説明

長尺材移送装置および長尺材移送方法

【課題】多くの長尺材に連続してかつ容易に、その一方側端部に第1コイルを形成した後、他方側端部に第2コイルを形成することができ、効率よく巻線加工できて生産効率の向上を図れる長尺材移送装置および長尺材移送方法を提供する。
【解決手段】長尺材移送装置50を、第1コイル用巻線加工ライン25および第2コイル用巻線加工ライン26の延長線上に配置され、平角線Wを第1コイル用巻線加工ライン25の延長線上で一端部から搬入して収容するコイル導入ガイド52と、このコイル導入ガイド52を第1コイル用巻線加工ライン25の延長線上から第2コイル用巻線加工ライン26の延長線上に移動させるガイド本体移送機構60と、第2コイル用巻線加工ライン26の延長線上でコイル導入ガイド52から平角線Wをその他端部から第2コイル用巻線加工ライン26に送り込む平角線導入・送出ユニット70とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺材移送装置および長尺材移送方法に係り、より詳しくは、例えば、平角線等の長尺材の一方側端部に角巻して形成された角巻部が角筒状に積層された状態の積層コイルを形成し、他方側端部にも同じように積層コイルを形成する際、その積層コイル形成部が一箇所に配置されている設備に併設して用いると好適な長尺材移送装置および長尺材移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、線材等の長尺材を移送、あるいは移送させる装置として、例えば、連続する長尺の柔軟リール材を連続して送り出すと共に所定寸法で切断し、切断したリール片を搬出装置に搬出する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
この公報に開示された技術では、一対の爪部でリール材の先端を把持してリールストッカから引き出し、長尺な案内溝部を経由させて定寸法で切断し、順次送り出すものである。
【0003】
また、他の従来例として、例えば、連結コイル形成装置が知られている。
この連結コイル形成装置では、平角線等の長尺材の一方側端部に角巻して形成された角筒状の積層コイルを第1のコイルとして形成すると共に、他方側端部にも同じように積層コイルを第2のコイルを形成し、これらの第1のコイルおよび第2のコイルを同一面上で並列状態にして連結コイルを形成する巻線機を備えて構成されている。
【0004】
この連結コイル形成装置では、巻線機に装備された固定治具に長尺材の一方側側面を押し当てた後、他方側端部を巻線機に装備された巻治具で押圧した状態で90度の曲げ加工を行い、かつその曲げ加工を繰り返し実行して、長尺材の一方側端部に前記第1コイル、他方側端部に前記第2コイルを形成し、最終的に、それらの第1コイルおよび第2コイルからなる前記連結コイルが形成されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−85833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献1に開示された技術では、長尺材である柔軟リール材を連続して送り出すと共に所定寸法で切断し、その後、その切断した柔軟リール材を順次送り出すものであり、柔軟リール材の一方側端部および他方側端部に所定の加工を実行するものではない。したがって、特許文献1に開示された技術では、例えば、平角線等の長尺部材の一方側端部に角巻して形成された積層コイルを第1のコイルとして形成し、他方側端部にも同じように積層コイルを第2のコイルとして形成することはできない。
【0007】
ところで、前記他の従来技術において、平角線等の長尺材の一方側端部に第1コイル、他方側端部に第2コイルを形成するためには前述のように巻線機が必要である。この巻線機は同じような形状の積層状のコイルを形成するため略同じ構造とすることができる。
そのため、例えば、巻線機を1台だけ配設しておいて、その巻線機により長尺材の一方側端部に第1コイルを形成した後、その長尺材を巻線機から取り外す等して反転させて向きを変え、今度は長尺材の他方側端部から巻線機に送り込み、その他方側端部に第2コイルを形成することが考えられる。
【0008】
ところが、上記コイル形成装置では、1本の長尺材の一方側端部に第1コイルを形成した後に、その長尺材の向きを変え、他方側端部から再度巻線機にセットして第2コイルを形成しなくてはならず、第1コイル形成と第2コイル形成との間に時間的なロスが多い。そのため、巻線加工の効率が悪く、生産効率の低下に結びつくという問題がある。その結果、例えば、短期間に多くの連結コイルを必要とする場合等に対応することができない。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するために提案されたものであり、多くの長尺材に連続してかつ容易に、その一方側端部に第1コイルを形成した後、他方側端部に第2コイルを形成することができ、効率よく巻線加工できて生産効率の向上を図れる長尺材移送装置および長尺材移送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の長尺材移送装置は、一端部に巻線加工された一方のコイルを有する長尺材を第1コイル用巻線加工ラインから搬入すると共に、前記第1コイル用巻線加工ラインに併設され前記長尺材の他端部に他方のコイルを巻線加工して前記一方のコイルとで並列の連結コイルを形成するための第2コイル用巻線加工ラインへ前記搬入した長尺材を送り込む長尺材移送装置であって、前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上に配置されると共に前記長尺材を前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上で一端部から搬入して収容する長尺材ガイド本体と、この長尺材ガイド本体を前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上から前記第2コイル用巻線加工ラインの延長線上に移動させるガイド本体移送機構と、前記第2コイル用巻線加工ラインの延長線上から前記長尺材をその他端部より前記第2コイル用巻線加工ラインへ送り込む長尺材送り込み機構と、を備えていることを特徴とした。
【0011】
また、本発明の長尺材移送方法は、一端部に巻線加工された一方のコイルを有する長尺材を第1コイル用巻線加工ラインから搬入すると共に、当該搬入した長尺材を、前記第1コイル用巻線加工ラインに併設され前記長尺材の他端部に他方のコイルを巻線加工し前記一方のコイルとで並列の連結コイルを形成するための第2コイル用巻線加工ラインに移送する長尺材移送方法であって、前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上に配置された長尺材ガイド本体に前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上で前記長尺材の一端部から搬入して収容する第1の工程と、前記長尺材が収容された前記長尺材ガイド本体を前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上から第2コイル用巻線加工ラインの延長線上に移送させる第2の工程と、前記第2コイル用巻線加工ラインの延長線上から前記長尺材を前記第2コイル用巻線加工ライン側に移送させる第3の工程と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の長尺材移送装置および長尺材移送方法によれば、一方のコイルを有する長尺材を第1コイル用巻線加工ラインから長尺材ガイド本体に搬入し、その長尺材ガイド本体を、第1コイル用巻線加工ラインの延長線上から第2コイル用巻線加工ラインの延長線上に移動させ、その位置で、長尺材を長尺材ガイド本体から第2コイル用巻線加工ラインに移送させることで、第2コイル用巻線加工ラインにおいては第2のコイルを形成することができる。
