閉塞型睡眠時無呼吸症を治療する内容積移行機能を有する柔軟インプラント
閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントが、非圧縮性流体(34)を収容する第1のチャンバ(26)と、圧縮性流体(36a、b)を収容する第2のチャンバ(28a、b)と、第1と第2のチャンバを分離する柔隔膜(30、32)と、を有する。非圧縮性流体は、柔隔膜を介して圧縮性流体と連通する。第1のチャンバは、インプラントに加えられた外力に応じて一定のままの第1の容積を有し、第2のチャンバは、インプラントに外力が加えられたときに変化可能な第2の容積を有する。柔隔膜は、第2のチャンバ内に拡張可能で、第2のチャンバの第2の容積を減少させ、第2のチャンバ内の圧縮性流体を圧縮する。第2のチャンバ内の圧縮性流体は、インプラントの初期の屈曲の間に屈曲に対してより少ない抵抗を提供し、インプラントの更なる屈曲の間に屈曲に対してより大きい抵抗を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、睡眠障害の治療に関し、より具体的には閉塞型睡眠時無呼吸症を患っている患者を治療するためのシステム、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞型睡眠時無呼吸症(OSA)は、気道の閉塞によって引き起こされ、通常は、睡眠中に喉の軟組織が倒壊及び閉鎖したときに発生する。閉塞は、喉頭腔の一部分に起こる可能性があり、咽頭の後壁に対する舌の倒壊、咽頭側壁の倒壊、及び舌の崩落と軟口蓋、詳細には口蓋垂を含む軟口蓋の後部の衝突との組み合わせによって形成された閉鎖を含むことがある。それぞれの無呼吸事象の間、脳はこの病人を覚醒させて呼吸の再開を開始させる。しかしながら、この種の睡眠は、極めて断片化されており、質が低い。
【0003】
National Institutes of Healthによれば、OSAは1200万人を超える米国人を侵している。処置しないでおくと、OSAは、高血圧、心臓血管疾患、体重増加、性交不能症、頭痛、記憶障害、仕事への支障、及び/又は自動車事故を引き起こす場合がある。OSAの重篤性にも関わらず、公衆及び医療専門家の間での一般的な認識の欠如により、大多数のOSA患者が未診断及び未処置のままとなっている。
【0004】
OSAの処置に向けた多大な努力が為されている。例えば、いびき及び閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するために軟口蓋を電気的に刺激するための装置が、米国特許第5,284,161号及び同第5,792,067号に開示されている。これらの装置の使用は、厳しい使用節制を辛抱強く遵守することを必要とし、睡眠中の患者を不快にし、その結果患者を繰り返し目覚めさせるので、賛否入り交じった結果となっていた。
【0005】
一般に持続的気道陽圧法(CPAP)と呼ばれる別の処置は、特別に設計された鼻マスク又は枕を通して空気を患者の気道内に送達する。患者が吸い込むときに空気の流れが正圧を形成して、気道を開いたままに維持する。CPAPは、いびき及び閉塞型睡眠時無呼吸症を緩和するために有効な非外科的治療であると多くの人々によって考えられているが、患者は、腫脹、鼻の乾燥、及びドライアイなど、マスク及びホースにより生じる不快感についての不満を訴えている。その結果、CPAPに関する患者のコンプライアンスは約40%のみである。
【0006】
OSAの処置には、外科的処置も使用されている。そのような処置の1つは口蓋垂口蓋咽頭形成術と呼ばれ、舌と咽頭壁との間を粗動させる軟口蓋の能力を低減するために、軟口蓋の後縁を約2cm除去するものである。別の手技では、手術用レーザーを使用して軟口蓋の表面上に瘢痕組織を形成し、この瘢痕組織は軟口蓋の柔軟性を低下させて、いびき及び/又は気道の閉鎖を低減する。一般に焼灼支援口蓋硬化手術(CAPSO)と呼ばれる更に別の処置は、局所麻酔下で行なわれる院内処置であり、軟口蓋粘膜の中央帯が除去され、口蓋を補強するために傷が治療される。
【0007】
上述されたもののような外科的手技は、引き続き問題を有している。具体的には、外科的に治療される組織領域(即ち、口蓋組織の除去又は口蓋組織の瘢痕)は、患者の症状を治療するのに必要な領域より大きいことが多い。加えて、上述した外科的手技は、多くの場合苦痛を与え、長い不快な治癒期間を要する。例えば、軟口蓋の瘢痕組織は、患者に持続的な刺激を与える場合がある。その上、上記の手技は、副作用の事象において元に戻すことができない。
【0008】
OSA治療のためのもう1つの外科的手技では、組織内にインプラントされる数個の編組PET円筒を用い、舌又は口蓋垂の組織をより堅く、屈曲しにくいものにする。Restore Medical(St.Paul,MN)から販売されているPillar(商標)口蓋インプラントシステムは、編組ポリエステルフィラメントの円筒形エレメントからなり、軽度〜中程度のOSAに罹患している患者において、気道閉塞の事象を減らすために、これを軟口蓋内に埋め込む。Pillar装置の使用によって、円筒形エレメントの押し出し、感染、及び患者の苦痛を含む副作用が生じることがある。
【0009】
InfluENT(Concord,NH)によって商標「REPOSE(商標)」で販売されている別のインプラントシステムは、口腔底の下顎骨の後面に挿入されるチタン骨ネジを使用する。縫合糸のループを舌根に通し、下顎骨ネジに取り付ける。Repose(商標)手技は、舌根の懸吊又はハンモックの状態を達成して、睡眠中に舌根が逸脱しないようにする。しかしながら、覚醒状態の間に舌が活発に活動することに起因して、この装置の縫合要素は舌に対する「チーズカッター」としての働きをする場合があり、装置故障の原因となり、その後の除去を必要とする。
【0010】
OSAを処置する別の試みは、補助気道を形成して、主気道の詰まった部分にバイパスを形成することを含む。同一出願人による米国特許出願第12/182,402号(2008年7月30日出願)(この開示は参考として本明細書に組み込まれる)の1つの実施形態において、補助気道は、咽頭の咽頭壁の下に細長い導管を埋め込むことによって形成される。細長い導管は、咽頭の第1の領域と連通する近位端と、咽頭の第2の領域と連通する遠位端と、咽頭の中咽頭領域にバイパスを形成するために咽頭壁の下に延びる中間部分と、を有する。
【0011】
OSAの処置には、磁石も使用されている。例えば、その開示が本願にて参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による2008年7月31日出願の米国特許出願第12/183,955号の一実施形態では、磁石インプラントは、骨アンカーと、骨アンカーに結合された第1の磁石と、舌アンカーと、舌アンカーに結合された第2の磁石と、第1の磁石と第2の磁石とを整合し、それにより磁石間に反発力が生成されて第2の磁石を第1の磁石から離し、第2の磁石を骨アンカーに向かって追い立てる支持体と、を含む。支持体は、第1の磁石を骨アンカーから一定の距離に維持し、第1の磁石を第2の磁石と整合し、第1の磁石及び第2の磁石の移動を案内する。‘955の出願の1つ以上の実施形態に開示されている磁石インプラントは、堅い停止(hard stop)を有するインプラントを使用する際に見られる「チーズカッター」効果を避けるよう堅い停止を有さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の進歩にも関わらず、長期間の有効な結果を提供し、患者のコンプライアンスを促進し、患者の不快感を最小にする低侵襲的手法によってOSAを治療するための更に別のシステム、装置及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントは、非圧縮性流体を収容する第1のチャンバと、圧縮性流体を収容する第2のチャンバと、第1と第2のチャンバを分離する柔隔膜と、を有する。第1のチャンバ内の非圧縮性流体は、柔隔膜を介して第2のチャンバ内の圧縮性流体と連通する。一実施形態では、第1のチャンバは、インプラントの屈曲中に一定のままの第1の容積を有し、第2のチャンバは、インプラントの屈曲中に変化する第2の容積を有する。一実施形態では、柔隔膜は、第2のチャンバ内に拡張可能で、第2のチャンバの第2の容積を減少させ、第2のチャンバ内の圧縮性流体を圧縮する。第1のチャンバに外力を加えることにより、第2のチャンバ内に柔隔膜が拡張されて、第2のチャンバ内の圧縮性流体が圧縮されることが好ましい。
【0014】
本明細書に開示されるインプラントは、睡眠中に組織を制御し、組織が倒壊するのを防ぐために中咽頭気道の軟組織内に埋め込むように適応されることが望ましい。インプラントは、舌、軟口蓋、又は咽頭壁内に埋め込み可能でもよい。一実施形態では、複数のインプラントが使用されてもよい。一実施形態では、舌などの第1の軟組織の場所に1つ又は複数のインプラントが埋め込まれてもよく、軟口蓋や咽頭壁などの第2の軟組織の場所に1つ又は複数のインプラントが埋め込まれてもよい。
【0015】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントが、耐久性のある生体適合性の高分子又はエラストマ材料で作製されることが好ましい。一実施形態では、第1のチャンバ内の非圧縮性流体は、液体、水、食塩水又は流動性ゲルでよい。第2のチャンバ内の圧縮性流体は、窒素又は空気などの気体でよい。
【0016】
一実施形態では、インプラントは、患者の前後軸、横軸、垂直軸又は水平軸と位置合わせ可能な長手方向軸を有することが好ましい。一実施形態では、インプラントの長手方向軸は、患者の前後軸、横軸、垂直軸、又は水平軸のうちの1つに対して傾斜してもよい。利用されるインプラントの数と、インプラントの特性の配置、角形成(angulation)及び/又は向きは、患者の特定の組織支持需要に依存することが好ましい。
【0017】
一実施形態では、インプラントは、実質的に直線形状と湾曲形状との間で屈曲するように適応される。非圧縮性流体と圧縮性流体は、初期の屈曲段階で屈曲に対してより少ない抵抗を提供し、後の方の屈曲段階で屈曲に対してより大きい抵抗を提供するように動作することが望ましい。
【0018】
一実施形態では、インプラントは、曲線のような予備成形された形状と直線状態の間で屈曲するように適応される。
【0019】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントは、非圧縮性流体を収容する中央チャンバと、中央チャンバの第1端と隣接配置され。第1の圧縮性流体を収容する第1の外側チャンバと、中央チャンバの第1端と第1の外側チャンバを分離する第1の柔隔膜と、を有する。インプラントは、中央チャンバの第2端に隣接配置され、第2の圧縮性流体を収容する第2の外側チャンバと、中央チャンバの第2端と第2の外側チャンバを分離する第2の柔隔膜と、含むことが望ましい。
【0020】
一実施形態では、中央チャンバ内の非圧縮性流体は、第1の柔隔膜を介して第1の圧縮性流体と連通し、第2の柔隔膜を介して第2の圧縮性流体と連通することが好ましい。第1のチャンバは、インプラントに外力が加えられたときに一定のままの第1の容積を有し、第1と第2の外側チャンバは、インプラントに外力が印加されたときに変化可能なそれぞれの容積を有することが好ましい。
【0021】
一実施形態では、第1の柔隔膜は、第1の外側チャンバ内に拡張可能で、第1の外側チャンバの容積を減少させ、第1の外側チャンバ内の第1の圧縮性流体を圧縮し、第2の柔隔膜は、第2の外側チャンバ内に拡張可能で、第2の外側チャンバの容積を減少させ、第2の外側チャンバ内の第2の圧縮性流体を圧縮することが望ましい。外側チャンバ内の隔膜の変形は、装置の外部形状を大きくすることなく容積変化に適応する。
【0022】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントは、非圧縮性流体を収容する第1の柔軟なチャンバと、インプラントの屈曲中に一定のままの第1の容積を画定する第1のチャンバと、圧縮性流体を収容する第2のチャンバと、を含み、第2のチャンバは、インプラントの屈曲中に変化する第2の容積を画定する。インプラントは、第1と第2のチャンバを分離する柔隔膜を含み、それにより、第1のチャンバ内の非圧縮性流体が、柔隔膜を介して第2のチャンバ内の圧縮性流体と連通することが好ましい。一実施形態では、第2のチャンバ内の圧縮性流体は、屈曲の大部分の間に屈曲に対してより小さい抵抗を提供し、後方の屈曲段階で屈曲に対してより大きい抵抗を提供する。更に、第2のチャンバの圧縮性流体の圧縮は、装置全体の延長なしに装置の湾曲に適応する。一実施形態では、インプラントを湾曲させるのに必要な力は、インプラントの初期の屈曲の際には比較的小さく一定のままであり、屈曲に対する抵抗力は、インプラントの更なる屈曲の際に大幅により急速に増大する。
