説明

長尺材ガス圧接機

【課題】レールが微妙に捻れているような場合でも、隙間が発生しないようにして効率的に圧接作業が行えるようにする。
【解決手段】レールの両側部に当接するパッド部39,40と、該パッド部39,40が少なくともレールの捻れに応じて揺動して、当該パッド部39,40の作用面がレールの両側部に面接するように該パッド部39,40を揺動自在に支持するチャック本体38とを設けて、レールが微妙に捻れているような場合でも、パッド部39,40がこの捻れに応じて揺動してレール側部との間に隙間が発生しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の長尺材(例えば2本のレール)をクランプして突合わせ、この状態で加熱しながら加圧することにより圧接を行う長尺材ガス圧接機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2本のレールをそれぞれクランプして端部を突合わせ、この端部をガスバーナーで加熱しながら荷重を増大させることにより当該2本のレールを圧接する長尺材ガス圧接機が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記公報における長尺材ガス圧接機100は、図12に示すように、加圧用シリンダ101が取り付けられた支持フレーム102、圧接する一方のレールR1(以下、このレールを固定レールR1という)をクランプして突合荷重を受け止める固定フレーム106、圧接する他方のレールR2(以下、このレールを移動レールR2という)をクランプすると共に長尺材ガス圧接機100の筐体に固定された加圧用シリンダ101のシリンダヘッドが連結されて当該シリンダヘッドに応じて進退する移動フレーム103等を有している。
【0004】
そして、支持フレーム102と固定フレームと106との間に複数のガイドシャフト107が掛け渡されて、このガイドシャフトに移動フレーム103が挿嵌し、加圧用シリンダ101が駆動されると当該ガイドシャフトに案内されて移動フレームが移動するようになっている。
【0005】
また、固定フレーム106と移動フレーム103との間には、接合部位の加熱源であるガスバーナーを支持するバーナーケース105が3本のガイドシャフト107に上方から被せる着脱方式で設置されている。
【0006】
固定フレーム106と移動フレーム103は、略同じ構造に形成されて、それぞれ固定レールR1及び移動レールR2をクランプするためのクランプ用シリンダ108,104を備えている。
【0007】
図13は固定フレーム106の正面図を示した図で、略中央に形成されたレール収容部112、固定フレーム106の本体に固定されるチャック113、クランプ用シリンダ108のシリンダヘッドに固定されたチャック111を主要構成として、レール収容部112に収容された固定レールR1をクランプ用シリンダ108の力でチャック113とチャック111とで挟み込んでクランプするようになっている。
【0008】
このように固定フレーム106にクランプされた固定レールR1と移動フレーム103にクランプされたレールR2との端部を突合わせし、その突合部分をバーナーケース105内の図示しないガスバーナーにより加熱しながら、加圧用シリンダ101により移動フレーム103に固定フレーム106の方向に加重を加えて固定レールR1と移動レールR2とを圧接するようになっている。
【特許文献1】特開平05−237669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、レールには、捻れ、曲がり、寸法バラツキ等が存在するものの、従来のチャックはこれらの特性に対応する機能が無いため、十分にクランプできなかったり、レールに傷が付いたりする場合があると共に、クランプ力がレールの回転力として作用してしまい圧接部分で両レールR1,R2が位置ズレを起こしてしまう等の不都合があり、圧接作業の作業効率を低下させてしまう問題があった。
【0010】
このことを図14、図15を参照して説明する。レールの圧接は、レールの継ぎ目を列車が通過する際の音の低減を抑制することが主目的として行われるため、両レールR1,R2の圧接端は厳密に位置合わせして圧接が行われる。
【0011】
しかし、上述したように例えば捻れがあると(図14参照)、従来のチャック構造ではこの捻れに対応できないため、図15(a)に示すように、捻量に応じた隙間Sが発生してしまう。
【0012】
従って、クランプ力は点荷重として移動レールR2に作用してしまい、当該移動レールR2を傷つけたり、十分にクランプできない場合が発生することがある。