長尺材ガイド本体を第1コイル用巻線加工ラインの延長線上から第2コイル用巻線加工ラインの延長線上に移動させた後、第1コイル用巻線加工ラインでは、次の連結コイル形成のために、次の長尺材の一方側端部に第1のコイルの巻線加工を開始することができる。第2コイルの巻線がすすみ、他端にある第1コイル部が長尺材ガイド本体から完全に外れたとき、長尺材ガイド本体を第2コイル用巻線加工ラインの延長線上から第1コイル用巻線加工ラインの延長線上に戻しておけば、一方のコイルを有する次の長尺材を長尺材ガイド本体に送り込み、以後、同様のサイクルで、長尺材の一方側および他方側端部にそれぞれ一方のコイル、他方のコイルを連続して形成することができる。
その結果、多くの長尺材に連続してかつ容易に、その一方側端部に第1コイルを形成した後、他方側端部に第2コイルを形成することができ、効率よく巻線加工できて生産効率の向上を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る長尺材移送装置を図面に基づいて説明する。
図1,2は、上記長尺材移送装置50が、隣接する巻線機ユニット21に併設され、両者50,21で連結コイル10(図15に詳細)を形成する連結コイル形成装置20を示す全体平面図および全体側面図である。
また、図3〜図13は、上記長尺材移送装置50の全体および部分詳細であり、図14は、長尺材移送方法のフローチャートであり、図15は上記連結コイル形成装置20によって成形された連結コイル10の全体斜視図である。
【0014】
まず、図1,2に基づいて巻線機ユニット21から説明する。
巻線機ユニット21は、素材供給領域である平角線供給部A側に配置されている。この巻線機ユニット21には、略平坦面となった上面22Aを有する巻線機架台22が設けられ、また、所定間隔を隔てて互いに平行に、第1コイル用巻線加工ライン(以下、第1ラインという)25と第2コイル用巻線加工ライン(以下、第2ラインという)26とが設けられている。
【0015】
これらの第1ライン25および第2ライン26は、巻線機ユニット21においてコイル素材としての平角線Wを供給するボビン(図略)等の前記平角線供給部A側端部から、前記長尺材移送装置50を構成する長尺材載置テーブル51の反対側端部にまで延びて設けられている。
なお、ここで、第1ライン25の平角線供給部A側を平角線Wの送り方向K1における流れの最上流とし、送り方向K1における流れの先側、つまり長尺材載置テーブル51側を下流とする。また、第2ライン26における送り方向K2の上記第1ライン25の下流と対向する位置を上流とし、第2ライン26における送り方向K2の流れの先側を最下流とする。
【0016】
そして、第1ライン25において、平角線Wの一端部を順次角巻して角筒状の前記第1コイル部11が形成されるようになっている。
また、第2ライン26においては、上記第1ライン25において形成された平角線Wの前記第1コイル部11の反対側端部に前記第2コイル部12が形成され、最終的に、両者11,12が並列した状態で前記連結コイル10が形成されるようになっている。
【0017】
第1ライン25において、前記巻線機架台22の上面22A、かつ平角線供給部A側には、第1コイル部11を形成するために供給された平角線Wを次の工程に送り出す第1線送り機27が配置されている。
【0018】
この第1線送り機27は、図1,2に示すように、上下に配置された一対のプーリ28と、これらのプーリ28をそれぞれ装着した一対の本体部29と、これらの本体部29に装備され一対のプーリ28を互いに反対方向に回転させる一対のモータ30とを備えて構成されている。
これにより、第1線送り機27では、一対のプーリ28を回転させた状態で、平角線供給部A側から供給された平角線Wを挟み込み、一対のプーリ28をそれぞれ逆方向に回転させ、平角線Wを次に送り込むように構成されている。
【0019】
巻線機架台22の上面22Aにおいて第1線送り機27の、平角線Wの送り方向K1の流れの下流側隣接位置には第1巻線ヘッド32が配置されている。この第1巻線ヘッド32は、巻線加工を実行するための固定治具と巻治具とを有し、固定治具に平角線Wの一方側側面を押し当て、平角線Wの一方側側面に巻治具を押圧した状態で90度回動させて曲げ加工が行われるようになっている。
そして、第1巻線ヘッド32では、前記第1線送り機27から送り出された平角線Wを、その一端部を順次角巻して角筒状の第1コイル部11が形成される。
なお、前記第2コイル部12の巻線工程の最終段階で、2個のコイル部11,12が接近した時に互いのコイル部11,12に干渉しないように、各巻線工程が始まる前に、図示しない機構等により、前記リード部11Aはコイル部11の表面に対して直交する方向に90°曲げられている(図15参照)。
【0020】
巻線機架台22の上面において、前記第1巻線ヘッド32の平角線送り方向K1の流れの下流側にはコイル送りガイド34が配置されている。このコイル送りガイド34は、第1巻線ヘッド32により巻線加工された第1コイル部11を先頭にして送り出された平角線Wを次の工程に送り出すためにガイドするものであり、第1巻線ヘッド32近傍から巻線機架台22の前記長尺材載置テーブル51側端部まで延びている。
また、コイル送りガイド34は、平角線Wが載置される底面部と、この底面部の幅方向両端に立設された側壁部とで構成され、長さ方向両端を前記巻線機架台22の上面22Aに立設された柱35で支持されている。
【0021】
巻線機架台22の上面において、第1巻線ヘッド32の平角線送り方向K1の流れの下流側にはカッターユニット36が配設されている。このカッターユニット36は、図示しない刃部(カッター)を有し、第1巻線ヘッド32で完成した第1コイル部11を上記コイル送りガイド34および長尺材載置テーブル51側に送った後、第2ライン26で第1コイル部11の反対側端部に第2コイル部12を形成するために必要な長さに平角線Wを切断するものである。
そして、以上のようなカッターユニット36は、コイル送りガイド34の長さ方向の途中位置に配設されている。
【0022】
また、巻線機ユニット21の第2ライン26には、長尺材移送装置50のコイル導入ガイド52から、後で詳細を説明する長尺材送り込み機構である平角線導入・送出ユニット70により送り出された平角線Wを受け取り、次に送り込む第2線送り機37が配設されている。この第2線送り機37は、前記第1線送り機27と同様に一対のプーリ28、本体部29等を備え、全体としては略同一の構造とされている。ただし、第2線送り機37は、第1線送り機27の配置の向きを180度変えた状態となるように配設されている。