【0023】
一実施形態では、柔隔膜が、第2のチャンバ内に拡張するとき(例えば、インプラントが屈曲する際)、圧縮性流体の圧力レベルは、屈曲の大部分の間、インプラントの剛性を維持する。圧縮性流体の圧力レベルが低下するとき(例えば、インプラントが真っすぐになる際)、インプラントの剛性が低下する。
【0024】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントは、弁を備えていなくてもよく、圧縮されたときに1つの隔室から装置の膨張性領域内に流体を移動するだけでもよい。この特定の実施形態では、インプラント装置は、配置されたときにすぐに支持を提供することが好ましいが、隔室の膨張性領域は、流体の動きに対する抵抗を制御し、これにより、曲げられた固体材料内の変形への依存なしに装置の拡張された制御可能な弾性応答を提供する。
【0025】
一実施形態では、インプラントは、組織内殖を促進するように適応された面を有してもよい。組織内殖促進面は、テクスチャ面、多孔質面、網目状面、メッシュ面、フリース面、及び骨又は組織内殖を誘導するハイドロキシアパタイトなどの被覆を含む、外面の群れから選択されることが望ましい。
【0026】
本発明は、如何なる特定の動作原理によっても限定されないが、インプラントは、先行技術の装置を上回る幾つかの利点を提供すると考えられる。最初に、インプラントは、効果的な結果が得られない場合に患者から除去されてもよい。次に、インプラントは、患者が眠っているときに中咽頭気道の軟組織に対して必要最小限の支持を提供することが好ましい。インプラントが、大きく撓んだときに類似の荷重を提供するように作製されるので、会話又は嚥下に影響を及ぼす可能性が最小である。更に、本発明のインプラントは、インプラントが組織を引き裂いたり貫通したりする可能性を最小にするために、堅い固定点を必要とせずに軟組織の形状を制御することが好ましい。
【0027】
睡眠中に強い嚥下があった場合、インプラントは、嚥下を可能にするように一時的に変形することができる。嚥下と関連した筋活動が沈静化した後で、インプラントは、弛緩した舌の支持と再成形を提供するように好ましい形状を回復することが好ましい。
【0028】
一実施形態では、インプラントは、埋め込み装置の患者の自覚を最小限にするために、柔軟フィルム材料から製造される。
【0029】
本発明のこれら及びその他の好ましい実施形態は、下記に詳しく記述される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】鼻腔及び咽頭を含む人頭の断面図。
【図2】正常な呼吸中のヒトの鼻腔及び咽頭の断面図。
【図3】閉塞型睡眠時無呼吸症の発現時のヒトの鼻腔及び咽頭の断面図。
【図4A】本発明の一実施形態による、閉塞型睡眠時無呼吸症の治療用のインプラント。
【図4B】本発明の一実施形態による屈曲後の図4Aのインプラント。
【図5A】本発明の一実施形態による舌に埋め込まれた図4Aと図4Bのインプラント。
【図5B】インプラントが屈曲中の図5Aのインプラント。
【図6】図4Aに示されるインプラントと従来のインプラントに関して抵抗力を屈曲の関数としてプロットしたグラフ。
【図7A】本発明の一実施形態による軟口蓋に埋め込まれた図4Aのインプラント。
【図7B】インプラントが屈曲中の図7Aのインプラント。
【図8】本発明の一実施形態による舌に横方向に埋め込まれた一対の柔軟なインプラントを含む、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステム。
【図9】本発明の一実施形態による軟口蓋に横方向に埋め込まれた柔軟なインプラントを含む、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステム。
【図10】本発明の一実施形態による咽頭後壁に横方向に埋め込まれたインプラントを含む、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステム。
【図11】本発明の一実施形態による、閉塞型睡眠時無呼吸症の治療用のインプラント。
【図12】本発明の別の実施形態による閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント。
【図13A】本発明の一実施形態による閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントの上面図。
【図13B】図13Aに示されるインプラントの断面図。
【図14】本発明の別の実施形態による閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためにインプラントの断面図。
【図15】本発明の一実施形態による閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、鼻腔N、硬口蓋HPの骨B、後端に口蓋垂UVを有する軟口蓋SP、口腔M、舌T、気管TR、喉頭蓋EP、食道ES、及び咽頭後壁PPWを含む解剖学的構造を有する人頭の断面図を示す。
【0032】
人体において、鼻腔Nと喉頭LXとの間の空気で満たされた空隙は、上気道と呼ばれる。睡眠障害を伴う上気道の最も重要な部分は咽頭PXである。図2を参照すると、咽頭は3つの異なる解剖学的レベルを有する。上咽頭NPは、鼻腔Nの後部に位置する咽頭の上部部分である。中咽頭OPは、軟口蓋SP、喉頭蓋EP、及び舌Tの後部の曲線を含む、咽頭の中間部分である。下咽頭HPは、中咽頭OPの軟組織の下方に位置する咽頭の下部部分である。中咽頭OPは、空気流のための空隙が少なくなる軟組織構造の高率発生に起因して倒壊する可能性が最も高い咽頭部分である。下咽頭HPは、喉頭の開口の下方及び喉頭の後方に位置し、食道まで延びる。
【0033】
当業者には周知であるように、軟口蓋及び舌は共に、柔軟性のある構造体である。軟口蓋SPは、鼻腔Nと口Mとの間に障壁を提供する。多くの場合、軟口蓋SPは必要以上に長く、舌Tの後部と咽頭後壁PPWとの間において相当の距離を延びる。軟口蓋の中央後端は、口蓋垂と呼ばれ、口蓋垂は、舌の後部の上の軟口蓋から下方に延びる軟組織である。
【0034】
睡眠中は体全体の筋肉が弛緩するが、呼吸器系の筋肉のほとんどは活性状態を維持する。吸入時に、横隔膜は収縮し、陰圧に空気Aを鼻腔N及び口Mの中まで引き込ませる。次いで、空気は咽頭PXを通過して、気管TRを介して肺内に流れる。陰圧は、上気道の組織をわずかに変形させ、これにより気道経路が狭くなる。無呼吸の患者では、軟口蓋SP、舌T、及び/又は喉頭蓋EPは、咽頭後壁PPWにぶつかって倒壊して、気管の中への空気流を遮断する。気道が狭まるとき、咽頭を通る気流が乱れ、これにより軟口蓋SPが振動し、一般にいびきとして知られる音を生成する。
【0035】
睡眠中、ヒトは、典型的には、空気流の短時間の閉塞及び/又は気管及び肺の中に入る空気流の量のわずかな低下を経験する。10秒を超える空気流の閉塞は、無呼吸と見なされる。50%を超える空気流の減少は、呼吸低下と見なされる。睡眠障害の重症度は、睡眠1時間の間に発生する無呼吸及び呼吸低下の回数で判断される。
【0036】
無呼吸又は呼吸低下が1時間に5回を超えて発生する場合、ほとんどの医療関係者は、その個人が上気道の抵抗問題を有していると診断する。これらの患者の多くは、日中の眠気、抑うつ症、及び集中力の欠如などの睡眠障害に関連した症状を呈することが多い。
【0037】
睡眠1時間の間に無呼吸又は呼吸低下が10回以上発生する人は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群を有すると診断される。気道が閉塞すると、個人は、無理に吸入するための試みを繰り返し行う。これらの症状の発現の多くは無音であり、個人が無理に空気を肺の中に引き込むときの腹部及び胸壁の動きによって特徴付けられる。典型的には、無呼吸の症状の発現は1分以上続く可能性がある。この間、血中の酸素濃度は低下する。最終的には、閉塞は、大きないびきをかいている人、又は窒息感で目覚めた患者によって克服されることがある。
【0038】
図2を参照すると、個人が起きている場合、舌Tの後部及び軟口蓋SPは、舌Tの後部及び軟口蓋SPのそれぞれの内部筋肉のために、それらの形状及び緊張を維持している。その結果、咽頭を通る気道Aは開いたままであり、遮るものはない。しかしながら、睡眠中、筋肉の緊張が低下し、舌後面及び軟口蓋がより柔軟及び膨張性となる。
【0039】
図3を参照すると、舌後面及び軟口蓋の形状を維持し、単独で又は群としてそれらを定位置に維持する正常な筋肉の緊張がなくなり、舌Tの後面、喉頭蓋EP及び軟口蓋SPは容易に倒壊して気道Aを遮断する傾向がある。睡眠中に、舌Tの後端が、鼻腔Nと気管TRの上端との間で気道Aを塞ぐことがある。また、軟口蓋SPは弛緩し、口蓋垂UVを舌Tの後部と咽頭後壁PPWとの間で摺動させることがある。更に、咽頭PXの後壁と側壁の軟組織内の弛緩した筋組織が、呼吸中の低い吸気圧により軟組織を内方に倒壊させることがある。
【0040】
図4Aを参照すると、本発明の一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント20が、第1端22、第2端24、及び第1端22と第2端24との間でインプラントの長さに沿って延在する長手方向軸A1を有する。インプラント20は、ヒト用の耐久性があり、安全な1つ又は複数の生体適合性非吸収性材料で作製されることが望ましい。インプラント20は、シリコーン、エラストマ材料及び/又はポリウレタンを含む様々な生体適合材料で作製することができる。一実施形態では、インプラント20は、柔軟であることが好ましく、1つ又は複数の流体で少なくとも部分的に満たされてもよい。外力を受けないとき、インプラント20は、通常、図4Aに示される実質的に直線及び/又は非屈曲形状を保持する。
【0041】
一実施形態では、インプラント20は、中央チャンバ26と、1対の外側チャンバ28A、28Bを有することが好ましい。一実施形態では、インプラント20は、中央チャンバ26を第1の外側チャンバ28Aから分離する第1の柔隔膜30と、中央チャンバ26を第2の外側チャンバ28Bから分離する第2の柔隔膜32と、を有することが好ましい。一実施形態では、中央チャンバ26は、液体、水、食塩水、流動性ゲルなどの非圧縮性流体34で満たされることが望ましい。外側チャンバ28A、28Bは、真空、又は空気、気体、窒素、若しくはこれらの組み合わせのような低圧圧縮性流体36A、36Bで満たされることが望ましい。
【0042】
図4Bを参照すると、一実施形態では、外力を受けたとき、インプラント20は、長手方向軸A1−A1に対して屈曲することがある。一実施形態では、インプラント20が屈曲するとき、非圧縮性流体34を収容するインプラント20の中央チャンバ26が、延長及び/又は変形されることが望ましい。中央チャンバ26が延長及び/又は変形されたとき、中央チャンバ26内の非圧縮性流体26は、第1と第2の柔隔膜30、32をそれぞれの第1と第2の外側チャンバ28A、28Bに拡張させる。柔隔膜30、32が、外側チャンバ28A、28B内に外方に拡張するとき、それぞれの外側チャンバ28A、28B内にある圧縮性流体36A、36Bが圧縮される。外側チャンバ28A、28B内の流体36A、36Bの圧縮により、外側チャンバ内の圧力が高くなり、これによりインプラント20の柔軟性が最小限に低下する。
【0043】
図4Aと図4Bに示され上述された柔軟な流体で満たされたインプラントは、舌、軟口蓋、及び/又は咽頭壁などの上気道の軟組織に埋め込まれてもよい。複数の柔軟な流体インプラントを利用して、閉塞型睡眠時無呼吸症と関連した症状を治療することができる。1つ又は複数のインプラントが、患者の前後軸、垂直軸、横軸又は水平軸と位置合わせされてもよい。また、1つ又は複数のインプラントが、患者の前後軸、垂直軸、横軸又は水平軸に対して任意の選択された角度で延在するように位置決めされてもよい。
【0044】
図5Aを参照すると、一実施形態では、本明細書に記載されたような柔軟なインプラント20は、舌Tの根部に埋め込むことができる。一実施形態では、柔軟なインプラント20は、舌Tの前後軸A−Pに沿って延在することが望ましい。図5Aには1個のインプラントだけが示されているが、一実施形態では、2つ以上のインプラントが舌に埋め込まれてもよい。
【0045】
