説明

長尺構造物及び鉄骨鉄筋部材

【課題】長尺方向に作用する軸力に対して大きな耐力を確保できる長尺構造物を提供する。
【解決手段】H形鋼21の周囲に螺旋状鉄筋22が配設されたインターロッキングカラム2を長尺方向に向けて配置し、その周囲にコンクリート4を打ち込んで構築する塔構造物1である。
このインターロッキングカラム2は、H形鋼21と、その周囲に立設される複数の組立鉄筋23,・・・と、それらの組立鉄筋の外側を螺旋状に囲むとともに組立鉄筋より外側に突出する突出部22a,22aが形成される螺旋状鉄筋22とを有し、隣接するインターロッキングカラム2,2の突出部同士が重なるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚、煙突、杭、ケーソン、地下タンクなどの軸力補強材とコンクリートとによって構築される一方向に長い長尺構造物、及びその長尺構造物の構築に使用する鉄骨鉄筋部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、橋脚等の塔構造物を構築するに際して、H形鋼などの鉛直鋼材とその周囲を包囲する包囲鉄筋とから構成される複合補強材を、間隔を置いて複数配置し、その周囲にコンクリートを打設することで中空の塔構造物を構築する方法が知られている。
【0003】
この包囲鉄筋は、四隅に立設された縦鉄筋を角にしてその外側に螺旋状に巻き付けられることで形成されている。
【0004】
また、特許文献2には、2つの環状帯筋を平面視で重ねた環状帯筋群間に、コ字形のリンク筋を架け渡すことでインターロッキング配筋をおこなう方法が開示されている。
【特許文献1】特開平11−152899号公報
【特許文献2】特開2004−316180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された複合補強材は、間隔を置いて配置することを前提にして構成されており、包囲鉄筋部分をインターロッキング配筋のように重ね合わせようとしても、四隅に配置された縦鉄筋同士が接触してしまうため平面視で重ね合わせることが難しい。
【0006】
また、特許文献2には、主筋の周りを囲むために配置する帯鉄筋をインターロッキング配筋とした構造が開示されているが、軸力に対して大きな耐力を確保できる鉄骨を使用する鉄骨鉄筋コンクリート構造物を開示するものではない。
【0007】
そこで、本発明は、長尺方向に作用する軸力に対して大きな耐力を確保できる長尺構造物、及びその構築に使用する鉄骨鉄筋部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の長尺構造物は、鉄骨の周囲に螺旋状鉄筋が配設された鉄骨鉄筋部材を長尺方向に向けて配置し、その周囲にコンクリートを打ち込んで構築する長尺構造物であって、前記鉄骨鉄筋部材は、鉄骨と、その周囲に立設される複数の組立鉄筋と、それらの組立鉄筋の外側を螺旋状に囲むとともに組立鉄筋より外側に突出する突出部が形成される螺旋状鉄筋とを有し、隣接する前記鉄骨鉄筋部材の前記突出部同士が重なるように配置されることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記組立鉄筋は、前記突出部の突出方向の位置が正確に規定されており、隣接して配置される前記鉄骨鉄筋部材の一方の前記突出部又は組立鉄筋を他方の前記組立鉄筋又は螺旋状鉄筋に当接させて配置することが好ましい。
【0010】
また、前記突出部同士を重ねて連続して配置される前記鉄骨鉄筋部材群の内側及び外側を帯筋で囲むこともできる。
【0011】
さらに、前記螺旋状鉄筋は、前記鉄骨を挟んで前記突出部が形成された反対側が前記組立鉄筋に係合されているものであってもよい。
【0012】
また、前記螺旋状鉄筋は、前記鉄骨を交差点にして二方向に突出する突出部によって平面視屈曲形状に形成されるものであってもよい。
【0013】
また、本発明の鉄骨鉄筋部材は、上記のいずれかの長尺構造物に配置されるものである。
