説明

長時間作用性抗体を製造するためのヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)ワクチンの送達方法

本発明は、免疫付与方法を含み、当該方法において、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)ワクチン抗原は、単純な製造方法を用いて無機塩/バイオポリマー複合体中に取り込まれている。得られた固相マトリックスを微小粒子の形態で、ヒト被験体に投与する。本方法は、ヒトでの使用に容認されるアジュバント化合物を含有する天然油および水から成るエマルジョン中に微小粒子を懸濁し、当該懸濁液の薬学的用量を筋肉内注射することを含む。ワクチン抗原は、hCGのβサブユニットのペプチド断片とキャリアタンパク質、ジフテリアトキソイドからなるコンジュゲートである。本製剤中にて送達されるワクチン抗原は、癌またはホルモン関連疾患の治療のために、レシピエントにおいて抗体を惹起するのに有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はhCGベースのワクチンの新規製剤方法に関し、当該方法は、1または複数のhCGペプチド/ジフテリアトキソイド(DT)または破傷風トキソイド(TT)コンジュゲートを無機/バイオポリマーマトリックスに取り込むこと、およびそれを合成アジュバントを含有する油中水ベースのエマルジョン中にてヒトに投与することを含む。
【背景技術】
【0002】
医学的用途において有効性および安全性を付与するのに好適なアジュバント/送達系が欠如しているために、多くの新たに開発されたワクチンの利用が妨げられている。多数の新規ワクチンが、組換えDNA技術またはペプチド合成によって作製された、抗原分子の断片またはサブユニットを利用して開発されている。これらは、当該断片またはサブユニットに対する免疫応答が適切である場合に有効であると確認される。多くの状況において、適当な免疫応答(抗体または細胞活性化)を惹起するには、注射部位に許容できない局所的な炎症反応や、他の望ましくない副作用を生じるアジュバントまたはビヒクルを使用することを必要とする。ヒトワクチンへの使用に唯一承認されているアジュバントはアルミニウム塩であり、これは抗原に吸収されると、当該抗原に対する免疫応答を増強する。残念ながら、これらのアジュバントはごく限られた抗原にたいしては十分に有効であるが、サブユニットまたはペプチド抗原を使用する新規ワクチンにはほとんど有効ではない。一般的に、これらのワクチンは免疫原性が弱く、アルミニウム塩にもたらされるよりも、より有効なアジュバント効果を必要とする。他の一般的に利用可能なアジュバント(例えば、鉱油/鉱水エマルジョン)を用いた場合、有効性が示されるが、注射部位における疼痛および組織炎症などの副作用により、そのヒトにおける一般的な使用がしばしば妨げられる。
【0003】
所与の抗原に対する免疫応答の生成は、以下の一連の生物学的事象に依拠する:リンパ球様細胞がアクセスしやすい部位への抗原の送達;Tリンパ球(T−細胞)によって抗原が外来のものとして認識される微環境へのリンパ球様細胞の誘引;リンパ球受容体への抗原エピトープの結合;ならびに抗原提示細胞(APC)、T細胞およびBリンパ球 (B細胞)による適当なサイトカインの産生(これらは抗体産生細胞および/または細胞傷害性細胞のクローン性増殖に必要とされる)。これらのリンパ球様細胞を誘引および刺激し得る天然分子および合成分子が多数存在する。さらに、持続性液性免疫は、濾胞樹状細胞に結合している分解されていないエピトープを保持することによって、またはデポ(depot)もしくはマイクロ粒子より抗原を持続的に放出することによって、抗原にB細胞を持続的に曝露することを必要とする。この抗原の持続性は、頻繁に追加免疫を行うことなく高レベルの抗体産生を維持するのに必要とされる。
【0004】
免疫刺激の様々な方法を規定するのに用いられる専門用語はしばしば、誤解を招く恐れがあり、また紛らわしい。歴史的に、「アジュバント」という用語は、抗原と共に投与された場合に、抗原が単独で投与された場合よりも、当該抗原に対して増強された免疫応答を刺激することが可能な任意の物質を意味する。この増強された応答は通常、アジュバントによるリンパ球様細胞の非特異的刺激の影響を受ける。多くのアジュバント(ヒトに使用することが許容できないもの、フロイント完全アジュバント(FCA)など)は、上記生物学的事象の多くを刺激することが可能であるが、その他のアジュバントはいくつかの生物学的事象の活性を示すだけである。より良好な免疫増強物質を同定するための研究が進むにつれて、これら化合物の特性をより正確に規定することが必要となってきている(例えば、細胞誘引物質、マクロファージ(APC)活性化因子、T細胞マイトジェン、B細胞マイトジェンまたは抗原送達系)。これら物質の多くは、2つ以上の生物学的効果を生じることが可能であったとしても、その主要な活性の点から規定されている。多くの製剤および免疫法は、活性の組み合わせを示す。本発明は、抗体レベルの増大を誘導し、新規送達系を使用して抗原の持続的な供給を保証し、それによって長期間にわたって最小限の副作用で抗体産生を維持するように設計されたワクチン調製法に焦点を当てる。
【0005】
例えば、新たに開発されたワクチンのいくつかは、感染症よりも病状を治療するために設計される。少なくとも2種のhCGワクチンが、避妊目的または癌治療のために開発されている。これらのワクチンを用いて臨床試験が実施されており、結果が報告されている。(非特許文献1および非特許文献2)。これらのうちのいくつかはヒト用途において有望であることが示されているが、これらの示される用途ではしばしば、注射部位において疼痛および/または膨れが高頻度で生じることや、多数回の免疫付与を必要とすることが報告されている。このような副作用はしばしば、幾人かの患者にとって耐え難いものである。
【0006】
本明細書中に記載されるhCGワクチン製剤の主な用途の1つは、癌を治療するためのものである。hCGは癌胎児性抗原(胚発生の間に高発現されるが、正常な成体組織ではごく少量発現される抗原)として分類される。hCGは新生物組織では過剰発現される。断片のみが発現され得るが、新生細胞によって発現されるhCGが変異しているという証拠は現在のところ存在しない。絨毛性/生殖細胞より生じる腫瘍(絨毛腫、胞状奇胎および精巣の胚性癌腫を含む)によるhCGの産生は、これら疾患活性の必須マーカーであり、当該マーカーの測定は、当該腫瘍の臨床管理における中心的役割を果たす。絨毛を起源としない様々な腫瘍もまたhCGを発現することも、よく知られている。したがって、絨毛性癌および非絨毛性癌によるhCGの様々な発現が、ワクチン療法の有望な標的群を示す。
【0007】
