説明

開始剤として使用するための金属化合物

本発明は、一般式:{[M(L)a]Xb}nで示される開始剤に関する。これらの開始剤は、好ましくは対イオンとして(SbF6-)を有し、対応する金属SbF6-塩と対応するリガンド(L)との錯化反応によって得られる。さらに本発明は、該開始剤を含有し、特に、非熱的および/または熱的に硬化させうる調製物およびエポキシ樹脂系に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式:{[M(L)a]Xb}nで示される開始剤に関する。これらは、好ましくは対イオンとして(SbF6-)を有し、好ましくは、対応する金属-SbF6塩と対応するリガンド(L)との錯化反応によって得られる。さらに本発明は、該開始剤を含有し、特に、非熱的および/または熱的に硬化させうる調製物およびエポキシ樹脂系に関する。
【背景技術】
【0002】
材料および被覆物質の製造において、硬化速度が、多くのプロセスにおいて、ますます重要になりつつある。
材料および被覆物質の開発において、系ができるだけ迅速に重合して、高い生産速度または短いサイクル時間が可能になるようにするのが望ましいことが多い。
【0003】
従って、重合に関して、硬化反応を開始する開始剤が特に重要である。例えば、開始剤は、室温で使用することができ、迅速な硬化を与えるべきであるが、それでもなお、生成物の機械的特性に負の影響を与えるべきではない。
さらに、これらの開始剤は、ある種の要求、例えば、モノマー中の良好な溶解性および貯蔵安定性をも満たすべきである。また、これらの開始剤は、生成物の黄変などの二次作用を示すべきではない。
【0004】
ここ数年、特に、硬化性樹脂が放射エネルギーによって硬化されている。即ち、重合(硬化)を、熱的に開始することができるだけでなく、放射エネルギーによっても開始することができる。特に、UV硬化の場合、一定量の放射エネルギーに暴露された領域においてのみ樹脂が硬化するということがしばしば発生する。樹脂の完全硬化は、層の厚みに依存する。即ち、放射は、樹脂を貫通するときに減衰するか、あるいは、放射は、例えば放射エネルギーの波長に対応する波長を吸収することができる物質の存在下に、大きく減衰するかまたは吸収される。
従って、その結果は、硬化操作に関連して、より深い位置にある樹脂部分に到達するのが困難であるということになる。
【0005】
従って、放射による硬化に関連して、特に樹脂系を用いる硬化に関連して、迅速に活性化され、そして特に、重合が自発的に起こるのに十分な数のラジカル、カチオン、および/またはアニオンを迅速に生成する開始剤を使用することが重要である。このために、電子ビームによる硬化が、UV硬化または熱硬化とは対照的に、ますます好ましいものとなりつつあるが、その理由は、それがUV硬化または熱硬化の欠点の多くを持たないためである。
【0006】
特許文献1は、非熱的に硬化されるエポキシ樹脂の製造方法であって、ジアリールヨードニウム塩をカチオン開始剤として使用し、硬化を、高エネルギーイオン化放射を用いて0.75キログレイ/秒以上の線量で行う方法を特許請求している。
【0007】
特許文献2は、靱性を改変した非熱的に硬化するエポキシ樹脂系の製造方法であって、同じようにジアリールヨードニウム塩から構成されるカチオン開始剤を含有し、硬化を1キログレイ/秒以上の線量率で行う方法を特許請求している。
【0008】
通常、エポキシ樹脂の硬化は、既存技術においては触媒の存在下に起こり、該触媒は、ほとんどの場合、アニオン SbF6-、AsF6-、PF6-、またはBF4-を伴うヨードニウム塩またはスルホニウム塩から構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5726216号明細書
【特許文献2】欧州特許第0843685号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、既存技術から既に知られている開始剤とは別の開始剤を発見し、それを利用可能にすることであった。
本発明の特定の目的は、容易に製造しうる開始剤を利用可能にすることであった。
本発明のさらなる目的は、系(好ましくは樹脂系)を非熱的および/または熱的に(非熱的および/または熱的に開始される様式で)十分に硬化させ、硬化後に高い架橋度を示す開始剤を利用可能にすることであった。本発明の開始剤による硬化は、特に、硬化生成物の熱機械的および機械的特性に負の影響を与えないことが意図されている。
【0011】
従って、本発明のさらなる目的は、本発明の開始剤を含有する調製物ならびに樹脂系、特にエポキシ樹脂系を利用可能にすることであった。
これに関連して、このような開始剤を含有する配合物および調製物の良好な貯蔵安定性は、特に重要な因子である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、以下の一般式(I):
【化1】

[式中、
M=金属カチオン、L=リガンド、X=対イオン;
a=1〜10、好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4;
b=1〜10、好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜3;
n=1〜∞;
ここで、a、b、およびnは、整数および数値範囲の両方を表すことができ、そして、aは、さらに非整数を表すこともできる]
で示される開始剤が、上記目的の要求を満たすことがわかった。
【発明の効果】
【0013】
例えば、本発明の開始剤は、非常に良好な弾性率(E)の値を有する材料を与えることが示された。
さらに、本発明の開始剤は、樹脂において、既存技術の開始剤系と比較して同等およびある場合には改善された架橋密度を呈することも示された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
従って、本発明の対象は、以下の一般式(I):
【化2】

[式中、
M=金属カチオン、L=リガンド、X=対イオン;
a=1〜10、好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4;
b=1〜10、好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜3;
n=1〜∞;
ここで、a、b、およびnは、整数および数値範囲の両方を表すことができ、そして、aは、さらに非整数を表すこともできる]
で示される開始剤である。
【0015】
本発明に関して、対イオン(X)は、好ましくは、ヘキサフルオロアンチモン酸塩(SbF6-)、ヘキサフルオロリン酸塩(PF6-)、四フッ化ホウ素(BF4-)、ヘキサフルオロアルミン酸塩(AlF63-)、トリフルオロメタンスルホン酸塩(CF3SO3-)、硝酸塩(NO3-)、ヘキサフルオロヒ酸塩(AsF6-)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩(B[C65]4-)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(B[C63(CF3)2]4-)、テトラフェニルホウ酸塩(B[C65]4-)、ヘキサフルオロチタン酸塩(TiF62-)、ヘキサフルオロゲルマニウム酸塩(GeF62-)、ヘキサフルオロケイ酸塩(SiF62-)、ヘキサフルオロニッケル酸塩(NiF62-)、またはヘキサフルオロジルコニウム酸塩(ZrF62-)から選択される。ヘキサフルオロアンチモン酸塩(SbF6-)が、対イオン(X)として特に好ましい。
【0016】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1つの金属カチオン(M)、少なくとも1つのリガンド(L)、および対イオンとして少なくとも1つのヘキサフルオロアンチモン酸塩(SbF6-)の分子を包含し、対応する金属-SbF6塩と対応するリガンド(L)との錯化反応によって得られる開始剤である。
好ましい態様において、対応する金属-SbF6塩は、対応するリガンド(L)との錯化反応の前に生成させる。
【0017】
好ましくは、錯化反応の少なくとも1つの反応生成物は、以下の一般式(II):
【化3】

[式中、
M=金属カチオン、L=リガンド;
a=1〜10、好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4;
b=1〜10、好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜3;
n=1〜∞;
ここで、a、b、およびnは、整数および数値範囲の両方を表すことができ、そして、aは、さらに非整数を表すこともできる]
で示される錯体を包含する。
【0018】
好ましい態様において、本発明の開始剤(I)および/または(II)の金属カチオン(M)は、周期律表の第4または第5周期あるいは第2または第3主族の遷移金属の群から選択することができる。特に好ましくは、金属カチオン(M)は、Ag、Fe、Mg、Co、Cu、Al、またはTiを包含する群から選択される。
【0019】
好ましい態様において、リガンド(L)は、少なくとも1つの(C-C)二重および/または三重結合を含む化合物、好ましくは、1〜30個の炭素原子を含む置換または未置換の分岐または未分岐の環式または非環式のアルケンまたはアルキンである。
さらに好ましい態様において、リガンド(L)は、エーテル、特に環式エーテル、好ましくはクラウンエーテルである。
さらに好ましい態様において、リガンド(L)は、ニトリルの群からの化合物である。このような化合物は、少なくとも1つのC≡N基を包含する。
【0020】
適する好ましいリガンド(L)は、例えば、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、イソプレン、ノルボルネン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロデセン、1,4-シクロヘキサジエン、4-ビニルシクロヘキセン、trans-2-オクテン、スチレン、5-ノルボルネン-2-カルボン酸、ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、ソルビン酸エチルエステル、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロオクタジエン、1,5-シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘプタトリエン、trans,trans,trans-1,5,9-シクロドデカトリエン、trans,trans,cis-1,5,9-シクロドデカトリエン、シクロオクタテトラエン、スクアレン、ジアリルカーボネート、ジアリルエーテル、ジアリルジメチルシラン、ノポール(nopol)、シクロペンタジエン、エチルビニルエーテル、リモネン、1,2-ジヒドロナフタレン、桂皮酸エチルエステル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、スチルベン、オレイン酸メチルエステル、リノール酸メチルエステル、リノレン酸メチルエステル、ジフェニルアセチレン、ジメチルアセチレン、3-ヘキシン、1,8-シクロテトラデカジイン、プロパルギルアルコール、ビニルアセチレン、15-クラウン-5、18-クラウン-6、1-フェニルプロピン、1,8-ノナジイン、18-クラウン-6-テトラカルボン酸から選択される。
