説明

長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム

【課題】簡単な構成により安価で、頻回な硬膜外穿刺やカテーテル留置によるADLの低下や感染のリスクをなくし、低侵襲性、生体適合性及び安全性に優れた長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムを提供する。
【解決手段】本発明の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム1は、硬膜外麻酔又は硬膜外ブロックを行う際に硬膜外腔33に長期徐放型薬剤40を留置する長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムであって、医療適合性の生分解性素材から形成され、長期徐放型薬剤が徐放自在に内部に担持された紐状カテーテルタイプ留置部材20、20A〜20Cと、 外針15内に内針16が挿入される針組立体からなる硬膜外針又はCVポートを含む注入手段10と、を少なくとも備え、紐状カテーテルタイプ留置部材は、注入手段の外針内に収容され、患者の背面から穿刺されて硬膜外腔に挿入された外針から硬膜外腔に押出されて留置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に硬膜外麻酔又は硬膜外ブロックを行う際に硬膜外腔に長期徐放型薬剤を留置する長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムに関し、特に硬膜外針型CVポートなどの注入手段を利用して前記長期徐放型薬剤が徐放自在に内部に担持された生分解性素材からなる紐状カテーテルタイプ留置部材を硬膜外腔に埋込み留置する長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
手術後の鎮痛、ベインクリニックにおける治療、癌性疹痛の鎮痛等の目的で患者の硬膜外腔に局所麻酔薬、オピオイド又は鎮痛薬を注入し、脊髄神経を分節的に遮断して鎮痛を得る方法である硬膜外麻酔又は硬膜外ブロックは、非常に高い鎮痛効果を得ることができる。
【0003】
硬膜外麻酔又は硬膜外ブロックにおける局所麻酔薬、オピオイド又は鎮痛薬の投与方法としては、これまで針による一回注入法やカテーテル挿入による持続注入法などがある。
【0004】
針による一回注入法では、持続時聞が短いため頻回な穿刺が必要となり、患者に苦痛を与える。
【0005】
カテーテル挿入による持続注入法は、次のような一般的な操作法で行われる。まず、背面を消毒し局部浸潤麻酔をした後、外針内に内針を挿入した針組立体からなる硬膜外針を背中皮膚面から穿刺し、背骨又は棘骨間から棘間靭帯に到着後、内針を抜く。次いで、外針が硬膜外腔に挿入されていることを確認し、外針内に硬膜外麻酔カテーテルを挿入する。この硬膜外麻酔カテーテルを介して硬膜外腔に麻酔薬、オピオイド又は鎮痛薬などが投与される。
【0006】
従来の硬膜外麻酔を行う際に硬膜外腔に留置して用いる硬膜外麻酔カテーテルの一例として、図7に示すように、異形の内腔(ルーメン)102を有するカテーテル本体110と、カテーテル本体110の壁部103に軸方向に沿って線状に埋設された複数の補強部材104とを備え、補強部材104の断面積は、壁部103の断面積の25〜60%である硬膜外麻酔カテーテル101が提案されている(特許文献1参照)。カテーテル本体110の最先端は斜めに傾斜した略円錐形状に形成されており、最先端部111はチップ105によってルーメン102が閉塞されている。
【0007】
カテーテル本体110のルーメン102内には、マーカー106が設置されている。マーカー106は、カテーテル本体110の最先端部111付近に所定の方法で固定されており、MRI又はエックス線撮影によって硬膜外麻酔カテーテル101の先端部の位置を視認するために、ステンレス等の金属によって形成されている。
【0008】
カテーテル本体110の壁部103には、側孔107が設けられている。側孔107は、カテーテル本体110の先端部に形成されており、カテーテル本体110の基端から注入された液体の麻酔薬を硬膜外腔に確実に投与するために、カテーテル本体110の軸方向又は径方向が異なる位置に複数設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−222810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の特許文献1等に記載されているような硬膜外麻酔カテーテル挿入による持続注入法では、カテーテル留置によるADL(日常生活動作:Activities of Daily Living)すなわち生活レベルの低下、硬膜外血腫による神経障害、硬膜外膿瘍など感染による神経障害等のリスクがあり、効果の高い鎮痛手段と理解されつつも余り行われていないのが現状である。