【発明の効果】
【0014】
このように構成された本発明の長尺構造物は、鉄骨鉄筋部材に螺旋状鉄筋を装着するための組立鉄筋よりも外側に突出する突出部を螺旋状鉄筋に設けることで、隣接する鉄骨鉄筋部材の突出部同士を重ね合わせることができる。
【0015】
このため、長尺方向の耐力を増加させるために配置される鉄骨の座屈が螺旋状鉄筋の拘束力によって防止できるとともに、螺旋状鉄筋を重ねることでインターロッキング配筋となってさらに高耐力の長尺構造物とすることができる。
【0016】
また、インターロッキング配筋となれば、帯鉄筋がなくとも躯体の連続性が確保されてせん断力に対抗することが可能になり、帯鉄筋を省略することもできる。
【0017】
さらに、このような鉄骨鉄筋部材の構成では、隣接する鉄骨鉄筋部材の一方の突出部又は組立鉄筋が他方の組立鉄筋に当接すると、双方の鉄骨鉄筋部材はそれより近づかなくなる。
【0018】
このため、組立鉄筋の位置を、突出部の突出方向に正確に規定しておくことで、突出部同士が重なる長さを所定の長さに容易に設定することができる。また、鉄骨の間隔も一定の間隔に合わせることが容易にできる。
【0019】
さらに、鉄骨鉄筋部材群の内側及び外側を帯筋で囲むことで、鉄骨鉄筋部材群の拘束力を高めるとともにせん断耐力を増加させることができる。
【0020】
また、螺旋状鉄筋の突出部の反対側を組立鉄筋に係合させることで、鉄骨の近傍を囲む鉄筋量が増加し、鉄骨の拘束力を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態の長尺構造物としての塔構造物1の概略構成を示した切断斜視図である。ここで、塔構造物1とは、橋脚、煙突などの地上に構築される鉛直方向に長い構造物をいう。
【0023】
まず、構成から説明すると、この塔構造物1は、平面視長方形の鉛直方向に延設される長尺構造物で、四角柱状の中空部12の四辺が壁部11,・・・に囲まれた中空構造物である。
【0024】
この壁部11は、横方向に間隔を置いて複数立設される鉄骨鉄筋部材としてのインターロッキングカラム2,・・・と、そのインターロッキングカラム2,・・・群の外側と内側に配置される帯鉄筋3,・・・(図4,6参照)と、それらの周囲に打設されるコンクリート4とによって主に構成される。
【0025】
このインターロッキングカラム2は、図2の斜視図を示すように、中心部に鉄骨として配置されるH形鋼21と、その四隅付近にH形鋼21から少し離れて略平行に立設される組立鉄筋23,・・・と、その組立鉄筋23,・・・の外周を螺旋状に囲む螺旋状鉄筋22とから主に構成される。
【0026】
このH形鋼21は、塔構造物1の長尺方向である鉛直方向の荷重を主に負担させる部材であって、H形鋼21に代えて鉄骨として鋼管などを使用することもできる。
【0027】
また、このH形鋼21の側面には、長尺方向に間隔を置いて複数のスペーサ(図示せず)を取り付け、そのスペーサを介して組立鉄筋23,・・・を取り付ける。
【0028】
この組立鉄筋23は、螺旋状鉄筋22を装着するために配置されるものであるが、構造鉄筋として使用できる太さの鉄筋を使用して構造部材とすることもできる。
【0029】
そして、この組立鉄筋23,・・・の外周には、例えば細径異形PC鋼棒を平面視略長方形の螺旋状に巻き付けて螺旋状鉄筋22として配置する。この螺旋状鉄筋22は、組立鉄筋23,・・・がH形鋼21から横方向に離れた位置に配置されているので、H形鋼21に接することなく配置される。
【0030】
また、この螺旋状鉄筋22は、H形鋼21の両フランジ側にあたる両側が、組立鉄筋23,・・・より外側に突出して突出部22a,22aが形成されている。すなわち、この螺旋状鉄筋22は、平面視略長方形に成形されるが、組立鉄筋23,・・・の位置では折り曲げられず、組立鉄筋23,・・・より外側に突出した位置で折り曲げられる。
【0031】
