説明

閉塞型睡眠時無呼吸といびきの治療法と装置

【課題】口腔や咽頭の軟組織の退縮による閉塞型睡眠時無呼吸症候群を治療する舌へのインプラント装置を提供する。
【解決手段】上気道構造の弛緩した軟組織に対して気道での陰圧による影響で変形するのを是正する。軟組織は組織にインプラントした装置により引っ込む。牽引子は弛緩した軟組織部位と物理的に連結する。シャフトが牽引子をアンカーと連結する。アンカーは反力をシャフトを通じて牽引子に伝え、その結果軟組織が変形するのを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【相互参照関連出願】
【0001】
本発明は2004年2月26日申請の暫定特許60/547,897に対して優先権を請求する。全文献の全体を取り入れてある。
【技術分野】
【0002】
本発明は口腔や咽頭の軟組織の退縮による閉塞型睡眠時無呼吸症候群を治療する方法と器具に関する。本発明は又医学的障害の診断と治療に使用の舌へのインプラント装置に関する。
【背景技術】
【0003】
いびき、上気道抵抗症候群や閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は全て睡眠中の上気道狭小化が関係する呼吸障害である。おおよそ1800万のアメリカ人に睡眠呼吸障害があるが、50%以下しか現在診断されていない。65才以上のアメリカ人の50%以上に睡眠障害があり、睡眠問題は65才以上の人口増と共に広がって行く。毎年睡眠障害、睡眠不足や過剰な日中の眠気により米国の年間医療費は約160億ドルが加わり、年間500億ドルの生産性の損失となる。
[睡眠障害の病態生理]
睡眠障害の多くは喉軟組織が柔らかすぎることで起こる。ヒトの上気道は曲線形という点でユニークであり、この解剖学的変化はヒトの話し言葉の進化と関連する。その結果ヒトの上気道は他種属より屈曲性があり、陰圧下でより圧潰されやすい。覚醒状態では上気道筋での一定量の緊張度の存在により圧潰を防ぐ。しかし睡眠時には筋肉の緊張度は上気道筋で減少し、ある敏感な人ではこの弛緩により気道が圧潰する(ホルナー、アールエル(Horner RL)、喉頭筋系の運動制御と閉塞型睡眠時無呼吸の発病の意味(Motor control of the pharyngeal musculature and implications for the pathogenesis of obstructive sleep apnea)、スリープ(Sleep)、1996年、19巻、827−853頁)。
【0004】
上気道は鼻と喉頭間の空気を満たす空間を意味する(図1)。上気道で睡眠障害に最も関連した部分は咽頭と呼ばれる空気腔である。咽頭は三つの解剖段階に分けられる。(図2)
1)上咽頭は鼻腔背部の咽頭の一部である。
2)口蓋帆咽頭は縁膜(軟口蓋)と舌湾曲部を含む咽頭の一部に相当する。
3)下咽頭は舌根背後にある。
【0005】
口蓋帆咽頭は軟組織構造がより多いためより圧潰されやすく、気流のスペースが少なくなる。口蓋帆咽頭の主要構造は軟口蓋と舌であり、両者は非常に曲がりやすい。軟口蓋は口と鼻の間の障壁として働く。多くの人で軟口蓋は必要以上に長く、舌と咽頭壁の間に下方に延びている。舌は上気道で最大の筋性臓器であり、解剖学的に舌端、舌体と舌根に分類される(図3)。大部分の舌湾曲部は舌体と舌根との接合部にある。
【0006】
覚醒状態では口蓋帆咽頭の構造はその内筋を継続的に緊張することによりその形を維持する。睡眠中のようにこの緊張が低下すると、この構造は非常に曲がりやすく伸び易くなる。それを適所に保持する正常な筋緊張なしには、比較的低陰圧で圧潰し易い。筋は睡眠中体全体で弛緩するが、多くの呼吸器筋は活動したままである。具体的には舌を前に引き出す主な筋であるおとがい舌筋は、閉塞性無呼吸の間活動はしているが、睡眠中にその活動の低下を示すことが報告された。通常おとがい舌筋は舌を前方に移動し、口から突き出すことさえ可能である。なぜおとがい筋が閉塞を防げないかの理由は説明されていない。
【0007】
吸息時には胸壁が拡張し、陰圧を発生し空気を鼻と口に吸い込み、咽頭を通って肺に吸い込む。この陰圧により上気道軟組織を変形し、さらにその気道を狭小化する。もし気道が十分に狭小化すると、気流は乱流になり軟口蓋を振動させる。軟口蓋の振動によりいびきとして知られる音を発生する。いびきは非常に一般的で、男の50%、女の25%迄影響する。いびき自身は医学的問題ではないが、いびきをかく人のベッドの相手にとってはとてつもない問題であり、夫婦関係のひずみの主原因である。
【0008】
睡眠中に気流の量のわずかな低下や短い閉塞は全ての人で起こる。気流が正常な場合の50%以上低下するか(呼吸低下)、気流が10秒以上閉塞した場合(無呼吸)、これらの発症は医学的に有意であると判断する。睡眠の各一時間に起こる無呼吸と呼吸低下の数を測定して睡眠障害の重症度を診断する。呼吸低下と無呼吸の発症により睡眠中にある程度の覚醒状態を生ずる。患者の意識は完全には目覚めてはいないが、睡眠パターンが妨げられ、しばしば患者に日中眠たいと感じさせる。呼吸低下か無呼吸の頻度が一時間に5回以上発症した場合には、上気道抵抗症候群と呼ばれる。これらの患者はしばしば睡眠障害に関連した症状を示す。具体的にはこれらの患者は日中過度に眠たくなる。更にうつや集中することが困難という繊細な症状が又一般的になる。
【0009】
技術的にはOSASの診断は睡眠の各一時間に呼吸低下か無呼吸が平均で10回以上発症するものと定義する。気道が閉塞しても、患者は繰り返し継続的に無理に吸気しようとする。これらの発症は大部分が無音で、更に患者は空気を肺に入れるように必死に努力するような腹部と胸部の運動で特徴づけられる。無呼吸の発症は一分以上続き、この時間の間血液中の酸素レベルは減少する。最後に閉塞に打ち勝って、通常は大きないびきをかくか、或いは患者は息が詰まると感じで目覚める。
【0010】
OSAS患者の非常に一般的症状は朝の頭痛と酸の逆流である。気道閉塞の間空気を無理に吸気しようとするため、胸部に強大な陰圧を生ずる。この高い陰圧により酸を胃から食道に引き上げる。酸はずっと口まで進み、声帯と鼻粘膜の炎症を起こす。上気道に酸が存在すると、喘息発作と類似の肺の反射気管支収縮を起こす。酸が少量でさえも肺にはいると、声帯襞をしっかりと閉じさせ、喉頭痙攣と呼ばれる持続性無呼吸を起こす。多くの患者で食道括約筋の伸張を繰り返し慢性的変化を起こし、これら患者は日中でも酸の逆流を起こす。
【0011】
より重要には睡眠障害により重大な医学的問題と死をもたらす。無呼吸により心臓と肺に大きな負担をかける。時間と共に無呼吸を繰り返し発症することで慢性的変化を起こし、高血圧症をもたらす。長期の無呼吸により血液中の酸素レベルを減少させる。次いで低酸素により心臓麻痺または脳卒中を起こす。
【0012】
[睡眠障害の治療]
OSASは子供と大人の両者で起こるが、その原因と治療は全く異なる。子供のOSASは子供が大きい扁桃腺をもつときに起こり、扁桃摘出術によりその状況を治癒する。扁桃腺の大きさは年齢と共に小さくなり、大人では殆ど問題にならない。代わりに罹りやすい大人では通常拡大した舌、柔らかい口蓋及び/又は咽頭壁を有する。この拡大は大抵その構造内の脂肪沈着による。
【0013】
大人の睡眠障害治療は種々の理由により困難である。上気道は嚥下と発声という重要な機能を行う構造で、非常に動きやすい。この機能は外科手術か他処置により容易に損なわれてしまう。更に上気道には又吐き気や咳嗽のような反射を発生させる多くの知覚性神経支配がある。理論的には口腔や咽頭に取り付ける体内ステントは睡眠時無呼吸を軽減するのに完全に有効であろう。患者が手術のために麻酔したときのように完全に意識不明な場合、湾曲経口チューブを口と咽頭に取り付けて気道をステント挿入のために開くことができる。更に気管内チューブにより人工呼吸用の安全な気道を確立する。しかし麻酔が効かなくなった後は、患者は直ちに気づき喉の異物に反応して吐く。それ故経口チューブ、気管内チューブやいずれの類似物のような器具はOSAS治療には使用できない。
【0014】
体内ステントはOSASには使用できないが、間接的な方法で上気道に陽空気圧でステント挿入するのはOSASの最も一般的に処方される治療である。本法を持続的気道陽圧法(CPAP)と呼ぶ。CPAPは鼻周りにきつく取り付けた人工呼吸器に連結したマスクを用いる必要がある。各患者により陽圧の正確な量は異なり、種々の圧力を用いて一泊滞在試験により設定する必要がある。陽圧はステントにより気道が開き続けるように働く。多くのOSAS患者はCPAPにより助かるが、CPAPは患者やそのベッドの相手方にとって快適ではない。患者はしばしばその顔にきつく取り付けたマスク閉所恐怖症感に耐えられない。更にマスクを顔に適切なシールを維持することに関し多くの技術的問題がある。これらの理由によりCPAPを処方された全患者の半分までがその使用を六ヶ月以内にやめる。(サンダーズ(Sanders)、“睡眠無呼吸のための医学的治療”(Medical Therapy for Sleep Apnea)、睡眠医学の原理と実際(Principles and Practice of Sleep Medicine)第二版、678−684頁。)
[気管切開]
OSASに完全に有効な唯一の外科的療法は、上気道全部を首から気管と直接連結する外科手術である永久的気管切開である。この処置はOSASによる高度に危険な重大な医学的合併症のある最悪の場合に保留された危険な処置である。特に一時的な気管切開はいずれかの他処置を上気道で実施する前に、重度のOSASをもつ患者に実施前気道を制御するためにしばしば行う。その理由はこの患者にその気道に何かの膨潤があると、患者は非常に危険な急性気道閉塞や死の危険があるからである。上気道組織が非常に過剰に膨潤しているため、OSAS患者には緊急事態での挿管が非常に困難である。同様に首に大量の脂肪があるため、救急気管切開は非常に危険になる。
【0015】
本保存的処置以前には術後死は重度のOSAS患者ではまれではなかった。更にこの患者はしばしば呼吸抵抗になれているが、その抵抗が突然除かれると呼吸意欲は低下する。現在でも大部分のOSAS患者の治療における治癒標準は患者を集中治療室か外科的処置後の回復室で注意深く観察することである。
【0016】
[いびきに関する軟口蓋処置]
