても良い。
【0048】
本発明で使用することができるグリコールとしてはエチレングリコールおよび前記のグリコールの他、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、p,p′−ジヒドロキシフェニルスルフォン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ポリアルキレン(例、エチレン、プロピレン)グリコール、及びp−フェニレンビス(ジメチロールシクロヘキサン)などを挙げることができ、これらは用いられるグリコールの10モル%以下の量で使用しても良い。
【0049】
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、例えば安息香酸、ベンゾイル安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの1官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基を封鎖したものであってもよく、あるいは、例えば極く少量のグリセリン、ペンタエリスリトールの如き3官能、4官能エステル形成化合物で実質的に線状の共重合体が得られる範囲内で変性されたものでもよい。
【0050】
また、本発明に用いられるポリエステル樹脂には、フィルムの耐熱性を向上する目的で、ビスフェノール系化合物、ナフタレン環又はシクロヘキサン環を有する化合物を共重合することができる。
【0051】
本発明に用いられるポリエステル樹脂の固有粘度(Intrinsic Viscousity)は0.35〜0.65の範囲のものが好ましく用いられる。この範囲以下では得られるフィルムの脆弱性が不充分となる場合があり、この範囲を超えると溶融押し出し時に溶融粘度が大きすぎて平面性が劣化する場合がある。
【0052】
固有粘度の算出はウベローデ型粘度計を用いて行った。質量比が約55:45(流下時間42.0±0.1秒に調整)であるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒を用い、これにサンプルを溶かして濃度0.2、0.6、1.0(g/dl)の溶液(温度20℃)を調製する。ウベローデ型粘度計によって、それぞれの濃度(C)における比粘度(ηsp)を求め、式[ηsp/C]を濃度零(C→0)に補外し固有粘度[η]を求めた。固有粘度[η]の単位はdl/gである。
【0053】
また、本発明に用いられるポリエステル樹脂はガラス転移温度(Tg)が55℃以上であることが好ましく、更に60℃以上であることが好ましい。55℃未満では得られたフィルムの高温高湿下での寸法安定性に劣る場合がある。Tgは示差走査熱量計で測定するところのベースラインが偏奇し始める温度と、新たにベースラインに戻る温度との平均値として求められたものである。
【0054】
本発明に用いるポリエステル樹脂の合成方法は、特に限定があるわけではなく、前述したように従来公知のポリエステル樹脂の製造方法に従って製造できる。例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させる直接エステル化法、初めにジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとジオール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いることができる。この際、必要に応じてエステル交換触媒或いは重合反応触媒を用い、或いは耐熱安定剤を添加することができる。この際、共重合成分である金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸類やポリエチレングリコールをエステル交換反応後に添加し、重縮合を行うことが好ましい。また、合成時の各過程で着色防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤、消泡剤、透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料等を添加させてもよい。
【0055】
(添加剤)
(酸化防止剤)
本発明に係るポリエステルフィルムを成膜する際に酸化防止剤を好ましく使用することができる。
【0056】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成型時の熱や酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止出来る。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることが出来、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、ポリエステル樹脂100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0057】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール酸化防止剤化合物は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されているものなどの、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物には、以下の一般式(1)のものが含まれる。
【0058】
【化1】

【0059】
上式中、R1、R2及びR3は、更に置換されているかまたは置換されていないアルキル置換基を表す。ヒンダードフェノール化合物の具体例には、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノ−N,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリトリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのヒンダードフェノール系酸化防止剤化合物は、例えば、BASFジャパンから、“Irganox1076”及び“Irganox1010”という商品名で市販されている。
【0060】
その他の酸化防止剤としては、具体的には、トリスノニルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等の耐熱加工安定剤、特公平8−27508号記載の3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン系化合物、3,3′−スピロジクロマン系化合物、1,1−スピロインダン系化合物、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリンオキシド、チオモルホリンジオキシド、ピペラジン骨格を部分構造に有する化合物、特開平3−174150号記載のジアルコキシベンゼン系化合物等の酸素スカベンジャー等が挙げられる。これら酸化防止剤の部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていても良く、可塑剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。
【0061】
(有機系添加剤)
本発明に係るポリエステルフィルムには、ポリエステル樹脂、可塑剤、酸化防止剤とアルコール系化合物の他に、有機系添加剤を含有させることが好ましい。有機系添加剤には、酸捕捉剤、光安定剤、紫外線吸収剤、レターデーション制御剤、高分子材料等がある。
【0062】
以下、その他の添加剤について、更に詳述する。
【0063】
(酸捕捉剤)
酸捕捉剤としては、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸捕捉剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、及び一般式(2)の他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
【0064】
【化2】

【0065】
上式中、nは0〜12である。用いることが出来る更に可能な酸捕捉剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。
【0066】
(光安定剤)
光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。このような化合物には、以下の一般式(3)のものが含まれる。
【0067】
【化3】

【0068】
