閉塞空間におけるコンクリートの振動締固め装置および振動締固め工法
【課題】省力化に寄与することはもちろん、種々の大きさの閉鎖空間に対するコンクリート打設に汎用的に使用できる振動締固め装置および振動締固め工法を提供する。
【解決手段】上端部がコンクリート打設ホース4に接続され、下端部が鋼殻構造体1の閉鎖空間Aに挿入されるコンクリート打設管11と、このコンクリート打設管11の上端側に、その軸回りに揺動可能に基端部が軸着された、伸縮可能な複数の支持アーム14と、該支持アームの先端部にケーブル22を介して垂設され、前記鋼殻構造体1に予め形成された挿入口3を通して閉鎖空間Aに挿入されるバイブレータ本体15とを備えた振動締固め装置10を閉鎖空間Aに挿入し、バイブレータ本体15に取付けた2つのセンサ28により充填高さ監視しながら、本振動締固め装置10を所定距離ずつ上昇させて、コンクリートCの打設とバイブレータ本体15による加振とを行う。
【解決手段】上端部がコンクリート打設ホース4に接続され、下端部が鋼殻構造体1の閉鎖空間Aに挿入されるコンクリート打設管11と、このコンクリート打設管11の上端側に、その軸回りに揺動可能に基端部が軸着された、伸縮可能な複数の支持アーム14と、該支持アームの先端部にケーブル22を介して垂設され、前記鋼殻構造体1に予め形成された挿入口3を通して閉鎖空間Aに挿入されるバイブレータ本体15とを備えた振動締固め装置10を閉鎖空間Aに挿入し、バイブレータ本体15に取付けた2つのセンサ28により充填高さ監視しながら、本振動締固め装置10を所定距離ずつ上昇させて、コンクリートCの打設とバイブレータ本体15による加振とを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の閉鎖空間に充填されたコンクリートを振動締固めするための振動締固め装置および該振動締固め装置を用いて行う閉塞空間におけるコンクリートの振動締固め工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、沈埋函の床版や側壁は、鋼板により形成された鋼殻構造体の閉鎖空間にコンクリートを打設した複合構造となっている。そして、このような床版や側壁の製作に当たっては、外部から目視できない閉鎖空間を対象にコンクリートを充填することから、その充填をいかに確実にかつ効率よく行うかが重要な課題となる。そこで、例えば、特許文献1に記載の工法では、コンクリートとしてスランプフローが30〜55cmの中流動コンクリートを選択すると共に、閉鎖空間にバイブレータを挿入し、該バイブレータにより振動を加えながらコンクリートを閉鎖空間に充填するようにしている。
【0003】
ところで、上記沈埋函の床版や側壁として用いられる鋼殻構造体内の閉鎖空間は、かなりの大きさ(一例として、3m四方で高さが1m)となっており、このような大きさの閉鎖空間内でコンクリートに振動を加えるには、バイブレータを複数本用意して、各バイブレータを同時に作動させなければならず、バイブレータの数だけ作業員が必要になって労働負担が大きい、という問題があった。
【0004】
なお、例えば、特許文献2には、コンクリート打設ホースの先端に接続される先端パイプに、旋回可能に旋回フレームを取付け、この旋回フレームに複数のバイブレータを支持させた締固め装置が開示されており、このような締固め装置を上記閉鎖空間へのコンクリート打設に利用することが考えられる。
【特許文献1】特開2000−355010号公報
【特許文献2】特開平7−54337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、上記特許文献2に記載される締固め装置を閉鎖空間に適用するには、閉鎖空間を有する構造体(鋼殻構造体等)に、予めバイブレータを挿入するための挿入口を穿設しておく必要がある。この場合、前記閉鎖空間の大きさ、形状が必ずしも一様でないことから、構造体に予め穿設される挿入口の位置もまちまちと困難となる。しかしながら、前記締固め装置は、バイブレータの位置が一定となっているため、前記構造体側の挿入口の位置が変更になるごとに、専用の締固め装置を用意しなければならず、コスト負担の増大が避けられないようになる。
【0006】
本発明は、上記した技術的背景に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、省力化に寄与することはもちろん、種々の大きさの閉鎖空間に対するコンクリート打設に汎用的に使用できる振動締固め装置を提供し、併せて該振動締固め装置を操作して効率よくかつ確実に振動締固めを行うことができる振動締固め工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め装置は、上端部がコンクリート打設ホースに接続され、下端部が構造体の閉鎖空間に挿入されるコンクリート打設管と、該コンクリート打設管の上端側に、その軸回りに揺動可能に基端部が軸着された、伸縮可能な複数の支持アームと、該支持アームの先端部に垂設され、前記構造体に予め形成された挿入口を通して閉鎖空間に挿入されるバイブレータ本体(振動部)と、前記支持アームの伸縮を規制する伸縮規制手段と該支持アームの揺動を規制する揺動規制手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め装置においては、複数のバイブレータ本体を備えているので、一度に多点で振動締固めを行うことができる。また、各支持アームを揺動させかつ伸縮させることで、構造体に予め設けられた挿入口に合せて棒状バイブレータ本体の位置を調整することができる。
【0009】
本発明において、上記複数の支持アームは、コンクリート打設管の円周方向に等配して設定した揺動支点を中心に放射状に配置されるようにするのが望ましく、これにより、コンクリート打設管を中心にその軸回りの多方向へ支持アームを延ばすことができ、広い範囲の挿入口にバイブレータ本体を挿入することができる。この場合、支持アームが、4本設けられており、各支持アームが90度の範囲内で揺動可能である構成とすることで、コンクリート打設管の周りのほぼ360度範囲の挿入口にバイブレータ本体を挿入することことができる。
【0010】
また、上記した振動締固め装置を用いて行う閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め工法は、閉鎖空間内におけるコンクリートの充填高さを検知するセンサからの信号に基いて、前記機械の操作部を介して閉鎖空間内への該振動締固め装置の挿入高さを制御すると共にバイブレータ本体の作動を制御することを特徴とする。
【0011】