ここで、螺旋状鉄筋22とは、H形鋼21を囲む包囲体が長尺方向に間隔をおいて複数配置されて螺旋のように形成されるものをいい、H形鋼21との間に充填されるコンクリートを拘束する機能を有し、それによってH形鋼21の座屈が防止される。
【0032】
この螺旋状鉄筋22は、一本のH形鋼21に対して上から下まで連続している必要はなく、例えば螺旋バネ状に成形された部材を、H形鋼21の長尺方向に間隔を置いて複数配置し、それぞれ長尺方向に伸ばして端部同士を接続することで図2に示すような形態に仕上げることができる。
【0033】
このようにして製作されたインターロッキングカラム2(2A,2B)は、図3に示すように、隣接するインターロッキングカラム2A,2Bの突出部22a,22a同士が平面視で重なり合うように配置する。
【0034】
このインターロッキングカラム2A,2Bの突出部22a,22a同士を重ね合わせるには、例えば図3(a)に示すように、一方のインターロッキングカラム2Aを所定の位置に立設した後に、他方のインターロッキングカラム2Bを同じ高さまで吊り降ろして横方向に移動させ、一方のインターロッキングカラム2Aの突出部22aに他方のインターロッキングカラム2Bの突出部22aを挿し込むことによっておこなう。
【0035】
すなわち、螺旋状鉄筋22に組立鉄筋23,・・・の外側に突出させた突出部22aを形成することで、組立鉄筋23,・・・に干渉されることなく容易にインターロッキングカラム2A,2B同士を重ね合わせることが可能になる。
【0036】
しかしながら、一方の突出部22aを他方の突出部22aに挿し込み続けると、他方の組立鉄筋23,・・・に一方の突出部22aが当接してそれより奥には挿し込めなくなる。
【0037】
そこで、螺旋状鉄筋22の突出部22aの突出方向に対して、組立鉄筋23の位置を正確に規定して取り付けておくことで、隣接するインターロッキングカラム2A,2Bの突出部22a,22a同士が重なる長さを一定の値に設定することができる。
【0038】
また、H形鋼21と組立鉄筋23の位置関係についても、突出部22aの突出方向に正確に規定しておくことで、隣接するインターロッキングカラム2A,2BのH形鋼21,21の間隔を一定にすることができる。
【0039】
さらに、突出部22a,22a同士を重ねた重複部22bには、図3(b)に示すように重ねた後から挿筋5,5を挿入し、インターロッキングカラム2A,2Bの重なりが解除されないようにすることができる。
【0040】
また、この挿筋5によって、インターロッキングカラム2A,2B間の連結強度を高めたり、長尺方向の補強鉄筋としたりすることができる。
【0041】
図4には、インターロッキングカラム2,・・・を、突出部22a,22a同士が重なり合った重複部22b,・・・が形成されるように、横方向に間隔を置いて複数配置した壁部11の断面図を示す。
【0042】
この図4に示すように、インターロッキングカラム2,・・・は、壁部11の厚さ方向の略中央に配置され、外側と内側とには帯鉄筋3,3がそれぞれ配置される。この帯鉄筋3は、鉛直方向に間隔を置いて複数段配置される。
【0043】
そして、図4の断面図に示すように、H形鋼21と螺旋状鉄筋22との間に充填されたコンクリート4は螺旋状鉄筋22によって拘束され、インターロッキングカラム2,2間の重複部22bに充填されたコンクリート4は、螺旋状鉄筋22の突出部22a,22aによって拘束される。
【0044】
また、帯鉄筋3,3とインターロッキングカラム2,・・・群との間に充填されたコンクリート4は、帯鉄筋3,3によって壁部11の厚さ方向が拘束されるので、鉛直方向に大きな軸力が作用しても座屈が生じ難い。
【0045】
一方、図5には、平面視長方形の塔構造物1のコーナー部13(図6参照)に配置される鉄骨鉄筋部材としてのコーナーカラム6の構成を示した。
【0046】
このコーナーカラム6は、図5(a)の斜視図を示すように、中心部に鉄骨として配置されるH形鋼61と、その四隅付近にH形鋼61から少し離れて略平行に立設される組立鉄筋63,・・・と、その組立鉄筋63,・・・の外周を螺旋状に囲む螺旋状鉄筋62とから主に構成される。