Braunstein(非特許文献3)は、1990年に癌細胞によるhCG発現について概説し、免疫反応性hCGが、非絨毛性悪性腫瘍を有する患者のおよそ18%の血清において示されることが推定されている。hCGは、子宮頚癌(34%)、卵巣癌(29%)、膵臓癌(27%)、膀胱癌(23%)、肝臓癌(22%)および胃癌(21%)を有する患者の血清中に通常検出された。しかしながら、概説された多くの研究は、hCG、hCG様物質または遊離hCGサブユニットを、特異的でも、高アフィニティを有するものでもないポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体により認識した結果に基いていた。近年、インタクトなhCG、α−hCG、β−hCG、βサブユニットのカルボキシ末端ペプチド(CTP)およびβ−コア断片に高特異的な、より高感度のモノクローナルベースのアッセイにより、腫瘍によるhCG産生を再評価することが可能となった。例えば、高感度時間分解免疫蛍光アッセイを使用して、膵臓癌を有する患者の72%および非悪性疾患を有する患者の9%において、血清hCGの増大が確認された。正常被験体の血清においては、放射性免疫アッセイによって測定した場合に、低レベルのhCGおよび遊離α−hCGサブユニットが一般的であることが報告されている。しかし、遊離β−hCG (≧ 100 pg/ml)は、より腫瘍特異的であって、膀胱癌の患者の47%、膵臓癌の患者の32%および子宮頸部癌の患者の30%、さらに生殖細胞腫瘍を有する大部分の患者の血清において検出された。正常被験体は、100 pg/mlよりも低い遊離β−hCG血清レベルを有する。
【0008】
膜結合性hCGおよび/またはサブユニットは、培養癌細胞系統の一般的な特徴である。膜結合性hCGはまた、臨床腫瘍試料の免疫組織化学研究においてしばしば検出される。Braunsteinによる要約によると、腫瘍組織におけるhCGの検出は、結腸直腸癌(52%)、肺癌(34%)、膵臓癌(31%)、食道癌(28%)、胸部癌(24%)および膀胱癌(21%)において最も頻度が高かった。免疫組織化学による検出は、およそ8〜19%の胃癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌および子宮内膜癌についても報告されている。さらに、膜結合性hCGの報告された発現は、方法および調べられた患者集団によって様々であった。胃や前立腺などの癌における発現率は、当初考えられていたよりも高く、50%を上回り得る。他の研究においては、ヒト結腸直腸癌試料におけるβ−hCG CTPの発現は、特異的なモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的に測定した場合、85%であった。他の研究者により、実質的に全ての癌細胞系の膜においてhCGが検出されたことが報告されている(非特許文献4)。
【0009】
ワクチン抗原として完全hCGホルモンを使用することは好適ではない。それは、当該ホルモンに対して生じた抗体が、他のホルモンと反応し得るためである。従って、hCGに特異的なサブユニットまたはペプチド断片を抗原として用いた。当該抗原を使用するワクチンは、避妊 (非特許文献1および非特許文献6)および癌療法 (非特許文献2および非特許文献8)の両方についてヒトで試験されている。頻回注射を必要とするアルミニウム塩および油中水エマルジョンが、これらの試験において用いられていた。ミョウバンアジュバントを使用するワクチンは、効果的な抗体レベルを維持するために頻繁な投与を必要とした。この点から当該ワクチンは実用的ではない。同様に、エマルジョンベースのワクチンの頻回注射は、より効果的ではあるが、しばしば、注射部位に望ましくないレベルの疼痛および膨れを生じた。これらhCGワクチンが改質され、当該ワクチンに有効性を付与しながらも刺激が少ない、より好適なアジュバント/送達系を使用する場合、当該hCGワクチンの幅広い用途が生じ得る。
【0010】
本明細書中に記載される特定のhCGワクチンは、ジフテリアトキソイドにコンジュゲートしたβ−hCGの2つのペプチドセグメントからなるコンジュゲートを用いる: CTP部分 (残基109−145)およびアミノ酸 38−57領域を示す第2のペプチド。本発明のこの実施形態において、天然の配列よりも、38−57ペプチド配列の類似体を用いる。得られた免疫原の組合わせはhCG反応性抗体を誘導する点においては有効であるが、より重要なことは、これらの抗体はhCG in vitroおよびin vivoにおける生体中和(bio−neutralization)においてはるかに有効であり、これは使用目的によっては価値があり得る。
【0011】
上記コンジュゲートを含有するワクチンを用いた免疫化により、転移性結腸直腸癌を有する患者の生存時間が増大したが、注射部位の疼痛および膨れなどの問題に対処することはなかった。また、多くのワクチン製剤が、高くかつ持続的な抗体応答を得るために頻回注射を要するといった事実に対処することもなかった(非特許文献2)。
【0012】
多数の研究が20年間にわたって実施され、送達ワクチンにとってより好適な系が同定された。リポソーム、生分解性ポリマーミクロスフェアおよび粘膜免疫用の製剤を用いて、多くの改良がなされた。これらの系のうちのいくつかは臨床試験にあり、今後のワクチンに有用であることが証明され得る。別の固有の系がワクチン送達を含む薬物送達のために近年開発され、上記開発下において他の系に有意な効果をもたらした。ワクチンを送達するために用いた場合、ワクチン抗原は無機塩/バイオポリマーマトリックスに取り込まれ、固相マトリックスは使用するために微細粒子にすりつぶす。当該微粒子を、ワクチンレシピエントに投与するためにエマルジョンビヒクル中に懸濁する。本方法は、最小限の副作用で、非常に効果的な免疫応答を惹起するhCGワクチン製剤を送達するのに有用であることが示され、そして本発明を包含する。
【非特許文献1】Talwar GP, Singh O, Pal R, Chatterjee N, Jallai P, Dahil K, Kaus J, Das Sk, Suri S, Buchshee, Saraya T, Saxena BN. A vaccine that prevents pregnancy in women. Proc Natl Acad Sci (USA) 91:8532−6, 1994
【非特許文献2】Moulton HM, Yoshihara, PH, Mason DH, Iversen PL, Trozzi PL. Active Specific Immunotherapy with β−Human Chorionic Gonadotropin Peptide Vaccine in Patients with Metastatic Colorectal Cancer: Antibody Response is Associated with Improved Survival, Clinical Cancer Research 8:2044−2051, 2002
【非特許文献3】Braunstein GD: Placental proteins as tumor markers. In: Immunodiagnosis of Cancer. Herberman RB and Mercer DW (eds) Marcel Dekker, Inc., New York, pp 673−701, 1990
【非特許文献4】Acevedo HF, Krichevsky A, Campbell Acevedo EA, Galyon FC, Buffo MJ, Hartsock RJ. Expression of membrane−associated human chorionic gonadotropin, its subunits and fragments by cultured human cancer cells. Cancer 69:1829−42, 1992
【非特許文献6】Jones WR, Judd SJ, Ing RMY, Powell J, Bradley J, Denholm EA, Mueller UW, Griffin PD, Stevens VC. Phase I clinicaltrial of a World Health Organization birth control vaccine. Lancet. 11: 1295−8, 1988
