説明

長時間作用オキシテトラサイクリン組成物

【課題】オキシテトラサイクリン組成物は、低温で相対的に高い粘度を示すので、注射が困難であり、安定性が低く、活性成分の濃度が制限されている。これらの欠点を軽減するために、好適な錯化剤およびより好ましい共溶媒を決定するための注射用組成物の提供。
【解決手段】より高い残留効果を発揮し、注射部位での痛み、腫れ、組織刺激或いは壊死のような悪影響が少なく、主成分としてテトラサイクリン化合物を遊離の塩基或いはこれと生理学的に許容される酸との塩の形態で含む注射用組成物が、実質的に当モル量のマグネシウム化合物と錯体を形成して、(i)a)グリセロールホルマル約10〜約50%v/vとb)ポリエチレングリコール約1〜15%v/v、或いは(ii)N-メチルピロリドン約25〜約75%v/vを含む水混和性溶媒系に可溶化される;該組成物は、必要ならば、生理学的に許容されるpHを維持するに十分な量のpH調整剤を含有しており、その残余は、適量の水である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射部位での痛み、腫れ、組織刺激或いは壊死のような公知の悪影響が少なく、より高い残留効果を発揮するテトラサイクリン類、特にオキシテトラサイクリンを含む注射可能な剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラサイクリン類および特にオキシテトラサイクリンを含む医薬組成物の調製は、第1には組成物安定性に対する、また第2には非経口的投与に対するインパクトを有する水溶性の制約により、常に挑戦すべき課題を呈している。
【0003】
従来技術によるオキシテトラサイクリン組成物は、低温で相対的に高い粘度を示すので、注射が困難であり、安定性が低く、活性成分の濃度が制限されている。従って、これらの欠点を軽減するために、好適な錯化剤およびより好ましい共溶媒を決定するための精力的な研究がなされている。当該技術を検討すると、配合物中における錯化剤としてのカルシウム、および特にマグネシウムの存在が必須であるように思われる。種々の共溶媒システムを採用することにより、安定性および患部への輸送の点で幾つかの改善がなされたが、より高い濃度の負荷および残留効果が、改善が必要とされる領域として未だ残っている。これは、特に獣医学的な目的にとって大きな関心事である。この分野では、動物の取り扱いに際し最小の努力で且つ処置を必要とする動物に対する最小の副作用で、高い効果の用量を与える必要がある。
【0004】
現在、いわゆる「長時間作用」オキシテトラサイクリン処方は、代表的には、オキシテトラサイクリン200mg/mlを含み、20mg/kg・体重の割合で投与され、約4日程度までの期間検知できるオキシテトラサイクリン血液中残留レベルにより決定される活性を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来提案されている配合物において観察される欠点を可能な限り最大限軽減するとともに、実質的により長期の作用効果を発揮する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特に、以下において特別に記述される発明は、10〜40mg/kg・体重の投与割合でのオキシテトラサイクリン製剤の投与を準備するものであり、30mg/kgの値の、罹病性の生物に対する有効プラズマレベルが9日を超えるという延長された期間を動物に与える。これは、公知技術を考えると、驚くべき業績である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
非水系溶媒中でのオキシテトラサイクリンの溶解性は、ユージン ガンス(Eugene Gans)およびタケル ヒグチ(Takeru Higuchi)により、考察されている。Journal of the American Pharmaceutical Association、1957、Vol XLVI,pp587-591参照。
【0008】
この分野における特許文献は、非常に多数にのぼっており、テトラサイクリン組成物の処方について行われた数十年間の研究の一端を示す以下の特許を挙げることができる;
GB-A-894 619,GB-A-1 131 007,GB-A-1 250 304,GB-A-1 286 351,GB-A-1 427 882,GB-A-1 494 558,GB-A-1 508 601,GB-A-1 514 838,GB-A-1 520 197,GB-A-1 538 903,GB-A-1 563 478,GB-A-1 592 053,GB-B-2 047 097;EP-B-38 103,EP-B-96 942;US-A-2 516 080,US-A-2 980 584,US-A-2 990 331,US-A-3 062 717,US-A-3 219 529,US-A-3 557 280,US-A-3 712 949,US-A-3 957 972,US-A-4 011 313,US-A-4 018 889,US-A-4 020 162,US-A-4 126 680,US-A-4 386 083,US-A-4 399 127,US-A-4 772 460,US-A-4 957 972およびUS-A-5 075 295。