図5Bを参照すると、睡眠中に、上気道の筋肉が弛緩することがある。その結果、舌Tの根部が弛緩し、対向する咽頭後壁PPWに近づくことがある。舌Tの後部が咽頭後壁に近づくとき、上気道Aが閉じて閉塞型睡眠時無呼吸症を発生させることがある。
【0046】
一実施形態では、睡眠中に舌Tが弛緩するとき、舌の後部が弛緩し、対向する咽頭後壁PPWに近づき、それにより気道Aが少なくとも部分的に閉じることがある。弛緩した舌Tによってインプラント20に加わる力に応じて、図5Bに示されるように、インプラント20が屈曲することがある。インプラント20の屈曲によって、中央チャンバ26が長くなり、これにより、第1と第2の柔隔膜30、32が、それぞれの外側チャンバ28A、28B内に拡張されることが好ましい。第1と第2の柔隔膜32、34が、外側チャンバ28A、28B内に拡張するとき、圧縮性流体36A、36Bの外側チャンバ28A、28Bが圧縮され、それにより、流体36A、36Bの圧力がわずかに高まり、インプラント20の柔軟性が最小限に低下する。このとき、インプラントは、舌が咽頭後壁PPWの方に弛緩するのを防ぐのに十分な抵抗を提供して、閉塞型睡眠時無呼吸症の発生を防ぐ。覚醒状態では、インプラントを変形させるのに必要な力は、典型的な変形にわたって似ているので、舌の通常の筋肉運動は、インプラントによってわずかしか影響を受けない。
【0047】
図5Aと図5Bは、インプラント20が、舌内に埋め込まれ、ほぼ患者の前後軸に沿って延在する本発明の一実施形態を示す。しかしながら、他の実施形態では、インプラントは、前後軸を横切る方向に埋め込まれてもよい。一実施形態では、柔軟な流体充填インプラント20は、横方向に及び患者の前後軸に対して実質的に垂直に、延在する長手方向軸を有してもよい。また、インプラントは、患者の垂直軸、患者の水平軸、又は垂直と水平との間の任意の選択された角度に延在するように埋め込まれてもよい。
【0048】
図6は、従来のインプラント(点線としてプロットされた)と本出願で開示されるインプラント(実線でプロットされた)に関して、予想される抵抗力を屈曲の関数として示すグラフである。図6のグラフに示されるように、従来のインプラントが屈曲するとき、インプラントは、屈曲が大きくなるほど抵抗力が大きくなるような線形経路に沿って屈曲に抵抗する。材料の弾性限界を超え、塑性限界の範囲内の特定の程度の屈曲で、従来のインプラントによって提供される抵抗力は、ピークになり永久歪を持つ。
【0049】
これと対照的に、図6に示されるように、本出願で開示されるインプラントの屈曲力は、屈曲又は歪みの初期段階で比較的一定に屈曲し、屈曲の後の方の段階で屈曲しにくくなる。その結果、本発明のインプラントは、インプラントの受けた屈曲にほとんど抵抗を提供せず、かなり大きいインプラントの屈曲が生じるまであまり大きいレベルの抵抗は生じない。
【0050】
図6のグラフに示されるように、インプラント20を曲げている大部分の間、インプラントは比較的曲げ易く、更に舌の軟組織に倒壊を防ぐのに十分な支持を提供する。しかしながら、もっと顕著な撓みと曲げでは、インプラント20は、更なる屈曲に対する抵抗が大きくなる。
【0051】
本発明は、如何なる特定の動作原理によっても限定されないが、1つ又は複数の圧縮性チャンバを有するインプラントを使用することによって、応力歪み曲線に対する弾性応答が平坦になり、より大きい変位でも屈曲力を有効に比較的一定にできると考えられる。これにより、周囲の組織に対する力が一定に維持され、その結果、覚醒しているときの軟組織の動きが、加えられた力の増大を経験せず、それにより覚醒しているときにインプラントに気付きにくい。一実施形態では、圧縮性チャンバは、圧縮性流体隔室と関連した軸の部分の幾何学形状を大きくすることなく流体変形に対応することが望ましい。
【0052】
図7Aを参照すると、一実施形態では、柔軟なインプラント20は、本明細書に記載されているように、患者の軟口蓋SPに埋め込まれてもよい。図7Aに示される特定の実施形態では、単一の柔軟な流体充填インプラント20が、患者の硬口蓋HPの後部の軟口蓋SPの組織に埋め込まれる。患者が覚醒しているとき、軟口蓋SPは、図7Aに示されるような形状と形態を保持する。しかしながら、睡眠中、軟口蓋SPが弛緩し、図7Bに示されるように、軟口蓋SPの後端が、対向する咽頭後壁PPWに近づくことがある。軟口蓋SPの後端が、対向する咽頭後壁PPWに十分に近づく場合、上気道Aが、少なくとも部分的に閉塞又は閉鎖されて閉塞型睡眠時無呼吸症を発生させることがある。本発明は、如何なる特定の動作原理によっても限定されないが、本明細書に開示されるインプラントを軟口蓋SPに埋め込むことにより、インプラントが、軟口蓋SPの後端の咽頭壁PPWの方への更なる動きに抵抗するので、気道Aの閉鎖が防止されると考えられる。図7Bに示されるように、軟口蓋が弛緩するとき、柔軟なインプラント20は、その長手方向軸に対して撓んで曲がる。インプラント20が撓んで曲がるとき、中央チャンバ内の非圧縮性流体が、第1及び第2の柔隔膜を外側チャンバ内に拡張させて外側チャンバ内の圧縮性流体を圧縮し、それにより、インプラントの外部寸法を大きくすることなくインプラント20の屈曲力を維持するために外側チャンバ内の流体の圧力レベルが高くなる。また、インプラント20の低い柔軟性によって、軟口蓋SPが対向する咽頭後壁PPWの方に更に動くのが妨げられる。インプラントに荷重をかける筋短縮が完了すると、非圧縮性流体が隔室をその元の幾何学形状に戻して弛緩状態の舌を支持する。
【0053】
図8を参照すると、一実施形態では、2つの柔軟なインプラント120A、120Bが、舌Tの根部に埋め込まれる。柔軟なインプラント120A、120Bはそれぞれ、患者の前後軸に対して横方向に延在する長手方向軸を有することが望ましい。図8に示される実施形態は、如何なる特定の動作原理によっても限定されないが、1つ又は複数の横方向に延在する柔軟なインプラントを埋め込むことにより、舌Tの側部が支持されると考えられる。この埋め込み構成は、舌の1つ又は複数の側部が、患者の1つ又は複数の咽頭側壁の方に倒壊することに起因するOSA発生を有効に治療することがある。
【0054】
図9を参照すると、一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステムが、患者の軟口蓋SPに埋め込み可能な流体充填インプラント220を含む。埋め込まれた柔軟な流体充填インプラント220は、患者の前後軸と実質的に垂直な横方向に延在することが望ましい。横方向に延在するインプラント220は、軟口蓋の1つ又は複数の外側端が、対向する咽頭側壁に対して倒壊するのを防ぐことが望ましい。図9には1つのインプラント220だけが示されているが、他の実施形態は、軟口蓋SPに埋め込み可能な2つ以上の横方向に延在する柔軟なインプラントを含んでもよい。
【0055】
図10を参照すると、一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステムが、患者の咽頭後壁PPWに埋め込まれた1組の柔軟なインプラント320A、20B、320Cを含む。それぞれのインプラント320A〜320Cは、患者の前後軸に対して横方向に延在することが好ましい長手方向軸を有する。一実施形態では、柔軟なインプラント320A〜320Cは、咽頭後壁が、舌の根部及び/又は軟口蓋SPの方に内方に倒壊するのを防ぐ。柔軟な流体充填インプラント320A〜320Cは、また、1つ又は複数の咽頭側壁に埋め込まれてもよい。図10には3つのインプラントが示されているが、他の実施形態では、より少数又はより多数のインプラントが使用されてもよい。特定の実施形態では、図10に示されるインプラントのうちの1つ又は2つだけが咽頭壁に埋め込まれてもよい。
【0056】
図11を参照すると、一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステムが、非圧縮性流体で満たされた中央チャンバ426と、圧縮性流体で満たされた外側チャンバ428A〜428Dと、を有する柔軟な流体充填インプラント420を含む。柔軟な流体充填インプラント420は、X形構成を有する。中央チャンバ426は、水、食塩水、又は流動性ゲルなどの非圧縮性流体で満たされる。第1の柔隔膜430Aが、中央チャンバ426を第1の外側チャンバ428Aから分離し、第2の柔隔膜430Bが、中央チャンバ426を第2の外側チャンバ428Bから分離し、第3の柔隔膜430Cが、中央チャンバ426を第3の外側チャンバ428Cから分離し、第4の柔隔膜430Dが、中央チャンバ426を第4の外側チャンバ428Dから分離する。前述のように、インプラント420が、外力(例えば、弛緩した舌)により撓むか曲がるとき、中央チャンバ426内の非圧縮性流体434が、4つの柔隔膜430A〜430Dを、圧縮性流体を収容する外側チャンバ428A〜428D内に外方に動かす。これに応じて、外側チャンバ428A〜428D内の圧縮性流体436が圧縮され、外側チャンバ内の圧力がわずかに高くなってインプラント420の柔軟性がほんのわずか低下し、更なる屈曲の動きに対する抵抗が最小になる。
【0057】
図12を参照すると、一実施形態では、柔軟な流体充填インプラント520が、Y形構成を有する。インプラント520は、第1の脚527A、第2の脚527B及び第3の脚527Cを画定する中央チャンバ526を有する。中央チャンバ526は、食塩水、水、又は流動性ゲルなどの非圧縮性流体で満たされることが望ましい。柔軟な流体充填インプラント520は、充填柔隔膜530A〜530Cによって中央チャンバ526から分離されることが望ましい外側チャンバ528A〜528Cを有する。外側チャンバ528A〜528Cは、空気や窒素などの圧縮性流体で満たされることが望ましい。柔軟なインプラント520が、外力によって屈曲するとき、中央チャンバ528内の非圧縮性流体534が、柔隔膜432A〜432Cを外側チャンバ528A〜528C内に外方に動かし、外側チャンバ528A〜528C内の圧縮性流体536の体積が減少する。外側チャンバ528A〜1528C内の容積が減少するとき、外側チャンバ内の圧縮性流体が圧縮される。屈曲の大部分の間、圧縮性流体536は、更なる屈曲に対してほとんど又は全く抵抗を提供しない。かなり大きな屈曲の後でのみ、インプラントの剛性がかなり高まる。
【0058】
図13Aを参照すると、一実施形態では、柔軟なインプラント620が、中央チャンバ626と、中央チャンバ626を取り囲む外側チャンバ628と、を有する。中央チャンバ626は、非圧縮性流体634で満たされ、外側チャンバ628は、圧縮性流体636で満たされることが好ましい。柔軟なインプラント620が屈曲するとき、中央チャンバ626の物理的ひずみによって、外側チャンバ628内の容積が減少して外側チャンバ628内の圧縮性流体636が圧縮される。屈曲の大部分の間、圧縮性流体636は、更なる屈曲に対する抵抗をほとんど又は全く提供しない。外側チャンバ628内の圧縮性流体の著しい圧縮により、かなり大きな屈曲の際にだけインプラントの剛性がかなり高まる。
【0059】
図14を参照すると、一実施形態では、柔軟なインプラント720は、球形を有することが好ましい。柔軟な流体充填インプラント720は、中央チャンバ726と、中央チャンバ726を取り囲む外側チャンバ728と、を有する。中央チャンバ726は、非圧縮性流体734で満たされることが望ましい。外側チャンバ728は、圧縮性流体736で満たされることが望ましい。インプラント720が屈曲する際、中央チャンバ726は、物理的に変形されて、外側チャンバ728の容積が減少する。外側チャンバ728の容積が減少するとき、外側チャンバ728内の圧縮性流体736が圧縮され、最終的にインプラント720の柔軟性が小さくなる。
【0060】
図15を参照すると、一実施形態では、柔軟なインプラント820が、第1のチャンバ826と、第1のチャンバ826を取り囲む第2のチャンバ828と、を有する複合構造を有する。したがって、第1のチャンバ826は、第2のチャンバ828内に配置される。一実施形態では、第1のチャンバ826は、非圧縮性流体834で満たされ、第2のチャンバ828は、圧縮性流体836で満たされることが好ましい。柔軟なインプラント820に外力が加えられたとき、第1のチャンバ826の物理的ひずみによって、第2のチャンバ828内の容積が減少して第2のチャンバ828内の圧縮性流体836が圧縮される。屈曲の大部分の間、圧縮性流体836は、更なる屈曲に対する抵抗をほとんど又は全く提供しない。第2のチャンバ828内の圧縮性流体の大きな圧縮により、かなり大きな屈曲の際にのみインプラントの剛性がかなり高まる。代替実施形態では、第1のチャンバ826は、圧縮性流体で満たされてもよく、第2のチャンバ828は、非圧縮性流体で満たされてもよい。