【0023】
また、第2線送り機37では、本体部29および平角線Wを挟み込む前記一対のプーリ28が、平角線Wから離レール方向である平角線Wの送り方向と直交する方向のY軸方向に退避できる構造となっている。
すなわち、第2線送り機37には枠体38が設けられ、この枠体38は、Y軸方向に間隔を隔てて設けられた支持部材38Aと、これらの支持部材38Aに支持されると共に本体部29等をスライド可能にガイドするスライド軸38Bとで構成されている。
【0024】
第2ライン26における第2線送り機37の平角線Wの流れの最下流側隣接位置には、ヘッド送りユニット39が配置されている。
このヘッド送りユニット39は、前記第2線送り機37がY軸方向に退避した場合に、当該第2線送り機37に代わって平角線Wを最下流側に送り込むために設けられているものである。
【0025】
ヘッド送りユニット39は、平角線Wの送り方向に沿ってスライド自在となった板状の本体部40と、この本体部40を支持する枠体41とを備えて構成され、枠体41には本体部40をスライド駆動するモータ42が配置されている。
【0026】
ヘッド送りユニット39の本体部40の上面には第2巻線ヘッド43が配置されている。
第2巻線ヘッド43は、前記第2線送り機37あるいはヘッド送りユニット39から送り出された平角線Wの他端部に、当該他端部を順次角巻して角筒状の前記第2コイル部12を形成するものである。
この第2巻線ヘッド43は、前記第1巻線ヘッド32の構造と略同じとなっている。したがって、同一使用部材には同一符号を付す。ただし、第2巻線ヘッド43は、第1巻線ヘッド32の配置の向きを180度変えた状態となるように配置されている。
【0027】
巻線機架台22の第2ライン26に沿った上面22Aには、巻線機架台22における平角線Wの送り方向の両端にわたってコイル搬出ユニット44が設けられている。このコイル搬出ユニット44は、図2に示すように、水平なガイド部材46を備えた側面視略門型に形成され、このガイド部材46に沿って移動可能なチャック機構45が設けられている。
このチャック機構45には上下移動自在なチャック部が設けられ、このチャック部により、長尺材移送装置50から送られてきた所定位置の前記第1コイル部11を把持できるように構成されている。
【0028】
コイル搬出ユニット44は、上述のように所定位置で第1コイル部11を把持した後、第2巻線ヘッド43により第2コイル部12を形成して連結コイル10を完成させた後、第1コイル部11を把持したまま、所定の搬出位置Bまで移動できるようになっている。
【0029】
以上のような連結コイル形成装置20および長尺材移送装置50により形成された前記連結コイル10を、図15に基づいて説明する。
連結コイル10は、1本の平角線Wが、その長さ方向一方と他方の各端部側から角巻して当該角巻部が角筒状に積層された状態に形成された加工済み端部としての第1コイル部11および第2コイル部12を備えて形成されている。
この第1コイル部11および第2コイル部12間には、当該各コイル部11,12を同一面上で連結する連結部13が設けられ、この連結部13は、各コイル部11,12相互間に位置する前記平角線Wで形成されている。そして、第1コイル部11および第2コイル部12は、同一面において互いに並列状態に配置されている。
【0030】
次に、本発明の前記長尺材移送装置50の詳細を説明する。
長尺材移送装置50は、上述のように巻線機ユニット21に隣接して配設され、巻線機ユニット21における第1ライン25および第2ライン26の延長線上に配設されている。
【0031】
すなわち、図3〜6に示すように、長尺材移送装置50は、長尺材載置テーブルであるコイル載置テーブル51と、このコイル載置テーブル51に設けられ前記第1コイル部11を有する平角線Wをその長手方向に沿ってガイドして導入する長尺材ガイド本体であるコイル導入ガイド52とを備えて構成されている。
【0032】
コイル導入ガイド52は、コイル載置テーブル51の一端部から他端部までの全長より長い寸法に形成され、平角線Wを収容する底面部52Aと、この底面部52Aの幅方向両端に立設された側壁部52B,52BLとで形成されている。ただし、側壁部52B,52BLの高さを同じとなるように揃えてもよい。
以上のコイル導入ガイド52は、一端部に第1コイル部11が形成され、他端部が第2コイル部12を形成できる長さになっている平角線Wの全長より長く形成されている。
【0033】
以上のような構成のコイル導入ガイド52は、ガイド本体移送機構60によってコイル載置テーブル51上で第1ライン25の延長線上と第2ライン26の延長線上との間を往復移動できるようになっている。
すなわち、ガイド本体移送機構60は、コイル載置テーブル51の上面に、第1ライン25の延長線上側と第2ライン26の延長線上側とに間隔を置いて配置された板状の支持部材61と、移動方向に沿って延び、かつ上記支持部材61の両端側に架けわたされたガイド棒62と、コイル導入ガイド52の一側面に固着され当該コイル導入ガイド52をスライドさせるシリンダ63とを備えて構成されている。
【0034】
コイル導入ガイド52における底面部52Aの裏面には、両端のガイド棒62用の摺動ガイド64が設けられている。また、摺動ガイド64の一方の側面には、シリンダ63のロッド63Aに連結される連結部材65が設けられている。
ガイド本体移送機構60は、以上のような構成となっているので、シリンダ63を駆動させ、そのロッド63Aを前進、後退させることによって、コイル導入ガイド52が第1ライン25と第2ライン26との間を往復移動することができる。
【0035】
以上のような構成のコイル導入ガイド52には、コイル搬送トレイ53がスライド可能に設けられている。
コイル搬送トレイ53は、その上面に、平角線Wの一端部に形成された第1コイル部11を載置した状態で、コイル導入ガイド52の一端部から他端部までスライド移動できるようになっている。
【0036】
図7に示すように、コイル搬送トレイ53は、コイル導入ガイド52の底面部52A上をスライドできるような幅寸法と、前記平角線Wの一方側端部に形成された第1コイル部11を載置できる長さの平面長方形形状に形成され、その厚み寸法が、コイル導入ガイド52の前記一方の側壁部52Bの高さ寸法とほぼ等しい寸法(図8参照)に形成されている。
【0037】
このコイル搬送トレイ53には、その長さ方向に長く、かつ所定深さの凹部53Aが形成されており、さらにこの凹部53Aには、コイル搬送トレイ53の厚さ方向、つまり上下方向に貫通する貫通穴53Bがあけられている。
また、図12にも示すように、コイル導入ガイド52の巻線機ユニット21側端部には、上記貫通穴53Bと対応する同じ大きさの貫通穴52Cがあけられている。
【0038】
上記凹部53Aは、その幅寸法が第1コイル部11の送り方向と直交する方向の幅寸法より僅かに大きな寸法に形成されており、また、その深さ寸法は、前記平角線Wの厚さ寸法よりもわずかに深く形成され、第1コイル部11の最下部が嵌まり込むようになっている。
この凹部53Aの前記巻線機ユニット21側端部には、平角線Wを挿通可能な幅となってコイル搬送トレイ53の端部まで連続している溝部53Cが形成されている。