【0021】
本発明によれば、a、b、およびnは、整数および数値範囲の両方を表すことができ、そして、aは、さらに非整数を表すこともできる。特に好ましくは、aは、1〜6、特に好ましくは1〜4の範囲内の数である。より好ましくは、aは、1、1.5、2、3または4、非常に好ましくは1、1.5または2である。特に好ましくは、bは、1〜6、特に好ましくは1〜3の範囲内の数である。より好ましくは、bは、1、2、3または4、非常に好ましくは1、2または3である。
【0022】
nは、好ましくは1(モノマー金属錯体)であるか、または好ましくは1〜∞(モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマーおよびポリマー配位化合物またはこれらの混合物)の範囲内にあり、例えば、好ましくは1〜20,000、特に好ましくは1〜1000、非常に好ましくは1〜500または1〜300である。しかし、特に好ましいnは、1〜∞(無限大)の範囲内の数である。
【0023】
本発明の開始剤は、1官能リガンドL(ジエン、トリエン、オリゴアルケン、ジイン、オリゴアルキン)の場合、配位ポリマーを表すことができるので、本発明における「∞」は、nが無限大になりうることを意味する。
n=1であるとき、これは本発明によれば、モノマー配位化合物が存在することを意味する。nが1〜∞の範囲内の数であるとき、これは、モノマー配位化合物に加えて、ダイマー、トリマー、オリゴマーおよびポリマー配位化合物(いわゆる配位ポリマー)ならびに異なる鎖長を有するこれらの混合物も存在しうることを意味する。
【0024】
即ち、好ましい態様において、一般式(I)で示される開始剤の混合物が存在し、特に好ましくは、一般式(II)で示される開始剤の混合物が存在する。
【0025】
ダイマー、トリマーおよびオリゴマー配位化合物ならびに配位ポリマーの生成のための必要条件は、複数の金属中心を連結することができ、こうしてダイマー、トリマー、オリゴマーおよびポリマー構造の構築を可能にする多官能リガンドLである。これは、モノアルケンおよびモノアルキンならびにクラウンエーテルを用いては不可能であり、もっぱら単核の配位化合物、即ち、唯一の金属中心を有するモノマー錯体が好ましくは得られる(パラメーターaおよびbは可変性であり、nは1である)。環式のジエン、トリエンまたはテトラエン(例えば、1,5-シクロオクタジエン、シクロヘプタトリエン、またはシクロオクタテトラエン)の場合、主に単核の金属錯体が好ましくは得られるが、多核のリガンド架橋した構造の生成も可能である。開鎖ジエンをリガンドLとして使用する場合、金属カチオンおよびアニオンに依存して、配位ポリマーの生成が有利になることもある。例えば、AgSbF6を1,7-オクタジエンと反応させると、好ましくは{[Ag(1,7-オクタジエン)1.5]SbF6}が得られる。これは、例えば、銀中心が、好ましくは1分子および2分子の1,7-オクタジエンによって交互に架橋した1次元の鎖構造(a=1.5、b=1、n=∞)を有する以下のような配位ポリマーである:
【化4】

【0026】
リガンド 1,5-ヘキサジエンおよび1,9-デカジエンは、好ましくは同様の構造を生じる。リガンド中の二重結合の数が増加するにつれて、分岐の可能性がより多く生じ、得られる構造は、好ましくはより複雑になり、異なって架橋したオリゴマーおよびポリマー配位化合物の混合物が好ましくは得られる(例えば、リガンドとしてスクアレンの場合の開鎖ヘキサアルケン)。好ましくは、単核化合物に加えて、多核化合物も生成する。
【0027】
本発明の開始剤は、[Ag(シクロヘキセン)2]SbF6、[Ag(シクロオクテン)1-4]SbF6、[Ag(シクロドデセン)1-4]SbF6、[Ag(trans-2-オクテン)1-4]SbF6、[Ag(スチレン)1-4]SbF6、[Ag(5-ノルボルネン-2-カルボン酸)1-4]SbF6、{[Ag(1,5-ヘキサジエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(1,7-オクタジエン)1.5]SbF6}、{[Ag(1,7-オクタジエン)1.5]SbF6}1000、{[Ag(1,7-オクタジエン)1.5]SbF6}500、{[Ag(1,9-デカジエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(ソルビン酸エチルエステル)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(1,3-シクロヘキサジエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(1,3-シクロオクタジエン)1-4]SbF6}1-∞、[Ag(1,5-シクロオクタジエン)2]SbF6、{[Ag(ノルボルナジエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(ジシクロペンタジエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(シクロヘプタトリエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Cu(1,7-オクタジエン)1-4]SbF6}1-∞、[Cu(1,5-シクロオクタジエン)2]SbF6、[Cu(15-クラウン-5)]SbF6、[Fe(15-クラウン-5)](SbF6)3、[Fe(18-クラウン-6)](SbF6)3、[Mg(15-クラウン-5)](SbF6)2、[Co(15-クラウン-5)](SbF6)2、[Ag(1R-(−)-ノポール)1-4]SbF6、[Ag(アリルグリシジルエーテル)1-4]SbF6、{[Ag(trans,trans,cis-1,5,9-シクロドデカトリエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(trans,trans,trans-1,5,9-シクロドデカトリエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(シクロオクタテトラエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(スクアレン)1-4]SbF6}1-∞である。
【0028】
本発明の開始剤は、好ましくはカチオンを生成することによって重合を開始する。
また、好ましい態様において、本発明の開始剤は光開始剤である。
【0029】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1つの本発明の開始剤を含有する調製物である。
本発明において、用語「調製物」は、少なくとも1つの本発明の開始剤および少なくとも1つのさらなる添加剤[これは、本発明の開始剤の製造方法のゆえに存在する(例えば、溶媒、触媒)か、または後に混合される(例えば、可塑剤、反応性希釈剤、充填剤など)]を含有する混合物を意味する。
【0030】
即ち、本発明の調製物は、好ましくは、充填剤、安定剤、硬化促進剤、酸化防止剤、接着プロモーター、レオロジー剤、増粘剤、バインダー、溶媒、ラジカルスカベンジャー、触媒、反応性希釈剤、可塑剤、追加樹脂、火炎保護添加剤、衝撃添加剤、例えば、エラストマー、熱可塑性樹脂、コア-シェル粒子、ナノ粒子、ブロックコポリマー、ナノチューブの群から選択される1つまたはそれ以上の追加の構成成分(添加剤)を含有する。意図する最終用途に依存して、さらなる通常の添加剤、例えば、分散剤、掻き傷防止剤、顔料、染料、乳化剤(界面活性剤)、腐食抑制剤を、本発明の調製物に添加することができる。
【0031】
調製物中の本発明の開始剤の濃度は、全組成物を基準に、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.5〜3重量%、特に好ましくは1〜2重量%である。
【0032】
例えば、可塑剤として適するのは、好ましくはエステル、例えば、アビエチン酸エステル、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、安息香酸エステル、酪酸エステル、酢酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル;約8〜約44個の炭素原子を含む高級脂肪酸のエステル、例えば、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチルまたはオレイン酸ブチル、OH基保持またはエポキシ化脂肪酸のエステル、脂肪酸エステル、および脂肪、グリコール酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル(1〜12個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルコールのエステル)、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、またはフタル酸ブチルベンジル、プロピオン酸エステル、セバシン酸エステル、スルホン酸エステル、チオ酪酸エステル、トリメリト酸エステル、クエン酸エステル、およびニトロセルロースおよびポリ酢酸ビニルに基づくエステル、ならびにこれらの2つまたはそれ以上の混合物である。2官能脂肪族ジカルボン酸の非対称エステル、例えば、アジピン酸モノオクチルエステルと2-エチルヘキサノールとのエステル化生成物(Edenol DOA、Henkel Co.、Duesseldorf)が特に適している。
【0033】
また、可塑剤として適するのは、好ましくは、1官能の直鎖または分岐鎖C4-16アルコールの純粋または混合エーテルあるいはこのようなアルコールの2つまたはそれ以上の異なるエーテルの混合物、例えば、ジオクチルエーテル(Cetiol OEとして入手可能、Henkel Co.、Duesseldorf)である。
