説明

開閉器

【課題】ハンドルのロックを簡単かつ確実に行える開閉器を提供する。
【解決手段】開閉器は、接点開閉機構Aと、オフ位置又はオン位置に移動されることにより接点開閉機構Aのオンオフを切り換えるハンドル4と、ハンドル4の移動経路へ進出するように付勢されてハンドル4の移動を規制するハンドルロック部材5と、ハンドルロック部材5を移動経路から退出させてハンドルロック部材5によるハンドル4の移動規制を解除する解除レバー6と、これらが収納される器体Hとを備え、ハンドルロック部材5は、ハンドル4がオン位置に位置しているときはハンドル4と前記進出方向で当接してハンドル4のオフ位置への移動を妨げず、ハンドル4がオフ位置に位置しているときは前記進出方向でのハンドル4との当接状態が解除されてハンドル4の移動経路へ進出してハンドル4と当接しハンドル4のオン位置への移動を規制するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルの操作により接点を開閉駆動する開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から提供されている回路遮断器などのハンドルの操作により接点を開閉駆動(オンオフ)する開閉器では、予期しないハンドル操作によって接点がオンオフしてしまうことを防止するために様々な工夫が凝らされている。
【0003】
例えば、開閉器のハンドルに別部材からなるハンドルロック部材を被嵌することで、ハンドルが不意に移動しないようにハンドルをロックするようにしたものが提供されている(特許文献1)。
【0004】
また、開閉器の器体にスライド自在に設けたハンドルロック部材をハンドルの側面に設けたオン位置用嵌合部又はオフ位置用嵌合部に手動で嵌め込むことで、ハンドル位置をロックできる開閉器が提供されている(特許文献2)。
【特許文献1】実開平5−75945号公報(第1図)
【特許文献2】特開2002−222623号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1は、ハンドルをロックしたいときにのみハンドルロック部材を開閉器に取り付けるものであるから、ハンドルを移動させる際には、その都度ハンドルロック部材を開閉器から取り外す必要があった。そのため、開閉器からハンドルロック部材を取り外した際にハンドルロック部材を紛失してしまうおそれがあった。また、このようなハンドルロック部材は、使用者がその都度開閉器に取り付けるものであるから、使用者がハンドルロック部材を取り付けることを忘れて、ハンドルがロックされないまま使用される可能性があり、ハンドルのロックを確実に行えないという問題があった。
【0006】
これに対して上記の特許文献2では、ハンドルロック部材を開閉器の器体にスライド自在に取り付けることで、ハンドルのロックを解除した際でもハンドルロック部材が器体から外れないようにしているから、特許文献1とは異なりハンドルロック部材を紛失してしまうことはない。しかしながら、この特許文献2においてもハンドルのロックは使用者が手動で行わなければならなかったので、特許文献1と同様に使用者がハンドルのロックをし忘れてしまうという可能性は依然として残ったままであった。
【0007】
つまるところ、特許文献1,2のような従来の開閉器では、ハンドルのロックを確実に行うことができなかった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みて為されたもので、その目的は、ハンドルのロックを簡単かつ確実に行える開閉器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、請求項1の開閉器の発明では、接点開閉機構と、オフ位置又はオン位置に移動されることにより接点開閉機構のオンオフを切り換えるハンドルと、ハンドルの移動経路へ進出するように付勢されてハンドルの移動を規制するハンドルロック手段と、ハンドルロック手段を前記移動経路から退出させてハンドルロック手段によるハンドルの移動規制を解除する解除手段と、これらを収納する器体とを備え、前記ハンドルロック手段は、ハンドルがオン位置又はオフ位置のいずれか一方に位置しているときはハンドルに前記進出方向で当接してハンドルの他方への移動を規制せず、ハンドルが他方に位置しているときは前記進出方向でのハンドルとの当接状態が解除されて前記移動経路へ進出し、ハンドルの一方への移動方向でハンドルに当接することでハンドルの一方への移動を規制するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2の開閉器の発明では、請求項1の構成に加えて、前記解除手段は、押し操作が継続されている間のみ前記ハンドルロック手段を前記移動経路から退出させる押し釦であることを特徴とする。