上式中、R1及びR2は、Hまたは置換基である。ヒンダードアミン光安定剤化合物の具体例には、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−t−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−エチル−4−サリチロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルマレイネート(maleinate)、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アジペート、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1−アリル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−フタレート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、トリメリト酸−トリ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ジブチル−マロン酸−ジ−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジベンジル−マロン酸−ジ−(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジメチル−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン,トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフィット、トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフェート,N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアセトアミド、1−アセチル−4−(N−シクロヘキシルアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、4−ベンジルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジブチル−アジパミド、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジシクロヘキシル−(2−ヒドロキシプロピレン)、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−p−キシリレン−ジアミン、4−(ビス−2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリルアミド−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、α−シアノ−β−メチル−β−[N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−アミノ−アクリル酸メチルエステル。好ましいヒンダードアミン光安定剤の例には、以下のHALS−1及びHALS−2が含まれる。
【0069】
【化4】

【0070】
これらのヒンダードアミン系耐光安定剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることが出来、またこれらヒンダードアミン系耐光安定剤と可塑剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用しても、添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、ポリエステル樹脂100質量部に対して好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜15質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部である。
【0071】
(紫外線吸収剤)
本発明に係るポリエステルフィルムには、必要に応じて紫外線吸収剤を添加することもできる。
【0072】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
【0073】
本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物などが挙げられる。又、特開平6−148430号記載の高分子紫外線吸収剤、特願2000−214134号の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0074】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式(A)で示される化合物が好ましく用いられる。
【0075】
【化5】

【0076】
式中、R、R、R、R及びRは同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、RとRは閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
【0077】
また、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していて良い。以下に一般式(A)で示される紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールUV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN 171、BASFジャパン製)UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN 109、BASFジャパン製)
また本発明において、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式(B)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0078】
【化6】

【0079】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基又は−CO(NH)n−1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
【0080】
上記において、アルキル基としては、例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。又、アルキル基、アルケニル基、フェニル基へ置換してもよい置換基としてはハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子など、ヒドロキシル基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基又はハロゲン原子などを置換していてもよい)などが挙げられる。
【0081】
以下に一般式(B)で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、これらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
市販されているものとしては、TINUVIN P、TINUVIN 324、TINUVIN 320、TINUVIN 326、TINUVIN 327、TINUVIN 328、TINUVIN 329、TINUVIN 770、TINUVIN 780、TINUVIN 144、TINUVIN 120、UVITEX OB(BASFジャパン(株)製)等から適宜選択して使用することもできる。
【0082】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、1,3,5−s−トリアジン構造を母核とし、さらにフェノール構造を有しているものが好ましい。
【0083】
本発明で好ましく用いられる上記の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0084】
(マット剤)
添加できるマット剤としては特に限定はされないが、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0085】
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0086】
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0087】
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0088】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0089】
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0090】
本発明に係る微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
【0091】
(その他添加剤)
本発明においては吸湿性物質又は導電性物質を含有させることによりポリエステルフィルムに導電性を付与することができる。これら導電性を付与させる物質としては、例えば、界面活性剤、導電性ポリマー、無機金属酸化物を挙げることができる。
【0092】
用いることができる界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性のいずれでもよい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキル硫酸エステル類、アルキルリン酸エステル類、N−アシル−N−アルキルタウリン酸、スルホコハク酸エステル類、スルホアルキルポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類等の様なカルボキシ基、スルホ基、ホスホ基、硫酸エステル基、燐酸エステル基等の酸性基を含むものが好ましい。
【0093】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、脂肪族或いは芳香族第4級アンモニウム塩類、ピリジニウム、イミダゾリウム等の複素環第4アンモニウム塩類、及び脂肪族又は複素環を含むホスホニウム又はスルホニウム塩類等が好ましい。
【0094】
