開き戸の閉鎖アシスト装置
【課題】誤動作発生状態において、平常動作に復帰させる手間を省くとともに装置の損傷を効果的に防止する。
【解決手段】キャッチャー5と、アシスト範囲内においてキャッチャー5に係合することにより扉の回動に伴って待機位置と初期位置S1との間で回動可能な係合回動部32と、係合回動部32を初期位置S1側に付勢する付勢部材と、平常動作で、扉の開放動作時に待機位置に至った係合回動部32を待機位置に停止保持し、かつ扉の閉鎖動作時に係合回動部32とキャッチャー5とが係合することにより保持状態を解除する保持機構と、扉の閉鎖動作時に係合回動部32とキャッチャー5とが係合するまでの間に、保持機構による保持状態が解除されて係合回動部32が初期位置S1に戻る誤動作発生状態で、扉の閉鎖動作に伴って初期位置S1にある係合回動部32とキャッチャー5との係合状態を平常動作時の状態に復帰させる係合復帰機構522,523とを備える。
【解決手段】キャッチャー5と、アシスト範囲内においてキャッチャー5に係合することにより扉の回動に伴って待機位置と初期位置S1との間で回動可能な係合回動部32と、係合回動部32を初期位置S1側に付勢する付勢部材と、平常動作で、扉の開放動作時に待機位置に至った係合回動部32を待機位置に停止保持し、かつ扉の閉鎖動作時に係合回動部32とキャッチャー5とが係合することにより保持状態を解除する保持機構と、扉の閉鎖動作時に係合回動部32とキャッチャー5とが係合するまでの間に、保持機構による保持状態が解除されて係合回動部32が初期位置S1に戻る誤動作発生状態で、扉の閉鎖動作に伴って初期位置S1にある係合回動部32とキャッチャー5との係合状態を平常動作時の状態に復帰させる係合復帰機構522,523とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸枠に対し回転軸を中心に正逆回動して開口部を開閉する開き戸式の扉の所定の回動途中位置から閉鎖位置までの特定範囲に亘って閉じ(閉鎖)方向の回動アシスト力を加える開き戸の閉鎖アシスト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋等の開口部においては、垂直回転軸を中心に正逆回動して開口部を開閉する開き戸式の扉が広く用いられている。これらの開き戸式の扉の中には、当該扉に対し閉鎖方向の回動アシスト力を付与する開き戸の閉鎖アシスト装置、いわゆるドアクローザーが取り付けられているものがある。近年、この開き戸の閉鎖アシスト装置において、扉の全開位置から全閉位置までの全範囲に亘って閉鎖方向の回動アシスト力を付与する全行程型の閉鎖アシスト装置に代わって、扉の全閉直前の所定回動途中位置から全閉位置までの一部範囲に亘って閉鎖方向の回動アシスト力を付与する一部行程型の閉鎖アシスト装置が見受けられるようになってきている。
【0003】
この一部行程型の開き戸の閉鎖アシスト装置は、例えば特許文献1に示されるように、家屋等の開口部の上枠に取着される基体と、基体に対して垂直中心軸まわりに回動可能なアーム体と、アーム体の遊端部に垂直連結軸まわりに回動可能に連結される係合体と、アーム体及び係合体を扉支持側枠に対する接近方向へ回動付勢する付勢手段と、係合体の凹部が扉に向かう位置でアーム体及び係合体が回動しない停留状態とする停留保持手段と、上記停留状態において、扉の凹部の対向位置に設けられる駆動体とを備えたものが知られている。
【0004】
この開き戸の閉鎖アシスト装置は、平常動作として、扉の全開状態から扉を閉じると、駆動体が係合体の凹部に係合してこの係合体の停留状態が解除され、付勢手段によりアーム体及び係合体が扉支持側枠に近づく方向へ回動して開き戸が閉状態となり、該閉状態から扉を開方向へ移動させることにより、アーム体及び係合体が上記扉支持側枠から離れる方向へ回動して所定位置で上記停留状態となり、駆動体と係合体との係合が解除されるように構成されている。
【0005】
この種の閉鎖アシスト装置は、全行程型の閉鎖アシスト装置と比べて、上記一部範囲にのみ、扉に対して閉鎖方向の回動アシスト力を付与するので、例えば全開状態、あるいは一部範囲を超える所定の開放状態で扉を開放しておくことができ、操作性や使い勝手を向上させることができ、便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−177459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の開き戸の閉鎖アシスト装置では、停留状態保持手段が、停留状態の係合体に対して付勢手段の付勢力が扉支持側枠に対する離反方向へ作用するように構成されるとともに、扉を閉じる際の回動に伴い駆動体が係合体に係合することにより係合体が移動して付勢手段の付勢力が扉支持側枠に対する接近方向へ作用するように構成された比較的単純な構造のものが多いため、上記扉の開動作に伴う衝撃や、扉の開状態時における当該停留状態保持手段の動作不良などにより、扉を閉じる際に駆動体が係合体の凹部に係合するまでに、上記停留状態保持手段による停留状態が解除されて係合体が扉支持側枠に対する接近方向へ移動して全閉位置に対応する初期状態に戻るという誤動作が発生する場合がある。
【0008】
従来の閉鎖アシスト装置では、このような誤動作発生状態にあることを気付いた場合には、扉を開いて係合体の係合片に設けられたつまみ部を操作して、手動で初期位置にある係合体を停留状態に移動して、駆動体と係合体凹部の係合状態を適正な状態に復帰させる必要があり、面倒であるという問題があった。
【0009】
また、誤動作発生状態にあることを気付かずに、開状態にある扉を勢いよく閉じた場合には、駆動体が係合片に勢いよく衝突し、駆動体及び係合片の少なくとも一方が損傷することも懸念される。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、上記誤動作発生状態において自動で適正な状態に復帰させ、これにより平常動作に復帰させる手間を省き、利便性を向上させるとともに、誤動作発生状態における装置の損傷を効果的に防止できる開き戸の閉鎖アシスト装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明に係る開き戸の閉鎖アシスト装置は、戸枠に対して回動することにより開口部を開閉する扉の回動途中位置から閉鎖位置まで当該扉に対して閉鎖方向の回動アシスト力を付与する開き戸の閉鎖アシスト装置において、上記扉と戸枠のいずれか一方に設けられた固定係合部と、この扉と戸枠のいずれか他方に一端部が軸支された状態で設けられ、他端部が上記アシスト範囲内において上記固定係合部に係合することにより扉の回動に伴って扉の回動途中位置に対応する待機位置と扉の閉鎖位置に対応する初期位置との間で回動可能で、かつ平常動作として、扉の開放動作時に、上記固定係合部と係合することによって初期位置から待機位置に回動され、待機位置に達することにより上記固定係合部との係合が解除される一方、扉の閉鎖動作時に上記扉の回動途中位置で上記固定係合部と係合する係合回動部と、この係合回動部を上記初期位置側に付勢する付勢部材と、上記平常動作で、扉の開放動作時に上記待機位置に至った係合回動部を上記付勢部材の付勢力に抗して当該待機位置に停止保持するとともに扉の閉鎖動作時に上記係合回動部と固定係合部とが係合することにより保持状態を解除する保持機構と、扉の閉鎖動作時に上記係合回動部と固定係合部とが係合するまでの間に、上記保持機構による保持状態が解除されて係合回動部が上記待機位置から上記初期位置に戻る誤動作発生状態で、扉の閉鎖動作に伴って初期位置にある係合回動部と固定係合部との係合状態を上記平常動作時の状態に復帰させる係合復帰機構とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
なお、上記アシスト範囲とは、扉における上記回動途中位置から閉鎖位置までの所定の範囲をいう。
【0013】
この発明によれば、平常動作として、扉の閉鎖(全閉)位置からの開放動作時に、上記係合回動部と固定係合部とが係合することによって上記係合回動部が付勢部材による付勢力に抗しながら初期位置から待機位置に回動し、当該係合回動部が待機位置に達することにより係合回動部と上記固定係合部との係合が解除されるとともに上記保持機構によって係合回動部が待機位置に停止保持され、一方、扉の全開位置からの閉鎖動作時に扉の上記回動途中位置において上記係合回動部と固定係合部とが係合することによって保持機構による上記係合回動部の保持状態が解放されて上記付勢部材の付勢力が係合回動部及び固定係合部を介して扉に閉鎖方向の回動アシスト力として付与される。従って、扉の所定の回動途中位置から閉鎖位置までの所定の範囲に亘って扉に対して閉鎖方向の回動アシスト力を付与することができるので、扉の閉め残しを防止することができるとともに、上記範囲(アシスト範囲)を越えて扉が開放された場合には扉に回動アシスト力が作用しないから、扉を開放状態のまま維持することができ、その操作性、利便性が向上する。
【0014】
またこの発明によれば、扉の閉鎖動作時に上記係合回動部と固定係合部とが係合するまでの間に、上記保持機構による保持状態が解除されて係合回動部が上記待機位置から上記初期位置に戻る誤動作発生状態で、扉の閉鎖動作に伴って初期位置にある係合回動部と固定係合部との係合状態を平常動作時の状態に復帰させる係合復帰機構を更に備えるので、手動で係合回動部と固定係合部との係合状態を平常動作時の状態に復帰させる必要がなく、扉の閉鎖動作に伴って自動的に係合回動部と固定係合部との係合状態を平常動作時の状態に復帰させることができる。このため、平常動作に復帰させるための手間が省かれ、利便性が向上するとともに、誤動作発生状態において、扉を勢いよく閉じた場合でも係合回動部と固定係合部に衝撃力がそのまま伝わることがなく、装置の損傷を効果的に防止することができる。
【0015】
この発明において、上記係合回動部及び固定係合部のいずれか一方に、他方に係合する係合ピンが設けられ、係合回動部及び固定係合部のいずれか他方に扉の回動に伴って開口一端部と他端部との間でこの係合ピンを案内することにより上記係合回動部を待機位置と初期位置との間で回動させるガイド溝を相互の間に形成する一対のガイドレール部が設けられ、上記係合復帰機構は、上記一対のガイドレール部のうち上記誤動作発生状態における扉の閉鎖動作において上記係合ピンに近接する側の一のガイドレール部を、上記ガイド溝の開口一端部側から他端部側へ退入させるように構成されているのが好ましい(請求項2)。
【0016】
すなわち、平常動作では、上記アシスト範囲を超える開放状態の扉の閉鎖時に、扉が回動途中位置に達することにより係合ピンがガイド溝の開口一端部に挿入されて係合回動部と固定係合部とが係合される。そして、保持機構による係合回動部の保持状態が解除されて付勢部材の付勢力が係合回動部に伝達されることにより係合ピンが上記ガイドレール部の内側面に係合しつつガイド溝の他端部に案内される。このガイド溝における開口一端部から他端部への係合ピンの移動に伴い、係合回動部も待機位置から初期位置に回動される。
【0017】
一方、閉鎖状態の扉の開放時には、この扉の回動に伴って係合ピンがガイド溝に沿って他端部から開口一端部側に案内され、係合回動部は付勢部材による付勢力に抗しながら初期位置から待機位置にまで回動される。そして、そのまま扉が開かれることにより係合ピンがガイド溝からその開口一端部を通じて脱出して係合回動部と固定係合部との係合状態が解除されるとともに保持機構によって係合回動部が待機位置に保持される。
【0018】
このように係合回動部及び固定係合部のいずれか一方に設けられた係合ピンが、他方に設けられた一対のガイドレール部の相互間に形成されたガイド溝に沿って案内されることにより、係合回動部と固定係合部との係合状態を確実に維持しつつ、扉の開閉を円滑に行うことができる。
【0019】
一方、上記誤動作発生状態では係合回動部は初期位置に戻っているため、扉が上記アシスト範囲を超えて開放されている状態においても、係合ピンが上記ガイドレール部との相対的位置関係においてはガイド溝の他端部に対応した位置に存在することになる。従って、従来の閉鎖アシスト装置のような構成では、この状態で扉が閉鎖された場合には、上記一のガイドレール部が障壁になって係合ピンを適正にガイド溝の他端部に位置させることができない。
【0020】
しかしながら、この発明において、上記係合復帰機構は、上記一対のガイドレール部のうち上記誤動作発生状態における扉の閉鎖動作において上記係合ピンに近接する側の一のガイドレール部を、上記ガイド溝の開口一端部側から他端部側へ退入させるように構成されているので、扉の閉鎖動作に伴って、上記係合ピンに近接する側の一のガイドレール部がガイド溝の開口一端部側から他端部側に退入させることによりガイド溝の一側方が開放され、この開放部を通じて係合ピンをガイド溝に導入させることができる。従って、上記一のガイドレール部を退入させるという簡単な構成で、上記係合回動部と固定係合部との係合状態を平常動作時の状態に復帰させることができる。
【0021】
係合復帰機構を上記のように退入させるように構成した場合には、上記係合復帰機構は、上記一のガイドレール部に設けられ扉の閉鎖動作に伴い上記係合ピンに当接する傾斜案内面と、この一のガイドレール部をガイド溝の開口一端部側に付勢するレール付勢部材とを備え、扉の閉鎖動作に伴い係合ピンが上記傾斜案内面に当接することにより上記一のガイドレール部を退入させて上記係合ピンをガイド溝内に導入させ、その後、上記レール付勢部材の復元力により上記一のガイドレール部を元の位置に戻すように構成されているのが好ましい(請求項3)。
【0022】
