説明

開口輪郭部の成形法

【課題】
印刷用孔版を用いてインク・ペースト及びグルー等を凹凸のある被印刷面に印刷する時の印刷滲み抑制方法を提供する。
【解決策】
印刷用孔版の開口部輪郭周辺を被印刷面側に湾曲させ、密着性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
印刷用孔版の開口部輪郭近傍の形状成形法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンシルタイプの印刷用金属板製孔版を使ってインク・ペースト及びグルー等の印刷材の印刷を行なう場合、被印刷物表面に凹凸があると印刷用孔版との密着が損なわれるため、上面からスキージなどで擦り込むとき、該孔版下面と被印刷物表面間に生じた隙間への滲みが発生しやすくなる。
【0003】
このため、従来の金属板を使った印刷用孔版に替えて、柔軟に凹凸に密着しやすくて滲み出しを低減できる樹脂シート製の孔版で印刷することが増えてきている。
【0004】
また、孔版下面と被印刷物表面との間隙に印刷材が滲み出して広がったあとに版離れする時、離間していく当該間隙に開口部内の印刷材を引っ張り出そうとするメカニズムが働くが、このメカニズムを参考文献1のように微細な溝によって分断させて軽減しようとする考案がなされた。
【0005】
しかしこれは、印刷材の中に溝幅より細かな顔料粒子や導電性粒子が含有される場合、次第に溝の中に当該粒子が充填されていき、当初の溝が持つ“引っ張り出しメカニズムの分断・軽減効果”が失われていくという欠点があった。
【0006】
また、他の滲み出し防止策として、参考文献2のように、印刷用孔版の開口の輪郭部に突起形状を形成して開口部を取り巻き、該孔版と被印刷物表面間に発生する間隙への印刷材の滲み出しを防止しようとする考案もあり、出願当時は一定の効果を得た。
【0007】
しかしこの方法は、エキシマレーザ等を使ったアブレーション加工による開口にのみ有効で汎用性に欠けるため、その後登場してきた他の開口方法に対して適用できないばかりか、その後の印刷の微細化に伴なって隣接印刷意匠との間隔は近接しつづけているため、この程度の滲み出し抑制効果では十分とはいえない状況となってきている。
【0008】
上記のような滲みによる印刷解像度の低下は印刷画像の不鮮明化を招くこととなり、この印刷材が導電性ペーストなどの場合においては、ショートなどの不具合発生の要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−151873号公報
【特許文献2】特開平11−320164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のような問題を解決するため、当該印刷用孔版の開口部と、凹凸のある被印刷物表面との間隙への印刷材の滲み出しを抑制することのできる開口部周辺形状の形成方法とその方法による印刷用孔版を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明では、ステンシルタイプの印刷用孔版の開口部輪郭周辺を被印刷面側に湾曲させ、印刷材が開口部から滲み出す間隙を減少させる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の印刷用孔版の開口部輪郭周辺を、その湾曲形状に該近似の凹及び凸形状の押圧用金型で表裏両面から挟んで加圧し、塑性変形によって湾曲形状を転写形成する。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の印刷用孔版の開口部輪郭周辺を、その湾曲形状に該近似の凹及び凸形状の押圧用金型で表裏両面から挟んで加圧し、さらに当該金型の加熱によって孔版を加熱して湾曲形状を転写形成する。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項2または3に記載の印刷用孔版の開口部輪郭周辺に湾曲形状を形成された孔版の、開口部のエッジ先端をさらに被印刷面の平面と平行に面取りする。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至請求項4に記載の印刷用孔版の版素材を金属板とする。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項1乃至請求項5に記載の印刷用孔版の版素材を樹脂板とする。
【0017】
請求項7に記載の発明では、請求項1乃至請求項6に記載の印刷用孔版の開口部輪郭周辺を、開口輪郭から2mm以内の範囲で湾曲形成する。
【0018】
請求項8に記載の発明では、請求項1乃至請求項6に記載の印刷用孔版の開口部輪郭周辺を、孔版平面部から0.5mm以内の高さで湾曲形成する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来のステンシル型印刷用孔版による凹凸面への印刷の概念図
【図2】本発明に係る印刷用孔版による凹凸面への印刷の概念図
【図3】本発明に係る印刷用孔版への湾曲加工の概念図
【図4】本発明に係る印刷用孔版の開口部エッジの面取りの概念図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、従来のステンシル型印刷用孔版による凹凸面への印刷の概念図である。この図において、被印刷面の表面に凹凸がある場合、孔版位置が僅かにずれるだけでも孔版開口部は被印刷面に配置される凸部から外れ被印刷面との間には間隙が発生する。この状態で孔版上面からスキージなどの充填手段で印刷材を擦り込むと、当該間隙より印刷材が押し出され、滲みが発生する。
【0021】
特に、開口部が接近して隣接している場合には、双方から印刷材が滲み出すと両者の印刷意匠が接触しあって印刷解像度を悪化させ、電子部品接合用ペーストや電子回路形成用導電性ペーストの印刷などでは、電気的なショートなどの不具合発生要因となってしまう。
【0022】
そのため、図2のように孔版の開口部輪郭周辺を被印刷面側に湾曲した形状とすると、開口部が被印刷面の凸部分から凹部分にずれても、従来の孔版よりも滲み出しを軽減させることが出来る。
【0023】
そこで、印刷用孔版の開口部輪郭の周辺にこのような湾曲形状を成形するためには、図3のように孔版の開口部を表裏両面から挟み込む湾曲面を持った雌雄一対の金型を用いて、孔版の開口部輪郭の周辺を挟み込むことによっ て塑性変形による成形を行なうことが出来る。
【0024】
さらに図3の成形用金型に加熱手段を併用することで、金属板製の孔版の湾曲形成を容易に行なえるようになり、アニ−リング効果も賦与させることが出来る。
【0025】
特に熱可塑性樹脂板を使用した孔版での湾曲形成の場合は、ガラス転移温度から融点温度までの適宜な温度を選定して加熱しつつ湾曲形成用金型で表裏両面から挟み込み、そのまま挟み込んだ状態を維持しつつ冷却してから金型を開放することによって、熱変形を利用した湾曲の成形が可能となる。
【0026】
孔版の素材が金属であるか樹脂であるかを問わず、開口と湾曲形成の手順は、ドリル・パンチ・フライス・ブローチ・サンドブラスト・ウォータージェット・熱レーザ・アブレーション用レーザ・エッチング等の開口手段の特徴を勘案して、いずれを先行させるかを決めればよい。
【0027】
機械加工による穴あけを行なう場合は、被加工素材のばたつきを防止するための押さえ部材で開口周辺部を挟み込むことが行なわれるため、この押さえ部材に前記の湾曲金型の形状を持たせて成形することも可能である。この場合は、ニブリング開口の場合でも、その輪郭周辺に湾曲形状を賦与することが出来る。
【0028】
図4は、印刷用孔版の開口部エッジの面取りを行なった断面の概念図である。孔版の素材が硬い金属である場合、湾曲させた開口部の輪郭のエッジによって被印刷面を傷つけるおそれがあるため、ダメージ防止のためにも被印刷面と平行となるような面取りを行なうと良い。
【0029】
また、多数回の印刷を行なう場合や、金属より耐久性に欠ける樹脂版を使用した孔版の場合などでは、使用するにしたがって鋭利なエッジが磨耗していき、印刷量や印刷品質を徐々に変化させるおそれがあるため、経時変化を抑制して安定した印刷品質を維持するためにも面取りを行なうと良い。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、電子部品実装時の導電性ペーストの塗布などにおいて、滲み出しによる不良の発生を抑制することが出来るため、より高品質な電子機器の製造が可能となり、不良対応コストも低減させることが出来る。
【符号の説明】
【0031】
1 印刷用孔版
2 印刷材
3 被印刷物表面の凸部
4 被印刷物
5 滲み出した印刷材
6 開口部輪郭周辺の湾曲部
7 湾曲成形用雄金型
8 湾曲成形用雌金型
9 開口部輪郭エッジの面取り部


























