説明

開口容易缶蓋

【課題】タブの指掛け部に対して缶蓋パネル部に指入れ凹部が形成された開口容易缶蓋について、缶蓋の積み重ね性を悪化させることなく、タブの指掛け部への指掛かり性を向上させる。
【解決手段】缶蓋パネル部の一部分であるセンターパネル部9で、タブ6の指掛け部6aの直下に、指入れ凹部10よりも深さの浅い補強凹部11を形成すると共に、タブ6の上面で、少なくとも補強凹部11と平面視でオーバーラップする範囲に、その範囲以外のタブ上面よりも下方に凹んだ低上面部6cを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料缶等の缶蓋で、缶蓋のパネル部にリベット止めされたタブの一端側を指掛け部として引き上げることで開口操作を行なうような開口容易缶蓋に関し、特に、タブの指掛け部の下方付近から缶蓋周辺側でパネル部に指入れ用の凹部を形成することにより、開口操作時にタブの指掛け部に指先を掛け易いようにした開口容易缶蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料用の缶容器では、缶蓋のパネル部にリベット止めされたタブの一端側を指掛け部として引き上げることにより、缶蓋のパネル部のスコア線で囲まれた開口片の部分を缶内に押し下げて、タブや開口片を缶蓋から切り離すことなく、缶蓋のパネル部の一部分を飲み口として部分的に開口するようなステイオンタブ方式の缶蓋が、開口容易缶蓋(イージーオープンエンド)として一般的に使用されており、そのような開口容易缶蓋では、タブの指掛け部を指先で引き上げる際の指掛けを容易にするために、タブの指掛け部の下方付近から缶蓋周辺側でパネル部に指入れ用の凹部を形成するということが一般的に行なわれている(例えば、下記の特許文献1,2等参照)。
【特許文献1】特開2002−59928号公報
【特許文献2】特開2006−176147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような指入れ凹部を有する開口容易缶蓋では、指入れ凹部を深くして、缶蓋のパネル部とタブの指掛け部との間の隙間を大きくするほど、タブの指掛け部に指を掛け易くなるが、その反面、タブの指掛け部の直下にまで深さのある指入れ凹部を形成すると、缶蓋の単体同士を積み重ねたときに、タブの指掛け部の上面と指入れ凹部の深い下面とが当接することで、缶蓋の積み重ね性(スタック性)が悪くなって、多数の缶蓋を連続的に供給するような際に、缶蓋の切り出しトラブルが生じるような虞がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、タブの指掛け部に対して缶蓋パネル部に指入れ凹部が形成された開口容易缶蓋について、缶蓋の積み重ね性を悪化させることなく、タブの指掛け部への指掛かり性を向上させるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するために、開口片を区画するためのスコア線が刻設された缶蓋のパネル部に、開口操作のためのタブがリベット部で固着され、リベット部から離れたタブの一端側の指掛け部に対し、その下方付近から缶蓋周辺側でパネル部に指入れ凹部が形成され、パネル部の指入れ凹部に指先を入れてタブの指掛け部を引き上げることで開口操作を行なうような開口容易缶蓋において、パネル部には、タブの指掛け部の直下に、指入れ凹部よりも深さの浅い補強凹部が形成されていると共に、タブの上面には、少なくとも補強凹部と平面視でオーバーラップする範囲に、その範囲以外のタブ上面よりも下方に凹んだ低上面部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
上記のような本発明の開口容易缶蓋によれば、タブの指掛け部の直下で缶蓋パネル部に補強凹部が形成されて、この部分の剛性が高められていることから、ビールや炭酸飲料等の内容物により高くなった容器内圧(陽圧)によって缶蓋の中心部が上方(容器外方)に向かってドーム状に膨出変形する際に、タブの指掛け部の直下に位置する補強凹部の部分で缶蓋の膨出変形が抑制されることとなる。その結果、缶蓋の中心部の膨出と共に上方へ変位するタブの指掛け部と、その直下で変位が抑制される補強凹部とにより、両者の間の隙間を大きく確保することができて、タブの指掛かり性を向上させることができる。
【0007】