軟口蓋が他の組織以上に振動すると、いびきで不釣り合いな役割を果たす。軟口蓋を収縮か硬化するのに種々の外科的治療が利用できる。使用される主な処置は口蓋垂咽頭形成術(UPPP)と呼ばれる。UPPPでは手術用メスで咽頭壁と軟口蓋の過剰軟組織を切除する。咽頭領域の粘膜がUPPP時にあまりに多く傷つけられるので、大きな術後膨潤と激痛が起こる。いびきをかくが閉塞がない選ばれた患者では、より限定版のUPPPをレーザーか電気メスで行う。
【0017】
より新しい処置では粘膜の外傷を最小限にし、針を使って下にある軟組織に達して振動に抗するようにその体積を収縮するか硬化する。電極を軟口蓋に挿入して口蓋を収縮するか硬化するように高周波エネルギーを送る。(パウエル、エヌビー等(Powel,NB et al.)(1998年)、睡眠障害型呼吸をもつ被験者の口蓋における高周波エネルギーによる組織容積縮減術(Radiofrequency volumetric tissue reduction of the palate in subjects with sleep−disordered breathing)、チェスト(Chest)、113巻、1163−1174頁。)(ソムノプラスティ(Somnoplasty)、ソムナス(Somnus)、マウンテンビュー(Mountainview)、カルフォルニア州(CA))。軽い苛性ソーダ薬を注入して軟口蓋の容積を減らす。ベンゼル(Benzel)の米国特許6439238では軟口蓋表面への硬化剤塗布を教える。ごく最近には外来診療所での軟口蓋硬化用プラスチック挿入物移植が食品医薬品局(FDA)により認可された。(ピラー(登録商標)処置(Pillar Procedure)、米国特許6546936、上咽頭部位状態治療のための方法と器具(Method and apparatus to treat conditions of the naso−phrayngeal area)。)
より新しい処置を含む軟口蓋を標的とする全ての方法での基本的な欠陥はOSASの一部だけしか改善できないことである。(ラウベ、ディアイ(Loube DI)、(1999年)、閉塞型睡眠無呼吸症候群治療における技術的進歩(Technological Advances in the Treatment of Obstructive Sleep Apnea Syndrome)、チェスト(Chest)、1999年、116巻、1426−1433頁;ドグラム、ジーケイ等(Doghramji, K et al.)、(1995年)、口蓋垂咽頭形成術成績の予測(Predictors of outcome for uvulopalatophryngoplasty)、ラリンゴスコープ(Laryngoscope)、105巻、311−314頁)。研究では無呼吸数の減少を報告しているが、これら患者はめったに治癒しない。明らかにOSASを起こす重要な構造は軟口蓋ではなく舌である。
【0018】
[OSASに関する舌根法]
OSASでの舌根治療に用いる方法は、その容積を永久に減少し撓み性を低下するか、舌全部を前方移動するかのいずれかである。舌根の外科的切除の効果は不十分である。OSAS治療での舌根のメスかレーザーによる切除の結果はこの方法の継続的な適用を勧めるには不十分であった。(マイケルソン、エスエイ、ローゼンタール、エル(Mickelson, SA, Rosenthal, L)(1997年)、閉塞型睡眠無呼吸症候群治療での舌根正中部切除術と喉頭蓋切除術(Midline glossectomy and epiglottiectomy)、ラリンゴスコープ(Laryngoscope)、107巻、614−619頁)。より最近には高周波エネルギー(エドワード(Edwards)の米国特許5843021)や超音波エネルギー(米国特許6409720)が舌根収縮や硬化に提案された。針電極を舌根に挿入してエネルギーを伝えて損傷し傷跡を残して時間共に収縮する。術後の膨潤や痛みを避けるために、制限量の損傷を1回のセッションで行うが、患者には平均で5回の治療が必要である。おおよそ三分の一の患者のOSASが50%以上良くなる。しかし約四分の一の患者では舌根潰瘍形成、舌根膿瘍や一時的気管切開を含む重大な術後合併症がある。
【0019】
舌根前進術に関する最近導入の器具はレスポンス(登録商標)(Response)システム(インフルエント社(Influent Corp)、サンフランシスコ、カリフォルニア州(CA))である。レスポンス(登録商標)(Response)法は全身麻酔下で行い、ねじを下顎骨基盤に挿入する。ねじは永久縫合糸用の付属品を含み、口腔底粘膜の下に後舌面へのトンネルを掘り、次いで舌根幅を横切り、舌顎骨にねじ込んだ金属フックに取り付けるように戻す。縫合糸を締めて舌根を前方移動するが、組織壊疽となる過剰な引っ張りを防ぐように注意を守る必要がある。残念なことにはレスポンス(登録商標)(Response)法の研究ではOSASを除去するには効果的でないことが示された。15人の患者の内一人だけがOSASが治癒したが、二人の患者では痛みと膨潤のため縫合糸を除去する必要があった。
【0020】
より攻撃的な外科的手段では下顎骨、顔面骨格や舌骨の再構築が必要である。その技術の例としてはウッドソン(Woodson)の米国特許6161541があり、咽頭気道を拡張する外科的方法を教える。この方法はより危険性が高く、回復期間が遙かに長い広範囲な手術を必要とする。
【0021】
舌根治療の提案された他法としては米国特許6,742,524号(上咽頭部位状態治療の方法と装置(Method and apparatus to treat conditions of the naso−pharyngeal area))の硬化粒子や米国特許出願第20050004417A1号(咽頭小管のような体部位内での組織固定器具、システム及び方法(Devices, systems, and methods to fixate tissue within the regions of body, such as the pharyngeal conduit))の他のインプラント材料を注入して軟組織を硬化する方法がある。
【0022】
[神経機能代替え装置]
上気道筋を刺激する種々の装置が発明された。サンダーズ(Sanders)の米国特許第4907602号には気道を拡張する経粘膜的刺激が記載されている。カレル(Karell)の米国特許第5,792,067号では硬口蓋、軟口蓋か咽頭部位を電気刺激して上気道筋の収縮を誘発する口腔内装置を教える。メール(Meer)の米国特許第5,190,053号では舌小帯のどちらかの側上の口腔底粘膜に位置する電極によりおとがい舌筋に電気刺激をかける口腔内装置を教える。更にテスターマン(Testerman)の米国特許第5,591,216号にはおとがい舌筋の神経を刺激する全体がインプラント可能な装置が記載されている。更にゴードン(Gordon)のWIPO出願第04064729号にはいびきを治療するために軟口蓋に注入できる神経機能代替え装置が記載されている。現在これらの装置は臨床的には検証されていない。
【0023】
要約すると睡眠障害は無難な解決策のない大きな健康問題であり、新規でより有効な治療技術の必要性がある。
理論には縛られたくないが、人の舌解剖学に関する本発明者の研究では閉塞の発症が一連の出来事で展開することが示唆される(図4)。最初の刺激事象は比較的小部分の舌の変形である。ある特定条件下で変形が舌の頂点、特に舌弯曲部位、具体的には舌弯曲部の中心線付近で始まる。この組織が変形すると、気道を狭小化し、より大きい陰圧を発生してより大きく変形する。次いでこのフィードバックサイクルがその部位の組織を十分に変形し、口蓋帆咽頭部位の完全閉塞を起こす。最初の閉塞が吸気終末近くで起こる場合には、その閉塞は呼息又はおとがい舌筋の作用で解放される。しかし閉塞が吸気初期で起こる場合には、反射によりより強い吸気活動を引き起こし、更に気道圧を低下する。この陰圧の増加により変形を起こし、大部分の舌根を圧潰する。この時点でその気道は軟組織でしっかりと塞がれ、おとがい舌筋は伸びるだけで塞がり取り除けない。
【0024】
それ故、舌屈曲部は閉塞をもたらすカスケード開始の重要な部位である。この弛緩した筋肉は非常に曲がりやすく変形しやすいが、その逆も正しくこの変形を防ぐには非常に小さな力しか必要でない。それ故十分な反力が舌の適切な局在部位に働くと、会話での目立った影響や嚥下動作なしに閉塞を防げる。
【0025】
如何に装置が舌弯曲部の変形と圧潰を防ぐかは些細な問題ではない。
・舌のこの部位は会話や嚥下時に非常に動きやすく、その結果作用力の量は低く、非常に局在化する必要がある。大きなインプラントや瘢痕組織によって硬化する場合に行われるように、部位を不動にするのは許されない。
・更に口蓋帆咽頭の全部位は広範囲の知覚神経支配下にあり、その比較的小さな刺激で口を詰めるか嚥下を起こす。
・更に舌根と舌体は身体の同程度の他筋肉に比し血液の供給がより多い。この部位へのいずれのインプラントも内出血を起こす可能性が高く、最悪の場合舌膨張の可能性がある。
・最後にOSAS患者は外科的処置に続く膨潤のようなわずかな量の膨潤後でさえも、閉塞するきわどい気道をもっている。それ故膨潤を避けながら如何に装置が部位に力をかけるは明らかではない。
【0026】
更に最も効果的で、患者と医師に受け入れられるためには、その装置は理想的には追加の特質を有するであろう。
・装置は外来処置で挿入できる必要がある。
・好ましくはその装置を患者が日中に除去でき、夜に再挿入できるであろう。
・装置は患者の特定な必要性に適合するように調節可能であろう。
・装置は患者にとって快適であろう。装置を取り付けたとき、誰にも気づかれないであろう。
【発明の開示】
【0027】
本発明はOSAS及びいびきのような症状の治療のための方法と装置からなる。好ましい実施形態では本装置をOSASをもつ患者の治療のために挿入する。この患者集団には重大な医学的問題があり治療法の選択が殆どない。
【0028】
本法は上気道構造の弛緩した軟組織に対して気道での陰圧による影響で変形するのを是正する。この構造としては制限なしに舌、軟口蓋、咽頭壁と上声門咽頭がある。軟組織は組織にインプラントした装置により引っ込む(図14)。次いで牽引子が他の軟組織部位、好ましくは吸気中に収縮し続ける筋肉に機械的に接続する。この方法によって本装置は睡眠中の気道閉塞を効果的に防ぐ。本装置は三つの異なったパーツからなる。牽引子は弛緩した軟組織部位と物理的に連結する。シャフトが牽引子をアンカーと連結する。アンカーは反力をシャフトを通じて牽引子に伝え、その結果軟組織が変形するのを防ぐ。
