説明

開口器

【課題】挿管パイプにつき口腔内において十分安定した状態にて通過させ、かつ快適な使用を可能とする開口器の構成を提供すること。
【解決手段】左右両側の外側に向けて、上下中央位置となるに従ってなだらかに湾曲した状態にて突出し、かつ左右方向外側面が内側に窪んだ状態となっている2個の唇押圧片1と、当該2個の唇押圧片1に対し、上側方向又は下側方向に湾曲した形状を有している取っ手2によって、曲げ弾性を発揮し得る状態にて接合したことによる開口器において、唇押圧片1の少なくとも一方側の前側片11、及び後側片12に挿管パイプを貫通し得る切断凹部31、又は孔の組み合わせを設けたことに基づく開口器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の手術などに使用する開口器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開口器(アングルワイダー)は、身体の手術において、全身麻酔などを行う際、麻酔薬などを注入する挿管チューブ等を通過させたままに口腔を開いた状態とするために採用されている。
【0003】
このような開口器としては、左右両側の唇に接触し、かつ左右両側に弾性的に押圧する状態としたうえで、口腔を開いた状態とするタイプ(両側タイプ)と、片側の唇に接触したうえで人手を介して唇の一方側を強制的に押圧し、口腔を開いた状態とするタイプ(片側タイプ)の2種類が存在する。
【0004】
両側タイプの開口器は、唇を拡張するのに格別の人手を要さない点において、片側タイプに比し優れている。
但し、従来技術による前記両側タイプの開口器は、図5(a)、(b)に示すように、左右両側の外側に向けて、上下中央位置となるに従ってなだらかに湾曲した状態にて突出し、かつ左右方向外側面が内側に窪んだ状態となっている2個の唇押圧片1と、当該2個の唇押圧片1に対し、上側方向又は下側方向に湾曲した形状を有している取っ手2によって、曲げ弾性を発揮し得る状態にて接合したことによる構成を採用している(尚、図5(a)においては、上側に取っ手2を設けた場合を示しており、後に説明する図1(a)、図2(a)、図3(a)の場合においてもこの点は同様である。)。
【0005】
即ち、従来技術の両側タイプの開口器においては、図5(b)に示すように、左右方向両側の外側面が唇の前側(外側)及び後側(内側)をカバーし得るように、内側に窪んだ状態、即ち前部片及び後部片が左右両側に反り返った形状を呈しているだけであって、格別の工作が行われている訳ではない。
【0006】
しかしながら、このような従来技術の構成では、挿管チューブ等を、口腔内を通過させる場合に、唇押圧片1と歯との間を通過させるか、又は唇と唇押圧片1との間を通過させるかの何れかを選択せざるを得ないが、前者の場合には挿管チューブを十分安定した状態にて口腔内を通過させることが不可能であり、後者の場合には唇に対し、挿管チューブが開口器の取っ手2の弾性力によって圧迫した状態が出現し、不快な使用状態とならざるを得ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景事実に基づき、本発明においては、挿管チューブにつき口腔内において十分安定した状態にて通過させ、かつ快適な使用を可能とする開口器の構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の構成は、
(1)左右両側の外側に向けて、上下中央位置となるに従ってなだらかに湾曲した状態にて突出し、かつ左右方向外側面が内側に窪んだ状態となっている2個の唇押圧片と、当該2個の唇押圧片に対し、上側方向又は下側方向に湾曲した形状を有している取っ手によって、曲げ弾性を発揮し得る状態にて接合したことによる開口器において、少なくとも1個の唇押圧片につき、左右方向外側に窪んだ前側片及び後側片に、挿管チューブを貫通し得る切込凹部を設けたことに基づく開口器、
(2)左右両側の外側に向けて、上下中央位置となるに従ってなだらかに湾曲した状態にて突出し、かつ左右方向外側面が内側に窪んだ状態となっている2個の唇押圧片と、当該2個の唇押圧片に対し、上側方向又は下側方向に湾曲した形状を有している取っ手によって、曲げ弾性を発揮し得る状態にて接合したことによる開口器において、少なくとも1個の唇押圧片につき、左右方向外側に窪んだ前側片及び後側片に、挿管チューブを貫通し得る孔を設けたことに基づく開口器、
(3)左右両側の外側に向けて、上下中央位置となるに従ってなだらかに湾曲した状態にて突出し、かつ左右方向外側面が内側に窪んだ状態となっている2個の唇押圧片と、当該2個の唇押圧片に対し、上側方向又は下側方向に湾曲した形状を有している取っ手によって、曲げ弾性を発揮し得る状態にて接合したことによる開口器において、少なくとも1個の唇押圧片につき、左右方向外側に窪んだ前側片及び後側片に、挿管チューブを貫通し得る切込凹部と孔との組み合わせを設けたことに基づく開口器、
からなる。
【発明の効果】
【0009】
前記(1)、(2)、(3)による各構成に基づき、挿管パイプを開口器の外側ではなく、前側片及び後側片に設けた切断凹部、又は孔を貫通させることによって、十分安定した状態にて口腔内を通過させることが可能となり、かつ挿管パイプを唇と唇押圧片との間を通過させる場合のような不快な圧迫感を伴わず、開口器の使用を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
挿管パイプを貫通させるために、前記(1)の構成においては、図1(a)、(b)に示すように前側片11及び後側片12に切断凹部31を設け、前記(2)の構成においては、図2(a)、(b)に示すように前側片11及び後側片12に孔32を設け、前記(3)の構成においては、図3(a)、(b)に示すように前側片11及び後側片12に切断凹部31と孔32との組み合わせを設けている。
【0011】
前側片11及び後側片12の双方に切断凹部31又は孔32を設けるのは、挿管パイプが唇押圧片1を通過するには、必然的に前側片11及び後側片12の双方を通過せざるを得ないからである。
【0012】