【0011】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡単な構成により比較的安価で、頻回な硬膜外穿刺やカテーテル留置によるADLの低下や感染のリスクをなくすことが可能で、患者に対し低侵襲性、生体適合性及び安全性に優れた長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムは、硬膜外麻酔又は硬膜外ブロックを行う際に硬膜外腔に局所麻酔薬、オピオイド又は鎮痛薬のいずれか一つ又は複数の組合せを含む長期徐放型薬剤を留置する長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムであって、医療適合性の生分解性素材から形成され、前記長期徐放型薬剤が徐放自在に内部に担持された紐状カテーテルタイプ留置部材と、外針内に内針が挿入される針組立体からなる硬膜外針又はCVポートを含む注入手段と、を少なくとも備え、前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、前記注入手段の外針内に収容され、患者の背面から穿刺されて硬膜外腔に挿入された前記外針から硬膜外腔に押出されて留置されることを特徴とする。
【0013】
本発明における前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、前記生分解性素材の極細繊維又はナノ繊維から適宜の剛性及び柔軟性を有する高弾性紐状体に形成され、該高弾性紐状体内に前記長期徐放型薬剤が含浸されて担持されることを特徴とする。
【0014】
また、前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、前記生分解性素材から相互に連通して外面に開口するように配置された複数の微細孔を有し適宜の剛性及び柔軟性を有する多孔質の高弾性紐状体に形成され、該多孔質高弾性紐状体内に前記長期徐放型薬剤が含浸されて担持される構成とすることもできる。
【0015】
また、前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、前記生分解性素材から両端面が閉鎖され適宜の剛性及び柔軟性を有する適宜内径の中空高弾性紐状体に形成されて外面に開口する複数の微細孔を備え、該中空高弾性紐状体内に前記長期徐放型薬剤が収容されて担持される構成とすることもできる。
【0016】
本発明における前記中空高弾性紐状体は、前記生分解性素材の極細繊維又はナノ繊維、あるいは多孔質体から形成される構成とすることもできる。
【0017】
また、前記中空高弾性紐状体は、前記生分解性素材の一体的なチューブ体からなり、外面に開口する複数の微細孔が設けられる構成とすることもできる。
【0018】
本発明における前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、前記担持される長期徐放型薬剤の所要量に応じて長さが選択的に設定される構成とすることもできる。
【0019】
また、前記紐状カテーテルタイプ留置部材の少なくとも前端面は、滑らかな尖鋭凸曲面状又は略円錐形状に形成される構成とすることもできる。
【0020】
本発明における前記長期徐放型薬剤は、疎水性シクロデキストリン(cyclodextrin又は環状オリゴ糖)誘導体で包接された包接複合体に形成されて前記紐状カテーテルタイプ留置部材に担持される構成とすることもできる。
【0021】
また、前記長期徐放型薬剤は、水分による膨潤性あるいは温度による疎水性を有することにより徐放性能を備えた生分解性高分子からなるミクロカプセルに内包されて前記紐状カテーテルタイプ留置部材に担持され、前記ミクロカプセルが前記硬膜外腔に放出され、さらに該ミクロカプセル内から前記長期徐放型薬剤が前記硬膜外腔に順次放出される構成とすることもできる。
【0022】
本発明における前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、全体又は構成繊維の表面がゼラチン、コラーゲンを含む生分解性高分子により徐放性能がコントロール可能にコーティングされる構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、一般的な硬膜外針又はCVポートを用いて患者の背面から一回の穿刺により硬膜外腔に医療適合性の生分解性素材からなる紐状カテーテルタイプ留置部材が留置されて薬剤が所定期間順調に徐放されるとともに最終的には硬膜外腔内で吸収され消失してしまうことから、簡単な構成により比較的安価で、従来のような頻回な硬膜外穿刺やカテーテル留置によるADLの低下や感染のリスクをなくすことが可能で、患者に対し低侵襲性、生体適合性及び安全性に優れた長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムを提供できる効果がある。
【0024】
本発明の紐状カテーテルタイプ留置部材が生分解性素材のそれぞれ極細繊維又はナノ繊維、あるいは多孔質体から適宜の剛性及び柔軟性を有する高弾性紐状体に形成されて長期徐放型薬剤が含浸されて担持される構成により、簡単なシステム構成で薬剤が高弾性紐状体の外面から所定期間順調に徐放されるので、低侵襲性、生体適合性及び安全性が容易に確保される効果がある。
【0025】
また、紐状カテーテルタイプ留置部材が生分解性素材のそれぞれ極細繊維、ナノ繊維、多孔質体又は外面に開口する複数の微細孔を備えた一体的なチューブ体から両端面が閉鎖された適宜内径の中空高弾性紐状体に形成されてその中空内に長期徐放型薬剤が比較的多量に収容される構成により、いずれも簡単なシステム構成で薬剤が中空高弾性紐状体の外面から比較的長い所定期間順調に徐放されるとともに、低侵襲性、生体適合性及び安全性が容易に確保される効果がある。