両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸類、アミノアルキルスルホン酸類、アミノアルキル硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベタイン類、アミンオキシド類等が好ましい。
【0095】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、サポニン(ステロイド系)、アルキレンオキサイド誘導体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール縮合物、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類又はポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類、シリコーンのポリエチレンオキサイド付加物類)、グリシドール誘導体(例えば、アルケニルコハク酸ポリセリド、アルキルフェノールポリグリセリド)、多価アルコール脂肪酸エステル類等のアルキルエステル類等が好ましい。
【0096】
導電性ポリマーは、特に限定されず、アニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性のいずれでもよいが、その中でも好ましいのは、アニオン性、カチオン性である。より好ましいのは、アニオン性では、スルホン酸系、カルボン酸系、カチオン性では、3級アミン系、4級アンモニウム系のポリマー又はラテックスである。
【0097】
これらの導電性ポリマーは、例えば、特公昭52−25251号、特開昭51−29923号、特公昭60−48024号記載のアニオン性ポリマー又はラテックス、特公昭57−18176号、同57−56059号、同58−56856号、米国特許4,118,231号等に記載のカチオン性ポリマー又はラテックスを挙げることができる。
【0098】
例えば、特願2000−80043号記載のプラズマ処理で帯電防止層あるいは導電層を設けることもできる。
【0099】
(ポリエステルフィルムの製造方法)
次に本発明に係るポリエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0100】
本発明に係るポリエステルフィルムは、延伸製膜されていることが好ましく、一軸延伸製膜でも二軸延伸製膜のどちらでもよいが、好ましくは二軸延伸製膜である。即ち本発明においてポリエステルフィルムは、一方向の延伸倍率が1.00〜2.5倍、それと直交する方向の延伸倍率が2.5〜10倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムであることが好ましく、より好ましくは、縦方向の延伸倍率が1.0〜2.0倍、横方向の延伸倍率が2.5〜7倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムであり、さらに好ましくは、縦方向の延伸倍率が1.1〜1.8倍、横方向の延伸倍率が3.0〜6.0倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムである。一方向の延伸倍率を大きくすることが好ましく、延伸倍率の比(縦横いずれかの高い方の延伸倍率/縦横いずれかの低い方の延伸倍率)は2以上であることが好ましく、更に4以上であることが好ましく、6以上であることが好ましい。又、未延伸のものに対して延伸後の面積比で4倍以上に延伸されていることが好ましく、更に好ましくは5〜7倍に延伸されていることが好ましい。
【0101】
上記ポリエステルフィルムを得るには、従来公知の方法で行うことができ、特に限定されないが、以下の様な方法で行うことができる。この場合、縦方向とは、フィルムの製膜方向(長手方向)を、横方向とはフィルムの製膜方向と直角方向のことをいう。
【0102】
先ず、原料のポリエステル樹脂をペレット状に成型し、熱風乾燥又は真空乾燥した後、溶融押出し、Tダイよりシート状に押出して、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得る。次いで、得られた未延伸シートを複数のロール群及び/又は赤外線ヒーター等の加熱装置を介してポリエステルのガラス転移温度(Tg)からTg+100℃の範囲内に加熱し、一段又は多段縦延伸する方法である。
【0103】
次に、上記のようにして得られた縦方向に延伸されたポリエステルフィルムを、Tg〜Tm(融点)−20℃の温度範囲内で、横延伸し次いで熱固定する。
【0104】
横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると巾方向の物性の分布が低減でき好ましい。さらに横延伸後、フィルムをその最終横延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると巾方向の物性の分布がさらに低減でき好ましい。
【0105】
熱固定は、その最終横延伸温度より高温で、Tm−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。この際、2つ以上に分割された領域で温度差を1〜100℃の範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
【0106】
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向及び/又は縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながら、これらの処理を行うことが、フィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。
【0107】
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するポリエステルにより異なるので、得られた延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整して決定すればよい。
【0108】
また、上記フィルム製造に際し、延伸の前及び/又は後で帯電防止層、易滑性層、接着層、バリアー層等の機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
【0109】
カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。
【0110】
本発明において、上記のようにして製膜されたポリエステルフィルムの面方向においての屈折率は、横方向の屈折率(nTD)と縦方向の屈折率(nMD)との差の絶対値|nTD−nMD|が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.04以下、さらに好ましくは0.025以下である。
【0111】
本発明に係るポリエステルフィルムの厚みは3〜200μm、好ましくは10〜100μmである。
【0112】
本発明に係るポリエステルフィルムの面内方向におけるレターデーションR(nm)は特に問題とならないが、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましい。
【0113】
本発明に係るポリエステルフィルムは、JIS Z0208(A法25℃測定)により求めた透湿度は10〜1000g/m・24Hが好ましく、さらには50〜800g/m・24Hが好ましい。
【0114】
また、本発明に係るポリエステルフィルムはフィルム面内の屈折率が最大となる方向とフィルムの幅手方向(フィルムの長尺方向)とのなす角度が0°±15°もしくは90°±15°であることが好ましく、更に0°±10°もしくは90°±10°であることが好ましく、より好ましくは0°±5°もしくは90°±5°であることであり、0°±2°もしくは90°±2°であることが更に好ましい。
【0115】
本発明に係るポリエステルフィルムは、上記ポリエステルフィルムからなる単独(単層)のフィルムでもよいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記ポリエステルからなる層を少なくとも1層含む、複数の樹脂層からなる多層フィルムとしてもよい。上記ポリエステル層をA、その他の樹脂層をB及びCとすると、例えばA/B、A/B/A、B/A/B、B/A/Cのように構成できる。もちろん4層以上の構成にすることもできる。この様に多層構成にすることで、例えば、強度や水バリアー性の高いフィルムをコア層や外層に積層することにより、複数の機能を同時に付与することができる。
【0116】
上記樹脂層としては、前述のポリエステルなどが好ましく用いられる。また、滑り性を付与するためマット剤等の微粒子を添加する場合は、最外層のみに添加すれば効果が得られるので、透明性等を劣化させずに機能付与することが可能となる。
【0117】
<偏光板の作成>
本発明に係る偏光板は、偏光子の一方の面に平衡含水率0.5〜10%である透湿性ポリエステルフィルムを水系接着剤を用いて貼合し、該偏光子の反対側の面には粘着層を設けたものであることを特徴とする長尺ロール状偏光板である。
【0118】
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられる。
【0119】
(水系接着剤)
本発明に係る水系接着剤は、保護フィルムAである透湿性ポリエステルフィルムとポリビニルアルコール系偏光子とを貼り合わせる用途に使用される。
【0120】
水系接着剤としては、十分な接着性を持ち、透明で、偏光機能を阻害しないものであって、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤などが挙げられる。特にウレタン樹脂系の接着剤が好ましい。