このように構成すれば、傾斜案内面とレール付勢部材という比較的簡単な構成で上記一のガイドレール部を退入させることができ、より簡単な構造で係合復帰機構を構成することができる。
【0023】
上記係合ピンが上記固定係合部に設けられるとともに上記ガイドレール部及び係合復帰機構が上記係合回動部に設けられるものであってもよいが、上記係合ピンは係合回動部に設けられ、上記ガイドレール部及び係合復帰機構は固定係合部に設けられているのが好ましい(請求項4)。
【0024】
このように構成すれば、係合復帰機構を回動動作しない固定係合部に設けることができ、これにより係合回動部の円滑な回動を担保しつつ、上記ガイドレール部を退入させる係合復帰機構の確実な動作性を担保することができる。
【0025】
この場合でも、係合回動部の具体的構成は特に限定するものではなく、例えば係合回動部を構成する複数本のアームを設け、このアーム間に係合ピンを架設するように構成されるものであってもよいが、上記係合回動部は上記扉の上部側面に設けられ、上記固定係合部は上記戸枠の上部に設けられ、上記係合ピンは係合回動部の上記他端部に少なくとも上方に突出して設けられているのが好ましい(請求項5)。
【0026】
すなわち、これらの閉鎖アシスト装置は、扉及び戸枠の上部に設けられているのが外観体裁上好ましい。またこのように係合ピンが係合回動部の上記他端部に少なくとも上方に突出して設けられているので、固定係合部が戸枠の上枠下面に接して設けられている場合でも上記係合ピンとガイドレール部との確実な係合状態を担保することができ、外観体裁を良好にしつつ、装置の確実な動作性を担保することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る開き戸の閉鎖アシスト装置によれば、係合回動部が予期せず初期位置に戻る誤動作発生状態においても、扉の閉鎖動作に伴い自動で平常動作時の状態に復帰させることができ、これにより平常動作に復帰させる手間暇を省き、利便性を向上させるとともに、誤動作発生状態における装置の損傷を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る一実施形態における開き戸の閉鎖アシスト装置の全体概略を示す斜視図である。
【図2】同閉鎖アシスト装置の全体概略を示す平面図である。
【図3】上記一実施形態における装置本体を示す分解斜視図である。
【図4】アッパーケースを外した状態で同装置本体を示す側面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】上記一実施形態におけるキャッチャーを示す分解斜視図である。
【図7】同キャッチャーを示す横断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】扉が全閉位置にある場合の上記閉鎖アシスト装置を示す概念図である。
【図10】扉閉鎖時において扉が回動途中位置にある場合の上記閉鎖アシスト装置を示す概念図である。
【図11】誤動作発生状態における上記閉鎖アシスト装置を示す概念図である。
【図12】誤動作発生状態から平常動作に復帰させる過程における上記閉鎖アシスト装置を示す概念図である。
【図13】ギヤ列について他の実施形態を示す断面図である。
【図14】係合回動部について他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の閉鎖アシスト装置は片開きであって左開きの扉に適用したものであるが、本発明に係る閉鎖アシスト装置は開き戸の種類や開き勝手の方向にかかわらず、開き戸であればいずれの扉にも適用することができる。
【0030】
図1は開き戸の閉鎖アシスト装置の全体概略を示す斜視図であり、図2は同側面図である。この閉鎖アシスト装置(以下単に「アシスト装置」という。)が取り付けられる開き戸Dは、戸枠D1と、この戸枠D1の一の側枠D10に丁番を介して取り付けられた扉D2とを有し、扉D2が、丁番により構成される回転軸D3を中心に、全開位置(開放位置)P1と全閉位置(閉鎖位置)P2との間を戸枠D1に対し正逆回動して、家屋等の開口部D4を開閉する片開き式のものである。
【0031】
このアシスト装置は、図2に示すように、扉D2の所定の回動途中位置P3から全閉位置P2までの特定のアシスト範囲Rに亘って閉鎖方向の回動アシスト力を扉D2に加えるように構成されている。
【0032】
上記所定の回動途中位置P3は、扉D2の閉鎖動作時においてアシスト装置が扉D2に対して回動アシスト力を付与し始める扉D2の位置をいい、扉D2の全開位置P1から全閉位置P2までの途中で適宜設定される。本実施形態では、扉D2の回動途中位置P3は、扉D2に設けられる不図示のラッチボルトが戸枠D1の側枠内面に当接する直前位置に設定されている。すなわち、上記ラッチボルトが戸枠D1に当接することで扉D2の閉鎖動作に対し抵抗を生じ、この抵抗に基づき閉め残しが発生する場合があるが、回動途中位置P3を上記のように設定することにより、上記抵抗の発生にかかわらずアシスト装置の回動アシスト力により扉D2を確実に閉鎖することができる。
【0033】
アシスト装置は、扉D2における戸当たり部D11側の側面における上部に設けられた装置本体3と、この装置本体3に対応する高さ位置における戸枠D1の内側面に設けられたキャッチャー5(固定係合部に相当する)とを備え、扉D2のアシスト範囲R内で装置本体3とキャッチャー5とが協働することにより、扉D2の開放動作に伴い装置本体3に回動アシスト力が蓄積されるとともに、扉D2の閉鎖動作に伴い装置本体3の回動アシスト力が扉D2に付与されるように構成されている。以下、このアシスト装置の具体的構成について説明する。
【0034】
図3は装置本体3の分解斜視図であり、図4はアッパーケースを外した状態における装置本体3の側面図であり、図5は図4におけるV−V線断面図である。なお、これらの図において、説明の便宜のため、+X方向を右方向、+Y方向を前方向、+Z方向を上方向として以下に説明する。
【0035】
装置本体3は、ケース31と、このケース31の上下側壁部に一端部が軸支され、他端部がアシスト範囲R内においてキャッチャー5の後述するガイドレール部52に係合することにより扉D2の回動に伴って扉D2の閉鎖位置P2に対応する初期位置S1と扉D2の回動途中位置P3に対応する待機位置S2との間で回動可能な係合回動部32と、この係合回動部32を初期位置S1側に付勢する付勢部材33と、この付勢部材33の付勢力を係合回動部32に伝達するギヤ列34と、係合回動部32の待機位置S2から初期位置S1への回動に対し抵抗を付与する緩衝機構35と、扉D2の開放動作時に待機位置S2に至った係合回動部32を付勢部材33の付勢力に抗して当該待機位置S2に停止保持するとともに扉D2の閉鎖動作時に係合回動部32とキャッチャー5の後述するガイドレール部52とが係合することにより保持状態を解除する保持機構36とを備える。
【0036】
ケース31は、装置本体3をユニット化するものであり、後壁部に設けられた貫通孔を通じて木ねじ等により扉D2の上部における右端部に取り付けられている。またケース31は、略直方体の箱状体を呈し、内部に係合回動部32と付勢部材とギヤ列34と緩衝機構35と保持機構36とが収容されている。このケース31の具体的構成は特に限定するものではないが、本実施形態では、上方開口型のロアケース311と、このロアケース311の開口部を閉塞するアッパーケース312とを備え、両ケース311,312がネジ留めされるなど公知の組付手段(不図示)により箱状に組み付けられている。これらのロアケース311及びアッパーケース312には、係合回動部32の後述する2本のアーム321の他端部をケース31から外方に突出させて係合回動部32が初期位置S1と待機位置S2との間で姿勢変更できるように、左右ないしは前後に細長い貫通溝313が上下対称位置に設けられている。なお、このケース31に設けられる貫通溝313の具体的形状は、係合回動部32のアーム321の本数や厚さなど、係合回動部32の具体的構成に応じて適宜変更される。
【0037】
係合回動部32は、上記したように、アシスト範囲R内においてキャッチャー5のガイドレール部52と係合することにより初期位置S1と待機位置S2との間で回動する。なお、これらの初期位置S1と待機位置S2は、ケース31(又は扉D2)も対する係合回動部32の姿勢、言い換えればケース31(又は扉D2)に対する係合回動部32の相対的な位置をいう。
【0038】
具体的には、係合回動部32は、垂直中心軸C1周りに回動可能にケース31に軸支された2本のアーム321と、このアーム321間に架設された係合ピン322とを備え、全体として側面視略コの字状に形成されている。
【0039】
2本のアーム321は、それぞれ水平方向に平行に延びる長尺偏平柱体として構成され、一端部に取付孔321aが上下方向に貫設されているとともに、他端部間に係合ピン322が架設されている。このアーム321は、その取付孔321aに不図示の回転軸が挿入され、この回転軸の先端部がロアケース311の上下側壁部に設けられた取付孔311aに固定されることにより、ケース31の上下側壁部に回動可能に取り付けられている。
【0040】
係合ピン322は、キャッチャー5のガイドレール部52と係合するものであり、上下方向に延びる円柱体として構成されている。このように、係合ピン322の水平断面の外形が円形に構成されるなど、係合ピン322におけるガイドレール部52との係合面が円弧状に湾曲して構成されることにより、ガイドレール部52と摩擦を低減して係合ピン322とガイドレール部52とを係合させつつ円滑に移動させることができ、ひいてはアシスト範囲R内における係合回動部32の動作を円滑に行うことができる。また、本実施形態では、係合ピン322がアーム321に対して固設されているが、係合ピン322とガイドレール部52との摩擦を低減する観点から、係合ピン322をアーム321に対して垂直回転軸を中心に回動自在に設けられるものであってもよい。
【0041】
なお、本実施形態では、係合回動部32は、アーム321と係合ピン322が別体として構成されているが、これらのアームと係合ピンとを一体に形成してもよい。
【0042】
ギヤ列34は、アシスト範囲R内において、扉D2の開放動作時に係合回動部32の回動力を付勢部材33に伝達するとともに、扉D2の閉鎖動作時に付勢部材33の付勢力を係合回動部32に伝達するものであり、複数の歯車から構成されている。
【0043】
具体的には、ギヤ列34は、係合回動部32のアーム321のうち一のアーム321(本実施形態では上方に位置するアーム)の一端部における上下方向内側面に取り付けられた扇型かさ歯車341と、この扇型かさ歯車341に噛合する小径かさ歯車342と、この小径かさ歯車342と中心軸C2を共通にして当該歯車342と供回りする大径歯車343と、この大径歯車343に噛合する被付勢歯車344とを備え、これらの歯車341〜344を介して係合回動部32と付勢部材33との間で回動力又は付勢力を伝達するものとなされている。
【0044】
扇形かさ歯車341は、係合回動部32の回転中心軸である垂直中心軸C1周りに回動する歯車であって、当該係合回動部32の回動とともに回動する。この扇形かさ歯車341は、略扇形に形成され、その円弧部分における円錐状のピッチ面に歯が設けられている。この歯の形成範囲は、少なくとも係合回動部32が図5に示す初期位置S1と待機位置S2(二点鎖線で示す)との間で回動した場合にその全範囲に亘って小径かさ歯車342と噛合可能な範囲に設定され、係合回動部32の回動力を全範囲に亘って小径かさ歯車342に伝達可能に構成されている。
【0045】
小径かさ歯車342は、前後方向に延びる水平中心軸C2周りに回動する歯車であり、円錐型のピッチ面を有する。この小径かさ歯車342は、その中心軸C2を一致させた状態で大径歯車343に固定され、大径歯車343と供回りするように構成されている。これらの小径かさ歯車342及び大径歯車343は、図4に矢印で示すように、平常動作で扉のアシスト範囲R内における開閉動作に伴い正逆回動(扉開放時:D1方向、扉閉鎖時:D2方向)し、その動力を被付勢歯車344に伝達するものとなされている。
【0046】
大径歯車343は、小径かさ歯車342よりも基礎円直径が大きく設定された平歯車であり、周面の一部範囲にのみ歯が形成されている。この歯の形成範囲は、扇形かさ歯車341と同様に、少なくとも係合回動部32が図5に示す初期位置S1と待機位置S2(二点鎖線で示す)との間で回動した場合にその全範囲に亘って被付勢歯車と噛合可能な範囲に設定されている。この大径歯車343の歯が形成されていない範囲における周面の所定部分には径方向に突出する保持突部362が設けられている。保持突部362は、大径歯車343の周方向に位置する面が傾斜面として構成され、正逆回動に伴い後述する捩りコイルバネ361の腕部361cの案内を円滑に行うようになされている。
【0047】
この保持突部362は、係合回動部32が待機位置S2にある場合に、捩りコイルバネ361の一端部に係合して付勢部材33の付勢力に基づき図4に示すD2方向に回動しようとする大径歯車343の回動を停止保持するものである。従って、大径歯車343における保持突部362が設けられる位置は、係合回動部32が待機位置S2にある場合に捩りコイルバネ361の一端部に係合される位置に適宜設定されている。すなわち、本実施形態では、この保持突部362と捩りコイルバネ361とにより保持機構36が構成されている。
【0048】