【非特許文献8】Triozii PL, Gochnour D, Martin EW, Aldrich W, Powell J, Kim JA, Young DC, Lombardi J. Clinical and Immunologic effects of a synthetic β−human chorionic gonadotropin vaccine. Int J Oncol 5: 1447−53, 1994
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はhCGベースのワクチンの新規製剤方法に関し、当該方法は、1または複数のhCG ペプチド/ジフテリアトキソイド(DT)または破傷風トキソイド(TT)コンジュゲートを無機/バイオポリマーマトリックスに取り込むこと、およびそれを合成アジュバントを含有する油中水ベースのエマルジョン中にてヒトに投与することを含む。トキソイドにコンジュゲートされたhCG ペプチドには、βサブユニット配列109−145および38−57で表されるペプチドや、当該配列の類似体が挙げられる。上記マトリックスは、カルシウムサルフェートヘミ−ハイドレートおよびデキストランサルフェートからなる。固相マトリックスを微粉末にすりつぶし、その後送達用のエマルジョン中に懸濁する。所望サイズの粒子は、様々な基準メッシュスクリーンを通して連続的にふるいわけることにより得る。懸濁化エマルジョンの一形態は、スクアレン、マンニデ(mannide)モノオレエート(MM)およびリン酸緩衝生理食塩水から成り得る。合成アジュバント化合物(例えば、nor−MDP)は、乳化する前に、エマルジョンの水性部に取り込むことができる。ワクチンの用量は、レシピエントに筋肉内投与する。このような製剤およびその変形物の例は、動物モデルにおいて、単回接種により、注射部位において許容できない局所的な組織反応を生じることなく、6ヶ月を上回る期間にわたって、hCGに対して高レベルの抗体反応性を惹起することが示された。これらの製剤によって生じた抗体は癌を有する患者を治療するために、および避妊のために有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
hCG ペプチド抗原の無機塩/バイオポリマーマトリックスへの取り込みは、Royer (米国特許第6,391,336号、同第6,497,901号および同第6,630,486号;これらはその全体が本明細書中に参照として援用される)に記載される方法によって行う。本発明に用いられる無機塩は、カルシウムサルフェートヘミ−ハイドレートであり、用いられるバイオポリマーはデキストランサルフェートであり、平均分子量8000ダルトンを有する形態が好ましい。取り込まれる2つのhCGペプチド抗原は、ペプチドvs. DTの特定の比率でDTにコンジュゲートしたhCGβサブユニット配列109−145および38−57または前記ペプチドの類似体あるいはこれらコンジュゲートの組合わせに相当する。TTはDTと置き換えることができる。各コンジュゲート抗原(乾燥状態が好ましい)は、塩1〜10に対して抗原1、好ましくは4:1の重量比で、カルシウムサルフェートヘミ−ハイドレートと別個に混合する。乾燥成分を完全に混合した後、大量の含水10%デキストランサルフェート(重量%)を適量の乾燥コンジュゲート/塩プレミックスに混合しながら加え、コンジュゲートが均一に分散したスラリーを形成する。湿潤状態の混合物の重量を記録する。混合物の重量がさらに変化しなくなるまで、混合物を換気しながら、2〜5日間、室温にて乾燥する。最終重量を記録して、その後、固相マトリックスを乳棒と乳鉢または機械グラインダーを使用して微粉末に細かくし、当該微粉末の含水量を調べる。含水量プラス乾燥時の水分喪失により、固相マトリックス中の抗原濃度を算出する(物質収支)。使用に望ましい微粒子のサイズは、一連の基準メッシュふるいを通してふるいにかけることによって得られる。ワクチン製剤に用いる粒子は、10〜800 mmであり、好ましくは45−150 mmのサイズである。
【0015】
抗原含有乾燥粒子は通常、環境温度における長期保存に対して安定であるが、特定の抗原の特性によっては冷蔵して保存することが望ましく、またはその必要性があり得る。
【0016】
ワクチンを処方するために、抗原含有マトリックス粒子を液状媒体に十分な粘度で懸濁し、粒子が当該懸濁液中に均一に分散するのを維持する。あるいは、粒子が注射前に容易に再懸濁できる限り、粘度の低い液状媒体を用いても良い。様々な液状ビヒクルを用いることができる(例えば、油中水エマルジョン、水中油エマルジョン、0.1〜2.0%カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸溶液、レシチン溶液または他の受容可能な医薬ビヒクル)。hCGコンジュゲート抗原に好ましいビヒクルの1つは、油相:PBSが3:2 (v/v)でスクアレンおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)からなる油中水エマルジョンである。受容可能な油は、スクアレン:MMが4:1からなる混合物によってもたらされ、これは乳化剤として作用し、エマルジョンを安定化させる。エマルジョンは、機械ミキサーまたは三方活栓によって連結された皮下注射器を使用して手動で調製する。他の抗原については、油相 vs. PBSの他の比率が、ワクチンに必要とされる抗原の溶解性および/または用量に応じて有用である。他の油、例えば、スクアランなども用いることができる。
【0017】
本発明に用いられるhCGコンジュゲートを含む最弱の抗原は、アジュバント化合物と一緒に投与して、所望の免疫応答を刺激することを要する。このような化合物は、マトリックス調製時にマトリックスに加えて抗原と混合するか、またはエマルジョンを形成する前に当該エマルジョンの水相に加え得る。この目的に有効性を示すアジュバント化合物としては、抗酸菌、細菌膜の合成断片またはこれらの合成類似体、アルミニウム塩、マグネシウム塩、脂質および他の多数の化合物が挙げられる(Adams A. Synthetic Adjuvants. New York: John Wiley & Sons, 1985)。本明細書中に開示される本発明に好ましいアジュバントは、細菌膜の合成類似体、norムラミルジペプチド(nor MDP)(これはN−アセチル−D−グルコサミン−3−y−L−Ala−D−isoGlnナトリウム塩として化学的に規定される)である。この化合物は高水溶性であり、スクアレン/PBSエマルジョンの水相に、最終エマルジョンが5〜100μg/mlの濃度となるような濃度で加える。
【0018】
ワクチンの最終製剤については、PBSおよび油エマルジョンを最初に、2本のシリンジシステム内で、油/水性混合物を滑らかな、乳白色のエマルジョンが得られるまで、当該シリンジ間を往復させることによって形成する。次に、当該エマルジョンを含むシリンジを分離し、乾燥抗原粒子を含む新たなシリンジに連結する。所定用量のマトリックス粒子(マトリックス中の抗原濃度および必要とされる抗原の重量によって決定)を次に、送達用ビヒクル中に、ビヒクル中に粒子が均等に懸濁されるまで、往復させて混合し、懸濁する。乾燥マトリックス粒子を、単位用量を滅菌バイアル、アンプル、シリンジまたは他の好適な送達手段に調剤するために、免疫付与時にビヒクルと混合しても、バルク量でビヒクルと粒子をバッチ混合することにより混合しても良い。エマルジョン中に処方されたワクチンは、2〜8℃の温度で保存するのが好ましい。