また、上記貫通穴53Bは、第1コイル部11の送り方向と直交する方向の内径寸法とほぼ同じ寸法に形成されている。
【0039】
図8〜11に示すように、コイル導入ガイド52の前記巻線機ユニット21側端部には、前記コイル搬送トレイ53を固定し、あるいは固定を解除するトレイ移送規制機構55が設けられている。
すなわち、トレイ移送規制機構55は、コイル導入ガイド52の前記底面部52Aの裏面に吊り下げ支持されたシリンダ56と、このシリンダ56のロッド56A先端に設けられ前記貫通穴53B,52Cに出没自在であると共に前記平角線Wの第1コイル部11の下面と係合し、当該第1コイル部11を突き上げるコイルリフタ57とを備えて構成されている。
【0040】
コイル導入ガイド52の底面部52Aの裏面には、コイル搬送トレイ53の平面四隅に相当する位置のそれぞれに柱58が下方に延びて取り付けられている。これらの柱58の下端同士は、コイル搬送トレイ53の平面形状と略同様形状の支持プレート59で連結されている。
【0041】
上記支持プレート59の中心位置には、前記ロッド56Aが上下方向に作用するように前記シリンダ56が設けられている。このシリンダ56は、コイルリフタ57を駆動させ、コイル搬送トレイ53の前記凹部53Aに収容された第1コイル部11の下面を突き上げるコイルリフタシリンダ56Cと、前記コイルリフタ57を上下駆動させコイル搬送トレイ53に係合させその動きをストップさせるトレイストッパシリンダ56Bとの二段構造となっている。
トレイストッパシリンダ56Bは、図8,10に示すように、コイルリフタ57を上昇させて貫通穴53Bに挿通させることで、コイル搬送トレイ53を固定させるようになっている。また、図9に示すように、コイルリフタ57を下降させたとき、コイル搬送トレイ53の固定が解除され、当該コイル搬送トレイ53がスライドできるようになっている。
【0042】
コイルリフタ57は、前述のようにロッド56Aの先端に設けられており、第1コイル部11の移動方向の外形より大きな寸法の長さ寸法と、前記貫通穴53B内を出没可能な幅寸法とを有する角ブロック状に形成されている。これにより、コイル搬送トレイ53の凹部53Aに収容された第1コイル部11を、貫通穴53Bの下方側から伸びてくるコイルリフタ57によって突き上げることができるようになっている。その結果、一方側端部に第1コイル部11が形成された平角線Wの高さが、巻線機ユニット21側の前記第2線送り機37による線送り高さと同一高さとなり、正常な姿勢で平角線Wの送出が行われるようになる。
また、トレイ移送規制機構55は、後に詳述するガイド本体移送機構60の支持部材61の高さに納まる寸法に構成されている。
【0043】
次に、図3〜図11に基づいて、長尺材移送装置50のコイル搬送トレイ53およびトレイ移送規制機構55の動作の説明をする。
【0044】
図7,8は、隣接する巻線加工ユニット21から送られてくる長尺材である平角線Wを受け取ってコイル導入ガイド52に導入する際の状態である。
このとき、トレイストッパシリンダ56の駆動によりコイルリフタ57がコイル搬送トレイ53の貫通穴53Bに入り込んでおり、コイル搬送トレイ53はその位置に固定されている。この状態のとき、巻線加工ユニット21から送られてきた第1コイル部11がコイル搬送トレイ53の凹部53Aに落ち込んで嵌りこみ、保持される。それと同時に、第1コイル部11に続く平角線Wが凹部53Aの巻線加工ユニット21側に延びた溝部53Cに入り込みガイドされる。
【0045】
その状態が図略のセンサ等で確認されたら、制御手段47からの指令により、図9に示すように、トレイストッパシリンダ56Bを駆動させ、コイルリフタ57を下降させて貫通穴53Bから離脱させ、コイル搬送トレイ53の固定状態を解除する。
そうすると、巻線加工ユニット21の前記第1線送り機27からの平角線Wの送りにより、コイル搬送トレイ53がコイル導入ガイド52の底面部52Aに沿ってスライド移動する。
この際、第1コイル部11がコイル搬送トレイ53の凹部53A内に収容された状態で第1コイル部11が直接ガイド本体と摺動することなく、かつ第1コイル部11に続く平角線Wが、コイル搬送トレイ53の厚さ分だけ浮き上がった状態で移動することになる。したがって、平角線Wとコイル導入ガイド52の底面部52Aとが接触することがないので摺れることがなく、平角線Wに擦れ跡が生じない。
【0046】
コイル搬送トレイ53がコイル導入ガイド52の送り方向先方の所定位置に達したことが図示しない検出手段により検出されたら、ガイド本体移送機構60(図3参照)を機能させて、コイル導入ガイド52を第1ライン25の延長線上から第2ライン26の延長線上に移動させる。
その後、第2ライン26の延長線上において、コイル搬送トレイ53が巻線加工ユニット21側に移動される。そして、図10に示すように、トレイストッパシリンダ56Bの駆動によりコイルリフタ57を貫通穴53Bに挿通させ、コイル搬送トレイ53の動きをストップして、当該コイル搬送トレイ53をコイル導入ガイド52の巻線機ユニット21側端部の位置に固定する。
【0047】
この図10と前記図8とは同じ状態である。ただし、図8では第1ライン25において巻線加工ユニット21から平角線Wを受け取り、コイル導入ガイド52に導入する状態であったのに対し、図10ではコイル導入ガイド52から平角線Wを巻線加工ユニット21に送り出す状態である。
【0048】
コイル搬送トレイ53のストップ状態から平角線Wを巻線加工ユニット21に送り出すには、図11に示すようにして行う。すなわち、トレイストッパシリンダ56Bおよびコイルリフタシリンダ56Cを駆動させてコイルリフタ57を上昇させ、そのコイルリフタ57により、コイル搬送トレイ53の凹部53Aに収容されている第1コイル部11を突き上げ、当該第1コイル部11および平角線Wの下面高さが、巻線加工ユニット21の前記第2線送り機37の一対のプーリ28間に挟み込まれるような高さとなるようにする。
【0049】
第1コイル部11が巻線加工ユニット21側に送り出されたら、コイルリフタ57を下降させた状態で、コイル導入ガイド52は第1ライン25の延長線上側に戻され、次に導入される第1コイル部11の待機状態が確保される。
なお、図7〜図11には、次に詳述する平角線導入・送出ユニット70についての図示はされていない。
【0050】
前記コイル導入ガイド52の一方側の側面(実施形態では、コイル導入ガイド52が第1ライン25の延長線上にあるとき第2ライン26の延長線上側の側面)には、図12,13に詳細を示すように、平角線導入・送出ユニット70が装備されている。
すなわち、平角線導入・送出ユニット70は、前記巻線機ユニット21の第1ライン25上のカッターユニット36で切断された平角線Wを、コイル導入ガイド52側に導入し、あるいはコイル導入ガイド52から、前記第2ライン26上の第2線送り機37に送り出すものである。
【0051】
平角線導入・送出ユニット70は、平角線Wを上下方向から挟み込んで把持するチャック機構71を装備している。このチャック機構71は、平角線W側先端にチャック部72を有するチャック本体73と、このチャック本体73を平角線W側との間で往復移動させる前後動シリンダ74と、チャック部72を上下方向に開閉させる開閉部材75とを備えて構成されている。