【0013】
また、図15(b)に示すように、チャック113とチャック111との作用点を結ぶ直線L1がクランプ力の作用線L2とずれるため、クランプ力は移動レールR2の回転力ωとして作用する。このため圧接端の位置がずれてしまう不都合が生じる。
【0014】
従来においては、係る不都合を防止するために、隙間SにシムKを詰めて、レールに一様な荷重が作用するようにしているが、かかる作業にはトライアンドエラーや経験が必要になり圧接作業の作業効率を低下させてしまう。
【0015】
そこで、本発明は、レールが微妙に捻れているような場合でも、隙間が発生しないようにして高品質な圧接を効率的に行えるようにした長尺材ガス圧接機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、複数の長尺材のそれぞれの一端近傍における両側部にチャックを当接させて各長尺材をクランプすると共に、各長尺材の端部を突合わせ、加熱しながら加圧することにより複数の長尺材を圧接する長尺材ガス圧接機において、一方の長尺材をクランプするチャックが、この長尺材の両側部に当接するパッド部と、長尺材の捻れに応じてパッド部が揺動できるように揺動自在にパッド部を支持するチャック本体とを備えることを特徴とする。
【0017】
これにより、長尺材に捻れ等が存在しても、この捻れに応じてパッド部が揺動するため、当該パッド部が長尺材の側部に面接して効果的にクランプすることができ高品質な圧接が効率的に行えるようになる。
【0018】
また、請求項2にかかる発明は、パッド部とチャック本体とが同一形状の円弧面を備えてパッド部の円弧面がチャック本体の円弧面上を面接摺動し、かつ、当該摺動方向に沿ってパッド部に係合部が設けられると共にチャック本体には係合部と遊嵌する被係合部が設けられてパッド部とチャック本体とが揺動可能に係合していることを特徴とする。
【0019】
チャック本体部に対してパッド部が面接して揺動するため、クランプ力は均一にパッド部に伝達されて、長尺材を一様な力でクランプできるようになり、長尺材に捻れ等が存在しても、高品質な圧接が効率的に行えるようになる。
【0020】
また、請求項3にかかる発明は、少なくともチャック本体における被係合部の硬度が、パッド部における係合部の硬度より適宜大きい硬度に設定されていることを特徴とする。
【0021】
これにより、チャック本体とパッド部とが係合する構成としても、当該係合機構で囓りが発生し難くなり、信頼性が向上する。
【0022】
また、請求項4にかかる発明は、パッド部とチャック本体との円弧面を潤滑すると共に係合部と被係合部との係合面を潤滑する潤滑剤を供給する潤滑剤供給部を設けたことを特徴とする。
【0023】
これにより、摺動面に潤滑剤が供給可能になり、かじりつきや焼き付き等が防止できると共に、長尺材の捻れが微妙でもパッド部は滑らかに揺動できるようになり、高品質な圧接が効率的に行えるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、一方の長尺材をクランプするチャックが、この長尺材の両側部に当接するパッド部と、長尺材の捻れに応じてパッド部が揺動できるように揺動自在にパッド部を支持するチャック本体とを備えるので、長尺材が微妙に捻れているような場合でも、パッド部と長尺材の側部との間に隙間が発生しないようになり、効果的にクランプできて高品質な圧接が効率的に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態を図を参照して説明する。図1は本発明に係る長尺材ガス圧接機1の側面図である。なお、本実施例では長尺材としてレールを例に説明するが、他の部材の接合に利用しても良いことを予め付言する。
当該長尺材ガス圧接機1は、移動レールR2の開放端(非圧接側の端部)が載置されて、当該移動レールR2の水平面内傾き(固定レールR1との直線性)、高低、回転の各調整を行う小返装置5、固定レールR1及び移動レールR2をクランプして、移動レールR2を固定レールR1の方向に押圧して圧接する圧接機6、固定レールR1の開放端(非圧接側の端部)が載置されて、当該固定レールR1の高低調整を行う固定側端部支持装置7を主要構成として、小返装置5及び圧接機6は敷設された圧接機移動レール8上を移動するようになっている。
【0026】
図2は圧接機6の側面図、図3はその上面図である。当該圧接機6は、加圧用シリンダ11、支持フレーム12、移動フレーム13、端面研削部14、バーナー部15、固定フレーム16、上下調整部17を主要構成として、支持フレーム12と固定フレーム16との間に掛け渡された上下2本づつのガイドシャフト18に移動フレーム13、端面研削部14及びバーナー部15が挿嵌して、当該ガイドシャフト18に沿って移動可能に設けられている。