捩りコイルバネ361は、図3及び図4に示すように、その巻部361aがロアケース311の後壁部の右側端部に突設された取付ボス311bに挿入され、一方の腕部361bがロアケース311の右側壁部内面に圧接するとともに、他方の腕部361cが大径歯車343の外周面に圧接した状態でロアケース311内に配置固定されている。この腕部361cの先端部は、大径歯車343の保持突部362の上記傾斜面に合わせて屈曲しており、保持突部362と確実に係脱できるように構成されている。この保持機構36の具体的な作用については後述するので、ここではその説明を省略する。
【0049】
一方、被付勢歯車344は、前後方向に延びる水平中心軸C3周りに正逆回動するギヤ部344aと、その前方に重ね合わされた重合板344bとを備える。重合板344bは、ギヤ部344aと略同径の円盤体であり、その周縁部に付勢部材33である引張コイルバネの一端部が係止される係止軸344cが前方に突出して設けられている。すなわちこの被付勢歯車344は、係合回動部32の待機位置S2への回動に伴って図4に示すD1方向へ回動することにより付勢部材33によりD2方向に付勢される。係止軸344cは、係合回動部32が初期位置S1にある場合に付勢部材33である引張コイルバネが無伸長状態、ないしは若干伸長した状態となる位置に設けられ、係合回動部32が待機位置S2にある場合でも後述するロアケース311に設けられた固定軸311cと回転中心軸C3とを結ぶ延長線上よりもD2方向に係止軸344cが位置するように、ギヤ部344aの回動角等が適宜設定されている。
【0050】
なお、本実施形態では、扉D2のラッチボルトが戸枠D1の側枠に当接する際に、被付勢歯車344の回動に伴って移動する係止軸344cにおける円弧軌跡の接線方向と付勢部材33である引張コイルバネの中心軸とが略一致するように設定されており、ラッチボルトの戸枠D1への当接により付勢部材33による曲げモーメントが効果的に作用するようになされている。
【0051】
付勢部材33は、本実施形態では引張コイルバネとして構成され、一端部が被付勢歯車344の係止軸344cに係止され、他端部がロアケース311の後壁部に突設された固定軸311cに係止され、図4に示す被付勢歯車344のD1方向への回動により引張され、これにより被付勢歯車344をD2方向に付勢するように構成されている。
【0052】
また、上記被付勢歯車344のギヤ部344aは、緩衝機構35としてのロータリーダンパーに噛合している。このロータリーダンパー35は、後方に配置され、被付勢歯車344のギヤ部344aに噛合する入力ギヤ351と、この入力ギヤ351を挟んで上下に配置され、該入力ギヤ351の厚みよりも長く形成された取付ボス352とを有し、この取付ボスに設けられたネジ孔353を通して不図示のネジによりロアケース311の後壁部に取り付けられている。このロータリーダンパー35は、両方向性のダンパを用いるものであってもよいが、本実施形態では一方向性のダンパが用いられており、被付勢歯車344のD2方向(図4参照)への回動に対してのみ抵抗を付与するようになされている。
【0053】
次にキャッチャー5について説明する。図6はキャッチャーを示す分解斜視図である。図7は同キャッチャーの横断面図であり、図8はこの図7のVIII−VIII線断面図である。これらの図6〜図8においても、説明の便宜のため、+X方向を右方向、+Y方向を前方向、+Z方向を上方向として以下に説明する。
【0054】
キャッチャー5は、ブロック状の基部51と、この基部51の左側面から左方に突出する前後一対のガイドレール部52とを備え、これら一対のガイドレール部52間に、扉D2の回動に伴って開口一端部526と他端部527との間で係合ピン322を案内するガイド溝525が形成されている。
【0055】
基部51は、略直方体状のブロック体であり、前方側に位置するガイドレール部52の前後に穿設された取付孔511に木ねじ等が挿通され、この木ねじ等が戸枠D1の側枠内面にねじ込まれること等により、戸枠D1の所定位置にキャッチャー5を取り付けるものである。また、基部51には、後述の可動ガイドレール部522の進退を案内するレールガイド孔512が戸枠D1の側枠内側面の法線方向(図では左右方向)に沿って設けられている。このレールガイド孔512は、上方に開口し、この開口部512aを通じて可動ガイドレール部522をレールガイド孔512内に導入できるように構成されている。また、レールガイド孔512には、収納された可動ガイドレール部522の先端部を基部51から左方に向かって突出させるためのレール突出孔513に連通している。レール突出孔513は、図8に示すように、レールガイド孔512よりも上下方向の幅が若干縮幅して形成されており、この縮幅による段部に可動ガイドレール部522の基端部が干渉することにより、レール突出孔513を通じた可動ガイドレール部522の抜出が防止されている。
【0056】
ガイドレール部52は、基部51に一体的に設けられた固定ガイドレール部521と、基部51のレールガイド孔512に案内されることにより基部51に対して進退する可動ガイドレール部522と、可動レール部522を突出方向に付勢するレール付勢部材523とを備え、可動ガイドレール部522がレール付勢部材523の付勢力に抗してガイド溝525に沿って退入することによりガイド溝525の後方側が開放されるように構成されている。
【0057】
固定ガイドレール部521は、基部51の左側面前方よりに左方に突出して形成された角柱状体であり、進出状態の可動ガイドレール部522よりも若干長く形成されている。この固定ガイドレール部521は、ガイド溝525の一側縁を形成し、扉D2の閉鎖動作時に後壁面先端部に係合ピン322が当接される。
【0058】
この固定ガイドレール部521に対して、係合ピン322の直径よりも若干長い距離を隔てて可動ガイドレール部522が配設されている。そして、上記したように、この固定ガイドレール部521と可動ガイドレール部522との間に、係合ピン322が案内されるガイド溝525が形成されている。
【0059】
可動ガイドレール部522は、平面視略台形状の柱状体として構成され、基端部(右端部)が上下方向に突出することにより抜出防止段部522aが設けられている。この抜出防止段部522aの段面には、それぞれゴム等の弾性体からなる緩衝板522bが固定されている。この緩衝板522bの先端面(左側面)は、可動ガイドレール部522の進出状態で、基部51のレールガイド孔512とレール突出孔513との間の段部に当接することにより、レール突出孔513を通じた可動ガイドレール部522の抜出が防止されるものとなされている。
【0060】
また、可動ガイドレール部522は、先端面がガイド溝525側に向かって可動ガイドレール部522の突出方向基端側から先端側に傾斜する傾斜案内面522cとして構成されている。この傾斜案内面522cは、後述する誤動作発生状態において扉D2の閉鎖動作に伴ってこの傾斜案内面522cに係合ピン322が当接することにより、係合ピン322がこの傾斜案内面522cに沿って可動ガイドレール部522をレール付勢部材523による付勢力に抗して押し下げ、これにより可動ガイドレール部522がガイド溝525の開口一端部526側から他端部527側に退入し、ガイド溝525の後方側が開放された状態になり、この開放部を通して係合ピン322がガイド溝525内に導入される。そして、係合ピン322がガイド溝525内に導入されることにより、係合ピン322と傾斜案内面522cとの係合状態が解除されて、可動ガイドレール部522はレール付勢部材523の付勢力により退入位置から緩衝板522bの先端面がレールガイド孔512とレール突出孔513との間の段部に当接するまで進出される。
【0061】
すなわち、傾斜案内面522cを備える可動ガイドレール部522とこのガイドレール部522をガイド溝525の他端部527側から開口一端部526側に付勢するレール付勢部材523とが本発明の係合復帰機構を構成している。
【0062】
一方、レール付勢部材523は、可動ガイドレール部522をその突出方向に付勢できるものであれば、その具体的構成を特に限定するものではないが、本実施形態では、圧縮コイルバネとして構成されている。この圧縮コイルバネ523の一端部は可動ガイドレール部522の基端面(右側面)に固定され、他端部はレールガイド孔512の奥底部に設けられたバネ取付凹部512b内に固定されている。
【0063】
以上のように構成されたアシスト装置を、例えば次のようにして開き戸Dに取り付ける。
【0064】
すなわち、まず図1及び図2に示すように、回転軸D3が設けられた側枠とは反対側の側枠上部にキャッチャー5を取り付ける。具体的には、戸枠D1の上枠から所定の高さ下がった位置であって、戸当たり部D11を基準に扉D2側と反対側の位置に、ガイドレール部52のうち可動ガイドレール部522が扉D2に近接した状態で設置する。このとき、キャッチャー5の基部51における後壁面は、戸当たり部D11に当接した状態に配置する。上記所定の高さは、扉D2に対する装置本体3の設置可能高さのうち最上位に当該装置本体3を設置する場合には、少なくとも上枠の戸当たり部の高さと、係合回動部32のアーム321の厚みとを加えた干渉回避寸法よりも下方であって、上記干渉回避寸法に係合ピン322の長さを加えた寸法よりも上方の範囲内で設定する。
【0065】
そして、上記戸枠D1に対する位置に、基部51の取付孔511に木ねじを挿入し、この木ねじを側枠にねじ込むことによってキャッチャー5を側枠に取り付ける。
【0066】
続いて、装置本体3を扉D2に取り付ける。すなわち、例えば扉D2を閉鎖してから、初期位置S1に係合回動部32がある装置本体3を、キャッチャー5のガイド溝525の他端部527に係合ピン322を位置させる態様で設置する。このとき、ガイドレール部52に対する係合ピン322の高さ位置は、係合ピン322の中央部よりも若干下方寄りの位置をガイドレール部52の高さ位置に設定するのが好ましい。すなわち、扉D2はその使用に伴い回転軸D3が他方の側枠側に傾く傾向にあり、上記のような係合ピン322とガイドレール部52との相対的な位置関係で設置することにより、上記扉D2の傾きに対しても係合ピン322とガイドレール部52とを確実に係合させてアシスト装置を正常に作動させることができる。
【0067】
以上のように開き戸に取り付けられたアシスト装置は、平常動作として、次のように作動する。図9は扉が全閉位置にある場合のアシスト装置を示す概念図であり、図10は開放状態にある扉の閉鎖動作時において扉が回動途中位置にある場合のアシスト装置を示す概念図である。
【0068】
図9において実線で示された扉D2は閉鎖位置にある状態である。この状態では、係合回動部32は、そのアーム321が扉D2に略平行な姿勢を保つとともに係合ピン322がキャッチャー5のガイド溝525の他端部527に位置した、初期位置S1に存在する。
【0069】
この閉鎖位置にある扉D2を不図示のノブを把持して開放すると、扉D2は回転軸D3(図2参照)を中心に回動し、これに伴い係合ピン322が可動ガイドレール部522の内側面(ガイド溝525側の側面)に係合して、係合回動部32が垂直中心軸C1を中心に時計回りに回動しつつ、係合ピン322がガイド溝525の他端部527から開口一端部526側にスライド移動する。
【0070】
このとき、装置本体3のギヤ列34は、図4及び図5においてD1方向に回動し、これに伴い付勢部材33である引張コイルバネが伸長し、被付勢歯車344がD2方向に付勢される。すなわち、ギヤ列34を介して、係合回動部32が付勢部材33によって初期位置S1側に付勢される。
【0071】
そして、扉D2の開放動作に伴って係合回動部32がD1方向へ回動されると、大径歯車343もD1方向へ回動され、大径歯車343の保持突部362が捩りコイルバネ361の腕部361cをその付勢力に抗して下方に押し下げ、保持突部362が通過すると捩りコイルバネ361の復元力により再びその腕部361cが大径歯車343の外周面に圧接される。
【0072】
このとき、図8に二点鎖線で示すように、扉D2は所定の回動途中位置P3に達し、係合回動部32は付勢部材33の付勢力に抗して初期位置S1から待機位置S2に回動される。続く扉D2の開放動作に伴い、係合ピン322はガイド溝525からその開口一端部526を通じて抜出し、係合ピン322と可動ガイドレール部522との係合状態が解除される。この係合状態が解除されると、付勢部材33による付勢力によってギヤ列34が図4及び図5におけるD2方向に回動しようとするが、大径歯車343の保持突部362が捩りコイルバネ361の腕部361cと係合してそれらの回動が阻止されるため、係合回動部32は可動ガイドレール部522との係合状態が解除された場合でもこの待機位置S2で停止保持される。
【0073】
そして、閉鎖位置P2から回動途中位置P3に至るアシスト範囲Rを越えて扉D2が開放されると、アシスト装置による回動アシスト力が扉D2に付与されないので、扉D2を所定の位置で開放しておくことができ、その操作性、利便性が向上する。
【0074】
一方、アシスト範囲Rを越える開放状態から扉D2を閉鎖した場合には、扉D2が回動途中位置P3に至るまでは扉D2の操作力に基づき閉鎖動作し、扉D2が回動途中位置P3に至った場合にアシスト装置が作動し、扉D2に対し、回動アシスト力が付与される。
【0075】
すなわち、扉D2が回動途中位置P3に至った場合には、図10に示すように、待機位置S2にある係合回動部32の係合ピン322が、扉D2の閉鎖動作に伴って、キャッチャー5の固定ガイドレール部521の内側面(ガイド溝525の側面)に勢いよく突き当たり、係合ピン322がガイド溝525にその開口一端部526を通じて導入され、これにより係合ピン322とガイドレール部52とが係合される。またこのときの衝撃力が係合回動部32及びギヤ列34に伝達され、この衝撃力に基づき、大径歯車343の保持突部362が捩りコイルバネ361の腕部361cを再び押し下げてD2方向に回動し、これに伴い係合回動部32の停止保持状態が解除される。