また、タブの指掛け部の直下で缶蓋パネル部に形成された補強凹部は、指入れ凹部よりも深さの浅いものであり、一方、タブの上面には、少なくとも補強凹部と平面視でオーバーラップする範囲に、その範囲以外のタブ上面よりも下方に凹んだ低上面部が形成されていることから、缶蓋の単体同士を積み重ねた際に、タブの指掛け部の低上面部と、指入れ凹部よりも深さの浅い補強凹部とにより、両者の積み重ねによる当接を抑えることができて、缶蓋の積み重ね性(スタック性)を良好に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
タブの指掛け部に対して缶蓋パネル部に指入れ凹部が形成された開口容易缶蓋について、缶蓋の積み重ね性を悪化させることなく、タブの指掛け部への指掛かり性を向上させるという目的を、最良の形態として以下の実施例に具体的に示すように、パネル部には、タブの指掛け部の直下に、指入れ凹部よりも深さの浅い補強凹部を形成すると共に、タブの上面には、少なくとも補強凹部と平面視でオーバーラップする範囲に、その範囲以外のタブ上面よりも下方に凹んだ低上面部を形成する、ということで実現した。
【実施例】
【0009】
本実施例の開口容易缶蓋は、飲料用の缶容器に使用するステイオンタブ方式の開口容易缶蓋であって、図1に示すように、アルミニウム合金等の金属薄板から製造された缶蓋1では、パネル部2とカウンターシンク部(環状溝とチャックウォール)3とフランジ部4とが一体的にプレス成形されている本体部分に対して、それとは別体に形成された開口操作用のタブ6が、略円板状のパネル部2の略中央に一体的に形成されたリベット部5でのリベット止めによって固着されている。
【0010】
缶蓋1の略円板状のパネル部2には、破断可能なスコア線7(なお、開口時に破断する外側の主スコア線7に対して、破断しない内側の副スコア線が二重線の状態で設けられている)が、その一部分がリベット部5に近接して沿うように刻設されており、スコア線7(開口時に破断する主スコア線)によって囲まれた領域が、開口時に缶内に押し下げられる開口片8の部分となっていて、スコア線7の両端部の間の部分は、開口時にパネル部2と開口片8とを繋ぐヒンジ部分となる。なお、開口片8となる部分には、当該部分の剛性を高めるために補強突起8aが形成されている。
【0011】
スコア線7で囲まれたパネル部2の開口片8に対して、開口操作用のタブ6では、その一端側が指掛け部6aとして、リベット部5との間にリングホールを設けた状態で、リベット部5を挟んで開口片8とは反対側に位置し、その他端側が押下げ部6bとして開口片8の上方に位置するように、開口片8の領域外で、パネル部2の略中央に形成されたリベット部5により、パネル部2にリベット止めで固着されている。
【0012】
タブ6では、全体の外周縁(指掛け部6aの外端を含む)やリングホールの内周縁(指掛け部6aの内端を含む)で金属板が下面側に折り曲げられており、それらの部分では剛性が極めて高いのに対して、リベット部5によりリベット止めされる部分の近傍では、一枚の金属板だけで変形し易いようになっている。また、金属板を折り曲げたタブ6の指掛け部6aの厚さは、金属板を折り曲げたタブ6の他の外周部分の厚さよりも薄くなっており、それによって、パネル面との間に隙間ができて指掛かり性が向上するようになっている。
【0013】
そのようなタブ6とパネル部2の開口片8の領域を内包するように、パネル部2には、その一部分として、パネル部2の他の部分よりも少し凹んだセンターパネル部9が形成されており、それによって、缶蓋上面でのタブ6の突出の度合いが低く抑えられると共に、パネル部2の全体的な剛性が高められている。
【0014】
なお、このセンターパネル部9について、本実施例では、センターパネル部9の周縁(傾斜面)を示す輪郭のうちで、タブ6の指掛け部6a付近の輪郭は、缶蓋周辺側に向かって拡がるような平面視で略扇状に形成されており、この略扇状の両側縁の開き角度は、15〜50゜の範囲(具体的には22゜)に設定されている。
【0015】
また、パネル部2の一部分であるセンターパネル部9には、タブ6の指掛け部6aの下方付近から缶蓋周辺側に、指掛け部6aを摘み易くするための指入れ凹部10が形成されており、この指入れ凹部10は、センターパネル部9の周縁部分である傾斜面の一部分と連なった状態で、センターパネル部9よりも更に下方に凹むように形成されている。
【0016】
ところで、上記のようにパネル部2(のセンターパネル部9)に指入れ凹部10が形成された本実施例の缶蓋1において、さらに、パネル部2(のセンターパネル部9)には、タブ6の指掛け部6aの直下に、指入れ凹部10よりも深さの浅い補強凹部11が形成されており、一方、タブ6の上面には、缶蓋1の単体同士を積み重ねたときに少なくとも補強凹部11と平面視でオーバーラップする範囲に、その範囲以外のタブ上面よりも下方に凹んだ低上面部6cが形成されている。