前記(1)、(2)、(3)の構成による解決手段においては、左右両側の2個の唇押圧片1のうちの少なくとも1個について、切断凹部31又は孔32を設けることを要件としているが、実際には左右両側の2個について設ける方が挿管パイプの効率的な貫通を行わせるうえで好ましい。
【0013】
前記(2)のように、孔32を設けた場合には、挿管貫パイプを予め孔32を通過させることが必要である場合に対し、前記(1)の構成の場合には、そのような通過のための工作をせずに、単に挿管パイプを切断凹部31に嵌めることによって、前記のような貫通した状態による使用が可能となる。
但し、前記(2)の孔32の場合にも、孔42の径を大きく設定することによって、容易に挿管パイプを通過させることが可能であり、しかも、前後両側の孔32を可能な限り左右の内側に接近させるような設計を採用することによって、挿管パイプと唇との接触領域を少なくすることも可能となる。
【0014】
前記(3)の構成は、前記(1)の構成と前記(2)の構成の長所及び短所の中間的な性格を有している。
尚、前記(3)の構成において、切断凹部31、孔32の何れを、前側片11及び後側片12に配置するかは、任意に選択することができる。
【0015】
唇押圧片1の前後に切断凹部31又は孔32を設ける位置は、特に限定されている訳ではないが、図1、図2、図3にそれぞれ示すように、上下方向略中央位置が最も挿管パイプを貫通させ易いが、切断凹部31又は孔32を設ける位置は前記略中央位置に限定される訳ではない(但し、極端に上側の位置及び下側の位置は、前側片11、後側片12の幅が狭いことから、切断凹部31又は孔32を十分なスペースを以って設けることができない。)。
【0016】
前記(1)及び前記(3)の構成において、切断凹部31を挿管パイプの径よりも十分深く設定した場合には、唇における圧迫感を軽減することが可能となる。
【実施例】
【0017】
実施例においては、図4(a)、(b)、(c)に示すように、前後方向の切断凹部31、孔32、切断凹部31と孔32との組み合わせを上下方向に複数組設定することを必要としている(図4(a)、(b)、(c)の場合には、それぞれ2個設定した場合を示している。)。
【0018】
このような複数個の設定によって、複数本の挿管パイプを貫通させることが可能となり、手術に対し更に効率的な挿管パイプの使用が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、医療分野において採用可能であると共に、人類猿などの高等動物における実験においても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】前記(1)の構成を示しており、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図2】前記(2)の構成を示しており、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図3】前記(3)の構成を示しており、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図4】実施例の構成を示しており、(a)は前記(1)の構成に対応しており、(b)は前記(2)の構成に対応しており、(c)は前記(3)の構成に対応している。
【図5】これまで採用されている開口器の構成を示しており、(a)は正面図であり、(b)は上下方向略中央位置における左右方向断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 唇押圧片
11 前側片
12 後側片
2 取っ手
31 切断凹部
32 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側の外側に向けて、上下中央位置となるに従ってなだらかに湾曲した状態にて突出し、かつ左右方向外側面が内側に窪んだ状態となっている2個の唇押圧片と、当該2個の唇押圧片に対し、上側方向又は下側方向に湾曲した形状を有している取っ手によって、曲げ弾性を発揮し得る状態にて接合したことによる開口器において、少なくとも1個の唇押圧片につき、左右方向外側に窪んだ前側片及び後側片に、挿管チューブ等を貫通し得る切込凹部を設けたことに基づく開口器。
【請求項2】
前側片及び後側片に切込凹部を複数個設けたことを特徴とする請求項1記載の開口器。
【請求項3】
左右両側の外側に向けて、上下中央位置となるに従ってなだらかに湾曲した状態にて突出し、かつ左右方向外側面が内側に窪んだ状態となっている2個の唇押圧片と、当該2個の唇押圧片に対し、上側方向又は下側方向に湾曲した形状を有している取っ手によって、曲げ弾性を発揮し得る状態にて接合したことによる開口器において、少なくとも1個の唇押圧片につき、左右方向外側に窪んだ前側片及び後側片に、挿管チューブを貫通し得る孔を設けたことに基づく開口器。
【請求項4】
前側片及び後側片に孔を複数個設けたことを特徴とする請求項1記載の開口器。
【請求項5】
左右両側の外側に向けて、上下中央位置となるに従ってなだらかに湾曲した状態にて突出し、かつ左右方向外側面が内側に窪んだ状態となっている2個の唇押圧片と、当該2個の唇押圧片に対し、上側方向又は下側方向に湾曲した形状を有している取っ手によって、曲げ弾性を発揮し得る状態にて接合したことによる開口器において、少なくとも1個の唇押圧片につき、左右方向外側に窪んだ前側片及び後側片に、挿管チューブを貫通し得る切込凹部と孔との組み合わせを設けたことに基づく開口器。
【請求項6】
前側片及び後側片に切込凹部と孔との組み合わせを複数個設けたことを特徴とする請求項1記載の開口器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−174917(P2006−174917A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369224(P2004−369224)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(502440942)
【Fターム(参考)】