【0009】
これらの文献から、2-ピロリドン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール類、カプロラクタム、2-ピペリドン、およびグリセロールホルマル(glycerol formal)(グリセロールとホルムアルデヒドとの反応生成物)を含む多数の水分散性錯体安定剤或いは水混和性共溶媒が、特定の処方で提案されていることがわかる。しかしながら、上記の共溶媒が等しく相互に代替可能であるか、或いはその様な代替の効果が、所定の処方について、完全に予測可能であるかは、全く明らかでない。
【0010】
US-A-4 386 083は、グリセロールホルマルとともに、酢酸マグネシウムと塩化マグネシウムとを併用することを提案している。一方、US-A-4 772 460は、N-メチルピロリドン(1-メチル-2-ピロリドン)と可溶性マグネシウム化合物の使用を提案している。US-A-5 075 295は、ポリエチレングリコール400と酸化マグネシウムとを含み、特に30%までのオキシテトラサイクリン濃度を目的とする組成物を対象としている。しかしながら、提示された実施例は、25%までのオキシテトラサイクリン濃度を達成する可能性を示しているに過ぎないと判断され、本出願人の知る限り、現在市販されている製品で20%を超える濃度を達成できるものは存在しない。
【0011】
従って、本発明は、有効成分として、遊離の塩基或いはこれと生理的に許容される酸との塩の形態でテトラサイクリン化合物を含み、該化合物は実質的に等モル量のマグネシウム化合物と錯体を形成して、下記の水混和性溶媒に対し可溶化されている組成物を提供する;
(i) a)約10〜約50%v/vの量のグリセロールホルマルと
b)約1〜15%v/vの量のポリエチレングリコール、或いは
(ii)N-メチルピロリドン約25〜約75%v/v。
【0012】
本発明による組成物は、必要ならば、生理学的に許容されるpHを維持するに十分な量のpH調整剤を含有しており、その残余は、適量の水である。
【0013】
本発明による組成物は、必要に応じて、10%w/vまでのポリビニルピロリドンのような増粘剤を含んでいてもよく、またこの種の製剤において通常使用されている配合助剤乃至添加物を含んでいても良い。すなわち、組成物は、抗酸化剤(例えば、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム)および、好ましくは約7.5〜約9.5のpH域、さらに好ましくは約8.5〜9.0のpH域を得るために、pH調整剤(例えば、モノエタノールアミン)を含んでいても良い。
【0014】
好ましくは、本発明組成物は、酸化マグネシウム或いは塩(例えば、塩化マグネシウム)を含む。
【0015】
本発明による好ましい組成物は、等モル比のマグネシウム化合物(好ましくは塩)と錯体を形成している塩基の或いはその塩酸塩の形態のオキシテトラサイクリン約15〜約35%w/vを含有し、これは、ポリエチレングリコール約1〜約15%v/vとグリセロールホルマル約10〜約50%v/vを含む溶媒システム中に可溶化されている。特に、最も好ましい組成物は、オキシテトラサイクリン約30%w/v、グリセロールホルマル約40%、ポリエチレングリコール約10%v/vをマグネシウム含有錯化剤或いは安定化剤、抗酸化剤および残余を構成する水を含有する。
【0016】
この組成物においては、酸化マグネシウムは、約2.7%w/vで存在することが適切であり、抗酸化剤として、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム約0.4%w/vを使用することができる。その結果、本発明によれば、下記の処方からなり、約10〜約40mg/kg・体重の投与が可能となる製剤が得られる。
【0017】
オキシテトラサイクリン 300mg
酸化マグネシウム 27mg
ホルムアルデヒドスルホキシル酸 ナトリウム 4mg
グリセロールホルマル 0.4ml
ポリエチレングリコール 0.1ml
モノエタノールアミン q.s.pH8.6〜8.8
注射用水 1mlまで
【実施例】
【0018】
以下の実施例により本発明をより詳細に説明する。この実施例は、単に実用的な例を示すことを目的とするものである。
【0019】
下記の成分を使用して、以下で述べる手順でオキシテトラサイクリン製剤を調製した。
活性成分−
オキシテトラサイクリン 30%w/v
賦形成分
酸化マグネシウム 2.7%w/v
ホルムアルデヒドスルホキシル酸 ナトリウム 0.4%w/v
グリセロールホルマル 40%w/v
ポリエチレングリコール 10%w/v
モノエタノールアミン q.s.pH8.6〜8.8
注射用水 100%w/vまで