このように行う閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め工法においては、コンクリートの充填高さを検知するセンサからの信号に基いて、閉鎖空間内への振動締固め装置の挿入高さを制御すると共にバイブレータ本体の作動を制御することで、振動締固めを一元管理することができる。この場合、コンクリートの充填高さを検知するセンサを、各バイブレータ本体に取付けるようにしてもよく、この場合は、閉鎖空間内にセンサを別途設置する手間が省けることに加え、センサの再使用が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め装置によれば、複数のバイブレータ本体により一度に多点の振動締固めを行うことができるので、省力化を達成できる。また、構造体に予め設けられた挿入口に合せてバイブレータ本体の位置を調整することができるので、種々の大きさ、形状の閉塞空間に汎用的に使用可能となる。
【0013】
また、本発明に係る閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め工法によれば、コンクリートの充填高さを検知するセンサからの信号に基いて振動締固めを一元管理することができるので、閉鎖空間内におけるコンクリートの充填並びに締固めを確実に行うことができ、工法に対する信頼性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基いて説明する。
【0015】
図1〜図3は、本発明の1つの実施形態である、閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め装置の全体的な構造を示したものである。これらの図において、1は、閉鎖空間Aを内部に有する、沈埋函用の鋼殻構造体(構造体)であり、その上板1aの中央付近にはコンクリート打設用の打設口2が予め穿設され、また、同じ上板1aの4隅の近傍には、後述のバイブレータ本体15を挿入するための挿入口3が予め穿設されている。本振動締固め装置10は、上端がコンクリート打設ホース4に接続され、下端側が前記打設口2を通して閉鎖空間Aに挿入されるコンクリート打設管11と、このコンクリート打設管11の周りに放射状に配置され、該コンクリート打設管11の上端側に嵌着した上下一対のフランジ板12にピン13を用いて基端部が軸着された4本の支持アーム14と、各支持アーム14の先端部に垂設され、前記挿入口3を通して閉鎖空間Aに挿入されるバイブレータ本体15とを備えている。
【0016】
各支持アーム14は、その長手方向の中間部位に設けた吊り金具16に、前記コンクリート打設管(以下、これを単に打設管という)11の上端部に固定された取手部材17から延ばしたステーワイヤ18を掛けることにより、該打設管11の軸に略直交する姿勢を維持するようになっている。すなわち、各支持アーム14は、打設管11の軸に直交する面内で前記ピン13を支点に揺動し、この揺動に応じて各支持アーム14の先端位置、すなわちバイブレータ本体15の垂設位置は打設管11を中心とする円周方向へ変位する。各支持アーム14はまた、伸縮可能に結合された2つの中空フレーム19、20からなっており、中空断面の大きい側の一方の中空フレーム(固定フレーム)19が、前記ピン13を用いて打設管11と一体のフランジ板12に軸着され、かつ前記ステーワイヤ18を用いて打設管11に支持されている。支持アーム14の他方の中空フレーム(可動フレーム)20は前記固定フレーム19に摺動可能に嵌入されており、前記固定フレーム19に対する可動フレーム20の伸縮に応じて、支持アーム14の先端位置、すなわちバイブレータ本体15の垂設位置は、打設管11を中心とする半径方向へ変位する。なお、この支持アーム14の伸縮量を調整しかつその伸縮を規制する手段については後に詳述する。
【0017】
本実施形態において、各支持アーム14の揺動支点であるピン13は、打設管11の円周方向に等配して(90度間隔で)設定され、また、各支持アーム14の揺動範囲は、前記ピン13を支点に略90度の範囲に設定されている。なお、支持アーム14の揺動範囲を設定しかつその揺動を規制する手段については、後に詳述する。これにより、各支持アーム14の先端(アーム先端)の移動可能範囲は、図4に点線ハッチングを付して示すように、可動フレーム20の短縮端および伸長端におけるアーム先端の円弧軌跡と揺動支点(ピン13)を通る中心線とで囲まれた扇形領域Sとなる。この場合、該扇形領域Sは4本の支持アーム14に対してそれぞれ設定され、したがって、打設管11の周りのほぼ360度範囲がアーム先端の移動可能範囲、すなわちバイブレータ本体15の垂設可能範囲となる。ここで、図4に示される扇形領域Sの相互間の空白部分は、アーム先端が到達しない範囲(非移動可能範囲)となるが、前記鋼殻構造体1の打設口2に対する打設管11の挿入位置(回転角度)を適当に変えることで、この非移動可能範囲もアーム先端の移動可能範囲となる。この結果、打設管11を囲む全周範囲(360度範囲)がバイブレータ本体15の垂設可能範囲となり、この範囲内のどこに前記挿入口3が穿設されていても、各支持アーム14の揺動角度並びに伸縮量を適当に調整することで、バイブレータ本体15を挿入口3に挿入することが可能になる。
【0018】
一方、各バイブレータ本体15を含むバイブレータ装置21は、バイブレータ本体15に接続されたケーブルを被覆する可撓性の防護ホース22と、この防護ホース22内のケーブルとインバータ23との間を接続する電源ケーブル24と、前記ケーブルの接続点に介装されたスイッチ25と、インバータ23を通してバイブレータ本体15の作動を制御するバイブレータ制御装置26とからなっている。本実施形態において、各バイブレータ本体15に接続された防護ホース22は、各支持アーム14の下面に設けた後述の複数のホース固定装置27に脱着可能に支持されており、該ホース固定装置27による防護ホース22の固定位置を変更することで、支持アーム14からのバイブレータ本体15の垂下高さを任意変更することができる。なお、各バイブレータ本体15の防護ホース22は、それぞれの他端部がホース固定装置27により打設管11の周りに誘導されると共に、一纏めにした状態で前記インバータ23側へ引出されている。
【0019】
本実施形態においてはまた、上記各バイブレータ本体15に、閉鎖空間A内へのコンクリートの充填高さを検知する2つのセンサ28(28a,28b)を所定の間隔で添設している。このセンサ28は圧電セラミックスを含む振動デバイスからなっており、これにコンクリートが接触した際のピーク出力の変化からコンクリートとの接触を検知できる機能を有している。各センサ28は、ケーブル29を介して信号処理装置30に接続されており、信号処理装置30は上記バイブレータ制御装置26に接続されている。なお、このセンサ28および信号処理装置30を含むシステムは、曙ブレーキ工業社から「ジューテンダー」の名称で市販されている。本実施形態において、2つのセンサ28のうち、一方のセンサ28aはバイブレータ本体15の先端側に、他方のセンサ28bはバイブレータ本体15のほぼ中間位置に取付けられている。また、各ケーブル29は、上記バイブレータ本体15を支持する支持アーム14下のホース固定装置27を利用して信号処理装置30側へ引出されている。
