説明

長期臥床者用食品

【課題】 最近では亜鉛や銅といった微量元素の摂取が褥瘡の予防と治癒を促進させる上で重要であり、栄養療法に取り入れられている。しかし、微量元素による栄養療法では、これらの過剰摂取の問題がある。例えば、亜鉛を過剰摂取した場合、貧血、発熱、嘔吐、腹痛、下痢を引き起こす事が問題となっている。このような場合、状態が悪化することが危惧される。本発明は、褥瘡を効果的に予防及び治癒する上で微量元素のように過剰摂取による障害を受けず、新規で有用な褥瘡抑制組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 食物繊維を有効成分として含有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は褥瘡の予防及び治癒に有効な成分として食物繊維を含んだ飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
褥瘡、つまり床ずれは、慢性皮膚潰瘍とされ、発症の要因も複雑で、その大部分は難治化するケースが多い(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
褥瘡を予防及び治癒する上で、2時間おきに体位を変えること、体圧を分散させるようなマットレスの使用及び外科的な治癒等が知られている(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、体位の変更は、看護士の負担を増大させる。また、マットレスの使用は病院施設のコストを増大させ、外科的な治癒は術後ケアの負担を強いることとなる。ところで、褥瘡を予防するためや治癒を促進させていくためには、栄養管理が最も必要である。褥瘡は毛細血管血流が阻害され、これにより皮膚に酸素及び栄養の運搬障害が起こり発生する。このために、圧迫に対する組織耐久性が低下する。栄養が十分でない場合、全身状態が悪化し組織耐久性が低下し褥瘡の状態が悪化する。
【0004】
褥瘡を予防することや治癒するための手段の一つに、高エネルギーもしくは高タンパク摂取を目的とした栄養管理の手法がある。また最近では亜鉛や銅といった微量元素の摂取が褥瘡の予防と治癒を促進させる上で重要であり、栄養療法に取り入れられている(例えば、特許文献1参照)。しかし、微量元素による栄養療法では、これらの過剰摂取の問題がある。例えば、亜鉛を過剰摂取した場合、貧血、発熱、嘔吐、腹痛、下痢を引き起こす事が問題となっている。このような場合、状態が悪化することが危惧される。
【0005】
褥瘡を含む創傷の治癒過程として、炎症期(発赤、腫脹、疼痛、熱感)、増殖期(肉芽形成、上皮形成、創の収縮)、成熟期(発赤の消息)があることが知られており(例えば、非特許文献3参照)、この順序を経て治癒に至る。褥瘡の場合は、炎症期が延長する傾向を示す。褥瘡は、炎症期に壊死細胞が存在する事が多い。又、褥瘡は、仙骨部や尾骨部など尿や糞便による汚染を受けやすいところに好発する。このことより仙骨部や尾骨部は、褥瘡発生部位において約50%を占めており、もっともケアしなければならない場所である。
【0006】
【非特許文献1】病体生理,Vol.39,No.1,2‐5(2005)
【非特許文献2】Medical Technology,Vol.33,No.2,143‐150(2005)
【非特許文献3】Medical Technology,Vol.33,No.2,137‐142(2005)
【特許文献1】特開平17−213234号公報(第1頁−10頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の知見から、褥瘡を効果的に予防及び治癒する上で微量元素のように過剰摂取による障害を受けず、新規で有用な褥瘡抑制組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、褥瘡患者に対して褥瘡を予防及び治癒することを目的とし鋭意研究を重ねた結果、有効成分として食物繊維を含有した褥瘡抑制組成物を経口摂取、経腸投与等により使用することで上記目的を達成することを初めて見い出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食物繊維を有効成分として含有することを特徴とする褥瘡抑制組成物は、褥瘡の発症もしくは進行を抑制する。褥瘡は、病原菌に感染した場合完治が遅れる。炎症期が長くなることは、患者の負担及び医療費が増大するといった状況となる。本発明の食物繊維を有効成分として含有することを特徴とする褥瘡抑制組成物は、褥瘡の予防及び治癒する上で極めて有用であり、その産業上の利用価値は大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の長期臥床者とは、種々の疾病、老化等が原因で寝たきりとなっているヒトを指し、なかでも、褥瘡を発生したヒトに褥瘡抑制組成物は効果的に用いることが出来る。
【0011】
