説明

閉じられた空間内の空気の熱およびCO2濃度を調整する方法

本発明は、その中で植物および/または農作物が生育されるところの閉じられた空間内の空気の熱およびCO濃度を調整する方法を提供し、該方法においては、酸素含有ガスおよび炭化水素含有ガスが、酸素と結合する能力のある粒子の床を交互に通され、その場合に酸素含有ガスは、粒子床を粒子が酸化され熱が放出される条件下に通され、その後に該熱の少なくとも一部が該閉じられた空間に提供され、そして炭化水素含有ガスが、かく得られた酸化された粒子の床を該酸化された粒子が化学的に還元され水およびCOが生成される条件下に通され、その後に、かく得られたCOの少なくとも一部が該閉じられた空間に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その中で植物および/または農作物が生育されるところの閉じられた空間内の空気の熱およびCO濃度を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
COは植物および/または農作物を生育するために必要な要素である。何故ならば、光の存在下に、かつCOを吸収しながら、植物および/または農作物の中で光合成が行われ、その結果生育が達成されるからである。逆に、暗やみの中では、光合成は行われず、植物または農作物によって酸素が吸収され、かつCOが放出される。とりわけ、生育された農作物に対する需要は増加しており、農作物を生育するために利用できる空間は通常、限定されているので、農作物の生育促進は温室園芸において非常に重要である。たとえば、同化照明によって、およびその中でそれぞれの農作物が生育されるところの空間内のCO濃度を増加することによって、農作物の生育は促進されることができる。特にCO濃度の増加は、農作物の生育において重要な主要手段である。普通、この目的のために使用されるCOは暖房ボイラーによって製造され、該暖房ボイラーの中ではCOが製造され同時に熱が放出される慣用の燃焼プロセスが実行される。このようにして得られた熱は、温室の内部に熱需要がある時期の間、温室を加熱するために使用されることができる。しかし、このような慣用の方法は、COの製造および熱の放出が連結しており、ところが実際にはCOの製造および熱の放出に対するそれぞれの需要は往々にして連結していないという欠点を有する。これに関しては、たとえば、日中には、とりわけ夏の日中には、COに対する比較的高い需要が通常あろうが、同時に熱需要は限定的でしかないだろうということが指摘される。他方において、夜間には、とりわけ冬の夜間には、熱に対する比較的高い需要が通常あろうが、COに対する需要は限定的でしかないだろう。したがって、慣用の方法は、温室内で実際に生じるCOおよび熱に対するそれぞれの需要と十分には相和しない。熱需要が限定的でしかない時に、後刻に使用するために、製造された熱をいわゆる熱バッファ中に保存することは可能であるけれども、通常、多量の熱の無駄が発生する。さらに加えて、COに対する限られた需要しかない時期には、製造されたCOのほとんどは、通常、燃焼排ガスの形で外部の空気中に直接排出される。したがって、熱の無駄が往々にして伴うのみならず、COの不必要な製造および排出も伴う。エネルギー消費およびCO排出に関する益々厳しくなる基準を考慮すると、温室で製造される熱およびCOのより効率的な使用または低減についての大いなる必要が存在することは明らかであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、温室におけるCOの製造および熱の放出が、改良された、より効率的な様式で調整されることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚いたことに、そこで二つのタイプのプロセスが交互の様式で実施されることができるところの粒子床が利用されると、この目的が達成されることができることが今発見された。
【0005】
したがって、本発明は、その中で植物および/または農作物が生育されるところの閉じられた空間内の空気の熱およびCO濃度を調整する方法に関し、該方法においては、酸素含有ガスと炭化水素含有ガスが酸素を結合する能力のある粒子の床に交互に通され、その場合に、粒子が酸化され熱が放出される条件下に酸素含有ガスが粒子床を通され、その後に該熱の少なくとも一部が該閉じられた空間に供給され、かつ炭化水素含有ガスが、かく得られた酸化された粒子の床に該酸化された粒子が化学的に還元され水およびCOが生成される条件下に通され、その後に、かく得られたCOの少なくとも一部が該閉じられた空間に供給される。