【0047】
この螺旋状鉄筋62は、H形鋼61を交差点にして、平面視略直交する二方向に突出部62a,62bが突出されて平面視屈曲形状に成形される。すなわち、一本の細径異形PC鋼棒を使用し、二方向に延びる平面視長方形を鉛直方向に交互に形成していくことで突出部62aと突出部62bを成形する。
【0048】
このようにして製作されるコーナーカラム6は、図5(b)の平面図に示すように、一方の突出部62aのH形鋼61を挟んだ反対側の角部62c,62cが組立鉄筋63,63に係合しており、他方の突出部62bのH形鋼61を挟んだ反対側の角部62c,62cも組立鉄筋63,63に係合している。
【0049】
このコーナーカラム6を配置した塔構造物1のコーナー部13周辺の断面図を図6に示す。
【0050】
このコーナーカラム6は、コーナー部13の略中央に配置され、二方向に延設される壁部11,11のインターロッキングカラム2,2にそれぞれ接続される。
【0051】
そして、このコーナーカラム6の突出部62a,62bも、それぞれ隣接するインターロッキングカラム2,2の突出部22a,22aと平面視で重なり合うように配置されている。
【0052】
また、図6に示すように、コーナー部13においても、コーナーカラム6の外周側と内周側には略直角に折り曲げられた帯鉄筋3,3が配置され、壁部11に配置された帯鉄筋3,3と継手部31,31を介してそれぞれ接合されている。
【0053】
次に、本実施の形態の塔構造物1の構築方法について説明する。
【0054】
まず、工場や地上の製作ヤードにおいて、インターロッキングカラム2及びコーナーカラム6を製作する。
【0055】
例えば、インターロッキングカラム2を製作するには、横にして作業架台上に架け渡したH形鋼21に、図示しないスペーサを介してH形鋼21の四隅から少し離れた所定の位置に組立鉄筋23,・・・を取り付ける。
【0056】
そして、別途、細径異形PC鋼棒を平面視長方形の螺旋状に成形することで螺旋状鉄筋22を製作し、H形鋼21及び組立鉄筋23,・・・にその螺旋状鉄筋22を通して装着する。この取り付ける際に、螺旋状鉄筋22は縮んだ弦巻バネのような状態になっており、装着後にH形鋼21の長尺方向に引き伸ばして所定の長さに成形する。
【0057】
このようにして製作されたインターロッキングカラム2は、塔構造物1を構築する現地に設けた架台(図示せず)上に、長尺方向を鉛直方向に向けた状態で設置する。
【0058】
このインターロッキングカラム2は、先に立設したものの突出部22aに、横から別のインターロッキングカラム2の突出部22aを挿し込むことによって、突出部22a,22a同士が平面視で重なり合うようにして配置していく。
【0059】
この挿し込む際に、突出部22aが組立鉄筋23に当接して挿し込む深さが制限されるので、正確な位置に次々とインターロッキングカラム2,・・・を設置していくことができる。
【0060】
なお、挿し込む方向は、図3(a)に図示した矢印の方向に限定されるものではなく、間隔をおいて配置したインターロッキングカラム2A,2B間に、矢印の直交方向から第三のインターロッキングカラム2を挿し込む方法によっても重ね合わせることができる。
【0061】
このようにインターロッキングカラム2,・・・とコーナーカラム6,・・・が連続して平面視長方形になるようにした後に、インターロッキングカラム群の内側と外側に平面視長方形となるように帯鉄筋3を配置する。
【0062】
この帯鉄筋3の配置は、インターロッキングカラム2の全長が囲まれるように、鉛直方向に間隔を置いて複数段おこなわれる。このようなインターロッキングカラム群に沿って延設させる帯鉄筋3であれば、鉄筋の延設方向が交錯しないので容易に組み立てることができる。
【0063】
そして、中空の塔構造物1の内側面と外側面を成形するための内側面型枠と外側面型枠を、それぞれ設置する。
【0064】