【0076】
この保持状態の解除に伴い、付勢部材33による付勢力がギヤ列34を介して係合回動部32に伝達され、この係合回動部32が待機位置S2から初期位置S1に回動される。この係合回動部32の回動に伴い、係合ピン322が可動ガイドレール部522の内側面に係合してこの係合回動部32の回動力が扉D2の閉鎖方向への回動アシスト力として付与される。
【0077】
なお、このとき、被付勢歯車344がロータリーダンパー35に噛合しているので、係合回動部32の待機位置S2から初期位置S1への回動に対して抵抗が付与され、係合回動部32はゆっくり位置変更することになる。
【0078】
従って、扉D2の回動途中位置P3から閉鎖位置P2までの所定のアシスト範囲Rに亘って扉に対し閉鎖方向の回動アシスト力を付与することができるので、扉D2の閉め残しを防止することができる。
【0079】
ところで、この種アシスト装置では、例えば扉D2が家屋等の壁面や戸当たりに勢いよく突き当たるなどして、停止保持機構36による係合回動部32の保持状態が不本意に解除され、本来、待機位置S2に位置していなければならない係合回動部32が不本意に初期位置S1に回動されてしまうといった誤動作が発生する場合がある。
【0080】
このように扉D2がアシスト範囲Rを越えて開放された後、閉鎖動作時に回動途中位置P3に至るまでの間に、保持機構36による保持状態が解除されて係合回動部32が待機位置S2から初期位置S1に戻る誤動作が発生した場合でも、本実施形態のアシスト装置では、係合復帰機構が設けられているので、扉D2の閉鎖動作に伴って自動的に平常動作の状態に戻すことができる。
【0081】
このアシスト装置における復帰動作を図11及び図12に基づいて説明する。図11は誤動作発生状態におけるアシスト装置を示す概念図であり、図12は誤動作発生状態から平常動作に復帰させる過程におけるアシスト装置を示す概念図である。
【0082】
上記誤動作が発生した場合には、図11に示すように、扉D1がアシスト範囲Rを越えているにもかかわらず、係合回動部32が初期位置S1に戻り、扉D2の閉鎖動作に伴い、係合回動部32がキャッチャー5に、具体的には係合ピン322が可動ガイドレール部522に干渉することになる。
【0083】
この図11の状態から扉D2が閉鎖されると、まず係合ピン322が可動ガイドレール部522の傾斜案内面522cに当接する。この状態で更に扉D2を閉鎖すると、係合ピン322が傾斜案内面522cを相対的に移動することにより、図12に示すように、可動ガイドレール部522が、レール付勢部材523の付勢力に抗してガイド溝525の開口一端部526側から他端部527側に押し込まれ、基部51内に退入してガイド溝525の一側方が開放される。
【0084】
そして、この状態から更に扉D2を閉鎖すると、係合ピン322がガイド溝525内に導入され、この係合ピン322の導入に伴いレール付勢部材523の復元力に基づき、可動ガイドレール部522がもとの進出位置まで復帰するとともに、係合回動部32が初期位置S1に位置して、図9に実線で示すような、平常動作時における扉D2の閉鎖状態に復帰する。
【0085】
すなわち、本実施形態のアシスト装置では、上記誤動作発生状態において、係合回動部32をわざわざ手動で初期位置S1から待機位置S2に回動操作して平常動作時の状態に復帰させる必要がなく、扉D2の閉鎖動作に伴って自動的に係合回動部32とキャッチャー5、具体的には係合ピン322とガイドレール部52との係合状態を平常動作時の状態に復帰させることができる。このため、平常動作に復帰させるための手間が省かれ、利便性が向上するとともに、誤動作発生状態において、扉D2を勢いよく閉じた場合でも傾斜案内面522cとレール付勢部材523とからなる係合復帰機構によって係合回動部32と可動ガイドレール部522との衝撃が緩和され、これら係合回動部32と可動ガイドレール部522との損傷を効果的に防止することができる。従って、可動ガイドレール部522を退入させるという簡単な構成で、係合回動部32とキャッチャー5との係合状態を平常動作時の状態に復帰させることができる。
【0086】
このように、本実施形態のアシスト装置によれば、係合回動部32が予期せず初期位置S1に戻る誤動作発生状態においても、扉D2の閉鎖動作に伴い自動で平常動作時の状態に復帰させることができ、これにより平常動作に復帰させる手間暇を省き、利便性を向上させるとともに、誤動作発生状態における装置の損傷を効果的に防止できる。
【0087】
なお、以上に説明したアシスト装置は、本発明に係るアシスト装置の一実施形態であり、その具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、その変形例を説明する。
【0088】
(1)上記実施形態では、装置本体3が、ケース31と、係合回動部32と、付勢部材33と、ギヤ列34と、緩衝機構35と、保持機構36とを備えて構成されているが、装置本体3の具体的構成を特に限定するものではなく、係合回動部を回動、あるいは付勢するための具体的機構については公知の機構によって代替可能である。
【0089】
例えば、装置本体を図13及び図14に示すように構成してもよい。この他の実施形態に係る装置本体103は、ギヤ列及び係合回動部の構成において上記実施形態に係る装置本体3と大きく異なる。
【0090】
すなわち、上記実施形態では、ギヤ列34にかさ歯車341,342を含み、回転中心軸を垂直方向(中心軸C1)から水平方向(中心軸C2,C3)に変換するものとなされていたが、この他の実施形態では、ギヤ列134を平歯車(又ははすば歯車)から構成されている。
【0091】
具体的には、ギヤ列134は、係合回動部132のアームにおける一端部に取り付けられた扇形歯車1341と、この扇形平歯車1341に噛合する小径伝達歯車1342と、この小径伝達歯車1342に噛合する被付勢歯車1344と、この被付勢歯車1344に噛合する小径制動歯車1345と、小径制動歯車1345と回転中心軸を同じくし当該歯車1345と供回りする大径制動歯車1346とを備え、これらの回転中心軸C10〜CC13はいずれも平行に配設されている。また、被付勢歯車1344は、歯車による動力伝達過程の途中に設けられ、この被付勢歯車1344に設けられた係止軸1344cに付勢部材133からなる引張コイルバネが係止されることにより、被付勢歯車1344のD1方向への回動に伴い、図13において矢印で示すD2方向に付勢される。すなわち、この他の実施形態においても、係合回動部132は、初期位置側に付勢されている。また、大径制動歯車1346は、D2方向への回動に対し抵抗を付与する一方向性のロータリーダンパー135に噛合し、回動アシスト力を徐々に扉に伝達できるようになされている。
【0092】
一方、係合回動部132は、図13及び図14に示すように、扉から離れる方向にくの字状に屈曲した1本のアーム1321と、このアーム1321の先端部に上下方向に突設された係合ピン1322とを備え、係合ピン1322はアーム1321に対して垂直回転軸1322aを中心に回動するものとなされている。
【0093】
このようにアーム1321が屈曲して形成されることにより、ケース前面壁(図13において下方に位置する壁)にアーム1321を突出させるための貫通溝を設けることなしに、係合回動部132の回動角を比較的大きく設定することができ、外観体裁を良好にしつつ、アシスト範囲Rを広い範囲に設定することができる。
【0094】
また、係合回動部132について1本のアーム1321と、このアーム1321の先端部に上方に突出係合ピン1322とが設けられているので、図14に示すようにキャッチャー5を戸枠D1の上枠に略密着させた状態で設けた場合にも、係合回動部132のアーム1321とキャッチャー5とが干渉することなく、係合ピン1322とキャッチャー5とを適正に係合させることができる。従って、このように構成した場合には、外観体裁を良好にしつつ、装置の確実な動作性を担保することができるという効果を奏する。
【0095】
(2)上記実施形態では、装置本体3が扉側面の回転軸D3側と反対側の側端部に設けられているが、回転軸D3側の端部に設けるものであっても良い。この場合は、扉の閉動作の広い範囲において回動アシスト力を付与することができる。
【0096】
(3)上記実施形態では、装置本体3が扉D2に設けられるとともにキャッチャー5が戸枠D1に設けられた開き戸の閉鎖アシスト装置について説明しているが、装置本体3が戸枠D1に設けられるとともにキャッチャー5が扉D2に設けられる開き戸の閉鎖アシスト装置であってもよい。また、上記実施形態では、係合回動部32に係合ピン322が設けられ、キャッチャー5にガイドレール部52が設けられたものについて説明したが、例えば特許文献1に示すように、係合回動部にガイドレール部が設けられ、キャッチャーに係合ピンが設けられているものであっても良い。
【0097】
(4)上記実施形態では、係合復帰機構について、傾斜案内面522cを備える可動ガイドレール部522とレール付勢部材523とを備えて構成されているが、係合復帰機構は扉の閉鎖動作に伴って初期位置にある係合回動部と固定係合部との係合状態を平常動作時の状態に復帰させるものであればその具体的構成は特に限定されるものではない。
【0098】
例えば、上記一対のガイドレール部がキャッチャー5の基部51に対して固設され、一対のガイドレール部のうち誤動作発生状態における扉の閉鎖動作において係合ピンに近接する側の一のガイドレール部(以下、近接ガイドレール部という)の先端面が傾斜案内面として構成される一方、装置本体3及びキャッチャー5のいずれか一方を、他方に近接又は離反する方向にスライド移動可能に支持するスライドレールと、このスライドレールに支持された一方を他方に近接する方向に支持する全体付勢部材とを備え、扉の閉鎖動作に伴い係合ピンが上記傾斜案内面に当接することにより上記全体付勢部材の付勢力に抗して装置本体3又はキャッチャー5の全体を離反する方向にスライド移動させて係合ピンをガイド溝内に導入させ、その後、上記全体付勢部材の復元力によりスライド移動した装置本体3又はキャッチャー5の全体を近接する方向に戻すように構成してもよい。
【符号の説明】
【0099】
D1 戸枠
D2 扉
D3 回転軸
D4 開口部
P1 全開位置
P2 全閉位置
P3 回動途中位置
R アシスト範囲
S1 初期位置
S2 待機位置
3 装置本体
5 キャッチャー(固定係合部)
32 係合回動部
33 付勢部材
36 保持機構
52 ガイドレール部
322 係合ピン
521 固定ガイドレール部
522 可動ガイドレール部(一のガイドレール部)
522c 傾斜案内面
523 レール付勢部材
525 ガイド溝
526 開口一端部
527 他端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸枠に対し回転軸を中心に正逆回動して開口部を開閉する開き戸式の扉の所定の回動途中位置から閉鎖位置までの特定範囲に亘って閉じ(閉鎖)方向の回動アシスト力を加える開き戸の閉鎖アシスト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋等の開口部においては、垂直回転軸を中心に正逆回動して開口部を開閉する開き戸式の扉が広く用いられている。これらの開き戸式の扉の中には、当該扉に対し閉鎖方向の回動アシスト力を付与する開き戸の閉鎖アシスト装置、いわゆるドアクローザーが取り付けられているものがある。近年、この開き戸の閉鎖アシスト装置において、扉の全開位置から全閉位置までの全範囲に亘って閉鎖方向の回動アシスト力を付与する全行程型の閉鎖アシスト装置に代わって、扉の全閉直前の所定回動途中位置から全閉位置までの一部範囲に亘って閉鎖方向の回動アシスト力を付与する一部行程型の閉鎖アシスト装置が見受けられるようになってきている。
【0003】
この一部行程型の開き戸の閉鎖アシスト装置は、例えば特許文献1に示されるように、家屋等の開口部の上枠に取着される基体と、基体に対して垂直中心軸まわりに回動可能なアーム体と、アーム体の遊端部に垂直連結軸まわりに回動可能に連結される係合体と、アーム体及び係合体を扉支持側枠に対する接近方向へ回動付勢する付勢手段と、係合体の凹部が扉に向かう位置でアーム体及び係合体が回動しない停留状態とする停留保持手段と、上記停留状態において、扉の凹部の対向位置に設けられる駆動体とを備えたものが知られている。
【0004】
この開き戸の閉鎖アシスト装置は、平常動作として、扉の全開状態から扉を閉じると、駆動体が係合体の凹部に係合してこの係合体の停留状態が解除され、付勢手段によりアーム体及び係合体が扉支持側枠に近づく方向へ回動して開き戸が閉状態となり、該閉状態から扉を開方向へ移動させることにより、アーム体及び係合体が上記扉支持側枠から離れる方向へ回動して所定位置で上記停留状態となり、駆動体と係合体との係合が解除されるように構成されている。
【0005】
この種の閉鎖アシスト装置は、全行程型の閉鎖アシスト装置と比べて、上記一部範囲にのみ、扉に対して閉鎖方向の回動アシスト力を付与するので、例えば全開状態、あるいは一部範囲を超える所定の開放状態で扉を開放しておくことができ、操作性や使い勝手を向上させることができ、便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−177459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の開き戸の閉鎖アシスト装置では、停留状態保持手段が、停留状態の係合体に対して付勢手段の付勢力が扉支持側枠に対する離反方向へ作用するように構成されるとともに、扉を閉じる際の回動に伴い駆動体が係合体に係合することにより係合体が移動して付勢手段の付勢力が扉支持側枠に対する接近方向へ作用するように構成された比較的単純な構造のものが多いため、上記扉の開動作に伴う衝撃や、扉の開状態時における当該停留状態保持手段の動作不良などにより、扉を閉じる際に駆動体が係合体の凹部に係合するまでに、上記停留状態保持手段による停留状態が解除されて係合体が扉支持側枠に対する接近方向へ移動して全閉位置に対応する初期状態に戻るという誤動作が発生する場合がある。