【発明の効果】
【0006】
本発明に従う方法は、実質的なエネルギーの節約を許し、他方で同時にCOの排出が有意に減少されることができる。さらに、本発明の技術は、炭化水素燃料の供給に頼る必要なく、(床サイズに応じた)ある期間熱を製造する能力があり、または燃料のピーク価格が高いときに燃料の供給が低減され若しくは停止されることができ、一方後日に、より低い燃料価格の恩恵を受けることができる(ピークシェービング)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に従う方法では、粒子の酸化および還元は、好ましくは単一の反応器内で実施され、それによって酸素含有ガスおよび炭化水素含有ガスが同一の粒子床を交互に通される。
【0008】
本発明の他の魅力的な実施態様では、粒子の酸化および還元は、酸素と結合する能力のある粒子の床をそれぞれが有する別々の反応器内で実施され、それぞれの反応器内のそれぞれの床の粒子の酸化および化学的還元を達成するために、酸素含有ガスおよび炭化水素含有ガスが周期的に切り替えられる。
【0009】
本発明の好まれる実施態様では、多孔性のセラミックまたは金属の管が使用されて、酸素含有ガスおよび炭化水素含有ガスが低圧力損失で(1または複数の)粒子床上に分配される。
【0010】
好適には、100〜1500℃の範囲の温度および1〜100バールの範囲の圧力で、粒子の酸化は行われる。好ましくは、700〜1100℃の範囲の温度および1〜2バールの範囲の圧力で、粒子の酸化は行われる。
【0011】
好適には、300〜1500℃の範囲の温度および1〜100バールの範囲の圧力で、触媒粒子の還元は行われる。好ましくは、600〜1100℃の範囲の温度および1〜40バールの範囲の圧力で、触媒粒子の還元は行われる。
【0012】
本発明に従って使用されるべき炭化水素含有ガスは、好適には1以上のガス状炭化水素を含んでいる。
【0013】
好ましくは、炭化水素含有ガスは、プロパン、ブタンまたは反応器稼動の温度および圧力の条件においてガス状である任意の炭化水素を含んでいる。より好ましくは、炭化水素含有ガスは天然ガスまたはメタンを含んでいる。
【0014】
本発明に従って使用されるべき酸素含有ガスは、好ましくは空気を含んでいる。
【0015】
酸素と結合する能力のある粒子は、好適には金属若しくは金属酸化物および/または担体物質を含んでいる。
【0016】
好ましくは、該金属はCu、Fe、Ni、Co、およびMnからなる群から選択され、該金属は還元された金属の形でまたは酸化された誘導体の状態で存在し、他方、担体物質は好ましくはアルミナ、シリカ、ジルコニア、およびチタニアからなる群から選択される。
【0017】
好ましくは、閉じられた空間内で光合成が行われるときに、COの製造は行われる。一般に、これは日中または同化照明が使用される夜間であろう。
【0018】
好ましくは、閉じられた空間は、たとえば温室園芸で使用されるような温室である。
【0019】
好ましくは、単一の反応器または1以上の床を有する別々の反応器は、該閉じられた空間自体の内部にまたは近傍に位置する空間、たとえば隣接する空間内に置かれる。
【0020】
好適には、粒子の酸化の際に放出される熱は、反応器の粒子床内に(部分的に)貯蔵され、そしてその後にそれが使用されて、炭化水素含有ガスが、酸化された粒子の床を通されるときに、該酸化された粒子が化学的に還元される際のCOの生成が促進される。この目的のためには、金属性粒子床の熱容量は一般には十分である。同様に、床によって結合された酸素は、該粒子床の酸化レベルを増加することによって貯蔵されることができる。粒子床中に貯蔵された熱および酸素の量はCO製造の潜在能力を表し、要求に応じてこれらは、炭化水素ガスの注入によって放出されることができる。反応器はそうすると、熱およびCOを数日間および適切な大きさであれば数週間または数月間さえも貯蔵することができる一体化された熱およびCOのバッファとして機能する。あるいは、製造されたCOは、閉じられた空間に通される前に貯蔵されることができる。この目的のためには、たとえば加圧されたガスバッファが使用されることができる。このような加圧ガスバッファからCO2は後で、閉じられた空間内でのCOに対する需要が増加したときに放出されることができる。あるいは、加圧ガスバッファから外部の消費者へと、COは供給されることができる。
【0021】