【0052】
前後動シリンダ74は支持体76に水平方向に支持され、そのロッド74A先端がチャック本体73に連結されている。開閉部材75は、チャック本体73の後部に水平に取り付けられ、この開閉部材75を駆動させることで、チャック部72が上下方向に開閉できる構造となっている。なお、支持体76は、次に述べるスライド部材77にボルト78で取り付けられている。
そして、ここにおいて、前記チャック部72からスライド部材77に至る連続番号の符号で示す各部材を含み前記チャック機構71が構成されている。
【0053】
以上のような構成のチャック機構71は、コイル導入ガイド52の長手方向に沿って移動できるようになっている。
すなわち、コイル導入ガイド52の下面には、基台80がボルト81によって取り付けられ、基台80のコイル導入ガイド52の長手方向両端には支持部材82が立設されている。この支持部材82は、スライド部材77の幅寸法と略同じ幅寸法に形成されている。
2個の支持部材82間には、左右に所定間隔で配置された2本のガイド棒83が架けわたされており、これらのガイド棒83に前記スライド部材77がスライド自在に挿通している。
また、これらの支持部材82のうち、巻線機ユニット21とは反対側の支持部材82には、前記チャック機構71をコイル導入ガイド52の長手方向に沿って往復移動させる往復動シリンダ84が水平方向に装備されている。
【0054】
したがって、往復動シリンダ84を駆動させ、そのロッド84Aを前進、または後退させることで、チャック機構71がコイル導入ガイド52の長手方向に沿って、また、支持部材82間、かつa位置とb位置との間において、矢印M3で示すように往復移動することになる。
【0055】
ここで、図12に基づいてa位置とb位置とを説明する。
コイル導入ガイド52が巻線機ユニット21の第1ライン25の延長線上において、チャック機構71がa位置、つまりコイル導入ガイド52の巻線機ユニット21側端部の位置にある状態のときは、巻線機ユニット21から送り出された第1コイル部11および平角線Wをコイル導入ガイド52内へ導入するために待機している待機位置である。
【0056】
これに対して、コイル導入ガイド52が巻線機ユニット21の第2ライン26の延長線上において、チャック機構71がb位置、つまりコイル導入ガイド52の巻線機ユニット21側端部の位置から離れた状態のときは、コイル導入ガイド52内の第1コイル部11および平角線Wを巻線機ユニット21側に送出するために待機している待機位置である。
【0057】
また、コイル導入ガイド52が巻線機ユニット21の第1ライン25の延長線上から第2ライン26の延長線上に移動する際は、チャック機構71はb位置にあり、平角線Wを把持した状態である。そのため、コイル導入ガイド52が巻線機ユニット21の第2ライン26の延長線上に移動された後、チャック機構71をb位置からa位置に移動させることで、コイル導入ガイド52から平角線Wを巻線機ユニット21の第2線送り機37に送り出すことができる。したがって、時間的な遅れが少なくてすむ。
【0058】
次に、以上のような平角線導入・送出ユニット70の作用を説明する。
コイル導入ガイド52が長尺材移送装置50において前記巻線機ユニット21の第1ライン25の延長線上にあり、コイル搬送トレイ53を介して一方側端部に第1コイル部11が形成されている平角線Wがコイル導入ガイド52に送り込まれ、所定位置まで導入されたとき、前記カッターユニット36が前進して平角線Wを切断する。このとき、第1コイル部より続く平角線Wは第2コイル12を形成するのに必要な長さとなっている。図12のaの位置で待機している平角線導入・送出ユニット70のチャック機構71の前記チャック部72が、図13の矢印M1で示すように前進し、かつ矢印M2で示すように閉じて平角線Wを把持する。その後、往復動シリンダ84の駆動により、チャック機構71をb位置まで後退させ、平角線Wを前記巻線機ユニット21からコイル導入ガイド52に導入する。
【0059】
一方、巻線機ユニット21の第2ライン26の延長線上においては、平角線Wの他端部を把持した状態のまま、往復動シリンダ84の駆動によりチャック機構71を巻線機ユニット21側に移動させ、平角線Wの他端部を第2線送り機37に送出させる。
【0060】
そして、図12において、チャック機構71を右側に移動させたときは巻線機ユニット21から平角線Wをコイル導入ガイド52内に導入する状態であり、チャック機構71を左側に移動させたときは平角線Wをコイル導入ガイド52内から巻線機ユニット21に送出する状態である。
【0061】
次に、前述のような構成の長尺材移送装置50による平角線Wの移送方法を、連結コイル形成装置20の作用と絡めて図14のフローチャートに基づいて説明する。
なお、上記フローチャートでは、次の工程に移行する際の判断基準については、すべてイエスであることを前提としている。
【0062】
連結コイル形成装置20による巻線加工が開始されると、長尺材移送装置50では、コイル載置テーブル51において、コイル導入ガイド52が巻線機ユニット21の第1ライン25の延長線上で待機しており、また平角線導入・送出ユニット70のチャック機構71は、巻線機ユニット21側端部位置のa位置で待機している。
【0063】
先ず、第1ライン25においては、第1コイル部11と第2コイル部12との巻線、つまり連結コイル10を形成するのに充分な長さの平角線Wを用意し、その平角線Wを、線材ボビン等の平角線供給部Aから供給するとともに、第1ライン25A上の第1線送り機27に送り込み、この第1線送り機27から平角線Wを第1巻線ヘッド32に送り込む。
【0064】
次いで、第1ライン25においては、平角線Wの先端を第1巻線ヘッド32にセットすると共に、その第1巻線ヘッド32の固定治具と巻治具との作用により90度の曲げ加工を実施する。この90度曲げ加工を繰り返し、所定の巻数まで巻上げて第1コイル部11を完成させる。
【0065】
その後、第1ライン25においては、完成した第1コイル部11および第2コイル部12形成用の平角線Wを平角線送り方向K1に沿って送り出し、第1コイル部11を第1巻線ヘッド32から引き出すと共に、平角線送り方向K1の下流側に移動させる。
この移動時、第1巻線ヘッド32から送り出された第1コイル部11および第2コイル部12形成用の平角線Wは、コイル送りガイド34を経由して、長尺材移送装置50におけるコイル載置テーブル51の第1ライン25の延長線上で待機しているコイル導入ガイド52上に導入される。
【0066】
この際、前述のように、コイル導入ガイド52では、トレイストッパシリンダ56Bの駆動によりコイルリフタ57が貫通穴53Bに入り込んでおり、コイル搬送トレイ53はその位置に固定されている。
そして、この状態のとき、巻線加工ユニット21から送られてきた第1コイル部11がコイル搬送トレイ53の凹部53Aに送り込まれる。
【0067】
その後、コイル搬送トレイ53の固定を解除することにより、前記第1線送り機27の送りによりコイル搬送トレイ53がコイル導入ガイド52の底面部52Aに沿ってスライドする。これにより、一方側端部に第1コイル部11が形成された平角線Wがコイル導入ガイド52へ導入される。