【0008】
従来の閉鎖アシスト装置では、このような誤動作発生状態にあることを気付いた場合には、扉を開いて係合体の係合片に設けられたつまみ部を操作して、手動で初期位置にある係合体を停留状態に移動して、駆動体と係合体凹部の係合状態を適正な状態に復帰させる必要があり、面倒であるという問題があった。
【0009】
また、誤動作発生状態にあることを気付かずに、開状態にある扉を勢いよく閉じた場合には、駆動体が係合片に勢いよく衝突し、駆動体及び係合片の少なくとも一方が損傷することも懸念される。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、上記誤動作発生状態において自動で適正な状態に復帰させ、これにより平常動作に復帰させる手間を省き、利便性を向上させるとともに、誤動作発生状態における装置の損傷を効果的に防止できる開き戸の閉鎖アシスト装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明に係る開き戸の閉鎖アシスト装置は、戸枠に対して回動することにより開口部を開閉する扉の回動途中位置から閉鎖位置まで当該扉に対して閉鎖方向の回動アシスト力を付与する開き戸の閉鎖アシスト装置において、上記扉と戸枠のいずれか一方に設けられた固定係合部と、この扉と戸枠のいずれか他方に一端部が軸支された状態で設けられ、他端部が上記アシスト範囲内において上記固定係合部に係合することにより扉の回動に伴って扉の回動途中位置に対応する待機位置と扉の閉鎖位置に対応する初期位置との間で回動可能で、かつ平常動作として、扉の開放動作時に、上記固定係合部と係合することによって初期位置から待機位置に回動され、待機位置に達することにより上記固定係合部との係合が解除される一方、扉の閉鎖動作時に上記扉の回動途中位置で上記固定係合部と係合する係合回動部と、この係合回動部を上記初期位置側に付勢する付勢部材と、上記平常動作で、扉の開放動作時に上記待機位置に至った係合回動部を上記付勢部材の付勢力に抗して当該待機位置に停止保持するとともに扉の閉鎖動作時に上記係合回動部と固定係合部とが係合することにより保持状態を解除する保持機構と、扉の閉鎖動作時に上記係合回動部と固定係合部とが係合するまでの間に、上記保持機構による保持状態が解除されて係合回動部が上記待機位置から上記初期位置に戻る誤動作発生状態で、扉の閉鎖動作に伴って初期位置にある係合回動部と固定係合部との係合状態を上記平常動作時の状態に復帰させる係合復帰機構とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
なお、上記アシスト範囲とは、扉における上記回動途中位置から閉鎖位置までの所定の範囲をいう。
【0013】
この発明によれば、平常動作として、扉の閉鎖(全閉)位置からの開放動作時に、上記係合回動部と固定係合部とが係合することによって上記係合回動部が付勢部材による付勢力に抗しながら初期位置から待機位置に回動し、当該係合回動部が待機位置に達することにより係合回動部と上記固定係合部との係合が解除されるとともに上記保持機構によって係合回動部が待機位置に停止保持され、一方、扉の全開位置からの閉鎖動作時に扉の上記回動途中位置において上記係合回動部と固定係合部とが係合することによって保持機構による上記係合回動部の保持状態が解放されて上記付勢部材の付勢力が係合回動部及び固定係合部を介して扉に閉鎖方向の回動アシスト力として付与される。従って、扉の所定の回動途中位置から閉鎖位置までの所定の範囲に亘って扉に対して閉鎖方向の回動アシスト力を付与することができるので、扉の閉め残しを防止することができるとともに、上記範囲(アシスト範囲)を越えて扉が開放された場合には扉に回動アシスト力が作用しないから、扉を開放状態のまま維持することができ、その操作性、利便性が向上する。
【0014】
またこの発明によれば、扉の閉鎖動作時に上記係合回動部と固定係合部とが係合するまでの間に、上記保持機構による保持状態が解除されて係合回動部が上記待機位置から上記初期位置に戻る誤動作発生状態で、扉の閉鎖動作に伴って初期位置にある係合回動部と固定係合部との係合状態を平常動作時の状態に復帰させる係合復帰機構を更に備えるので、手動で係合回動部と固定係合部との係合状態を平常動作時の状態に復帰させる必要がなく、扉の閉鎖動作に伴って自動的に係合回動部と固定係合部との係合状態を平常動作時の状態に復帰させることができる。このため、平常動作に復帰させるための手間が省かれ、利便性が向上するとともに、誤動作発生状態において、扉を勢いよく閉じた場合でも係合回動部と固定係合部に衝撃力がそのまま伝わることがなく、装置の損傷を効果的に防止することができる。
【0015】
この発明において、上記係合回動部及び固定係合部のいずれか一方に、他方に係合する係合ピンが設けられ、係合回動部及び固定係合部のいずれか他方に扉の回動に伴って開口一端部と他端部との間でこの係合ピンを案内することにより上記係合回動部を待機位置と初期位置との間で回動させるガイド溝を相互の間に形成する一対のガイドレール部が設けられ、上記係合復帰機構は、上記一対のガイドレール部のうち上記誤動作発生状態における扉の閉鎖動作において上記係合ピンに近接する側の一のガイドレール部を、上記ガイド溝の開口一端部側から他端部側へ退入させるように構成されているのが好ましい(請求項2)。
【0016】
すなわち、平常動作では、上記アシスト範囲を超える開放状態の扉の閉鎖時に、扉が回動途中位置に達することにより係合ピンがガイド溝の開口一端部に挿入されて係合回動部と固定係合部とが係合される。そして、保持機構による係合回動部の保持状態が解除されて付勢部材の付勢力が係合回動部に伝達されることにより係合ピンが上記ガイドレール部の内側面に係合しつつガイド溝の他端部に案内される。このガイド溝における開口一端部から他端部への係合ピンの移動に伴い、係合回動部も待機位置から初期位置に回動される。
【0017】
一方、閉鎖状態の扉の開放時には、この扉の回動に伴って係合ピンがガイド溝に沿って他端部から開口一端部側に案内され、係合回動部は付勢部材による付勢力に抗しながら初期位置から待機位置にまで回動される。そして、そのまま扉が開かれることにより係合ピンがガイド溝からその開口一端部を通じて脱出して係合回動部と固定係合部との係合状態が解除されるとともに保持機構によって係合回動部が待機位置に保持される。
【0018】
このように係合回動部及び固定係合部のいずれか一方に設けられた係合ピンが、他方に設けられた一対のガイドレール部の相互間に形成されたガイド溝に沿って案内されることにより、係合回動部と固定係合部との係合状態を確実に維持しつつ、扉の開閉を円滑に行うことができる。
【0019】
一方、上記誤動作発生状態では係合回動部は初期位置に戻っているため、扉が上記アシスト範囲を超えて開放されている状態においても、係合ピンが上記ガイドレール部との相対的位置関係においてはガイド溝の他端部に対応した位置に存在することになる。従って、従来の閉鎖アシスト装置のような構成では、この状態で扉が閉鎖された場合には、上記一のガイドレール部が障壁になって係合ピンを適正にガイド溝の他端部に位置させることができない。
【0020】
しかしながら、この発明において、上記係合復帰機構は、上記一対のガイドレール部のうち上記誤動作発生状態における扉の閉鎖動作において上記係合ピンに近接する側の一のガイドレール部を、上記ガイド溝の開口一端部側から他端部側へ退入させるように構成されているので、扉の閉鎖動作に伴って、上記係合ピンに近接する側の一のガイドレール部がガイド溝の開口一端部側から他端部側に退入させることによりガイド溝の一側方が開放され、この開放部を通じて係合ピンをガイド溝に導入させることができる。従って、上記一のガイドレール部を退入させるという簡単な構成で、上記係合回動部と固定係合部との係合状態を平常動作時の状態に復帰させることができる。
【0021】
係合復帰機構を上記のように退入させるように構成した場合には、上記係合復帰機構は、上記一のガイドレール部に設けられ扉の閉鎖動作に伴い上記係合ピンに当接する傾斜案内面と、この一のガイドレール部をガイド溝の開口一端部側に付勢するレール付勢部材とを備え、扉の閉鎖動作に伴い係合ピンが上記傾斜案内面に当接することにより上記一のガイドレール部を退入させて上記係合ピンをガイド溝内に導入させ、その後、上記レール付勢部材の復元力により上記一のガイドレール部を元の位置に戻すように構成されているのが好ましい(請求項3)。
【0022】
このように構成すれば、傾斜案内面とレール付勢部材という比較的簡単な構成で上記一のガイドレール部を退入させることができ、より簡単な構造で係合復帰機構を構成することができる。
【0023】
上記係合ピンが上記固定係合部に設けられるとともに上記ガイドレール部及び係合復帰機構が上記係合回動部に設けられるものであってもよいが、上記係合ピンは係合回動部に設けられ、上記ガイドレール部及び係合復帰機構は固定係合部に設けられているのが好ましい(請求項4)。
【0024】
このように構成すれば、係合復帰機構を回動動作しない固定係合部に設けることができ、これにより係合回動部の円滑な回動を担保しつつ、上記ガイドレール部を退入させる係合復帰機構の確実な動作性を担保することができる。
【0025】
この場合でも、係合回動部の具体的構成は特に限定するものではなく、例えば係合回動部を構成する複数本のアームを設け、このアーム間に係合ピンを架設するように構成されるものであってもよいが、上記係合回動部は上記扉の上部側面に設けられ、上記固定係合部は上記戸枠の上部に設けられ、上記係合ピンは係合回動部の上記他端部に少なくとも上方に突出して設けられているのが好ましい(請求項5)。
【0026】
すなわち、これらの閉鎖アシスト装置は、扉及び戸枠の上部に設けられているのが外観体裁上好ましい。またこのように係合ピンが係合回動部の上記他端部に少なくとも上方に突出して設けられているので、固定係合部が戸枠の上枠下面に接して設けられている場合でも上記係合ピンとガイドレール部との確実な係合状態を担保することができ、外観体裁を良好にしつつ、装置の確実な動作性を担保することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る開き戸の閉鎖アシスト装置によれば、係合回動部が予期せず初期位置に戻る誤動作発生状態においても、扉の閉鎖動作に伴い自動で平常動作時の状態に復帰させることができ、これにより平常動作に復帰させる手間暇を省き、利便性を向上させるとともに、誤動作発生状態における装置の損傷を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る一実施形態における開き戸の閉鎖アシスト装置の全体概略を示す斜視図である。
【図2】同閉鎖アシスト装置の全体概略を示す平面図である。
【図3】上記一実施形態における装置本体を示す分解斜視図である。
【図4】アッパーケースを外した状態で同装置本体を示す側面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】上記一実施形態におけるキャッチャーを示す分解斜視図である。
【図7】同キャッチャーを示す横断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】扉が全閉位置にある場合の上記閉鎖アシスト装置を示す概念図である。
【図10】扉閉鎖時において扉が回動途中位置にある場合の上記閉鎖アシスト装置を示す概念図である。
【図11】誤動作発生状態における上記閉鎖アシスト装置を示す概念図である。
【図12】誤動作発生状態から平常動作に復帰させる過程における上記閉鎖アシスト装置を示す概念図である。
【図13】ギヤ列について他の実施形態を示す断面図である。
【図14】係合回動部について他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の閉鎖アシスト装置は片開きであって左開きの扉に適用したものであるが、本発明に係る閉鎖アシスト装置は開き戸の種類や開き勝手の方向にかかわらず、開き戸であればいずれの扉にも適用することができる。
【0030】
図1は開き戸の閉鎖アシスト装置の全体概略を示す斜視図であり、図2は同側面図である。この閉鎖アシスト装置(以下単に「アシスト装置」という。)が取り付けられる開き戸Dは、戸枠D1と、この戸枠D1の一の側枠D10に丁番を介して取り付けられた扉D2とを有し、扉D2が、丁番により構成される回転軸D3を中心に、全開位置(開放位置)P1と全閉位置(閉鎖位置)P2との間を戸枠D1に対し正逆回動して、家屋等の開口部D4を開閉する片開き式のものである。
【0031】
このアシスト装置は、図2に示すように、扉D2の所定の回動途中位置P3から全閉位置P2までの特定のアシスト範囲Rに亘って閉鎖方向の回動アシスト力を扉D2に加えるように構成されている。
【0032】