【0029】
舌の内科解剖学に関する広範囲な研究により、本発明者は舌の特定部位が脈管構造や神経構造を殆どもたないか、全くもたないことを発見した。最も重要なのは舌体の全中線が生活構造を殆どもたないことである。好ましい実施形態では装置を血管や神経に損傷を与えることなしに舌の中心線に設置できる。生活構造を避けた舌を通る他手段があるが、舌弯曲部で一番変形しやすい部位は中心線に沿っているので、中心線が最も好ましい。驚いたことに装置をOSASに一番弱い部位に舌を通じて最小の危険性で直接設置できる。
【0030】
好ましい実施形態では本装置は各末端に膨張可能な風船をもつ可撓性の中空シャフトからなる。本装置に挿入するために装置は針の上を滑り、風船がしぼむ。アンカーの風船がおとがい舌筋でそのデザインと同様に位置により反力を与える一方、本装置と針を組み合わして牽引子の風船が舌根を押しつけるように舌組織に直接通す。機械的反力により睡眠中に弛緩した舌が変形するのを防ぐ。
【0031】
本装置は舌屈曲部を睡眠中中立的な位置に維持するに十分な力を伝える。しかし会話や嚥下時には舌根は中立位置から前後両方に動く。この動きは非常に強く、例えば嚥下時の舌の動きは弛緩した舌を中立位置に維持するに必要な力の約10倍の力が働く。それ故本装置は力を制限するように設計し、会話や嚥下時に舌根が自由に動けるようにする。
【0032】
先行技術に対する本発明の利点はOSAS用の現在の外科手術と装置とは異なり、本発明が上気道構造全体よりはむしろ小さな局在部位に作用することである。それ故本発明は正常な機能を大きく損なう事なしに有効である。本装置を針により挿入すると、後処置痛か膨潤が最小になり、その結果本法を外来環境で実施できる。
【0033】
先行技術に対する更なる利点は本装置を挿入するや否や、医師が気道を管理でき、重大な合併症に対してある水準の安全性を与える。緊急時には舌の下にあるアンカー端を握り、手動で引っ込めて気道を拡張できる。これにより重度のOSAS患者が受けやすい致死的な気道閉塞の可能性を防ぐのを助ける。
【0034】
先行技術に対する更なる利点は本装置が調整可能で完全に脱着できることである。一旦医師が最初の挿入を行い通路が完成すると、本装置を患者から朝に脱着し夜に再挿入できる。挿入後患者が一番効果的で快適なように本装置の張力を調整できる。本装置を舌の下から挿入し舌根の近くで抜け出るので、他人には容易には見えない。最後に本発明の利点はOSAS用の現在の治療に比し安価である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態は舌にインプラントすることであるが、代替え実施形態を用いて軟口蓋の弛緩軟組織、咽頭壁や気道に影響する喉頭を治療できる。
本装置の更なる代替え実施形態の使用は有益である。そのシャフトが中空である場合には、舌に通じる導管として働く。このようにして空気圧が等しくなる口腔と咽頭腔間を連結し、その結果OSASを防ぐのを助ける。更なる実施形態ではその導管を陽圧の空気を咽頭に供給するのに利用する。
【0036】
更なる代替え実施形態では、開いた導管は咽頭腔や近隣構造体に容易に接近する経路として働く。カテーテルを通して咽頭や肺からの分泌物を吸引したり、栄養チューブを胃に通すことができる。内視鏡手術器具を外科的処置を行うために咽頭や近隣構造体に通すことができる。
【0037】
更なる実施形態では導管は医療検出機器や診断機器を格納したり、これらを咽頭に通す働きができる。例としては動脈血、静脈血、気流中の酸素や炭酸ガスレベルや振動を検出することである。これらのセンサーは生理的データを体外の受信機に送信するか、他のインプラントした医療器具の制御に使用できる。
【0038】
本発明の一つの目的は神経機能代替えセンサー及び/又は神経機能代替え刺激機のような治療器具を内蔵する導管を提供することである。これらを用いて舌の嚥下や会話機能を向上するように舌神経や舌筋を刺激できる。
【0039】
最後に薬剤を導管に格納し、口や咽頭に局所的に送達できる。限定されない例としては歯周疾患用の抗生物質や口腔カンジダ症用の抗真菌性薬である。代わりに薬剤を本装置の壁を通して周辺組織に放徐できる。大量の血液が舌に供給されているので、薬剤は迅速に全身に循環できる。限定しない例としては糖尿病治療のためのインスリンや、癌治療のための放射性材料や化学療法剤がある。
【0040】
(本発明の目的及び利点)
本発明の目的はOSAS治療の方法と器具を提供することである。本発明の更なる目的は舌、軟口蓋、咽頭壁及び/又は喉頭軟組織の変形を取り消すか防ぎ、その結果OSASを治療することである。
【0041】
本発明の代替え実施形態の目的は治療目的か診断目的のために舌に通じる導管を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ヒト上気道の正中矢上面図。
【図2】舌と周辺構造体の簡単化略図。
【図3】舌の解剖学的標識。
【図4】気道閉塞の機構。
【図5】舌の牽引子。
【図6−A】装置の挿入である。
【図6−B】装置の挿入である。
【図6−C】装置の風船に関する膨張機構である。
【図6−D】装置の風船に関する膨張機構である。
【図7】AとBはアンカー風船の作用機構である。
【図8】A、B、C及びDは本装置の代替え実施形態である。
【図9】A、B、C及びDは本装置の舌での代替え位置である。
【図10】他の軟組織臓器での代替え実施形態である。
【図11】A、B、C及びDは装置全体のインプラント実施形態である。
【図12】導管としての本装置の代替え実施形態である。
【図13】AとBは胃チューブと肺チューブ用の導管の実施形態である。
【図14】舌弯曲部の引っ込み。
【図15】A、B、C及びDは圧潰可能な導管の代替え実施形態である。(図面の詳細な説明) 図2は、舌と周辺構造体の簡単化略図である。NP、鼻咽頭VP、口蓋帆咽頭HP、下咽頭SP、軟口蓋P、硬口蓋T、舌GG、おとがい舌筋 図3は、舌の解剖学的標識である。この略図では睡眠中に弛緩した舌部位は斜線で示す。睡眠中に活発なままのおとがい舌筋(GG)は舌下面(Bo)上の結合組織境界に挿入する。BA)舌根BD)舌体BL)舌端Bo)舌とおとがい舌筋間の境界C)舌弯曲部F)舌小帯GG)おとがい舌筋 図4は、気道閉塞の機構である。A)覚醒時の正常な緊張。舌は気道が開いたままにできる位置にある。B)睡眠中は筋緊張が失われ、舌の軟組織が弛緩する。この時点で気道が一番狭く且つ舌弯曲部(丸印)は一番変形できるので、吸気時に咽頭の陰圧により口蓋帆咽頭部位で舌が圧潰する。C)一旦上気道の沿ういずれかの点で閉塞が起こると、吸気により咽頭圧が低下し、他の軟組織構造体、特に舌根(丸印)を圧潰させる。D)舌の牽引子を配置すると舌弯曲部の後側への変形を防ぐ。
【0043】
図5は舌の牽引子である。
r、牽引子の風船
s、シャフト
t、チューブ
アンカー
i、注入ポート
n、針
h、取っ手
図6のAおよびBは装置の挿入を示す。
外套針と組み合わした本装置を舌に通す(A)。次いで風船を膨らませて本装置を所定位置に固定する。
【0044】
図6のCおよびDは装置の風船に関する膨張機構を示す。
C)風船は別に膨らませられるが、好ましくは一つ又は複数のシャフト側の風船間を通る小さなチューブ(t)により連結する。このチューブは各風船内の端末側終端に開口ポートがあり、その結果流体や空気が自由に通過できる。
D)アンカー風船は再度シールできる隔膜(d)を通る注入針により膨張か収縮し、この隔膜はつば(c)により所定位置に保持し、次いで風船の膜に連結する。pはチューブの開口端、dは隔膜、cはつばである。
【0045】
図7のA、Bはアンカー風船の作用機構を示す。
反力はアンカー風船を膨張或いは収縮して調整できる。舌組織は分離にやや抵抗する。アンカー風船は風船内の圧力が増加すると広がるくさび形(A)を有する。この方法でくさび角度が広がり、その結果アンカー風船に対する組織力が比例して増加し、シャフトにより風船を引っ込める反力を伝える。弛緩した舌を所定位置に維持するのに必要な反力量は小さい。嚥下のような舌の動きは、舌を後方に移動するように大きな力が働く。最大の膨張時にはアンカー風船は嚥下時の舌に比べ遙かに小さな反力が働く。それ故アンカー風船は舌組織に滑り込み(7B、矢印)、正常な舌の動きを損なうことなしに舌根を後方に動かせる。
【0046】
図8のA、B、C、Dは本装置の代替え実施形態である。
風船やいずれかの油圧機構を使用しない装置の多数の代替え実施形態である。一実施形態の例を示す。
【0047】
図9のA、B、C、Dは舌内での本装置の代替え位置を示す。本装置は舌内部で代替え位置に配置し組織変形を防ぐ目的を達成できる。
A)牽引子を舌弯曲部に配置し、アンカーを舌端と同じ側に配置する。
B)舌小帯のいずれかの側の二つの“アンカー”末端。シャフトは曲がりやすく舌弯曲部にループを形成する。本実施形態ではシャフトはインプラントした牽引子により機能する。
C)舌内にインプラントした装置の全体。
D)首の外での装置のアンカー。
【0048】
図10は、他の軟組織臓器での代替え実施形態を示す。
PR、咽頭壁の牽引子
SR、軟口蓋の牽引子
LR、喉頭軟組織の牽引子
図11は導管としての代替え実施形態である。図11のA、B、C、Dは本装置全体のインプラント実施形態を示す。
一代替え実施形態では装置全体をインプラントする。インプラントした装置は粘膜表面で用いたものとは異なるように相互作用するアンカー部位材か牽引子部材をもつことができる。この例では本装置の牽引子とアンカー両者は矢の形を有し、矢がフックとして働く。シャフトは長さ2cmで容易に伸びる。本装置全体を好ましくは単一の連続的に曲がりやすい構造に作る。本装置を針穴に挿入する(Bは針の側面図であり、Cは針に挿入した装置である)。次いで針を組織内で適切な深さに挿入し、引き抜く。
【0049】
図12は導管としての本装置の代替え実施形態を示す。
図13のAおよびBは、胃チューブと肺チューブ用導管の実施形態
GT、胃チューブ
PT、肺チューブ
図14は舌弯曲部の引っ込みを示す。
イヌの口腔を示し、写真の下部に舌を上部に口蓋を示す。矢印は気道方向を向いている。A)弛緩した舌は気道を閉塞する。牽引子の試作品をイヌの舌弯曲部相当部に挿入し、その端だけが見える{r印}。牽引子の頭部に対して最小反力で気道管腔を回復する。
【0050】
図15は、圧潰可能な導管の代替え実施形態を示す。