この際、第1コイル部11がコイル搬送トレイ53の凹部53A内に収容された状態でコイル導入ガイド52の底面と直接摺動することなく、かつ第1コイル部11に続く平角線Wが、コイル搬送トレイ53の厚さ分だけ浮き上がった状態で移動することになる。
【0068】
次に、第1ライン25においては、巻線機架台22上で、第2コイル部12形成用に充分な長さの平角線Wが引き出された後、カッターユニット36の駆動により平角線Wの送り方向後端部を切断する。
そして、このとき、平角線Wの後端部はコイル送りガイド34上にあるため、第1ライン25の延長線上かつ巻線機ユニット21側端部に待機している平角線導入・送出ユニット70のチャック機構71のチャック部72で、コイル導入ガイド52に収容されている平角線Wの後端部を把持し、往復動シリンダ84を駆動させてコイル送りガイド34から取り出し、把持した平角線Wをコイル導入ガイド52に導入し、平角線Wの全体をコイル導入ガイド52に収容する。そして、この工程が図14に示す第1の工程(ST−1)である。
【0069】
その後、図14に示す第2の工程(ST−2)として、コイル載置テーブル51においては、平角線導入・送出ユニット70のチャック機構71のチャック部72により平角線Wを把持した状態で、ガイド本体移送機構60の移動用シリンダ63を駆動させ、第1ライン25の延長線上にあるコイル導入ガイド52を第2ライン26の延長線上に移動させる。
【0070】
次いで、第2ライン26の延長線上においては、図14に示す第3の工程(ST−3)として、コイル導入ガイド52に収容されている平角線Wを巻線機ユニット21側に送り込むために、平角線導入・送出ユニット70のチャック機構71のチャック部72により把持した状態の平角線Wを、往復動シリンダ84を駆動させてチャック機構71を移動させ、巻線機ユニット21側に送り込む。
【0071】
第1コイル部11を含みコイル導入ガイド52に収容されている平角線Wの第2ライン26の下流側の線材端が平角線導入・送出ユニット70のチャック機構71の移動により第2線送り機37に送り込まれたら、チャック機構71は解除され後退する。第2線送り機37に送り込まれた平角線Wは第2線送り機37により第2巻線ヘッド43へ導入され第2コイル12の巻線を開始する。第2線送り機37と第2巻線ヘッド43の連動により第2コイル12の巻線がすすみ、第1コイル部11がコイル導入ガイド52より外れたら、コイル導入ガイド52は、ガイド本体移送機構60の作用により、コイル載置テーブル51上で第2ライン26の延長線上から第1ライン25の延長線上側に移動される。
【0072】
その後、巻線機ユニット21の第2ライン26においては、第2線送り機37の線送りと第2巻線ヘッド43により、第2コイル部12の巻数が所定段数に達したことが確認された後、第2線送り機37の送り本体部40をスライド軸38Bに沿って、平角線Wから離れる方向のY軸方向に移動させる。
このとき、第1コイル部11はコイル載置テーブル51から完全に外れ、第2線送り機37の近傍位置にまで移動している。
【0073】
また、巻線機ユニット21の第2ライン26においては、第2線送り機37に代わってヘッド送りユニット39の駆動により平角線Wを辺送り(1辺分の送り)して、第2巻線ヘッド43により、第2コイル部12の巻線加工が継続される。
このとき、第2線送り機37は、平角線Wから離れる方向に退避されているので、第1コイル部11が第2線送り機37に干渉することはない。
なお、前記第2コイル部12の巻線工程の最終段階で、2個のコイル部11,12が接近した時に互いのコイル部11,12に干渉しないように、各巻線工程が始まる前に、図示しない機構等により、前記リード部12Aもコイル部12の表面に対して直交する方向に90°曲げられている(図15参照)。
【0074】
その後、巻線機ユニット21の第2ライン26においては、ヘッド送りユニット39の辺送りと第2巻線ヘッド43により、第1コイル部11と第2コイル部12との間でのオフセット調整、および間隔調整をして、平角線Wの端部に形成される第2コイル部12が所定段数に達して巻線加工が完了し、これにより1個の前記連結コイル10が完成する。
【0075】
この間、巻線機ユニット21の第1ライン25およびコイル載置テーブル51の第1ライン25の延長線上においては、次の連結コイル10を形成するために、前述の動作と同様の手順が繰り返され、巻線機ユニット21の第2ライン26上で引き続き第2コイル部12および連結コイル10を形成することができるようになっており、以後は、前述した動作が繰り返され、所望の数量の図15に示すような連結コイル10が生産される。
【0076】
ここで、図15に基づいて連結コイル10の詳細を説明する。
連結コイル10は、1本の平角線Wが、その長さ方向一方と他方の各端部側から角巻して当該角巻部が角筒状に積層された状態に形成された第1コイル部11および第2コイル部12を備えて形成されている。
この第1コイル部11および第2コイル部12間には、当該各コイル部11,12を同一面上で連結する連結部13が設けられ、この連結部13は、各コイル部11,12相互間に位置する素材である前記平角線Wで形成されている。そして、第1コイル部11および第2コイル部12は、互いに並列状態に配置されている。また、第1コイル部11と第2コイル部12とには、それぞれの端部であるリード部11A,12Aが形成されている。
【0077】
なお、これらのリード部11A,12Aは、前述したように、第2コイル部12の巻線工程の最終段階で2個のコイル部11,12が接近した時に、互いのコイル部11,12同士が干渉しないように、各巻線工程が始まる前に、各コイル部11,12の表面に対して直交する方向に90°曲げられている。
【0078】
以上のような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)第1のコイル部11を有する平角線Wをコイル導入ガイド52に搬入し、そのコイル導入ガイド52を、第1コイル用巻線加工ライン25の延長線上から第2コイル用巻線加工ライン26の延長線上に移動させ、その位置で、平角線Wをコイル導入ガイド52から第2コイル用巻線加工ライン26に移送させることで、その加工ライン26上で第2のコイル部12を形成することができる。この間にも、第1コイル用巻線加工ライン25では、次の連結コイル形成のために、次の平角線Wの一方側端部に第1のコイル部11の巻線加工が開始され、同時に、コイル導入ガイド52を第1コイル用巻線加工ライン25の延長線上に戻しておけば、第1のコイル部11を有する次の平角線Wをコイル導入ガイド52に送り込める。以後、同様のサイクルで、平角線Wの一方側および他方側端部にそれぞれ第1のコイル部11、第2のコイル部12を連続して形成することができる。
その結果、多くの平角線Wに連続してかつ容易に、その一方側端部に第1コイル部11を形成した後、他方側端部に第2コイル部12を形成することができ、効率よく巻線加工できて生産効率の向上を図ることができる。
【0079】
(2)巻線機ユニット21から送り出された平角線Wを、コイル搬送トレイ53により、コイル導入ガイド52の表面(底面部52A)から浮かして保持した状態で往復移動させることができるので、平角線Wをその長手方向に沿って移動させる際、接触する対象物がないので、移動時の擦れ跡が生じないという効果がある。