【0026】
本発明の紐状カテーテルタイプ留置部材は、担持される長期徐放型薬剤の所要量に応じて長さが選択的に設定される構成により、一層容易に簡単な構成で低侵襲性、生体適合性、安全性及び設計の自由度を有する長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムが実現できる効果がある。
【0027】
また、紐状カテーテルタイプ留置部材の少なくとも前端面は、滑らかな尖鋭凸曲面状又は略円錐形状に形成される構成により、内針により後端面を押圧される紐状カテーテルタイプ留置部材が前端から硬膜外腔にスムースに容易に挿入される効果がある。
【0028】
本発明の長期徐放型薬剤は、疎水性シクロデキストリン誘導体で包接された包接複合体に形成される構成により、長期徐放型薬剤と分子レベルで相互作用することにより長期徐放型薬剤本来の効力を変化させることなく、実用的に持効性が得られ、長期徐放型薬剤の紐状カテーテルタイプ留置部材への導入量を増大させるとともに徐放速度を制御することができる。また、一度包接複合体を形成すれば、pHに依存することなく徐放化されるので、製剤設計や品質の確保も容易化される。さらに、このような包接複合体は長期徐放型薬剤40の物理化学的性質を変化させ、光や熱に対する安定性向上も期待できる等々の効果がある。
【0029】
本発明の長期徐放型薬剤は、徐放性ミクロカプセルに内包され、そのミクロカプセルを介して硬膜外腔に放出される構成により、徐放速度を効果的に制御できる効果がある。
【0030】
本発明の紐状カテーテルタイプ留置部材の全体又は構成繊維の表面が生分解性高分子によりコーティングされる構成により、徐放速度を一層効果的に制御できるとともに、特に後者の場合は構成繊維がコーティングにより束ねられるため紐状カテーテルタイプ留置部材のハンドリングを良くする等々の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムの概念図で、外針内に紐状カテーテルタイプ留置部材が収容された硬膜外針が患者の背面から硬膜外腔に穿刺された硬膜外針穿刺段階の状態を示す。
【図2】図1に引続き、内針により押圧された紐状カテーテルタイプ留置部材が外針から硬膜外腔に押出されて留置された紐状カテーテルタイプ留置部材硬膜外腔留置段階の状態を示す。
【図3】図2に引続き、硬膜外針が硬膜外腔から引出される硬膜外針引出し段階の状態を示す。
【図4】本発明の実施例1の紐状カテーテルタイプ留置部材の概念を示す概観図である。
【図5】本発明の別の実施例の紐状カテーテルタイプ留置部材の概念図で、(a)は実施例2の概観図、(b)は実施例3の中間部断面図である。
【図6】本発明の実施例4の紐状カテーテルタイプ留置部材の概念図で、(a)は概観図、(b)は中間部断面図である。
【図7】従来(特許文献1)の硬膜外麻酔カテーテルの概念を示す先端部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムを最良に実施するための形態の具体例を、添付図面を参照しながら説明する。
【0033】
本発明の一実施形態の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム1は、患者に硬膜外麻酔又は硬膜外ブロックを行う際に硬膜外腔33に局所麻酔薬、オピオイド又は鎮痛薬のいずれか一つ又は複数の組合せを含む長期徐放型薬剤40を留置する長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムであって、医療適合性の生分解性素材から形成され、長期徐放型薬剤40が徐放自在に内部に担持されたた紐状カテーテルタイプ留置部材20と、 外針15内に内針16が挿入される針組立体からなる硬膜外針又はCVポートなどの注入手段10と、を備えており、紐状カテーテルタイプ留置部材20は、注入手段10の外針15内に収容され、患者の背面から穿刺されて硬膜外腔33に挿入された外針15から硬膜外腔33に押出されて留置される。
【0034】
注入手段である例えば硬膜外針10は、公知のものを適用できるので詳細な説明は省略するが、外針15の針管15aに外套14が挿着されて形成される。外套14は、プラスチックチューブ12及びハブ13から構成される。この外套14の内腔に硬膜外針15を摺動及び脱着自在に挿着し挿着最深部において、図2(a)、(b)に示すように、硬膜外針15の針管15a及び内針16の針棒16aの先端部が外套14のプラスチックチューブ12の先端から少なくとも外針刃面15b及び内針刃面16bが露出する程度に調整される。プラスチックチューブ12の先端は、組合せる硬膜外針15の針管15aの外径にフィットするようにテーパー部12aが形成されている。
【0035】
注入手段である硬膜外針10の針管15aの内径は、一般的に用いられるものは1mm前後であるが、内部に収容される紐状カテーテルタイプ留置部材20の製造性及び長期徐放型薬剤40の収容性の観点からはさらに太い例えば3mm程度のものが好ましい。
【0036】
本発明の紐状カテーテルタイプ留置部材20に用いられる医療適合性の生分解性素材は、生体内に存在する酵素あるいは単に加水分解によってその高分子の主鎖が分解を受けて生体内で吸収され消失してしまうため、非生分解性素材で懸念されるような晩期における再狭窄や血栓性合併症などの危険性が低い。このような生分解性素材は、生体適合性が高いため、生理活性物質の担持素材として広く研究され、あるいは実用化されている次の公知のものが適用できる。