【0020】
ここで、各支持アーム14の伸縮量を調整しかつその伸縮を規制する手段(伸縮規制手段)は、図2に示されるように、固定フレーム19の先端部の側面に貫通して形成された1つの係合孔31と、可動フレーム20の側面にその長手方向に配列して所定のピッチで貫通して形成された複数の位置決め孔32と、これら係合孔31および位置決め孔32を通して締結可能なボルト・ナット33とからなっている。この伸縮規制手段においては、可動フレーム20に形成された複数の位置決め孔32の1つを選択して、これを固定フレーム19の係合孔31に整合させ、この状態で両孔31、32を通してボルト・ナット33を締付ければ、固定アーム19に対して可動アーム20が位置固定され、かつ支持アーム14の伸縮量(全長)が調整される。
【0021】
また、各支持アーム14の揺動範囲を設定しかつその揺動を規制する手段(揺動規制手段)は、図5〜図7に示されるように、上下一対のフランジ板12に、前記揺動支点としての前記ピン13を中心とするピッチ円上に対向して形成された一対の円弧溝35と、各円弧溝35を通して締結可能なボルト・ナット36とからなっている。この揺動規制手段においては、ボルト・ナット36のボルト部分が支持アーム14の両側面に常時接触するように前記ピッチ円の径が設定されており、したがってボルト・ナット36を弛めた状態では、該ボルト・ナット36が支持アーム14の揺動に追従して円弧溝35内を移動する。この場合、支持アーム14は、ボルト・ナット36が円弧溝35の溝端に達した位置が揺動端となり、ここでは、各支持アーム14が90度揺動できるように円弧溝35の円弧長さが設定されている。一方、支持アーム14は、ボルト・ナット36を締付けることでその揺動が規制され、したがって、ここでは、90度範囲の任意の角度位置で支持アーム14を位置固定することができるようになっている。
【0022】
一方、各バイブレータ本体15を脱着可能に支持するための各ホース固定装置27は、揺動アーム14の下面に固定されたコ字形ブラケット40と、両端部にねじ部41aを有し、該ねじ部41aをブラケット40の左右側板40aに形成した長穴42に挿入させて、該左右側板40a間に橋渡しされた支軸41と、この支軸41に回動自在に嵌合された滑車43と、前記支軸41のねじ部41aに螺合され、該支軸41をブラケット40の左右側板40aに締付け固定する締付ナット44と、ブラケット40の底板40bに形成したねじ孔45にねじ込まれた押えボルト46と、前記滑車43の外周の凹面に整合する凸面を上端に有し、下端が前記押えボルト46の先端に連結された押え部材47と、前記滑車43の外周の凹面を反転した形状の凹面を下端に有する受け部材48とを備えている。なお、押え部材47と受け部材48とは防振材から形成されている。
【0023】
上記したホース固定装置27においては、締付ナット44を弛めると、支軸41が長穴42内の下端側に移動し、図9(A)に示されるように、滑車43と受け部材47との間に大きな間隙が形成される。前記バイブレータ本体15に接続された防護ホース22は、このように形成された滑車43と受け部材48との間隙を通して引き延ばされるようになっており、この状態では、滑車43が自由に回転するので、防護ホース22を自由に押し引きすることができ、したがって、バイブレータ本体15の垂下高さを円滑に調整することができる。一方、この状態から押えボルト46をねじ込むと、図9(B)に示されるように、押え部材47の凸面が滑車43の凹面に嵌合して、押えボルト46のねじ込みに応じて滑車43が上動し、支軸41も長穴42に沿って上動する。そして、遂には、滑車43と受け部材48との間に防護ホース22が挟持され、この状態で締付ナット44を締込んで支軸41をブラケット40の側板40aに締付け固定すれば、防護ホース22が位置固定され、バイブレータ本体15は所定の垂下高さを安定して維持するようになる。なお、バイブレータ本体15に添設されたセンサ28に接続されたケーブル29は、ブラケット40の底板40b上に支承されている。
【0024】
以下、上記のように構成された振動締固め装置10による振動締固め工法について、図10および図11も参照して説明する。
【0025】
振動締固め工法の施工に際しては、鋼殻構造体1の上板1aに形成されている打設口2および挿入口3の位置に合せて、予め支持アーム14の長さおよびその揺動角度を調整し、伸縮規制手段を構成するボルト・ナット33、揺動規制手段を構成するボルト・ナット36をそれぞれ締付けて、支持アーム14を伸縮不能に固定し、かつ打設管11に対して支持アーム14の位置を固定する。また、この施工に際しては、打設管11にコンクリート打設ホース4を接続した後、該コンクリート打設ホース4を介してディストリビュータやポンプ車などのコンクリート打設用機械のアームに本振動締固め装置10を支持させる。そして、前記コンクリート打設用機械の操作部の動きで、本振動固め装置10の全体を下降させ、その打設管11およびバイブレータ本体15を、対応する打設口2、挿入口3から鋼殻構造体1内の閉鎖空間Aに挿入させる。
【0026】
本実施形態(第1実施形態)においては、最初に、図1に示したようにバイブレータ本体15の先端が鋼殻構造体1の底板1bに近接する位置に到達するまで本振動固め装置10を下降させ、この状態で打設管11を通してコンクリート(ここでは、前記した中流動コンクリート)Cの打込みを開始する。これより、コンクリートCは、打設管11が位置する閉鎖空間Aの中央付近から周辺へ流動し、打設管11付近を中高とする状態で、次第にその高さが上昇し、遂には、バイブレータ本体15の中間付近に添設した上側のセンサ28bの位置にコンクリートCが到達する。すると、該センサ28bからの信号を受けて信号処理装置30が充填高さを演算し、その結果が、コンクリート打設用機械の操作者とバイブレータ制御装置26とへ送出され、これによりバイブレータ制御装置26によるバイブレータ本体15の起動が開始(加振が開始)される。すると、バイブレータ本体15が所定の時間振動し、この結果、コンクリートCが次第に締固められて、一層目のコンクリートC1(図10)の打設が終了する。
【0027】
上記一層目のコンクリートC1の打設が終了すると、コンクリート打設用機械の操作部の動きで、図10に示されるように、本振動締固め装置10が上昇し、前記バイブレータ本体15に添設した下側のセンサ28aが一層目のコンクリートC1の天端となる位置で上昇停止される。なお、この間、打設管11からのコンクリートCの注入が継続されており、一層目のコンクリートC1の天端はわずか上昇している。その後は、図11に示されるように、再び打設管11を通してコンクリートCの打込みが開始され、コンクリートCが上側のセンサ28bの位置まで到達すると、上記した手順でバイブレータ本体15による加振が開始される。この結果、新たに打込まれたコンクリートCが次第に締固められ、二層目のコンクリートの打設が終了し、以降、本振動締固め装置10を所定距離ずつ上昇させながら前記動作が繰返されることで、閉鎖空間A内へのコンクリートの充填が終了する。