本願発明における食物繊維とは、人の消化酵素で消化されない食品中の難消化糖質のことであり、水に溶解しない不溶性食物繊維と水に溶解する水溶性食物繊維を指す。不溶性食物繊維の具体例としては、例えばセルロース、リグニン、キチン、キトサン、アラビノキシラン、ガラクタン、キシログルカン、及びこれらの誘導体などが挙げられる。水溶性食物繊維の具体例としては、例えば、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、低分子アルギン酸、サイリウム、アラビアガム、ポリガラクトマンノース、寒天、フコイダン、ラミナラン、カラギナン、ウェランガム、カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、デキストラン、ラムザンサンガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、トラガントガム、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、チコリファイバー、ポリガラクトース及びポリガラクトース誘導体が例示でき、飲料への風味およびテクスチャへの影響の観点から、低分子アルギン酸、ポリガラクトマンノース、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、イヌリン、ポリガラクトース及びポリガラクトース誘導体が好ましく、最も好ましくはポリガラクトマンノースである。これらより選ばれる1種又は2種以上を任意に組み合わせて用いる事ができる。
【0012】
本発明のポリガラクトマンノースとは、主鎖のβ−(1→4)マンナン鎖のO−6位からα−ガラクトシル基が結合した櫛状の分岐構造を有するものを指し、化学合成品及び天然物由来のいずれのものも利用できるが、製造コスト及び食品の観点から天然物由来のものが好ましい。天然物としては、植物、動物、海藻及び微生物のいずれの原料も利用できるが、原料の入手のしやすさから植物が好ましい。植物としては、グアー(Cyamopsis tetragonolobus)、イナゴマメ(Ceratonia siliqua)、ケンタッキー・コーヒーマメ(Gymnocladus dioica)、コロハ(Trigohella foenumgracum)、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)、クローバ(Trifolium pratense)及びダイズサヤ(Glycine hispida)、タラ(Actinidia callosa LINDLEY)、セスバニア(Sesbania bisibinonia)イキカシア(Cassia tora Linn)が例示でき、資源の豊富さと味の観点からグアー(Cyamopsis tetragonolobus)及びイナゴマメ(Ceratonia siliqua)由来のグアーガム及びローカストビーンガムが好ましく、最も好ましくはグアー(Cyamopsis tetragonolobus)由来のグアーガムである。植物由来のポリガラクトマンノースの分子内のガラクトースに対するマンノースの割合は0.5〜5.0であり、好ましくは1.0〜3.0、最も好ましくは1.5〜2.5である。また、本発明では、これら上記の植物由来で工業的利用できるグアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム及びセスバニアガム等の天然粘質物、好ましくは、グアーガム、ローカストビーンガム、セスバニアガム、さらに好ましくはグアーガム、ローカストビーンガム、最も好ましくはグアーガムを加水分解し低分子化することにより得られるものである。加水分解の方法としては酵素分解法及び酸分解法等があり、特に限定するものではないが、分解物の分子量の制御の容易さの観点から酵素分解法が好ましい。酵素分解法に用いられる酵素は、マンノース直鎖を加水分解する酵素であれば市販のものでも天然由来のものでも特に限定されるものではないが、アスペルギルス属菌やリゾープス属菌等に由来するβ−マンナナーゼが好ましい。
【0013】
ポリガラクトマンノースは、褥瘡を効果的に予防及び治癒する生理作用を有している必要があるため、平均分子量及び粘度の値がそれぞれ所定範囲内であることが望ましい。具体的にいうとポリガラクトマンノースの平均分子量は5000以上30000以下が好ましく、平均分子量の下限値としては、好ましくは5000、より好ましくは8000、さらに好ましくは10000であり、上限値としては、好ましくは30000より好ましくは、27000、さらに好ましくは、25000である。
【0014】
なお、平均分子量の測定方法は特に限定されないが、高速液体クロマトグラフ法を用いて分子量分布を測定する方法等が好適である。平均分子量がこの範囲未満の場合には、所望とする褥瘡を効果的に予防及び治癒する作用が弱くなる。また、平均分子量がこの範囲を越える場合には、粘性が増すことで大量摂取が困難になりかつ水に対する溶解性も小さくなる。
【0015】
本発明品のポリガラクトマンノースのマンノース直鎖の鎖長は30単位〜200単位の範囲内に80%以上分布しており、かつ、5%水溶液の粘度は、ブルックフィールドB型粘度計を用いて5℃,60rpmで、Lowローターにて測定したときに5mPa・s〜20mPa・sである。
【0016】
本発明のポリガラクトマンノースの市販品としては、サンファイバー(太陽化学社製)、クッキンサプリサンファイバー(太陽化学社製)、ファイバロン(大日本製薬社製)、グアファイバー(明治製菓社製)及びG−ファイバー(グリコ栄養食品社製)等が挙げられる。
【0017】
本発明における難消化性デキストリンとは、澱粉および小麦粉を加熱、酵素処理して得られる難消化性の食物繊維である。具体的には例えば、澱粉を酸性下で加熱処理して得られる焙焼デキストリンを、α−アミラーゼで加水分解処理し、さらに必要に応じて、グルコアミラーゼ処理、イオン交換樹脂クロマトグラフィー処理などの精製処理などを施して得ることができる。その分子量は、特に限定されないが、好ましくは500〜10,000の範囲のものを用いることができる。分子量が500未満のものは呈味性の問題、分子量10,000以上では呈味性、食感の面で問題となることがある。