【0034】
さらに好ましい態様において、末端キャップしたポリエチレングリコール、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールのジ-C1-4アルキルエーテル、特に、ジエチレングリコールまたはジプロピレングリコールのジメチルまたはジエチルエーテル、ならびに、これらの2つまたはそれ以上の混合物を可塑剤として使用する。
【0035】
本発明の調製物は、約80重量%までの充填剤を含有することができる。無機充填剤が充填剤として適しており、これらは、例えば、天然または合成物質であり、例えば、石英、窒化物(例えば窒化ケイ素)、ガラス(例えば、Ce、Sb、Sn、Zr、Sr、BaおよびAlから導かれる)、コロイド状二酸化ケイ素、長石、ホウケイ酸塩ガラス、カオリン、タルク、二酸化チタン、および亜鉛ガラス、ならびに、ミクロンサイズ以下の二酸化ケイ素粒子[例えば、焼成二酸化ケイ素、例えば、「Aerosil」 「OX 50」、「130」、「150」および「200」系列の二酸化ケイ素(Degussaから市販)、ならびに「Cab-O-Sil M5」(Cabot Corp.から市販)]、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ゼオライト、ベントナイト、粉砕鉱物物質、炭酸カルシウム、石英粉末、無水ケイ酸、シリコン水和物またはカーボンブラック、炭酸マグネシウム、焼成粘土、粘土、酸化鉄、酸化亜鉛、二酸化チタン、セルロース、木粉、マイカ、もみ殻、グラファイト、微細アルミニウム粉末またはフリント粉末、ガラス球、ガラス粉末、ガラス繊維およびチョップトガラス繊維、ならびに当業者に既知のさらなる無機充填剤、ならびに有機充填剤、特にチョップト繊維または中空プラスチック球、ならびにレオロジー特性に正の影響を与える機能的充填剤、例えば高分散ケイ酸、特に、20〜150m2/g、好ましくは30〜100m2/g、特に好ましくは約50m2/gの低BET表面積を有するものなどである。ある場合には、調製物にチキソトロピーを与える充填剤、例えばPVCなどの膨潤性プラスチックを使用することができる。
【0036】
適する追加樹脂は、あらゆる天然および合成の樹脂であり、例えば、コロフォニー誘導体(例えば、不均化、水素化、またはエステル化によって得られる誘導体)、クマロン-インデンおよびポリテルペン樹脂、脂肪族または芳香族の炭化水素樹脂[C-5、C-9、(C-5)2樹脂]、混合C-5/C-9樹脂、上記した種類の水素化および部分的水素化した誘導体、スチレンまたはα-メチルスチレン由来の樹脂、およびテルペン-フェノール樹脂、ならびに、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie(化学工学の百科事典)[第4版、第12巻、第525〜555頁、Weinheim]に記載されている樹脂などである。
【0037】
適する溶媒は、ケトン、低級アルコール、低級カルボン酸、エーテルおよびエステルであり、例えば、(メタ)アクリル酸(エステル)、アセトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、n-メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1,2-ジメトキシエタン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ジアセトンアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ギ酸、酢酸またはプロピオン酸、THF、ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-ブチルカーボネート、1,2-エチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネートまたは1,3-プロピレンカーボネート、および芳香族炭化水素、例えばトルエンおよびキシレンなどである。
【0038】
接着プロモーターおよび/または反応性希釈剤として好ましいα-シランは、α-メタクリルシラン、α-カルバメートシランおよびα-アルコキシシランからなる群から有利に選択することができる。適する例は、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシランおよびメタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、N-(トリエトキシシリルメチル)-O-メチルカルバメート、およびN-(メチルジエトキシシリルメチル)-O-メチルカルバメートである。
【0039】
適当な増粘剤は、ラジカル(共)重合した(共)重合体に加えて、通常の有機および無機増粘剤、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはベントナイトである。
【0040】
架橋を促進するための適する触媒は、特に、モルホリン、N-メチルモルホリン、1,3-ジアザビシクロ[5.4.6]ウンデセン-7(DBU)である。さらなる適する触媒は、有機または無機の重金属化合物に基づく触媒であり、例えば、ナフテン酸コバルト、ジブチルスズジラウレート、スズメルカプチド、2塩化スズ、ジルコニウムテトラオクトエート、ナフテン酸スズ、ステアリン酸スズ、アンチモンジオクトエート、鉛ジオクトエート、金属、特に、鉄アセチルアセトネートである。シラノール縮合の促進のために知られている全ての触媒が特に適している。これらは、例えば、有機スズ、有機チタン、有機ジルコニウム、または有機アルミニウム化合物である。このような化合物の例は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエート、スズオクトエート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、テトラブチルジルコネート、テトラキス(アセチルアセトネート)ジルコニウム、テトライソブチルジルコネート、ブトキシトリス(アセチルアセトネート)ジルコニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。ジブチルスズアルキルエステル、例えば、ジブチルスズアルキルマレエートまたはジブチルスズラウレートが特に適しており、特に、ジブチルスズビスエチルマレエート、ジブチルスズビスブチルマレエート、ジブチルスズビスオクチルマレエート、ジブチルスズビスオレイルマレエート、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズビストリエトキシシリケート、およびこれらの触媒作用のある誘導体が適している。上記した触媒は、単独で、あるいはこれら触媒の2つまたはそれ以上の混合物として使用することができる。
【0041】
本発明の調製物は、全組成物中に、5重量%までの上記触媒を含有することができる。
本発明の調製物は、全組成物中に、約7重量%まで、特に約3〜約5重量%の酸化防止剤をさらに含有することができる。
【0042】
添加剤として本発明において使用しうる安定剤または酸化防止剤の中に含まれるのは、高分子量(Mw)の立体障害フェノール、多官能フェノール、ならびに、イオウ含有およびリン含有フェノールである。添加剤として本発明において使用しうるフェノールは、例えば、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;ペンタエリトリトールテトラキス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;n-オクタデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;4,4-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール);2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,2'-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール;4,4'-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4'-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール;6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン;テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-4-tert-ブチルフェニル)ブタン;ジ-n-オクタデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート;2-(n-オクチルチオ)エチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート;およびソルビトールヘキサ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
【0043】
適する光安定剤は、例えば、Thinuvin(製造元:Ciba Geigy)の名称のもとで市販品から入手することができる安定剤である。
適する安定剤は、通常はUV吸収剤であり、光安定剤であり、同様に含有させることができ、好ましくは、オキサニリド、トリアジンおよびベンゾトリアゾール(後者は、Ciba Specialty ChemicalsのTinuvinブランドとして入手することができる)およびベンゾフェノンの群またはこれらの組合せから選択することができる。UV光を吸収しない光安定剤を添加するのが有利であることもある。
【0044】
本発明の調製物中に含有させることができる適する好ましいUV吸収剤および光安定剤の選択は、次の通りである:2-ヒドロキシベンゾフェノン、例えば、4-ヒドロキシ、4-メトキシ、4-オクチルオキシ、4-デシルオキシ、4-ドデシルオキシ、4-ベンジルオキシ、4,2',4'-トリヒドロキシ、および2'-ヒドロキシ-4,4'-ジメトキシ誘導体;置換および未置換の安息香酸のエステル、例えば、サリチル酸4-tert-ブチルフェニル、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチルフェニル、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4-tert-ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2-メチル-4,6-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート。