A)挿入後屈曲性壁をもつ装置は圧潰する(cc)。本装置は舌に通じる導管を維持する。再度シール可能なキャップを開いて導管に医療器具を通すことができる(rc)。
B)導管を通る換気チューブの例。気道バルーン(ab)を膨張して患者が加圧空気(pa)で換気できるようにシールを形成できる。
C)導管を通る吸引チューブ(st)の例。真空源(v)により咽頭からの分泌物を吸引する。
D)内視鏡手術器具を咽頭やその周辺構造体への通路となるように配置した手術用導管(sc)の例。
cc、圧潰可能な導管(cc)
rc、再度シール可能なキャップ
ab、気道バルーン
pa、加圧空気
v、真空源
st、吸引チューブ
sc、手術用導管
【発明を実施するための形態】
【0051】
[定義]
“舌弯曲部”は舌上面が水平方向(舌体と舌端)から垂直方向(舌根)に湾曲した舌部位を意味する。好ましくは舌弯曲部は舌の粘膜被覆部とおとがい舌筋が繋がる結合組織境界間部位の軟組織を意味する。
【0052】
“舌端”は舌小帯前方の舌部位を意味する。その上面、側面及び下面は粘膜で覆われる。
“舌体”は舌端と舌根の間にある舌の中間部位である。
【0053】
“舌根”は舌弯曲部後方の舌部位を意味する。解剖学的用語では舌根の境界線は有郭乳頭であり、舌上面の隆起した味覚臓器の肉眼で見える線である。
“導管”はシャフトが中空で、一旦インプラントすると本装置両端の空域の間で連続である本発明の一実施形態を意味する。好ましくはこの空域は牽引子末端の咽頭とアンカー末端の口腔である。
【0054】
“圧潰可能な導管”は本装置の大部分の部品が、最も好ましくはシャフトが挿入後周辺組織の圧力で圧潰する本発明の一実施形態を意味する。この好ましい導管は他の器具を好ましくは吸引チューブ、栄養チューブ、通気チューブや内視鏡手術器具を通すガイドとして働く。
【0055】
“舌小帯”はおとがい舌筋の垂直前縁を意味する。おとがい舌筋は口腔底から舌下面の中心線まで通る。舌小帯は舌端と舌体間の境界を印す。
“舌境界”や“境界”は舌体と舌根の下部表面である。おとがい舌筋が大部分の境界に挿入される。
【0056】
“変形”は上気道の軟組織構造体形状が異常な変化することを意味する。この変形は好ましくは睡眠中に弛緩した上気道構造体への陰圧により起こり、上気道を狭小化させる。最も好ましくはこの軟組織は舌弯曲部である。
【0057】
“逆変形”は組織牽引子により起こる軟組織形状の変化を意味する。ある実施形態では逆変形は変形した構造を正常な形状に回復することを意味する。他の実施形態では逆変形は組織牽引子の働きによる軟組織の所定部位での圧入を意味する。
【0058】
“組織牽引子”は軟組織の変形を防止する本発明の装置一式を意味する。本装置は制限なしに舌、軟組織又は咽頭壁で使用できる。
“舌牽引子”は舌の変形を防止する本発明の装置一式を意味する。このものは好ましくはシャフトと連結し、次いでアンカーと連結した牽引子からなる。
【0059】
“口蓋牽引子”は軟口蓋の変形を防止する本発明の装置一式を意味する。
“咽頭壁牽引子”は咽頭壁の変形を防止する本発明の装置一式を意味する。
“喉頭牽引子”は喉頭軟組織の変形を防止する本発明の装置一式を意味する。
【0060】
“牽引子”や“牽引子頭部”や“牽引子部材”は組織牽引子全体の一部を意味する。牽引子は直接又は間接的に軟組織と相互作用して変形するのを防ぐ。ある実施形態では牽引子頭部は舌外面に位置する円板であり、他の実施形態では牽引子頭部は膨張可能な風船であり、他の実施形態では牽引子頭部はフックのように働く湾曲部品であり、他の実施形態では牽引子頭部は組織を通る屈曲性ワイヤーである。ある実施形態では組織内に全部がインプラントされている。
【0061】
“牽引子シャフト”や“シャフト”や“牽引子部材”は牽引子頭部に取り付け、牽引子アンカーに連結する働きをする舌牽引子の一部を意味する。ある実施形態では牽引子シャフトは硬くても曲がりやすくても、非中空でも中空でも、一体型でも複数連結型の品でも良い。
【0062】
“牽引子アンカー”、“アンカー”や“アンカー部材”は組織と物理的に相互作用し、牽引子に反力を与える装置の部品を意味する。
実施例1.本発明の好ましい実施形態
好ましい実施形態では本装置は牽引子部材とアンカー部材として膨張可能な風船をもつ屈曲性の細い中空シャフトからなる(図5A)。このような装置の材料と製作は血管形成カテーテル、気管切開チューブ、空腸瘻造設チューブや体組織内に一時的か永久的にインプラントする生体整合性の他医療器具で例示されているように技術的によく知られている。本技術の代表例としてはシャイリー(Shiley)の米国特許第3,659,612号に内部末端で詰め替え可能な風船を気管に設置したカニューレが記載されている。パテル(Patel)の米国特許第4335723号には風船カテーテル用の熱可塑性エラストマー材の使用が記載されている。チェン(Chen)の米国特許第6,013,728号には血管カテーテルと拡張風船の構築に用いる生体整合性ポリマーが記載され、ベリット(Peritos)の米国特許第4,254,774号では外径が1mm以下のカテーテルと厚みが0.002インチ以下の壁の外付け風船の製作を教えている。
【0063】
好ましくは牽引子は膨張時に直径が0.5cmの球状風船である。風船に作用する力は風船の中心を通る外径2mmの長さ5cmのシャフトに由来する。牽引子風船を二個所でシャフトに取り付け、シャフトは風船内にシャフト先端が入る。この取り付けは気密でしっかりと風船をシャフトに連結する。
【0064】
舌からのシャフト出口にアンカーとして働くように取り付けた第二の風船がある。アンカー風船は長さ1cmで組織に埋め込んだ細い末端で先細りで広い末端は組織の外にある。先細部分はアンカーが舌に引き込まれるのを防ぐくさびである(図7)。患者が呑み込むと、舌弯曲部は立ち上がり、アンカー風船は舌に引き込まれる。嚥下後アンカー風船は穏やかに本装置を正常位置に戻す。アンカー風船により与えられる抵抗量と反力量はその膨張度と直接関係する。風船中の空気体積が大なほど、舌に引き込まれる風船の抵抗は大である。
【0065】
風船に与えた力により舌弯曲部の組織に圧入し、陰圧下で気道内の変形圧潰を防ぐ。この力をシャフトにより風船に伝える。このシャフトは舌中央を通り、舌小帯が舌端と連結する点の下部表面から外に出る。
【0066】
シャフトは内径1mmの中空で、挿入用の外套針上に取り付けることができる(図5)。風船が収縮すると、シャフト表面が滑らかになるようにシャフトは平らになる。収縮状態で本装置は舌に容易に挿入したり取り外したりできる。例えば朝には風船を収縮して装置全体を舌から滑り出すことができる。先細りのアンカー風船の存在により舌の出口で舌組織をやや広げることができる。一週間後本装置を一日間取り外してもこの組織の広がりは保たれ、本装置を組織導管に容易に導く働きをする。牽引子先端が舌を通り舌根から外に出ると、風船は患者に取って有効で且つ快適な適切な大きさに膨張できる。
【0067】
風船は独立に膨張できるが、より好ましくはシャフト側に沿って走る細いチューブにより連結する(図6)。このようにして患者が容易に近づけるアンカー風船を膨張して、又牽引子風船を膨張する。アンカー風船は針を挿入して空気か液体を加えたり取り除いたりできる再封入可能な小さなゴム隔膜を有する。タウシィンスキー(Tauschinski)の米国特許第4387879号にはプラスチック製カニューレと血管カテーテルを用いたセルフシールの接合具が記載されており、ブリムホール(Brimhall)の米国特許第5,498,247号には針が流体注入のために穴を開けた後に、再封入するゴム弾性の注入ポートが記載されている。空気や流体を移送する種々の再使用可能な接合部分が技術的に知られており置換できる。
【0068】
本発明の方法での限定されない例を記述する。60才の男性が夜中に窒息感で目覚め、起床時に頭痛があり、日中眠たく、集中が困難でいらいらし酸の逆流を訴えた。健康診断により中程度の肥満、細長く伸びた軟口蓋と肥大した舌根が見られた。内視鏡によりその咽頭粘膜に広い穏やかな腫れと赤みが見られた。口蓋帆咽頭部位は著しく狭く、患者が無理に吸気しようとすると圧潰した。患者の睡眠調査を行い、無呼吸/呼吸低下インデックス30で酸素飽和度低下の発症を伴う閉塞睡眠無呼吸を示した。
【0069】
患者の医師と治療法の選択を検討した後に、患者はCPAPを試みることを選んだ。次いで患者はCPAP試験と圧力滴定に関する二回目の一泊検査を行った。患者は水柱14cmのCPAP圧で最適の反応を示すことがわかった。患者はCPAPの機械を得、その使用法を指導した。患者は本装置が不快であることがわかり、閉所恐怖症感と、夜中マスクを顔面に気密シールで保つのは難しいと訴えた。
【0070】
患者は舌牽引子を挿入することを要求した。外来外科センターで穏和な鎮静下に心電図と酸素飽和を継続的に監視しながら処置した。
表面麻酔を与えるために少量の1%リドカインを患者の舌の下部表面にスプレーした。30ゲージの針付きの1cc注射器を用いて、目的の挿入路に適切な局所麻酔薬、好ましくはエピネフリンを1:100000比とともに1%リドカインを注射した。針を舌の下部表面から舌根に通し、麻酔薬を注射した。
【0071】
麻酔作用が始まるために10分間待ち、医師は4x4の綿で舌端を穏やかにつかみ、舌下部表面が露出するように持ち上げた。
本装置を最初に挿入するために本装置を外径1mmで5.25cmの外套針に取り付けた。外套針を本装置の中空孔内に置いた後、本装置から0.25cm突き出た先細り先端以外は本装置が外套針長さの全部を覆った。
【0072】
最初の挿入点は舌小帯と舌端との連結部である。針先端を舌端に挿入し、舌弯曲部に向いている。本装置をその先端が舌根から出てくるのが見えるまで前進する。針を更に開創器風船が見えるまで押し込み、次いでアンカーを握って本装置の位置を保ちながら針を外した。一旦針を取り外すと、再封入可能な注入ポートから空気2ccを注入して、風船を膨らます。患者を2時間観察して顕著な膨潤が起こらないことを確かめた後、3日分の弱い鎮痛剤と抗生物質を与えて帰宅させた。患者は本装置がより快適であるように、毎朝本装置から空気1ccを除去し風船の大きさを小さくした。夕方には患者は空気1ccを本装置に再度注入した。
【0073】