【0018】
本発明の難消化性デキストリンの市販品としては、商品名「パインファイバー」、「ファイバーソル」(松谷化学工業社製)、「ホリカファイバー」、「オクノス食物繊維」(ホリカフーズ社製)、「ニュートリオースFB」(ロケットジャパン社製)などが挙げられる。
【0019】
本発明におけるポリデキストロースとは、ブドウ糖、ソルビトール及びクエン酸をおおよそ89:10:1の割合で混合し高温真空下で重合させたものなどである。その分子量は、特に限定されないが、好ましくは500〜10,000の範囲のものを用いることができる。分子量が500未満のものは呈味性の問題、分子量10,000以上では呈味性、食感の面で問題となることがある。
【0020】
本発明のポリデキストロースの市販品としては、「ライテス」(ダニスコカルター社製)などが挙げられる。
【0021】
本発明におけるチコリファイバーとは、チコリの根から温水抽出し、精製、スプレードライにより粉末化したものである。その分子量は、特に限定されないが、好ましくは500〜5,000の範囲のものを用いることができる。分子量が500未満のものは呈味性の問題、分子量5,000以上では呈味性、食感の面で問題となることがある。
【0022】
本発明のチコリファイバーの市販品としては、商品名「ラフィテリン」(日本シーベルヘグナー社製)などが挙げられる
【0023】
本願発明において、褥瘡抑制組成物を調製する方法は、特に限定されるものではない。例えば、そのまま混合する方法、水に分散溶解させる方法、更にそれを噴霧乾燥や凍結乾燥等の方法により乾燥する方法等が挙げられる。又、適宜顆粒状にして利用する事も出来る。
【0024】
本発明の褥瘡抑制組成物は、単独で使用することが可能である。また、食卓や介護食を食するときに添加して用いても良く、この場合、溶解性の観点より顆粒品が好ましい。本願発明の褥瘡抑制組成物は、飲食品の形態でもよい。本願発明における飲食品とは、溶液、懸濁物、粉末、固体成形物等経口摂取可能な形態であれば良く特に限定するものではない。より具体的には、流動食、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ調理食品、即席スープ、みそ汁類、フリーズドライ食品等の即席食品類、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類、パン、パスタ、麺、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品、飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類、ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調味ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類等の調味料、加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品、冷凍食品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品等の水産加工品、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品、農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品、栄養食品、錠剤、カプセル等が例示される。
【0025】
褥瘡を効果的に予防及び治癒する上で褥瘡抑制組成物の1日あたりの摂取量は特に限定されないが、体重60kg換算でコストと有効性の観点より0.1〜40g、好ましくは1〜30g、最も好ましくは3〜20g、摂取期間は1〜60日間、好ましくは3〜30日間、最も好ましくは5〜15日間である。
【0026】
本発明の褥瘡抑制組成物の使用方法は、特に限定されないが、経口摂取及び経腸投与等である。また、経口摂取が困難であれば、経腸投与が好ましい。経腸投与では、その投与方法は、特に限定されないが、経腸栄養剤に添加する、溶液状にして投与する等がある。
【0027】
長期臥床者用食品は、本願発明の褥瘡抑制組成物を含有するものであり、単独で使用することが可能であり、飲食品の形態でもよい。
【0028】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0029】
実施例1
〔試験食の調製法〕
表1の配合により、一般的な方法に従ってパンを調製し、それを試験食とした。焼成品を1日1食100g摂取することで試験を行った。食物繊維はポリガラクトマンノース(太陽化学社製「サンファイバー」)、難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)、ポリデキストロース(ダニスコカルター社製)を用いた。また、対照として無添加のコントロールをおいた。
【0030】
【表1】

【0031】
[試験方法]
褥瘡を患っている被験者10人について、非摂取期14日間、続く摂取期14日間のスケジュールで、非摂取期及び摂取期の各試験終了後褥瘡患部の状態を以下のアンケート調査により比較した。
褥瘡患部の大きさ
改善:小さくなる 変化無し 悪化:大きくなる
褥瘡患部の深さ
改善:浅くなる 変化無し 悪化:深くなる
炎症徴候
変化無し 悪化:炎症が起こる
【0032】