【0121】
ウレタン樹脂としては、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、アクリル系ウレタン樹脂などが挙げられるが、なかでも、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂が好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなることから、水系接着剤として好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂それ自体は公知であり、例えば、特開平7−97504号公報に、フェノール系樹脂を水系媒体中に分散させるための高分子分散剤の例として記載されている。このようなポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、例えば、以下の方法で製造することができる。
【0122】
(1)親水性基含有化合物(A)、ポリエステルポリオール(B)及びポリイソシアネート(C)を反応させて得られた親水性基含有ポリウレタン樹脂を水中に乳化して、アイオノマー樹脂を得る方法;
(2)親水性基含有化合物(A)、ポリエステルポリオール(B)及びポリイソシアネート(C)を反応させて親水性基が導入された末端イソシアナト基含有ウレタンポリマーを水に分散させ、ポリアミンと反応させて、アイオノマー樹脂を得る方法など。
【0123】
ここで用いる親水性基含有化合物(A)としては、例えば、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、スルホコハク酸、スルファニル酸、2,4−ジアミノトルエンスルホン酸のようなスルホン酸基含有化合物、2,2−ジメチロールプロピオン酸、ジヒドロキシマレイン酸、3,4−ジアミノ安息香酸のようなカルボン酸基含有化合物、ポリマー中に少なくとも1個の活性水素を有するポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコールなどが挙げられる。
【0124】
ポリエステルポリオール(B)は、グリコール成分と酸成分との脱水縮合反応によって得られるポリエステルのほか、ε−カプロラクトンのような環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル、又はこれらの共重合ポリエステルであることができる。ポリエステルポリオールに用いるグリコール成分には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量300〜6,000)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン及びそれらのアルキレンオキシド付加体などがある。また酸成分には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p′−ジカルボン酸、及びこれらジカルボン酸の無水物やエステル形成性誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体などがある。
【0125】
なお、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、上記のポリエステルポリオールに加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の高分子量ポリオール成分や低分子量の活性水素含有化合物を併用したものであってもよい。高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオールなどが挙げられる。また低分子量の活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンの如きポリヒドロキシ化合物、エチレンジアミン、ピペラジンの如きジアミン化合物などが挙げられる。なかでも、低分子量の活性水素含有化合物を併用することは、好ましい形態である。
【0126】
前記のポリイソシアネート(C)は、分子内にイソシアナト基を少なくとも2個有する化合物であって、具体的には例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0127】
これら親水性基含有化合物(A)、ポリエステルポリオール(B)及びポリイソシアネート(C)の反応は、無溶剤下で行うこともできるが、有機溶剤中で行ってもさしつかえない。得られた樹脂は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような不揮発性塩基、トリエチルアミンやジメチルエタノールアミンのようなアミン類、又はアンモニアで中和し、そこに水を添加することにより、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の水系分散液が得られる。
【0128】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、反応に有機溶剤を用いるなどして有機溶剤を含有する状態で得られる場合には、その有機溶剤を蒸留などにより除去してから用いるのが有利である。このウレタン樹脂はアイオノマー型のため、水中で極めて微細でかつ安定なコロイドが形成でき、有機溶剤を含まない水系接着剤となる。
【0129】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、重量平均分子量が5,000以上であることが好ましく、さらに好ましくは重量平均分子量が10,000以上300,000以下である。その重量平均分子量が5,000以下では、接着層の強度が充分に得られず、また300,000より高いと、それを水分散液としたときの粘度が高くなり、取り扱いにくくなる。
【0130】
かかるポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂が水中に分散した状態で、水系接着剤とされる。この水系接着剤の粘度は、2,000mPa・s以下であるのが取り扱い上好ましく、さらには1,000mPa・s以下、とりわけ500mPa・s以下であるのが一層好ましい。粘度が低いほど接着剤の塗布が行いやすく、また、得られた偏光板の外観も良好なものとなる。この水系接着剤におけるポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の固形分濃度は、粘度と接着強度の観点から、10〜70質量%の範囲が好ましく、とりわけ、20質量%以上、また50質量%以下であるのが好ましい。
【0131】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の水分散液にはさらに、ポリエチレングリコールやポリオキシエチレンなど、また界面活性剤などが添加されていてもよい。さらには、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール系樹脂などの水溶性樹脂が添加されていてもよい。
【0132】
本発明で用いるのに好適な市販のポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂として、例えば、DIC(株)から販売されている“ハイドラン AP−20”、“ハイドラン APX−101H”などが挙げられる。
【0133】
本発明では、以上説明したようなウレタン樹脂、好ましくはポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂に加えて、オキセタン化合物及びエポキシ化合物を含有する水系接着剤を用いることができる。
【0134】
接着性向上のため、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線処理、火炎処理、大気圧ガス中放電プラズマ処理、薬液処理などの各種表面処理を必要に応じて施すことができる。さらに接着性向上の為、下引層を塗設してもよい。下引層としては偏光子との接着性に優れる親水性コロイド層が特に好ましい。
【0135】
(粘着層)
本発明に係る粘着層は偏光子の保護フィルムAとは偏光子を挟んで反対側の面上に形成されるものであり、粘着剤を含有する層である。
【0136】
本発明に係る粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体または架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
【0137】
上記粘着剤としては1液型であっても良いし、使用前に2液以上を混合して使用する型であっても良い。また上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
【0138】
上記粘着剤の弾性率が1.0×10Pa未満であると、十分な粘着強度が得られず、前記軸ズレや耐熱試験をしたときに剥がれが発生し、弾性率が1.0×10Paを超えると、粘着剤が硬過ぎるために打ち抜き加工の際に、ひび割れや切りくずが発生する不具合が起きることがあり、又、リワーク性に劣ることがある。
【0139】
上記粘着剤の25℃の貯蔵弾性率とは動的粘弾性測定により得られる値であり、具体的には下記の貯蔵弾性率測定方法に記された方法により測定される値である。
【0140】
〈粘着層の貯蔵弾性率の測定方法〉