【0019】
マトリックス中の抗原濃度は12〜24重量%の間で様々であって良く、16〜18重量%の濃度が好ましい。ヒトに免疫付与するためのhCGコンジュゲートの用量は、10〜500μgの範囲であって良く、0.1〜1.5 mlを投与することができる。選択した抗原およびアジュバント用量を適当な量で、医学的に許容される部位にてレシピエントに筋肉内注射する。ヒトにおいて、医学的に許容される部位は通常、上腕、大腿部または臀部である。
【0020】
粒子がエマルジョン中に懸濁されている場合、水性ビヒクル中に懸濁されている場合よりも、組み入れた抗原の放出が緩やかである(図1)。
【実施例】
【0021】
実施例I
無機/バイオポリマーマトリックスからの免疫原の放出を調べるために、in vitro法を開発し、当該放出率を調べた。コンジュゲートDT/βサブユニットペプチド109−145 (CTP/DT)を無機/バイオポリマーマトリックス中に封入し、そして抽出媒体(PBS)中に直接懸濁するか、または当該粒子を予め作製したスクアレン/MM/PBSエマルジョン中にまず懸濁した後にPBS中に懸濁した。粒子または乳化した粒子を次に、1.0 mL PBSアリコートを有する13 x 100 mm 使い捨てチューブに入れ、ボルテックスによって混合し、そしてインキュベーター内において37℃にて回転させた。所定の時間において、当該チューブを低速 (900 x g)で5〜7分間遠心し、粒子を沈めるか、またはエマルジョン/油/PBSを分離した。上清PBSをマイクロピペットで取り出し、Lowryタンパク質アッセイ法により抽出されたコンジュゲートの存在について試験した。次に1.0 mlの別のPBSを、各チューブに加え、ボルテックスによって混合し、そして上記のように37℃にて回転させた。
【0022】
得られた抽出曲線を図1に示す。いずれにしても、無機/バイオポリマーマトリックスは、多量のコンジュゲートを保持し、それを数日間かけて放出した。しかし、エマルジョンに懸濁し、その後PBSと混合した粒子(正方形)からよりも、PBS中に直接懸濁した粒子(ひし形)からのほうが、より早くコンジュゲート抽出がされた。このようなコンジュゲートのゆっくりとした放出は、免疫付与試験において確認される高タイターおよび長期タイターに関与し得る (実施例IIおよびIII、下記)。それは注射部位からゆっくりと放出することにより、ワクチンに対する免疫応答が増大することが知られているためである。乳化した粒子によるコンジュゲートの優れた保持力により、さらなる研究が、コンジュゲートの当該製剤法に注目した。
【0023】
実施例II
無機/バイオポリマーマトリックス中に取り込まれているDT (CTP/DT)にコンジュゲートされた抗原β hCGペプチド109−145の免疫原性検査を、ワクチンレシピエントとしてウサギを用いて実施した。0.025 mgのnor MDPを含有するスクアレン/ PBS (60%/40% v/v)からなる1.0 mlのエマルジョン中に1.0 mgのコンジュゲートを含有する製剤を、4匹のウサギにそれぞれ注射した。抗体レベルを週に一度、ラジオイムノアッセイを使用して測定し、nM/L結合能として表した。一回の筋肉内注射により、注射から2週目までに抗体産生が増大した。7週目までに1,500 nM/Lを越える抗体レベルのピークが得られ、そして数ヶ月間100 nM/Lを上回るレベルが持続した。これらのレベルは、結腸癌患者にて必要とされる治療効果の40〜100倍である(図2)。
【0024】
本研究は、当該製剤の有効性が高いことを示した。同量のコンジュゲートを含むが、当該コンジュゲートがマトリックス粒子に封入されていないものの接種によりこれまでに得られた結果と比較して、データは、マトリックスに封入されていない製剤を用いるよりも、低用量の抗原(マトリックス中に封入されている)を用いて、治療に必要な抗体レベルを得ることができることを示した。
【0025】
実施例III
DT (Loop/DT)にコンジュゲートされたβ hCG 38−57類似ペプチドを抗原として用いる点を除いて、実施例IIと同じ条件を用いて、別の検査を実施した。非常に良く似た結果が得られた(図3)。同量のコンジュゲートであるが、当該コンジュゲートがマトリックス粒子中に封入されていないものを接種してこれまでに得られた結果と比較して、データはマトリックスに封入されていない製剤よりも、低用量の抗原(マトリックス中に封入されている)が、ワクチンにて使用するのにより効果的であることを示した。
【0026】
実施例IV
無機/バイオポリマーマトリックスの有無を除いて同一のワクチンの有効性を、ワクチンレシピエントとしてウサギを用いて比較した。4匹のウサギそれぞれに、0.025 mgのnor MDP含有するスクアレン/PBS (60%/40%)からなる0.5 mlのエマルジョン中にそれぞれ2つのコンジュゲート(上記実施例IIおよびIIIにおけるCTP/DTおよびLoop/DT) 0.5 mgを含有する製剤を筋肉内注射した。週に一度、ラジオイムノアッセイを用いて抗体レベルを測定し、nM/L結合能として表した。ほぼ同等の効果を得るために、無機/バイオポリマー−マトリックス含有ワクチンの一回の筋肉内注射を、無機/バイオポリマーマトリックスを含まないワクチンの3回の注射と比較した。図4は、両ワクチン接種レジメンにより、注射から2週間後までに抗体産生が増大したことを示す。しかし、無機/バイオポリマーマトリックスを含まないワクチンは3回注射し、それに対して無機/バイオポリマー−マトリックス含有ワクチンは1回の注射であったにもかかわらず、無機/バイオポリマー−マトリックス含有ワクチンの注射により得られたタイターは、無機/バイオポリマーマトリックスを含まないワクチンより得られたタイターよりも有意に高いレベルにまで達し、またずっと高かった。
【0027】
表1は、免疫付与について得られた組織反応を比較する。無機/バイオポリマーマトリックス中に封入されていないワクチンについて、実施例VIと同様に測定された、注射部位における組織反応は、全ての動物において最小限〜中程度のものであったが、平均的な反応 (病変スコア)は1.4であり、実質的に臨床的に許容レベルであるところの1.0を上回った。一方、無機/バイオポリマー−マトリックス含有ワクチンについて、組織反応はごくわずかであり、十分に臨床的に許容できる閾値の範囲内であった。
【表1】

【0028】
実施例V
個々のコンジュゲートを用いた一連の検査は、マトリックスに取り込まれた各hCGコンジュゲートの安全かつ有効な用量が、0.010〜0.10 mgであることを示した。続いて、研究を開始し、その中で、等量のCTP/DTおよびLoop/DT 抗原からなる組合わせについて用量反応を得た。合計で0.045〜0.135 mgの複合コンジュゲート(50/50の比率, w/w)を含む用量を、ウサギにおけるhCG特異的抗体産生の誘導能について検査した。1日目および最初の注射から24週目に注射をした。本研究に由来する抗体プロファイルを図5に示す。抗体レベル(調べられた最小限の用量であっても)は、臨床用途に十分であった。
【0029】
実施例VIと同様に測定される組織反応は、最小限の用量で最小であり、用いた最多の用量で中程度(許容可能である)であった。
【0030】
実施例VI
注射部位における組織反応の巨視的評価
