説明

長尺状シートの熱処理装置

【課題】寸法が小さく且つ熱処理を効率良く行ない、熱風によるシートの損傷が防止される長尺状シートの熱処理装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の長尺状シートの熱処理装置1は、シート入口、出口21a,21bと、熱風流入口、流出口22a,22bとを有する装置筐体2と、熱風発生装置3とを備え、装置筐体2の左右方向に間隔をあけて配設される第1,2ロール群11a,11bから形成される該搬送部11を備え、第1,2ロール群11a,11bを蛇行するように順次掛け渡したシート4は、連続的に、入口21aから導入され且つ出口21bから導出され、筐体2には、流入口22a及び流出口22bそれぞれと搬送部11との間に整流板12a,12bが設けられ、入口、出口21a,21bそれぞれには、独立に周速の調節が可能な駆動ロール13a,13bが配設され、装置筐体2における整流板13aより流入口22a側の部分には、熱風排出用の通気孔14が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状シートの熱処理装置に関する。また、本発明は、前述した熱処理装置を用いた通気性を有する長尺状シートの熱処理方法、又は長尺状不織布の嵩回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺状シートの熱処理に関して、様々な方法又は装置が提案されている。例えば、巻回によって嵩が減少した不織布の厚みを容易に回復させ得る不織布の嵩回復方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
本出願人は先に特許文献1において、捲縮を有する熱可塑性繊維を含み且つロール状に巻回されている不織布原反から不織布を繰り出し、熱可塑性繊維の融点未満で且つ該融点−50℃以上の温度の熱風を不織布にエアスルー方式で0.05〜3秒間吹き付けて該不織布の嵩を増加させる不織布の嵩回復方法を提案している。
【0004】
また、帯状ワーク(例えば帯状ゴムシート)の乾燥・熱処理等のために、帯状ワークが伸び変形を受け難い連続搬送装置が知られている(特許文献2)。
【0005】
特許文献2において、伸び変形を受け易い帯状ワークを、乾燥・熱処理等のために、上下に配設された搬送ローラ群を順次掛け渡して蛇行搬送させる連続搬送装置であって、自由回転する搬入側案内ローラと搬出側案内ローラとの間に、上搬送ローラ群と、下搬送ローラ群とが配設され、さらに、搬出側案内ローラの下接線の延長上に強制駆動される引取り手段が配設されており、上搬送ローラ群の各上搬送ローラを搬送方向に同期的に強制駆動させる強制駆動手段を付設するとともに、下搬送ローラ群の各下搬送ローラを自由回転可能とし、また、搬出側案内ローラと引取り手段との間にアキュムレータを配設するとともに、帯状ワークがアキユームレート(溜め)した状態の間のみ引取り手段を駆動させる制御手段を付設している帯状ワークの連続搬送装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−137655号公報
【特許文献2】特開平7−97112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の不織布の嵩回復方法では、その装置構成として、熱風発生装置、コンベア又はドラム等を必要としており、装置の規模が比較的大きなものとなっている。また、不織布は、コンベアベルト又はドラムにより支持された状態で、コンベアベルト又はドラムとは反対側から熱風が吹き付けられるため、熱風による不織布への圧力が、不織布の嵩回復を弱める方向に働くおそれがある。
【0008】
特許文献2記載の帯状ワークの連続搬送装置においては、熱風による帯状ワークの蛇行又は弛みを抑制する手立てが施されていない。特に、帯状ワークが熱融着性繊維を含む長尺状不織布の場合には、不織布は熱風の吹きつけ方によっては損傷を受けるおそれがある。
【0009】
従って、本発明の目的は、前述した従来技術の有する欠点を解消しうる長尺状シートの熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シート入口及びシート出口と、熱風流入口及び熱風流出口とを有する装置筐体と、熱風発生装置とを備えており、該熱風発生装置で発生した熱風が該熱風流入口から該装置筐体内に入り、該熱風流出口から出て行くようになされている長尺状シートの熱処理装置であって、前記装置筐体内には、蛇行搬送部が設けられており、該蛇行搬送部は、該装置筐体内の上下方向又は該上下方向と直交する方向に間隔をあけて配設され、それぞれ離間する複数のロールからなる第1ロール群及び第2ロール群から形成されており、前記第1ロール群及び第2ロール群を蛇行するように順次掛け渡した前記長尺状シートが、前記シート入口から連続的に導入され且つ前記シート出口から連続的に導出されるようになされており、前記装置筐体内には、前記熱風流入口と前記蛇行搬送部との間及び前記熱風流出口と該蛇行搬送部との間それぞれに整流板が設けられており、前記シート入口及び前記シート出口それぞれには、独立に周速の調節が可能な、シート搬送用の駆動ロールが配設されており、前記装置筐体における、前記熱風流入口と前記蛇行搬送部との間の前記整流板より前記熱風流入口側の部分には、熱風排出用の通気孔が設けられている長尺状シートの熱処理装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
また、本発明は、通気性を有する長尺状シートを、前述した長尺状シートの熱処理装置における前記シート入口から前記装置筐体内に導入し、前記蛇行搬送部で搬送しつつ、前記熱風流入口から該装置筐体内に流入した熱風により熱処理をする通気性を有する長尺状シートの熱処理方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0012】