【0037】
すなわち、医療適合性の生分解性素材は、これに限定されないが、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及びそれらの共重合体等の合成系生分解性ポリマー、又は絹、ヒアルロン酸、核酸、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、デキストラン、キチン、キトサン、アルブミン、エラスチン、ヘパリン及びヘパラン硫酸等の天然系生分解性高分子のいずれか一つ又は複数の組合せにより選択される。
【0038】
紐状カテーテルタイプ留置部材20に用いられる生分解性素材に要求される特性は、上記生分解性の他に主として次の通り挙げられる。
【0039】
第1に、抗原抗体反応などの生体内における不必要な免疫反応を起こさないようにする親和性である。この特性を満たす素材としては、例えばポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなどがある。
【0040】
第2に、種々の細胞が材料表面上に安定して接着し生存することを可能にする細胞接着性である。この特性を満たす素材としては、例えばゼラチン、コラーゲンなどがある。
【0041】
第3に、光を照射することにより化学反応が誘起され、その高分子同志が架橋されるなどによるハイドロゲルの形成などが引起こされる光反応性である。これは、薬剤を埋包しており、含水条件で膨潤することによりそれら薬剤を徐放する機能を有するハイドロゲルの形成のために必要である。この特性を満たす素材としては、例えば天然高分子の誘導体、例えばゼラチンにジチオカルバミル基を導入したジチオカルバミル化ゼラチン、ゼラチンにスチレン基を化学結合させたスチレン化ゼラチンなどのゼラチン誘導体がある。
【0042】
第4に、紐状カテーテルタイプ留置部材20としての使用においてその構造及び力学特性を可能な限り長期間にわたって安定に維持する機械的耐久性又は剛性である。これは、生体内での長期間の使用に耐え得る紐状カテーテルタイプ留置部材20の製造上必要である。
【0043】
第5に、力学的負荷に対する応答において、その構造変形が負荷により鋭敏に起こるとともに負荷の除去によって元の形状への回復も速やかである柔軟性である。これは、生体内で留置される紐状カテーテルタイプ留置部材20を硬膜外腔33内の動的力学環境変化に適切に応答させ、患者に苦痛を極力与えないために必要である。
【0044】
機械的耐久性及び柔軟性を併せ持つ素材としては、例えば結晶性固体化するポリマー領域のハードセグメントと非晶性のポリマー領域のソフトセグメントから構成されることによりミクロ相分離構造をなすブロック共重合体型ポリウレタンの総称であるセグメント化ポリウレタンなどがある。
【0045】
したがって、1種類の生分解性素材が上記全ての特性を備える必要はなく、1つの特性を有する素材を適宜組合せることにより、所望の特性が得られる。
【0046】
以下に、本発明の紐状カテーテルタイプ留置部材の幾つかの実施形態による実施例について、添付図4乃至6を参照して説明する。
【実施例1】
【0047】
実施例1の紐状カテーテルタイプ留置部材20は、図4に示すように、生分解性素材の極細繊維又はナノ繊維から適宜の剛性及び柔軟性を有する高弾性紐状体21に形成され、高弾性紐状体21の繊維間微細隙間(微細孔)22内に長期徐放型薬剤40が含浸されて担持される。
【0048】
高弾性紐状体21は、例えば高電圧電場を用いた公知のポリマー紡糸法により形成することができる。すなわち、前記医療適合性の生分解性素材を電解紡糸させて得られる例えば数ナノメートル(nm)〜数十マイクロメートル(μm)の微小径を有するナノ繊維又は極細繊維から適宜の剛性及び柔軟性を備えた高弾性紐状体21に形成される。高弾性紐状体21の前後両端面21a、21bは滑らかな凸曲面状に、特に前端面21aは、硬膜外腔33にスムースに容易に挿入されるよう滑らかな尖鋭凸曲面状例えば略円錐形状に形成される。
【0049】
また、高弾性紐状体21は、例えばいずれも図示しないが、紡糸ノズルから噴射される繊維を堆積させることにより不織布の形態として略円形断面の他に角部が滑らかな略四角形あるいは略多角形など任意の断面形状に形成された変形形態とすることができる。
【0050】
また、前記実施例あるは変形形態において、1種類の生分解性素材により作製されたものでもよいが、複数の生分解性素材を混合して紡糸することや、紡糸の際に複数の生分解性素材を個別にそれぞれ同時に紡糸することもできる。複数の生分解性素材の各々を順次堆積させて複数の積層状に形成してもよい。
【0051】
さらに、いずれも図示しないが、適宜例えば1mm未満など細径の回転担体上に生分解性素材を噴射することによって、円筒形(管状)の中空高弾性紐状体に形成された変形形態の紐状カテーテルタイプ留置部材とすることもできる。例えば、回転担体を回転させながら紡糸ノズルから生分解性素材を噴射し、回転担体を回転軸方向に往復移動させることにより管状の中空高弾性紐状体を作成することができる。このような中空高弾性紐状体の前後両端面は滑らかな凸曲面状に閉鎖され、特に前端面は、硬膜外腔33にスムースに容易に挿入されるよう滑らかな尖鋭凸曲面状例えば略円錐形状に形成される。