試験物質注射後の大腿筋における肉眼的(巨視的)外観を評価するために、安楽死させた動物の皮膚を横切開および縦切開により検査大腿部より剥がし、そして皮膚を剥がす。注意深く、後者を損傷することなく、筋組織をきれいに分離する。鋭いランセットを用いて、各注射部位を切開して大腿筋の内側を曝した。必要であれば、さらに切開して完全に目視でき、病変を評価できるようにした。生検標本を10% 緩衝ホルマリン中に保存した。
【0031】
肉眼的外観の評価スケール:
0:正常組織
目に見える病変なし。しばしば、筋組織における炎症の完全分解の後、黄色の脂肪/繊維組織が現れた。このような変化は病変とみなさなかった。
【0032】
1:最小の病変
典型的な外観としては、被嚢性を示し、滅菌膿瘍を分解する小さな(直径3 mm未満) 硬性小結節または炎症部位が挙げられる。このような病変部の総量は、大腿筋の総量の5%未満であることを必要とした。
【0033】
2:中程度の病変
小結節が大きく(直径3〜10 mm)、また手触りが硬い (以前に繊維化したもの)または柔らかい(ごく最近被嚢化したもの)病変を含む。そのような病変部を圧迫すると、膿または注射物質がしばしば現れた。遊離(被嚢化していない)物質がしばしば確認された。その場合、病変部の縦径は、10 mm以上あることを要した。このような病変部の総量は、大腿筋の総量の5〜10%であることを必要とした。
【0034】
3:様々な病変
大きな、被嚢性または非被嚢性の病変部、縦径10 mmよりも大きい。通常、病変部は、膿 (無菌性膿瘍)または注射物質(エマルジョン)を含んでいた。このような病変部の総量は、大腿筋の総量の10%を上回る。
【0035】
中悪性度:
病変部が所定程度の定義に明確に当てはまらなかった場合、中悪性度を、0−1、1−2または2−3として示した。群の平均を算出するために、中悪性度は半値とした(例えば、0−1は0.5値とした)。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、抽出媒体(PBS)に直接懸濁した、またはスクアレン/マンニデモノオレエート/PBSエマルジョンにより最初に乳化した、無機/バイオポリマーマトリックス中に組み入れたコンジュゲートDT/βサブユニットペプチド109−145 (CTP/DT)のin vitroにおける放出率の比較を示す。粒子または乳化した粒子を、1.0 mL PBSアリコートを有する13 x 100 mm 使い捨てチューブに入れ、ボルテックスによって混合し、そしてインキュベータ内において37℃にて回転させた。表示の時間にて、チューブを低速 (900 x g)で5〜7分間遠心し、粒子を沈めるかまたはエマルジョン/油/PBSを分離した。上清PBSをマイクロピペットを用いて取り出し、Lowryタンパク質アッセイ法により抽出したコンジュゲートの存在について試験した。別のPBS 1.0 ml を各チューブに加え、サンプルをボルテックスによって混合し、上記と同じく37℃にて回転させた。曲線は、PBS中に直接懸濁された粒子(ひし形)およびエマルジョンに懸濁し、その後PBSと混合した粒子(正方形)より抽出したコンジュゲートの総量を示す。
【図2】図2は、0.025 mg nor−MDPアジュバントを含有する1.0 mlスクアレン/PBSエマルジョン中に1.0 mgのコンジュゲートDT/ hCGβサブユニットペプチド109−145 (CTP/DT)を含有するマトリックス粒子を単回投与した後の、4匹のウサギより得られた平均抗体レベルを示す。
【図3】図3は、0.025 mgのnor−MDP アジュバントを含有する1.0 mlのスクアレン/PBSエマルジョン中に1.0 mgのコンジュゲートDT/βサブユニットペプチド38−57 類似体 (Loop/DT)を含有するマトリックス粒子を単回投与した後の、4匹のウサギより得られた平均抗体レベルを示す。
【図4】図4は、(a)マトリックス粒子中に封入したコンジュゲートを含まないワクチンの3回の接種(ひし形)または(b)マトリックス粒子中に封入したコンジュゲートを含むワクチンの単回接種(正方形)のいずれかを注射した後の2群のウサギ(4〜8匹のウサギ/群)より得られた平均抗体レベルを示す。各製剤は、等量のコンジュゲートDT/βサブユニットペプチド109−145(CTP/DT)および38−57類似体 (Loop/DT)を含む。全用量は、0.025 mgのnor−MPDアジュバントを含有するスクアレン/PBSエマルジョン中に与えた。各接種は0.05 mgのコンジュゲートを含み、それをウサギに投与した。マトリックス含有ワクチンを受ける群については、0.5 mlのエマルジョン中のワクチンを、1日目(左矢印)に単回投与し、さらなる注射は行わなかった。マトリックス粒子を含まないワクチンを受ける群については、1.0 mlのエマルジョン中の用量を、1日目(左矢印)、さらに3週目および6週目(中および右矢印)に与えた。
【図5】図5は、各ウサギに1日目および24週目に投与される0.045, 0.090または0.135 mg の併用量を用いた、等量のコンジュゲートDT/βサブユニットペプチド109−145(CTP/DT)および38−57 類似体 (Loop/DT)を含有するマトリックス粒子を注射した後の3群のウサギ(4〜8匹のウサギ/群)における平均抗体レベルを示す。全用量を、0.025 mgのnor−MPD アジュバントを含有する0.5 mlのスクアレン/PBSエマルジョンに与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)に対する抗体を誘導するのに有効な抗原の送達方法であって、
該抗原を無機/バイオポリマーマトリックスに組み入れること、
アジュバントを含有する油中水エマルジョン中に該抗原を組込んだマトリックスを懸濁すること、および
癌に罹患している患者を治療するために、該抗原を組込んだマトリックスを含有するエマルジョンをヒトに注射すること、
を含む、上記方法。
【請求項2】
抗原が、ジフテリアトキソイドなどのキャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145からなるペプチドまたはhCGβサブユニット配列の109−145の類似ペプチドとのコンジュゲートである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗原が、キャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57からなるペプチドまたはhCGβユニット配列の38−57の類似ペプチドとのコンジュゲートである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
抗原が、
キャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145からなるペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145の類似ペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57からなるペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57の類似ペプチドとのコンジュゲート、または
キャリアタンパク質とhCGβサブユニットのペプチドとのコンジュゲート、
のいずれかの組み合わせである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