また、本発明は、長尺状不織布を、前述した長尺状シートの熱処理装置における前記シート入口から前記装置筐体内に導入し、前記蛇行搬送部で搬送しつつ、前記熱風流入口から該装置筐体内に流入した熱風により熱処理をして、嵩を回復させる長尺状不織布の嵩回復方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の長尺状シートの熱処理装置によれば、その装置の寸法が小さく且つシートに十分な熱処理を効率良く与え、熱風によるシートの蛇行又は弛みの発生が防止されると共に、熱によるシートの損傷が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の長尺状シートの熱処理装置の好ましい第1実施形態について、図1〜4を参照しながら説明する。
【0015】
本実施形態の長尺状シートの熱処理装置1は、図1及び図3に示すように、シート入口21a及びシート出口21bと、熱風流入口22a及び熱風流出口22bとを有する装置筐体2と、熱風発生装置3(図示せず)とを備えており、該熱風発生装置3で発生した熱風が該熱風流入口22aから該装置筐体2内に入り、該熱風流出口22bから出て行くようになされている。
また、本装置1における装置筐体2内には、図3に示すように、蛇行搬送部11が設けられており、該蛇行搬送部11は、装置筐体2内の上下方向と直行する方向に間隔をあけて配設され、それぞれ離間する複数のロールからなる第1ロール群11a及び第2ロール群11bから形成されている。第1ロール群11a及び第2ロール群11bを蛇行するように順次掛け渡した長尺状シート4は、シート入口21aから連続的に導入され且つシート出口21bから連続的に導出されるようになされている。また、装置筐体2内には、熱風流入口22aと蛇行搬送部11との間及び熱風流出口22bと蛇行搬送部11との間それぞれに、整流板12a、12bが設けられている。シート入口21a及びシート出口21bそれぞれの付近で装置筐体2の外側には、独立に周速の調節が可能な、シート搬送用の駆動ロール13a、13bが配設されている。更に、装置筐体2における、熱風流入口21aと蛇行搬送部11との間の整流板13aより熱風流入口22a側の部分には、図2に示すように、熱風排出用の4つの通気孔14,14…が設けられている。
尚、図1及び図2それぞれには、図を分かり易くするため、駆動ロール13a、13bを描いていない。
【0016】
本装置1は、熱風により長尺状シートの熱処理を行なうものである。
本装置1における熱風発生装置3について、説明すると、熱風発生装置3は、加熱部及びブロワ部を有しており、空気を所定の温度に加熱し、加熱された空気を所定の風量で装置筐体2内へ送り込むものである。
【0017】
熱風発生装置3により発生した熱風は、ダクト(図示せず)を通じて熱風流入口22aへ送り込まれ、図1及び図3の矢印に示すように、熱風流入口22aから装置筐体2内に入り、装置筐体2内を通過した後、熱風流出口22bから装置筐体2の外へ出て、ダクトを通じて再び熱風発生装置3へ戻るようになっている。装置筐体2内の空気は、前記ブロワ部の吸引力により熱風流出口22bから吸引される。
このように、熱風は、装置筐体2と熱風発生装置3との間を循環するようになっている。
【0018】
また、装置筐体2の内部には、温度センサー(図示せず)が備えられており、装置筐体2内部における熱風の温度が、該温度センサーによりモニタリングされ、所定の温度に設定維持されるように、熱風発生装置3で発生する熱風の温度が制御されるようになっている。
【0019】
次に、本装置1における装置筐体2について、更に説明すると、装置筐体2は、直方体形状としての正四角柱形状を有し、上面23a、下面23b及び四側面24,24…から形成されている。上面23a及び下面23bは長方形状を有し、四側面24,24…それぞれも、長方形状を有し、装置筐体2は全体として縦長である。
【0020】
装置筐体2の寸法は、高さ0.4〜0.8m、幅0.4〜0.6m、奥行き0.4〜0.8mであることが好ましく、必要とする設置スペースが比較的少なくて済むものである。
装置筐体2の形成材料としては、所定の耐熱性及び剛性を有していることが好ましく、また、加工性の観点から、例えば、ステンレス、アルミ、SS材等が好ましい
【0021】
熱風流入口22a及び熱風流出口22bそれぞれは、図1及び図3に示すように、円筒形状を有し、該熱風流入口22aは装置筐体2の上面23aに、該熱風流出口22bは装置筐体2の下面23bに、それぞれ設けられている。
【0022】
シート入口21a及びシート出口21bそれぞれにおける装置筐体2の外側には、図3に示すように、シート搬送用の駆動ロール13a、13bが配設されている。駆動ロール13a、13bそれぞれは、一対の駆動用ロール131,131から形成されている。一対の駆動用ロール131,131それぞれは、ロール駆動用のモータにより駆動される。該モータと一対の駆動用ロール131,131それぞれとの間の駆動力の伝導手段としては、ベルト伝導、ギヤ伝導又はチェーン伝導等の公知の手段が好ましく用いられる。
【0023】
一対の駆動用ロール131,131それぞれの軸の向きは、図3において、図面に対して直交する方向を向いており、シート4の搬送方向と直交している。本装置1におけるその他の各ロールの軸は全て、駆動用ロール131と同じ方向を向いている。
【0024】
シート入口21aの駆動ロール13aには、図3に示すように、シート4の原反等から繰り出されたシート4がS字状に掛け渡され、該シート4は、シート入口21aから装置筐体2内へ導入される。また、シート出口21bの駆動ロール13bには、装置筐体2から外へ導出されたシート4がS字状に掛け渡された後、本装置1の下流の工程へ搬出され
る。
【0025】