粘着層成形組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム支持体上に形成した後、これを剥離し、この粘着剤層について、動的粘弾性測定装置(レオメトリック社製の「ARES」)により、昇温モード(昇温速度5℃/分、周波数10Hz)で、25℃の貯蔵弾性率を測定する。
【0141】
上記粘着層の硬化後の厚さは0.005〜50μmが好ましく、更に好ましくは0.01〜10μmである。0.005μm未満であると十分な粘着力が得られず、50μmを超えると耐湿試験の際に偏光板の退色が起こることがある。粘着層の膜厚としては粘着力の異なる部分で膜厚が異なってもよいが、粘着力の異なる部分も同じ膜厚であることが好ましい。
【0142】
また、使用する粘着剤として後硬化型粘着剤を使用してもよく、後硬化の手段は特に限定されないが、熱、光などを利用することが好ましい。
【0143】
粘着層の形成方法としては特に限定されず一般的方法、例えば、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、スプレー塗布、インクジェット法等の方法で粘着剤液を塗布する方法等が挙げられる。
【0144】
(プロテクトフィルム、セパレートフィルム)
本発明の偏光板は、保管中、輸送中の傷防止や粘着層の保護の為に、保護フィルムA上にプロテクトフィルムを、粘着層上にセパレートフィルムを貼り合わせることが好ましい。
【0145】
プロテクトフィルム、セパレートフィルムとして用いられるフィルムの材質は特に制限されるものではなく、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム等を挙げることができる。中でも、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルムが好ましく、特にポリエステル系フィルムが好ましい。
【0146】
更にプロテクトフィルム、セパレートフィルムは、いずれか一方もしくは両方が透湿性フィルムであることが好ましく、本発明に係る平衡含水率0.5〜10%である透湿性ポリエステルフィルムをプロテクトフィルム、セパレートフィルムとして用いることも好ましい。
【0147】
プロテクトフィルムの膜厚(A)は、好ましくは50〜150μm、より好ましくは80〜140μmである。プロテクトフィルムの膜厚が50μ〜150μmの場合、セパレートフィルム剥離時に偏光板にシワが入ることを防止でき、また偏光板の取り出し捌き工程で偏光板に折れシワが入ることも防止できる。
【0148】
セパレートフィルムの膜厚(B)は20μm以上であり、20〜50μmであることが好ましい。20〜50μmであると接着剤の給水量が少なくすることができ、偏光板カールが大きくならず、搬送トラブルが発生し難い。
【0149】
本発明において、プロテクトフィルム及び/又はセパレートフィルムの表面が導電性を有することが生産性の点で好ましく、表面比抵抗(23℃、25%RH)が1×1012Ω/□以下であることが好ましい。より好ましくは、1×1011Ω/□以下、更に好ましくは1×1010Ω/□以下である。
【0150】
本発明において導電性を付与する方法は限定されないが、吸湿性物質又は導電性物質を含有させることによって形成することが出来る。これら導電性を付与させる物質としては、例えば、界面活性剤、導電性ポリマー、無機金属酸化物を挙げることが出来る。
【0151】
<液晶表示装置>
本発明の偏光板は、従来の偏光板と比較して高い表示品質を発現させることができ、特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによるマルチドメイン型液晶表示装置(例えばMVA型液晶表示装置ともいう)や、横電界スイッチッングモード型液晶表示装置(IPSモード型液晶表示装置ともいう)への使用に適している。
【0152】
特に、液晶パネル側には偏光板の粘着層が配置され、該層が複屈折性を有しないことから、IPSモード型液晶表示装置に好適である。本発明のIPSモードとは、フリンジ電場スイッチング(FFS:Fringe−Field Switching)モードも含み、IPSモードと同様に本発明の偏光板を組み込むことができ、同様の効果をもつ本発明の液晶表示装置を作製することができる。
【0153】
本発明の偏光板を用いることで、画面が30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、環境変動が少なく、光漏れが低減された、色味むら、正面コントラストなど視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
【0154】
液晶表示装置の製造方法は、本発明の長尺ロール状偏光板を該液晶パネルに貼合したのち、液晶パネルサイズにレーザーによってカットしながら製造する方法が、生産性、歩留まりを向上する上で好ましい。本発明の偏光板は、親水性樹脂であるポリビニルアルコール樹脂からなる偏光子に透湿性ポリエステルフィルムが保護フィルムとして貼合されているため、レーザーによってカットされる際の急激な加熱による影響が、含有されている水分により、緩和されるとともに、透湿性を有するポリエステルを用いているため積層体中の水分の出入りを阻害しないことが寄与しているものと推測される。
【0155】
上記製造方法を、本発明では、「ロールtoパネル製法」と呼称する。
【0156】
「ロールtoパネル製法」は、ロール状の長尺偏光板を繰り出し、液晶パネルに貼合しながら、レーザーカッターなどで液晶パネルサイズにカットする製法である。長尺偏光板のカットは、液晶パネルへの貼合の直前であっても、貼合と同時であっても、貼合直後であってもよい。長尺偏光板の幅は、液晶パネルの短辺もしくは長辺のいずれかの幅に合わせてスリットされたものを用いることが好ましい。
【0157】
あるいは、1枚の液晶パネルから複数の表示装置を製造する場合には、液晶パネルに偏光板を貼合した後で、液晶パネルを構成する基板等と偏光板とを一緒に切断して複数の表示装置を製造するという方法をとることもでき、特に中小型の表示装置を製造する際には、貼合工程の効率がよく好ましい。
【0158】
「ロールtoパネル製法」において、液晶パネルに偏光板を貼合する際に貼合ロールが押しあてられるが、長尺偏光板であるため、貼合時に無理な力がかかりやすく偏光板にムラや皺が生じやすい。しかしながら、本発明の長尺ロール状偏光板を用いると巻き癖などもなく柔軟である為、無駄な応力を発生せず、貼合故障もなく歩留まり向上が期待できる。
【0159】
以下、「ロールtoパネル製法」について更に詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0160】
(液晶表示装置の製造システム)
本発明の長尺ロール状偏光板を液晶パネルに貼り合せて成る液晶表示装置を製造する製造システムとしては、種々の態様を採り得るが、下記第1切断貼合装置、第2切断貼合装置、及び旋回装置で構成される態様の製造システムであることが好ましい。
【0161】
(1)第1切断貼合装置:前記長尺ロール状偏光板と前記液晶パネルの短辺に対応する幅の前記長尺ロール状偏光板(「第1長尺ロール」という。)から長尺シート状製品を引き出して、前記液晶パネルの長辺に対応する長さに切断した後に、供給しながら、前記液晶パネルの一方側表面に当該第1長尺ロールの偏光板を貼り合せる操作を行う装置。
【0162】
(2)第2切断貼合装置:前記長尺ロール状偏光板を、前記液晶パネルの長辺に対応する幅の前記長尺ロール状偏光板(「第2長尺ロール」という。)から長尺シート状製品を引き出して、前記液晶パネルの短辺に対応する長さに切断した後に、供給しながら、前記液晶パネルの他方側表面に当該第2長尺ロールを貼り合せる操作を行う装置。
【0163】
(3)旋回装置:前記第1切断貼合装置又は前記第2切断貼合装置のいずれか一方の切断貼合装置で貼り合せた後の液晶パネルを、他方の切断貼合装置での貼り合せ方向に旋回させる操作を行う装置。
【0164】
以下、当該製造システムの構成要素について説明をする。なお、図2に、液晶表示装置の製造方法のフローチャートの一例を示す。図3に、液晶表示装置の製造システムの一例の構成図を示す。図4に、液晶表示装置の製造システムの一例の平面配置図を示す。
【0165】
(製造フローチャート)
本発明の液晶表示装置の製造方法は、長尺ロール状偏光板を液晶パネルに貼り合せた液晶表示装置の製造方法である。
【0166】
本発明に係る製造方法は、第1切断貼合工程と第2切断貼合工程とを含むものであるが、何れの工程を先に行ってもよく、両工程を同時又はほぼ同時に行ってもよい。
【0167】
第1切断貼合工程は、前述した第1長尺ロールを用いて、前記液晶パネルの長辺に対応する長さに切断した後、前記液晶パネルの一方表面に第1長尺ロールを貼り合せるものである。
【0168】
第2切断貼合工程は、前述した第2長尺ロールを用いて、前記液晶パネルの短辺に対応する長さに切断した後、前記液晶パネルの他方表面に第2長尺ロールを貼り合せるものである。
【0169】
本発明の液晶表示装置の製造方法は、より具体的には、例えば第1長尺ロールを有する帯状シート状製品が巻き取られたロールから帯状シート状製品を引き出して、所定の長さに切断した後に供給しながら、前記液晶パネルの一方表面に第1長尺ロールを貼り合せる第1切断貼合工程と、第2長尺ロールを有する帯状シート状製品が巻き取られたロールから帯状シート状製品を引き出して、所定の長さに切断した後に供給しながら、前記液晶パネルの他方表面に第2長尺ロールを貼り合せる第2切断貼合工程とを含む。第1切断貼合工程は、例えば、以下で述べる(2)搬送工程〜(5)第1長尺ロール貼合工程によって実施され、第2切断貼合工程は、例えば、以下で述べる(8)搬送工程〜(11)第2長尺ロール貼合工程によって実施される。