無機/バイオポリマーマトリックスが、カルシウムサルフェートヘミ−ハイドレート/デキストランサルフェートマトリックスまたはカルシウムホスフェート/デキストランサルフェートマトリックスを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
油中水エマルジョンが、スクアレンおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
エマルジョンがさらに、乳化剤を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
乳化剤がマンニデ(mannide)モノオレエートである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
スクアレンおよびマンニデモノオレエートを4:1の比率で混合する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
スクアレン:マンニデモノオレエート混合物がエマルジョンの油相を供給する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
エマルジョンの油相がエマルジョンの容量の60%であり、PBSが40%である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
アジュバントがN−アセチル−D−グルコサミン−3−y−L−Ala−D−isoGlnナトリウム塩(nor MDP)である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
結腸癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
膵臓癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
膀胱癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前立腺癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
卵巣癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
肺癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
子宮頸癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
乳癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
腎臓癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
肝臓癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項1記載の方法。
【請求項23】
黒色腫に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)に対する抗体を誘導するのに有効な抗原の送達方法であって、当該方法は
該抗原を無機/バイオポリマーマトリックスに組み入れること、
該抗原を組込んだマトリックスをアジュバントを含有する油中水エマルジョン中に懸濁すること、および
ホルモン関連疾患を罹患する患者を治療するためまたはホルモン関連症状を予防するために抗原を組込んだマトリックスを含有するエマルジョンをヒトに注射することを含み、該ホルモン関連疾患が胞状奇胎、子宮外妊娠、および癌からなる群から選択される、上記方法。
【請求項25】
抗原がジフテリアトキソイドなどのキャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145からなるペプチドまたはhCGβサブユニット配列の109−145の類似ペプチドとのコンジュゲートである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
抗原がジフテリアトキソイドなどのキャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57からなるペプチドまたはhCGβユニット配列の38−57の類似ペプチドとのコンジュゲートである、請求項24記載の方法。
【請求項27】
抗原が、
キャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145からなるペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145の類似ペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57からなるペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57の類似ペプチドとのコンジュゲート、または
キャリアタンパク質とhCGβサブユニットのペプチドとのコンジュゲート、
のいずれかの組み合わせである、請求項24記載の方法。
【請求項28】
予防されるホルモン関連症状が妊娠である、請求項24記載の方法。
【請求項29】
無機/バイオポリマーマトリックスが、カルシウムサルフェートヘミ−ハイドレート/デキストランサルフェートマトリックス、またはカルシウムホスフェート/デキストランサルフェートマトリックスを含む、請求項24記載の方法。
【請求項30】
油中水エマルジョンが、スクアレンおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む、請求項24記載の方法。
【請求項31】
エマルジョンがさらに乳化剤を含む、請求項24記載の方法。
【請求項32】
乳化剤がマンニデモノオレエートである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
スクアレンおよびマンニデモノオレエートを4:1の比率で混合する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
スクアレン: マンニデモノオレエート混合物がエマルジョンの油相を供給する、請求項33記載の方法。
【請求項35】
エマルジョンの油相がエマルジョンの容量の60%であり、PBSが40%である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
アジュバントが、N−アセチル−D−グルコサミン−3−y−L−Ala−D−isoGlnナトリウム塩(norMDP)である、請求項24記載の方法。
【請求項37】
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)に対する抗体を誘導するのに有効な抗原の送達方法であって、
該抗原を無機塩/バイオポリマーマトリックスに組み入れること、
該抗原を組込んだマトリックスをアジュバントを含有する油中水エマルジョン中に懸濁すること、および
hCG関連疾患を罹患している患者を治療するためまたはhCG関連症状を予防するために該抗原を組込んだマトリックスを含有するエマルジョンをヒトに注射すること、
を含む上記方法。
【請求項38】
無機塩/バイオポリマーマトリックスが、カルシウムサルフェートヘミ−ハイドレート/デキストランサルフェートマトリックスを含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