【0045】
本発明の調製物は、全組成物中に、約2重量%まで、好ましくは約1重量%の上記UV安定剤を含有することができる。
【0046】
本発明の調製物は、衝撃添加剤(耐衝撃性改良剤)をさらに含有することができる。
適する衝撃添加剤は、例えば、末端官能化したかまたは末端官能化していない熱可塑性樹脂、例えば、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン(例えば、SolvayのRadelおよびUdelまたはBASFのUltrason)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ナイロン、ポリアミドイミド、ポリ(アリールエーテル)、ポリエステル、ポリアリレートである。
【0047】
耐衝撃性改良剤として同じように機能する適するエラストマーは、例えば、EPDMまたはEPMゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン-酢酸ビニル、ジエンから製造した水素化ブロックコポリマー(例えば、SBR、cSBR、SBS、SIS、IRの水素化による;このようなポリマーは、例えば、SEPSおよびSEBSとして知られている)、スチレン、ブタジエン、およびエチレン、あるいは、スチレン、ブチレン、エチレン、ブタジエン、ブチルゴムのコポリマー、ネオプレンゴム、およびポリ(シロキサン)である。
【0048】
また、分子量 約5000〜2,000,000、好ましくは10,000〜1,000,000を有するポリマー、例えば、好ましくはアクリレートおよびメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸のコポリマー、ポリ(メタクリル酸アルキル)、ポリ(アクリル酸アルキル);セルロースエステルおよびエーテル、例えば、酢酸セルロース、アセト酪酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース;ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、環化ゴム、ポリエーテル、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩素化ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデンのコポリマー、塩化ビニリデンとアクリロニトリル、メタクリル酸メチルおよび酢酸ビニルとのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、コポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリマー、例えばポリカプロラクタムおよびポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリエステル、例えばポリ(エチレングリコールテレフタレート)およびポリ(ヘキサメチレングリコールスクシネート)を、衝撃添加剤として使用することもできる。
【0049】
耐衝撃性改良剤として同じように使用することができる適するナノ粒子は、特に、二酸化ケイ素(例えば、NanoresinsのNanopox)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムおよび硫酸バリウムに基づくナノ粒子である。これらは、好ましくは50nm未満の粒子サイズを有する。二酸化ケイ素に基づく適するナノ粒子の例は、焼成二酸化ケイ素であり、これは、商標名 Aerosil VP8200、VP721、またはR972(Degussa社)あるいは商標名 Cab O Sil TS 610、CT 1110F、またはCT 1110G(Cabot社)のもとで市販されている。修飾または未修飾の表面を有する「複数壁」および「単一壁」のナノ粒子も同じように使用することができる。
【0050】
また考えられるのは、分散液の形態で存在するナノ粒子であり、例えば、商標名 High Link OG 103-31(Clariant Hoechst社)のもとで市販されている分散液である。
【0051】
適するコア-シェル粒子、例えば架橋したシリカコアおよび官能化したシェルを有するコア-シェル粒子(例えば、WackerのGenioperl、NanoresinsのAlbidur)、または、例えばゴムコアを有するコア-シェル粒子(例えば、Zeon、Kaneka)、ならびに、適する高官能化したポリマー、例えば、ポリオール、樹枝状ポリマー(例えば、PerstorpのBoltorn)、およびポリエステルを、同じように使用することができる。
【0052】
本発明の調製物は、全組成物中に、90重量%まで、好ましくは80重量%まで、特に好ましくは50重量%までの衝撃添加剤を含有することができる。
【0053】
本発明の調製物は、熱抑制剤をさらに含有することができる(これは、早過ぎる重合を妨げるために供される)。適する抑制剤は、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、p-メトキシフェノール、β-ナフトール、または立体障害フェノール、例えば2,6-ジ(tert-ブチル)-p-クレゾールである。
【0054】
適する分散剤は、極性基を保持する高分子量の水溶性有機化合物であり、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、またはセルロースエーテルである。
適する乳化剤は、非イオン性乳化剤であってよく、ある場合には、イオン性乳化剤を同じように使用することができる。
【0055】
本発明の開始剤によって開始される重合を助けるために、本発明の調製物において、既存技術から既知の開始剤を追加で使用することができる。
即ち、例えば、有機アゾ化合物、有機過酸化物、C-C開裂開始剤、例えばベンゾピナコールシリルエーテル、ヒドロキシイミド、例えばN-ヒドロキシフタルイミドまたはN-ヒドロキシスクシンイミドから選択される熱的に活性化しうる開始剤を添加することができる。開始剤として適する熱的に活性化しうるペルオキソ化合物の中に含まれるのは、種々の過酸化化合物の代表例、例えば、過酸化ジスクシノイル、ペルオキソジ硫酸カリウム、過酸化シクロヘキシルスルホニルアセチル、過酸化ジベンゾイル、過酸化シクロヘキサノン、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、ペルオキシジカーボネート、過ケタール、ペルオキシカルボン酸およびそのエステル、過酸化ケトン、および/またはヒドロペルオキシドである。過酸化ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)、過酸化ジデカノイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジベンゾイル、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジアセチルペルオキシジカーボネート、ジ-tert-ブチルペルオキシオキサレートが特に好ましく、ピバル酸、ネオデカン酸または2-エチルヘキサン酸と、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジヒドロペルオキシヘキサン、1,3-ジ(2-ヒドロキシペルオキシイソプロピル)ベンゼンの間の反応生成物からなるペルオキシカルボン酸エステルも同様である。
また適するのは、2つまたはそれ以上の上記した熱的に活性化しうる開始剤からなる系である。
【0056】
さらなる態様において、本発明の開始剤を、調製物において他の開始剤と一緒に使用することができる。これらは、例えば、当業者に既知の光開始剤であることができる。
適する好ましい光開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アセトナフトキノン、メチルエチルケトン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α-フェニルブチロフェノン、p-モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4-モルホリノベンゾフェノン、4-モルホリノデオキシベンゾイン、p-ジアセチルベンゼン、4-アミノベンゾフェノン、4'-メトキシアセトフェノン、β-メチルアントラキノン、tert-ブチルアントラキノン、アントラキノンカルボン酸エステル、ベンズアルデヒド、α-テトラロン、9-アセチルフェナントレン、2-アセチルフェナントレン、10-チオキサンテノン、3-アセチルフェナントレン、3-アセチルインドール、9-フルオレノン、1-インダノン、1,3,4-トリアセチルベンゼン、チオキサンテン-9-オン、キサンテン-9-オン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジ-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロルチオキサントン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、クロロキサンテノン、ベンゾインテトラヒドロピラニルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、7-H-ベンゾインメチルエーテル、ベンゾ[de]アントラセン-7-オン、1-ナフトアルデヒド、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、ミヒラー(Michler)ケトン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、1-ベンゾイルシクロヘキサン-1-オール、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロルアセトフェノン、1-ヒドロキシアセトフェノン、アセトフェノンジメチルケタール、o-メトキシベンゾフェノン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、ベンゾ[a]アントラセン-7,12-ジオン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルケタール、例えばベンジルジメチルケタール、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、アントラキノン、例えば2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、および2,3-ブタンジオン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF AGのLucirin TPO)、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチル(BASF AGのLucirin TPO L)、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Ciba Specialty ChemicalsのIrgacure 819)、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、フェニルグリオキシル酸、およびこれらの誘導体、またはこれら光開始剤の混合物である。