【0028】
ここで、上記第1実施形態においては、バイブレータ本体15の先端側と中間付近との2箇所にセンサ28(28a、28b)を配置したが、本発明は、バイブレータ本体15の中間付近と後端側との2箇所にセンサ28を配置してもよいものである。図12および図13は、この場合の振動締固め工法の実施形態(第2実施形態)を示したもので、ここでは、便宜的に下側のセンサと上側のセンサに、第1実施形態と同じ符号28a、28bを付している。
【0029】
本第2実施形態の基本の施工手順は、上記した第1実施形態と変わるところがなく、最初に、図1に示したようにバイブレータ本体15の先端が鋼殻構造体1の底板1bに近接する位置に到達するまで本振動固め装置10を下降させ、この状態で打設管11を通して閉鎖空間A内へのコンクリートCの打込みを開始する。そして、コンクリートCが、バイブレータ本体15の下側のセンサ28aの位置に到達したことを確認したら、バイブレータ本体15による加振が開始され、これにより一層目のコンクリートC1(図12)の打設が終了する。
【0030】
上記一層目のコンクリートC1の打設が終了したら、図12に示されるように、本振動締固め装置10をそのまま位置固定した状態として、コンクリート層の上昇を待ち、コンクリートCが上側のセンサ28bの位置に到達したら、バイブレータ15による加振が開始され、これにより二層目のコンクリートC2(図13)の打設が終了する。その後は、コンクリート打設用機械の操作部の動きで、図13に示されるように、下側のセンサ28aが二層目のコンクリートC2の天端となる位置まで本振動締固め装置10が上昇して停止し、コンクリートCが上側のセンサ28bの位置まで到達した段階で、バイブレータ本体15による加振が開始され、これにより、三層目のコンクリートの打設が終了する。以降は、本振動締固め装置10を所定距離ずつ上昇させながら前記動作が繰返えされ、これにより閉鎖空間A内へのコンクリート充填が終了する。
【0031】
上記各実施形態においては、閉鎖空間A内におけるコンクリートの充填高さを検知するセンサ28(28a、28b)をバイブレータ本体15に添設したので、別途、閉鎖空間内にセンサを配設する必要がなくなると共に、用いるセンサの数を最小限とすることができ、施工性およびコスト面で有利となる。
【0032】
なお、本発明が対象とする閉鎖空間Aは、外部から目視しながら作業ができない(オープンで作業ができない)程度に閉鎖している、という意味であり、その一部が開放されていても、本発明でいう閉鎖空間に含まれる。また、この閉鎖空間は、上記した沈埋函用鋼殻構造体1以外の構造体に形成される閉鎖空間であってもよいことは、もちろんである。また、上記各実施形態においては、バイブレータ本体15を支持する支持アーム14を4本設けたが、この支持アーム14の数は任意であり、2または3本であっても、5本以上であってもよい。さらに、上記各実施形態においては、閉鎖空間Aに打込むコンクリートCとして中流動コンクリートを用いたが、このコンクリートの種類も任意であり、高流動コンクリートであっても、普通コンクリートであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の1つの実施形態としての閉鎖空間における振動締固め装置の全体的構造と使用態様とを示す側面図である。
【図2】本振動締固め装置のほぼ半分を拡大して示す側面図である。
【図3】本振動締固め装置の全体的構造を示す平面図である。
【図4】本振動締固め装置における支持アームの可動範囲を示す模式図である。
【図5】本振動締固め装置における、支持アームの打設管に対する連結構造を示す側面図である。
【図6】図5に示した支持アームの打設管に対する連結構造を示す平面図である。
【図7】図5に示した支持アームの打設管に対する連結構造を示す断面図である。
【図8】本振動締固め装置におけるバイブレータのホースを支持するホース固定装置の構造を示す正面図である。
【図9】本振動締固め装置におけるバイブレータのホースを支持するホース固定装置の構造を示す側面図である。
【図10】本振動締固め装置を用いて行う振動締固め工法の第1実施形態を示す側面図である。
【図11】第1実施形態における施工途中の状態を示す側面図である。
【図12】本振動締固め装置を用いて行う振動締固め工法の第2実施形態を示す側面図である。
【図13】第2実施形態における施工途中の状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 鋼殻構造体(構造体)
2 打設口
3 挿入口
4 コンクリート打設ホース
A 閉鎖空間
10 振動締固め装置
11 コンクリート打設管
14 支持アーム
15 バイブレータ本体
19 支持アームの固定フレーム
20 支持アームの可動フレーム
22 バイブレータ本体保護ケーブル
27 ホース固定装置
28(28a,28b) センサ
29 センサのケーブル
33 ボルトナット(伸縮規制手段)
36 ボルトナット(揺動規制手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の閉鎖空間に充填されたコンクリートを振動締固めするための振動締固め装置および該振動締固め装置を用いて行う閉塞空間におけるコンクリートの振動締固め工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、沈埋函の床版や側壁は、鋼板により形成された鋼殻構造体の閉鎖空間にコンクリートを打設した複合構造となっている。そして、このような床版や側壁の製作に当たっては、外部から目視できない閉鎖空間を対象にコンクリートを充填することから、その充填をいかに確実にかつ効率よく行うかが重要な課題となる。そこで、例えば、特許文献1に記載の工法では、コンクリートとしてスランプフローが30〜55cmの中流動コンクリートを選択すると共に、閉鎖空間にバイブレータを挿入し、該バイブレータにより振動を加えながらコンクリートを閉鎖空間に充填するようにしている。
【0003】
ところで、上記沈埋函の床版や側壁として用いられる鋼殻構造体内の閉鎖空間は、かなりの大きさ(一例として、3m四方で高さが1m)となっており、このような大きさの閉鎖空間内でコンクリートに振動を加えるには、バイブレータを複数本用意して、各バイブレータを同時に作動させなければならず、バイブレータの数だけ作業員が必要になって労働負担が大きい、という問題があった。
【0004】
なお、例えば、特許文献2には、コンクリート打設ホースの先端に接続される先端パイプに、旋回可能に旋回フレームを取付け、この旋回フレームに複数のバイブレータを支持させた締固め装置が開示されており、このような締固め装置を上記閉鎖空間へのコンクリート打設に利用することが考えられる。