無機塩がカルシウムサルフェートヘミ−ハイドレート、カルシウムサルフェート、およびカルシウムホスフェートからなる群から選択され、バイオポリマーがヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、タンパク質、グリコサミノグリカン、デキストラン、デキストランサルフェート、デンプン、キサンタン、キトサン、セルロースおよびセルロース誘導体からなる群から選択される、請求項37記載の方法。
【請求項40】
抗原がジフテリアトキソイドなどのキャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145からなるペプチドまたはhCGβサブユニット配列の109−145の類似ペプチドとのコンジュゲートである、請求項37記載の方法。
【請求項41】
抗原がジフテリアトキソイドなどのキャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57からなるペプチドまたは hCGβユニット配列の38−57の類似ペプチドとのコンジュゲートである、請求項37記載の方法。
【請求項42】
抗原が、
キャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145からなるペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145の類似ペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57からなるペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57の類似ペプチドとのコンジュゲート、または
キャリアタンパク質とhCGβサブユニットのペプチドとのコンジュゲートのいずれかの組み合わせである、請求項37記載の方法。
【請求項43】
予防されるホルモン関連症状が妊娠である、請求項37記載の方法。
【請求項44】
無機/バイオポリマーマトリックスが、カルシウムサルフェートヘミ−ハイドレート/デキストランサルフェートマトリックスまたはカルシウムホスフェート/デキストランサルフェートマトリックスである、請求項37記載の方法。
【請求項45】
油中水エマルジョンがスクアレンおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む、請求項37記載の方法。
【請求項46】
エマルジョンがさらに乳化剤を含む、請求項37記載の方法。
【請求項47】
乳化剤がマンニデモノオレエートである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
スクアレンおよびマンニデモノオレエートを4:1の比率で混合する、請求項47記載の方法。
【請求項49】
スクアレン:マンニデモノオレエート混合物がエマルジョンの油相を供給する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
エマルジョンの油相がエマルジョンの容量の60%であり、PBSが40%である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
アジュバントが、N−アセチル−D−グルコサミン−3−y−L−Ala−D−isoGln ナトリウム塩(norMDP)である、請求項37記載の方法。
【請求項52】
結腸癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項37記載の方法。
【請求項53】
膵臓癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項37記載の方法。
【請求項54】
膀胱癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項37記載の方法。
【請求項55】
前立腺癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項37記載の方法。
【請求項56】
卵巣癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項37記載の方法。
【請求項57】
肺癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項37記載の方法。
【請求項58】
子宮頸癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項37記載の方法。
【請求項59】
乳癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項37記載の方法。
【請求項60】
腎臓癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項37記載の方法。
【請求項61】
肝臓癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項37記載の方法。
【請求項62】
黒色腫に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項37記載の方法。
【請求項63】
hCG関連疾患が胞状奇胎、子宮外妊娠および癌からなる群から選択される、請求項37記載の方法。
【請求項64】
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)に対する抗体を誘導するのに有効な抗原の送達方法であって、該方法は、
ペプチド抗原とキャリアをコンジュゲートしてコンジュゲート化抗原を形成する工程、
該コンジュゲート化抗原を無機/バイオポリマーマトリックスに組み入れる工程であって、該コンジュゲート化抗原をカルシウムサルフェートヘミ−ハイドレートおよびデキストランサルフェートと混合し、それによって、カルシウムサルフェートヘミ−ハイドレート/デキストランサルフェートマトリックス中に封入する、上記工程、
該コンジュゲート化抗原を封入しているマトリックスを乾燥する工程、
乾燥したマトリックスをアジュバントを含有する油中水または水中油エマルジョン中に懸濁する工程、ならびに
hCG関連疾患を罹患している患者治療するためまたはhCG関連症状を予防するために、該コンジュゲート化抗原を封入しているマトリックスを含有するエマルジョンをヒトに注射する工程、
を含む、上記方法。
【請求項65】
hCG関連疾患が、胞状奇胎、子宮外妊娠および癌からなる群から選択される、請求項64記載の方法。
【請求項66】
抗原がジフテリアトキソイドなどのキャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145からなるペプチドまたはhCGβサブユニット配列の109−145の類似ペプチドとのコンジュゲートである、請求項64記載の方法。
【請求項67】
抗原がジフテリアトキソイドなどのキャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57からなるペプチドまたはhCGβユニット配列の38−57の類似ペプチドとのコンジュゲートである、請求項64記載の方法。
【請求項68】
抗原が、
キャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145からなるペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145の類似ペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57からなるペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57の類似ペプチドとのコンジュゲートまたは
キャリアタンパク質とhCGβサブユニットのペプチドとのコンジュゲート
のいずれかの組み合わせである、請求項64記載の方法。
【請求項69】
予防されるホルモン関連症状が妊娠である、請求項64記載の方法。
【請求項70】
無機/バイオポリマーマトリックスが、カルシウムサルフェートヘミ−ハイドレート/デキストランサルフェートマトリックス、またはカルシウムホスフェート/デキストランサルフェートマトリックスを含む、請求項64記載の方法。
【請求項71】
油中水エマルジョンがスクアレンおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む、請求項64記載の方法。
【請求項72】
エマルジョンがさらに乳化剤を含む、請求項71記載の方法。
【請求項73】
乳化剤がマンニデモノオレエートである、請求項72記載の方法。
【請求項74】
スクアレンおよびマンニデモノオレエートを4:1の比率で混合する、請求項73記載の方法。
【請求項75】
スクアレン:マンニデモノオレエート混合物がエマルジョンの油相を供給する、請求項74記載の方法。
【請求項76】
エマルジョンの油相がエマルジョンの容量の60%であり、PBSが40%である、請求項75記載の方法。
【請求項77】
アジュバントが、N−アセチル−D−グルコサミン−3−y−L−Ala−D−isoGlnナトリウム塩(norMDP)である、請求項64記載の方法。
【請求項78】
結腸癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項64記載の方法。
【請求項79】
膵臓癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項64記載の方法。
【請求項80】
膀胱癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項64記載の方法。
【請求項81】
前立腺癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項64記載の方法。
【請求項82】
卵巣癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項64記載の方法。
【請求項83】
肺癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項64記載の方法。
【請求項84】
子宮頸癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項64記載の方法。
【請求項85】
乳癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項64記載の方法。
【請求項86】
腎臓癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項64記載の方法。
【請求項87】
肝臓癌に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項64記載の方法。
【請求項88】
黒色腫に罹患している患者を治療するためのワクチンが処方される、請求項64記載の方法。
【請求項89】
ワクチン−無機/バイオポリマーマトリックス組成物であって、
(a) hCGβサブユニットの断片,
(b) カルシウム塩、および
(c) マトリックスポリマーを含み、
該断片が、該カルシウム塩および該マトリックスポリマーによって形成される無機/バイオポリマーマトリックス中に実質的に封入されている、上記組成物。
【請求項90】
抗原が、
キャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145からなるペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβサブユニット配列の109−145の類似ペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57からなるペプチドとのコンジュゲート、
キャリアタンパク質とhCGβユニット配列の38−57の類似ペプチドとのコンジュゲート、または
キャリアタンパク質とhCGβサブユニットのペプチドとのコンジュゲート
のいずれかの組合わせである、請求項89記載のワクチン−無機/バイオポリマーマトリックス組成物。
【請求項91】
カルシウム塩が、カルシウムサルフェートヘミハイドレート、カルシウムシリケート、アルミネート、ヒドロキシド、ホスフェートおよびカルシウムホスフェートからなる群から選択される、請求項89記載のワクチン−無機/バイオポリマーマトリックス組成物。
【請求項92】
マトリックスポリマーが、デキストラン、デキストランサルフェート、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、タンパク質、グリコサミノグリカン、キトサン、デンプン、キサンタン、セルロース、セルロース誘導体、コラーゲン、フィブリノーゲン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヌクレオチド、カチオン性ポリペプチドおよび脱脂アルブミンからなる群から選択される、請求項89記載のワクチン−無機/バイオポリマーマトリックス組成物。
【請求項93】
カルシウム塩が、カルシウムサルフェートヘミハイドレートである、請求項89記載のワクチン−無機/バイオポリマーマトリックス組成物。
【請求項94】
カルシウム塩が、カルシウムサルフェートである、請求項89記載のワクチン−無機/バイオポリマーマトリックス組成物。
【請求項95】
カルシウム塩が、カルシウムホスフェートである、請求項89記載のワクチン−無機/バイオポリマーマトリックス組成物。
【請求項96】
マトリックスポリマーがデキストランである、請求項89記載のワクチン−無機/バイオポリマーマトリックス組成物。
【請求項97】
マトリックスポリマーが、デキストランサルフェートである、請求項89記載のワクチン−無機/バイオポリマーマトリックス組成物。
【請求項98】
カルシウムサルフェートヘミ−ハイドレート/デキストランサルフェートマトリックスまたはカルシウムホスフェート/デキストランサルフェートマトリックスである、請求項89記載のワクチン−無機/バイオポリマーマトリックス組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−535428(P2009−535428A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510046(P2009−510046)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/067994
【国際公開番号】WO2007/131017
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508324983)ロイヤー バイオメディカル,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】