【0052】
この場合も、2種類のノズルから同時に生分解性素材を噴射すれば、繊維同士が相互侵入した混合化中空高弾性紐状体が得られ、順次積層すれば、複数の層を有する積層化中空高弾性紐状体が得られるなど種々の変形形態とすることができる。
【0053】
以下に、実施例1の紐状カテーテルタイプ留置部材20を硬膜外腔33に埋込む長期徐放型薬剤硬膜外腔留置方法について、図1〜3を参照して説明する。
【0054】
まず、患者の背面を消毒し局部浸潤麻酔をした後、図1に示すように、外針15内に内針16を挿入した針組立体よりなる硬膜外針10のプラスチックチューブ12が装着された針管15aを背中皮膚面から穿刺し、背骨又は棘骨の棘突起35間から黄色靭帯34に到着後、内針16を抜く。次いで、針管15a先端の外針刃面15bが硬膜外腔33に挿入されていることを確認し、外針15の針管15a内に紐状カテーテルタイプ留置部材20を挿入する(硬膜外針穿刺段階)。
【0055】
引続き、図2(a)に示すように、外針15を保持した状態で内針16を外針内一杯に注入して押圧する。このとき、内針16の針棒16aの先端部である内針刃面16bが外針刃面15bまで到達する。これにより、内針刃面16bが針管15a内の紐状カテーテルタイプ留置部材20を後端面から押圧し硬膜外腔33に押出して留置する(紐状カテーテルタイプ留置部材硬膜外腔留置段階)。この紐状カテーテルタイプ留置部材20内に担持された麻酔薬などの長期徐放型薬剤40が硬膜外腔33に所定期間徐放され続けて投与される。
【0056】
そして、図3に示すように、紐状カテーテルタイプ留置部材20が硬膜外腔33に留置された状態で、最終的に硬膜外針10が硬膜外腔33から患者の体外に引出される(硬膜外針引出し段階)。
【0057】
なお、対象とする硬膜外腔33へ外針15の針管15aを正確に到達させることは熟練の経験を要する。これを解消するために、硬膜外腔33への刺入においてX線による確認方法、刺入される針管15aの長さを任意に決める手段による方法、針管15aに作用する荷重を検出し組織境界の貫通を検出する技術による方法、穿刺に用いる針管15aと生体との間の電気抵抗の変化から組織境界の貫通を検出する方法、治療支援用のシステムとして針シミュレータを介して医師が針穿刺行為を行う手段による方法、あるいは中空又は中実の針部と、その側面を全部又は一部を覆う外筒部を備えた穿針装置(注入手段)において、針部に作用する荷重を計測する1軸以上の針部荷重計及び外筒部に作用する荷重を計測する外筒部荷重計の測定結果を経時的データとして記録し、経時的データの一次又は二次以外の高次データにおける不連続部分は生体組織境界部に対応するものであると判定する判定装置による方法等々の公知の技術を適用することもできる。
【実施例2】
【0058】
実施例2の紐状カテーテルタイプ留置部材20Aは、図5(a)に示すように、生分解性素材から相互に連通して外面に開口するように配置された複数の微細孔22Aを有し適宜の剛性及び柔軟性を有する多孔質の高弾性紐状体21Aに形成され、高弾性紐状体21Aの微細孔22A内に長期徐放型薬剤40が含浸されて担持される。高弾性紐状体21Aの前後両端面21Aa、21Abは滑らかな凸曲面状に、特に前端面21Aaは、硬膜外腔33にスムースに容易に挿入されるよう滑らかな尖鋭凸曲面状例えば略円錐形状に形成される。
【0059】
生分解性素材の多孔質高弾性紐状体21Aの製造方法は、生分解性素材の公知の一般的な多孔質体の製造方法を適用できるので詳細な説明は省略するが、物理的又は化学的方法による乾式法や湿式法などがある。物理的な製造方法は、例えばクロロフルオロカーボン類又は炭化水素類などの低沸点液体である発泡剤を生分解性素材に分散させ、次に加熱し発泡剤を揮発させることにより気泡を形成させる方法、あるいは窒素や二酸化炭素等の気体を高圧にて生分解性素材中に溶解させた後、圧力を開放し、生分解性素材のガラス転移温度や軟化点付近まで加熱することにより気泡を形成させる方法などがある。
【実施例3】
【0060】
実施例3の紐状カテーテルタイプ留置部材20Bは、生分解性素材の多孔質体から両端面が滑らかな凸曲面状に閉鎖された前記実施例2と同様の外形形状(図示しない)であって、図5(b)に示すように、適宜の剛性及び柔軟性を有する適宜内径の中空高弾性紐状体21Bに形成され、中空高弾性紐状体21Bの中空21Bc内に長期徐放型薬剤40が収容されるとともに微細孔22B内に含浸されて担持される。
【0061】
生分解性素材の多孔質体からなる中空高弾性紐状体21Bの製造方法は、公知の方法を適用できるので詳細な説明は省略するが、例えば溶剤に溶かした生分解性素材とスターチ、澱粉等との混合物を、窒素を中心に送り込みながら溶融紡糸を行なって多孔質の中空高弾性紐状体21Bを製造する方法、二重湿式紡糸装置を用いた湿式紡糸において緩慢に温水の凝固浴を通して脱溶媒を行ない多孔質の中空高弾性紐状体21Bを製造する方法、同心二重円筒断面を有する中空糸紡糸ノズルを用いて湿式紡糸し多孔質の中空高弾性紐状体21Bを製造する方法、例えば生分解性素材の溶液よりなる紡糸原液へ例えばデンプンを混合して紡糸し、その後デンプンを熱水で浸出又は酵素分解して除去し、多孔質の中空高弾性紐状体21Bとする方法、さらにデンプンの代りに食塩、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの水溶性塩の粒子を有機溶媒に溶かした生分解性素材の溶液へ分散し、紡糸後水で浸出することによって多孔質の中空高弾性紐状体21Bを製造する方法などがある。