【0017】
タブ6の指掛け部6aの直下に位置する補強凹部11は、指入れ凹部10の周縁部分に連設されており、指入れ凹部10との境界となる補強凹部11の端縁は、タブ指掛け部6aの外端の下方近傍に位置していて、具体的には、指入れ凹部10の内周縁(補強凹部11との境界となる缶蓋中心側の周縁)とタブ指掛け部6aの外端とが平面視で僅かにオーバーラップするように位置している。
【0018】
なお、指入れ凹部10と補強凹部11は、何れも、パネル部2のパネル面に略平行な底面と、該底面を取り囲む傾斜面とを有するものであるが、指入れ凹部10の底面を囲む傾斜面のうち、タブ指掛け部6aの下方付近の傾斜面は補強凹部11と接続されており、一方、それ以外の個所の傾斜面は、センターパネル部9と接続されていて、且つ、補強凹部11の高さ付近で、上段よりも下段の方が傾斜が緩くなるように傾斜角度が異なる複数段の傾斜面に形成されている。
【0019】
上記のように指入れ凹部10と補強凹部11が形成されてタブ6に低上面部6cが形成された本実施例の缶蓋1では、缶蓋の単体同士を積み重ねた際、補強凹部11の深さは、下側に積み重ねられた缶蓋1のタブ6の低上面部6cに当接しない程度の深さに設定されており、指入れ凹部10の深さは、下側に積み重ねられた缶蓋1のタブ6の低上面部6cよりも下方に位置する程度の深さに設定されていて、タブ6の指掛け部6aの外端は、補強凹部11に続く指入れ凹部10の傾斜面とは当接しない位置に配置されている。
【0020】
そのような本実施例の缶蓋1の指入れ凹部10と補強凹部11とタブ6の低上面部6cについて、垂直方向での距離関係(深さ)を具体的に説明すると、センターパネル部9のパネル面(底面)から補強凹部11の底面までは、0.2〜0.5mmの範囲(具体的には0.4mm)に設定され、センターパネル部9のパネル面(底面)から指入れ凹部10の底面までは、0.6〜1.1mmの範囲(具体的には1mm)に設定され、パネル部2のパネル面から指入れ凹部10の底面までは、1.1〜1.6mmの範囲(具体的には1.4mm)に設定され、タブ6の指掛け部6aの下面から補強凹部11の底面までは、0.8〜1.2mm(具体的には1mm)に設定され、タブ6の上面から低上面部6cまでは、0.1〜0.3mmの範囲(具体的には0.2mm)に設定されている。
【0021】
また、水平方向での距離関係、即ち、縦幅(タブ6の中心軸線方向の長さ)や横幅(タブ6の中心軸線方向と直交する方向の長さ)について具体的に説明すると、指入れ凹部10については、その横幅は、タブ6の横幅よりも大きく形成されており、好ましくは、パネル部2の外周部を充分に補強できるように、17〜25mmの範囲(具体的には21mm)に設定されていて、指入れ凹部10の底面の大きさは、縦幅が1.9mm、横幅が9.1mmとなるように設定されている。
【0022】
タブ6の指掛け部6aの直下に位置する補強凹部11については、その横幅は、タブ6の横幅と同程度の長さであり、その縦幅は、タブ指掛け部6aの外端(缶蓋周辺側の周縁)近傍から内端(缶蓋中心側の周縁)近傍にまで延びる程度の長さであって、好ましくは、充分な補強効果を得ることができるように、縦幅は1.5〜5mmの範囲(具体的には2.5mm)に設定されている。
【0023】
少なくとも補強凹部11と平面視でオーバーラップするように設けられたタブ6の低上面部6cについては、タブ6の指掛け部6aの外端から缶蓋中心側に向けて縦幅が2〜7mmの範囲となるように設定されており、好ましくは、タブ6の指掛け部6a付近での反り返りを発生させることなく、缶蓋の積み重ね性を確保できるように、具体的には縦幅が5mmの範囲として、タブ6の指掛け部6aの外端から、タブ6のリングホールの中間部付近にまで連続して設けられている。
【0024】
以上に説明したような本実施例の開口容易缶蓋によれば、タブ6の指掛け部6aの直下でパネル部2(のセンターパネル部9)に補強凹部11が形成されて、この部分の剛性が高められていることから、ビールや炭酸飲料等の内容物により高くなった容器内圧(陽圧)によって缶蓋1の中心部が上方(容器外方)に向かってドーム状に膨出変形する際に、タブ6の指掛け部6aの直下に位置する補強凹部11の部分で缶蓋の膨出変形が抑制されることとなる。その結果、缶蓋1の中心部の膨出と共に上方へ変位するタブ6の指掛け部6aと、その直下で変位が抑制される補強凹部11とにより、両者の間の隙間を大きく確保することができて、タブ6の指掛かり性を向上させることができる。