一対の駆動用ロール131,131それぞれにおいて、シート4の抱き角度は、各駆動用ロール131において45〜180度、特に90〜180度であることが、シート4を確実に把持する上で好ましい。また、シート4と接する駆動用ロール131におけるロール表面の形成材料は、シートが滑らない材質であることが好ましく、例えば、RTVシリコーン、ウレタンゴム等が好ましい。
【0026】
シート入口21a及びシート出口21bそれぞれの駆動ロール13a、13bは、独立に周速の調節が可能となっている。例えば、熱処理を受けることにより、長手方向に収縮する性質を有するシート4の場合には、シート入口21aの駆動ロール13aの周速を、シート出口21bの駆動ロール13bの周速よりも高くすることが好ましい。一方、熱処理を受けることにより、長手方向に伸張する性質を有するシート4の場合には、シート入口21aの駆動ロール13aの周速を、シート出口21bの駆動ロール13bの周速よりも低くすることが好ましい。
【0027】
このように熱処理するシート4の性質に併せて、シート入口21a及びシート出口21bそれぞれの駆動ロール13a、13bの周速を適宜調節することにより、熱処理中のシート4に過剰な張力が生じたり又は弛みが生じることが防止され、熱処理におけるシートの損傷を防ぐことが可能となっている。
【0028】
シート入口21a及びシート出口21bそれぞれにおいて、前述した駆動ロール13a、13bと対向する装置筐体2内側には、入口ガイドロール15a及び出口ガイドロール15bそれぞれが配設されている。
【0029】
シート入口21a及びシート出口21bそれぞれは、同形で、図1及び図3に示すように、装置筐体2の相対向する側面24に設けられた横長矩形形状の開口部であり、その長手方向(横長の方向)を上面23a及び下面23bそれぞれと平行になるように側面24に配されている。
【0030】
本装置1により熱処理されるシート4は、その長手方向と直交する幅方向をシート入口21aの横長の方向と一致させて、図1及び図2の矢印に示すように、装置筐体2内へ連続的に導入され、その幅方向を装置筐体2内で維持した状態で、装置筐体2内で熱処理を受けた後、シート出口21bから装置筐体2外へ連続的に導出されるようになっている。従って、上面23a側から装置筐体2内へ入った熱風は、装置筐体2内で搬送されるシート4の幅方向の面を、貫通するように吹き付けた後、下面23b側から装置筐体2外へ出て行くようになっている。
【0031】
装置筐体2内において、シート4の幅方向両端縁それぞれと、シート入口21a又はシート出口21bが設けられていない相対向する両側面24,24それぞれの内壁面との間の距離を、該内壁面と直交する方向に測定した長さは、5〜30mm、特に5〜15mmであることが、シート4の幅方向両端縁と装置筐体2の内壁面との間をすり抜ける熱風を少なくし、多くの熱風がシート4を貫通するようして、シート4の熱処理効率が良くなる上で好ましい。
【0032】
熱風流入口22aは、図2及び図3に示すように、該熱風流入口22aが設けられている上面23aにおいて、シート入口21aよりもシート出口21bに近い位置に設けられており、熱風流出口22bは、図3に示すように、該熱風流出口22bが設けられている下面23bにおいて、シート出口21bよりもシート入口21aに近い位置に設けられている。前述した熱風流入口22a及び熱風流出口22bそれぞれの装置筐体2における配置は、シート4の熱処理効率を高めるようになっている。その理由を以下に詳述する。
【0033】
図3に示すように、装置筐体2を平面視し且つシート入口21a及びシート出口21bそれぞれの位置に着目した場合、シート4は、装置筐体2内の上下方向と直交する方向としての右側から左側へ向って搬送される。一方、熱風は、同様に、装置筐体2を平面視し且つ熱風流入口22a及び熱風流出口22bそれぞれの位置に着目した場合、装置筐体2内を左側上方から右側下方へ向けて通過している。ここで、熱風を、大きさと方向を持つ物理量、いわゆるベクトルと考えた場合、熱風は、装置筐体2内を左側から右側へ向う成分と、装置筐体2内を上方から下方へ向う成分とを有している。従って、熱風の装置筐体2内を左側から右側へ向う成分は、シート4が装置筐体2内を右側から左側へ向かって搬送される向きと逆向きの方向を有している。
【0034】
即ち、装置筐体2内を通過する熱風の一部は、装置筐体2内で搬送されるシート4と、必ず対向するように接触するので、シート4の熱処理の効率が高められるようになっている。このように、熱風とシート4とを対向接触させると、熱風がシート4の表面から該シート内部へ入り込み、シート内部まで熱が伝わって、シート4全体が速やかに所定の温度まで加熱されるようになる。
【0035】
次に、本装置1における蛇行搬送部11について、更に説明する。装置筐体2内の上下方向と直行する方向である左右方向に間隔をあけて配設され、それぞれ離間する複数のロールからなる第1ロール群11a及び第2ロール群11bから搬送蛇行部11が形成されている。第1ロール群11a及び第2ロール群11bそれぞれを構成するロールの回転軸は、装置筐体2内の上下方向に並んでいる。
【0036】
第1ロール群11aと第2ロール群11bとの間を装置筐体2内の左右方向に測った長さは、シート入口21a及びシート出口21bが設けられている相対向する側面24の内壁間の距離を、左右方向に測定した長さの40〜80%、特に60〜80%とすることが、シート4の蛇行搬送部11における搬送距離を十分に確保する上で好ましい。尚、第1ロール群11aと第2ロール群11bとの間の長さは、第1ロール群11a及び第2ロール群11bそれぞれを構成するロールの回転軸同士の間の長さである。
【0037】