【0080】
(3)平角線Wを、コイル載置テーブル51上においてその長手方向と直交する方向、つまり第1ライン25の延長線上から第2ライン26の延長線上に移動させる際は、平角線Wを収容したコイル導入ガイド52をガイド本体移送機構60の駆動により移動させればよく、平角線Wを直接摺動させて移動させなくてすむので、平角線Wに移動時の擦れ跡が生じないという効果がある。
【0081】
(4)コイル搬送トレイ53には凹部53Aが形成され、さらに凹部53Aには貫通穴53Bがあけられ、この貫通穴53Bにトレイ移送規制機構55のコイルリフタ57が出没可能となっており、コイルリフタ57を貫通穴53Bに挿通させることで、コイル搬送トレイ53を固定することができる。したがって、コイル搬送トレイ53を固定しておいて凹部53Aで、平角線Wの一方側端部に形成された第1コイル部11およびそれに続く部分をガイドし、かつ保持できるので、巻線機ユニット21側から送り込まれた平角線Wをコイル導入ガイド52に確実に導入することができ、また、移動時にぶれたりすることもなくなり、より確実に移動させることができるという効果がある。
【0082】
(5)コイル搬送トレイ53の移動を固定し、あるいは固定を解除するトレイ移送規制機構55がコイル導入ガイド52の端部位置に設けられ、トレイ移送規制機構55を構成するコイルリフタ57が、コイル搬送トレイ53の凹部53Aにあけられた貫通穴53Bに出没させる構造となっており、コイルリフタ57の上下動はコイルリフタシリンダ56Cおよびトレイストッパシリンダ56Bで行うように構成されているので、簡単な構成とすることができるという効果がある。
【0083】
(6)コイル導入ガイド52を構成する一方の側壁部52Bに平角線導入・送出ユニット70が設けられ、この平角線導入・送出ユニット70は、平角線Wを上下方向から挟み込んで把持するチャック機構71を有すると共に、その状態で、コイル導入ガイド52の長手方向に沿って移動させることができる。したがって、平角線Wの他端部が巻線機ユニット21側に残っていても、平角線Wの他端部側をチャック機構71で把持して移動させることができるので、巻線機ユニット21の所定の装備とコイル導入ガイド52との間に距離があり、あるいは両者21,52間にわたる送り機構がなくても、平角線Wの全部をコイル導入ガイド52に容易に導入させることができるという効果がある。
【0084】
(7)平角線導入・送出ユニット70が、平角線Wを上下方向から挟み込んで把持するチャック機構71を有すると共に、その状態で、コイル導入ガイド52の長手方向に沿って移動させることができる構造となっているので、巻線機ユニット21の所定の装備とコイル導入ガイド52との間に距離があり、あるいは両者21,52間にわたる送り機構がなくても、コイル導入ガイド52に収容されている平角線Wを、その他端部から巻線機ユニット21側に容易に送り込むことができる。
【0085】
(8)巻線機ユニット21から平角線Wをコイル導入ガイド52に確実に導入し、あるいはコイル導入ガイド52内に収容されている平角線Wを巻線機ユニット21に確実に送り出す2つの機能を、1個の平角線導入・送出ユニット70で実行できるように構成し、その平角線導入・送出ユニット70をコイル導入ガイド52に装備したので、省部材化を図ることができる。
【0086】
(9)コイル導入ガイド52が、コイル搬送トレイ53を載置する底面部52Aと、この底面部52Aの幅方向両端に立設された側壁部52B,52BLとで形成され、コイル搬送トレイ53がスライド移動する際、側壁部52Bでガイドされるので、コイル搬送トレイ53の移動中にコイル導入ガイド52から外れることがなく、確実な移動が可能となる。
【0087】
(10)コイル導入ガイド52は、コイル載置テーブル51の一端部から他端部までの全長より長い寸法に形成されているので、コイル載置テーブル51を最小限の大きさにすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0088】
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、コイル導入ガイド52にコイル搬送トレイ53を設け、このコイル搬送トレイ53上に第1コイル部11を載置させた状態でコイル搬送トレイ53をスライドさせていたが、これに限らない。コイル導入ガイド52の底面部を無限軌道状のベルト等で構成してもよい。このようにすれば、平角線W自体を滑らせることがないので、擦れ跡が残らない、という効果がある。
【0089】
また、前記実施形態では、コイル導入ガイド52を第1ライン25の延長線上から第2ライン26の延長線上に移動させるのに、シリンダ63を用いたガイド本体移送機構60により行っていたが、ガイド本体移送機構60の構成はシリンダ63を用いた構成に限らない。例えば、チェーンや歯車機構を用いて、コイル導入ガイド52を第1ライン25の延長線上から第2ライン26の延長線上に移動させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、例えば平角線等の長尺材の一方側端部に角巻して形成された角筒状の積層コイルを第1のコイルとして形成すると共に、他方側端部にも同じように積層コイルを第2のコイルを形成し、これらの第1のコイルおよび第2のコイルを同一面上で並列状態にして連結コイルを形成する連結コイル形成装置に装備させて用いる際に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る長尺材移送装置が併設された連結コイル形成装置の実施形態を示す全体平面図である。
【図2】前記実施形態の連結コイル形成装置を示す全体側面図である。
【図3】前記実施形態の長尺材移送装置を示す全体平面図である。
【図4】前記実施形態の長尺材移送装置を示す全体側面図である。
【図5】図3におけるV−V線に沿った断面図である。
【図6】図3におけるVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】前記実施形態のコイル搬送トレイとコイル導入ガイドと平角線との関連を示す部分平面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図8の状態からコイル搬送トレイが移動を始めた状態を示す側断面図である。
【図10】コイル搬送トレイから第1コイル部を巻線機ユニット側に送り込む状態を示す側断面図である。
【図11】コイル搬送トレイから平角線を巻線機ユニット側に送り込む際に第1コイル部を突き上げた状態を示す側断面図である。
【図12】前記実施形態の長尺材移送装置の部分詳細を表し平角線導入・送出ユニットを示す全体平面図である。
【図13】図12におけるXIII−XIII線に沿った断面図である。
【図14】前記長尺材移送装置による平角線の移送方法を示すフローチャートである。
【図15】前記長尺材移送装置が併設された連結コイル形成装置により形成される連結コイルを示す全体斜視図である。
【符号の説明】
【0092】
10 連結コイル
11 第1コイル部
12 第2コイル部
20 連結コイル形成装置
21 隣接する設備である巻線機ユニット
25 第1コイル用巻線加工ラインである第1ライン