【特許文献1】特開2000−355010号公報
【特許文献2】特開平7−54337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、上記特許文献2に記載される締固め装置を閉鎖空間に適用するには、閉鎖空間を有する構造体(鋼殻構造体等)に、予めバイブレータを挿入するための挿入口を穿設しておく必要がある。この場合、前記閉鎖空間の大きさ、形状が必ずしも一様でないことから、構造体に予め穿設される挿入口の位置もまちまちと困難となる。しかしながら、前記締固め装置は、バイブレータの位置が一定となっているため、前記構造体側の挿入口の位置が変更になるごとに、専用の締固め装置を用意しなければならず、コスト負担の増大が避けられないようになる。
【0006】
本発明は、上記した技術的背景に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、省力化に寄与することはもちろん、種々の大きさの閉鎖空間に対するコンクリート打設に汎用的に使用できる振動締固め装置を提供し、併せて該振動締固め装置を操作して効率よくかつ確実に振動締固めを行うことができる振動締固め工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め装置は、上端部がコンクリート打設ホースに接続され、下端部が構造体の閉鎖空間に挿入されるコンクリート打設管と、該コンクリート打設管の上端側に、その軸回りに揺動可能に基端部が軸着された、伸縮可能な複数の支持アームと、該支持アームの先端部に垂設され、前記構造体に予め形成された挿入口を通して閉鎖空間に挿入されるバイブレータ本体(振動部)と、前記支持アームの伸縮を規制する伸縮規制手段と該支持アームの揺動を規制する揺動規制手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め装置においては、複数のバイブレータ本体を備えているので、一度に多点で振動締固めを行うことができる。また、各支持アームを揺動させかつ伸縮させることで、構造体に予め設けられた挿入口に合せて棒状バイブレータ本体の位置を調整することができる。
【0009】
本発明において、上記複数の支持アームは、コンクリート打設管の円周方向に等配して設定した揺動支点を中心に放射状に配置されるようにするのが望ましく、これにより、コンクリート打設管を中心にその軸回りの多方向へ支持アームを延ばすことができ、広い範囲の挿入口にバイブレータ本体を挿入することができる。この場合、支持アームが、4本設けられており、各支持アームが90度の範囲内で揺動可能である構成とすることで、コンクリート打設管の周りのほぼ360度範囲の挿入口にバイブレータ本体を挿入することことができる。
【0010】
また、上記した振動締固め装置を用いて行う閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め工法は、閉鎖空間内におけるコンクリートの充填高さを検知するセンサからの信号に基いて、前記機械の操作部を介して閉鎖空間内への該振動締固め装置の挿入高さを制御すると共にバイブレータ本体の作動を制御することを特徴とする。
【0011】
このように行う閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め工法においては、コンクリートの充填高さを検知するセンサからの信号に基いて、閉鎖空間内への振動締固め装置の挿入高さを制御すると共にバイブレータ本体の作動を制御することで、振動締固めを一元管理することができる。この場合、コンクリートの充填高さを検知するセンサを、各バイブレータ本体に取付けるようにしてもよく、この場合は、閉鎖空間内にセンサを別途設置する手間が省けることに加え、センサの再使用が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め装置によれば、複数のバイブレータ本体により一度に多点の振動締固めを行うことができるので、省力化を達成できる。また、構造体に予め設けられた挿入口に合せてバイブレータ本体の位置を調整することができるので、種々の大きさ、形状の閉塞空間に汎用的に使用可能となる。
【0013】
また、本発明に係る閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め工法によれば、コンクリートの充填高さを検知するセンサからの信号に基いて振動締固めを一元管理することができるので、閉鎖空間内におけるコンクリートの充填並びに締固めを確実に行うことができ、工法に対する信頼性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基いて説明する。
【0015】
図1〜図3は、本発明の1つの実施形態である、閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め装置の全体的な構造を示したものである。これらの図において、1は、閉鎖空間Aを内部に有する、沈埋函用の鋼殻構造体(構造体)であり、その上板1aの中央付近にはコンクリート打設用の打設口2が予め穿設され、また、同じ上板1aの4隅の近傍には、後述のバイブレータ本体15を挿入するための挿入口3が予め穿設されている。本振動締固め装置10は、上端がコンクリート打設ホース4に接続され、下端側が前記打設口2を通して閉鎖空間Aに挿入されるコンクリート打設管11と、このコンクリート打設管11の周りに放射状に配置され、該コンクリート打設管11の上端側に嵌着した上下一対のフランジ板12にピン13を用いて基端部が軸着された4本の支持アーム14と、各支持アーム14の先端部に垂設され、前記挿入口3を通して閉鎖空間Aに挿入されるバイブレータ本体15とを備えている。
【0016】
各支持アーム14は、その長手方向の中間部位に設けた吊り金具16に、前記コンクリート打設管(以下、これを単に打設管という)11の上端部に固定された取手部材17から延ばしたステーワイヤ18を掛けることにより、該打設管11の軸に略直交する姿勢を維持するようになっている。すなわち、各支持アーム14は、打設管11の軸に直交する面内で前記ピン13を支点に揺動し、この揺動に応じて各支持アーム14の先端位置、すなわちバイブレータ本体15の垂設位置は打設管11を中心とする円周方向へ変位する。各支持アーム14はまた、伸縮可能に結合された2つの中空フレーム19、20からなっており、中空断面の大きい側の一方の中空フレーム(固定フレーム)19が、前記ピン13を用いて打設管11と一体のフランジ板12に軸着され、かつ前記ステーワイヤ18を用いて打設管11に支持されている。支持アーム14の他方の中空フレーム(可動フレーム)20は前記固定フレーム19に摺動可能に嵌入されており、前記固定フレーム19に対する可動フレーム20の伸縮に応じて、支持アーム14の先端位置、すなわちバイブレータ本体15の垂設位置は、打設管11を中心とする半径方向へ変位する。なお、この支持アーム14の伸縮量を調整しかつその伸縮を規制する手段については後に詳述する。