【0027】
固定フレーム16は、圧接機筐体20に固着されて、固定レールR1の一端近傍(圧接端近傍)をクランプする。図4はかかる固定フレーム16の正面図であり、固定フレーム本体22の上下四方端近傍にガイドシャフト18が固定され、略中央に固定レールR1が収容される固定レール収容孔23が形成されている。
【0028】
この固定レール収容孔23の左右には、水平に固定側チャック孔24(24a,24b)が形成され、各固定側チャック孔24に固定側チャック25(25a,25b)が挿嵌している。
固定側チャック25の端面は、鉛直面をなすように配置され、その作用面にはギザが形成されて固定レールR1の滑止め作用をなしている。
【0029】
そして、この固定側チャック25には、固定フレーム本体22に固着された固定レールクランプ用シリンダ26(26a,26b)の固定側シリンダヘッド27(27a,27b)が連結されて、当該固定側シリンダヘッド27の進退に伴い固定側チャック25が進退するようになっている。
【0030】
なお、左右の固定レールクランプ用シリンダ26はそれぞれ独自に動作するように設けられて、固定レールR1をクランプする際には、例えば図4において右側の固定レールクランプ用シリンダ26aを最初に動作させて、これに連結されている固定側チャック25aの作用面が所定位置になるようにして停止する。
【0031】
固定レールクランプ用シリンダ26aを停止させる際には、作動油等の作動流体の流れが起きないように、流路を封止する。従って、固定レールクランプ用シリンダ26aを停止させると、外力が加わっても固定側チャック25aの位置は変動しなくなる。
【0032】
なお、固定側チャック25aの作用面が所定位置とは、固定レール収容孔23の中心から固定レールR1の脚柱部28の厚みtの半分だけ右側の位置で、固定レールR1が作用面に当接した際に、予め設定された圧接中心位置と固定レールR1の中心位置とが一致する位置である。
無論、圧接する固定レールR1における脚柱部28の厚みに応じて適宜設定できるようになっている。
【0033】
次いで、左側の固定レールクランプ用シリンダ26bを動作させて、これに連結されている固定側チャック25bを固定レールR1に当接させる。右側の固定レールクランプ用シリンダ26aが停止しているため、当接力は左右の固定側チャック25a,25bによるクランプ力となる。これにより固定レールR1はクランプされる。
【0034】
移動フレーム13は、図5に示すように、移動フレーム本体31を有し、その上下四方端近傍にガイドシャフト18が挿通するガイド孔32が形成され、略中央に移動レールR2が収容される移動レール収容孔33が形成されている。
【0035】
移動レール収容孔33の左右には水平に移動側チャック孔34(34a,34b)が形成され、各移動側チャック孔34に移動側チャック35(35a,35b)が挿嵌している。
この移動側チャック35の作用面には、固定側チャック25と同様にギザが設けられてクランプした際に滑り難くなっている。
【0036】
そして、この移動側チャック35には、移動フレーム本体31に固着された移動レールクランプ用シリンダ36(36a,36b)の移動側シリンダヘッド37(37a,37b)が連結されて、当該移動側シリンダヘッド37の進退に伴い移動側チャック35が進退するようになっている。
【0037】
図10は移動側チャック35の分解斜視図で、移動側シリンダヘッド37と連結されるチャック本体38、該チャック本体38に遊嵌当接するチャック揺動体39、該チャック揺動体39にネジ止して取付られるパッド40等により構成されて、チャック揺動体39とパッド40がパッド部をなしている。
【0038】
チャック本体38における移動レールR2側の側面は、所定の曲率半径の円弧面(本体側揺動面)42に形成されると共に、長手方向の略中央部には円弧状の被係合部をなす凹部43が形成されている。
また、円弧面42の長手方向には溝切りされて各摺動面への潤滑剤を供給するための潤滑剤供給部41が形成されている。
【0039】
チャック揺動体39におけるチャック本体38側の側面は、当該チャック本体38の本体側揺動面42に面接摺動可能なように円弧面(揺動体側揺動面)44に形成されと共に、チャック本体38の凹部43に遊嵌する円弧状の係合部をなす凸部45が形成されている。また、チャック揺動体39の他方の側面は平面に形成されると共に、複数の雌ネジ孔48が形成されている。
【0040】