上記所定の回動途中位置P3は、扉D2の閉鎖動作時においてアシスト装置が扉D2に対して回動アシスト力を付与し始める扉D2の位置をいい、扉D2の全開位置P1から全閉位置P2までの途中で適宜設定される。本実施形態では、扉D2の回動途中位置P3は、扉D2に設けられる不図示のラッチボルトが戸枠D1の側枠内面に当接する直前位置に設定されている。すなわち、上記ラッチボルトが戸枠D1に当接することで扉D2の閉鎖動作に対し抵抗を生じ、この抵抗に基づき閉め残しが発生する場合があるが、回動途中位置P3を上記のように設定することにより、上記抵抗の発生にかかわらずアシスト装置の回動アシスト力により扉D2を確実に閉鎖することができる。
【0033】
アシスト装置は、扉D2における戸当たり部D11側の側面における上部に設けられた装置本体3と、この装置本体3に対応する高さ位置における戸枠D1の内側面に設けられたキャッチャー5(固定係合部に相当する)とを備え、扉D2のアシスト範囲R内で装置本体3とキャッチャー5とが協働することにより、扉D2の開放動作に伴い装置本体3に回動アシスト力が蓄積されるとともに、扉D2の閉鎖動作に伴い装置本体3の回動アシスト力が扉D2に付与されるように構成されている。以下、このアシスト装置の具体的構成について説明する。
【0034】
図3は装置本体3の分解斜視図であり、図4はアッパーケースを外した状態における装置本体3の側面図であり、図5は図4におけるV−V線断面図である。なお、これらの図において、説明の便宜のため、+X方向を右方向、+Y方向を前方向、+Z方向を上方向として以下に説明する。
【0035】
装置本体3は、ケース31と、このケース31の上下側壁部に一端部が軸支され、他端部がアシスト範囲R内においてキャッチャー5の後述するガイドレール部52に係合することにより扉D2の回動に伴って扉D2の閉鎖位置P2に対応する初期位置S1と扉D2の回動途中位置P3に対応する待機位置S2との間で回動可能な係合回動部32と、この係合回動部32を初期位置S1側に付勢する付勢部材33と、この付勢部材33の付勢力を係合回動部32に伝達するギヤ列34と、係合回動部32の待機位置S2から初期位置S1への回動に対し抵抗を付与する緩衝機構35と、扉D2の開放動作時に待機位置S2に至った係合回動部32を付勢部材33の付勢力に抗して当該待機位置S2に停止保持するとともに扉D2の閉鎖動作時に係合回動部32とキャッチャー5の後述するガイドレール部52とが係合することにより保持状態を解除する保持機構36とを備える。
【0036】
ケース31は、装置本体3をユニット化するものであり、後壁部に設けられた貫通孔を通じて木ねじ等により扉D2の上部における右端部に取り付けられている。またケース31は、略直方体の箱状体を呈し、内部に係合回動部32と付勢部材とギヤ列34と緩衝機構35と保持機構36とが収容されている。このケース31の具体的構成は特に限定するものではないが、本実施形態では、上方開口型のロアケース311と、このロアケース311の開口部を閉塞するアッパーケース312とを備え、両ケース311,312がネジ留めされるなど公知の組付手段(不図示)により箱状に組み付けられている。これらのロアケース311及びアッパーケース312には、係合回動部32の後述する2本のアーム321の他端部をケース31から外方に突出させて係合回動部32が初期位置S1と待機位置S2との間で姿勢変更できるように、左右ないしは前後に細長い貫通溝313が上下対称位置に設けられている。なお、このケース31に設けられる貫通溝313の具体的形状は、係合回動部32のアーム321の本数や厚さなど、係合回動部32の具体的構成に応じて適宜変更される。
【0037】
係合回動部32は、上記したように、アシスト範囲R内においてキャッチャー5のガイドレール部52と係合することにより初期位置S1と待機位置S2との間で回動する。なお、これらの初期位置S1と待機位置S2は、ケース31(又は扉D2)も対する係合回動部32の姿勢、言い換えればケース31(又は扉D2)に対する係合回動部32の相対的な位置をいう。
【0038】
具体的には、係合回動部32は、垂直中心軸C1周りに回動可能にケース31に軸支された2本のアーム321と、このアーム321間に架設された係合ピン322とを備え、全体として側面視略コの字状に形成されている。
【0039】
2本のアーム321は、それぞれ水平方向に平行に延びる長尺偏平柱体として構成され、一端部に取付孔321aが上下方向に貫設されているとともに、他端部間に係合ピン322が架設されている。このアーム321は、その取付孔321aに不図示の回転軸が挿入され、この回転軸の先端部がロアケース311の上下側壁部に設けられた取付孔311aに固定されることにより、ケース31の上下側壁部に回動可能に取り付けられている。
【0040】
係合ピン322は、キャッチャー5のガイドレール部52と係合するものであり、上下方向に延びる円柱体として構成されている。このように、係合ピン322の水平断面の外形が円形に構成されるなど、係合ピン322におけるガイドレール部52との係合面が円弧状に湾曲して構成されることにより、ガイドレール部52と摩擦を低減して係合ピン322とガイドレール部52とを係合させつつ円滑に移動させることができ、ひいてはアシスト範囲R内における係合回動部32の動作を円滑に行うことができる。また、本実施形態では、係合ピン322がアーム321に対して固設されているが、係合ピン322とガイドレール部52との摩擦を低減する観点から、係合ピン322をアーム321に対して垂直回転軸を中心に回動自在に設けられるものであってもよい。
【0041】
なお、本実施形態では、係合回動部32は、アーム321と係合ピン322が別体として構成されているが、これらのアームと係合ピンとを一体に形成してもよい。
【0042】
ギヤ列34は、アシスト範囲R内において、扉D2の開放動作時に係合回動部32の回動力を付勢部材33に伝達するとともに、扉D2の閉鎖動作時に付勢部材33の付勢力を係合回動部32に伝達するものであり、複数の歯車から構成されている。
【0043】
具体的には、ギヤ列34は、係合回動部32のアーム321のうち一のアーム321(本実施形態では上方に位置するアーム)の一端部における上下方向内側面に取り付けられた扇型かさ歯車341と、この扇型かさ歯車341に噛合する小径かさ歯車342と、この小径かさ歯車342と中心軸C2を共通にして当該歯車342と供回りする大径歯車343と、この大径歯車343に噛合する被付勢歯車344とを備え、これらの歯車341〜344を介して係合回動部32と付勢部材33との間で回動力又は付勢力を伝達するものとなされている。
【0044】
扇形かさ歯車341は、係合回動部32の回転中心軸である垂直中心軸C1周りに回動する歯車であって、当該係合回動部32の回動とともに回動する。この扇形かさ歯車341は、略扇形に形成され、その円弧部分における円錐状のピッチ面に歯が設けられている。この歯の形成範囲は、少なくとも係合回動部32が図5に示す初期位置S1と待機位置S2(二点鎖線で示す)との間で回動した場合にその全範囲に亘って小径かさ歯車342と噛合可能な範囲に設定され、係合回動部32の回動力を全範囲に亘って小径かさ歯車342に伝達可能に構成されている。
【0045】
小径かさ歯車342は、前後方向に延びる水平中心軸C2周りに回動する歯車であり、円錐型のピッチ面を有する。この小径かさ歯車342は、その中心軸C2を一致させた状態で大径歯車343に固定され、大径歯車343と供回りするように構成されている。これらの小径かさ歯車342及び大径歯車343は、図4に矢印で示すように、平常動作で扉のアシスト範囲R内における開閉動作に伴い正逆回動(扉開放時:D1方向、扉閉鎖時:D2方向)し、その動力を被付勢歯車344に伝達するものとなされている。
【0046】
大径歯車343は、小径かさ歯車342よりも基礎円直径が大きく設定された平歯車であり、周面の一部範囲にのみ歯が形成されている。この歯の形成範囲は、扇形かさ歯車341と同様に、少なくとも係合回動部32が図5に示す初期位置S1と待機位置S2(二点鎖線で示す)との間で回動した場合にその全範囲に亘って被付勢歯車と噛合可能な範囲に設定されている。この大径歯車343の歯が形成されていない範囲における周面の所定部分には径方向に突出する保持突部362が設けられている。保持突部362は、大径歯車343の周方向に位置する面が傾斜面として構成され、正逆回動に伴い後述する捩りコイルバネ361の腕部361cの案内を円滑に行うようになされている。
【0047】
この保持突部362は、係合回動部32が待機位置S2にある場合に、捩りコイルバネ361の一端部に係合して付勢部材33の付勢力に基づき図4に示すD2方向に回動しようとする大径歯車343の回動を停止保持するものである。従って、大径歯車343における保持突部362が設けられる位置は、係合回動部32が待機位置S2にある場合に捩りコイルバネ361の一端部に係合される位置に適宜設定されている。すなわち、本実施形態では、この保持突部362と捩りコイルバネ361とにより保持機構36が構成されている。
【0048】
捩りコイルバネ361は、図3及び図4に示すように、その巻部361aがロアケース311の後壁部の右側端部に突設された取付ボス311bに挿入され、一方の腕部361bがロアケース311の右側壁部内面に圧接するとともに、他方の腕部361cが大径歯車343の外周面に圧接した状態でロアケース311内に配置固定されている。この腕部361cの先端部は、大径歯車343の保持突部362の上記傾斜面に合わせて屈曲しており、保持突部362と確実に係脱できるように構成されている。この保持機構36の具体的な作用については後述するので、ここではその説明を省略する。
【0049】
一方、被付勢歯車344は、前後方向に延びる水平中心軸C3周りに正逆回動するギヤ部344aと、その前方に重ね合わされた重合板344bとを備える。重合板344bは、ギヤ部344aと略同径の円盤体であり、その周縁部に付勢部材33である引張コイルバネの一端部が係止される係止軸344cが前方に突出して設けられている。すなわちこの被付勢歯車344は、係合回動部32の待機位置S2への回動に伴って図4に示すD1方向へ回動することにより付勢部材33によりD2方向に付勢される。係止軸344cは、係合回動部32が初期位置S1にある場合に付勢部材33である引張コイルバネが無伸長状態、ないしは若干伸長した状態となる位置に設けられ、係合回動部32が待機位置S2にある場合でも後述するロアケース311に設けられた固定軸311cと回転中心軸C3とを結ぶ延長線上よりもD2方向に係止軸344cが位置するように、ギヤ部344aの回動角等が適宜設定されている。
【0050】
なお、本実施形態では、扉D2のラッチボルトが戸枠D1の側枠に当接する際に、被付勢歯車344の回動に伴って移動する係止軸344cにおける円弧軌跡の接線方向と付勢部材33である引張コイルバネの中心軸とが略一致するように設定されており、ラッチボルトの戸枠D1への当接により付勢部材33による曲げモーメントが効果的に作用するようになされている。
【0051】
付勢部材33は、本実施形態では引張コイルバネとして構成され、一端部が被付勢歯車344の係止軸344cに係止され、他端部がロアケース311の後壁部に突設された固定軸311cに係止され、図4に示す被付勢歯車344のD1方向への回動により引張され、これにより被付勢歯車344をD2方向に付勢するように構成されている。
【0052】
また、上記被付勢歯車344のギヤ部344aは、緩衝機構35としてのロータリーダンパーに噛合している。このロータリーダンパー35は、後方に配置され、被付勢歯車344のギヤ部344aに噛合する入力ギヤ351と、この入力ギヤ351を挟んで上下に配置され、該入力ギヤ351の厚みよりも長く形成された取付ボス352とを有し、この取付ボスに設けられたネジ孔353を通して不図示のネジによりロアケース311の後壁部に取り付けられている。このロータリーダンパー35は、両方向性のダンパを用いるものであってもよいが、本実施形態では一方向性のダンパが用いられており、被付勢歯車344のD2方向(図4参照)への回動に対してのみ抵抗を付与するようになされている。
【0053】
次にキャッチャー5について説明する。図6はキャッチャーを示す分解斜視図である。図7は同キャッチャーの横断面図であり、図8はこの図7のVIII−VIII線断面図である。これらの図6〜図8においても、説明の便宜のため、+X方向を右方向、+Y方向を前方向、+Z方向を上方向として以下に説明する。
【0054】
キャッチャー5は、ブロック状の基部51と、この基部51の左側面から左方に突出する前後一対のガイドレール部52とを備え、これら一対のガイドレール部52間に、扉D2の回動に伴って開口一端部526と他端部527との間で係合ピン322を案内するガイド溝525が形成されている。
【0055】
基部51は、略直方体状のブロック体であり、前方側に位置するガイドレール部52の前後に穿設された取付孔511に木ねじ等が挿通され、この木ねじ等が戸枠D1の側枠内面にねじ込まれること等により、戸枠D1の所定位置にキャッチャー5を取り付けるものである。また、基部51には、後述の可動ガイドレール部522の進退を案内するレールガイド孔512が戸枠D1の側枠内側面の法線方向(図では左右方向)に沿って設けられている。このレールガイド孔512は、上方に開口し、この開口部512aを通じて可動ガイドレール部522をレールガイド孔512内に導入できるように構成されている。また、レールガイド孔512には、収納された可動ガイドレール部522の先端部を基部51から左方に向かって突出させるためのレール突出孔513に連通している。レール突出孔513は、図8に示すように、レールガイド孔512よりも上下方向の幅が若干縮幅して形成されており、この縮幅による段部に可動ガイドレール部522の基端部が干渉することにより、レール突出孔513を通じた可動ガイドレール部522の抜出が防止されている。
【0056】