【0017】
本実施形態において、各支持アーム14の揺動支点であるピン13は、打設管11の円周方向に等配して(90度間隔で)設定され、また、各支持アーム14の揺動範囲は、前記ピン13を支点に略90度の範囲に設定されている。なお、支持アーム14の揺動範囲を設定しかつその揺動を規制する手段については、後に詳述する。これにより、各支持アーム14の先端(アーム先端)の移動可能範囲は、図4に点線ハッチングを付して示すように、可動フレーム20の短縮端および伸長端におけるアーム先端の円弧軌跡と揺動支点(ピン13)を通る中心線とで囲まれた扇形領域Sとなる。この場合、該扇形領域Sは4本の支持アーム14に対してそれぞれ設定され、したがって、打設管11の周りのほぼ360度範囲がアーム先端の移動可能範囲、すなわちバイブレータ本体15の垂設可能範囲となる。ここで、図4に示される扇形領域Sの相互間の空白部分は、アーム先端が到達しない範囲(非移動可能範囲)となるが、前記鋼殻構造体1の打設口2に対する打設管11の挿入位置(回転角度)を適当に変えることで、この非移動可能範囲もアーム先端の移動可能範囲となる。この結果、打設管11を囲む全周範囲(360度範囲)がバイブレータ本体15の垂設可能範囲となり、この範囲内のどこに前記挿入口3が穿設されていても、各支持アーム14の揺動角度並びに伸縮量を適当に調整することで、バイブレータ本体15を挿入口3に挿入することが可能になる。
【0018】
一方、各バイブレータ本体15を含むバイブレータ装置21は、バイブレータ本体15に接続されたケーブルを被覆する可撓性の防護ホース22と、この防護ホース22内のケーブルとインバータ23との間を接続する電源ケーブル24と、前記ケーブルの接続点に介装されたスイッチ25と、インバータ23を通してバイブレータ本体15の作動を制御するバイブレータ制御装置26とからなっている。本実施形態において、各バイブレータ本体15に接続された防護ホース22は、各支持アーム14の下面に設けた後述の複数のホース固定装置27に脱着可能に支持されており、該ホース固定装置27による防護ホース22の固定位置を変更することで、支持アーム14からのバイブレータ本体15の垂下高さを任意変更することができる。なお、各バイブレータ本体15の防護ホース22は、それぞれの他端部がホース固定装置27により打設管11の周りに誘導されると共に、一纏めにした状態で前記インバータ23側へ引出されている。
【0019】
本実施形態においてはまた、上記各バイブレータ本体15に、閉鎖空間A内へのコンクリートの充填高さを検知する2つのセンサ28(28a,28b)を所定の間隔で添設している。このセンサ28は圧電セラミックスを含む振動デバイスからなっており、これにコンクリートが接触した際のピーク出力の変化からコンクリートとの接触を検知できる機能を有している。各センサ28は、ケーブル29を介して信号処理装置30に接続されており、信号処理装置30は上記バイブレータ制御装置26に接続されている。なお、このセンサ28および信号処理装置30を含むシステムは、曙ブレーキ工業社から「ジューテンダー」の名称で市販されている。本実施形態において、2つのセンサ28のうち、一方のセンサ28aはバイブレータ本体15の先端側に、他方のセンサ28bはバイブレータ本体15のほぼ中間位置に取付けられている。また、各ケーブル29は、上記バイブレータ本体15を支持する支持アーム14下のホース固定装置27を利用して信号処理装置30側へ引出されている。
【0020】
ここで、各支持アーム14の伸縮量を調整しかつその伸縮を規制する手段(伸縮規制手段)は、図2に示されるように、固定フレーム19の先端部の側面に貫通して形成された1つの係合孔31と、可動フレーム20の側面にその長手方向に配列して所定のピッチで貫通して形成された複数の位置決め孔32と、これら係合孔31および位置決め孔32を通して締結可能なボルト・ナット33とからなっている。この伸縮規制手段においては、可動フレーム20に形成された複数の位置決め孔32の1つを選択して、これを固定フレーム19の係合孔31に整合させ、この状態で両孔31、32を通してボルト・ナット33を締付ければ、固定アーム19に対して可動アーム20が位置固定され、かつ支持アーム14の伸縮量(全長)が調整される。
【0021】
また、各支持アーム14の揺動範囲を設定しかつその揺動を規制する手段(揺動規制手段)は、図5〜図7に示されるように、上下一対のフランジ板12に、前記揺動支点としての前記ピン13を中心とするピッチ円上に対向して形成された一対の円弧溝35と、各円弧溝35を通して締結可能なボルト・ナット36とからなっている。この揺動規制手段においては、ボルト・ナット36のボルト部分が支持アーム14の両側面に常時接触するように前記ピッチ円の径が設定されており、したがってボルト・ナット36を弛めた状態では、該ボルト・ナット36が支持アーム14の揺動に追従して円弧溝35内を移動する。この場合、支持アーム14は、ボルト・ナット36が円弧溝35の溝端に達した位置が揺動端となり、ここでは、各支持アーム14が90度揺動できるように円弧溝35の円弧長さが設定されている。一方、支持アーム14は、ボルト・ナット36を締付けることでその揺動が規制され、したがって、ここでは、90度範囲の任意の角度位置で支持アーム14を位置固定することができるようになっている。
【0022】
一方、各バイブレータ本体15を脱着可能に支持するための各ホース固定装置27は、揺動アーム14の下面に固定されたコ字形ブラケット40と、両端部にねじ部41aを有し、該ねじ部41aをブラケット40の左右側板40aに形成した長穴42に挿入させて、該左右側板40a間に橋渡しされた支軸41と、この支軸41に回動自在に嵌合された滑車43と、前記支軸41のねじ部41aに螺合され、該支軸41をブラケット40の左右側板40aに締付け固定する締付ナット44と、ブラケット40の底板40bに形成したねじ孔45にねじ込まれた押えボルト46と、前記滑車43の外周の凹面に整合する凸面を上端に有し、下端が前記押えボルト46の先端に連結された押え部材47と、前記滑車43の外周の凹面を反転した形状の凹面を下端に有する受け部材48とを備えている。なお、押え部材47と受け部材48とは防振材から形成されている。
【0023】