第1ロール群11aを構成する複数のロールは、図3に示すように、装置筐体2内の右側に、上下方向に等間隔で並んで配設されている。第1ロール群11aを構成する各ロールは、同じ寸法を有している。第1ロール群11aを構成する各ロールの外径は、20〜50mm、特に30〜40mmであることが好ましい。第1ロール群11aを構成する各ロール同士の間隔は、各ロールの直径に対して、50〜200%、特に80〜120%であることが好ましい。各ロール間の間隔を50%以上とすることで、シート4の搬送経路を確保することができる。一方、各ロール間の間隔を200%以下とすることで、第1ロール群11aと第2ロール群11bとの間に掛け渡されるシート4が、装置筐体2の上面23a及び下面23bそれぞれと略平行となるようにして、シート4と熱風との接触効率を高めると共に、搬送蛇行部11の寸法を小さくすることができる。ここで、第1ロール群11aを構成する各ロール間の間隔は、ロールの回転軸同士の間の長さである。
【0038】
第1ロール群11aを構成する複数のロールは、その軸に対して自由に回転可能なフリーロール又はその軸に対して回転不能な固定ロールの何れでも好ましい。フリーロールを用いる場合には、回転軸に対するロールの摺動抵抗が極力小さいことが好ましく、例えばベアリング軸受け等を有していることが好ましい。一方、固定ロールを用いる場合には、ロール表面に無数の孔を設け、該孔からホットエアーを噴出すようにして、固定ロールに掛け渡されているシート4がロールの表面から少なくとも部分的に浮くようにして、シート4と固定ロールとの摩擦力を極力小さくすることが好ましい。
【0039】
本装置1において、第1ロール群11a及び第2ロール群11bは、左右同士のロールが対向しないように、第2ロール群11bが第1ロール群11aに対して下方向にずれて配設されている。第2ロール群11bのその他の構成は、第1ロール群11aと同様である。尚、装置構成によっては、第2ロール群11bは、第1ロール群11aに対して上方向にずれて配設されていても良いし、また1ロール群11aが第2ロール群11bに対してずれて配設されていても良い。
【0040】
蛇行搬送部11を形成する第1ロール群11a及び第2ロール群11bそれぞれを構成するロールの形成材料としては、所定の耐熱性及び剛性を有していることが好ましく、また加工性の観点から、例えば、SS材、アルミ材、カーボン等が好ましい。
【0041】
本装置1において、駆動ロール13a、13b及び第2ロール群11b以外のロールの形成材料等の説明としては、前述した第1ロール群11aを構成するロールの説明が適宜適用される。
【0042】
前述した搬送蛇後部11は、小さな空間で、シート4の長い搬送経路を形成し、長い熱処理時間を確保して、シート4の十分な熱処理を行なえるようになっている。
【0043】
また、本装置1において、熱風流入口22aと蛇行搬送部11との間に設けられている整流板12aと、蛇行搬送部11との間には、シート入口21aから導入した長尺状シート4を蛇行搬送部11へ掛け渡すための一対のガイドロール16a,16bが設けられており、一対の該ガイドロール16a,16bは、熱風流入口22aから装置筐体2内に流入する熱風が、直接当たらないように配設されている。
具体的には、装置筐体2内の左側に位置するガイドロール16bは、第2ロール群11bよりも左側に配設されており、ダクトを通って熱風流入口22aから装置筐体2内の下方に直進してきた熱風が、直接ガイドロール16bにあたらないようになっている。
【0044】
ガイドロール16bは、熱風流入口からの熱風が直接あたらない位置に配設されているので、ロールが熱劣化することが防止されている。また、ロールが加熱されることにより、加熱されたロールによるシート4への損傷を防止している。例えば、シート4が融点の低い熱融着性繊維等を含んでいる場合には、ロールの有する熱により、シート4に含まれる熱融着性繊維が溶け、ロールに接着することが起こり得るが、本装置1では、このようなトラブルを防止している。
【0045】
また、熱風流出口22bと蛇行搬送部11との間に設けられている整流板12bと、該蛇行搬送部11との間にも、一対のガイドロールが設けられている。蛇行搬送部11を搬送されてきたシート4は、一対の該ガイドロールを介在して、シート出口21bから導出される。
【0046】
本装置1の装置筐体2には、熱風流入口22aと蛇行搬送部11との間及び熱風流出口22bと蛇行搬送部11との間それぞれに整流板12a、12bが設けられており、シート4の熱処理による損傷を防止している。
【0047】
整流板12a、12bが、仮に設けられていない場合には、装置筐体2内の上下方向と直交する断面における熱風の流速は、熱風流入口22aの近傍において速く、熱風流入口22aから離れるに従い低くなる。そのため、熱風流入口22aの近傍において、シート4には多量の熱風が吹き付けられるため、加熱されてシート4が損傷を受けるおそれがある。一方、熱風流入口22aから離れた部分では、シート4に吹き付けられる熱風の量が少なくなり、シート4の熱処理が不十分となるおそれがある。
また、熱風の流速が不均一になると、所定の速度で搬送されているシート4には、局所的に、搬送方向と直交する方向に波打つ蛇行が生じたり、弛みが生じる場合もあり得る。
【0048】
そこで、本装置1においては、整流板12a、12bを設けることにより、図3の矢印に示すように、熱風流入口22a側における装置筐体2内の上下方向と直交する断面における熱風の流速を一様にし、シート4の受ける熱処理の不均一性を低減する共に、シート4の蛇行又は弛みを防止する。
【0049】
本装置1には、熱風流出口22bと蛇行搬送部11との間にも整流板12bが設けられている。整流板12bが仮に設けられていない場合には、前述したのと同様に、装置筐体2内の上下方向と直交する断面における熱風の流速が、熱風流出口22bの近傍において速く、熱風流出口22bから離れるに従い低くなる。
そこで、熱風流出口22bと蛇行搬送部11との間にも整流板12bを設けることにより、シート4の受ける熱処理の程度の不均一性を低減する共に、シート4の蛇行又は弛みを防止する。本実施形態において、整流板12a、12bは、パンチングメタルから形成されている。