ガイドレール部52は、基部51に一体的に設けられた固定ガイドレール部521と、基部51のレールガイド孔512に案内されることにより基部51に対して進退する可動ガイドレール部522と、可動レール部522を突出方向に付勢するレール付勢部材523とを備え、可動ガイドレール部522がレール付勢部材523の付勢力に抗してガイド溝525に沿って退入することによりガイド溝525の後方側が開放されるように構成されている。
【0057】
固定ガイドレール部521は、基部51の左側面前方よりに左方に突出して形成された角柱状体であり、進出状態の可動ガイドレール部522よりも若干長く形成されている。この固定ガイドレール部521は、ガイド溝525の一側縁を形成し、扉D2の閉鎖動作時に後壁面先端部に係合ピン322が当接される。
【0058】
この固定ガイドレール部521に対して、係合ピン322の直径よりも若干長い距離を隔てて可動ガイドレール部522が配設されている。そして、上記したように、この固定ガイドレール部521と可動ガイドレール部522との間に、係合ピン322が案内されるガイド溝525が形成されている。
【0059】
可動ガイドレール部522は、平面視略台形状の柱状体として構成され、基端部(右端部)が上下方向に突出することにより抜出防止段部522aが設けられている。この抜出防止段部522aの段面には、それぞれゴム等の弾性体からなる緩衝板522bが固定されている。この緩衝板522bの先端面(左側面)は、可動ガイドレール部522の進出状態で、基部51のレールガイド孔512とレール突出孔513との間の段部に当接することにより、レール突出孔513を通じた可動ガイドレール部522の抜出が防止されるものとなされている。
【0060】
また、可動ガイドレール部522は、先端面がガイド溝525側に向かって可動ガイドレール部522の突出方向基端側から先端側に傾斜する傾斜案内面522cとして構成されている。この傾斜案内面522cは、後述する誤動作発生状態において扉D2の閉鎖動作に伴ってこの傾斜案内面522cに係合ピン322が当接することにより、係合ピン322がこの傾斜案内面522cに沿って可動ガイドレール部522をレール付勢部材523による付勢力に抗して押し下げ、これにより可動ガイドレール部522がガイド溝525の開口一端部526側から他端部527側に退入し、ガイド溝525の後方側が開放された状態になり、この開放部を通して係合ピン322がガイド溝525内に導入される。そして、係合ピン322がガイド溝525内に導入されることにより、係合ピン322と傾斜案内面522cとの係合状態が解除されて、可動ガイドレール部522はレール付勢部材523の付勢力により退入位置から緩衝板522bの先端面がレールガイド孔512とレール突出孔513との間の段部に当接するまで進出される。
【0061】
すなわち、傾斜案内面522cを備える可動ガイドレール部522とこのガイドレール部522をガイド溝525の他端部527側から開口一端部526側に付勢するレール付勢部材523とが本発明の係合復帰機構を構成している。
【0062】
一方、レール付勢部材523は、可動ガイドレール部522をその突出方向に付勢できるものであれば、その具体的構成を特に限定するものではないが、本実施形態では、圧縮コイルバネとして構成されている。この圧縮コイルバネ523の一端部は可動ガイドレール部522の基端面(右側面)に固定され、他端部はレールガイド孔512の奥底部に設けられたバネ取付凹部512b内に固定されている。
【0063】
以上のように構成されたアシスト装置を、例えば次のようにして開き戸Dに取り付ける。
【0064】
すなわち、まず図1及び図2に示すように、回転軸D3が設けられた側枠とは反対側の側枠上部にキャッチャー5を取り付ける。具体的には、戸枠D1の上枠から所定の高さ下がった位置であって、戸当たり部D11を基準に扉D2側と反対側の位置に、ガイドレール部52のうち可動ガイドレール部522が扉D2に近接した状態で設置する。このとき、キャッチャー5の基部51における後壁面は、戸当たり部D11に当接した状態に配置する。上記所定の高さは、扉D2に対する装置本体3の設置可能高さのうち最上位に当該装置本体3を設置する場合には、少なくとも上枠の戸当たり部の高さと、係合回動部32のアーム321の厚みとを加えた干渉回避寸法よりも下方であって、上記干渉回避寸法に係合ピン322の長さを加えた寸法よりも上方の範囲内で設定する。
【0065】
そして、上記戸枠D1に対する位置に、基部51の取付孔511に木ねじを挿入し、この木ねじを側枠にねじ込むことによってキャッチャー5を側枠に取り付ける。
【0066】
続いて、装置本体3を扉D2に取り付ける。すなわち、例えば扉D2を閉鎖してから、初期位置S1に係合回動部32がある装置本体3を、キャッチャー5のガイド溝525の他端部527に係合ピン322を位置させる態様で設置する。このとき、ガイドレール部52に対する係合ピン322の高さ位置は、係合ピン322の中央部よりも若干下方寄りの位置をガイドレール部52の高さ位置に設定するのが好ましい。すなわち、扉D2はその使用に伴い回転軸D3が他方の側枠側に傾く傾向にあり、上記のような係合ピン322とガイドレール部52との相対的な位置関係で設置することにより、上記扉D2の傾きに対しても係合ピン322とガイドレール部52とを確実に係合させてアシスト装置を正常に作動させることができる。
【0067】
以上のように開き戸に取り付けられたアシスト装置は、平常動作として、次のように作動する。図9は扉が全閉位置にある場合のアシスト装置を示す概念図であり、図10は開放状態にある扉の閉鎖動作時において扉が回動途中位置にある場合のアシスト装置を示す概念図である。
【0068】
図9において実線で示された扉D2は閉鎖位置にある状態である。この状態では、係合回動部32は、そのアーム321が扉D2に略平行な姿勢を保つとともに係合ピン322がキャッチャー5のガイド溝525の他端部527に位置した、初期位置S1に存在する。
【0069】
この閉鎖位置にある扉D2を不図示のノブを把持して開放すると、扉D2は回転軸D3(図2参照)を中心に回動し、これに伴い係合ピン322が可動ガイドレール部522の内側面(ガイド溝525側の側面)に係合して、係合回動部32が垂直中心軸C1を中心に時計回りに回動しつつ、係合ピン322がガイド溝525の他端部527から開口一端部526側にスライド移動する。
【0070】
このとき、装置本体3のギヤ列34は、図4及び図5においてD1方向に回動し、これに伴い付勢部材33である引張コイルバネが伸長し、被付勢歯車344がD2方向に付勢される。すなわち、ギヤ列34を介して、係合回動部32が付勢部材33によって初期位置S1側に付勢される。
【0071】
そして、扉D2の開放動作に伴って係合回動部32がD1方向へ回動されると、大径歯車343もD1方向へ回動され、大径歯車343の保持突部362が捩りコイルバネ361の腕部361cをその付勢力に抗して下方に押し下げ、保持突部362が通過すると捩りコイルバネ361の復元力により再びその腕部361cが大径歯車343の外周面に圧接される。
【0072】
このとき、図8に二点鎖線で示すように、扉D2は所定の回動途中位置P3に達し、係合回動部32は付勢部材33の付勢力に抗して初期位置S1から待機位置S2に回動される。続く扉D2の開放動作に伴い、係合ピン322はガイド溝525からその開口一端部526を通じて抜出し、係合ピン322と可動ガイドレール部522との係合状態が解除される。この係合状態が解除されると、付勢部材33による付勢力によってギヤ列34が図4及び図5におけるD2方向に回動しようとするが、大径歯車343の保持突部362が捩りコイルバネ361の腕部361cと係合してそれらの回動が阻止されるため、係合回動部32は可動ガイドレール部522との係合状態が解除された場合でもこの待機位置S2で停止保持される。
【0073】
そして、閉鎖位置P2から回動途中位置P3に至るアシスト範囲Rを越えて扉D2が開放されると、アシスト装置による回動アシスト力が扉D2に付与されないので、扉D2を所定の位置で開放しておくことができ、その操作性、利便性が向上する。
【0074】
一方、アシスト範囲Rを越える開放状態から扉D2を閉鎖した場合には、扉D2が回動途中位置P3に至るまでは扉D2の操作力に基づき閉鎖動作し、扉D2が回動途中位置P3に至った場合にアシスト装置が作動し、扉D2に対し、回動アシスト力が付与される。
【0075】
すなわち、扉D2が回動途中位置P3に至った場合には、図10に示すように、待機位置S2にある係合回動部32の係合ピン322が、扉D2の閉鎖動作に伴って、キャッチャー5の固定ガイドレール部521の内側面(ガイド溝525の側面)に勢いよく突き当たり、係合ピン322がガイド溝525にその開口一端部526を通じて導入され、これにより係合ピン322とガイドレール部52とが係合される。またこのときの衝撃力が係合回動部32及びギヤ列34に伝達され、この衝撃力に基づき、大径歯車343の保持突部362が捩りコイルバネ361の腕部361cを再び押し下げてD2方向に回動し、これに伴い係合回動部32の停止保持状態が解除される。
【0076】
この保持状態の解除に伴い、付勢部材33による付勢力がギヤ列34を介して係合回動部32に伝達され、この係合回動部32が待機位置S2から初期位置S1に回動される。この係合回動部32の回動に伴い、係合ピン322が可動ガイドレール部522の内側面に係合してこの係合回動部32の回動力が扉D2の閉鎖方向への回動アシスト力として付与される。
【0077】
なお、このとき、被付勢歯車344がロータリーダンパー35に噛合しているので、係合回動部32の待機位置S2から初期位置S1への回動に対して抵抗が付与され、係合回動部32はゆっくり位置変更することになる。
【0078】
従って、扉D2の回動途中位置P3から閉鎖位置P2までの所定のアシスト範囲Rに亘って扉に対し閉鎖方向の回動アシスト力を付与することができるので、扉D2の閉め残しを防止することができる。
【0079】
ところで、この種アシスト装置では、例えば扉D2が家屋等の壁面や戸当たりに勢いよく突き当たるなどして、停止保持機構36による係合回動部32の保持状態が不本意に解除され、本来、待機位置S2に位置していなければならない係合回動部32が不本意に初期位置S1に回動されてしまうといった誤動作が発生する場合がある。
【0080】
このように扉D2がアシスト範囲Rを越えて開放された後、閉鎖動作時に回動途中位置P3に至るまでの間に、保持機構36による保持状態が解除されて係合回動部32が待機位置S2から初期位置S1に戻る誤動作が発生した場合でも、本実施形態のアシスト装置では、係合復帰機構が設けられているので、扉D2の閉鎖動作に伴って自動的に平常動作の状態に戻すことができる。
【0081】
このアシスト装置における復帰動作を図11及び図12に基づいて説明する。図11は誤動作発生状態におけるアシスト装置を示す概念図であり、図12は誤動作発生状態から平常動作に復帰させる過程におけるアシスト装置を示す概念図である。
【0082】
上記誤動作が発生した場合には、図11に示すように、扉D1がアシスト範囲Rを越えているにもかかわらず、係合回動部32が初期位置S1に戻り、扉D2の閉鎖動作に伴い、係合回動部32がキャッチャー5に、具体的には係合ピン322が可動ガイドレール部522に干渉することになる。
【0083】
この図11の状態から扉D2が閉鎖されると、まず係合ピン322が可動ガイドレール部522の傾斜案内面522cに当接する。この状態で更に扉D2を閉鎖すると、係合ピン322が傾斜案内面522cを相対的に移動することにより、図12に示すように、可動ガイドレール部522が、レール付勢部材523の付勢力に抗してガイド溝525の開口一端部526側から他端部527側に押し込まれ、基部51内に退入してガイド溝525の一側方が開放される。
【0084】
そして、この状態から更に扉D2を閉鎖すると、係合ピン322がガイド溝525内に導入され、この係合ピン322の導入に伴いレール付勢部材523の復元力に基づき、可動ガイドレール部522がもとの進出位置まで復帰するとともに、係合回動部32が初期位置S1に位置して、図9に実線で示すような、平常動作時における扉D2の閉鎖状態に復帰する。
【0085】
すなわち、本実施形態のアシスト装置では、上記誤動作発生状態において、係合回動部32をわざわざ手動で初期位置S1から待機位置S2に回動操作して平常動作時の状態に復帰させる必要がなく、扉D2の閉鎖動作に伴って自動的に係合回動部32とキャッチャー5、具体的には係合ピン322とガイドレール部52との係合状態を平常動作時の状態に復帰させることができる。このため、平常動作に復帰させるための手間が省かれ、利便性が向上するとともに、誤動作発生状態において、扉D2を勢いよく閉じた場合でも傾斜案内面522cとレール付勢部材523とからなる係合復帰機構によって係合回動部32と可動ガイドレール部522との衝撃が緩和され、これら係合回動部32と可動ガイドレール部522との損傷を効果的に防止することができる。従って、可動ガイドレール部522を退入させるという簡単な構成で、係合回動部32とキャッチャー5との係合状態を平常動作時の状態に復帰させることができる。
【0086】
このように、本実施形態のアシスト装置によれば、係合回動部32が予期せず初期位置S1に戻る誤動作発生状態においても、扉D2の閉鎖動作に伴い自動で平常動作時の状態に復帰させることができ、これにより平常動作に復帰させる手間暇を省き、利便性を向上させるとともに、誤動作発生状態における装置の損傷を効果的に防止できる。
【0087】
なお、以上に説明したアシスト装置は、本発明に係るアシスト装置の一実施形態であり、その具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、その変形例を説明する。