【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンシルタイプの印刷用孔版の開口部輪郭周辺を被印刷面側に湾曲させることを特徴とする印刷用孔版の作製法及びその印刷用孔版。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷用孔版であって、湾曲させたい形状に該近似の凹及び凸形状の押圧用金型で開口部輪郭周辺を表裏両面から挟んで加圧し、塑性変形によって湾曲形状を形成することを特徴とする印刷用孔版の作製法及びその印刷用孔版。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷用孔版であって、湾曲させたい形状に該近似の凹及び凸形状の押圧用金型で開口部輪郭周辺を表裏両面から挟んで加圧し、当該金型の加熱によって孔版を加熱して湾曲形状を転写形成することを特徴とする印刷用孔版の作製法及びその印刷用孔版。
【請求項4】
請求項2または3に記載の印刷用孔版であって、開口部輪郭周辺に湾曲形状を形成された孔版開口部のエッジ先端を、被印刷面の平面と平行に面取りしたことを特徴とする印刷用孔版の作製法及びその印刷用孔版。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載の印刷用孔版の版素材が金属板であることを特徴とする印刷用孔版の作製法及びその印刷用孔版。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4に記載の印刷用孔版の版素材が樹脂板であることを特徴とする印刷用孔版の作製法及びその印刷用孔版。
【請求項7】
請求項5乃至請求項4に記載の印刷用孔版の開口部輪郭周辺に形成された湾曲形状は、当該開口部のエッジから2mm以内の範囲に形成されていることを特徴とする印刷用孔版の作製法及びその印刷用孔版。
【請求項8】
請求項1乃至請求項4に記載の印刷用孔版であって、形成された湾曲高さは孔版平面部から最大0.5mmの高さであることを特徴とする印刷用孔版の作製法及びその印刷用孔版。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−224014(P2012−224014A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94809(P2011−94809)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(305045597)
【Fターム(参考)】