1週間後患者は結果検討のため医師の所に戻り、夜中目覚めることなしに良く睡眠でき、毎朝頭痛なしに良い休息感があると報告した。患者の妻はいびきに全く気づかなかったと患者に云った。患者は又酸の逆流症状が減ったことに気づいた。医師は風船を収縮し本装置を取り外した。医師は感染や腐食の徴候に関して舌のトラクト開口部を調べた。次いで医師は患者に本装置の取り外し法と置換法を指導した。それ以来患者は毎朝風船を完全に収縮し、アンカーを引っ張って本装置を引っ張り出した。夕方には患者は牽引子末端を舌下のトラクト開口部に通し、次いで空気2ccを再度注入した。
【0074】
この実施例は好ましい実施形態を明らかにしているが限定はしない。限定されない代替え実施形態としては1乃至10個の風船やシャフト長さに伸びた単一風船を含む装置がある。シャフト自身は非中空か中空の円筒状風船からなっても良い。技術の熟者は不必要な実験をすることなしに本装置の方法を実施できる。装置自身は種々の材料を用いて変更でき、その構成要素の形状と性質は技術の熟知者により色々な方法で容易に変更できる。
【0075】
実施例2.代替え実施形態(図8)
舌で用いる本発明の他実施形態では舌牽引子は牽引子シャフトが一表面の中心で連結した小さな屈曲性円板からなる。このシャフトはアンカーを取り付ける終末端を有する。
【0076】
円板は好ましくは舌の中心線方向に1cmの長軸と、中心線に垂直方向に5mmの短軸をもつ楕円形である。好ましくは支持円板の下部表面は厚さが外側縁から中心線に向かって薄くなる。
【0077】
支持円板は舌表面に対して平らで、この部位の変形を防ぐようにわずかな量の力をかける。より大きな反力は舌弯曲部の圧入か逆変形を起こす(図8D)。この逆変形によりたとえ舌が咽頭や軟口蓋に対して圧潰しても、完全な閉塞は起こらないように導管を開いたままにする。
【0078】
好ましくは円板は組織損傷を起こさずに圧力が舌粘膜にかかるように、柔軟で曲がりやすい生体適合性材からなる。インプラントが組織損傷を起こさない圧力量は主として血流が受け入れられる圧力に関係する。舌弯曲部を保持する目的には、逆圧は好ましくは0.01乃至1000g/cm、より好ましくは0.1乃至100g/cm、最も好ましくは1乃至10g/cmである。
【0079】
シャフトは舌体を通りその下部表面から外に出る。好ましくはシャフトは非中空で曲がりやすく、剪断歪みで変形できる。これにより舌の動きがその長さに沿って相対位置を内部的に変化を起こすとシャフトが曲がることができる。
【0080】
好ましくはシャフトは伸びることができる。より好ましくはシャフトは会話や嚥下時の舌根の強制的な動きに際し非常に素直に容易に伸張でき、しかも睡眠中は弛緩した舌弯曲部の変形を防ぐに十分な強度を保持する。嚥下時の舌による作用力は約100g/cmと測定された(プロフィット、ダブリュアール(Proffit, W.R.)、筋肉圧と歯の位置:最近研究の概説(Muscle pressures and tooth position: a review of current research)、オーストリラアンオルソドンティックジャーナル(Aust. Orthod, J.)、1973年、3巻、104−108頁)。好ましくは伸びに対する抵抗はシャフトの固有特性により調節できる。制限のない例ではバネの存在やゴム弾性材料の使用である。他実施形態では張力と動きの調整はアンカーにより与える。制限のない例では好ましい実施形態でのアンカー風船で記載したのと同様のくさび型である。好ましくはシャフトの長さは1乃至20cm、より好ましくは1乃至10cm、最も好ましくは5cmである。シャフトの直径は0.1mm乃至5cmで、直径1mmでその大部分の長さで断面が円形である。
【0081】
好ましくはシャフトの近位端はアンカーを有し、脱着可能である。取り付け機構はねじ、クリップ、歯止め、磁石や技術的に既知の他機構による。このようにしてアンカーはいずれかのアンカーから容易に脱着できる。脱着すると牽引子頭部とシャフトは好ましくは舌内部の位置にとどまる。好ましくは図11Aに図示するようにシャフトのアンカー末端に小さなフランジがある。
【0082】
もし必要なら本装置は日中にその全体を取り外すことができる。ある期間後体組織を通る導管が古くなると、即ち外部物体を一時的に取り外したときに直ちに閉まらない。それ故本装置を朝に支持円板を引っ張って取り外し、舌組織に通じる圧潰したトラクトだけを残すことができる。次の夜遠心端を再度このトラクトを通じてその位置に通し、アンカーに固定する。
【0083】
実施例3.軟組織位置に関する代替え実施形態
舌がOSASの主原因であるが、他の軟組織構造体も又寄与する。本発明の代替え実施形態を用いてこれら臓器の弛緩した軟組織の変形を防ぐことができる。
【0084】
a)装置の軟口蓋への設置
細長く伸びるか肥厚な軟組織はしばしばOSASやいびきに寄与する。本発明の一実施形態ではOSASやいびきを治療するために軟口蓋組織を閉塞部位から可逆的に引っ込める。本発明の別の目的はいびきを防ぐために振動を抑制するように軟口蓋を硬化することである。軟口蓋での本装置の好ましい実施形態では、牽引子が軟口蓋の自由端の外部表面にあり、シャフトが前方に向かって軟口蓋内で硬口蓋近くの軟口蓋外部表面上のアンカーに通じる(図10,SR)。技術の熟知者は本発明の目的を達成する多くの実施形態を理解できる。
【0085】
b)装置の咽頭壁への設置
ある場合には咽頭壁の過剰な軟組織が気道の狭小化に寄与する。本装置を咽頭壁に挿入して、過剰軟組織を閉塞部位から引っ込めることができる(図10,SR)。
【0086】
c)装置の喉頭軟組織への設置
ある場合には喉頭がOSASに寄与する。喉頭蓋は後咽頭壁に対して動揺するか静止できるか、喉頭蓋、披裂喉頭蓋ひだや喉頭蓋谷に連結した軟組織が膨潤することができる。これらの構造体の内側には密な知覚神経支配があり、牽引子部材には好ましい場所ではない。最も好ましいのは喉頭蓋谷で喉頭蓋と舌根の間である。この位置での収縮は喉頭蓋を持ち上げ、喉頭の軟組織を硬化する。
【0087】
実施例4.軟組織内にインプラントする代替え実施形態
完全に上気道臓器を通過する本装置には利点がある。制限なしでこの利点としては牽引子やアンカー構成材に容易に近づけることや本装置が容易な脱着できることである。しかしこれは不可欠ではない。本装置は又組織内に完全にインプラントできる。理論に束縛されたくはないが、本発明の重要な働きは睡眠時に弛緩した構造体の軟組織を他構造体に機械的に連結できることである。好ましくは第二の構造体は睡眠中に活動的なままの外筋(おとがい舌筋、おとがい舌骨筋、二腹筋)であり、その結果盛んに収縮する。首内部の他の筋(胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋)や胸内部の他の筋(横隔膜、肋間筋)も又使用できるが、これらは長いシャフトが必要になる。一実施形態では舌のおとがい舌筋に埋め込んだアンカーにシャフトで連結した舌弯曲部の軟組織にインプラントした牽引子である(図9C)。
【0088】
外部牽引子とアンカーが粘膜とその下の軟組織を引っ張る。この好ましい機械的相互作用により組織に圧迫壊死を起こさないように力を表面界面に沿って分配する。その一方インプラントした実施形態では追加的に組織と機械的に相互作用できる。
【0089】
図11は牽引子とアンカー両者の構成材としてフック要素をもつインプラント可能な装置の例証である(図11A)。牽引子末端のフックを先端近くの針穴から横方向に伸びるように本装置を配置して、中空穴の針(図11B)を用いてインプラントする装置を挿入できる(図11C)。挿入部位で粘膜に穴を開け、針先を好ましい深さまで通して挿入できる。次いで針を引き出すと、牽引子のフックが組織をつかみ、針を引き出したときに針から本装置を引き出す。
【0090】
図11Dに舌内部での好ましい位置と方向を示す。牽引子のフックが直接か間接的に舌弯曲部を退縮するように舌内部で軟組織と整合する。アンカーのフックがおとがい舌筋と整合する。睡眠中おとがい舌筋が収縮して舌弯曲部を活発に退縮する。
【0091】
実施例5.更なる代替え実施形態
牽引子構成部品はその数、位置、材料組成、機械物性、形状、大きさ及び構成部品の相互取り付け法(永久から取り外し可能)は変えられる。
【0092】
ある実施形態では本装置の材料は曲がりやすく、制限のない例としてはシラスティック、テフロン(登録商標)やナイロンがある。他の実施形態では材料は硬く、制限のない例としてはステンレススチールやチタンがある。ある実施形態では異なる構成部品は異なる材料からなる。技術的に既知の多くの生体整合性材料が使用できる(ラットナー等(Ratner et al.)、生体材料科学(Biomaterials Science)、アカデミックプレス(Academic Press)、サンジエゴ(San Diego)、1996年)。使用材は天然の体物質であってもよく、体にインプラントするのに用いる2種の一般的タンパク質はコラーゲンとエラスチンで、これら材料を用いる技術例はグレゴリー(Gregory)の米国特許5989244にインプラント器具用材料としてエラスチンの使用が記載され、ツ(Tu)の米国特許5376110にインプラント用のコラーゲン調整法が記載されている。
【0093】
牽引子、アンカー及びシャフトは連結部で生物的残骸や細菌が堆積できる小さな隙間ができにくいように好ましくは単一の連続構造として成型する。他の実施形態では構成部品は脱着可能である。可逆的機械的脱着に関して多くの機構が技術的に既知であり、一つの制限のない例としては牽引子頭部がボルトに対するナットのようにシャフトにねじで留められるようにシャフト端末と牽引子頭部の中心にねじ山を置くことである。
【0094】
別の実施形態では牽引子の形状と大きさは好ましくはその部位の骨格を反映する。ある実施形態では牽引子は舌の粘膜表面、軟口蓋、咽頭壁や声門上喉頭に押しつける。これらの異なる実施形態では牽引子の大きさと形状はこのものが設置される表面形状と一致するように変化できる。好ましくは牽引子は組織外傷を最小にするため粘膜に力を均等に分布する。牽引子頭部の最大直径は0.1mm乃至10cm、好ましくは1mm乃至1cm、最も好ましくは5mmである。
【0095】
アンカーは睡眠中に牽引子に反力を与える働きをする。好ましい実施形態ではボルスターの表面積は牽引子と同じかやや大きく、その結果力をより大きな領域に分配する。ある実施形態ではアンカーはアンカーと牽引子間の張力を調整できるように働く。
【0096】