【0088】
(1)上記実施形態では、装置本体3が、ケース31と、係合回動部32と、付勢部材33と、ギヤ列34と、緩衝機構35と、保持機構36とを備えて構成されているが、装置本体3の具体的構成を特に限定するものではなく、係合回動部を回動、あるいは付勢するための具体的機構については公知の機構によって代替可能である。
【0089】
例えば、装置本体を図13及び図14に示すように構成してもよい。この他の実施形態に係る装置本体103は、ギヤ列及び係合回動部の構成において上記実施形態に係る装置本体3と大きく異なる。
【0090】
すなわち、上記実施形態では、ギヤ列34にかさ歯車341,342を含み、回転中心軸を垂直方向(中心軸C1)から水平方向(中心軸C2,C3)に変換するものとなされていたが、この他の実施形態では、ギヤ列134を平歯車(又ははすば歯車)から構成されている。
【0091】
具体的には、ギヤ列134は、係合回動部132のアームにおける一端部に取り付けられた扇形歯車1341と、この扇形平歯車1341に噛合する小径伝達歯車1342と、この小径伝達歯車1342に噛合する被付勢歯車1344と、この被付勢歯車1344に噛合する小径制動歯車1345と、小径制動歯車1345と回転中心軸を同じくし当該歯車1345と供回りする大径制動歯車1346とを備え、これらの回転中心軸C10〜CC13はいずれも平行に配設されている。また、被付勢歯車1344は、歯車による動力伝達過程の途中に設けられ、この被付勢歯車1344に設けられた係止軸1344cに付勢部材133からなる引張コイルバネが係止されることにより、被付勢歯車1344のD1方向への回動に伴い、図13において矢印で示すD2方向に付勢される。すなわち、この他の実施形態においても、係合回動部132は、初期位置側に付勢されている。また、大径制動歯車1346は、D2方向への回動に対し抵抗を付与する一方向性のロータリーダンパー135に噛合し、回動アシスト力を徐々に扉に伝達できるようになされている。
【0092】
一方、係合回動部132は、図13及び図14に示すように、扉から離れる方向にくの字状に屈曲した1本のアーム1321と、このアーム1321の先端部に上下方向に突設された係合ピン1322とを備え、係合ピン1322はアーム1321に対して垂直回転軸1322aを中心に回動するものとなされている。
【0093】
このようにアーム1321が屈曲して形成されることにより、ケース前面壁(図13において下方に位置する壁)にアーム1321を突出させるための貫通溝を設けることなしに、係合回動部132の回動角を比較的大きく設定することができ、外観体裁を良好にしつつ、アシスト範囲Rを広い範囲に設定することができる。
【0094】
また、係合回動部132について1本のアーム1321と、このアーム1321の先端部に上方に突出係合ピン1322とが設けられているので、図14に示すようにキャッチャー5を戸枠D1の上枠に略密着させた状態で設けた場合にも、係合回動部132のアーム1321とキャッチャー5とが干渉することなく、係合ピン1322とキャッチャー5とを適正に係合させることができる。従って、このように構成した場合には、外観体裁を良好にしつつ、装置の確実な動作性を担保することができるという効果を奏する。
【0095】
(2)上記実施形態では、装置本体3が扉側面の回転軸D3側と反対側の側端部に設けられているが、回転軸D3側の端部に設けるものであっても良い。この場合は、扉の閉動作の広い範囲において回動アシスト力を付与することができる。
【0096】
(3)上記実施形態では、装置本体3が扉D2に設けられるとともにキャッチャー5が戸枠D1に設けられた開き戸の閉鎖アシスト装置について説明しているが、装置本体3が戸枠D1に設けられるとともにキャッチャー5が扉D2に設けられる開き戸の閉鎖アシスト装置であってもよい。また、上記実施形態では、係合回動部32に係合ピン322が設けられ、キャッチャー5にガイドレール部52が設けられたものについて説明したが、例えば特許文献1に示すように、係合回動部にガイドレール部が設けられ、キャッチャーに係合ピンが設けられているものであっても良い。
【0097】
(4)上記実施形態では、係合復帰機構について、傾斜案内面522cを備える可動ガイドレール部522とレール付勢部材523とを備えて構成されているが、係合復帰機構は扉の閉鎖動作に伴って初期位置にある係合回動部と固定係合部との係合状態を平常動作時の状態に復帰させるものであればその具体的構成は特に限定されるものではない。
【0098】
例えば、上記一対のガイドレール部がキャッチャー5の基部51に対して固設され、一対のガイドレール部のうち誤動作発生状態における扉の閉鎖動作において係合ピンに近接する側の一のガイドレール部(以下、近接ガイドレール部という)の先端面が傾斜案内面として構成される一方、装置本体3及びキャッチャー5のいずれか一方を、他方に近接又は離反する方向にスライド移動可能に支持するスライドレールと、このスライドレールに支持された一方を他方に近接する方向に支持する全体付勢部材とを備え、扉の閉鎖動作に伴い係合ピンが上記傾斜案内面に当接することにより上記全体付勢部材の付勢力に抗して装置本体3又はキャッチャー5の全体を離反する方向にスライド移動させて係合ピンをガイド溝内に導入させ、その後、上記全体付勢部材の復元力によりスライド移動した装置本体3又はキャッチャー5の全体を近接する方向に戻すように構成してもよい。
【符号の説明】
【0099】
D1 戸枠
D2 扉
D3 回転軸
D4 開口部
P1 全開位置
P2 全閉位置
P3 回動途中位置
R アシスト範囲
S1 初期位置
S2 待機位置
3 装置本体
5 キャッチャー(固定係合部)
32 係合回動部
33 付勢部材
36 保持機構
52 ガイドレール部
322 係合ピン
521 固定ガイドレール部
522 可動ガイドレール部(一のガイドレール部)
522c 傾斜案内面
523 レール付勢部材
525 ガイド溝
526 開口一端部
527 他端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸枠に対して回動することにより開口部を開閉する扉の回動途中位置から閉鎖位置まで当該扉に対して閉鎖方向の回動アシスト力を付与する開き戸の閉鎖アシスト装置において、
上記扉と戸枠のいずれか一方に設けられた固定係合部と、
他方に一端部が軸支された状態で設けられ、他端部が上記アシスト範囲内において上記固定係合部に係合することにより扉の回動に伴って扉の回動途中位置に対応する待機位置と扉の閉鎖位置に対応する初期位置との間で回動可能で、かつ平常動作として、扉の開放動作時に、上記固定係合部と係合することによって初期位置から待機位置に回動され、待機位置に達することにより上記固定係合部との係合が解除される一方、扉の閉鎖動作時に上記扉の回動途中位置で上記固定係合部と係合する係合回動部と、
この係合回動部を上記初期位置側に付勢する付勢部材と、
上記平常動作で、扉の開放動作時に上記待機位置に至った係合回動部を上記付勢部材の付勢力に抗して当該待機位置に停止保持するとともに扉の閉鎖動作時に上記係合回動部と固定係合部とが係合することにより保持状態を解除する保持機構と、
扉の閉鎖動作時に上記係合回動部と固定係合部とが係合するまでの間に、上記保持機構による保持状態が解除されて係合回動部が上記待機位置から上記初期位置に戻る誤動作発生状態で、扉の閉鎖動作に伴って初期位置にある係合回動部と固定係合部との係合状態を上記平常動作時の状態に復帰させる係合復帰機構とを備えることを特徴とする開き戸の閉鎖アシスト装置。
【請求項2】
上記係合回動部及び固定係合部のいずれか一方に、他方に係合する係合ピンが設けられ、
他方に扉の回動に伴って開口一端部と他端部との間でこの係合ピンを案内することにより上記係合回動部を待機位置と初期位置との間で回動させるガイド溝を形成する一対のガイドレール部が設けられ、
上記係合復帰機構は、上記一対のガイドレール部のうち上記誤動作発生状態における扉の閉鎖動作において上記係合ピンに近接する側の一のガイドレール部を、上記ガイド溝の開口一端部側から他端部側へ退入させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の開き戸の閉鎖アシスト装置。
【請求項3】
上記係合復帰機構は、上記一のガイドレール部に設けられ扉の閉鎖動作に伴い上記係合ピンに当接する傾斜案内面と、この一のガイドレール部をガイド溝の開口一端部側に付勢するレール付勢部材とを備え、
扉の閉鎖動作に伴い係合ピンが上記傾斜案内面に当接することにより上記一のガイドレール部を退入させて上記係合ピンをガイド溝内に導入させ、その後、上記レール付勢部材の復元力により上記一のガイドレール部を元の位置に戻すように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の開き戸の閉鎖アシスト装置。
【請求項4】
上記係合ピンは係合回動部に設けられ、上記ガイドレール部及び係合復帰機構は固定係合部に設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の開き戸の閉鎖アシスト装置。
【請求項5】
上記係合回動部は上記扉の上部側面に設けられ、上記固定係合部は上記戸枠の上部に設けられ、上記係合ピンは係合回動部の上記他端部に少なくとも上方に突出して設けられていることを特徴とする請求項4に記載の開き戸の閉鎖アシスト装置。
【請求項1】
戸枠に対して回動することにより開口部を開閉する扉の回動途中位置から閉鎖位置まで当該扉に対して閉鎖方向の回動アシスト力を付与する開き戸の閉鎖アシスト装置において、
上記扉と戸枠のいずれか一方に設けられた固定係合部と、
他方に一端部が軸支された状態で設けられ、他端部が上記アシスト範囲内において上記固定係合部に係合することにより扉の回動に伴って扉の回動途中位置に対応する待機位置と扉の閉鎖位置に対応する初期位置との間で回動可能で、かつ平常動作として、扉の開放動作時に、上記固定係合部と係合することによって初期位置から待機位置に回動され、待機位置に達することにより上記固定係合部との係合が解除される一方、扉の閉鎖動作時に上記扉の回動途中位置で上記固定係合部と係合する係合回動部と、
この係合回動部を上記初期位置側に付勢する付勢部材と、
上記平常動作で、扉の開放動作時に上記待機位置に至った係合回動部を上記付勢部材の付勢力に抗して当該待機位置に停止保持するとともに扉の閉鎖動作時に上記係合回動部と固定係合部とが係合することにより保持状態を解除する保持機構と、
扉の閉鎖動作時に上記係合回動部と固定係合部とが係合するまでの間に、上記保持機構による保持状態が解除されて係合回動部が上記待機位置から上記初期位置に戻る誤動作発生状態で、扉の閉鎖動作に伴って初期位置にある係合回動部と固定係合部との係合状態を上記平常動作時の状態に復帰させる係合復帰機構とを備えることを特徴とする開き戸の閉鎖アシスト装置。
【請求項2】
上記係合回動部及び固定係合部のいずれか一方に、他方に係合する係合ピンが設けられ、
他方に扉の回動に伴って開口一端部と他端部との間でこの係合ピンを案内することにより上記係合回動部を待機位置と初期位置との間で回動させるガイド溝を形成する一対のガイドレール部が設けられ、
上記係合復帰機構は、上記一対のガイドレール部のうち上記誤動作発生状態における扉の閉鎖動作において上記係合ピンに近接する側の一のガイドレール部を、上記ガイド溝の開口一端部側から他端部側へ退入させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の開き戸の閉鎖アシスト装置。
【請求項3】
上記係合復帰機構は、上記一のガイドレール部に設けられ扉の閉鎖動作に伴い上記係合ピンに当接する傾斜案内面と、この一のガイドレール部をガイド溝の開口一端部側に付勢するレール付勢部材とを備え、
扉の閉鎖動作に伴い係合ピンが上記傾斜案内面に当接することにより上記一のガイドレール部を退入させて上記係合ピンをガイド溝内に導入させ、その後、上記レール付勢部材の復元力により上記一のガイドレール部を元の位置に戻すように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の開き戸の閉鎖アシスト装置。
【請求項4】
上記係合ピンは係合回動部に設けられ、上記ガイドレール部及び係合復帰機構は固定係合部に設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の開き戸の閉鎖アシスト装置。
【請求項5】
上記係合回動部は上記扉の上部側面に設けられ、上記固定係合部は上記戸枠の上部に設けられ、上記係合ピンは係合回動部の上記他端部に少なくとも上方に突出して設けられていることを特徴とする請求項4に記載の開き戸の閉鎖アシスト装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図14】
【公開番号】特開2010−242378(P2010−242378A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92265(P2009−92265)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000145895)株式会社小林製作所 (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000145895)株式会社小林製作所 (21)
【Fターム(参考)】
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