【0025】
また、タブ6の指掛け部6aの直下に位置する補強凹部11は、指入れ凹部10よりも深さの浅いものであり、一方、タブ6の上面には、少なくとも補強凹部11と平面視でオーバーラップする範囲に、その範囲以外のタブ上面よりも下方に凹んだ低上面部6cが形成されていることから、缶蓋1の単体同士を積み重ねた際に、タブ6の指掛け部6aの低上面部6cと、指入れ凹部10よりも深さの浅い補強凹部11とにより、両者の積み重ねによる当接を抑えることができて、缶蓋1の積み重ね性(スタック性)を良好に維持することができる。
【0026】
さらに、本実施例の缶蓋1では、指入れ凹部10の周縁部分に補強凹部11が連設されていて、指入れ凹部10との境界となる補強凹部11の端縁が、タブ5の指掛け部6aの外端の下方近傍に位置していることで、指入れ凹部10に指先を入れてタブ6の指掛け部6aに指を掛ける際に、補強凹部11により指掛け部6aの直下にも隙間が確保されていることから、この隙間によりタブ6に指が掛け易くなると共に、補強凹部11の端縁が指掛け部6aの外端の下方近傍に位置していることで、缶蓋1の単体同士を積み重ねた際に、タブ5の指掛け部6aと指入れ凹部10とが当接して積み重ね性が損なわれるようなことはない。
【0027】
さらにまた、本実施例の缶蓋1では、パネル部2のうちで、少なくともタブ6と指入れ凹部10とを含む範囲が、パネル部2の他の部分よりも凹んだセンターパネル部9に形成されていて、センターパネル部9の周縁を示す輪郭のうちで、タブ6の指掛け部6a付近の輪郭が、缶蓋周辺側に向かって拡がるような平面視で略扇状に形成されていることから、指入れ凹部10の横幅をパネル部2の外周縁に沿うように大きく確保できて、この部分でパネル部2の剛性(膨出変形に対する強度)を向上させることができる。
【0028】
それと共に、指入れ凹部10から缶蓋中心側に向かってセンターパネル部9の輪郭の幅が狭くなっていることで、センターパネル部9の輪郭部分である傾斜面により、指入れ凹部10からタブ6の指掛け部6a付近までパネル部2を補強することができ、補強凹部11の付近でパネル部2を一層補強することができて、その結果、容器内圧により缶蓋1の中心部が膨出変形する際に、タブ6の指掛け部6aの直下に位置する補強凹部11の付近での膨出変形を一層効果的に抑制することができるため、タブ6の指掛かり性を一層効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の開口容易缶蓋の一実施例について、缶蓋の全体を示す平面図。
【図2】図1に示した開口容易缶蓋について、タブの指掛け部と指入れ凹部と補強凹部の付近を拡大して示す缶蓋半径方向に沿った断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 缶蓋(開口容易缶蓋)
2 パネル部
5 リベット部
6 タブ
6a 指掛け部
6c 低上面部
7 スコア線
8 開口片
9 センターパネル部
10 指入れ凹部
11 補強凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口片を区画するためのスコア線が刻設された缶蓋のパネル部に、開口操作のためのタブがリベット部で固着され、リベット部から離れたタブの一端側の指掛け部に対し、その下方付近から缶蓋周辺側でパネル部に指入れ凹部が形成され、パネル部の指入れ凹部に指先を入れてタブの指掛け部を引き上げることで開口操作を行なうような開口容易缶蓋において、パネル部には、タブの指掛け部の直下に、指入れ凹部よりも深さの浅い補強凹部が形成されていると共に、タブの上面には、少なくとも補強凹部と平面視でオーバーラップする範囲に、その範囲以外のタブ上面よりも下方に凹んだ低上面部が形成されていることを特徴とする開口容易缶蓋。
【請求項2】
指入れ凹部の周縁部分に補強凹部が連設されていて、指入れ凹部との境界となる補強凹部の端縁が、タブの指掛け部の外端の下方近傍に位置していることを特徴とする請求項1に記載の開口容易缶蓋。
【請求項3】
パネル部のうちで、少なくともタブと指入れ凹部とを含む範囲が、パネル部の他の部分よりも凹んだセンターパネル部に形成されていて、センターパネル部の周縁を示す輪郭のうちで、タブの指掛け部付近の輪郭が、缶蓋周辺側に向かって拡がるような平面視で略扇状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の開口容易缶蓋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate