説明

閉経前の性的欲求障害の治療のためのフリバンセリンの使用

本発明は、閉経前の性的欲求障害治療用の医薬品を調製するためのフリバンセリンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉経前の性的欲求障害治療用の医薬品を調製するためのフリバンセリンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物1-[2-(4-(3-トリフルオロメチル-フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル]-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール-2-オン(フリバンセリン)については、欧州特許出願EP-A-526434に塩酸塩の状態のものが開示されているが、以下の化学構造を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
フリバンセリンは、5−HT1A及び5−HT2受容体に親和性を示す。そのため、フリバンセリンは、様々な疾病、例えば、鬱病、精神分裂病及び不安症等の疾病を治療するための有望な治療薬である。
「性的障害」という総称には、性的欲求障害、性的興奮障害、オルガズム障害、性的疼痛障害、一般身体疾患による性機能障害、物質誘発性性機能不全及び特定不能の性機能不全が含まれる(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版、Text Revision. ワシントンDC、アメリカ精神医学会、2000)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
性機能障害に悩む閉経前の女性患者の研究において、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンが、性的欲求の向上効果を示すことがわかった。そこで、本発明は、閉経前の女性における性的欲求障害の治療用医薬品を調製するための、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンの使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、「閉経前の性的欲求低下障害の治療」等の用語は、「閉経前の女性における性的欲求低下障害の治療」等の意味を有する。
性的欲求障害が生来からのものか、又は、獲得したものかにかかわらず、また、性的欲求障害が「全般型」か「状況型」かにかかわらず、さらには、病因学的起源(器質性の病因、即ち、身体因性及び薬剤誘導による器質性病因か、心因性の病因(心理学的要素による)か、身体因性及び薬剤誘導による器質性病因と心因性病因との混合性の病因(混合した要素による)か、あるいは不明)とは無関係に、フリバンセリンには有利な効果が見られる。「生来から」という用語は、性的機能が見られはじめて以来、本発明の性的欲求障害があることを指す。「獲得した」という用語は、正常に性的機能が働いていたある時期の後にはじめて発現した本発明の性的欲求障害を指す。「全般型」とは、障害が特定の種類の刺激、状況又はパートナーに限定されない、本発明の性的障害を指す。「状況型」とは、障害が特定の種類の刺激、状況又はパートナーに限定される本発明の性的障害に適用される。「心理学的要因」によるサブタイプとは、性的障害の始まり、重篤さ、増悪、持続について心理的要因が主要な役割を果たしていると判断され、一般身体疾患及び物質が性的障害の病因において何の役割も果たしていない場合に適用される。最後に、「混合要因」によるサブタイプとは、1)性的障害の始まり、重篤さ、増悪、持続について心理的要因がかかわっていると判断され、かつ、2)一般身体疾患又は物質の使用も性的障害の一因であるとは判断されるが、その性的障害の原因となるほどではない場合に適用される(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版、Text Revision. ワシントンDC、アメリカ精神医学会、2000)。
【0007】
そのため、例えば「生来型の閉経前の性的欲求低下障害」という用語は、性的機能が見られはじめて以来続いている、閉経前の女性における性的欲求低下障害を指す。「獲得型の閉経前性的欲求低下障害」という用語は、正常に性的機能が働いていたある時期の後に発現した閉経前の女性における性的欲求低下障害を指す。
したがって、本発明の好ましい実施形態は、閉経前の性的欲求低下障害(HSDD)、閉経前の性嫌悪障害、閉経前の性的欲求の喪失、閉経前の性的欲求の欠乏、閉経前の性的欲求の減退、閉経前の性的欲求の抑制、閉経前の性的衝動の喪失、閉経前の性的衝動障害、閉経前の性不感症からなる群から選択される障害の治療用医薬品を調製するための、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンの使用に関する。
本発明によると、閉経前の性的欲求低下障害、閉経前の性嫌悪障害、閉経前の性的欲求の喪失、閉経前の性的欲求の欠乏、閉経前の性的欲求の減退、及び、閉経前の性的欲求の抑制からなる群から選択される障害の治療用医薬品を調製するための、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンの使用が特に好適である。
本発明のとりわけ好ましい実施形態は、閉経前の性的欲求低下障害、閉経前の性的欲求の喪失、閉経前の性的欲求の減退、及び、閉経前の性的欲求の抑制からなる群から選択される障害の治療用医薬品を調製するための、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンの使用に関する。
【0008】
本発明のさらに好適な実施形態は、生来型の閉経前の性的欲求低下障害、生来型の閉経前の性嫌悪障害、生来型の閉経前の性的欲求の喪失、生来型の閉経前の性的欲求の欠乏、生来型の閉経前の性的欲求の減退、生来型の閉経前の性的欲求の抑制、生来型の閉経前の性的衝動の喪失、生来型の閉経前の性的衝動障害、生来型の閉経前の性不感症からなる群から選択される障害の治療用医薬品を調製するための、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンの使用に関する。
本発明によると、生来型の閉経前の性的欲求低下障害、生来型の閉経前の性嫌悪障害、生来型の閉経前の性的欲求の喪失、生来型の閉経前の性的欲求の欠乏、生来型の閉経前の性的欲求の減退、及び、生来型の閉経前の性的欲求の抑制からなる群から選択される障害の治療用医薬品を調製するための、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンの使用が特に好ましい。
本発明のとりわけ好適な実施形態は、生来型の閉経前の性的欲求低下障害、生来型の閉経前の性的欲求の喪失、生来型の閉経前の性的欲求の減退、及び、生来型の閉経前の性的欲求の抑制からなる群から選択される障害の治療用医薬品を調製するための、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンの使用に関する。
また、本発明の別の好適な実施形態は、獲得型の閉経前の性的欲求低下障害、獲得型の閉経前の性嫌悪障害、獲得型の閉経前の性的欲求の喪失、獲得型の閉経前の性的欲求の欠乏、獲得型の閉経前の性的欲求の減退、獲得型の閉経前の性的欲求の抑制、獲得型の閉経前の性的衝動の喪失、獲得型の閉経前の性的衝動障害、獲得型の閉経前の性不感症からなる群から選択される障害の治療用医薬品を調製するための、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンの使用に関する。
【0009】
さらに本発明によると、獲得型の閉経前の性的欲求低下障害、獲得型の閉経前の性嫌悪障害、獲得型の閉経前の性的欲求の喪失、獲得型の閉経前の性的欲求の欠乏、獲得型の閉経前の性的欲求の減退、獲得型の閉経前の性的欲求の抑制からなる群から選択される障害の治療用医薬品を調製するための、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンの使用が好ましい。
本発明の特に好適な実施形態は、獲得型の閉経前の性的欲求低下障害、獲得型の閉経前の性的欲求の喪失、獲得型の閉経前の性的欲求の減退、獲得型の閉経前の性的欲求の抑制からなる群から選択される障害の治療用医薬品を調製するための、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンの使用に関する。
また、本発明は、前記症状のうちのいずれかの全般型又は状況型サブタイプ、及び/又は、それらの病因が器質的因子、心理学的因子もしくは混合因子によるものに関する。
フリバンセリンは、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩の状態ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態で使用することができる。好適な酸付加塩として、例えば、コハク酸、臭化水素酸、酢酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、乳酸、リン酸、塩酸、硫酸、酒石酸及びクエン酸から選択される酸の酸付加塩が挙げられる。前記酸付加塩の混合物も使用できる。前記酸付加塩のなかでは、塩酸塩及び臭化水素酸塩、とりわけ塩酸塩が好ましい。フリバンセリンを遊離塩基の状態で使用する場合は、WO03/014079に開示のフリバンセリン同質異像Aの形で使用することが好ましい。
【0010】
フリバンセリンは、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩の状態ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態で使用することができるが、固体、液体又はスプレー状態の従来からの医薬調剤中に混和させることができる。こうした組成物は、例えば、経口投与、直腸投与、非経口投与又は鼻からの吸入に適した剤形で提供することができる。好適な剤形としては、例えば、カプセル剤、錠剤、被覆錠剤、アンプル剤、座剤及び鼻スプレー等が挙げられる。
この有効成分は、医薬製剤で従来から使用される賦形剤又は担体である、例えば、タルク、アラビアゴム、ラクトース、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、コーンスターチ、水性もしくは非水性ビヒクル、ポリビニルピロリドン、半合成脂肪酸グリセリド、塩化ベンザルコニウム、リン酸ナトリウム、EDTA、ポリソルベート80等に混合することができる。このような組成物を用量単位で製剤化することが有利であり、各投与単位ごとに有効成分の単回投与量が供給できるようにする。1日あたりの適用量の範囲は0.1〜400mg、好ましくは1.0〜300mg、より好ましくは2〜200mgの範囲である。
投与単位ごとに0.01〜100mg含むことが好都合であり、0.1〜50mgが好ましい。
1日1回、2回、3回又は4回で服用量単位を患者に投与する。本発明の化合物は、ある期間にわたって連続的に1日3回又はそれより少ない回数で投与することが好ましく、1日1回又は2回の投与がさらに好ましい。
ある期間にわたり連続的に朝と晩に患者へ1回分ずつ投与することが好ましく、朝1回(フリバンセリン25mg又は50mg)及び夜1回(フリバンセリン25mg又は50mg)の投与がより好ましく、夜1回のみ(フリバンセリンを50mg又は100mg)の投与が特に好ましい。
その結果、鎮静といった副作用は重大な問題ではなくなる。
【0011】
好適な錠剤は、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはラクトース等の不活性希釈剤、コーンスターチもしくはアルギン酸等の崩壊剤、デンプンもしくはゼラチン等の結合剤、ステアリン酸マグネシウムもしくはタルク等の滑剤、及び/又は、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースもしくはポリ酢酸ビニル等の放出遅延剤等の公知である賦形剤と共に有効成分を混合して得ることができる。また、錠剤はいくつかの層で構成されていてもよい。
従って、被覆錠剤は、錠剤と同様にして作製したコアを、錠剤コーティングとして通常使用される物質である、例えばコリドン(collidone)もしくはセラック、アラビアゴム、タルク、二酸化チタン又は糖類でコーティングして調製することができる。放出を遅らせたり、不和合性にならないようにするために、コアも多層で構成することができる。同様に、前記の錠剤用の賦形剤を用いて錠剤コーティングを多層にして放出を遅らせることもできる。
本発明の有効成分またはその組合せを含むシロップ剤又はエリキシル剤は、サッカリン、シクラメート、グリセロール又は糖等の甘味剤、及び、バニリン又はオレンジ抽出物等の香料といった風味相乗剤をさらに含有してもよい。また、これらの剤形には、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の懸濁補助剤または増粘剤、例えば脂肪アルコールとエチレンオキシドとの縮合物のような湿潤剤、あるいは、p−ヒドロキシ安息香酸塩等の防腐剤も含有させることができる。
【0012】
注射液は通常の方法で、例えば、ヒドロキシ安息香酸塩等の防腐剤又はエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩等の安定剤を加えて調製し、注射用バイアル又はアンプルに移し入れる。
1種以上の有効成分又は有効成分の組合せを収容するカプセル剤は、例えば、ラクトース又はソルビトールのような不活性担体と一緒に有効成分を混合し、それをゼラチンカプセルに充填して作成することができる。
好適な座剤は、例えば、この目的用の担体である例えば中性脂肪又はポリエチレングリコール又はそれらの誘導体と一緒に混合して作成することができる。
以下の実施例は本発明を説明するもので、本発明の範囲を限定するものではない。
医薬製剤の実施例
A) 錠剤 mg/錠
フリバンセリン 100
ラクトース 240
コーンスターチ 340
ポリビニルピロリドン 45
ステアリン酸マグネシウム 15
740mg
微粉砕した有効成分、ラクトース及びコーンスターチの一部を一緒に混合する。この混合物を篩分けし、ポリビニルピロリドンの水溶液で湿らせて混練する。湿式粉砕して乾燥させる。この粒状物と残りのコーンスターチとステアリン酸マグネシウムとを篩にかけて混合する。混合物を圧縮して好適な形状及びサイズの錠剤を作製する。
【0013】
B) 錠剤 mg/錠
フリバンセリン 80
コーンスターチ 190
ラクトース 55
微結晶性セルロース 35
ポリビニルピロリドン 15
カルボキシメチルデンプンナトリウム 23
ステアリン酸マグネシウム 2
400mg
微粉砕した有効成分、コーンスターチの一部、ラクトース、微結晶性セルロース及びポリビニルピロリドンを一緒に混合する。この混合物を篩にかけ、残りのコーンスターチと水と一緒にして粒状物を形成し、乾燥及び篩分けを行う。カルボキシメチルデンプンナトリウムとステアリン酸マグネシウムとを添加して混和させ、混合物を圧縮して好適なサイズの錠剤に形成する。
C) 被覆錠剤 mg/被覆錠剤
フリバンセリン 5
コーンスターチ 41.5
ラクトース 30
ポリビニルピロリドン 3
ステアリン酸マグネシウム 0.5
80mg
【0014】
有効成分、コーンスターチ、ラクトース、ポリビニルピロリドンを完全に混和させ、水で湿らせる。湿った固まりを1mmメッシュの篩に押しこみ、約45℃で乾燥させた後、粒状物を同じ篩に通す。ステアリン酸マグネシウムを混和させた後、直径6mmの凸状錠剤コアを錠剤成形機で圧縮する。こうして作製された錠剤コアを、糖及びタルクから本質的になる被覆剤を使って公知の方法で被覆する。ワックスを用いて得られた被覆錠剤の艶出しを行う。
D) カプセル剤 mg/カプセル
フリバンセリン 150
コーンスターチ 268.5
ステアリン酸マグネシウム 1.5
420mg
有効成分とコーンスターチとを混合し、水で湿らせる。湿った固まりを篩にかけ乾燥させる。乾燥粒状物を篩にかけてステアリン酸マグネシウムと混合する。得られた混合物をゼラチン製硬カプセル(1号サイズ)に充填する。
E) アンプル液
フリバンセリン 50mg
塩化ナトリウム 50mg
注射用蒸留水 5ml
水のpH値又はpH5.5〜6.5でもよいが有効成分を水に溶解させ、塩化ナトリウムを添加して等張性にする。得られた溶液を発熱物質なしの濾過器で濾過し、濾液を無菌状態下でアンプルに移し入れた後、滅菌を行い融着により封止する。
【0015】
F) 座剤
フリバンセリン 50mg
固形脂肪 1650mg
1700mg
固形脂肪を溶融させ、粉砕した有効成分を40℃で均一に分散させる。これを38℃に冷やし、かるく冷却しておいた座剤の型の中に流し込む。
臨床試験の結果
以下、閉経前の女性における性的欲求障害の治療でフリバンセリンの効果を証明する臨床試験の実験的データを示す。
この臨床試験のデザインは、閉経前のHSDD女性患者に対して、フリバンセリン(1日の最高投与量合計:100mg、1日2回投与)とプラシーボの効果を比較するプロスペクティブ試験(多施設、12週間、無作為化二重盲検、プラシーボによる盲検法、概念検証(proof of concept)試験、並行群間比較試験)であった。75名の患者が各治療グループに無作為に割り付けられた。
この概念検証試験は、HSDDである健康な女性患者(DSM−IVマニュアルの基準で決定)に対してフリバンセリンで12週間の治療を行ったときに、臨床上意味のある治療反応が出たかどうかを評価できるようにデザインした。フリバンセリンの効力を並行プラシーボ群と比較して評価した。
およそ28日間のスクリーニング(治療を行わない)の後、試験適格患者を12週間の二重盲検に無作為分別した。この間、患者達は約12時間あけて朝と晩に試験薬を摂取することとした。
【0016】
【表1】

【0017】
患者は年齢18歳から45歳、DSM−IV基準による獲得型のHSDDと初期診断されている閉経前の女性とした。
現在の症状の発現が、ベースラインでの来診までに少なくとも24週間続いていなければならなかった。
ベースラインでの重篤度基準は、Arizona Sexual Experiences Scaleによるもので、性的欲求の項目でスコアが5または6(性的欲求が非常に弱いか全くない)である必要があった。(Mcgahuey CA.等、Psychiatric Annals 1999; 29(1): 39-45; McGahuey CA.等、J. Sex Marital Therapy 2000; 26: 25-44)
投与量の割付けは単純なランダム割付けで、8週で漸増を一回行うことができるものとした。最初の投与量は、朝晩錠剤一錠ずつとした。
できるかぎり12時間に近い間隔をあけて盲検対象の試験薬を摂取するように患者に指示した。10時間未満の間隔で服用しないことを勧告した。1回分の投与を忘れた場合は、次の予定の投与をスケジュール通りに摂取し、2回分を摂取しないこととした。試験薬の服用は毎回150ml(5オンス)の水と一緒にとるよう患者に指示した。審査人の見解で56日(8週)で有意な改善が患者に見られなかった場合、また、重篤な有害事象又は耐え難い有害事象がない場合は、1日あたりの錠剤の数を毎朝晩の1錠を2錠にすることとし、フリバンセリン投与量を50mg(1日2回)から100mg(1日2回)に増やし、プラシボ群の患者は1日2錠から1日4錠にしてプラシーボ錠剤の量を倍にする。
閉経前の女性のHSDD治療におけるフリバンセリンの効力を実証する有効性評価項目の1つとして、音声応答録音装置による女性の性行動質問アンケート(Interactive Voice Response - Female Sexual Behavior Questionnaire (IVR-FSBQ))を簡単な自己記入式質問書として作成し、電話を使ってアンケートを完成させて性的欲求に関連した感情および事象を評価した。容易に正しく使用できるようにするため、この臨床試験では、Healthcare Technology Systems社が策定、管理する音声応答録音装置(IVR)システムを介して週単位でFSBQを使用することとした。
【0018】
IVR-FSBQ(性的欲求に関するものにかぎるが)を下記に示す。
1.あなたは過去1週間に性行為又は性的幻想といった性的思考を何回抱きましたか?