上記したホース固定装置27においては、締付ナット44を弛めると、支軸41が長穴42内の下端側に移動し、図9(A)に示されるように、滑車43と受け部材47との間に大きな間隙が形成される。前記バイブレータ本体15に接続された防護ホース22は、このように形成された滑車43と受け部材48との間隙を通して引き延ばされるようになっており、この状態では、滑車43が自由に回転するので、防護ホース22を自由に押し引きすることができ、したがって、バイブレータ本体15の垂下高さを円滑に調整することができる。一方、この状態から押えボルト46をねじ込むと、図9(B)に示されるように、押え部材47の凸面が滑車43の凹面に嵌合して、押えボルト46のねじ込みに応じて滑車43が上動し、支軸41も長穴42に沿って上動する。そして、遂には、滑車43と受け部材48との間に防護ホース22が挟持され、この状態で締付ナット44を締込んで支軸41をブラケット40の側板40aに締付け固定すれば、防護ホース22が位置固定され、バイブレータ本体15は所定の垂下高さを安定して維持するようになる。なお、バイブレータ本体15に添設されたセンサ28に接続されたケーブル29は、ブラケット40の底板40b上に支承されている。
【0024】
以下、上記のように構成された振動締固め装置10による振動締固め工法について、図10および図11も参照して説明する。
【0025】
振動締固め工法の施工に際しては、鋼殻構造体1の上板1aに形成されている打設口2および挿入口3の位置に合せて、予め支持アーム14の長さおよびその揺動角度を調整し、伸縮規制手段を構成するボルト・ナット33、揺動規制手段を構成するボルト・ナット36をそれぞれ締付けて、支持アーム14を伸縮不能に固定し、かつ打設管11に対して支持アーム14の位置を固定する。また、この施工に際しては、打設管11にコンクリート打設ホース4を接続した後、該コンクリート打設ホース4を介してディストリビュータやポンプ車などのコンクリート打設用機械のアームに本振動締固め装置10を支持させる。そして、前記コンクリート打設用機械の操作部の動きで、本振動固め装置10の全体を下降させ、その打設管11およびバイブレータ本体15を、対応する打設口2、挿入口3から鋼殻構造体1内の閉鎖空間Aに挿入させる。
【0026】
本実施形態(第1実施形態)においては、最初に、図1に示したようにバイブレータ本体15の先端が鋼殻構造体1の底板1bに近接する位置に到達するまで本振動固め装置10を下降させ、この状態で打設管11を通してコンクリート(ここでは、前記した中流動コンクリート)Cの打込みを開始する。これより、コンクリートCは、打設管11が位置する閉鎖空間Aの中央付近から周辺へ流動し、打設管11付近を中高とする状態で、次第にその高さが上昇し、遂には、バイブレータ本体15の中間付近に添設した上側のセンサ28bの位置にコンクリートCが到達する。すると、該センサ28bからの信号を受けて信号処理装置30が充填高さを演算し、その結果が、コンクリート打設用機械の操作者とバイブレータ制御装置26とへ送出され、これによりバイブレータ制御装置26によるバイブレータ本体15の起動が開始(加振が開始)される。すると、バイブレータ本体15が所定の時間振動し、この結果、コンクリートCが次第に締固められて、一層目のコンクリートC1(図10)の打設が終了する。
【0027】
上記一層目のコンクリートC1の打設が終了すると、コンクリート打設用機械の操作部の動きで、図10に示されるように、本振動締固め装置10が上昇し、前記バイブレータ本体15に添設した下側のセンサ28aが一層目のコンクリートC1の天端となる位置で上昇停止される。なお、この間、打設管11からのコンクリートCの注入が継続されており、一層目のコンクリートC1の天端はわずか上昇している。その後は、図11に示されるように、再び打設管11を通してコンクリートCの打込みが開始され、コンクリートCが上側のセンサ28bの位置まで到達すると、上記した手順でバイブレータ本体15による加振が開始される。この結果、新たに打込まれたコンクリートCが次第に締固められ、二層目のコンクリートの打設が終了し、以降、本振動締固め装置10を所定距離ずつ上昇させながら前記動作が繰返されることで、閉鎖空間A内へのコンクリートの充填が終了する。
【0028】
ここで、上記第1実施形態においては、バイブレータ本体15の先端側と中間付近との2箇所にセンサ28(28a、28b)を配置したが、本発明は、バイブレータ本体15の中間付近と後端側との2箇所にセンサ28を配置してもよいものである。図12および図13は、この場合の振動締固め工法の実施形態(第2実施形態)を示したもので、ここでは、便宜的に下側のセンサと上側のセンサに、第1実施形態と同じ符号28a、28bを付している。
【0029】
本第2実施形態の基本の施工手順は、上記した第1実施形態と変わるところがなく、最初に、図1に示したようにバイブレータ本体15の先端が鋼殻構造体1の底板1bに近接する位置に到達するまで本振動固め装置10を下降させ、この状態で打設管11を通して閉鎖空間A内へのコンクリートCの打込みを開始する。そして、コンクリートCが、バイブレータ本体15の下側のセンサ28aの位置に到達したことを確認したら、バイブレータ本体15による加振が開始され、これにより一層目のコンクリートC1(図12)の打設が終了する。
【0030】
上記一層目のコンクリートC1の打設が終了したら、図12に示されるように、本振動締固め装置10をそのまま位置固定した状態として、コンクリート層の上昇を待ち、コンクリートCが上側のセンサ28bの位置に到達したら、バイブレータ15による加振が開始され、これにより二層目のコンクリートC2(図13)の打設が終了する。その後は、コンクリート打設用機械の操作部の動きで、図13に示されるように、下側のセンサ28aが二層目のコンクリートC2の天端となる位置まで本振動締固め装置10が上昇して停止し、コンクリートCが上側のセンサ28bの位置まで到達した段階で、バイブレータ本体15による加振が開始され、これにより、三層目のコンクリートの打設が終了する。以降は、本振動締固め装置10を所定距離ずつ上昇させながら前記動作が繰返えされ、これにより閉鎖空間A内へのコンクリート充填が終了する。
【0031】
上記各実施形態においては、閉鎖空間A内におけるコンクリートの充填高さを検知するセンサ28(28a、28b)をバイブレータ本体15に添設したので、別途、閉鎖空間内にセンサを配設する必要がなくなると共に、用いるセンサの数を最小限とすることができ、施工性およびコスト面で有利となる。
【0032】
なお、本発明が対象とする閉鎖空間Aは、外部から目視しながら作業ができない(オープンで作業ができない)程度に閉鎖している、という意味であり、その一部が開放されていても、本発明でいう閉鎖空間に含まれる。また、この閉鎖空間は、上記した沈埋函用鋼殻構造体1以外の構造体に形成される閉鎖空間であってもよいことは、もちろんである。また、上記各実施形態においては、バイブレータ本体15を支持する支持アーム14を4本設けたが、この支持アーム14の数は任意であり、2または3本であっても、5本以上であってもよい。さらに、上記各実施形態においては、閉鎖空間Aに打込むコンクリートCとして中流動コンクリートを用いたが、このコンクリートの種類も任意であり、高流動コンクリートであっても、普通コンクリートであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の1つの実施形態としての閉鎖空間における振動締固め装置の全体的構造と使用態様とを示す側面図である。