本発明の魅力的な実施態様では、粒子床を通された後の酸素枯渇空気はその後に、植物または食品、とりわけ酸素に敏感な製品を酸素のない条件下に乾燥、殺菌、低温殺菌若しくは除虫するために、または酸化感受性の若しくは傷みやすい製品を包装するために使用される。
【0022】
本発明の他の魅力的な実施態様では、粒子の化学的還元の際に生成されたCOの少なくとも一部は、食品を炭酸ガス処理若しくは除虫するために、または酸素のない条件下に製品を包装するために使用される。
【0023】
本発明に従う植物および/または農作物は、温室内で通常、生育されるようなすべてのものを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その中で植物および/または農作物が生育されるところの閉じられた空間内の空気の熱およびCO濃度を調整する方法において、酸素含有ガスと炭化水素含有ガスが酸素を結合する能力のある粒子の床に交互に通され、その場合に、粒子が酸化され熱が放出される条件下に酸素含有ガスが粒子床を通され、その後に該熱の少なくとも一部が該閉じられた空間に供給され、かつ炭化水素含有ガスが、かく得られた酸化された粒子の床に、該酸化された粒子が化学的に還元され水およびCOが生成される条件下に通され、その後に、かく得られたCOの少なくとも一部が該閉じられた空間に供給される上記方法。
【請求項2】
粒子の酸化および還元が単一の反応器内で実施され、酸素含有ガスおよび炭化水素含有ガスが同一の粒子床に交互に通される、請求項1に従う方法。
【請求項3】
粒子の酸化および還元が、酸素を結合する能力のある粒子の床をそれぞれが有する別々の反応器内で実施され、それぞれの反応器内のそれぞれの床の粒子の酸化および化学的還元を達成するために、酸素含有ガスおよび炭化水素含有ガスが周期的に切り替えられる、請求項1に従う方法。
【請求項4】
多孔性のセラミックまたは金属の管が使用されて、酸素含有ガスおよび炭化水素含有ガスが低圧力損失で1または複数の粒子床上に分配される、請求項1〜3のいずれか1項に従う方法。
【請求項5】
100〜1500℃の範囲の温度および1〜100バールの範囲の圧力で粒子の酸化が行われる、請求項1〜4のいずれか1項に従う方法。
【請求項6】
300〜1500℃の範囲の温度および1〜100バールの範囲の圧力で触媒粒子の還元が行われる、請求項1〜5のいずれか1項に従う方法。
【請求項7】
炭化水素含有ガスが、1以上のガス状炭化水素を含んでいる、請求項1〜6のいずれか1項に従う方法。
【請求項8】
炭化水素含有ガスが天然ガスまたはメタンを含んでいる、請求項7に従う方法。
【請求項9】
酸素含有ガスが空気を含んでいる、請求項1〜8のいずれか1項に従う方法。
【請求項10】
粒子が、金属若しくは金属酸化物および/または担体物質を含んでいる、請求項1〜9のいずれか1項に従う方法。
【請求項11】
金属がCu、Fe、Ni、Co、およびMnからなる群から選択され、該金属が還元された金属の形でまたは酸化された誘導体の状態で存在し、他方、担体物質はアルミナ、シリカ、ジルコニア、およびチタニアからなる群から選択される、請求項10に従う方法。
【請求項12】
粒子の酸化の際に放出された熱が、すべてまたは部分的に貯蔵され、そしてその後に、炭化水素含有ガスが酸化された粒子の床に通されるときに、該酸化された粒子の化学的還元の間にCOの生成を促進するために該熱が使用される、請求項1〜11のいずれか1項に従う方法。
【請求項13】
酸素含有空気が、粒子床を通された後、植物または食品を乾燥、殺菌、低温殺菌若しくは除虫するために、または酸化感受性の製品を包装するために使用される、請求項1〜12のいずれか1項に従う方法。
【請求項14】
粒子の化学的還元の際に生成されたCOの少なくとも一部が、食品を炭酸ガス処理若しくは除虫するために、または酸素のない条件下に製品を包装するために使用される、請求項1〜13のいずれか1項に従う方法。

【公表番号】特表2008−539783(P2008−539783A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512230(P2008−512230)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000248
【国際公開番号】WO2006/123925
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(502015784)ネーデルランドセ オルガニサティエ フォール トエゲパストナトールヴェテンシャッペリク オンデルゾエク ティエヌオー (41)
【Fターム(参考)】