【0057】
本発明の調製物において使用することができる熱的な後硬化のための促進剤は、好ましくは、例えば、スズオクトエート、亜鉛オクトエート、ジブチルスズラウレート、またはジアザ[2.2.2]ビシクロオクタンである。
【0058】
さらに好ましい態様において、本発明の開始剤に加えて、熱的に活性化しうる開始剤と光化学開始剤の組合せを、本発明の調製物に追加で導入する。これは、利用範囲の点で最適化された開始剤を使用することができるという利点を有する。
【0059】
本発明の調製物は、好ましくは、エポキシ樹脂系、ベンゾオキサジン系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系、エポキシアクリル樹脂系、シアノアクリル樹脂系、トリアジン樹脂系、ポリイミド樹脂系、アクリル酸エステル樹脂系、または熱可塑性樹脂系の群から選択される樹脂系である。本調製物は、好ましくはエポキシ樹脂系である。
また、上記した樹脂系の混合物が存在することもできる。この場合、好ましくは、エポキシ樹脂系と、ベンゾオキサジン系および/またはポリウレタン系および/またはアクリル樹脂系および/またはエポキシアクリル樹脂系の混合物が存在する。エポキシ樹脂系とアクリル樹脂系の組合せが特に好ましい。
【0060】
本発明において、「エポキシ樹脂系」とは、エポキシ化合物またはエポキシ含有化合物に基づいて形成される樹脂組成物であると解される。
この種のエポキシ化合物またはエポキシ含有化合物は、オリゴマーおよびモノマーのエポキシ化合物ならびにポリマー型のエポキシ化合物の両方を包含することができ、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式化合物であることができる。通常、エポキシ樹脂系のエポキシ化合物またはエポキシ含有化合物は、平均して、1分子あたりに少なくとも1つの重合可能なエポキシ基、好ましくは1分子あたりに少なくとも約1.5個の重合可能なエポキシ基を含有する。ポリマーのエポキシ化合物は、末端エポキシ基を有する直鎖ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、分子骨格中にオキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、および該骨格に付加されたエポキシ基を有するポリマー(例えば、メタクリル酸グリシジルポリマーまたはコポリマー)を包含する。これらのエポキシ化合物は、純粋な化合物あるいは1分子あたりに1個、2個、またはそれ以上のエポキシ基を含む混合物であることができる。1分子あたりの「平均」エポキシ基数は、エポキシ含有物質中のエポキシ基の合計数を、存在するエポキシ分子の合計数で割ることによって決定される。
【0061】
エポキシ樹脂系のエポキシ化合物またはエポキシ含有化合物の分子量は、ポリマーエポキシ樹脂については、100g/モル〜最大10,000g/モルで変化する。同様に、エポキシ化合物またはエポキシ含有化合物について、その基本骨格およびその置換基の性質の点で制限はない。例えば、基本骨格は、あらゆる所望の種類のものであってよく、それに存在する置換基は、硬化に実質的に干渉しない全ての基であることができる。
これら置換基には、例えば、ハロゲン、エステル基、エーテル基、スルホネート基、シロキサン基、ニトロ基、ホスフェート基などが含まれる。
【0062】
本発明において適するエポキシ樹脂系は、例えば好ましくは、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、ビスフェノールS型のエポキシ樹脂、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンと様々なフェノールとの反応によって得られる様々なジシクロペンタジエン修飾したフェノール樹脂のエポキシ化生成物、2,2',6,6'-テトラメチルビフェノールのエポキシ化生成物、芳香族エポキシ樹脂、例えばナフタレン基本骨格を有するエポキシ樹脂およびフルオレン基本骨格を有するエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルおよび1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂、例えば3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、およびヘテロ環を有するエポキシ樹脂、例えばトリグリシジルイソシアヌレートから選択される。
【0063】
エポキシ樹脂は、具体的には、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応生成物、フェノールおよびホルムアルデヒド(ノボラック樹脂)とエピクロロヒドリン、グリシジルエステルの反応生成物、エピクロロヒドリンとp-アミノフェノールの反応生成物を包含する。
【0064】
市販品から入手することができるさらなる好ましいエポキシ樹脂は、特に、以下のものを包含する:オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、メタクリル酸グリシジル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル[例えば、市販名称「Epon 828」、「Epon 825」、「Epon 1004」および「Epon 1010」(Hexion Specialty Chemicals Inc.)、「DER-331」、「DER-332」、「DER-334」、「DER-732」および「DER-736」(Dow Chemical Co.)のもとで入手可能]、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、ポリプロピレングリコールで修飾した脂肪族エポキシド、ジペンテンジオキシド、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、SartomerのKrasol製品)、エポキシド官能性を含むシリコーン樹脂、難燃性エポキシ樹脂(例えば、「DER-580」、Dow Chemical Co.から入手可能な臭素化したビスフェノール型のエポキシ樹脂)、フェノール/ホルムアルデヒドノボラックの1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、Dow Chemical Co.の「DEN-431」および「DEN-438」)、ならびに、レゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、Koppers Company Inc.の「Kopoxite」)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、1,2-エポキシヘキサデセン、アルキルグリシジルエーテル、例えば、C8-C10アルキルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 7」)、C12-C14アルキルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 8」)、ブチルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 61」)、クレジルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 62」)、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 65」)、多官能グリシジルエーテル、例えば、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 67」)、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 68」)、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 107」)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 44」)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 48」)、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 84」)、ポリグリコールジエポキシド(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 32」)、ビスフェノールFエポキシド(例えば、Huntsman Int. LLCの「EPN-1138」または「GY-281」)、9,9-ビス-4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニルフルオレノン(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「Epon 1079」)。
【0065】