不活性雰囲気を有する制御空間を設け、その内部に混合用および温度調節可能な加熱装置を配置した。窒素ブランケットがこの目的に適していると考えられる。提案された組成物の上記の成分を混合した。まず、水全量の一部を選択された溶媒と混合した。ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、酸化マグネシウムおよびオキシテトラサイクリンを順次加え、全成分が溶解するまで、連続的に攪拌しつつ且つ温度を約65℃に維持した。次いで、組成物を30℃未満に冷却し、十分量のモノエタノールアミンを添加することにより、pHを8.0〜9.0に調整した。最後に、水を加えて全体量とし、pHをチェックし、必要ならば調整し、さらに組成物を0.2μmフィルターにより濾過し、所定の容器に充填した。
【0020】
他の実施例において、ポリビニルピロリドンのような増粘剤が必要な場合には、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムの後に添加することが好ましい。
【0021】
下記の各表は、実施例1〜14の詳細を示す。これらのそれぞれは、優れた安定性を示し、所望の投与レベルと持続性作用を達成した。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
なお、本発明は以下項1〜10にも関する。
項1.有効成分として、遊離の塩基或いはこれと生理学的に許容される酸との塩としてのテトラサイクリン化合物を含み、該化合物は実質的に等モル量のマグネシウム化合物と錯体を形成して、下記の水混和性溶媒系に可溶化されている組成物:
(i) a)約10〜約50%v/vの量のグリセロールホルマルと
b)約1〜15%v/vの量のポリエチレングリコール;或いは
(ii)N-メチルピロリドン約25〜約75%v/v、該組成物は、必要ならば、生理学的に許容されるpHを維持するために十分な量のpH調整剤を含有しており、その残余は、適量の水である。
項2.増粘剤として、約10%w/vを上限とする量のポリビニルピロリドンを含有する項1に記載の組成物。
項3.マグネシウム化合物が、酸化マグネシウムである項1または2に記載の組成物。
項4.マグネシウム化合物が、マグネシウム塩である項1または2に記載の組成物。
項5.マグネシウム塩が、塩化マグネシウムである項4に記載の組成物。
項6.テトラサイクリン化合物が、約15〜約35%w/vのオキシテトラサイクリン塩基或いはその塩酸塩である項1に記載の組成物。
項7.オキシテトラサイクリン約30%w/v、グリセロールホルマル約40%、ポリエチレングリコール約10%v/vおよびマグネシウム含有錯化剤または安定化剤、抗酸化剤および残余水を含む項1に記載の組成物。
項8.酸化マグネシウムが約2.7%w/v量で存在し、抗酸化剤として、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムが約0.4%w/v量で使用される項7に記載の組成物。
項9.下記の成分からなる動物の治療用注射組成物であって、約10〜約40mg/kg・体重の投与を準備する組成物:
オキシテトラサイクリン 300mg
酸化マグネシウム 27mg
ホルムアルデヒドスルホキシル酸 ナトリウム 4mg
グリセロールホルマル 0.4ml
ポリエチレングリコール 0.1ml
モノエタノールアミン q.s. pH8.6〜8.8
注射用水 1mlまで
項10.実施例1〜14のいずれかに記載の動物の治療用注射組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の治療用注射組成物であって、それは組成物を構成するために
オキシテトラサイクリン(%w/v) 30
酸化マグネシウム(%w/v) 2.7
ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(%w/v) 0.4
グリセロールホルマル(%v/v) 30
ポリエチレングリコール 200(%v/v) 20
ポリビニルピロリドン K12(%w/v) 3
及び注射用水を含む。
【請求項2】
動物の治療用注射組成物であって、それは組成物を構成するために
オキシテトラサイクリン(%w/v) 30
酸化マグネシウム(%w/v) 2.7
ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(%w/v) 0.4
グリセロールホルマル(%v/v) 35
ポリエチレングリコール 200(%v/v) 20
及び注射用水を含む。

【公開番号】特開2007−326875(P2007−326875A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206510(P2007−206510)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【分割の表示】特願平8−504179の分割
【原出願日】平成7年7月5日(1995.7.5)
【出願人】(507241964)ノルブルック ラボラトリーズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】