なお、塔構造物1の内側面と外側面を形成するプレキャスト型枠に予め帯鉄筋3を埋設しておき、帯鉄筋3の配置と型枠の設置が同時におこなえるようにしてもよい。
【0065】
続いて、内側面型枠と外側面型枠との間にコンクリート4を打設することによって、図1に示すような断面の塔構造物1の壁部11,・・・が構築される。
【0066】
また、塔構造物1の高さを延ばしていく際には、インターロッキングカラム2,・・・の上端が突出する位置でコンクリート4の打設を一旦停止し、突出したH形鋼21の上に新たなインターロッキングカラム2のH形鋼21の下端を当接させ、両者をボルトや溶接などの接合手段によって接合することでインターロッキングカラム2を上方に延伸していく。
【0067】
そして、延伸されたインターロッキングカラム2の周囲には、上記と同様の手順でコンクリート4の打設をおこない、このような作業の繰り返しによって、所望する高さの塔構造物1を構築する。
【0068】
このように工場などで製作されたインターロッキングカラム2,・・・を立設して、その周囲にコンクリート4を打設して塔構造物1の壁部11を構築するようにすれば、現地での鉄筋の組立作業を大幅に削減することができるので効率的である。
【0069】
また、鉛直方向の必要鋼材を鉄筋ではなく鉄骨で負担させることで、過密配筋を避けることができて施工性が向上するうえに、コンクリートの充填不足などを防ぐことができる。
【0070】
さらに、このように構成された本実施の形態の塔構造物1は、インターロッキングカラム2に螺旋状鉄筋22を取り付けるための組立鉄筋23よりも外側に突出する突出部22aを螺旋状鉄筋22に設けることで、隣接するインターロッキングカラム2,2の突出部22a,22a同士を平面視で重ね合わせることができる。
【0071】
このため、H形鋼21によって軸方向耐力が増加されるうえに螺旋状鉄筋22の拘束力によってH形鋼21の座屈が防止できるとともに、螺旋状鉄筋22を平面視で重ねることでインターロッキング配筋となってさらに高耐力の長尺構造物とすることができる。
【0072】
また、本実施の形態では帯鉄筋3を配置したが、インターロッキング配筋となれば、帯鉄筋がなくとも躯体の連続性が確保されてせん断力に対抗することが可能になり、帯鉄筋を省略することができる。
【0073】
また、隣接するインターロッキングカラム2の一方の突出部22aが他方のインターロッキングカラム2の組立鉄筋23に当接すると、双方のインターロッキングカラム2,2はそれより近づかなくなる。
【0074】
このため、組立鉄筋23の位置を、突出部22aの突出方向に正確に規定しておくことで、突出部22a,22a同士が重なる重複部22bの長さを所定の長さに容易に設定することができる。
【0075】
また、H形鋼21,21の間隔も一定の間隔に合わせることが容易にできる。
【0076】
さらに、インターロッキングカラム群の内側及び外側を帯筋3で囲むことで、インターロッキングカラム群の拘束力を高めるとともにせん断耐力を増加させることができる。
【0077】
また、インターロッキングカラム2は、鉄骨を使用した高軸力部材であるため、鉄筋コンクリートによって塔構造物を構築する場合に比べて小さな断面のであっても大きな耐力を確保することができる。
【実施例】
【0078】
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0079】
この実施例では、前記実施の形態で説明したインターロッキングカラム2に代えて、図7に示すような二重スパイラルカラム7を鉄骨鉄筋部材として使用する。
【0080】
この二重スパイラルカラム7は、前記実施の形態で説明したコーナーカラム6と突出方向が異なるが同様の方法によって製作できる。
【0081】
すなわち、この二重スパイラルカラム7は、図7(a)の斜視図に示すように、中心部に鉄骨として配置されるH形鋼71と、その四隅付近にH形鋼71から少し離れて略平行に立設される組立鉄筋73,・・・と、その組立鉄筋73,・・・の外周を螺旋状に囲む螺旋状鉄筋72とから主に構成される。