【0050】
本装置1において、装置筐体2の上面23aの4隅それぞれには、図2に示すように、熱風排出用の通気孔14が設けられている。熱風流入口22aから装置筐体2内へ入った熱風の一部は、図3の矢印に示すように、整流板12aを通過せずに通気孔14から排出され、ダクト(図示せず)を通じて熱風発生装置3に戻るようになっている。通気孔14は、開閉機構(図示せず)を有しており、その孔の開度を、全閉から全開の状態まで調節することができるようになっている。
通気孔14の開度を調節することにより、シート入口21a及びシート出口21bそれぞれから、熱風が装置筐体2の外へ排出されないようになされている。
【0051】
装置筐体2内へ熱風流入口22aを通って送り込まれる熱風の量と、装置筐体2外へ熱風流出口22bを通って吸引により排出される熱風の量は略同じとなるように調節されており、通気孔14から、装置筐体2外へ排出された熱風の量だけ、シート入口21a及びシート出口21bそれぞれから、装置筐体2内へ空気が流入するようになっている。
【0052】
前述した通気孔14を、本装置1に設ける理由は以下の通りである。
装置筐体2内の熱風が、シート入口21a又はシート出口21bから、装置筐体2外へ排出されると、シート入口21a又はシート出口21bにおけるシート4の蛇行をまねき、シート4を損傷する可能性がある。また、熱風の有する熱により駆動ロール13a、13bが損傷する可能性もある。
通気孔14を設ける理由は、前述したトラブルを防止することにある。
【0053】
通気孔14の好ましい開度としては、シート入口21a又はシート出口21bそれぞれを通して、装置筐体2内へ空気が若干流入するように調節することが好ましい。これは、熱風発生装置3のブロワ部を、一定の風量となるように運転していても、実際には風量に若干の変動が起こり得るため、風量がこのように変動した時にも、熱風が装置筐体2内から外へ排出されることを防止することが好ましく、通気孔14の開度は、シート入口21a及びシート出口21bそれぞれから、常に、装置筐体2外から内へ空気が若干流入するように調節する。
【0054】
また、本装置1は、シート4の熱処理を開始する際の導紙作業を、容易に行なえるようになっている。具体的には、蛇行搬送部11における第2ロール群11bは、装置筐体2内を右方向に、第1ロール群11aの間を抜けて、図4(a)の矢印に示すように、反対側に移動できるようになされている。
【0055】
次に、本装置1を用いたシート4の導紙作業の一例について、図4(a)〜(c)を参照しながら、以下に詳述する。尚、図4(a)〜(c)において、図を分かり易くするために、第1ロール群11a及び第2ロール群11bそれぞれを構成するロールの数を、少なくして描いている。
まず、装置筐体2の側面24を外した後、図4(a)に示すように、シート4の先端部4aを、シート入口21aの駆動ロール13aにS字状に掛け渡し、シート入口21aから装置筐体2内へ導入し、入口ガイドロール15aに掛け渡した後、一対のガイドロール16a、16bに掛け渡す。
【0056】
次に、図4(b)に示すように、蛇行搬送部11における第2ロール群11bを、装置筐体2内を右方向に、第1ロール群11aの間を抜けて、反対側に移動した後、シート4の先端部4aを、第1ロール群11aと第2ロール群11bとの間に通した後、出口ガイドロール15bに掛け渡し、シート出口21bから装置筐体2外へ導出した後、シート出口21bの駆動ロール13bにS字状に掛け渡す。
【0057】
然る後、シート入口21aの駆動ロール13aのみ駆動して、シート4を搬送しつつ、図4(c)に示すように、第2ロール群11bを、図4(c)の矢印で示すように、装置筐体2内を左方向に、第1ロール群11aの間を抜けて元の位置に移動し、シート4を、第1ロール群11a及び第2ロール群11bを蛇行するように順次掛け渡した状態を完成した後、外した側面24を装置筐体2の元の位置に装着して本導紙作業を終了する。
【0058】
前述したように、本装置1における導紙作業は、シート4を手作業で蛇行搬送部11に掛け渡す必要がなく、容易となっている。従って、作業者が耐熱手袋等の所定の保護具を装着していれば、装置筐体2内の温度が室温にまで低下していなくとも、安全に導紙作業を行なうことができるため、導紙にかかる時間が短く、シート4の熱処理を効率良く行なえる。
【0059】
次に第2実施形態の長尺状シートの熱処理装置1を、図5を参照しながら説明する。第2実施形態について、特に説明しない点については、第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図5において、図1〜図4と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0060】
本発明の好ましい第2実施形態の長尺状シートの熱処理装置1において、蛇行搬送部11は、図5に示すように、装置筐体2内の上下方向に間隔をあけて配設され、それぞれ離間する複数のロールからなる第1ロール群11a及び第2ロール群11bから形成されている。第1ロール群11a及び第2ロール群11bは、上下同士のロールが対向しないように、第2ロール群11bが第1ロール群に対して左方向にずれて配設されており、第2ロール群11bは、装置筐体2内を上方向に、第1ロール群11aの間を抜けて、反対側に移動できるようになされている。
【0061】
尚、装置構成によっては、第2ロール群11bは、第1ロール群11aに対して右方向にずれて配設されていても良いし、また第1ロール群11aが第2ロール群11bに対してずれて配設されていても良い。
【0062】
本装置1において、熱風流入口22aは、シート出口21bと同じ側面24に設けられており、熱風流出口22bは、シート入口21aと同じ側面24に設けられている。通気孔14は、熱風流出口22aの周囲に4つ設けられている。
【0063】