【0061】
本発明は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群及び呼吸低下を治療するのに用いられる従来技術の方法及び装置に優る多くの利点を提供する。まず、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、侵襲が最低限の単純な外科的手技を提供する。典型的には、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、外来処置の間に利用することができる。加えて、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群及び呼吸低下の治療の即効性及び長期的結果の両方を提供する。更に、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、かなり高い患者コンプライアンスを必要としない。
【0062】
更に、開示される装置は、気道の軟組織に十分な支持を提供し、会話や嚥下などの覚醒中の筋活動において軟組織に大きな力を及ぼさない。装置の屈曲は、インプラントの寸法を増大させず、それにより、隣接組織の圧縮又は組織平面の望ましくない切開が最小限になる。
【0063】
更に、本発明は、下顎などの固定された硬質構造に舌を固定しない。これにより、本発明は、嚥下や会話にほとんど影響を及ぼさず、それにより、先行技術の方法、システム及び装置を上回る大きな改善が提供される。本発明はまた、好ましくは、長期的な生物適合性を有する材料を用いる。
【0064】
本明細書に開示した様々な実施形態はヒトでの使用に関連しているが、全ての哺乳動物、及び気道を有する全ての動物内で使用できることが想定される。更に、本明細書に開示された方法、システム及び装置は、生体適合性である任意の材料、並びに装置が埋め込まれた後の拒絶反応を最小限にする、組織の内部成長を促進する、粘膜層の形成を促進する、及び身体による装置の許容を改善する任意の溶液又は構成成分を組み込むことができる。
【0065】
本明細書に使用される項目は整理目的のものであり、本明細書又は請求項の範囲を制限するために使用することを意図したものではない。本出願全体に使用される用語「〜得る(may)」は、許可の意味(即ち、その可能性を有するという意味)で使用されるものであり、命令の意味(即ち、しなければならないという意味)ではない。同様に、「含む(include、including、及びincludes)」は、それらを含むが限定されないことを意味する。理解を容易にするために、可能な場合には、図に共通の同様要素を指定するために、同様の参照番号が使用される。
【0066】
前述の事項は、本発明の実施形態に向けられているが、本発明の基本的範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態、及び更なる実施形態を考案することができる。したがって、本発明の範囲は、添付の「特許請求の範囲」に明記されるようにのみ限定される。
【0067】
〔実施の態様〕
(1) 非圧縮性流体を収容する第1のチャンバと、
圧縮性流体を収容する第2のチャンバと、
前記第1と第2のチャンバを分離する柔隔膜と、を含み、前記第1のチャンバ内の前記非圧縮性流体が、前記柔隔膜を介して前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体と連通する、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント。
(2) 前記第1のチャンバが、前記インプラントの屈曲中に一定のままの第1の容積を有し、前記第2のチャンバが、前記インプラントの屈曲中に変化する第2の容積を有する、実施態様1に記載のインプラント。
(3) 前記柔隔膜が、前記第2のチャンバ内に拡張可能で、前記第2のチャンバの前記第2の容積を減少させ、前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体を圧縮する、実施態様2に記載のインプラント。
(4) 前記第1のチャンバに外力を加えることにより、前記第2のチャンバ内に前記柔隔膜が拡張されて前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体が圧縮される、実施態様1に記載のインプラント。
(5)
前記インプラントが、生体適合性高分子材料又は生体適合性エラストマ材料を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(6) 前記第1のチャンバ内の前記非圧縮性流体が、液体、水、食塩水及び流動性ゲルからなる群から選択される、実施態様1に記載のインプラント。
(7) 前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体が、気体、空気、及び窒素からなる群から選択される、実施態様1に記載のインプラント。
(8) 前記インプラントが、患者の前後軸、横軸、垂直軸、若しくは水平軸と位置合わせ可能な長手方向軸、又は前記患者の前記前後軸、横軸、垂直軸、若しくは水平軸に対して傾斜した長手方向軸を有する、実施態様1に記載のインプラント。
(9) 前記第1と第2のチャンバの一方が、前記第1と第2のチャンバの他方の中に配置された、実施態様1に記載のインプラント。
(10) 前記インプラントが、中咽頭気道の軟組織に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
【0068】
(11) 前記インプラントが、舌、軟口蓋、又は咽頭壁に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(12) 非圧縮性流体を収容する中央チャンバと、
前記中央チャンバの第1端と隣接配置され、第1の圧縮性流体を収容する第1の外側チャンバと、
前記中央チャンバの前記第1端と前記第1の外側チャンバを分離する第1の柔隔膜と、
前記中央チャンバの第2端と隣接配置され、第2の圧縮性流体を収容する第2の外側チャンバと、
前記中央チャンバの前記第2端と前記第2の外側チャンバを分離する第2の柔隔膜と、を有する、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント。
(13) 前記中央チャンバ内の前記非圧縮性流体が、前記第1の柔隔膜を介して前記第1の圧縮性流体と連通し、前記第2の柔隔膜を介して前記第2の圧縮性流体と連通する、実施態様12に記載のインプラント。
(14) 前記第1のチャンバが、前記インプラントに外力が加えられたときに一定のままの第1の容積を有し、前記第1と第2の外側チャンバが、前記インプラントに前記外力が加えられたときに変化可能なそれぞれの容積を有する、実施態様12に記載のインプラント。
(15) 前記第1の柔隔膜が、前記第1の外側チャンバ内に拡張可能で、前記第1の外側チャンバの前記容積を減少させ、前記第1の外側チャンバ内の前記第1の圧縮性流体を圧縮し、前記第2の柔隔膜が、前記第2の外側チャンバ内に拡張可能で、前記第2の外側チャンバの前記容積を減少させ、前記第2の外側チャンバ内の前記第2の圧縮性流体を圧縮する、実施態様12に記載のインプラント。
(16) 前記中央チャンバ内の前記非圧縮性流体が、液体、水、食塩水及び流動性ゲルからなる群から選択され、前記それぞれの第1と第2の外側チャンバ内の前記第1と第2の圧縮性流体が、気体、空気、及び窒素からなる群から選択される、実施態様12に記載のインプラント。
(17) 前記インプラントが、中咽頭気道の軟組織に埋め込み可能である、実施態様12に記載のインプラント。
(18) 中咽頭気道の軟組織に埋め込み可能な複数のインプラントを更に含む、実施態様17に記載のインプラント。
(19) 前記インプラントが、舌、軟口蓋、又は咽頭壁に埋め込み可能である、実施態様17に記載のインプラント。
(20) 前記インプラントが、屈曲するように適応され、前記非圧縮性流体と圧縮性流体とが協力して、初期の屈曲段階の間に屈曲に対してより少ない抵抗を提供し、更なる屈曲段階の間に屈曲に対してより大きい抵抗を提供する、実施態様12に記載のインプラント。
【0069】
(21) 非圧縮性流体を収容する第1の柔軟なチャンバであって、インプラントの屈曲中に一定のままの第1の容積を画定する第1のチャンバと、
圧縮性流体を収容する第2のチャンバであって、前記インプラントの屈曲中に変化する第2の容積を画定する第2のチャンバと、
前記第1と第2のチャンバを分離する柔隔膜と、を有し、前記第1のチャンバ内の前記非圧縮性流体が、前記柔隔膜を介して前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体と連通する、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント。
(22) 前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体が、初期の屈曲段階の間に屈曲に対してより少ない抵抗を提供し、後の屈曲段階の間に屈曲に対してより大きい抵抗を提供する、実施態様21に記載のインプラント。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、睡眠障害の治療に関し、より具体的には閉塞型睡眠時無呼吸症を患っている患者を治療するためのシステム、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞型睡眠時無呼吸症(OSA)は、気道の閉塞によって引き起こされ、通常は、睡眠中に喉の軟組織が倒壊及び閉鎖したときに発生する。閉塞は、喉頭腔の一部分に起こる可能性があり、咽頭の後壁に対する舌の倒壊、咽頭側壁の倒壊、及び舌の崩落と軟口蓋、詳細には口蓋垂を含む軟口蓋の後部の衝突との組み合わせによって形成された閉鎖を含むことがある。それぞれの無呼吸事象の間、脳はこの病人を覚醒させて呼吸の再開を開始させる。しかしながら、この種の睡眠は、極めて断片化されており、質が低い。
【0003】
National Institutes of Healthによれば、OSAは1200万人を超える米国人を侵している。処置しないでおくと、OSAは、高血圧、心臓血管疾患、体重増加、性交不能症、頭痛、記憶障害、仕事への支障、及び/又は自動車事故を引き起こす場合がある。OSAの重篤性にも関わらず、公衆及び医療専門家の間での一般的な認識の欠如により、大多数のOSA患者が未診断及び未処置のままとなっている。
【0004】
OSAの処置に向けた多大な努力が為されている。例えば、いびき及び閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するために軟口蓋を電気的に刺激するための装置が、米国特許第5,284,161号及び同第5,792,067号に開示されている。これらの装置の使用は、厳しい使用節制を辛抱強く遵守することを必要とし、睡眠中の患者を不快にし、その結果患者を繰り返し目覚めさせるので、賛否入り交じった結果となっていた。
【0005】
一般に持続的気道陽圧法(CPAP)と呼ばれる別の処置は、特別に設計された鼻マスク又は枕を通して空気を患者の気道内に送達する。患者が吸い込むときに空気の流れが正圧を形成して、気道を開いたままに維持する。CPAPは、いびき及び閉塞型睡眠時無呼吸症を緩和するために有効な非外科的治療であると多くの人々によって考えられているが、患者は、腫脹、鼻の乾燥、及びドライアイなど、マスク及びホースにより生じる不快感についての不満を訴えている。その結果、CPAPに関する患者のコンプライアンスは約40%のみである。
【0006】
OSAの処置には、外科的処置も使用されている。そのような処置の1つは口蓋垂口蓋咽頭形成術と呼ばれ、舌と咽頭壁との間を粗動させる軟口蓋の能力を低減するために、軟口蓋の後縁を約2cm除去するものである。別の手技では、手術用レーザーを使用して軟口蓋の表面上に瘢痕組織を形成し、この瘢痕組織は軟口蓋の柔軟性を低下させて、いびき及び/又は気道の閉鎖を低減する。一般に焼灼支援口蓋硬化手術(CAPSO)と呼ばれる更に別の処置は、局所麻酔下で行なわれる院内処置であり、軟口蓋粘膜の中央帯が除去され、口蓋を補強するために傷が治療される。
【0007】
上述されたもののような外科的手技は、引き続き問題を有している。具体的には、外科的に治療される組織領域(即ち、口蓋組織の除去又は口蓋組織の瘢痕)は、患者の症状を治療するのに必要な領域より大きいことが多い。加えて、上述した外科的手技は、多くの場合苦痛を与え、長い不快な治癒期間を要する。例えば、軟口蓋の瘢痕組織は、患者に持続的な刺激を与える場合がある。その上、上記の手技は、副作用の事象において元に戻すことができない。