【0170】
(1)第1長尺ロール状偏光板準備工程(図2、S1)
前述のようにして長尺の第1シート製品を第1長尺ロール状偏光板として準備する。
【0171】
以下の各工程は、工場内において隔離された隔離構造内において行われ、清浄度が維持されているのが好ましい。特に長尺ロールを液晶パネルに貼り合わせる貼合工程において清浄度が維持されていることが好ましい。
【0172】
(2)搬送工程(図2、S2)
準備され設置された第1長尺ロール状偏光板から第1シート製品F1を繰り出し、下流側に搬送する。第1シート製品F1を搬送する第1搬送装置12は、例えば、ニップローラ対、テンションローラ、回転駆動装置、アキュムレート装置A、センサー装置、制御装置等で構成されているが、粘着層が表に出た状態で搬送を行うため、粘着層がロールに接触しないようにするか、接触する場合はシリコンやフッ素系樹脂等で加工されているロールを用いることが好ましい。最初の一巻分は粘着層を転写するため使用しないが、リーダーの一部として使用しても良い。
【0173】
(3)第1検査工程(図2、S3)
第1シート製品F1の欠点を第1欠点検査装置14を用いて検査する。ここでの欠点検査方法としては、第1シート製品F1の両面に対し、透過光、反射光による画像撮影・画像処理する方法、検査用偏光フィルムをCCDカメラと検査対象物との間に、検査対象である偏光板の偏光軸とクロスニコルとなるように配置(0度クロスと称することがある)して画像撮影・画像処理する方法、検査用偏光フィルムをCCDカメラと検査対象物との間に、検査対象である偏光板の偏光軸と所定角度(例えば、0度より大きく10度以内の範囲)になるように配置(x度クロスと称することがある)して画像撮影・画像処理する方法が挙げられる。なお、画像処理のアルゴリズムは公知の方法を適用でき、例えば二値化処理による濃淡判定によって欠点を検出することができる。
【0174】
透過光による画像撮影・画像処理方法では、第1シート製品F1内部の異物が検出できる。反射光による画像撮影・画像処理方法では、第1シート製品F1表面の付着異物が検出できる。0度クロスによる画像撮影・画像処理方法では、主に、表面異物、汚れ、内部の異物等が輝点として検出できる。x度クロスによる画像撮影・画像処理方法では、主に、クニックを検出することができる。
【0175】
第1欠点検査装置14で得られた欠点の情報は、その位置情報(例えば、位置座標)とともに紐付けされて、制御装置10に送信され、後述する第1切断装置16による切断方法に寄与させることができる。
【0176】
(4)第1長尺ロール貼合工程(図2、S4)
第1長尺ロールF11を粘着剤層を介して液晶パネルWに第1添付装置18において貼り合せる。貼り合せに際し、後述するように、第1長尺ロールF11と液晶パネルWをロール対(181、182)で挟んで圧着する。
【0177】
(5)第1切断工程(図2、S5)
第1切断装置16は、第1長尺ロールF11を所定サイズに切断する。切断長さに関しては、第1長尺状偏光板ロールの幅が短辺に対応するため、長尺ロールを長辺に対応する長さで切断する。本実施形態では、図4に示すように、第1長尺状偏光板ロール(第1シート製品F1)の幅が、液晶パネルWの短辺に対応する場合の例を示す。
【0178】
切断手段としては、例えば、レーザー装置、カッター、その他の公知の切断手段等が挙げられる。本発明ではレーザー装置を用いることが好ましい。第1欠点検査装置14で得られた欠点の情報に基づいて、液晶パネルWに貼り合わせられる領域内に欠点を含まないように、欠点を避けて切断するように構成される。これにより、第1シート製品F1の歩留まりが大幅に向上する。このように、液晶パネルWに貼り合わせられる領域内に欠点を含まないように、欠点を避けて切断する方式をスキップカットと称するが、切断の際の欠点情報は、インラインの欠点検査装置で得られたものでも、予め長尺ロール状偏光板に付されたものでもよい。欠点を含む第1シート製品F1は、後述する第1排除装置19によって排除され、液晶パネルWには貼り付けされないように構成される。つまり、本発明では、第1長尺ロールF11及び第2長尺ロールF21を供給する際に、長尺ロールの欠点を有する部分を切断排除する欠点部分の排除工程を含むことが好ましい。
【0179】
上記レーザー装置に用いられるレーザーとしては、例えば、COレーザー、YAGレーザー、UVレーザー等があげられ、この中でも、厚さ範囲に適用性が高く、割れならびに印欠けが起こらないという点からCOレーザーが好ましい。
【0180】
前記レーザー照射において、出力及び速度は制限されず、一回の照射で切断しても、複数の照射で切断してもよい。前記レーザー照射の出力は、例えば、10〜800Wであって、1回の照射で切断する場合、100〜350Wが好ましく、2回の照射で切断する場合には、例えば、50〜200Wが好ましい。
【0181】
(6−1)洗浄工程(図2、S6−1)
液晶パネルWは、例えば、研磨洗浄装置及び水洗浄装置によって、その表面が洗浄される。洗浄された液晶パネルWは、搬送機構によって、検査装置まで搬送される。搬送機構は、例えば、搬送用ローラ、搬送方向切り替え機構、回転駆動装置、センサー装置、制御装置等で構成される。
【0182】
(6−2)検査工程(図2、S6−2)
洗浄後の液晶パネルWは、例えば検査装置によって、その表面が検査される。検査後の液晶パネルWは、搬送機構によって、第1貼合装置18まで搬送される。
【0183】
これら、第1長尺ロール状偏光板準備工程、第1検査工程、第1長尺ロール貼合工程、第1切断工程、液晶パネル洗浄工程、液晶パネル検査工程のそれぞれの工程は連続した製造ラインで実行されることが好ましい。以上の一連の製造工程において、液晶パネルWの一方面に第1長尺ロールF11が貼り合わされた。以下では、その他面に第2長尺ロールF21を貼り合わる製造工程について説明する。
【0184】
(7)第2長尺ロール状偏光板準備工程(図2、S11)
前述のようにして長尺の第2シート製品F2を第2長尺ロール状偏光板として準備する。
【0185】
(8)搬送工程(図2、S12)
準備され設置された第2長尺ロール状偏光板から第2シート製品F2を繰り出し、下流側に搬送する。第2シート製品を搬送する第2搬送装置22は、例えば、ニップローラ対、テンションローラ、回転駆動装置、アキュムレート装置A、センサー装置、制御装置等で構成されているが、粘着層が表に出た状態で搬送を行うため、粘着層がロールに接触しないようにするか、接触する場合はシリコンやフッ素系樹脂等で加工されているロールを用いることが好ましい。最初の一巻分は粘着層を転写するため使用しないが、リーダーの一部として使用しても良い。
【0186】
(9)第2検査工程(図2、S13)
第2シート製品F2の欠点を、第2欠点検査装置24を用いて検査する。ここでの欠点検査方法は、上述した第1欠点検査装置による方法と同様である。
【0187】
(10)第2長尺ロール貼合工程(図2、S14)
次いで、第2切断工程後に、第2長尺ロールF21を、粘着剤層を介して、液晶パネルWの第1長尺ロールF11が第2添付装置28において貼り合わされている面と異なる面に貼り合せる。なお、第2長尺ロールF21を液晶パネルWに貼り合せる前に、搬送機構Rの搬送方向切り替え機構によって液晶パネルWを90度回転させ、第1長尺ロールF11と第2長尺ロールF21をクロスニコルの関係にする場合がある。
【0188】
つまり、本発明では、第1切断貼合工程で貼り合せた後の液晶パネルWを、第2切断貼合工程での貼り合せ方向に旋回させる旋回工程、又は前記第2切断貼合工程で貼り合せた後の液晶パネルWを、前記第1切断貼合工程での貼り合せ方向に旋回させる旋回工程を含むことが好ましい。
【0189】
本発明では、旋回後の液晶パネルWに貼り合わされた第1長尺ロールF11の長辺の方向と、切断後に貼り合わされる第2長尺ロールF21の長辺の方向とが、0±5°、好ましくは0±1°になるような角度で旋回工程を行うことが好ましい。例えば、供給される第1長尺ロールF11のライン方向と、供給される第2長尺ロールF21のライン方向とが平行(直線上も含む)である場合、旋回工程における旋回角度は、85〜95°が好ましい。貼り合せに際しては、後述するように、第2長尺ロールF21と液晶パネルWをロールで挟んで圧着する。
【0190】
(11)第2切断工程(図2、S15)
第2長尺ロール状偏光板の幅が液晶パネルの長辺に対応するため、長尺ロールを短辺に対応する長さで第2切断装置26で切断する。本実施形態では、図4に示すように、第2長尺ロール状偏光板(第2シート製品F2)の幅が、液晶パネルWの長辺に対応する場合の例を示す。
【0191】
切断手段としては、例えば、レーザー装置、カッター、その他の公知の切断手段等が挙げられるが本発明ではレーザー装置であることが好ましい。第2欠点検査装置24で得られた欠点の情報に基づいて、液晶パネルWに貼り合わせられる領域内に欠点を含まないように、欠点を避けて切断するように構成される。これにより、第2シート製品F2の歩留まりが大幅に向上する。欠点を含む第2シート製品F2は、後述する第2排除装置29によって排除され、液晶パネルWには貼り付けされないように構成される。
【0192】
(12)液晶表示装置の検査工程(図2、S16)
検査装置は、長尺ロール状偏光板を両面に貼着された液晶表示装置を検査する。検査方法としては、液晶表示装置の両面に対し、反射光による画像撮影・画像処理する方法が例示される。また他の方法として、検査用偏光フィルムをCCDカメラと検査対象物との間に設置する方法も例示される。なお、画像処理のアルゴリズムは公知の方法を適用でき、例えば二値化処理による濃淡判定によって欠点を検出することができる。