さらなる好ましい市販品から入手することができる化合物は、例えば、以下のものから選択する:AralditeTM 6010、AralditeTM GY-281、AralditeTM ECN-1273、AralditeTM ECN-1280、AralditeTM MY-720、RD-2(Huntsman Int. LLC);DENTM 432、DENTM 438、DENTM 485(Dow Chemical Co.)、EponTM 812、826、830、834、836、871、872、1001、1031など(Hexion Specialty Chemicals Inc.)、同様にHPTTM 1071、HPTTM 1079(Hexion Specialty Chemicals Inc.)、ノボラック樹脂としてさらに、例えば、Epi-RezTM 5132(Hexion Specialty Chemicals Inc.)、ESCN-001(Sumitomo Chemical)、Quatrex 5010(Dow Chemical Co.)、RE 305S(Nippon Kayaku)、EpiclonTM N673(DaiNipon Ink Chemistry)、またはEpicoteTM 152(Hexion Specialty Chemicals Inc.)。
【0066】
メラミン樹脂を、反応性樹脂として使用することもできる:例えば、CytecのCymelTM-327および-323。
テルペン-フェノール樹脂を、反応性樹脂として使用することもできる:例えば、Arizona ChemicalのNIREZTM 2019。
フェノール樹脂を、反応性樹脂として使用することもできる:例えば、Toto KaseiのYP 50、Dow Chemical Co.のPKHC、およびShowa Union Gosei Corp.のBKR 2620。
ポリイソシアネートを、反応性樹脂として使用することもできる:例えば、Nippon Polyurethane Inc.のCoronateTM L、BayerのDesmodurTM N3300またはMondurTM 489。
【0067】
さらなるエポキシ樹脂は、好ましくは、グリシドールとのアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジル)と1つまたはそれ以上の共重合可能なビニル化合物とのコポリマーを含有することができる。このようなコポリマーの例は、1:1のスチレン/メタクリル酸グリシジル、1:1のメタクリル酸メチル/アクリル酸グリシジル、および62.5:24:13.5のメタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジルである。
【0068】
さらなる使用しうるエポキシ樹脂は周知であり、例えば、エピクロロヒドリン;アルキレンオキシド、例えば、プロピレンオキシド、スチレンオキシド;アルケニルオキシド、例えば、ブタジエンオキシド;グリシジルエステル、例えば、グリシド酸エチルなどのエポキシ化合物を包含する。
さらなる使用しうるエポキシ樹脂は、エポキシ官能性、特にシクロヘキシルエポキシ基を有するシリコーンであり、特にシリコーン基本骨格を有するものである。その例は、UV 9300、UV 9315、UV 9400、およびUV 9425である(これらの全ては、GE Bayer Siliconesから供給されている)。
【0069】
好ましい態様において、本発明の調製物は、上記したエポキシ樹脂系のいくつかの混合物を含んでなる。
このような混合物の例は、2つまたはそれ以上の分子量分布のエポキシ含有化合物、例えば、低分子量(200以下)、中分子量(約200〜10,000)、および高分子量(約10,000以上)のものを含有することができる。別法として、または追加で、エポキシ樹脂は、異なる化学的性質(例えば、脂肪族または芳香族)あるいは官能性(例えば、極性または非極性)のエポキシ含有物質の混合物を含有することができる。
【0070】
本発明において、「ポリウレタン樹脂系」とは、ポリウレタンに基づいて形成される樹脂組成物であると解される。
本発明において、「ベンゾオキサジン樹脂系」とは、ベンゾオキサジンに基づいて形成される樹脂組成物であると解される。
本発明において、「アクリル樹脂系、シアノアクリル樹脂系、トリアジン樹脂系、ポリイミド樹脂系、アクリル酸エステル樹脂系」とは、アクリレート、シアノアクリレート、トリアジン、ポリイミド、および/またはアクリル酸エステルに基づいて形成される樹脂組成物であると解される。
【0071】
本発明のさらなる対象は、
・0.5〜80重量%の式(I)または(II)で示される開始剤;
・0〜99.5重量%の追加樹脂;
・0〜50重量%の熱可塑性樹脂;
・0〜50重量%のさらなる添加剤;
を含有する調製物である。
【0072】
少なくとも1つの本発明の開始剤を含有する本発明の調製物は、熱的および/または非熱的に硬化させることができる。
本発明の調製物は、好ましくは、非熱的に硬化させうるエポキシ樹脂系である。
【0073】
本発明において、「熱的」とは、故意におよび能動的に注入される非熱エネルギーによってもたらされる非熱的開始を含まない、外部熱注入によって開始される硬化操作であると解される。
この熱注入は、例えば、再循環オーブンまたは熱源として赤外放射器を装着したオーブンを用いて、あるいはマイクロ波放射器を用いて行うことができる。
加熱の使用による硬化は、好ましくは20〜350℃、より好ましくは50〜250℃において、10秒間〜24時間、好ましくは30分間〜12時間にわたって行う。
【0074】
本発明において、「非熱的」とは、故意におよび能動的に注入される熱エネルギーによってもたらされる熱的開始を含まない、放射によって開始される硬化操作であると解される。これに関して、完全な硬化(重合)の結果を与えるかまたはそれに寄与することができる熱エネルギーは、放射開始の硬化(いわゆる後硬化)によって得ることができる。
【0075】
本発明の調製物または樹脂系もしくは樹脂系混合物の硬化は、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも780nm、より好ましくは少なくとも1nm、非常に好ましくは少なくとも10pmの波長を有する放射線によって行うのが好ましい。
本発明の調製物は、好ましくは、X線、ガンマ線、電子ビーム、UV線、および/またはマイクロ波ビームから選択される放射によって硬化させることができる。
【0076】
これに関して、放射源に特別の制限は存在しない。水銀ランプ、ハロゲンランプだけでなく、レーザーの形態にある単色放射も、好ましくは、UV線の供給源として使用することができる。
UV線を用いて硬化を行う場合、短波長紫外線照射を200〜450nmの波長領域で用いることによって、特に、高圧または中圧水銀ランプを80〜240W/cmの出力で用いて、好ましくはUV架橋が起こる。
【0077】
電子ビームの供給源の例として、市販のタングステンフィラメントによって生成する熱電子を利用するための系、高電圧パルスを金属に通すことによって電子ビームを生成する冷陰極法、ならびに、イオン化ガス分子の衝突によって生成する二次電子および金属電極を用いる二次電子法を使用することができる。Co60などの核分裂物質を、α-線、β-線およびγ-線の供給源として使用することができる。γ-線のためには、加速電子と陽極との衝突をもたらす真空管を使用することができる。放射を、個々に、あるいは、2つまたはそれ以上の放射型を組合せて使用することができる。後者の場合、2つまたはそれ以上の放射型を、同時に、または特定の時間間隔で使用することができる。
【0078】
放射(特に電子ビーム)の使用による硬化は、20〜250℃、好ましくは80〜100℃において、5秒間〜12時間、好ましくは8秒間〜4時間、非常に好ましくは10秒間〜1時間にわたって行うのが好ましい。
【0079】
好ましい態様において、本発明の調製物または上記した樹脂系のいずれかを硬化させるために使用する放射は、イオン化放射、好ましくは、X線放射および/または電子放射である。
さらに好ましい態様において、本発明の調製物または樹脂系の硬化を、カチオン重合、好ましくは電子ビームの作用によって開始される重合によって行う。
【0080】
電子ビームによる硬化または重合は、選択した放射エネルギーに依存して、ビームが、硬化させる物質をほぼ完全に貫通し、従って、均質かつ完全な硬化を比較的良好に達成することができるという利点を有する。さらに、カチオン開始剤の存在下での高エネルギー放射は、重合のための複数のカチオンを放出する。
【0081】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1つの本発明の開始剤を含有するエポキシ樹脂系に関する。
この種のエポキシ樹脂系を、好ましくは、熱的および/または非熱的に硬化させることができ、エポキシ樹脂系を硬化させるために使用する放射は、好ましくは、X線、ガンマ線、電子ビーム、UV線、および/またはマイクロ波ビームから選択される。
【0082】
硬化可能な調製物、好ましくは、少なくとも1つの本発明の開始剤を含有するエポキシ樹脂系から選択される調製物を、好ましくは3eV〜25MeV、特に6eV〜20MeV、好ましくは1keV〜15MeV、特に1keV〜10MeVで硬化させることができる。
【0083】
好ましい態様において、エポキシ樹脂系を、1〜1000kGy、好ましくは1〜300kGy、特に好ましくは10〜200kGyから自由に選択しうる照射単位を用いて硬化させる。
特に、系を、それぞれ33kGyの4工程において132kGyで硬化させることができる。
【0084】
好ましい態様において、熱硬化および/または非熱硬化の組合せを行うこともできる。
例えば、最初に熱硬化工程を行い、次いで非熱硬化工程を行うことができ、また逆に、最初に非熱硬化工程を行い、次いで熱硬化工程を行うことができる。
【0085】
熱硬化および非熱硬化を、酸素または空気を排除して行うべきであるときには、硬化操作を遮蔽ガス下で行うこともできる。
原則的に、遮蔽ガスとして適するのは、使用する化学物質に対して不活性に挙動する任意のガスである(不活性ガス)。この点で、N2、CO2、またはArなどのガスが好ましく適している。しかし、CO2およびN2などの経済的なガスが好ましい。CO2は、容器の底に集まり、従って取扱いが容易であるという利点を有する。適する遮蔽ガスは、特に、非毒性かつ不燃性である。
【0086】
本発明のさらなる対象は、接着剤、複合材料、封止用コンパウンド、材料としての、および表面被覆のための、上記した調製物またはエポキシ樹脂系における本発明の開始剤の使用に関する。
【0087】