【0082】
この螺旋状鉄筋72は、H形鋼71を挟んで両側に突出部72a,72bが突出されて平面視長方形状に成形される。この突出部62aと突出部62bは、鉛直方向に交互に形成される。
【0083】
このようにして製作される二重スパイラルカラム7は、図7(b)の平面図に示すように、一方の突出部72aのH形鋼71を挟んだ反対側の角部72c,72cが組立鉄筋73,73に係合して係合部721aが形成され、他方の突出部72bのH形鋼71を挟んだ反対側の角部72c,72cも組立鉄筋73,73に係合して係合部721bが形成される。
【0084】
このため、組立鉄筋73,・・・を包囲するように鉄筋が配置されることになり、H形鋼21の近傍を囲む鉄筋量が増加するので、H形鋼21の拘束力を高めることができる。
【0085】
また、図7(b)に示すように、二重スパイラルカラム7,7を重ね合わせると、略同じ高さの一方の突出部72a(72b)に他方の係合部721a(721b)又は組立鉄筋73が当接して両者の距離がそれより近づかなくなる。
【0086】
このように突出部72a(72b)と係合部721a(721b)又は組立鉄筋73との接触によって二重スパイラルカラム7,7間の距離が一定になるように規制する構成であれば、当接させた際に平面視で傾き難く、正確な位置に容易に二重スパイラルカラム7を配置することができる。
【0087】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【0088】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0089】
例えば、前記実施の形態では、長尺構造物として地上に構築される塔構造物1について説明したが、これに限定されるものではなく、杭、ケーソン、地下タンクなどの一方向に長い地中構造物であってもよい。
【0090】
また、前記実施の形態では、平面視長方形の塔構造物1について説明したが、これに限定されるものではなく、平面視円形、六角形や八角形などの平面視多角形、平面視楕円形、平面視長円形など任意の形状に構築することができる。
【0091】
また、前記実施の形態及び実施例では、連続した螺旋となる螺旋状鉄筋22,72を配置した鉄骨鉄筋部材について説明したが、これに限定されるものではなく、略長方形に折り曲げた複数の環状鉄筋を、組立鉄筋23,・・・の長尺方向に間隔を置いて取り付けることで螺旋状鉄筋を形成してもよい。なお、この際は、個々の環状鉄筋の拘束力を高めるために、機械式継手によって長方形を閉合したり、鉄筋の端部にフックを設けて組立鉄筋23,・・・に係合させたりするなどしてもよい。
【0092】
さらに、前記実施の形態及び実施例では、平面視略長方形の螺旋状鉄筋22,72を配置した鉄骨鉄筋部材について説明したが、これに限定されるものではなく、平面視略円形、略正方形、略菱形など様々な形状の螺旋状鉄筋を配置することができる。
【0093】
但し、平面視略円形や略菱形に螺旋状鉄筋をした場合、組立鉄筋より外側に突出する部分が円弧形や三角形になるので、隣接する鉄骨鉄筋部材の組立鉄筋に突出部が当接しなくなる。このような場合は、組立鉄筋同士を当接させることで、突出部同士が重なり合う長さを一定の長さに設定することができる。
【0094】
また、前記実施の形態では、平面視略L字形の螺旋状鉄筋62を平面視屈曲形状として説明したが、これに限定されるものではなく、平面視略ヘの字形の螺旋状鉄筋を備えた鉄骨鉄筋部材を配置することで、平面視円形や平面視六角形などの塔構造物を構築することができる。
【0095】
さらに、前記実施の形態では帯鉄筋3をインターロッキングカラム群の内側及び外側に配置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、インターロッキング配筋のみでせん断耐力が確保できる場合は帯鉄筋3を配置しなくてもよい。
【0096】