【0193】
(13)液晶表示装置の良品判定
検査装置で得られた欠点の情報に基づいて、液晶表示装置の良品判定がなされる。良品判定された液晶表示装置は、次の実装工程に搬送される。不良品判定された場合、リワーク処理が施され、新たに長尺ロールが貼られ、次いで検査され、良品判定の場合、実装工程に移行し、不良品判定の場合、再度リワーク処理に移行するかあるいは廃棄処分される。
【0194】
以上の一連の製造工程において、第1長尺ロールF11の貼合工程と第2長尺ロールF21貼合工程とを連続した製造ラインで実行することによって、液晶表示装置を好適に製造することができる。特に、上記各工程を工場内から隔離した隔離構造内部で行うことで、清浄度が確保された環境で長尺ロールを液晶パネルに貼り合わせることができ、高品質の液晶表示装置を製造することができる。
【0195】
(第1長尺ロールと第2長尺ロール)
本実施形態では、図4に示すように、液晶パネルWの供給装置M1と、第1長尺ロールF11の供給装置M2と、第1長尺ロールF11を貼り合せる第1貼合装置M3と、貼り合せ後の液晶パネルWを搬送して供給する搬送供給装置M4と、第2長尺ロールF21の供給装置M5と、第2長尺ロールF21を貼り合せる第2貼合装置M6とを備えている例を示す。この例では、第1切断貼合装置は、第1長尺ロールF11の供給装置M2と、第1長尺ロールF11を貼り合せる第1貼合装置M3とを含み、第2切断貼合装置は、第2長尺ロールF21の供給装置M5と、第2長尺ロールF21を貼り合せる第2貼合装置M6とを含んでいる。
【0196】
本実施形態では、図4に示すように、第1長尺ロールF11の供給装置M2と、第1貼合装置M3と、搬送供給装置M4と、第2長尺ロールF21の供給装置M5と、第2貼合装置M6とが、直線状に配置されると共に、第1貼合装置M3のパネル流れ方向に対して、垂直な方向から液晶パネルWが供給されるように、供給装置M1が配置されている例を示す。
【0197】
本発明に係る第1長尺ロールと第2長尺ロールは、図4に示すように、各々を所定の長さに切断して液晶パネルの両面に各々貼り合せるための長尺ロール状偏光板である。
【0198】
第1長尺ロールR1は、長尺ロール状偏光板(長尺シート状製品)F11が、偏光板の吸収軸に平行に液晶パネルの短辺に対応する幅でスリット加工された状態で、巻回されている。当該長尺シート状製品は、単体で巻回されていてもよいが、芯管等の芯材に巻回されていることが好ましい。
【0199】
第2長尺ロールR2は、長尺ロール状偏光板(長尺シート状製品)F21が、前記偏光板の吸収軸に平行に前記液晶パネルの長辺に対応する幅でスリット加工された状態で、巻回されている。長尺シート状製品は、単体で巻回されていてもよいが、芯管等の芯材に巻回されていることが好ましい。
【0200】
本発明において、「液晶パネルの長辺又は短辺に対応させる」とは、液晶パネルの長辺又は短辺の長さに対応する長尺ロール状偏光板(長尺シート状製品)の貼り合わせの長さ(露出部分を除いた長さ)を指し、液晶パネルの長辺又は短辺の長さと長尺ロール状偏光板(長尺シート状製品)の幅とが同じである必要はない。
【0201】
本発明では、第1長尺ロールR1と第2長尺ロールR2とのいずれもが、それを構成する偏光板の吸収軸に平行にスリット加工されており、ロールの長手方向に吸収軸を有することが好ましい。このため、貼り合わせによる軸精度が良くなり、貼り合わせ後の液晶表示装置の光学特性が良好になる。殊に近年大型TV等で用いられるVAモード又はIPSモードの液晶パネルで液晶表示装置が形成される場合には、第1長尺ロールと第2長尺ロールの偏光板の吸収軸を直交させればよいので、吸収軸に平行にスリット加工した第1及び第2のロールを繰り出し、幅方向に切断するだけでよく、生産速度を高くすることができる。
【0202】
第1長尺ロールR1と第2長尺ロールR2の幅は、液晶パネルの貼り合わせサイズに依存している。具体的には、液晶パネルの短辺に対応させて、第1長尺ロールR1の幅が決定され、長辺に対応させて、第2長尺ロールR2の幅が決定される。このため、一般に第1長尺ロールR1と第2長尺ロールR2とは、異なる幅を有しており、スリット前長尺ロール状偏光板(長尺原反)からスリット加工により、予め所定の幅にスリットされたものが使用される。
【0203】
スリット加工は、スリット前長尺ロール状偏光板を巻き戻しながら行う方法と、巻き戻さずに行う方法とがあり、いずれも採用できる。また、本発明では、長尺シート状製品の製造ラインにおいて、その巻回前にスリット加工を行ってもよい。
【実施例】
【0204】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0205】
実施例1
〔ポリエステルの合成〕
(ポリエステルA)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール64質量部に酢酸カルシウム水和物0.1質量部を添加し、常法によりエステル交換反応を行った。得られた生成物に5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸のエチレングリコール溶液(濃度35質量%)39質量部(7モル%/全ジカルボン酸成分)、ポリエチレングリコール(数平均分子量3000)5.8質量部(5質量%/生成したポリエステル)、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.13質量部を添加した。次いで徐々に昇温、減圧にし、280℃、40Paで重合を行い、ポリエステルAを得た。以下に示す方法に従って固有粘度を求めた。その結果、固有粘度は0.50であった。
【0206】
固有粘度についてはウベローデ型粘度計を用いて以下の手順で算出した。質量比が約55:45(流下時間42.0±0.1秒に調整)であるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒を用い、サンプルを溶かして濃度0.2、0.6、1.0(g/dl)の溶液(温度20℃)を調製した。ウベローデ型粘度計によって、それぞれの濃度(C)における比粘度(ηsp)を求め、式[ηsp/C]を濃度零に補外(C→0)し固有粘度[η]を求めた。固有粘度[η]の単位はdl/gである。
【0207】
(ポリエステルB)
添加量を5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸のエチレングリコール溶液(濃度35質量%)22質量部(4モル%/全ジカルボン酸成分)、ポリエチレングリコール(数平均分子量3000)12.2質量部(10.5質量%/生成したポリエステル)に変更した以外は上記と同様にして、ポリエステルBを得た。前記と同様に測定した固有粘度は0.55であった。
【0208】
(ポリエステルC)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール65質量部、ジエチレングリコール2質量部にエステル交換触媒として酢酸マグネシウム水和物0.05質量部を添加し、常法に従ってエステル交換反応を行った。得られた生成物に、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.03質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、280℃、80Paで重合を行い、固有粘度0.65のポリエステルCを得た。
【0209】
〔ポリエステルフィルムの作製〕
(ポリエステルフィルム1)
ポリエステルBのペレットを150℃で8時間真空乾燥した後、押出機を用いて285℃で溶融押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、85℃で縦方向に1.2倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0210】
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、95℃で横方向に2.0倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、さらに第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ40μmのポリエステルフィルム(ポリエステルフィルム1:PE1と略す)を作製した。
【0211】
ポリエステルフィルム1の平衡含水率は、ポリエステルフィルムを23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬させ、しかる後、サンプルを微量水分計(例えば三菱化学(株)製、CA−20型)を用いて温度150℃で、水分を乾燥・気化させた後カールフィッシャー法で定量した結果、2%であった。
【0212】
(ポリエステルフィルム2)
ポリエステルAのペレットを150℃で8時間真空乾燥した後、押出機を用いて285℃で溶融押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この未延伸シートを、ロール式縦延伸機を用いて、90℃で縦方向に1.5倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0213】