本装置1の整流板12b、12aには、シート入口21a及びシート出口21bと同形の開口部が設けられており、シート入口21aから装置筐体2内へ連続的に導入されたシート4は、整流板12bの開口部を通って、蛇行搬送部11へ搬送され、蛇行搬送部11から整流板12aの開口部を通り、シート出口21bから装置筐体2外へ連続的に導出されるようになっている。
【0064】
整流板12b、12aそれぞれの開口部における蛇行搬送部11側には、入口ガイドロール15a及び出口ガイドロール15bそれぞれと対向する位置に、ガイドロール16,16が設けられている。
その他の構成は、前述した熱処理装置1と同様である。
【0065】
前述した本実施形態の熱処理装置1によれば、前述した実施形態と同様の効果が奏される。また、熱風流入口22a及び熱風流出口22bの装置筐体2における配設位置については、本発明の装置を設置する場所の状況に応じて、本装置1のように装置筐体2の側面24に設けても良いし、前述した実施形態のように上面23a及び下面23bに設けても良い。
【0066】
本発明の長尺状シートの熱処理装置は、前述した実施形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、本発明の熱処理装置1は、各実施形態において、シート4の導紙作業の際、第2ロール群11bが、装置筐体2内を右方向又は上方向に移動できるようになされていたが、第1ロール群11aが、装置筐体2内を左方向又は下方向に移動できるようになされていても良い。
【0067】
また、整流板12a、12bは、各実施形態において、パンチングメタルであったが、所定の耐熱性を有し且つ通気性を有する材料であれば良く、例えばワイヤーメッシュ等であっても良い。また、駆動ロール13a、13bは、各実施形態において、シート4が一対の駆動用ロール131,131にS字状に掛け渡されていたが、シート4は、一対の駆動用ロール131,131間にニップされて、繰り出されるようになっていても良い。
更に、第1実施形態の熱処理装置1において、蛇行搬送部11における第1ロール群11a及び第2ロール群11bは、装置筐体2内の左右方向に間隔をあけて配設されていたが、第1ロール群11a及び第2ロール群11bは、図6に示すように、装置筐体2内の左右方向に間隔をあけて配設されていても良い。第1ロール群11a及び第2ロール群11bは、上下同士のロールが対向しないように、第2ロール群11bが第1ロール群に対して左方向にずれて配設されており、第2ロール群11bは、装置筐体2内を上方向に、第1ロール群11aの間を抜けて、反対側に移動できるようになされている。
【0068】
前述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
本発明の長尺状シートの熱処理装置は、長尺状シートの乾燥、長尺状不織布の嵩回復、長尺状ゴムシートの加硫等に用いることができる。
【0069】
次に、前述した長尺状シートの熱処理装置を用いる、本発明の長尺状不織布の嵩回復方法の好ましい一実施態様を、図1及び図7を参照しながら、以下に説明する。
【0070】
本発明の長尺状不織布の嵩回復方法の本実施態様は、ロール状に巻回されている不織布原反から不織布4を繰り出し、通気性を有する長尺状シートとしての該不織布4を、前述した長尺状シートの熱処理装置1におけるシート入口21aから導入し、蛇行搬送部11で搬送しつつ、熱風流入口22aから装置筐体2内に流入した熱風により熱処理をして、嵩を増加させるものである。
【0071】
本実施態様について、更に以下に説明する。
本実施態様の方法の対象物である不織布4は、通気性を有し、図7(a)及び(b)に示すように嵩高な三次元形状のものであり、第1層41及びこれに隣接する第2層42を備えている2層からなる多層構造のものである。第1層41と第2層42とは多数の接合部43において部分的に接合されている。接合部43は全体として菱形格子状のパターンを形成している。接合部43は圧密化されており、不織布4における他の部分に比べて厚みが小さく且つ密度が大きくなっている。接合部の形状には例えば矩形、線状、星形等があり、図7(a)及び(b)に示す接合部43は円形となっている。
【0072】
不織布4は、前記の菱形格子状のパターンからなる接合部43によって取り囲まれて形成された領域を多数有している。この領域において、第1層41は凸状の三次元的な立体形状をなしている。この立体形状をなしている部分はドーム状の形状をしている。一方、第2層42はほぼ平坦な形状となっている。そして不織布4全体としてみると、その第2層42側の外面が平坦であり且つ第1層41側の外面に多数の凸部を有している構造となっている。
【0073】
第1層41は、捲縮を有する熱可塑性繊維(以下、単に捲縮繊維という)を含む層である。捲縮繊維としては、機械捲縮によって二次元的にジグザグ状に捲縮した繊維や、螺旋状に三次元捲縮した繊維などを用いることができる。第1層41は、捲縮繊維100%から構成されていてもよく、或いは捲縮繊維に加えて熱融着性繊維、例えば芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維を含むこともできる。どのような繊維を用いる場合にも、実質的に熱収縮性を有しないか、又は後述する第2層42に含まれる熱収縮性繊維の熱収縮温度以下で熱収縮しないものが用いられる。捲縮繊維はその繊度が1〜11dtex、特に1.5〜7dtexであることが、肌触り、感触及び液透過性の点から好ましい。一方、第2層42は熱収縮性繊維を含む層である。熱収縮性繊維はその繊度が1〜11dtex、特に2〜7dtexであることが、収縮性と液透過性の点から好ましい。
【0074】