過去1週間に全くない場合は、0を押してください。
過去1週間の中で1日の場合は、1を押してください。
過去1週間の中で2日の場合は、2を押してください。
過去1週間の中で3日以上であるが毎日ではない場合は、3を押してください。
過去1週間のうち、毎日の場合は、4を押してください。
過去1週間において、1日1回より多い場合は、5を押してください。
エンドポイントはFull Analysis Dataset(FAS)に基づいて分析した。特に指定のない限り、データ評価はLast Observation Carried Forward(LOCF)解析法を用いた。
性的欲求低下障害についてのDSM−IVマニュアルの基準に適合するには、欲望の欠乏についての重篤度の必要条件は「性的幻想や性的行為への欲望が乏しい(又は無い)ことがずっと続いているか反復的に続く」となる。そのため、「あなたは過去1週間に性行為又は性的幻想といった性的思考を何回抱きましたか?」というIVR-FSBQの質問1は、フリバンセリンが性的欲求障害を治療するかどうかを証明するのに最も重要である。本臨床試験の主な結果の1つはこの質問についての差異、即ち、フリバンセリンとプラシーボにより治療を行った患者間におけるベースラインからの月単位の平均的変化の差である。図1に、IVR-FSBQによる性的思考の頻度のベースラインからの月単位の平均変化のスコアをグラフを示す。図1により、閉経前の女性における性的欲求障害の治療におけるフリバンセリンの効果が明確に実証される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】IVR-FSBQによる性的思考の頻度についてのベースラインからの月単位の平均変化のスコアを表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性における閉経前の性的欲求障害治療用の医薬品を調製するための、遊離塩基、医薬的に許容される酸付加塩ならびに/或いは水和物及び/又は溶媒和物の状態であってもよいフリバンセリンの使用。
【請求項2】
前記閉経前の性的欲求障害が、閉経前の性的欲求低下障害、閉経前の性嫌悪障害、閉経前の性的欲求の喪失、閉経前の性的欲求の欠乏、閉経前の性的欲求の減退、閉経前の性的欲求の抑制、閉経前の性的衝動の喪失、閉経前の性的衝動障害、閉経前の性不感症からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記閉経前の性的欲求障害が、閉経前の性的欲求低下障害、閉経前の性嫌悪障害、閉経前の性的欲求の喪失、閉経前の性的欲求の欠乏、閉経前の性的欲求の減退、閉経前の性的欲求の抑制からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
前記閉経前の性的欲求障害が生来型であることを特徴とする、請求項1、2又は3記載の使用。
【請求項5】
前記閉経前の性的欲求障害が獲得型であることを特徴とする、請求項1、2又は3記載の使用。
【請求項6】
前記閉経前の性的欲求障害が全般型サブタイプであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記閉経前の性的欲求障害が状況型サブタイプであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
前記閉経前の性的欲求障害が心理学的因子によるものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
前記閉経前の性的欲求障害が器質的因子によるものであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
前記閉経前の性的欲求障害が混合因子によるものであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
前記フリバンセリンが、コハク酸、臭化水素酸、酢酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、乳酸、リン酸、塩酸、硫酸、酒石酸、クエン酸及びその混合物から選択される酸により形成される塩から選択される医薬的に許容される酸付加塩の状態で適用されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
前記フリバンセリンが遊離塩基の状態で適用されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
前記フリバンセリンが、前記遊離塩基の同質異像Aの状態で適用され、DSCによる融点が約161℃である、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記フリバンセリンが1日あたり0.1〜400mgの範囲の投与量で適用されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項記載の使用。
【請求項15】
前記フリバンセリンが、ある期間にわたって連続的に1日1回又は2回投与されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項記載の使用。
【請求項16】
前記フリバンセリンが朝と晩に投与され、好ましくは朝1回(フリバンセリン25mg又は50mg)及び夜1回(フリバンセリン25mg又は50mg)投与されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項記載の使用。
【請求項17】
前記フリバンセリンが、ある期間にわたって連続的に晩のみ1回投与(フリバンセリン50mg又は100mg)されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−514929(P2009−514929A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539417(P2008−539417)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068118
【国際公開番号】WO2007/054476
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】