【0008】
OSA治療のためのもう1つの外科的手技では、組織内にインプラントされる数個の編組PET円筒を用い、舌又は口蓋垂の組織をより堅く、屈曲しにくいものにする。Restore Medical(St.Paul,MN)から販売されているPillar(商標)口蓋インプラントシステムは、編組ポリエステルフィラメントの円筒形エレメントからなり、軽度〜中程度のOSAに罹患している患者において、気道閉塞の事象を減らすために、これを軟口蓋内に埋め込む。Pillar装置の使用によって、円筒形エレメントの押し出し、感染、及び患者の苦痛を含む副作用が生じることがある。
【0009】
InfluENT(Concord,NH)によって商標「REPOSE(商標)」で販売されている別のインプラントシステムは、口腔底の下顎骨の後面に挿入されるチタン骨ネジを使用する。縫合糸のループを舌根に通し、下顎骨ネジに取り付ける。Repose(商標)手技は、舌根の懸吊又はハンモックの状態を達成して、睡眠中に舌根が逸脱しないようにする。しかしながら、覚醒状態の間に舌が活発に活動することに起因して、この装置の縫合要素は舌に対する「チーズカッター」としての働きをする場合があり、装置故障の原因となり、その後の除去を必要とする。
【0010】
OSAを処置する別の試みは、補助気道を形成して、主気道の詰まった部分にバイパスを形成することを含む。同一出願人による米国特許出願第12/182,402号(2008年7月30日出願)(この開示は参考として本明細書に組み込まれる)の1つの実施形態において、補助気道は、咽頭の咽頭壁の下に細長い導管を埋め込むことによって形成される。細長い導管は、咽頭の第1の領域と連通する近位端と、咽頭の第2の領域と連通する遠位端と、咽頭の中咽頭領域にバイパスを形成するために咽頭壁の下に延びる中間部分と、を有する。
【0011】
OSAの処置には、磁石も使用されている。例えば、その開示が本願にて参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による2008年7月31日出願の米国特許出願第12/183,955号の一実施形態では、磁石インプラントは、骨アンカーと、骨アンカーに結合された第1の磁石と、舌アンカーと、舌アンカーに結合された第2の磁石と、第1の磁石と第2の磁石とを整合し、それにより磁石間に反発力が生成されて第2の磁石を第1の磁石から離し、第2の磁石を骨アンカーに向かって追い立てる支持体と、を含む。支持体は、第1の磁石を骨アンカーから一定の距離に維持し、第1の磁石を第2の磁石と整合し、第1の磁石及び第2の磁石の移動を案内する。‘955の出願の1つ以上の実施形態に開示されている磁石インプラントは、堅い停止(hard stop)を有するインプラントを使用する際に見られる「チーズカッター」効果を避けるよう堅い停止を有さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の進歩にも関わらず、長期間の有効な結果を提供し、患者のコンプライアンスを促進し、患者の不快感を最小にする低侵襲的手法によってOSAを治療するための更に別のシステム、装置及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントは、非圧縮性流体を収容する第1のチャンバと、圧縮性流体を収容する第2のチャンバと、第1と第2のチャンバを分離する柔隔膜と、を有する。第1のチャンバ内の非圧縮性流体は、柔隔膜を介して第2のチャンバ内の圧縮性流体と連通する。一実施形態では、第1のチャンバは、インプラントの屈曲中に一定のままの第1の容積を有し、第2のチャンバは、インプラントの屈曲中に変化する第2の容積を有する。一実施形態では、柔隔膜は、第2のチャンバ内に拡張可能で、第2のチャンバの第2の容積を減少させ、第2のチャンバ内の圧縮性流体を圧縮する。第1のチャンバに外力を加えることにより、第2のチャンバ内に柔隔膜が拡張されて、第2のチャンバ内の圧縮性流体が圧縮されることが好ましい。
【0014】
本明細書に開示されるインプラントは、睡眠中に組織を制御し、組織が倒壊するのを防ぐために中咽頭気道の軟組織内に埋め込むように適応されることが望ましい。インプラントは、舌、軟口蓋、又は咽頭壁内に埋め込み可能でもよい。一実施形態では、複数のインプラントが使用されてもよい。一実施形態では、舌などの第1の軟組織の場所に1つ又は複数のインプラントが埋め込まれてもよく、軟口蓋や咽頭壁などの第2の軟組織の場所に1つ又は複数のインプラントが埋め込まれてもよい。
【0015】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントが、耐久性のある生体適合性の高分子又はエラストマ材料で作製されることが好ましい。一実施形態では、第1のチャンバ内の非圧縮性流体は、液体、水、食塩水又は流動性ゲルでよい。第2のチャンバ内の圧縮性流体は、窒素又は空気などの気体でよい。
【0016】
一実施形態では、インプラントは、患者の前後軸、横軸、垂直軸又は水平軸と位置合わせ可能な長手方向軸を有することが好ましい。一実施形態では、インプラントの長手方向軸は、患者の前後軸、横軸、垂直軸、又は水平軸のうちの1つに対して傾斜してもよい。利用されるインプラントの数と、インプラントの特性の配置、角形成(angulation)及び/又は向きは、患者の特定の組織支持需要に依存することが好ましい。
【0017】
一実施形態では、インプラントは、実質的に直線形状と湾曲形状との間で屈曲するように適応される。非圧縮性流体と圧縮性流体は、初期の屈曲段階で屈曲に対してより少ない抵抗を提供し、後の方の屈曲段階で屈曲に対してより大きい抵抗を提供するように動作することが望ましい。
【0018】
一実施形態では、インプラントは、曲線のような予備成形された形状と直線状態の間で屈曲するように適応される。
【0019】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントは、非圧縮性流体を収容する中央チャンバと、中央チャンバの第1端と隣接配置され。第1の圧縮性流体を収容する第1の外側チャンバと、中央チャンバの第1端と第1の外側チャンバを分離する第1の柔隔膜と、を有する。インプラントは、中央チャンバの第2端に隣接配置され、第2の圧縮性流体を収容する第2の外側チャンバと、中央チャンバの第2端と第2の外側チャンバを分離する第2の柔隔膜と、含むことが望ましい。
【0020】
一実施形態では、中央チャンバ内の非圧縮性流体は、第1の柔隔膜を介して第1の圧縮性流体と連通し、第2の柔隔膜を介して第2の圧縮性流体と連通することが好ましい。第1のチャンバは、インプラントに外力が加えられたときに一定のままの第1の容積を有し、第1と第2の外側チャンバは、インプラントに外力が印加されたときに変化可能なそれぞれの容積を有することが好ましい。
【0021】
一実施形態では、第1の柔隔膜は、第1の外側チャンバ内に拡張可能で、第1の外側チャンバの容積を減少させ、第1の外側チャンバ内の第1の圧縮性流体を圧縮し、第2の柔隔膜は、第2の外側チャンバ内に拡張可能で、第2の外側チャンバの容積を減少させ、第2の外側チャンバ内の第2の圧縮性流体を圧縮することが望ましい。外側チャンバ内の隔膜の変形は、装置の外部形状を大きくすることなく容積変化に適応する。
【0022】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントは、非圧縮性流体を収容する第1の柔軟なチャンバと、インプラントの屈曲中に一定のままの第1の容積を画定する第1のチャンバと、圧縮性流体を収容する第2のチャンバと、を含み、第2のチャンバは、インプラントの屈曲中に変化する第2の容積を画定する。インプラントは、第1と第2のチャンバを分離する柔隔膜を含み、それにより、第1のチャンバ内の非圧縮性流体が、柔隔膜を介して第2のチャンバ内の圧縮性流体と連通することが好ましい。一実施形態では、第2のチャンバ内の圧縮性流体は、屈曲の大部分の間に屈曲に対してより小さい抵抗を提供し、後方の屈曲段階で屈曲に対してより大きい抵抗を提供する。更に、第2のチャンバの圧縮性流体の圧縮は、装置全体の延長なしに装置の湾曲に適応する。一実施形態では、インプラントを湾曲させるのに必要な力は、インプラントの初期の屈曲の際には比較的小さく一定のままであり、屈曲に対する抵抗力は、インプラントの更なる屈曲の際に大幅により急速に増大する。
【0023】
一実施形態では、柔隔膜が、第2のチャンバ内に拡張するとき(例えば、インプラントが屈曲する際)、圧縮性流体の圧力レベルは、屈曲の大部分の間、インプラントの剛性を維持する。圧縮性流体の圧力レベルが低下するとき(例えば、インプラントが真っすぐになる際)、インプラントの剛性が低下する。
【0024】
一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントは、弁を備えていなくてもよく、圧縮されたときに1つの隔室から装置の膨張性領域内に流体を移動するだけでもよい。この特定の実施形態では、インプラント装置は、配置されたときにすぐに支持を提供することが好ましいが、隔室の膨張性領域は、流体の動きに対する抵抗を制御し、これにより、曲げられた固体材料内の変形への依存なしに装置の拡張された制御可能な弾性応答を提供する。
【0025】
一実施形態では、インプラントは、組織内殖を促進するように適応された面を有してもよい。組織内殖促進面は、テクスチャ面、多孔質面、網目状面、メッシュ面、フリース面、及び骨又は組織内殖を誘導するハイドロキシアパタイトなどの被覆を含む、外面の群れから選択されることが望ましい。
【0026】
本発明は、如何なる特定の動作原理によっても限定されないが、インプラントは、先行技術の装置を上回る幾つかの利点を提供すると考えられる。最初に、インプラントは、効果的な結果が得られない場合に患者から除去されてもよい。次に、インプラントは、患者が眠っているときに中咽頭気道の軟組織に対して必要最小限の支持を提供することが好ましい。インプラントが、大きく撓んだときに類似の荷重を提供するように作製されるので、会話又は嚥下に影響を及ぼす可能性が最小である。更に、本発明のインプラントは、インプラントが組織を引き裂いたり貫通したりする可能性を最小にするために、堅い固定点を必要とせずに軟組織の形状を制御することが好ましい。
【0027】
睡眠中に強い嚥下があった場合、インプラントは、嚥下を可能にするように一時的に変形することができる。嚥下と関連した筋活動が沈静化した後で、インプラントは、弛緩した舌の支持と再成形を提供するように好ましい形状を回復することが好ましい。
【0028】
一実施形態では、インプラントは、埋め込み装置の患者の自覚を最小限にするために、柔軟フィルム材料から製造される。
【0029】
本発明のこれら及びその他の好ましい実施形態は、下記に詳しく記述される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】鼻腔及び咽頭を含む人頭の断面図。
【図2】正常な呼吸中のヒトの鼻腔及び咽頭の断面図。
【図3】閉塞型睡眠時無呼吸症の発現時のヒトの鼻腔及び咽頭の断面図。
【図4A】本発明の一実施形態による、閉塞型睡眠時無呼吸症の治療用のインプラント。
【図4B】本発明の一実施形態による屈曲後の図4Aのインプラント。
【図5A】本発明の一実施形態による舌に埋め込まれた図4Aと図4Bのインプラント。
【図5B】インプラントが屈曲中の図5Aのインプラント。
【図6】図4Aに示されるインプラントと従来のインプラントに関して抵抗力を屈曲の関数としてプロットしたグラフ。
【図7A】本発明の一実施形態による軟口蓋に埋め込まれた図4Aのインプラント。
【図7B】インプラントが屈曲中の図7Aのインプラント。
【図8】本発明の一実施形態による舌に横方向に埋め込まれた一対の柔軟なインプラントを含む、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステム。
【図9】本発明の一実施形態による軟口蓋に横方向に埋め込まれた柔軟なインプラントを含む、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステム。
【図10】本発明の一実施形態による咽頭後壁に横方向に埋め込まれたインプラントを含む、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステム。
【図11】本発明の一実施形態による、閉塞型睡眠時無呼吸症の治療用のインプラント。