なお、チャック本体38に凹部43を設け、チャック揺動体39に凸部45を設けたが、逆にチャック本体38に凸部45を設け、チャック揺動体39に凹部43を設けてもよいことは言うまでもない。
【0041】
但し、凹部43又は凸部45の形状は、図10において拡大して示すように、その断面形状を台形状のように形成することで、遊嵌しても揺動方向以外には抜道がない構成とすることが好ましい。これはチャック本体38とチャック揺動体39とを、凹部43と凸部45とで係合させながら自然離脱を防止するためである。
【0042】
また、チャック揺動体39がチャック本体38に対して揺動した際に、凸部45と凹部43とが囓り合わないように、少なくとも当該凸部45と凹部43との硬度を変えることが好ましく、メンテナンスの観点からチャック本体38の凹部43の硬度をチャック揺動体39の凸部45の硬度より適宜小さい値にすることが好ましい。
【0043】
このように硬度を変える方法としては種々考えられるが、例えば同じ材質でも焼き入れの違いにより硬度差が発生するので、この方法を利用したり、硬度の異なる材質を用いてチャック揺動体39がチャック本体38を形成しても良い。
【0044】
パッド40は概略矩形平板状で、作動面(チャック揺動体39と反対側の面)にはギザが形成されて滑止46が形成されると共に、当該パッド40をチャック揺動体39にネジ止めする際の貫通孔及びネジ頭部を収容するネジ頭部収容穴からなるネジ孔47が形成されている。
【0045】
そして、左右の移動レールクランプ用シリンダ36はそれぞれ独自に動作するように設けられて、移動レールR2をクランプする際には、例えば図5において右側の移動レールクランプ用シリンダ36aを最初に動作させて、これに連結されている移動側チャック35aにおけるパッド40の作用面が所定位置になるようにして停止する。
【0046】
移動レールクランプ用シリンダ36aを停止させる際には、作動油等の作動流体の流れが起きないように、流路を封止する。
【0047】
なお、移動側チャック35aの作用面が所定位置とは、移動レール収容孔33の中心から移動レールR2の脚柱部28の厚みtの半分だけ右側の位置で、移動レールR2が作用面に当接した際に、予め設定された圧接中心位置と移動レールR2の中心位置とが一致する位置である。
無論、圧接する移動レールR2における脚柱部28の厚みに応じて適宜設定できるようになっている。
【0048】
次いで、左側の移動レールクランプ用シリンダ36bを動作させて、これに連結されている移動側チャック35bを移動レールR2に当接させる。右側の移動レールクランプ用シリンダ36aが停止しているため、当接力は左右の移動側チャック35a,35bによるクランプ力となる。これにより移動レールR2はクランプされる。
【0049】
加圧用シリンダ11は、図3に示すように、移動レールR2を挟むように2機設けられて、それぞれ圧接機筐体20に固定され、加圧用シリンダヘッド71はジョイントブロック72を介して移動フレーム13に連結されている。従って、当該加圧用シリンダ11が進退することにより、移動フレーム13は圧接機筐体20に対してガイドシャフト18に案内されながら進退することになる。
【0050】
端面研削部14は、移動フレーム13の固定フレーム13側の前面に設けられている。そして、この端面研削部14には、図示しない押抜バイト部材が着脱自在に設けられて、圧接による余盛りを押抜くことにより、この余盛りを除去するようになっている。
【0051】
バーナー部15は、圧接する際にレールの圧接端部を当該レールの融点より低い温度に加熱するものである。
【0052】
また、図1等に示すように、上下調整部17は、支持フレーム12と移動フレーム13との間に設けられて移動レールR2における圧接端部側の高さ位置を調整する移動側上下調整部17a及び、固定フレーム16に隣接して設けられて固定レールR1における圧接端部側の高さ位置を調整する固定側上下調整部17bからなっている。
【0053】
そして、これら上下調整部17は調整ハンドルを回すことによりレールの底面が所望の高さになるように調整できるようになっている。
【0054】
小返装置5は、移動レールR2の開放端(非圧接側の端部)を支持して、当該移動レールR2の水平面内傾き、高低、回転の各調整を行うもので、直線性調整部51、高低調整部55、回転調整部58から構成されている。図6は小返装置5の側面図であり、図7は直線性調整部51の構成図、図8は高低調整部55の構成図、図9は回転調整部58の構成図である。
【0055】