【0062】
中空高弾性紐状体21Bの微細孔22Bのサイズは、例えば紡糸原液へ懸濁させる粒子のサイズによって調節することができ、また粒子の生分解性素材に対する固形分比率を調節することによって中空高弾性紐状体壁の空隙率を調節することができる。
【実施例4】
【0063】
実施例4の紐状カテーテルタイプ留置部材20Cは、図6(a)、(b)に示すように、生分解性素材の一体的なチューブ体からなり、前後両端面21Ca、21Cbが滑らかな凸曲面状に閉鎖され適宜の剛性及び柔軟性を有する適宜内径の中空高弾性紐状体21Cに形成され、外面に開口する複数の微細孔22Cが設けられ、中空高弾性紐状体21Cの中空21Cc内に長期徐放型薬剤40が収容されるとともに微細孔22C内に含浸されて担持される。中空高弾性紐状体21Cの前端面21Caは、硬膜外腔33にスムースに容易に挿入されるよう滑らかな尖鋭凸曲面状例えば略円錐形状に形成される。
【0064】
生分解性素材の中空高弾性紐状体21Cの原型となる中空糸の製造方法は、公知の方法を適用できるので詳細な説明は省略するが、例えば目的に応じて、適宜、紡糸口金を設計することにより、例えば中空のノズル、オリフィス状口金で生分解性素材とスターチ、澱粉等との混合物を紡糸する溶融紡糸により製造する方法、例えば芯部が生分解性素材であるポリ乳酸、鞘部がポリアミドからなる芯鞘構造糸を使用して織編物とし、芯部のポリ乳酸を溶出処理することにより、捲縮加工して高中空率でありかつ適宜の剛性及び柔軟性を有する中空糸を製造する方法などがある。
【0065】
さらに、前記実施例3における生分解性素材の多孔質体からなる中空高弾性紐状体の原型である中空糸を延伸することにより管壁に多数の微細孔22Cを形成する製造方法もある。この場合、紡糸した中空糸の外表面を溶剤と接触させることにより部分的に溶解させ、凝固後、延伸することにより、多孔質中空糸の外表面に、無孔又は極めて孔の存在が少ない層或いは多孔質層に比して径の小さい微細孔22Cが存在する緻密層が形成される。
【0066】
以上述べた各種紐状カテーテルタイプ留置部材20、20A、20B、20Cのサイズは、用いる硬膜外針又はCVポートなどの注入手段10の針管15aの内径に応じて外径が決定され、担持される長期徐放型薬剤40の所要量に応じて長さが選択的に設定される。
【0067】
また、長期徐放型薬剤40のうち、局所麻酔薬としては、例えば、リドカイン、メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカインなどを選択的に適用することができる。
【0068】
また、鎮痛薬としては、例えば、アスピリン、アスピリン・ダイアルミネート配合、サザピリン、非ピリン系感冒薬、サリチル酸ナトリウム、ジフルニサル、インドメタシン、インドメタシンファルネシル、アセメタシン、マレイン酸プログルメタシン、スプロフェン、ウフェナマート、ジメチルイソプロピルアズレン、ブフェキサマク、フェルビナク、ジクロフェナク、トルメチンナトリウム、クリノリル、フェンブフェン、ナプメトン、プログルメタシン、アンフェナクナトリウム、モフェゾラク、エトドラク、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、スルピリン、ミグレニン、サリドン、セデスG、アミピロ−N、ソルボン、アセトアミノフェン、フェナセチン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、ケトプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、チアプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、メフェナム酸、メフェナム酸アルミニウム、トルフェナム酸、フロクタフェニン、ケトフェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、ピロキシカム、テノキシカム、アンピロキシカム、ナパゲルン軟膏、エピリゾール、塩酸チアラミド、塩酸チノリジン、エモルファゾン、メシル酸ジメトチアジン、シメトリド配合剤などを選択的に適用することができる。
【0069】
また、長期徐放型薬剤40は、例えば、以下のような種々の変形形態に形成することが考えられる。
【0070】
一変形形態の長期徐放型薬剤40は、疎水性シクロデキストリン(cyclodextrin又は環状オリゴ糖)誘導体又は置換基を有する修飾体で包接された包接複合体に形成されて前記紐状カテーテルタイプ留置部材20、20A、20B、20Cに担持される。前記シクロデキストリン分子と留置部材との相互作用は、疎水性相互作用、水素結合、静電的相互作用などの物理的な結合や共有結合の両方を含む。
【0071】
長期徐放型薬剤40とは包接複合体を作り得る疎水性又は難水溶性シクロデキストリン例えばアルキル化シクロデキストリンあるいはエチル化シクロデキストリン誘導体を用いてこれをホスト化合物である包接複合体とすることにより、長期徐放型薬剤40と分子レベルで相互作用することから長期徐放型薬剤40本来の効力を変化させることなく、実用的に持効性が得られ、長期徐放型薬剤40の紐状カテーテルタイプ留置部材20、20A、20B、20Cへの導入量を増大させるとともに徐放速度を制御することができる。また、一度包接複合体を形成すれば、pHに依存することなく徐放化されるので、製剤設計や品質の確保も容易化される。さらに、このような包接複合体は長期徐放型薬剤40の物理化学的性質を変化させ、光や熱に対する安定性向上も期待できる。