26 第2コイル用巻線加工ラインである第2ライン
50 長尺材移送装置
51 長尺材載置テーブルであるコイル載置ユニット
52 長尺材ガイド本体であるコイル導入ガイド
53 コイル搬送トレイ
53A 凹部
53B 貫通穴
55 トレイ移送規制機構
53 コイル搬送トレイ
57 コイルリフタ
60 ガイド本体移送機構
70 長尺材送り機構である平角線導入・送出ユニット
71 チャック機構
72 チャック部
77 スライド部材
W 平角線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に巻線加工された一方のコイルを有する長尺材を第1コイル用巻線加工ラインから搬入すると共に、前記第1コイル用巻線加工ラインに併設され前記長尺材の他端部に他方のコイルを巻線加工して前記一方のコイルとで並列の連結コイルを形成するための第2コイル用巻線加工ラインへ前記搬入した長尺材を送り込む長尺材移送装置であって、
前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上に配置されると共に前記長尺材を前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上で一端部から搬入して収容する長尺材ガイド本体と、
この長尺材ガイド本体を前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上から前記第2コイル用巻線加工ラインの延長線上に移動させるガイド本体移送機構と、
前記第2コイル用巻線加工ラインの延長線上から前記長尺材をその他端部より前記第2コイル用巻線加工ラインへ送り込む長尺材送り込み機構と、を備えていることを特徴とした長尺材移送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の長尺材移送装置において、
前記長尺材ガイド本体に、前記第1コイル用巻線加工ラインから搬入された前記長尺材の第1コイル部が直接摺動することなく、かつ長尺平角線材を前記長尺材ガイド本体の表面から浮かした状態で前記長尺材ガイド本体の長手方向に移動する長尺材搬送トレイを設けたことを特徴とする長尺材移送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の長尺材移送装置において、
前記長尺材搬送トレイの移動を規制しあるいは規制を解除するトレイ移送規制機構を、前記長尺材ガイド本体の前記第1コイル用巻線加工ラインの終端位置部分に配設したことを特徴とする長尺材移送装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の長尺材移送装置において、
前記長尺材搬送トレイに前記長尺材の一方のコイルおよびそれに続く長尺材を収納する凹部を形成すると共に、この凹部に前記トレイ移送規制機構の一部を出没させる貫通穴をあけて構成したことを特徴とする長尺材移送装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の長尺材移送装置において、
前記トレイ移送規制機構を、前記長尺材ガイド本体の裏面に吊り下げ支持されたシリンダと、このシリンダに設けられ前記貫通穴に挿通して前記長尺材搬送トレイの移動を規制すると共に前記長尺材の一方のコイルの下面と係合しかつその下面を突き上げるコイルリフタとを備えて構成したことを特徴とする長尺材移送装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の長尺材移送装置において、
前記長尺材ガイド本体を、前記長尺材を収容する底面部とこの底面部の幅方向両端に立設された側壁部とでなる樋状に形成したことを特徴とする長尺材移送装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の長尺材移送装置において、
前記長尺材送り込み機構を、前記長尺材ガイド本体の前記第1コイル用巻線加工ライン終端位置部分に設けると共に、前記長尺材ガイド本体に対して前後移動かつ上下移動して前記長尺材を把持するチャック部を有するチャック本体と、このチャック本体を前記長尺材ガイド本体の長手方向に沿って移動させる駆動源と、を備えて構成したことを特徴とする長尺材移送装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一つに記載の長尺材移送装置において、
前記ガイド本体移送機構を、前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上および第2コイル用巻線加工ラインの延長線上に沿って設けられた一対のガイド軸支持部材と、これらのガイド軸支持部材の長手方向両端部間に架けわたされ前記長尺材ガイド本体を移動時にガイドするガイド軸と、前記ガイド軸支持部材に支持されると共に前記長尺材ガイド本体の一側面に先端が連結されたシリンダとを備えて構成したことを特徴とする長尺材移送装置。
【請求項9】
一端部に巻線加工された一方のコイルを有する長尺材を第1コイル用巻線加工ラインから搬入すると共に、当該搬入した長尺材を、前記第1コイル用巻線加工ラインに併設され前記長尺材の他端部に他方のコイルを巻線加工し前記一方のコイルとで並列の連結コイルを形成するための第2コイル用巻線加工ラインに移送する長尺材移送方法であって、
前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上に配置された長尺材ガイド本体に前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上で前記長尺材の一端部から搬入して収容する第1の工程と、
前記長尺材が収容された前記長尺材ガイド本体を前記第1コイル用巻線加工ラインの延長線上から第2コイル用巻線加工ラインの延長線上に移送させる第2の工程と、
前記第2コイル用巻線加工ラインの延長線上から前記長尺材を前記第2コイル用巻線加工ライン側に移送させる第3の工程と、を備えていることを特徴とする長尺材移送方法。
【請求項10】
前記請求項9に記載の長尺材移送方法において、
前記第1の工程では、前記長尺材ガイド本体に設けられた長尺材搬送トレイにより前記長尺材の前記一端部を保持する保持工程と、前記長尺材の第1コイル部が直接ガイド本体と摺動することなく、かつ長尺平角線材を前記長尺材ガイド本体の表面から浮かした状態で移動して搬入する搬入工程と、を備えていることを特徴とする長尺材移送方法。
【請求項11】
前記請求項9または請求項10に記載の長尺材移送方法において、
前記第2の工程では、前記長尺材搬送トレイにより前記長尺材の一端部を保持すると共に、前記長尺材の他端部を前記長尺材ガイド本体に設けられた長尺材送り込み機構により把持して保持する保持工程、を備えていることを特徴とする長尺材移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−195923(P2009−195923A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37915(P2008−37915)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】