不織布4の製造方法及びその構成繊維等の詳細については、本出願人の先の出願に係る特開2002−187228号公報に記載されている。製造方法について簡単に述べると、先ず捲縮繊維を含む繊維原料を用いて第1層のカードウエブを製造する。これとは別に、熱収縮性繊維を含む繊維原料を用いて第2層のカードウエブを製造する。第2層のカードウエブ上に第1層のカードウエブを重ね合わせ、両者を所定パターンからなる接合部において部分的に接合する。接合には例えば超音波エンボスやヒートエンボスが用いられる。次いで、第2層のカードウエブに含まれている熱収縮性繊維の熱収縮開始温度以上で、エアスルー方式によって熱風を吹き付ける熱処理を行い、第2層を熱収縮させると共に接合部13によって取り囲まれた領域に位置する第1層41を凸状に突出させ三次元立体形状を形成する。更に、構成繊維の交点を熱融着させる。これによって不織布4が得られる。斯かる製造方法で製造された不織布4は、一旦ロール状に巻回され原反となされて保管される。
【0075】
不織布4の原反は、装置1よりも上流の位置に配置され、該原反から不織布4が繰り出される。ロール状に巻回された状態にある不織布原反における不織布4は、巻回圧によってその嵩が減じられている。特に、前述の通り不織布4は嵩高な三次元形状を有していることから、巻回圧による嵩の減少は著しい。この状態の不織布4を、装置1に通すことによってその嵩を回復させる。
【0076】
先ず、前述したように導紙作業を行なう。次に、ロール状に巻回されている不織布原反から繰り出された不織布4を、シート入口21aの駆動ロール13aにより所定の速度で搬送し、シート入口21aから装置筐体2内へ導入する。装置筐体2内へ導入された不織布4は、入口ガイドロール15aを介して、蛇行搬送部11へ送られる。
蛇行搬送部11において、不織布4は第1ロール群11a及び第2ロール群11bを蛇行するように搬送されつつ、不織布4には、熱風流入口22aから装置筐体2内へ入り整流板12aにより整流された熱風が、吹き付けられる。熱風は、不織布4を貫通する方向に吹き付けられるため、吹き付けられた熱風は不織布4を貫通する。意外にも、この熱風の吹き付けによる加熱操作によって、嵩が減じられた状態にある不織布10の嵩が増加して、巻回前の嵩と同程度にまで回復することが、本発明者らの検討によって判明した。巻回圧による不織布4の嵩の減少は、捲縮繊維が含まれている第1層41において顕著であるが、前記の熱風の吹き付けによる加熱操作によって、第1層41の嵩が非常に回復する。このことは、不織布4の嵩の回復は、第1層41に含まれている捲縮繊維の嵩の回復が主たる要因であることを意味する。
【0077】
蛇行搬送部11において熱処理を受けた不織布4は、出口ガイドロール15bを介して、シート出口21bから装置筐体2外へ導出され、シート出口21bの駆動ロール13bにより所定の速度で次工程へ搬送される。
【0078】
前述した不織布4の嵩回復方法における好ましい各条件は以下の通りである。
シートの搬送速度は、不織布4の材質、嵩の減じられている程度等によって異なるが、不織布4が熱可塑性繊維を含む場合には、40〜350cm/秒、特に80〜250cm/秒であることが好ましい。
熱風の温度は、不織布の材質、嵩の減じられている程度等によって異なるが、不織布4が熱可塑性繊維を含む場合には、90〜120℃、特に100〜110℃であることが好ましい。また、不織布4に熱融着性繊維が含まれている場合には、熱風の温度は、該熱融着性繊維の融点よりも5〜30℃、特に10〜20℃低い温度であることが好ましい。
熱風発生装置3から装置筐体2へ送り込まれる熱風の風量は、5〜50m3/分、特に10〜30m3/分であることが好ましい。
【0079】
不織布4が、熱処理を受けることにより、長手方向に収縮する性質を有する場合には、シート入口21aの駆動ロール13aと、シート出口21bの駆動ロール13bとの周速の比は、1.08:1〜1.01:1、特に1.03:1〜1.01:1とすることが好ましい。一方、不織布4が、熱処理を受けることにより、長手方向に伸張する性質を有する場合には、シート入口21aの駆動ロール13aと、シート出口21bの駆動ロール13bとの周速の比は、1:1.08〜1:1.01、特に1:1.03〜1:1.01とすることが好ましい。
尚、不織布4が、熱処理を受けても、長手方向の長さが実質的に変化しない場合には、シート入口21aの駆動ロール13a及びシート出口21bの駆動ロール13bそれぞれの周速を、同じにして良いことはいうまでもない。
【0080】
前述した条件において、通気孔14の開度は、シート入口21a及びシート出口21bそれぞれから、装置筐体2内へ流入する空気の量が、0.3〜4m3/分、特に0.3〜1m3/分となるように調節することが好ましい。
【0081】
以上の操作によって、不織布4の嵩(厚み)は熱風の吹き付け前の嵩の約1.5〜2倍にまで回復する。
【0082】
嵩が回復した不織布4は、引き続き次工程である加工工程に付される。この加工工程へ付す場合には、不織布4を巻き取らずに、厚みが回復した状態のままで搬送することが好ましい。加工工程としては、不織布4の用途に応じて様々な工程があるが、その典型的な一例として、生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の製造工程がある。
【0083】
本発明の長尺状不織布の嵩回復方法は、前述した実施態様に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、本実施態様においては、図1に示す装置を用いていたが、図5又は図6に示す装置を用いても良い。
【0084】
また、本実施態様においては、前記通気性を有する長尺状シートとしては、ロール状に巻回されている不織布原反から繰り出した不織布を用いていたが、該通気性を有する長尺状シートとして、通気性を有する開孔フィルム、通気性を有する不織布と開孔フィルムとの積層体等の長尺状シートであっても良い。熱風が、通気性を有する長尺状シートを貫通することにより、該シートの熱処理を効率よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の長尺状シートの熱処理装置における第1実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の熱処理装置を上方からみた平面図である。