【図12】本発明の別の実施形態による閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント。
【図13A】本発明の一実施形態による閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントの上面図。
【図13B】図13Aに示されるインプラントの断面図。
【図14】本発明の別の実施形態による閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためにインプラントの断面図。
【図15】本発明の一実施形態による閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、鼻腔N、硬口蓋HPの骨B、後端に口蓋垂UVを有する軟口蓋SP、口腔M、舌T、気管TR、喉頭蓋EP、食道ES、及び咽頭後壁PPWを含む解剖学的構造を有する人頭の断面図を示す。
【0032】
人体において、鼻腔Nと喉頭LXとの間の空気で満たされた空隙は、上気道と呼ばれる。睡眠障害を伴う上気道の最も重要な部分は咽頭PXである。図2を参照すると、咽頭は3つの異なる解剖学的レベルを有する。上咽頭NPは、鼻腔Nの後部に位置する咽頭の上部部分である。中咽頭OPは、軟口蓋SP、喉頭蓋EP、及び舌Tの後部の曲線を含む、咽頭の中間部分である。下咽頭HPは、中咽頭OPの軟組織の下方に位置する咽頭の下部部分である。中咽頭OPは、空気流のための空隙が少なくなる軟組織構造の高率発生に起因して倒壊する可能性が最も高い咽頭部分である。下咽頭HPは、喉頭の開口の下方及び喉頭の後方に位置し、食道まで延びる。
【0033】
当業者には周知であるように、軟口蓋及び舌は共に、柔軟性のある構造体である。軟口蓋SPは、鼻腔Nと口Mとの間に障壁を提供する。多くの場合、軟口蓋SPは必要以上に長く、舌Tの後部と咽頭後壁PPWとの間において相当の距離を延びる。軟口蓋の中央後端は、口蓋垂と呼ばれ、口蓋垂は、舌の後部の上の軟口蓋から下方に延びる軟組織である。
【0034】
睡眠中は体全体の筋肉が弛緩するが、呼吸器系の筋肉のほとんどは活性状態を維持する。吸入時に、横隔膜は収縮し、陰圧に空気Aを鼻腔N及び口Mの中まで引き込ませる。次いで、空気は咽頭PXを通過して、気管TRを介して肺内に流れる。陰圧は、上気道の組織をわずかに変形させ、これにより気道経路が狭くなる。無呼吸の患者では、軟口蓋SP、舌T、及び/又は喉頭蓋EPは、咽頭後壁PPWにぶつかって倒壊して、気管の中への空気流を遮断する。気道が狭まるとき、咽頭を通る気流が乱れ、これにより軟口蓋SPが振動し、一般にいびきとして知られる音を生成する。
【0035】
睡眠中、ヒトは、典型的には、空気流の短時間の閉塞及び/又は気管及び肺の中に入る空気流の量のわずかな低下を経験する。10秒を超える空気流の閉塞は、無呼吸と見なされる。50%を超える空気流の減少は、呼吸低下と見なされる。睡眠障害の重症度は、睡眠1時間の間に発生する無呼吸及び呼吸低下の回数で判断される。
【0036】
無呼吸又は呼吸低下が1時間に5回を超えて発生する場合、ほとんどの医療関係者は、その個人が上気道の抵抗問題を有していると診断する。これらの患者の多くは、日中の眠気、抑うつ症、及び集中力の欠如などの睡眠障害に関連した症状を呈することが多い。
【0037】
睡眠1時間の間に無呼吸又は呼吸低下が10回以上発生する人は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群を有すると診断される。気道が閉塞すると、個人は、無理に吸入するための試みを繰り返し行う。これらの症状の発現の多くは無音であり、個人が無理に空気を肺の中に引き込むときの腹部及び胸壁の動きによって特徴付けられる。典型的には、無呼吸の症状の発現は1分以上続く可能性がある。この間、血中の酸素濃度は低下する。最終的には、閉塞は、大きないびきをかいている人、又は窒息感で目覚めた患者によって克服されることがある。
【0038】
図2を参照すると、個人が起きている場合、舌Tの後部及び軟口蓋SPは、舌Tの後部及び軟口蓋SPのそれぞれの内部筋肉のために、それらの形状及び緊張を維持している。その結果、咽頭を通る気道Aは開いたままであり、遮るものはない。しかしながら、睡眠中、筋肉の緊張が低下し、舌後面及び軟口蓋がより柔軟及び膨張性となる。
【0039】
図3を参照すると、舌後面及び軟口蓋の形状を維持し、単独で又は群としてそれらを定位置に維持する正常な筋肉の緊張がなくなり、舌Tの後面、喉頭蓋EP及び軟口蓋SPは容易に倒壊して気道Aを遮断する傾向がある。睡眠中に、舌Tの後端が、鼻腔Nと気管TRの上端との間で気道Aを塞ぐことがある。また、軟口蓋SPは弛緩し、口蓋垂UVを舌Tの後部と咽頭後壁PPWとの間で摺動させることがある。更に、咽頭PXの後壁と側壁の軟組織内の弛緩した筋組織が、呼吸中の低い吸気圧により軟組織を内方に倒壊させることがある。
【0040】
図4Aを参照すると、本発明の一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント20が、第1端22、第2端24、及び第1端22と第2端24との間でインプラントの長さに沿って延在する長手方向軸A1を有する。インプラント20は、ヒト用の耐久性があり、安全な1つ又は複数の生体適合性非吸収性材料で作製されることが望ましい。インプラント20は、シリコーン、エラストマ材料及び/又はポリウレタンを含む様々な生体適合材料で作製することができる。一実施形態では、インプラント20は、柔軟であることが好ましく、1つ又は複数の流体で少なくとも部分的に満たされてもよい。外力を受けないとき、インプラント20は、通常、図4Aに示される実質的に直線及び/又は非屈曲形状を保持する。
【0041】
一実施形態では、インプラント20は、中央チャンバ26と、1対の外側チャンバ28A、28Bを有することが好ましい。一実施形態では、インプラント20は、中央チャンバ26を第1の外側チャンバ28Aから分離する第1の柔隔膜30と、中央チャンバ26を第2の外側チャンバ28Bから分離する第2の柔隔膜32と、を有することが好ましい。一実施形態では、中央チャンバ26は、液体、水、食塩水、流動性ゲルなどの非圧縮性流体34で満たされることが望ましい。外側チャンバ28A、28Bは、真空、又は空気、気体、窒素、若しくはこれらの組み合わせのような低圧圧縮性流体36A、36Bで満たされることが望ましい。
【0042】
図4Bを参照すると、一実施形態では、外力を受けたとき、インプラント20は、長手方向軸A1−A1に対して屈曲することがある。一実施形態では、インプラント20が屈曲するとき、非圧縮性流体34を収容するインプラント20の中央チャンバ26が、延長及び/又は変形されることが望ましい。中央チャンバ26が延長及び/又は変形されたとき、中央チャンバ26内の非圧縮性流体26は、第1と第2の柔隔膜30、32をそれぞれの第1と第2の外側チャンバ28A、28Bに拡張させる。柔隔膜30、32が、外側チャンバ28A、28B内に外方に拡張するとき、それぞれの外側チャンバ28A、28B内にある圧縮性流体36A、36Bが圧縮される。外側チャンバ28A、28B内の流体36A、36Bの圧縮により、外側チャンバ内の圧力が高くなり、これによりインプラント20の柔軟性が最小限に低下する。
【0043】
図4Aと図4Bに示され上述された柔軟な流体で満たされたインプラントは、舌、軟口蓋、及び/又は咽頭壁などの上気道の軟組織に埋め込まれてもよい。複数の柔軟な流体インプラントを利用して、閉塞型睡眠時無呼吸症と関連した症状を治療することができる。1つ又は複数のインプラントが、患者の前後軸、垂直軸、横軸又は水平軸と位置合わせされてもよい。また、1つ又は複数のインプラントが、患者の前後軸、垂直軸、横軸又は水平軸に対して任意の選択された角度で延在するように位置決めされてもよい。
【0044】
図5Aを参照すると、一実施形態では、本明細書に記載されたような柔軟なインプラント20は、舌Tの根部に埋め込むことができる。一実施形態では、柔軟なインプラント20は、舌Tの前後軸A−Pに沿って延在することが望ましい。図5Aには1個のインプラントだけが示されているが、一実施形態では、2つ以上のインプラントが舌に埋め込まれてもよい。
【0045】
図5Bを参照すると、睡眠中に、上気道の筋肉が弛緩することがある。その結果、舌Tの根部が弛緩し、対向する咽頭後壁PPWに近づくことがある。舌Tの後部が咽頭後壁に近づくとき、上気道Aが閉じて閉塞型睡眠時無呼吸症を発生させることがある。
【0046】
一実施形態では、睡眠中に舌Tが弛緩するとき、舌の後部が弛緩し、対向する咽頭後壁PPWに近づき、それにより気道Aが少なくとも部分的に閉じることがある。弛緩した舌Tによってインプラント20に加わる力に応じて、図5Bに示されるように、インプラント20が屈曲することがある。インプラント20の屈曲によって、中央チャンバ26が長くなり、これにより、第1と第2の柔隔膜30、32が、それぞれの外側チャンバ28A、28B内に拡張されることが好ましい。第1と第2の柔隔膜32、34が、外側チャンバ28A、28B内に拡張するとき、圧縮性流体36A、36Bの外側チャンバ28A、28Bが圧縮され、それにより、流体36A、36Bの圧力がわずかに高まり、インプラント20の柔軟性が最小限に低下する。このとき、インプラントは、舌が咽頭後壁PPWの方に弛緩するのを防ぐのに十分な抵抗を提供して、閉塞型睡眠時無呼吸症の発生を防ぐ。覚醒状態では、インプラントを変形させるのに必要な力は、典型的な変形にわたって似ているので、舌の通常の筋肉運動は、インプラントによってわずかしか影響を受けない。
【0047】
図5Aと図5Bは、インプラント20が、舌内に埋め込まれ、ほぼ患者の前後軸に沿って延在する本発明の一実施形態を示す。しかしながら、他の実施形態では、インプラントは、前後軸を横切る方向に埋め込まれてもよい。一実施形態では、柔軟な流体充填インプラント20は、横方向に及び患者の前後軸に対して実質的に垂直に、延在する長手方向軸を有してもよい。また、インプラントは、患者の垂直軸、患者の水平軸、又は垂直と水平との間の任意の選択された角度に延在するように埋め込まれてもよい。
【0048】
図6は、従来のインプラント(点線としてプロットされた)と本出願で開示されるインプラント(実線でプロットされた)に関して、予想される抵抗力を屈曲の関数として示すグラフである。図6のグラフに示されるように、従来のインプラントが屈曲するとき、インプラントは、屈曲が大きくなるほど抵抗力が大きくなるような線形経路に沿って屈曲に抵抗する。材料の弾性限界を超え、塑性限界の範囲内の特定の程度の屈曲で、従来のインプラントによって提供される抵抗力は、ピークになり永久歪を持つ。
【0049】
これと対照的に、図6に示されるように、本出願で開示されるインプラントの屈曲力は、屈曲又は歪みの初期段階で比較的一定に屈曲し、屈曲の後の方の段階で屈曲しにくくなる。その結果、本発明のインプラントは、インプラントの受けた屈曲にほとんど抵抗を提供せず、かなり大きいインプラントの屈曲が生じるまであまり大きいレベルの抵抗は生じない。
【0050】
図6のグラフに示されるように、インプラント20を曲げている大部分の間、インプラントは比較的曲げ易く、更に舌の軟組織に倒壊を防ぐのに十分な支持を提供する。しかしながら、もっと顕著な撓みと曲げでは、インプラント20は、更なる屈曲に対する抵抗が大きくなる。
【0051】
本発明は、如何なる特定の動作原理によっても限定されないが、1つ又は複数の圧縮性チャンバを有するインプラントを使用することによって、応力歪み曲線に対する弾性応答が平坦になり、より大きい変位でも屈曲力を有効に比較的一定にできると考えられる。これにより、周囲の組織に対する力が一定に維持され、その結果、覚醒しているときの軟組織の動きが、加えられた力の増大を経験せず、それにより覚醒しているときにインプラントに気付きにくい。一実施形態では、圧縮性チャンバは、圧縮性流体隔室と関連した軸の部分の幾何学形状を大きくすることなく流体変形に対応することが望ましい。
【0052】