結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
表2の結果を見ても明らかなように食物繊維を添加した褥瘡抑制組成物は、褥瘡の大きさ及び深さを改善し、感染リスクを低下させた。従って、本発明は褥瘡の治癒効果を示すことが認められる。
【0035】
実施例2
濃厚流動食(125ml,旭化成ファーマ社製,商品名「笑顔倶楽部」)に食物繊維5gを添加し、試験食とした。食物繊維はポリガラクトマンノース(太陽化学社製「サンファイバー」)、難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)、ポリデキストロース(ダニスコカルター社製)を用いた。また、対照として無添加のコントロールをおいた。試験方法に関しては、実施例1と同様である。
【0036】
結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表3の結果を見ても明らかなように食物繊維を添加した濃厚流動食は、褥瘡の大きさ及び深さを改善し、感染リスクを低下させた。従って、本発明は褥瘡の治癒効果を示すことが認められる。
【0039】
実施例3
通常の食事における摂取として、お茶に溶解させて飲む方法で試験を行った。緑茶100mlに対して食物繊維3gを溶解させて、一般的な食事と共に摂取させた。食物繊維はポリガラクトマンノース(太陽化学社製「サンファイバー」)、難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)、ポリデキストロース(ダニスコカルター社製)を用いた。また、対照として無添加のコントロールをおいた。試験方法に関しては、患者が入院患者であることを除けば実施例1と同様である。
【0040】
結果を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表4の結果を見ても明らかなように食物繊維を添加した褥瘡抑制組成物は、褥瘡の大きさ及び深さを改善し、感染リスクを低下させた。従って、本発明は褥瘡の治癒効果を示すことが認められる。
【0043】
実施例3
食物繊維を単独で摂取する方法で試験を行った。食物繊維3gを摂取させた。食物繊維はポリガラクトマンノース(太陽化学社製「サンファイバー」)、難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)、ポリデキストロース(ダニスコカルター社製)を用いた。また、対照として無摂取のコントロールをおいた。試験方法に関しては、患者が入院患者であることを除けば実施例1と同様である。
【0044】
結果を表5に示す。
【0045】
【表5】

【0046】
表5の結果を見ても明らかなように食物繊維を添加した褥瘡抑制組成物は、褥瘡の大きさ及び深さを改善し、感染リスクを低下させた。従って、本発明は褥瘡の治癒効果を示すことが認められる。
【0047】
実施例4
10〜15週齢(体重280〜410g)の雄性Wister系ラット(日本エスエルシー(株))を用いた。予備飼育及び試験期間中は23℃、湿度55%に設定された部屋で個別ゲージにより飼育した。これらのラットを5群に分け、試験区1:ポリガラクトマンノース(太陽化学社製「サンファイバー」平均分子量20000)、試験区2:ポリガラクトマンノース(太陽化学社製「サンファイバー」平均分子量25000)試験区3:難消化性デキストリン(松谷化学工業社製)、試験区4:ポリデキストロース(ダニスコカルター社製)試験区5:無添加とした。通常の餌にこれら試験区ごとに食物繊維を5g加え(試験区4は無添加)、90日間連続的に経口摂取させた。
【0048】
90日後ラットの右大転子上の皮膚を広範囲に渡って電気バリカン及び安全カミソリで剃毛した。麻酔をかけ、ラットを固定板上に腹位に固定した。大腿部と固定板の間にはクッションとして脱脂綿を入れ右大転子上に皮膚に500mmHgの圧(接触部直径12mm)を負荷した。24hr後に圧負荷を解除した。圧迫除去後30分以内に発赤が消退しない場合を褥瘡と判断した。
【0049】
結果を表6に示す。
【0050】
【表6】

【0051】
表6の結果を見ても明らかなように食物繊維を添加した褥瘡抑制組成物は、褥瘡の発生を防ぐ又は、褥瘡が発症したとしても軽度で抑えることができる。従って、本発明は褥瘡の予防効果を示すことが認められる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、褥瘡の予防と治癒に有効な成分として食物繊維を含有する褥瘡抑制組成物を提供することを目的として、褥瘡の治癒の遅れを防ぐことや、寝たきり患者の褥瘡を予防し、感染防御効果の優れた褥瘡抑制組成物を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物繊維を有効成分として含有することを特徴とする褥瘡抑制組成物。
【請求項2】
食物繊維が水溶性食物繊維である請求項1記載の褥瘡抑制組成物。
【請求項3】
水溶性食物繊維がポリガラクトマンノースである請求項2記載の褥瘡抑制組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の褥瘡抑制組成物を含む長期臥床者用食品。

【公開番号】特開2008−115095(P2008−115095A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298514(P2006−298514)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】