直線性調整部51は、図7に示すように、移動レールR2を挟むように設けられた左右一対の衝立52、該衝立52を水平移動させる移動機構53を備えて、当該移動機構53のハンドル54を回すと衝立52が動き、これに伴い移動レールR2が水平面内で傾動き固定レールR1との直線性が調整されるようになっている。
【0056】
高低調整部55は、図8に示すように、コロ56、該コロ56を上下動させるジャッキ機構57を備えている。そして、ジャッキ操作によりコロ56の高さを変えることで、このコロ56に乗っている移動レールR2の高さを調整できるようになっている。
【0057】
回転調整部58は、図1に示すように、レール規制部材59及びジャッキ機構60を備えている。このレール規制部材59は、下に開放したU字状の部材で、その端部61(61a,61b)はジャッキ機構60に回転可能に連結されている。また、レール規制部材59の内側には、移動レールR2の底面が載置される底ローラ対62、移動レールR2の側面と当接可能に設けられた側ローラ対63が設けられている。
【0058】
そして、例えば移動レールR2を反時計回り(図9において反時計回り)に回転させる場合には、ジャッキ機構60を操作してレール規制部材59の右側端部61aを上げる。これによりレール規制部材59は、左側端部61bを回転中心として反時計回りに回転し、これに伴い底ローラ対62のなす軸線も水平線に対して回転する。底ローラ対62には移動レールR2が載置されているので、底ローラ対62の回転に追従して移動レールR2も回転する。
【0059】
固定側端部支持装置7は、図1に示すように、ローラ65及びジャッキ機構66を有して、固定レールR1における開放端の底面をローラ65に載置して、ジャッキ機構66を操作して当該開放端の高さ調整が行われる。
【0060】
このような構成の長尺材ガス圧接機1におけるレール圧接手順を説明する。先ず、クレーン等により固定側端部支持装置7及び固定側上下調整部17bにレールを載置し、これを固定レールR1とする。同様に小返装置5及び移動側上下調整部17aにレールを載置し、これを移動レールR2とする。
【0061】
そして、移動側上下調整部17a及び固定側上下調整部17bを調整して固定側レールR1と移動側レールR2との端面を合わせる。
【0062】
このとき、固定フレーム16における一方の固定側チャック25a(25b)を所定位置まで進退させて停止させ、この固定側チャック25a(25b)に固定側レールR1の接合端部近傍を当接させる。同様に移動フレーム13における一方の移動側チャック35a(35b)を所定位置まで進退させて停止させ、この移動側チャック35a(35b)に移動レールR2の接合端部近傍を当接させる。
【0063】
なお、移動側チャック35a(35b)に移動レールR2を当接させる際に、当該移動側チャック35a(35b)のチャック揺動体39が揺動してパッド40が移動レールR2の側部に面接させる。
【0064】
この状態で、固定側端部支持装置7及び小返装置5の高低調整部55を用いて固定レールR1及び移動レールR2の水平度を調整し、また小返装置5の直線性調整部51を用いて移動レールR2が固定レールR1の延長線上に位置するように水平面内傾きを調整する。
さらに、小返装置5の回転調整部58により移動レールR2の捻れに応じて当該移動レールR2を回転させる。
以上により固定レールR1と移動レールR2との接合端の位置合わせが完了する。
【0065】
なお、圧接する端面が必ずしも平面であるとは限らず、またレールの長さ方向に対して直交面をなしているとは限らない。さらに、当該端面が錆びているような場合もある。このような場合には、図示しない仮クランプ機構によりレールを支持し、グラインダー等により端面調整した後、上記位置合わせ調整することが好ましい。
【0066】
固定レールR1と移動レールR2との端面位置の位置合わせが終了すると、固定フレーム16の他方の固定側チャック25b(25a)を進退させて固定レールR1に当接させて当該固定レールR1をクランプすると共に、移動フレーム13の他方の移動側チャック35b(35a)を進退させて移動レールR2に当接させて当該移動レールR2をクランプする。
【0067】
移動側チャック35b(35a)が移動レールR2に当接する際には、当該移動側チャック35b(35a)のチャック揺動体39が揺動して、そのパッド40が移動レールR2の側部に面接する。
【0068】
従って、図11に示すように、移動レールR1に捻れが存在していても、均一な力で当該移動レールR1をクランプすることができ、十分な力でクランプできるようになると共に、移動レールR1に傷が付いたりすることが防止できる。また、クランプ力が移動レールR1の回転力として作用しないので、圧接箇所での固定レールR1と移動レールR2との位置ズレも防止することが可能になる。