図7Aを参照すると、一実施形態では、柔軟なインプラント20は、本明細書に記載されているように、患者の軟口蓋SPに埋め込まれてもよい。図7Aに示される特定の実施形態では、単一の柔軟な流体充填インプラント20が、患者の硬口蓋HPの後部の軟口蓋SPの組織に埋め込まれる。患者が覚醒しているとき、軟口蓋SPは、図7Aに示されるような形状と形態を保持する。しかしながら、睡眠中、軟口蓋SPが弛緩し、図7Bに示されるように、軟口蓋SPの後端が、対向する咽頭後壁PPWに近づくことがある。軟口蓋SPの後端が、対向する咽頭後壁PPWに十分に近づく場合、上気道Aが、少なくとも部分的に閉塞又は閉鎖されて閉塞型睡眠時無呼吸症を発生させることがある。本発明は、如何なる特定の動作原理によっても限定されないが、本明細書に開示されるインプラントを軟口蓋SPに埋め込むことにより、インプラントが、軟口蓋SPの後端の咽頭壁PPWの方への更なる動きに抵抗するので、気道Aの閉鎖が防止されると考えられる。図7Bに示されるように、軟口蓋が弛緩するとき、柔軟なインプラント20は、その長手方向軸に対して撓んで曲がる。インプラント20が撓んで曲がるとき、中央チャンバ内の非圧縮性流体が、第1及び第2の柔隔膜を外側チャンバ内に拡張させて外側チャンバ内の圧縮性流体を圧縮し、それにより、インプラントの外部寸法を大きくすることなくインプラント20の屈曲力を維持するために外側チャンバ内の流体の圧力レベルが高くなる。また、インプラント20の低い柔軟性によって、軟口蓋SPが対向する咽頭後壁PPWの方に更に動くのが妨げられる。インプラントに荷重をかける筋短縮が完了すると、非圧縮性流体が隔室をその元の幾何学形状に戻して弛緩状態の舌を支持する。
【0053】
図8を参照すると、一実施形態では、2つの柔軟なインプラント120A、120Bが、舌Tの根部に埋め込まれる。柔軟なインプラント120A、120Bはそれぞれ、患者の前後軸に対して横方向に延在する長手方向軸を有することが望ましい。図8に示される実施形態は、如何なる特定の動作原理によっても限定されないが、1つ又は複数の横方向に延在する柔軟なインプラントを埋め込むことにより、舌Tの側部が支持されると考えられる。この埋め込み構成は、舌の1つ又は複数の側部が、患者の1つ又は複数の咽頭側壁の方に倒壊することに起因するOSA発生を有効に治療することがある。
【0054】
図9を参照すると、一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステムが、患者の軟口蓋SPに埋め込み可能な流体充填インプラント220を含む。埋め込まれた柔軟な流体充填インプラント220は、患者の前後軸と実質的に垂直な横方向に延在することが望ましい。横方向に延在するインプラント220は、軟口蓋の1つ又は複数の外側端が、対向する咽頭側壁に対して倒壊するのを防ぐことが望ましい。図9には1つのインプラント220だけが示されているが、他の実施形態は、軟口蓋SPに埋め込み可能な2つ以上の横方向に延在する柔軟なインプラントを含んでもよい。
【0055】
図10を参照すると、一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステムが、患者の咽頭後壁PPWに埋め込まれた1組の柔軟なインプラント320A、20B、320Cを含む。それぞれのインプラント320A〜320Cは、患者の前後軸に対して横方向に延在することが好ましい長手方向軸を有する。一実施形態では、柔軟なインプラント320A〜320Cは、咽頭後壁が、舌の根部及び/又は軟口蓋SPの方に内方に倒壊するのを防ぐ。柔軟な流体充填インプラント320A〜320Cは、また、1つ又は複数の咽頭側壁に埋め込まれてもよい。図10には3つのインプラントが示されているが、他の実施形態では、より少数又はより多数のインプラントが使用されてもよい。特定の実施形態では、図10に示されるインプラントのうちの1つ又は2つだけが咽頭壁に埋め込まれてもよい。
【0056】
図11を参照すると、一実施形態では、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのシステムが、非圧縮性流体で満たされた中央チャンバ426と、圧縮性流体で満たされた外側チャンバ428A〜428Dと、を有する柔軟な流体充填インプラント420を含む。柔軟な流体充填インプラント420は、X形構成を有する。中央チャンバ426は、水、食塩水、又は流動性ゲルなどの非圧縮性流体で満たされる。第1の柔隔膜430Aが、中央チャンバ426を第1の外側チャンバ428Aから分離し、第2の柔隔膜430Bが、中央チャンバ426を第2の外側チャンバ428Bから分離し、第3の柔隔膜430Cが、中央チャンバ426を第3の外側チャンバ428Cから分離し、第4の柔隔膜430Dが、中央チャンバ426を第4の外側チャンバ428Dから分離する。前述のように、インプラント420が、外力(例えば、弛緩した舌)により撓むか曲がるとき、中央チャンバ426内の非圧縮性流体434が、4つの柔隔膜430A〜430Dを、圧縮性流体を収容する外側チャンバ428A〜428D内に外方に動かす。これに応じて、外側チャンバ428A〜428D内の圧縮性流体436が圧縮され、外側チャンバ内の圧力がわずかに高くなってインプラント420の柔軟性がほんのわずか低下し、更なる屈曲の動きに対する抵抗が最小になる。
【0057】
図12を参照すると、一実施形態では、柔軟な流体充填インプラント520が、Y形構成を有する。インプラント520は、第1の脚527A、第2の脚527B及び第3の脚527Cを画定する中央チャンバ526を有する。中央チャンバ526は、食塩水、水、又は流動性ゲルなどの非圧縮性流体で満たされることが望ましい。柔軟な流体充填インプラント520は、充填柔隔膜530A〜530Cによって中央チャンバ526から分離されることが望ましい外側チャンバ528A〜528Cを有する。外側チャンバ528A〜528Cは、空気や窒素などの圧縮性流体で満たされることが望ましい。柔軟なインプラント520が、外力によって屈曲するとき、中央チャンバ528内の非圧縮性流体534が、柔隔膜432A〜432Cを外側チャンバ528A〜528C内に外方に動かし、外側チャンバ528A〜528C内の圧縮性流体536の体積が減少する。外側チャンバ528A〜1528C内の容積が減少するとき、外側チャンバ内の圧縮性流体が圧縮される。屈曲の大部分の間、圧縮性流体536は、更なる屈曲に対してほとんど又は全く抵抗を提供しない。かなり大きな屈曲の後でのみ、インプラントの剛性がかなり高まる。
【0058】
図13Aを参照すると、一実施形態では、柔軟なインプラント620が、中央チャンバ626と、中央チャンバ626を取り囲む外側チャンバ628と、を有する。中央チャンバ626は、非圧縮性流体634で満たされ、外側チャンバ628は、圧縮性流体636で満たされることが好ましい。柔軟なインプラント620が屈曲するとき、中央チャンバ626の物理的ひずみによって、外側チャンバ628内の容積が減少して外側チャンバ628内の圧縮性流体636が圧縮される。屈曲の大部分の間、圧縮性流体636は、更なる屈曲に対する抵抗をほとんど又は全く提供しない。外側チャンバ628内の圧縮性流体の著しい圧縮により、かなり大きな屈曲の際にだけインプラントの剛性がかなり高まる。
【0059】
図14を参照すると、一実施形態では、柔軟なインプラント720は、球形を有することが好ましい。柔軟な流体充填インプラント720は、中央チャンバ726と、中央チャンバ726を取り囲む外側チャンバ728と、を有する。中央チャンバ726は、非圧縮性流体734で満たされることが望ましい。外側チャンバ728は、圧縮性流体736で満たされることが望ましい。インプラント720が屈曲する際、中央チャンバ726は、物理的に変形されて、外側チャンバ728の容積が減少する。外側チャンバ728の容積が減少するとき、外側チャンバ728内の圧縮性流体736が圧縮され、最終的にインプラント720の柔軟性が小さくなる。
【0060】
図15を参照すると、一実施形態では、柔軟なインプラント820が、第1のチャンバ826と、第1のチャンバ826を取り囲む第2のチャンバ828と、を有する複合構造を有する。したがって、第1のチャンバ826は、第2のチャンバ828内に配置される。一実施形態では、第1のチャンバ826は、非圧縮性流体834で満たされ、第2のチャンバ828は、圧縮性流体836で満たされることが好ましい。柔軟なインプラント820に外力が加えられたとき、第1のチャンバ826の物理的ひずみによって、第2のチャンバ828内の容積が減少して第2のチャンバ828内の圧縮性流体836が圧縮される。屈曲の大部分の間、圧縮性流体836は、更なる屈曲に対する抵抗をほとんど又は全く提供しない。第2のチャンバ828内の圧縮性流体の大きな圧縮により、かなり大きな屈曲の際にのみインプラントの剛性がかなり高まる。代替実施形態では、第1のチャンバ826は、圧縮性流体で満たされてもよく、第2のチャンバ828は、非圧縮性流体で満たされてもよい。
【0061】
本発明は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群及び呼吸低下を治療するのに用いられる従来技術の方法及び装置に優る多くの利点を提供する。まず、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、侵襲が最低限の単純な外科的手技を提供する。典型的には、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、外来処置の間に利用することができる。加えて、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群及び呼吸低下の治療の即効性及び長期的結果の両方を提供する。更に、本明細書に開示される方法、システム及び装置は、かなり高い患者コンプライアンスを必要としない。
【0062】
更に、開示される装置は、気道の軟組織に十分な支持を提供し、会話や嚥下などの覚醒中の筋活動において軟組織に大きな力を及ぼさない。装置の屈曲は、インプラントの寸法を増大させず、それにより、隣接組織の圧縮又は組織平面の望ましくない切開が最小限になる。
【0063】
更に、本発明は、下顎などの固定された硬質構造に舌を固定しない。これにより、本発明は、嚥下や会話にほとんど影響を及ぼさず、それにより、先行技術の方法、システム及び装置を上回る大きな改善が提供される。本発明はまた、好ましくは、長期的な生物適合性を有する材料を用いる。
【0064】
本明細書に開示した様々な実施形態はヒトでの使用に関連しているが、全ての哺乳動物、及び気道を有する全ての動物内で使用できることが想定される。更に、本明細書に開示された方法、システム及び装置は、生体適合性である任意の材料、並びに装置が埋め込まれた後の拒絶反応を最小限にする、組織の内部成長を促進する、粘膜層の形成を促進する、及び身体による装置の許容を改善する任意の溶液又は構成成分を組み込むことができる。
【0065】
本明細書に使用される項目は整理目的のものであり、本明細書又は請求項の範囲を制限するために使用することを意図したものではない。本出願全体に使用される用語「〜得る(may)」は、許可の意味(即ち、その可能性を有するという意味)で使用されるものであり、命令の意味(即ち、しなければならないという意味)ではない。同様に、「含む(include、including、及びincludes)」は、それらを含むが限定されないことを意味する。理解を容易にするために、可能な場合には、図に共通の同様要素を指定するために、同様の参照番号が使用される。
【0066】
前述の事項は、本発明の実施形態に向けられているが、本発明の基本的範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態、及び更なる実施形態を考案することができる。したがって、本発明の範囲は、添付の「特許請求の範囲」に明記されるようにのみ限定される。
【0067】
〔実施の態様〕
(1) 非圧縮性流体を収容する第1のチャンバと、
圧縮性流体を収容する第2のチャンバと、
前記第1と第2のチャンバを分離する柔隔膜と、を含み、前記第1のチャンバ内の前記非圧縮性流体が、前記柔隔膜を介して前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体と連通する、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント。
(2) 前記第1のチャンバが、前記インプラントの屈曲中に一定のままの第1の容積を有し、前記第2のチャンバが、前記インプラントの屈曲中に変化する第2の容積を有する、実施態様1に記載のインプラント。
(3) 前記柔隔膜が、前記第2のチャンバ内に拡張可能で、前記第2のチャンバの前記第2の容積を減少させ、前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体を圧縮する、実施態様2に記載のインプラント。
(4) 前記第1のチャンバに外力を加えることにより、前記第2のチャンバ内に前記柔隔膜が拡張されて前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体が圧縮される、実施態様1に記載のインプラント。