好ましい態様において、本発明のこの種の調製物を、被覆コンパウンドとして表面に適用し、次いで硬化させることができる。具体的に、適する基材は、好ましくは、木、紙、繊維製品、皮革、不織繊維、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン樹脂など)、ガラス、セラミック、紙、無機建築材料(セメントブロックおよび繊維セメントパネルなど)、金属、または被覆金属である。また、基材は、パネル、フィルムまたは3次元の造形要素であることもできる。
【0088】
基材に調製物を適用するための方法として(この場合、被覆コンパウンドとして)、様々な適用方法を利用することができる。これらは、例えば、噴霧、流し塗り、ナイフ塗り、はけ塗り、流し込み、浸漬、含浸、浸浴、ロール塗り、散布被覆または浸漬被覆である。
これに関して、被覆する基材それ自体を固定し、適用デバイスまたは系を動かすことができる。ある場合には、被覆する基材を動かすこともでき、適用系を基材に対して固定するか、または適当な様式で動かすことができる。
【0089】
さらに好ましい態様において、本発明の開始剤を材料(特に造形要素)の硬化のために使用する。本発明の開始剤を用いて製造されるこの種の材料(造形要素)は、好ましくは、高レベルの機械的安定性および強度を示す。
【0090】
本発明のさらなる対象は、非熱硬化(非熱的に開始される硬化)が好ましい硬化系における、本発明の開始剤の使用である。
この種の硬化系は、好ましくは樹脂系、例えば、エポキシ樹脂系、ベンゾオキサジン系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系、エポキシアクリル樹脂系、シアノアクリル樹脂系、トリアジン樹脂系、ポリイミド樹脂系、アクリル酸エステル樹脂系、または熱可塑性樹脂系、あるいは当業者に知られるさらなる樹脂系である。しかし、エポキシ樹脂系が好ましい。
【0091】
本発明の開始剤を、非熱的に硬化させうる硬化系において使用するのが特に好ましい。このような系、好ましくはエポキシ樹脂系を、高エネルギー放射、例えば電子放射を用いて硬化させるのが好ましい。
本発明の開始剤は、通常、エポキシ樹脂系に容易に溶解する。硬化後に、高い架橋度がさらに明らかになる。
【0092】
本発明のさらなる対象は、組成物を硬化させる方法であって、以下の工程を含んでなる方法である:
(i)本発明の調製物または本発明のエポキシ樹脂系を利用可能にし;
(ii)該調製物またはエポキシ樹脂系(i)を、該調製物またはエポキシ樹脂系(i)を硬化させるに十分な熱注入を用いて硬化させる。
この熱注入は、例えば、熱的または非熱的に行うことができるが、好ましくは非熱的に行う。
【0093】
本発明のさらなる対象は、組成物を硬化させる方法であって、以下の工程を含んでなる方法である:
(i)本発明の調製物または本発明のエポキシ樹脂系を利用可能にし;
(ii)該調製物またはエポキシ樹脂系(i)を、該調製物またはエポキシ樹脂系(i)を硬化させるに十分な放射を用いて硬化させる。
【0094】
エポキシ樹脂系のエポキシ樹脂は、特に好ましい態様において、以下に挙げる群から選択される:ビスフェノールAのグリシジルエーテル、エポキシ-フェノールノボラック、エポキシ-クレゾールノボラック、ビスフェノールFとのエポキシ化合物、テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンとフェノールの縮合生成物のグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビスフェノールAまたはビスフェノールFと縮合させたビスフェノールAまたはビスフェノールFの高分子量ジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、またはこれらの混合物。
【0095】
また、本発明は、本発明の調製物または本発明のエポキシ樹脂系を硬化させることによって製造した硬化生成物に関する。
硬化生成物を、好ましくは非熱的および/または熱的に硬化させることができ、好ましくは上記した硬化方法のいずれかに従って得ることができる。好ましくは、硬化を該硬化方法のいずれかに従って行い、該方法においては、本発明の調製物または本発明のエポキシ樹脂系を利用可能にし、次いで、該調製物または該エポキシ樹脂系の硬化を、該調製物または該エポキシ樹脂系を硬化させるに十分な熱注入によって、特に照射によって行う。
硬化生成物は、好ましくは、被覆、フィルム、材料、複合材料、接着剤、または封止用コンパウンドである。
【実施例】
【0096】
以下に挙げる実施例は本発明を説明するものであり、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例1:銀アルケン錯体およびSbF6-とのさらなる錯体の合成
銀アルケン錯体のために選択される出発物質は、市販品から入手することができるAgSbF6(Aldrich、98%;またはChempur、95+%)であった。錯体の合成は、文献において知られる方法に基づいて行った[H.W.Qinn、R.L.Van Gilder、Can.J.Chem. 1970、48、2435;A.Albinati、S.V.Meille、G.Carturan、J.Organomet.Chem. 1979、182、269;H.Masuda、M.Munakata、S.Kitagawa、J.Organomet.Chem. 1990、391、131;A.J.Canty、R.Colton、Inorg.Chim.Acta 1994、220、99]。これには、AgSbF6をトルエンまたはTHFに溶解し、それを過剰のアルケン(好ましくは4当量)と反応させることが含まれていた。{[Ag(アルケン)a]SbF6}nアルケン錯体は、難溶性であり、反応混合物から沈殿し、次いで、濾過によって単離することができる。次いで、この物質を高真空下で乾燥した。
【0097】
さらなる金属およびリガンドの場合、初めにそれぞれの金属塩化物を、適する溶媒(例えばメタノールなど)中、AgSbF6と反応させ、沈殿したAgClを濾過によって分離し、得られた金属ヘキサフルオロアンチモン酸塩の溶液を、それぞれのリガンドと反応させた。次いで、溶媒を除去し、化合物を高真空下で乾燥した。
【0098】
実施例2:架橋度の測定
(エポキシ)樹脂の架橋度を、FT-IRにより、エポキシバンド(915cm-1)の面積の減少から決定した。エポキシバンドの減少は架橋度と関連する。樹脂の架橋中に、材料中のエポキシ基の数が減少すると、エポキシバンドの面積(FT-IRによって確認する)も減少する。ベンゼン環バンド(1505cm-1)を参照バンドとして利用した。次いで、架橋度を、以下の式を用いて算出した:
架橋度(%)=
【数1】

A1:硬化時のエポキシバンド(915cm-1)の面積;
A2:硬化時の参照バンド(ベンゼン環バンド;1505cm-1)の面積;
A3:未硬化時のエポキシバンド(915cm-1)の面積;
A4:未硬化時の参照バンド(ベンゼン環バンド;1505cm-1)の面積。
【0099】
実施例3:破壊力学の研究
純粋な樹脂系の統計学的破壊靱性を、ISO 13586に従いモードI負荷のもとで測定した。ZwickモデルZ020汎用試験機を用いて破壊力学実験を行った。試料幅Wが33mmであるCT試験物品を、試験物品として用いた。試験速度は10mm/分であった。全ての測定を、23℃および50%相対湿度において行った。
【0100】
実施例4:本発明の開始剤を含有する樹脂組成物の熱硬化および電子ビーム(EB)硬化
室温で液体、粘稠、または固体である樹脂または樹脂配合物(69.3重量% DEN431+29.7重量% DEN438)を、室温において、対応する開始剤(1重量%の{[Ag(1,7-オクタジエン)1.5]SbF6})と混合し、最高80℃まで加熱し、開始剤が樹脂中に完全に溶解するまで撹拌した。次いで、混合物を室温まで冷却した。
【0101】
(a)電子ビーム開始の硬化
上記のように製造した樹脂試料の電子ビーム硬化のために、初めに、樹脂配合物を、真空乾燥キャビネット中、最高80℃において脱ガスし、型(約20cm×20cm×4mm)に注入し、表面を木製棒で滑らかにした。ここで、完全に気泡がないことが重要である。次いで、試料を、電子ビーム系(10MeV)に通し、硬化を、4工程で行った(各工程において33kGyの線量を導入し、合計して132kGy導入した)。
【0102】
(b)熱開始の硬化
製造した樹脂試料の熱硬化のために、熱い(80℃)樹脂混合物を、アルミニウム型(これも80℃に加熱)に注入し、次いで木製棒を用いて表面を滑らかにし、次いで真空乾燥キャビネット(80℃)中で45〜60分間にわたって脱ガスを行った。次いで、試料を、加熱オーブン中、以下の温度プログラムに従って硬化させた:
(1)25℃から200℃まで1℃/分
(2)200℃において2時間
(3)200℃から25℃まで2℃/分
型からの硬化した樹脂試料の改善された離型のために、予め、Frekote-700NC 離型剤(Henkel Loctite)の薄層を被覆した。
【0103】
【表1】

【0104】
表1は、本発明の銀塩が、電子放射および熱エネルギーの両方の結果として、樹脂においてカチオン重合を開始すること、ならびに、高い架橋度が達成されることを示す。また、硬化後に、樹脂が高い値のEモジュラスおよび破壊靱性を示すことも明らかである。
【0105】
実施例5:本発明の開始剤を含有する樹脂組成物のUV硬化
UV開始の硬化を行うために、DGEBA樹脂(Dow Chemical Co.のDER 331P)に1重量%の{[Ag(1,7-オクタジエン)1.5]SbF6}を加え、撹拌しながら最高80℃で均質化した。得られた組成物を、予めアセトンで清浄にしておいたアルミニウムパネル(Al 2024シート)上に、約30℃において、約1mmの層厚さでナイフ被覆し、次いで、UV放射(Fusion systemのH放射器、100%出力、30cm距離)を用いて硬化させた。
【0106】
【表2】

【0107】
これらの結果は、本発明の銀塩は、UV活性でもあり、エポキシ樹脂のカチオン重合を開始することを示す。
即ち、UV照射を用いたときにも、銀塩は、樹脂配合物の表面において、高い架橋度の結果を与える。表面の架橋度は、照射時間とともに高くなる。同様に、配合物のガラス転移温度(Tg)も照射時間とともに高くなる。試料の下側の架橋度は、放射源に面する側で確認された表面データと比較して低下する。これは、UV硬化のための放射貫通深さが一般に小さい(放射エネルギーが低いため)という事実によって説明することができる。
【0108】
実施例6:様々な開始剤を用いる電子ビーム硬化
【表3】

【0109】
実施例7:貯蔵安定性
80℃においてポット時間測定装置を用いて相対粘度を測定することによって貯蔵安定性を調べた。
【表4】

【0110】
実施例8:樹脂中の開始剤の溶解性
DEN431樹脂中の本発明の開始剤および既存技術の開始剤の溶解性の測定を、70℃において2時間以内行った。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)で示される開始剤:
【化1】

[式中、
M=Ag、Fe、Mg、Co、Cu、Al、またはTiを包含する群から選択される金属カチオン;
L=プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、イソプレン、ノルボルネン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロデセン、1,4-シクロヘキサジエン、4-ビニルシクロヘキセン、trans-2-オクテン、スチレン、5-ノルボルネン-2-カルボン酸、ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、ソルビン酸エチルエステル、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロオクタジエン、1,5-シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘプタトリエン、trans,trans,trans-1,5,9-シクロドデカトリエン、trans,trans,cis-1,5,9-シクロドデカトリエン、シクロオクタテトラエン、スクアレン、ジアリルカーボネート、ジアリルエーテル、ジアリルジメチルシラン、ノポール、シクロペンタジエン、エチルビニルエーテル、リモネン、1,2-ジヒドロナフタレン、桂皮酸エチルエステル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、スチルベン、オレイン酸メチルエステル、リノール酸メチルエステル、リノレン酸メチルエステル、ジフェニルアセチレン、ジメチルアセチレン、3-ヘキシン、1,8-シクロテトラデカジイン、プロパルギルアルコール、ビニルアセチレン、1-フェニルプロピン、1,8-ノナジインから選択される、少なくとも1つの(C-C)二重および/または三重結合を有するリガンド;
X=ヘキサフルオロアンチモン酸塩(SbF6-)、ヘキサフルオロリン酸塩(PF6-)、四フッ化ホウ素(BF4-)、ヘキサフルオロアルミン酸塩(AlF63-)、トリフルオロメタンスルホン酸塩(CF3SO3-)、硝酸塩(NO3-)、ヘキサフルオロヒ酸塩(AsF6-)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩(B[C65]4-)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(B[C63(CF3)2]4-)、テトラフェニルホウ酸塩(B[C65]4-)、ヘキサフルオロチタン酸塩(TiF62-)、ヘキサフルオロゲルマニウム酸塩(GeF62-)、ヘキサフルオロケイ酸塩(SiF62-)、ヘキサフルオロニッケル酸塩(NiF62-)、またはヘキサフルオロジルコニウム酸塩(ZrF62-)から選択される対イオン;
a=1〜10、好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4;
b=1〜10、好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜3;
n=1〜∞、好ましくは1〜20,000、特に好ましくは1〜1000、非常に好ましくは1〜500、特に1〜300;
ここで、a、b、およびnは、整数および数値範囲を表すことができ、そして、aは、さらに非整数を表すこともできる]。
【請求項2】
対イオン(X)がヘキサフルオロアンチモン酸塩(SbF6-)である請求項1に記載の開始剤。
【請求項3】
以下の群から選択される開始剤:
[Ag(シクロヘキセン)1-4]SbF6、[Ag(シクロオクテン)1-4]SbF6、[Ag(シクロドデセン)1-4]SbF6、[Ag(trans-2-オクテン)1-4]SbF6、[Ag(スチレン)1-4]SbF6、[Ag(5-ノルボルネン-2-カルボン酸)1-4]SbF6、{[Ag(1,5-ヘキサジエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(1,7-オクタジエン)1.5]SbF6}、{[Ag(1,7-オクタジエン)1.5]SbF6}1000、{[Ag(1,7-オクタジエン)1.5]SbF6}500、{[Ag(1,9-デカジエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(ソルビン酸エチルエステル)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(1,3-シクロヘキサジエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(1,3-シクロオクタジエン)1-4]SbF6}1-∞、[Ag(1,5-シクロオクタジエン)2]SbF6、{[Ag(ノルボルナジエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(ジシクロペンタジエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(シクロヘプタトリエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Cu(1,7-オクタジエン)1-4]SbF6}1-∞、[Cu(1,5-シクロオクタジエン)2]SbF6、[Ag(1R-(−)-ノポール)1-4]SbF6、[Ag(アリルグリシジルエーテル)1-4]SbF6、{[Ag(trans,trans,cis-1,5,9-シクロドデカトリエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(trans,trans,trans-1,5,9-シクロドデカトリエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(シクロオクタテトラエン)1-4]SbF6}1-∞、{[Ag(スクアレン)1-4]SbF6}1-∞
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の少なくとも1つの開始剤を含有する調製物。
【請求項5】
開始剤の濃度が、全組成物を基準に、0.01〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%、特に好ましくは1〜2重量%である請求項4に記載の調製物。
【請求項6】
エポキシ樹脂系、ベンゾオキサジン系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系、エポキシアクリル樹脂系、シアノアクリル樹脂系、トリアジン樹脂系、ポリイミド樹脂系、アクリル酸エステル樹脂系の群から選択されるか、または熱可塑性樹脂系である請求項4または5に記載の調製物。
【請求項7】
熱的および/または非熱的に硬化させることができる請求項4〜6のいずれかに記載の調製物。
【請求項8】
X線、ガンマ線、電子ビーム、UV線、および/またはマイクロ波ビームによって硬化させることができる請求項4〜6のいずれかに記載の調製物。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれかに記載の少なくとも1つの開始剤を含有するエポキシ樹脂系。
【請求項10】
熱的および/または非熱的に硬化させることができる請求項9に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項11】
X線、ガンマ線、電子ビーム、UV線、および/またはマイクロ波ビームから選択される放射によって硬化させることができる請求項10に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項12】
接着剤、複合材料、封止用コンパウンド、材料としての、ならびに、表面被覆のための、請求項4〜8のいずれかに記載の調製物または請求項9〜11のいずれかに記載のエポキシ樹脂系における請求項1〜3のいずれかに記載の開始剤の使用。
【請求項13】
熱(熱的に開始される)および/または非熱(非熱的に開始される)硬化のための硬化系における請求項1〜3のいずれかに記載の開始剤の使用。
【請求項14】
硬化系を非熱的に硬化させることができる請求項13に記載の使用。
【請求項15】
組成物を硬化させる方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(i)請求項4〜8のいずれかに記載の調製物または請求項9に記載のエポキシ樹脂系を利用可能にし;
(ii)該調製物またはエポキシ樹脂系(i)を、該調製物またはエポキシ樹脂系(i)を硬化させるに十分な熱注入を用いて硬化させる。
【請求項16】
組成物を硬化させる方法であって、以下の工程を含んでなる方法:
(i)請求項4〜8のいずれかに記載の調製物または請求項9に記載のエポキシ樹脂系を利用可能にし;
(ii)該調製物またはエポキシ樹脂系(i)に、該調製物またはエポキシ樹脂系(i)を硬化させるに十分な放射を照射する。
【請求項17】
請求項4〜8のいずれかに記載の調製物または請求項9に記載のエポキシ樹脂系を硬化させることによって製造した硬化生成物。
【請求項18】
非熱的および/または熱的に硬化させた請求項17に記載の硬化生成物。
【請求項19】
生成物が、被覆、フィルム、材料、複合材料、接着剤、封止用コンパウンドである請求項17または18に記載の硬化生成物。

【公表番号】特表2010−511083(P2010−511083A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538662(P2009−538662)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061158
【国際公開番号】WO2008/064959
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【出願人】(509153940)フォルシュングスツェントルム・カールスルーエ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】FORSCHUNGSZENTRUM KARLSRUHE GMBH
【Fターム(参考)】