また、前記実施の形態では、塔構造物1の全周をインターロッキングカラム2,・・・及びコーナーカラム6,・・・で連続させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、部分的に平面視コ字形のリンク筋によってインターロッキングカラム2,2間を連結してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の最良の実施の形態の塔構造物の概略構成を示した切断斜視図である。
【図2】インターロッキングカラムの構成を説明する斜視図である。
【図3】インターロッキングカラムの重ね合わせ方法について説明する図であって、(a)は重ね合わせる前の状態を示した平面図、(b)は重ね合わせた状態を示した平面図である。
【図4】本発明の最良の実施の形態の塔構造物の壁部の構成を示した断面図である。
【図5】(a)はコーナーカラムの構成を説明する斜視図、(b)はコーナーカラムの構成を説明する平面図である。
【図6】本発明の最良の実施の形態の塔構造物のコーナー部周辺の構成を示した断面図である。
【図7】(a)は実施例の二重スパイラルカラムの構成を説明する斜視図、(b)は二重スパイラルカラムを重ね合わせた状態を示した平面図である。
【符号の説明】
【0098】
1 塔構造物(長尺構造物)
11 壁部
2 インターロッキングカラム(鉄骨鉄筋部材)
21 H形鋼(鉄骨)
22 螺旋状鉄筋
22a 突出部
23 組立鉄筋
3 帯鉄筋
4 コンクリート
6 コーナーカラム(鉄骨鉄筋部材)
61 H形鋼(鉄骨)
62 螺旋状鉄筋
62a,62b 突出部
63 組立鉄筋
7 二重スパイラルカラム(鉄骨鉄筋部材)
71 H形鋼(鉄骨)
72 螺旋状鉄筋
72a,72b 突出部
721a,721b 係合部
73 組立鉄筋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨の周囲に螺旋状鉄筋が配設された鉄骨鉄筋部材を長尺方向に向けて配置し、その周囲にコンクリートを打ち込んで構築する長尺構造物であって、
前記鉄骨鉄筋部材は、鉄骨と、その周囲に立設される複数の組立鉄筋と、それらの組立鉄筋の外側を螺旋状に囲むとともに組立鉄筋より外側に突出する突出部が形成される螺旋状鉄筋とを有し、隣接する前記鉄骨鉄筋部材の前記突出部同士が重なるように配置されることを特徴とする長尺構造物。
【請求項2】
前記組立鉄筋は、前記突出部の突出方向の位置が正確に規定されており、隣接して配置される前記鉄骨鉄筋部材の一方の前記突出部又は組立鉄筋を他方の前記組立鉄筋又は螺旋状鉄筋に当接させることを特徴とする請求項1に記載の長尺構造物。
【請求項3】
前記突出部同士を重ねて連続して配置される前記鉄骨鉄筋部材群の内側及び外側を帯筋で囲むことを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺構造物。
【請求項4】
前記螺旋状鉄筋は、前記鉄骨を挟んで前記突出部が形成された反対側が前記組立鉄筋に係合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の長尺構造物。
【請求項5】
前記螺旋状鉄筋は、前記鉄骨を交差点にして二方向に突出する突出部によって平面視屈曲形状に形成されることを特徴とする請求項4に記載の長尺構造物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の長尺構造物に配置されることを特徴とする鉄骨鉄筋部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−190233(P2008−190233A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26383(P2007−26383)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】