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、100℃で横方向に3.0倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、さらに第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に2%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ30μmのポリエステルフィルム(ポリエステルフィルム2:PE2)を作製した。
【0214】
ポリエステルフィルム2の平衡含水率は、4%であった。
【0215】
(ポリエステルフィルム3)
ポリエステルAとポリエステルCのペレットを質量比で3:7になるようにタンブラー型混合機で混合し、150℃で8時間真空乾燥した。また、ポリエステルBのペレットも150℃で8時間真空乾燥した。ポリエステルAとポリエステルCの混合物及びポリエステルBを2台の押出機を用いて285℃で溶融押出し、マルチマニホールドダイを用いてシート状に押し出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この時各層の厚みの比は1:1となるようにした。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、95℃で縦方向に1.5倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0216】
得られた一軸延伸フィルムを、テンター式横延伸機を用いて105℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、さらに第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ20μmのポリエステルフィルム(ポリエステルフィルム3:PE3)を作製した。
【0217】
ポリエステルフィルム3の平衡含水率は、1%であった。
【0218】
(ポリエステルフィルム4)
ポリエステルCのペレットを150℃で8時間真空乾燥し、押出機を用いて290℃で溶融押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、95℃で縦方向に1.5倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0219】
得られた一軸延伸フィルムを、テンター式横延伸機を用いて105℃で横方向に4.5倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、さらに第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ10μmのポリエステルフィルム(ポリエステルフィルム4:PE4)を作製した。
【0220】
ポリエステルフィルム4の平衡含水率は、0.5%であった。
【0221】
(比較PETフィルム)
市販の膜厚40ミクロンのポリエチレンテレフタレートフィルム(略称PET)を用いた。平衡含水率は0.1%であった。
【0222】
〔長尺ロール状偏光板の作製〕
(水系接着剤:ウレタン系接着剤:U1と略す)
ウレタン樹脂の水系エマルジョン(DIC(株)製ハイドランAP−20)
100質量部
多官能グリシジルエーテル(DIC(株)製CR−5L) 5質量部
(偏光子の作製と貼り合わせ)
厚さ120μmの長尺ロール状ポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に製膜方向に延伸して、長さ1500mの長尺状偏光子を作製した。
【0223】
次に、上記水系接着剤を用いて、偏光子の透過軸とフィルムの面内遅相軸が平行になるように偏光子の片面にポリエステルフィルムを、ローラーで偏光子とポリエステルフィルムの端から過剰の接着剤及び気泡を取り除き貼り合わせた。ローラーの圧力は20〜30N/cm、スピードは約2m/分で貼合した。次いで、80℃の乾燥機中に前記貼り合わせた試料を2分間乾燥した。
【0224】
次いで、下記組成の粘着性材料を調製し、偏光子のポリエステルフィルムを貼合した面とは反対側の面上にナイフ式塗工機で塗布したのち、紫外線照射を行い90℃で1分間乾燥処理して粘着層を形成し、長尺ロール状偏光板1〜10を作製した。
【0225】
(粘着層組成:N1と略す)
アクリル系共重合体:アクリル酸ブチル及びアクリル酸を、質量95:5の割合で用い、常法に従って重合してなる、重量平均分子量180万の共重合体 100質量部
多官能アクリレート系モノマー:トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート
(東亞合成社製、商品名「アロニックスM−315」) 15質量部
光重合開始剤:イルガキュア500(BASFジャパン社製) 1.5質量部
イソシアネート系架橋剤:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート
(日本ポリウレタン社製「コロネートL」) 1質量部
シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(信越学工業社製「KBM−403」) 0.2質量部
(プロテクトフィルム、セパレートフィルム)
更に、表1に示すようにポリエステルフィルム上にプロテクトフィルムを、粘着層上にセパレートフィルムを貼合し、ロール状に巻き取った。
【0226】
〔液晶表示パネルの作製〕
図2〜図4に示した「ロールtoパネル製法」によって、上記作製した長尺ロール状偏光板を繰り出して液晶パネル上に貼合し、COレーザーを用いたレーザーカッターで液晶パネルサイズに切断し、液晶表示パネルを作製した。
【0227】
《評価》
(液晶表示パネル加工適性)
液晶表示パネル作製時における、偏光板と液晶パネルとの貼合時のシワやヨレの有無を目視で観察した。
【0228】
◎:貼合時にシワやヨレがなく歩留まりがよい
○:貼合時にシワやヨレがややあるが、実用上歩留まりに問題がない
△:貼合時にシワやヨレがあり、歩留まりが低い
×:貼合時にシワやヨレが顕著に発生し、歩留まりが非常に低い
評価結果を表1に示す。
【0229】
【表1】

【0230】
表1から、本発明の長尺ロール状偏光板1〜7は比較例8〜10に対し、液晶表示パネル加工適性に優れ、歩留まりがよいことが分かる。
【0231】
また、製造された液晶表示パネルの性能ばらつきも小さかった。
【0232】
実施例2
〔IPSモード型液晶表示装置の作製〕
市販のIPSモード型液晶テレビ(パナソニック製26インチ液晶テレビ、TH−26LX60)の両面の偏光板を剥がして上記作製の偏光板を図1のように両面に貼りつけて液晶表示装置を作製した。その際、その偏光板の貼合の向きは、購入時に予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置を作製した。
【0233】
作製した液晶表示装置の視認性(色ムラ、光漏れ、コントラスト)を目視で評価したところ、本発明の長尺ロール状偏光板を用いた液晶表示装置は比較に対して視認性が優れていた。
【符号の説明】
【0234】
1 保護フィルムA(透湿性ポリエステルフィルム)
2 PVA偏光子
3 粘着層
4 長尺ロール状偏光板
5 液晶パネル
F1 第1シート製品
F2 第2シート製品
F11 第1長尺ロール
F21 第2長尺ロール
M1 液晶パネルの供給装置
M2 第1長尺ロールの供給装置
M3 第1貼合装置
M4 搬送供給装置
M5 第2長尺ロールの供給装置
M6 第2貼合装置
10 制御装置
12 第1搬送装置
14 第1欠点検査装置
16 第1切断装置
18 第1貼合装置
19 第1排除装置
20 旋回機構
22 第2搬送装置
24 第2欠点検査装置
26 第2切断装置
28 第2貼合装置
29 第2排除装置
R0 長尺原反のロール
R1 第1長尺ロール
R2 第2長尺ロール
R 搬送機構
W 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の一方の面に保護フィルムAを有し、他方の面に粘着層を有する偏光板において、該保護フィルムAが透湿性ポリエステルフィルムであることを特徴とする長尺ロール状偏光板。
【請求項2】
前記偏光子がポリビニルアルコール系樹脂を延伸したものであり、水系接着剤で前記保護フィルムAと貼合されたものであることを特徴とする請求項1に記載の長尺ロール状偏光板。
【請求項3】
前記長尺ロール状偏光板がプロテクトフィルムもしくはセパレートフィルムを有し、いずれか一方もしくは両方が透湿性フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の長尺ロール状偏光板。
【請求項4】
偏光板を液晶パネルに貼合する液晶表示装置の製造方法において、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の長尺ロール状偏光板を液晶パネルに貼合する際に、該偏光板を所望のサイズにレーザーによってカットすることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の長尺ロール状偏光板を液晶パネルの少なくとも一方の面に貼合したことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
前記液晶表示装置がIPSモード型液晶表示装置であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−58433(P2012−58433A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200612(P2010−200612)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】