【0072】
前記包接複合体の製造方法は、公知の例えば長期徐放型薬剤40対疎水性シクロデキストリン誘導体のモル比1:1〜1:3程度に秤量後、ゾル状になる程度の精製水を加えた後ペースト状になるまで充分混練し、その後減圧乾燥等で乾燥して粉末状の包接複合体を得る混練法、あるいは溶液法及び凍結乾燥法などを適用することができるので詳細な説明は省略する。
【0073】
また、別の変形形態の長期徐放型薬剤40は、水分による膨潤性あるいは温度による疎水性を有することにより徐放性能を備えた生分解性高分子からなるミクロカプセルすなわち 水分・温度応答性マイクロカプセルに内包されて前記紐状カテーテルタイプ留置部材20、20A、20B、20Cに担持される。この形態においては、前記ミクロカプセルが硬膜外腔33に放出され、さらに該ミクロカプセル内から長期徐放型薬剤40が硬膜外腔33に順次放出される。
【0074】
前記生分解性高分子は、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリイプシロンカプロラクトン(PCL)、あるいはこれらの共重合体からなる群などから1つ又は複数の組合せを選択的に適用できる。
【0075】
マイクロカプセルは、前記生分解性の高分子物質を用い、公知の製造方法により詳細な説明を省略するが、一般的に対称的な略球状、あるいは例えば放出制御膜、薬物層及び基底膜の三層構造から成り長期徐放型薬剤40を高い封入率で封入することが可能な非対称的形状などに形成することができる。
【0076】
さらに、上記の長期徐放型薬剤40が担持された紐状カテーテルタイプ留置部材20、20A、20B、20Cの全体又は構成繊維の表面に、ゼラチン、コラーゲンを含む生分解性高分子によりコーティングする変形形態とすることで、徐放性能を一層効果的にコントロールすることが可能なように構成することもできる。
【0077】
前記紐状カテーテルタイプ留置部材の構成繊維の表面に生分解性高分子によりコーティングする場合、例えば、生分解性高分子であるゼラチン水溶液を満たした鋳型に前記構成繊維を導入してゲル化しコーティングする方法、あるいは前記構成繊維をゼラチン水溶液に浸漬しこれを引き上げて適切な温度制御などでゲル化しコーティングする方法など公知の方法が適用できるので詳細な説明は省略する。これにより、前記構成繊維がコーティングにより束ねられるため紐状カテーテルタイプ留置部材のハンドリングが向上する。
【0078】
このように、本発明の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム1は、患者の背面から一般的な硬膜外針10などを用いて一回の穿刺により硬膜外腔33に留置される紐状カテーテルタイプ留置部材20、20A、20B、20Cが生分解性素材のそれぞれ極細繊維、ナノ繊維、多孔質体又は外面に開口する複数の微細孔を備えた一体的なチューブ体から両端面が閉鎖された適宜内径の中空高弾性紐状体21、21A、21B、21Cに形成されて内部に長期徐放型薬剤40が収容され担持されることから、いずれも簡単なシステム構成で薬剤が中空高弾性紐状体21、21A、21B、21Cの外面から所定期間順調に徐放されるとともに留置された紐状カテーテルタイプ留置部材20、20A、20B、20Cは最終的には硬膜外腔33内で吸収され消失してしまうので、患者に対する低侵襲性、生体適合性及び安全性が容易に確保される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム1は、一般的な硬膜外針又はCVポート10などを用いて患者の背面から一回の穿刺により硬膜外腔に医療適合性の生分解性素材からなる紐状カテーテルタイプ留置部材20、20A、20B、20Cが留置されて薬剤が所定期間順調に徐放されるとともに最終的には硬膜外腔内で吸収され消失してしまうことから、簡単な構成により比較的安価で、頻回な硬膜外穿刺やカテーテル留置によるADLの低下や感染のリスクをなくすことができ、低侵襲性、生体適合性及び安全性に優れた長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムを提供できる効果があり、種々の手術後の鎮痛、ベインクリニックにおける治療、癌性疹痛の鎮痛等々広範な医療業界に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0080】
1;長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム
10;硬膜外針又はCVポート(注入手段)
12;プラスチックチューブ
12a;テーパー部
13;ハブ
14;外套
15;外針(外套管針)
15a;針管
15b;外針(外套管針)刃面
16;内針(内套芯棒)
16a;針棒
16b;内針(内套芯棒)刃面
20、20A、20B、20C;紐状カテーテルタイプ留置部材
21、21A;高弾性紐状体
21a、21Aa、21Ca;前端面
21B、21C;中空高弾性紐状体