【0069】
このようにして固定レールと移動レールとの位置合わせ及びクランプが完了すると、バーナー部15により圧接箇所を融点近傍まで加熱し、加圧用シリンダ11を動作させて移動レールR2を固定レールR1側に加圧する。これにより、圧接面で融着が起きて接合される。
【0070】
なお、圧接が端面全体で生じていることを保証することを勘案して、圧接部分に適宜余盛りが生じるまで加圧を行う。無論、かかる余盛りは、レールの機能として不要であるので、圧接終了後に端面研削部14により除去する。
その後、圧接処理等による応力の偏在を緩和すべく、加熱処理を行い、冷却して、一連の圧接作業が終了する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明にかかる長尺材ガス圧接機の側面図である
【図2】圧接機の側面図である。
【図3】圧接機の上面図である。
【図4】固定フレームの正面図である。
【図5】移動フレームの正面図である。
【図6】小返装置の側面図である。
【図7】小返装置における直線性調整部の正面図である。
【図8】小返装置における高低調整部の正面図である。
【図9】小返装置における回転調整部の正面図である。
【図10】移動側チャックの分解斜視図である。
【図11】捻れたレールをクランプした際の様子を示す図である。
【図12】従来の技術の説明に適用される圧接機の上面図である。
【図13】図12の圧接機における固定クランプの正面図である。
【図14】課題の説明に適用される捻れたレールの接合状態を示す図である。
【図15】図14のレールをクランプした際の問題点を説明する図である。
【符号の説明】
【0072】
1 長尺材ガス圧接機
5 小返装置
6 圧接機
7 固定側端部支持装置
8 圧接機移動レール
11 加圧用シリンダ
12 支持フレーム
13 移動フレーム
16 固定フレーム
22 固定フレーム本体
23 固定レール収容孔
24(24a,24b) 固定側チャック孔
25(25a,25b) 固定側チャック
26(26a,26b) 固定レールクランプ用シリンダ
27(27a,27b) 固定側シリンダヘッド
31 移動フレーム本体
33 移動レール収容孔
34(34a,34b) 移動側チャック孔
35(35a,35b) 移動側チャック
36(36a,36b) 移動レールクランプ用シリンダ
37(37a,37b) 移動側シリンダヘッド
38 チャック本体
39 チャック揺動体
40 パッド
41 潤滑剤供給部
42 本体側揺動面
43 凹部
44 円弧面(揺動体側揺動面)
45 凸部
51 直線性調整部
55 高低調整部
58 回転調整部
71 加圧用シリンダヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の長尺材のそれぞれの一端近傍における両側部にチャックを当接させて各長尺材をクランプすると共に、各長尺材の端部を突合わせ、加熱しながら加圧することにより複数の長尺材を圧接する長尺材ガス圧接機において、
一方の長尺材をクランプするチャックが、この長尺材の両側部に当接するパッド部と、
長尺材の捻れに応じてパッド部が揺動できるように揺動自在にパッド部を支持するチャック本体とを備えることを特徴とする長尺材ガス圧接機。
【請求項2】
パッド部とチャック本体とが同一形状の円弧面を備えて、パッド部の円弧面がチャック本体の円弧面上を面接摺動し、かつ、当該摺動方向に沿ってパッド部に係合部が設けられると共にチャック本体に係合部と遊嵌する被係合部が設けられてパッド部とチャック本体とが揺動可能に係合していることを特徴とする請求項1記載の長尺材ガス圧接機。
【請求項3】
少なくともチャック本体における被係合部の硬度が、パッド部における係合部の硬度より適宜大きい硬度に設定されていることを特徴とする請求項2記載の長尺材ガス圧接機。
【請求項4】
パッド部とチャック本体との円弧面を潤滑すると共に係合部と被係合部との係合面を潤滑する潤滑剤を供給する潤滑剤供給部を設けたことを特徴とする請求項2又は3記載の長尺材ガス圧接機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−281261(P2006−281261A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103576(P2005−103576)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000153720)株式会社白山製作所 (36)
【Fターム(参考)】