代替え実施形態ではシャフト長さは0.1mmから20cm、好ましくは1mmから10cm、最も好ましくは1乃至5cmで変化できる。シャフト直径は0.01mm乃至100mm、より好ましくは0.1mm乃至10mm、最も好ましくは1mm乃至5mmの範囲である。シャフトはシャフト末端からその他端まで伸びた中空コアを有しても良く、他の実施形態ではシャフトの一部が中空であるか、シャフトが中空コアのない中身が詰まっていても良い。シャフト直径は一端で最大直径で他端に向かって直径が減少するように先細りするか、中心で最大直径でそれぞれの末端に狭小化するか、中心で最小直径でそれぞれの末端に直径を増加しても良い。
【0097】
シャフトの位置と方向は変化できる。牽引子頭部は舌中線に沿った他点に配置できる。シャフト角度も変えることができる。更にシャフトは横方向に曲げ、中線の横のいずかれの点から外に出る。シャフト方向は一定のままである必要はない。それは一つの方位で始まり他の方位に変化できる。
【0098】
ある実施形態では牽引子とアンカー間の張力調整にアンカーと他物体との機械的連結を伴う。この物体は他の軟組織部位にインプラントした他装置、歯や歯に取り付けた歯科装置や口外の物体であっても良い。第二物体にアンカーを取り付ける部品はゴムバンド、ワイヤー、ひも、鎖や棒でも良い。取り付けはフック、クリップ、磁石や技術的に既知の他の機械的連結法でも良い。
【0099】
装置全体が粘膜下にインプラントされるように一つ又は両支持部品をインプラントしても良い。他の実施形態では一端をインプラントし、他端を外部に出す。
複数の牽引子頭部とシャフトを種々組み合わせても良い。例としては舌根の単一牽引子頭部を二つ以上のシャフトに取り付けることができる。インプラントが設置できる部位としては舌、口蓋帆咽頭壁、下咽頭壁と鼻咽頭壁であり、頬、硬口蓋や軟口蓋、口腔底がある。一つ以上のインプラントも可能である。インプラントは設置した部位か中空でない棒、ワイヤーやゴムバンドで他物体に取り付けた部位のため、インプラント自身が退縮できる。制限のない例は軟口蓋、頬や唇での別の装置や歯や口腔内歯科装置であり、更には装置を口外の物体に取り付けることもできる。
【0100】
実施例6.口腔と咽頭間の導管としての装置
本発明の代替え実施形態では本装置はシャフトは中空で、それ故舌内を通過する導管として働く。この場合本装置はより好ましくはより低く設置し水平に配向する(図12)。このようにしてシャフトをおとがい舌筋の水平部と平行か、おとがい舌骨筋か額舌骨筋下のおとがい舌筋より低い水平部と平行に通じることができる。舌のこの部位では上方向や横方向への舌の移動はなく、殆ど全ての動きは前方向から後方向へ短くなるか長くなる動きである。その結果導管は強い屈曲力には曝されず、その結果舌機能を妨げる事なしに大きな直径をもつことが可能になる。
【0101】
本発明の一実施形態ではシャフトは比較的より大きく、牽引子とアンカーはより小さく、好ましくは導管が所定場所からはみ出さないように開口端周りを小さなフランジに変形しても良い(図12A)。口内のアンカー末端は取り外し可能なキャップ及び/又は他装置と整合するコネクターをもっても良い。
【0102】
一実施形態では咽頭と口の間の導管により咽頭空間での空気圧を受動的に等化させ、咽頭壁の圧潰をもたらす陰圧を減ずる。更なる実施形態では導管により送る酸素や空気源を制御する気流や圧力を関知する機構を加える。外部の圧力源を取り付けることで空気を送り込んで咽頭圧を積極的に増加できる。クリストファー(Christopher)の米国特許5954050には首を通して気管に直接続く導管を用いて、気管の気流、圧力や炭酸ガス濃度を関知できるカテーテルを通す。これらの信号は睡眠無呼吸や他の呼吸器系疾患に関連した全ての指標である。次いでこの信号を用いて酸素や加圧空気の送達を制御できる。
【0103】
重度の肥満とOSASをもつ60才の男性は舌牽引子を断った。その代わりに1cmの取り外し可能な導管を舌小帯の中線から低舌根に設置した。導管は中空であり前端をキャップを被せた。夜には患者はキャップ外し、導管を通じて空気を連続して送る小さな人工呼吸器に繋がる2フィートの延長部に連結した。人工呼吸器を陽圧の空気を送るように調節した。代替え実施形態では導管の牽引子末端に咽頭圧、炭酸ガス及び機械的振動を測定するセンサーをつけ、その信号を導管内部と連結チューブを通るワイヤーか、小さな無線送信機により人工呼吸器に送信した。人工呼吸器を気道閉塞の指針として陰圧か炭酸ガスの急激な増加を認知できるようにプログラムする一方、機械的振動でいびきを知らせた。信号により陰圧を解放する導管を通して空気を迅速に送り始める。
【0104】
本発明の更なる実施形態では気道を制御する導管による器具を導入する。好ましくはこの追加器具は喉頭マスクや気管内チューブと類似で、チューブ周りの気道を塞ぐ機構、好ましくは膨張可能な風船をもつことによる。このようにして制御された気道が患者の通気の為に得られる。
【0105】
更なる代替え実施形態では導管のシャフトは挿入後圧潰するように非常に曲がりやすい。しかし気管内チューブや類似の気道制御装置は圧潰した導管を容易に通せる。このようして一時的補助的通気が必要な患者は気管切開チューブの配置を避けられる(図15)。
【0106】
制限のない説明例は重度の重症筋無力症の50才女性である。患者は大部分の時間助けなしで呼吸嚥下できるが、ほぼ毎日患者は脱力感を感じ十分に呼吸できない時間があった。患者に導管を舌下の中心線に設置した。アンカーを口腔前庭に設置し、シャフトをおとがい舌筋とおとがい舌骨筋の間から舌根下面の牽引子末端に通した。本装置は完全に膨張した直径が1cmの柔らかい補強シラスティックからなるが、設置後周辺の組織圧により圧潰し直径が2mmになった。又非常に曲がりやすいキャップでアンカー末端を封じた。使用してない時には本装置は快適で、患者は殆ど気づかず、他人には見えなかった。患者が補助通気を必要と感じると、導管内部に近づけるようにキャップを開いて、外径8mmの通気チューブを導管から下咽頭に通した。通気チューブの下咽頭端の風船をアンカー末端のコネクターにより膨張できた。膨張した風船により大部分ではあるが完全にはチューブ開口の上の下咽頭を塞ぐことはなく、加圧空気をチューブから送るといくらかの空気漏れがあった。患者は通気チューブを人口呼吸器に繋ぎ、呼吸数と一回換気量を快適なレベルに調整した。二時間後患者はより力強く感じ、人呼吸器を止め、チューブを外し、風船を収縮し、通気チューブを取り外した。
【0107】
実施例7.分泌物の吸引
神経系疾患をもつ多くの患者は唾液分泌物を呑み込みにくく、吸引と肺炎の危険がある。更にある患者には自身ではき出せない過剰な肺分泌物がある。分泌物を吸引するために吸引カテーテルを口や鼻に通すことは技術的には良く知られているが、分泌物のこれら吸引法は非常に不快で大きな労働力を必要とする。これらの方法が不十分な場合、ある患者は気管切開術、挿管術或いは吸引により直接近づける他の手術処置を受ける。
【0108】
代替え実施形態では本装置は比較的容易に分泌物を吸引できる導管として働く。曲がりやすい吸引カテーテルを導管から通し、下咽頭や肺からの分泌物を吸引する。代わりに留置吸引チューブを咽頭に位置するように導管から通す。該カテーテルの近位端は導管のアンカー末端にあり、技術的によく知られた多くの機械的手段で固定できる。必要なときには空気の陰圧源を導管吸引カテーテルに取り付ける。不必要な場合は陰圧用チューブを外す。このようにして意のままに患者には最低の不快さで吸引を容易に行える。外チューブを外すと導管は邪魔にはならない。
【0109】
本発明の他の実施形態では吸引ポンプとエネルギー供給を本装置内に組み込む。分泌物を口腔底から本装置のアンカー側より吸引する。この分泌物を食道や胃に入った牽引子末端に取り付けたカテーテルに送る。このようにして患者に吸引の危険が起こる前に、分泌物を取り除き適切に胃に送る。
【0110】
先行技術を代表する方法と装置としては、ブオノ(Buono)の米国特許3517669では分泌物吸引用のバルブ付き装置が記載され、ショーン(Schon)の米国特許4981477には気管や気管支系へ導入用の吸引カテーテルが記載され、米国特許5694922では一つのガスや複数のガスをもつ患者の肺を換気し、肺の分泌物を吸引し、肺に酸素を送って残留炭酸ガスをそこから除去又は減少し、呼吸器系の選択部分を目視で調べ、唾液とガスサンプルを採取し、流速、圧力や温度のようなパラメーターを感知し、洗浄溶液で洗い流し、且つ/又は薬剤、ガス及び/又は洗浄液を投与するための呼吸器系に近づける方法と装置が記載されている。
【0111】
実施例8.胃チューブ管又は肺チューブ
別の実施形態では本装置を他のチューブを咽頭、気道、胃又は肺に通す導管として使用する。
【0112】
嚥下が難しい多くの患者では胃への直接のチューブによる食物摂取を必要とする。その必要性が一時的な場合、チューブを鼻から胃に通す(経鼻胃管)。通常チューブの近位付着端を鼻にしっかりとテープで貼り付け、上向きの輪にし、顔に直接テープで貼り付ける。時々液体栄養物を経鼻胃管に取り付ける。モス(Moss)の米国特許4704111には経鼻栄養胃管の一実施形態が記載されている。チューブによる食物摂取が長期間必要な場合、チューブを手術により腹部を横切り小腸の胃までインプラントできる(胃チューブ)。両方の方法は不快で、重大な合併症があり、患者の運動性を損なう。
【0113】
一実施形態では薄肉チューブをシャフトに通し、気管や胃までのばすことができる(図13)。この実施形態では経胃栄養摂取ができ、経鼻胃管や経皮胃チューブの必要性を除去できる。本装置の開口部が舌の下にあるので、気づかれない。
【0114】
インプラントは一時的でも永久でも良い。一実施形態では日中に一部又は全部を取り外し、夜に取り替える。組織導管はより快適なインプラントを取り外した後に、第二品目により開存的に保つ。
【0115】
別の実施形態では導管を用いて一時か永久的にチューブを咽頭、喉頭、気管や肺に通す。肺病のある患者には補助酸素が必要である。他実施形態ではチューブにより上気道や肺の構造体に局所的に薬剤を送ることができる。
【0116】
実施例9.薬剤送達
インプラントは又生物活性薬剤を含有しても良い。薬剤を制御放徐用容器やポンプに保存する種々の発明は既知であり、本発明の実施形態に組み入れてある。技術の一例としてはハラース(Heruth)の米国特許5976109にはインプラント可能な薬剤容器が記載されている。
【0117】