【図3】図3は、図2のX−X線断面図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、図1の熱処理装置にシートを導紙する様子を模式的に示しており、(a)は蛇行搬送部にシートを導紙する前の状態を示しており、(b)は蛇行搬送部に導紙している状態を示しており、(c)は導紙が終了した状態を示している。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態の熱処理装置を示す図3に相当する断面図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施形態の熱処理装置を示す図3に相当する断面図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、本発明の方法の適用対象となる不織布を示す模式図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるa−a線断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 熱処理装置
11 蛇行搬送部
11a 第1ロール群
11b 第2ロール群
12a,b 整流版
13a,b 駆動ロール
14 通気孔
15a 入口ガイドロール
15b 出口ガイドロール
16a、b ガイドロール
2 装置筐体
21a シート入口、
21b シート出口
22a 熱風流入口
22b 熱風流出口
23a 上面
23b 下面
24 側面
3 熱風発生装置
4 長尺状シート(不織布)
41 第1層
42 第2層
43 接合部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート入口及びシート出口と、熱風流入口及び熱風流出口とを有する装置筐体と、熱風発生装置とを備えており、該熱風発生装置で発生した熱風が該熱風流入口から該装置筐体内に入り、該熱風流出口から出て行くようになされている長尺状シートの熱処理装置であって、
前記装置筐体内には、蛇行搬送部が設けられており、該蛇行搬送部は、該装置筐体内の上下方向又は該上下方向と直交する方向に間隔をあけて配設され、それぞれ離間する複数のロールからなる第1ロール群及び第2ロール群から形成されており、
前記第1ロール群及び第2ロール群を蛇行するように順次掛け渡した前記長尺状シートが、前記シート入口から連続的に導入され且つ前記シート出口から連続的に導出されるようになされており、
前記装置筐体内には、前記熱風流入口と前記蛇行搬送部との間及び前記熱風流出口と該蛇行搬送部との間それぞれに整流板が設けられており、
前記シート入口及び前記シート出口それぞれには、独立に周速の調節が可能な、シート搬送用の駆動ロールが配設されており、
前記装置筐体における、前記熱風流入口と前記蛇行搬送部との間の前記整流板より前記熱風流入口側の部分には、熱風排出用の通気孔が設けられている長尺状シートの熱処理装置。
【請求項2】
前記装置筐体は、直方体形状を有し、上面、下面及び四側面から形成されており、前記シート入口及び前記シート出口それぞれは、該装置筐体の相対向する側面に設けられた横長矩形形状の開口部であり、その横長な方向を前記上面及び前記下面それぞれと平行になるように前記側面に設けられており、前記熱風流入口は前記上面に設けられており、前記熱風流出口は前記下面に設けられている請求項1記載の長尺状シートの熱処理装置。
【請求項3】
前記熱風流入口は、前記シート入口よりも前記シート出口に近い位置に設けられており、前記熱風流出口は、前記シート出口よりも前記シート入口に近い位置に設けられている請求項2記載の長尺状シートの熱処理装置。
【請求項4】
前記熱風流入口と前記蛇行搬送部との間に設けられている前記整流板と、該蛇行搬送部との間には、シート入口から導入した前記長尺状シートを前記蛇行搬送部へ掛け渡すためのガイドロールが設けられており、該ガイドロールは、前記熱風流入口から前記装置筐体内に流入する熱風が、直接当たらないように配設されている請求項1〜3の何れかに記載の長尺状シートの熱処理装置。
【請求項5】
前記第1ロール群及び前記第2ロール群は、前記上下同士又は該上下方向と直交する方向同士のロールが対向しないように、該第2ロール群が該第1ロール群に対して該上下方向と直交する方向又は該上下方向にずれて配設されており、該第2ロール群は、該上下方向又は該上下方向と直交する方向に、該第1ロール群の間を抜けて、反対側に移動できるようになされている請求項1〜4の何れかに記載の長尺状シートの熱処理装置。
【請求項6】
通気性を有する長尺状シートを、請求項1〜5の何れかに記載の長尺状シートの熱処理装置における前記シート入口から前記装置筐体内に導入し、前記蛇行搬送部で搬送しつつ、前記熱風流入口から該装置筐体内に流入した熱風により熱処理をする通気性を有する長尺状シートの熱処理方法。
【請求項7】
ロール状に巻回されている不織布原反から不織布を繰り出し、該不織布を、請求項1〜5の何れかに記載の長尺状シートの熱処理装置における前記シート入口から前記装置筐体内に導入し、前記蛇行搬送部で搬送しつつ、前記熱風流入口から該装置筐体内に流入した熱風により熱処理をして、嵩を増加させる長尺状不織布の嵩回復方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−177364(P2007−177364A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376826(P2005−376826)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】