(5)
前記インプラントが、生体適合性高分子材料又は生体適合性エラストマ材料を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(6) 前記第1のチャンバ内の前記非圧縮性流体が、液体、水、食塩水及び流動性ゲルからなる群から選択される、実施態様1に記載のインプラント。
(7) 前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体が、気体、空気、及び窒素からなる群から選択される、実施態様1に記載のインプラント。
(8) 前記インプラントが、患者の前後軸、横軸、垂直軸、若しくは水平軸と位置合わせ可能な長手方向軸、又は前記患者の前記前後軸、横軸、垂直軸、若しくは水平軸に対して傾斜した長手方向軸を有する、実施態様1に記載のインプラント。
(9) 前記第1と第2のチャンバの一方が、前記第1と第2のチャンバの他方の中に配置された、実施態様1に記載のインプラント。
(10) 前記インプラントが、中咽頭気道の軟組織に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
【0068】
(11) 前記インプラントが、舌、軟口蓋、又は咽頭壁に埋め込み可能である、実施態様1に記載のインプラント。
(12) 非圧縮性流体を収容する中央チャンバと、
前記中央チャンバの第1端と隣接配置され、第1の圧縮性流体を収容する第1の外側チャンバと、
前記中央チャンバの前記第1端と前記第1の外側チャンバを分離する第1の柔隔膜と、
前記中央チャンバの第2端と隣接配置され、第2の圧縮性流体を収容する第2の外側チャンバと、
前記中央チャンバの前記第2端と前記第2の外側チャンバを分離する第2の柔隔膜と、を有する、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント。
(13) 前記中央チャンバ内の前記非圧縮性流体が、前記第1の柔隔膜を介して前記第1の圧縮性流体と連通し、前記第2の柔隔膜を介して前記第2の圧縮性流体と連通する、実施態様12に記載のインプラント。
(14) 前記第1のチャンバが、前記インプラントに外力が加えられたときに一定のままの第1の容積を有し、前記第1と第2の外側チャンバが、前記インプラントに前記外力が加えられたときに変化可能なそれぞれの容積を有する、実施態様12に記載のインプラント。
(15) 前記第1の柔隔膜が、前記第1の外側チャンバ内に拡張可能で、前記第1の外側チャンバの前記容積を減少させ、前記第1の外側チャンバ内の前記第1の圧縮性流体を圧縮し、前記第2の柔隔膜が、前記第2の外側チャンバ内に拡張可能で、前記第2の外側チャンバの前記容積を減少させ、前記第2の外側チャンバ内の前記第2の圧縮性流体を圧縮する、実施態様12に記載のインプラント。
(16) 前記中央チャンバ内の前記非圧縮性流体が、液体、水、食塩水及び流動性ゲルからなる群から選択され、前記それぞれの第1と第2の外側チャンバ内の前記第1と第2の圧縮性流体が、気体、空気、及び窒素からなる群から選択される、実施態様12に記載のインプラント。
(17) 前記インプラントが、中咽頭気道の軟組織に埋め込み可能である、実施態様12に記載のインプラント。
(18) 中咽頭気道の軟組織に埋め込み可能な複数のインプラントを更に含む、実施態様17に記載のインプラント。
(19) 前記インプラントが、舌、軟口蓋、又は咽頭壁に埋め込み可能である、実施態様17に記載のインプラント。
(20) 前記インプラントが、屈曲するように適応され、前記非圧縮性流体と圧縮性流体とが協力して、初期の屈曲段階の間に屈曲に対してより少ない抵抗を提供し、更なる屈曲段階の間に屈曲に対してより大きい抵抗を提供する、実施態様12に記載のインプラント。
【0069】
(21) 非圧縮性流体を収容する第1の柔軟なチャンバであって、インプラントの屈曲中に一定のままの第1の容積を画定する第1のチャンバと、
圧縮性流体を収容する第2のチャンバであって、前記インプラントの屈曲中に変化する第2の容積を画定する第2のチャンバと、
前記第1と第2のチャンバを分離する柔隔膜と、を有し、前記第1のチャンバ内の前記非圧縮性流体が、前記柔隔膜を介して前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体と連通する、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント。
(22) 前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体が、初期の屈曲段階の間に屈曲に対してより少ない抵抗を提供し、後の屈曲段階の間に屈曲に対してより大きい抵抗を提供する、実施態様21に記載のインプラント。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非圧縮性流体を収容する第1のチャンバと、
圧縮性流体を収容する第2のチャンバと、
前記第1と第2のチャンバを分離する柔隔膜と、を含み、前記第1のチャンバ内の前記非圧縮性流体が、前記柔隔膜を介して前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体と連通する、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント。
【請求項2】
前記第1のチャンバが、前記インプラントの屈曲中に一定のままの第1の容積を有し、前記第2のチャンバが、前記インプラントの屈曲中に変化する第2の容積を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記柔隔膜が、前記第2のチャンバ内に拡張可能で、前記第2のチャンバの前記第2の容積を減少させ、前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体を圧縮する、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記第1のチャンバに外力を加えることにより、前記第2のチャンバ内に前記柔隔膜が拡張されて前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体が圧縮される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記インプラントが、生体適合性高分子材料又は生体適合性エラストマ材料を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記第1のチャンバ内の前記非圧縮性流体が、液体、水、食塩水及び流動性ゲルからなる群から選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体が、気体、空気、及び窒素からなる群から選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記インプラントが、患者の前後軸、横軸、垂直軸、若しくは水平軸と位置合わせ可能な長手方向軸、又は前記患者の前記前後軸、横軸、垂直軸、若しくは水平軸に対して傾斜した長手方向軸を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記第1と第2のチャンバの一方が、前記第1と第2のチャンバの他方の中に配置された、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記インプラントが、中咽頭気道の軟組織に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
前記インプラントが、舌、軟口蓋、又は咽頭壁に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項1】
非圧縮性流体を収容する第1のチャンバと、
圧縮性流体を収容する第2のチャンバと、
前記第1と第2のチャンバを分離する柔隔膜と、を含み、前記第1のチャンバ内の前記非圧縮性流体が、前記柔隔膜を介して前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体と連通する、閉塞型睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラント。
【請求項2】
前記第1のチャンバが、前記インプラントの屈曲中に一定のままの第1の容積を有し、前記第2のチャンバが、前記インプラントの屈曲中に変化する第2の容積を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記柔隔膜が、前記第2のチャンバ内に拡張可能で、前記第2のチャンバの前記第2の容積を減少させ、前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体を圧縮する、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記第1のチャンバに外力を加えることにより、前記第2のチャンバ内に前記柔隔膜が拡張されて前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体が圧縮される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記インプラントが、生体適合性高分子材料又は生体適合性エラストマ材料を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記第1のチャンバ内の前記非圧縮性流体が、液体、水、食塩水及び流動性ゲルからなる群から選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記第2のチャンバ内の前記圧縮性流体が、気体、空気、及び窒素からなる群から選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記インプラントが、患者の前後軸、横軸、垂直軸、若しくは水平軸と位置合わせ可能な長手方向軸、又は前記患者の前記前後軸、横軸、垂直軸、若しくは水平軸に対して傾斜した長手方向軸を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記第1と第2のチャンバの一方が、前記第1と第2のチャンバの他方の中に配置された、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記インプラントが、中咽頭気道の軟組織に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
前記インプラントが、舌、軟口蓋、又は咽頭壁に埋め込み可能である、請求項1に記載のインプラント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13B】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2013−509241(P2013−509241A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536860(P2012−536860)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/052644
【国際公開番号】WO2011/053462
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512080321)エシコン・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 151, U.S. Route 22, Somerville, NJ 08876, United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/052644
【国際公開番号】WO2011/053462
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512080321)エシコン・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 151, U.S. Route 22, Somerville, NJ 08876, United States of America
【Fターム(参考)】
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