別の実施形態では睡眠無呼吸とは全く異なる目的で有用な薬剤がある。一例は歯周病治療用の抗生物質である。抗生物質を生分解型に導管内か徐放ポンプに挿入し、歯周病に効くように夜中にアンカー末端から放徐される。
【0118】
他の実施形態では胃腸管疾患用の薬剤で、制限のない例としては気管への酸の逆流制酸剤がある。制酸剤を牽引子から直接咽頭に放徐する。追加の実施形態では酸性のpHを感知し効果的に治療するように、pHと薬剤供給用のセンサーを一緒に組み合わせる。
【0119】
別の実施形態では呼吸器系疾患の治療用である。現在喘息や気管支炎のような肺疾患用噴霧型薬剤は口から吸入する。これは本装置の牽引子側からの咽頭や、装置から又は喉頭を通って肺に通ずるカテーテルによる気管への直接送達に比べ効果が低い。この方法での好ましい投薬法としては制限なしで、副腎皮質ステロイド、気管支拡張薬、抗炎症薬、粘液溶解薬及び抗生物質がある。
【0120】
他の実施形態では装置は薬剤を放徐して口腔か道管壁から舌組織に拡散できる。ファクソン(Faxon)の米国特許5464395には治療薬及び/又は診断薬を身体通路周囲の組織に送達するカテーテルを記載している。制限されない代表例としてはホスファチジルコリンとデオキシコール酸ナトリウム混合物のような舌根の脂肪を減少する薬剤がある。
この薬剤は脂肪を局所的に溶解させるために皮下注射した(ロテゥンダ、エイエム等(Rotunda, AM et al.)、(2004年)、局所的な脂肪溶解に用いる注入可能なホスファチジルコリン処方の主特性としてのデオキシコール酸ナトリウムの洗浄剤効果(Detergent effects of sodium deoxycholate are a major feature of an injectable phosphatidylcholine formulation used for localized fat dissolution)、ダーマトロロジカルサージェーリー(Dermatol Surg)、2004年、30巻、1001−1008頁)。それ故、舌根の容積が徐々に減少しOSASを改善する。代替え実施形態では薬剤は癌治療用化学療法剤である。更なる代替え実施形態としては本装置は舌、軟口蓋、咽頭や喉頭軟組織の癌に放射物を送達できる。先行技術の代表例としてアップル(Apple)の米国特許6251059やクラーク(Clerc)の米国特許6267775に体血管に放射性治療源を集中する医療器具が記載されている。
【0121】
実施例10.センサーと神経機能代替え
センサーを本装置に組み込んで本装置の周りの局所的血流中、次いで全身循環を反映するガスや代謝物濃度を測定できる。代わりにセンサーは心電図、血圧、血流、患者の位置、振動、温度、組織圧や他の生理的パラメーターを検出できる。送信機を本装置内に組み込んで体外受信機に信号を送ることができる。更なる実施形態としては遠隔コンピューターシステムにより信号を分析し、制御信号をインプラントした患者に送り返し、本装置、神経機能代替え装置や他の医療装置からの薬剤放徐を制御できる。
【0122】
先行技術例としてはゴバーニ(Govani)の米国特許6636769にインプラントしたセンサーと遠隔測定システムが記載されている。バード(Burd)の米国特許6558321には監視信号を遠隔操作で遠隔コンピューターに送り、次いで信号をインプラントした医療器具を制御するため送り返すシステムが記載されている。ビアンコ(Bianco)の米国特許5109850には血液試料を採取し医薬伝達を制御するセンサーをもつインプラントした薬剤容器が記載されている。ウオリンスキー(Wolinsky)の米国特許6764446には圧力や他の生理的パラメーターを監視し及び/又は治療機能を実施するために、圧力センサー、制御器、音響トランスデュサー及びエネルギー蓄積装置をもつインプラントを哺乳類の身体に外科的に挿入するインプラントが記載されている。
【0123】
本装置のこの代替えセンサーの制限しない例では血糖値を測定し、次いで本装置に組み込んだ薬剤貯蔵所から適切量のインスリン放徐を制御する。
OSASを治療する他実施形態ではインプラントは周辺組織を刺激するインプラントした電極、電池電源や刺激エレクトロニクスを有しても良い。本発明の一実施形態ではインプラントは牽引子末端での陰圧用センサーを含む。このセンサーは気道閉塞を検出する。次いでその信号が筋と直接接触した本装置の外側上の表面電極によりおとがい舌筋に電気刺激を発する。刺激によりおとがい舌筋の収縮と舌の前方変位が起こり、その結果閉塞を解放する。
【0124】
代替え実施形態ではパーキンソン病患者は摂食時に呑み込みを開始しにくい。本装置の実施形態では装置を舌の中心線で舌小帯から低舌根にインプラントする。インプラントはエネルギー供給、受信機及び刺激エレクトロニクスを有する。本装置の牽引子末端は咽頭蓋谷に1cmフランジのいずれかの側面に電極を有する。患者は小さな制御ユニットを持ち、本装置に信号を送り電気刺激を起こして咽頭蓋谷の知覚神経を刺激してその結果呑み込みを開始する。
【0125】
実施例11.外科的アクセス
咽頭、喉頭、肺や食道の外科手術は特に罹患率が高い。位相的にはこれらの部位は体外であるが、口と咽頭に近づくのに機能的障害となる。首は非常に多くの異なる重要な構造体を有するので、外科的アクセスはほぼ常に正常な構造体を損傷するようになる。更に癌治療での外科手術のように多くの外科手術は、体内に麻酔下でアクセスできる短時間でその目的を達するようにデザインされている。それ故外科手術は必要以上により大規模である。それに引き替え皮膚癌はしばしば全く違う取り扱いをする。部位へ容易にアクセスできることにより最小の組織切除が可能で、必要に応じて検証を繰り返せる。上気道では殆ど全ての癌は表面から始まる。それ故アクセスが容易な場合には、咽頭や周辺部位での処置を巻き添えによる損傷を少なく且つより速い回復時間で実施できる。
【0126】
現在では低侵襲内視鏡手術に関する技術は非常に進歩した。かつては広い切開と大きな露出を必要とした多くの処置が、今では内視鏡器具と顕微手術器具を用いて小さな経皮的穿刺により実施する。二方法間の罹患率と術後回復の違いは非常に大きい。
【0127】
本発明の一代替え実施形態では咽頭と周辺構造体への外科的アクセス用導管が提供される。一実施形態では内視鏡手術が一番容易に行えるように、導管の数、直径、及び方位を治療する病気に特異的にインプラントする。更なる実施形態ではこの導管は直接検査と継続治療ができるように長期にわたって繰り返しアクセスできる。
【0128】
制限されない例として65才男性は咽頭壁に2cmの潰瘍病変があった。病変を組織診し、扁平上皮癌を見つけた。診察と放射線検査により病変が咽頭壁に局在化し、粘膜を越えて広がっていないようであることが示唆された。治療法の選択について患者と相談後、内視鏡法で病変を除去することを決めた。二つの圧潰可能な導管を病変にアクセスするためにインプラントしたが、第一導管は舌中心線を通して舌小帯から舌根中央部に通した。第二導管は顎下部表面の皮膚を通って第一導管の1cm下の舌根に入れた。患者の第一処置を全身麻酔下で行った。レーザーを用いて口から入れた硬性内視鏡により病変を気化した。しかし最初の処置後患者は2週間ごとに外科医オフィスに追跡検査のために戻った。最小の局所麻酔下で顕微手術用内視鏡を各導管に通した。各々は高輝度照明を送る1mmの光ファイバーケーブルを備え、ビデオ画像を記録した。外科医は病変を綿密に調べいずれの疑わしい組織も組織診した。疑われた場合には外科医は組織診した場所とその周辺に化学療法薬を注入した。六ヶ月後経皮的導管を取り外し、患者に毎月戻ってくるように指導した。一年後再発は見られず第二導管も取り外した。
【符号の説明】
【0129】
BA 舌根
BD 舌体
BL 舌端
Bo 舌とおとがい舌間の境界
C 舌弯曲部
F 舌小帯
GG おとがい舌筋
GT 胃チューブ
HP 下咽頭
LR 喉頭軟組織牽引子
NP 鼻咽頭
P 硬口蓋
PR 咽頭壁牽引子
PT 肺チューブ
SP 軟口蓋
SR 軟口蓋牽引子
T 舌
VP 口蓋帆咽頭
a、アンカー
ab、気道風船
c、つば
cc、圧潰可能な導管(cc)
d、隔膜
h、ハンドル
i、注入ポート
n、針
p、チューブの開放末端
pa、加圧空気
r、牽引子風船
rc、再封止可能なキャップ
s、シャフト
sc、手術導管
st、吸引チューブ
t、チューブ
v、真空源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸障害を治療するための器具であり、
第一の端部と第二の端部とこれらの端部間に配置されているシャフトとを備えており、該シャフトは、患者の口腔又は咽頭内に配置されている軟組織を貫通して配置されるようになされており、このとき、前記第一の端部又は前記第二の端部のうちの少なくともいずれか一方が、前記軟組織の外側表面上に、位置決めされ且つ前記第一の端部又は前記第二の端部のうちの少なくともいずれか一方が前記軟組織に単独で接触する状態で位置決めされ、前記第一の端部か前記第二の端部か前記シャフトかのいずれかが相互作用して圧力をかけて、前記軟組織の少なくとも一部分の変形を防止して患者の気道内の閉塞を防止するようになされている、ことを特徴とする器具。
【請求項2】
前記器具が組織牽引子である、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記呼吸障害がいびき又は睡眠無呼吸のいずれかである、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記軟組織が舌である、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項5】
a)前記シャフトが、中空であり且つ舌を貫通して挿入される大きさとされており、更に、患者の体外と患者の胃腸管又は呼吸器系の少なくとも一方の一部分との間を貫通しているチューブを備えており、
b)前記シャフトに結合されているセンサを更に備えており、
c)電気的刺激を付与するようになされている電極を更に備えており、
d)前記シャフトは、中空であり且つ薬剤貯蔵容器が結合されており、該薬剤貯蔵容器は薬剤を徐々に放出するようになされている、ことを特徴とする器具。
【請求項6】
前記第一の端部が牽引し部材を備えており、前記第二の端部がアンカー部材を備えている、ことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項7】