21b、21Ab、21Cb;後端面
21Bc、21Cc;中空
31;脊椎
32;硬膜
33;硬膜外腔
34;黄色靭帯
35;棘突起
40;長期徐放型薬剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬膜外麻酔又は硬膜外ブロックを行う際に硬膜外腔に局所麻酔薬、オピオイド又は鎮痛薬のいずれか一つ又は複数の組合せを含む長期徐放型薬剤を留置する長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システムであって、
医療適合性の生分解性素材から形成され、前記長期徐放型薬剤が徐放自在に内部に担持された紐状カテーテルタイプ留置部材と、
外針内に内針が挿入される針組立体からなる硬膜外針又はCVポートを含む注入手段と、を少なくとも備え、
前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、前記注入手段の外針内に収容され、患者の背面から穿刺されて硬膜外腔に挿入された前記外針から硬膜外腔に押出されて留置されることを特徴とする長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム。
【請求項2】
前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、前記生分解性素材の極細繊維又はナノ繊維から適宜の剛性及び柔軟性を有する高弾性紐状体に形成され、該高弾性紐状体内に前記長期徐放型薬剤が含浸されて担持されることを特徴とする請求項1記載の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム。
【請求項3】
前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、前記生分解性素材から相互に連通して外面に開口するように配置された複数の微細孔を有し適宜の剛性及び柔軟性を有する多孔質の高弾性紐状体に形成され、該多孔質高弾性紐状体内に前記長期徐放型薬剤が含浸されて担持されることを特徴とする請求項1記載の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム。
【請求項4】
前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、前記生分解性素材から両端面が閉鎖され適宜の剛性及び柔軟性を有する適宜内径の中空高弾性紐状体に形成されて外面に開口する複数の微細孔を備え、該中空高弾性紐状体内に前記長期徐放型薬剤が収容されて担持されることを特徴とする請求項1記載の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム。
【請求項5】
前記中空高弾性紐状体は、前記生分解性素材の極細繊維又はナノ繊維、あるいは多孔質体から形成されることを特徴とする請求項4記載の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム。
【請求項6】
前記中空高弾性紐状体は、前記生分解性素材の一体的なチューブ体から形成され、外面に開口する複数の微細孔が設けられることを特徴とする請求項4記載の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム。
【請求項7】
前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、前記担持される長期徐放型薬剤の所要量に応じて長さが選択的に設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム。
【請求項8】
前記紐状カテーテルタイプ留置部材の少なくとも前端面は、滑らかな尖鋭凸曲面状又は略円錐形状に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム。
【請求項9】
前記長期徐放型薬剤は、シクロデキストリン又は疎水性シクロデキストリン誘導体で包接された包接複合体に形成されて前記紐状カテーテルタイプ留置部材に担持されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム。
【請求項10】
前記長期徐放型薬剤は、水分による膨潤性あるいは温度による疎水性を有することにより徐放性能を備えた生分解性高分子からなるミクロカプセルに内包されて前記紐状カテーテルタイプ留置部材に担持され、
前記ミクロカプセルが前記硬膜外腔に放出され、さらに該ミクロカプセル内から前記長期徐放型薬剤が前記硬膜外腔に順次放出されることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム。
【請求項11】
前記紐状カテーテルタイプ留置部材は、全体又は構成繊維の表面がゼラチン、コラーゲンを含む生分解性高分子により徐放性能がコントロール可能にコーティングされることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の長期徐放型薬剤硬膜外腔留置システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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