【図2】本振動締固め装置のほぼ半分を拡大して示す側面図である。
【図3】本振動締固め装置の全体的構造を示す平面図である。
【図4】本振動締固め装置における支持アームの可動範囲を示す模式図である。
【図5】本振動締固め装置における、支持アームの打設管に対する連結構造を示す側面図である。
【図6】図5に示した支持アームの打設管に対する連結構造を示す平面図である。
【図7】図5に示した支持アームの打設管に対する連結構造を示す断面図である。
【図8】本振動締固め装置におけるバイブレータのホースを支持するホース固定装置の構造を示す正面図である。
【図9】本振動締固め装置におけるバイブレータのホースを支持するホース固定装置の構造を示す側面図である。
【図10】本振動締固め装置を用いて行う振動締固め工法の第1実施形態を示す側面図である。
【図11】第1実施形態における施工途中の状態を示す側面図である。
【図12】本振動締固め装置を用いて行う振動締固め工法の第2実施形態を示す側面図である。
【図13】第2実施形態における施工途中の状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 鋼殻構造体(構造体)
2 打設口
3 挿入口
4 コンクリート打設ホース
A 閉鎖空間
10 振動締固め装置
11 コンクリート打設管
14 支持アーム
15 バイブレータ本体
19 支持アームの固定フレーム
20 支持アームの可動フレーム
22 バイブレータ本体保護ケーブル
27 ホース固定装置
28(28a,28b) センサ
29 センサのケーブル
33 ボルトナット(伸縮規制手段)
36 ボルトナット(揺動規制手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部がコンクリート打設ホースに接続され、下端部が構造体の閉鎖空間に挿入されるコンクリート打設管と、該コンクリート打設管の上端側に、その軸回りに揺動可能に基端部が軸着された、伸縮可能な複数の支持アームと、該支持アームの先端部に垂設され、前記構造体に予め形成された挿入口を通して閉鎖空間に挿入されるバイブレータ本体と、前記支持アームの伸縮を規制する伸縮規制手段と該支持アームの揺動を規制する揺動規制手段とを備えていることを特徴とする閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め装置。
【請求項2】
複数の支持アームが、コンクリート打設管の円周方向に等配して設定した揺動支点を中心に放射状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め装置。
【請求項3】
支持アームが、4本設けられており、各支持アームが略90度の範囲内で揺動可能であることを特徴とする請求項2に記載の閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の振動締固め装置を用いて行う閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め工法において、閉鎖空間内におけるコンクリートの充填高さを検知するセンサからの信号に基いて、閉鎖空間内への該振動締固め装置の挿入高さを制御すると共に、バイブレータ本体の作動を制御することを特徴とする閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め工法。
【請求項5】
コンクリートの充填高さを検知するセンサを、各バイブレータ本体に取付けることを特徴とする請求項4に記載の閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め工法。
【請求項1】
上端部がコンクリート打設ホースに接続され、下端部が構造体の閉鎖空間に挿入されるコンクリート打設管と、該コンクリート打設管の上端側に、その軸回りに揺動可能に基端部が軸着された、伸縮可能な複数の支持アームと、該支持アームの先端部に垂設され、前記構造体に予め形成された挿入口を通して閉鎖空間に挿入されるバイブレータ本体と、前記支持アームの伸縮を規制する伸縮規制手段と該支持アームの揺動を規制する揺動規制手段とを備えていることを特徴とする閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め装置。
【請求項2】
複数の支持アームが、コンクリート打設管の円周方向に等配して設定した揺動支点を中心に放射状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め装置。
【請求項3】
支持アームが、4本設けられており、各支持アームが略90度の範囲内で揺動可能であることを特徴とする請求項2に記載の閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の振動締固め装置を用いて行う閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め工法において、閉鎖空間内におけるコンクリートの充填高さを検知するセンサからの信号に基いて、閉鎖空間内への該振動締固め装置の挿入高さを制御すると共に、バイブレータ本体の作動を制御することを特徴とする閉鎖空間内におけるコンクリートの振動締固め工法。
【請求項5】
コンクリートの充填高さを検知するセンサを、各バイブレータ本体に取付けることを特徴とする請求項4に記載の閉鎖空間におけるコンクリートの振動締固め工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−192841(P2006−192841A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8999(P2005−8999)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000172961)佐伯建設工業株式会社 (21)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000182030)若築建設株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000172961)佐伯建設工業株式会社 (21)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000182030)若築建設株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
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