前記牽引子部材又は前記アンカー部材のいずれか一方が前記軟組織の外側表面上に位置決めできる形状とされており、前記シャフトと前記牽引子部材と前記アンカー部材とのうちの少なくとも1つが前記軟組織と相互作用して該軟組織を患者の口腔又は咽頭内に配置されている別の軟組織に近づかせる外側表面の変形を阻止する圧力をかけるようになされている、ことを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記圧力が前記軟組織を強化して外側表面の変形を防止し、該圧力が、前記外側表面の変形を防止する反力であり、該圧力は前記外側表面に凹みを形成し、又は前記牽引子部材、前記シャフト、及び前記アンカー部材のうちの少なくとも1つが前記軟組織上にかけられる圧力を変化させるように調整する、ようになされたことを特徴とする請求項7に記載の器具。
【請求項9】
前記組織牽引子が1以上の生体適合性の材料によって形成されている、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の器具。
【請求項10】
前記シャフトが可撓性である、ことを特徴とする請求項7〜10のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項11】
前記シャフトが取り外し可能である、ことを特徴とする請求項7〜11のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項12】
前記牽引子部材、前記シャフト、及び前記アンカー部材のうちの少なくとも1つが拡張可能なチューブを備えている、ことを特徴とする請求項7〜12のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項13】
前記牽引子部材と前記アンカー部材とのうちの少なくとも1つが前記シャフトから脱係合可能である、ことを特徴とする請求項7〜13のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項14】
前記シャフトが流体を付加するための内部通路を備えている、ことを特徴とする請求項14に記載の器具。
【請求項15】
前記シャフトが前記流体のための調整装置を備えている、ことを特徴とする請求項7〜15のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項16】
患者の咽頭、患者の口腔、患者の歯、歯科器具、患者の口の外側への取り付け部材のうちの少なくとも1つへの結合部を更に備えている、請求項1に記載の器具。
【請求項17】
前記軟組織が舌であり、前記牽引子部材又はアンカー部材のいずれか一方が舌の外面上に位置決めできる構造とされており、前記シャフト、前記牽引子部材、及び前記アンカー部材のうちの少なくとも1つが、相互作用して前記外面が患者の口腔又は咽頭内に配置されている軟組織の方向に落下するのを防止する圧力をかけるようになされている、ことを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項18】
前記シャフトが患者の舌を貫通して挿入される大きさとされている、ことを特徴とする請求項17に記載の器具。
【請求項19】
前記圧力が前記外面の変形を防止する反力であり、前記圧力は、前記外面に凹みを形成する反力による圧力であり、又は前記牽引子部材、前記シャフト、及び前記アンカー部材が、舌にかけられる反力を変化させるように調整する、ことを特徴とする請求項17又は18に記載の器具。
【請求項20】
前記組織牽引子が1以上の生体適合性材料によって形成されている、ことを特徴とする請求項17〜19のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項21】
前記シャフトが可撓性である、ことを特徴とする請求項17〜20のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項22】
前記シャフトが取り外し可能である、ことを特徴とする請求項17〜21のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項23】
前記牽引子部材、前記シャフト、及び前記アンカー部材のうちの少なくとも1つが拡張可能なチューブを備えており、又は前記シャフトが流体を付加するための内部通路を備えている、ことを特徴とする請求項17〜22のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項24】
前記外面が舌湾曲部の中心線である、ことを特徴とする請求項17〜23のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項25】
前記牽引子部材と前記アンカー部材とのいずれか一方が前記シャフトから脱係合可能である、ことを特徴とする請求項17〜24のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項26】
患者の咽頭、患者の口腔、患者の歯、歯科用器具、患者の口の外側の取り付け部材のうちの少なくとも1つに対する結合部を更に備えている、ことを特徴とする請求項17〜25のうちのいずれか一の項に記載の器具。
【請求項27】
前記軟組織が舌であり、前記牽引子部材又は前記アンカー部材の少なくとも一方が舌の外面上に位置決めされる構造とされており、前記シャフト、前記牽引子部材、又は前記アンカー部材のいずれか1つが、舌の少なくとも一部分が患者の口腔又は咽頭内に配置されている軟組織に向かって圧潰されるのを防止するようになされている、ことを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項28】
前記シャフトが取り外し可能である、ことを特徴とする請求項21に記載の器具。
【請求項29】
前記シャフトが患者の舌を貫通して取り外し可能に挿入できる大きさとされており、前記シャフトは、舌根又は舌根の近くに結合されている第一の端部と、舌小帯又はその近くに結合されている第二の端部とを備えている、ことを特徴とする請求項17に記載の器具。
【請求項30】
前記反力によって、前記外面が前記軟組織に向かって落下するのが防止されるようになされている、ことを特徴とする請求項29に記載の器具。
【請求項31】
前記第一の端部と第二の端部とが、前記軟組織の外面上に位置決めされるようになされている、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項32】
前記シャフトが穴を備えた舌を貫通する部材であり、患者の体外と、前記患者の胃腸管及び呼吸器系のうちの少なくとも1つの一部分との間を連通させるようになされている前記舌を貫通する部材を貫通しているチューブを更に備えている、ことを特徴とする請求項5に記載の器具。
【請求項33】
前記連通が必要とされる場合に、患者の胃腸管と前記呼吸器系とのうちの少なくとも一方と連通させる、ことを特徴とする請求項32に記載の器具。
【請求項34】
前記連通が流体の移動からなる、ことを特徴とする請求項33に記載の器具。
【請求項35】
前記連通が画像形成装置によって構成される、ことを特徴とする請求項33に記載の器具。
【請求項36】
前記画像形成装置が光ファイバを備えている、ことを特徴とする請求項35に記載の器具。
【請求項37】
内視鏡による外科手術用部材を備えている、ことを特徴とする請求項33に記載の器具。
【請求項38】
前記シャフトが舌を貫通する部材であり、該舌を貫通する部材に接続されているセンサを更に備えている、ことを特徴とする請求項5に記載の器具。
【請求項39】
患者の健康状態を監視するための請求項38に記載の器具。
【請求項40】
前記センサが、機械的変換器及び化学的検知器のうちの少なくとも1つを備えている、ことを特徴とする請求項39に記載の器具。
【請求項41】
前記センサが、該センサの近くの組織の一部分の状態及び循環系の一部分の状態のうちの少なくとも一方を測定するようになされている、こを特徴とする請求項39に記載の器具。
【請求項42】
電気的刺激を提供するようになされ電極を更に備えている、ことを特徴とする請求項39に記載の器具。
【請求項43】
送信器及び受信器からなる群のうちの少なくとも一方を更に備えている、ことを特徴とする請求項39に記載の器具。
【請求項44】
前記シャフトが舌を貫通する部材であり、電気的刺激を付与するようになされている電極を更に備えている、ことを特徴とする請求項5に記載の器具。
【請求項45】
電気的刺激を付与するための請求項44に記載の器具。
【請求項46】
前記シャフトが穴を有している埋め込み可能な部材であり、該埋め込み可能な部材に結合され且つ薬剤を徐々に放出するようになされている、ことを特徴とする請求項5に記載の器具。
【請求項47】
前記薬剤が必要とされているときに薬剤を患者に供給するようになされている、ことを特徴とする請求項46に記載の器具。
【請求項48】
前記埋め込み可能な部材が生体吸収性材料からなる、ことを特徴とする請求項47に記載の器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−A】
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【図6−B】
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【図6−C】
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【図6−D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−196475(P2012−196475A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−121976(P2012−121976)
【出願日】平成24年5月29日(2012.5.29)
【分割の表示】特願2007−500809(P2007−500809)の分割
【原出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(507369062)リンガフレックス・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】