【0011】
請求項3の開閉器の発明では、請求項2の構成に加えて、ハンドルロック手段は、長手方向の中央部で器体に回動自在に支持されており、長手方向一端側が前記ハンドルの位置規制に用いられるとともに長手方向他端側が解除手段と係合され、解除手段の操作に伴なって前記中央部を軸として回動するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4の開閉器の発明では、請求項3の構成に加えて、前記器体には、ハンドルロック手段の長手方向他端側に当接して、ハンドルロック手段にかかる無理な負荷を吸収する補強部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ハンドルをオン位置とオフ位置のいずれか一方から他方へ移動させた際にハンドルロック手段が付勢力によりハンドルの移動経路に進出してハンドルのロックが自動的に行われるから、ハンドルのロック作業を使用者が手動で行う必要がなくなり、これによりハンドルのロック忘れなどが起きることがなくなってハンドルのロックを確実に行うことができるという効果があり、しかもハンドルを一方から他方へ移動させるだけで、他に特別な操作を行わなくても自動的にハンドルがロックされるので、ハンドルのロックを簡単に行えるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、図1(a)の上方を開閉器の上方、図1(a)の下方を開閉器の下方、図1(a)の右方を開閉器の前方、図1(a)の左方を開閉器の後方、図1(a)の紙面奥方を開閉器の左方、図1(a)の紙面手前方を開閉器の右方とする。
【0015】
本実施形態の開閉器は、図1(a),(b)に示すように、固定接点10と該固定接点10に接離する可動接点30とからなる接点開閉機構Aと、固定接点10が設けられた第1端子1と、可動接点30が設けられた可動接触子3と、可動接触子3が固定された支持片31と、可動接触子3に編組線Lを介して電気的に接続される第2端子2と、オフ位置又はオン位置に移動されることにより可動接触子3を移動させて接点開閉機構Aのオンオフを切り換えるハンドル4と、ハンドル4の移動経路へ進出するように付勢されてハンドル4の移動を規制する(つまりはハンドル4をロックする)ハンドルロック手段となるハンドルロック部材5と、ハンドルロック部材5を前記移動経路から退出させてハンドルロック部材5によるハンドル4の移動規制を解除する解除手段となる解除レバー6と、これらが収納される器体Hとを備えている。そして、ハンドルロック部材5は、図1(b)に示すようにハンドル4がオン位置に位置しているときは前記進出方向でハンドル4に当接してハンドル4のオフ位置への移動を規制せず、図1(a)に示すようにハンドル4がオフ位置に位置しているときは前記進出方向でのハンドル4との当接状態が解除されてハンドル4の移動経路へ進出し、ハンドル4に当接することでハンドル4のオン位置への移動を規制するように構成されている。
【0016】
まず、器体Hに収納される部材、すなわち第1端子1と、第2端子2と、可動接触子3と、支持片31と、ハンドル4と、ハンドルロック部材5と、解除レバー6とについて説明する。尚、器体Hには上記の部材の他に、ハンドル4と支持片31とを連結するためのフック付きのコイルばねC1と、解除レバー6に復帰力を与えるためのコイルばねC2とが収納されるのであるが、これらは周知なものであるから説明は省略する。
【0017】
第1端子1は、導電性を有する金属板から曲成され、器体Hから外方へ突出されて外部の電線などが接続される端子部1aと、固定接点10が形成される接点部1bと、端子部1a及び接点部1bを連結する連結部1cとを一体に備え、端子部1aには外部の電線の接続などに用いられる円形の孔部1dが貫設されている。
【0018】
第2端子2は、第1端子1と同様に導電性を有する金属板から曲成され、器体Hから外方へ突出されて外部の電線などが接続される端子部2aと、編組線Hが半田付けなどにより接続される接続部2bと、端子部2a及び接続部2bを連結する連結部2cとを一体に備え、端子部2aには外部の電線などの接続に用いられる円形の孔部2dが貫設されている。
【0019】
可動接触子3は、導電性を有する長尺状の金属板を略く字状に折曲することで形成されており、長手方向一端側(図1(a)の下端側)に固定接点10と接触離反する可動接点30が設けられ、長手方向他端側(図1(a)の上端側)に一端が第2端子2の接続部2bに接続された編組線Lの他端が半田付けなどにより接続される。このように形成された可動接触子3は支持片31に取り付けられて、器体Hに幅方向(左右方向)を回転軸として回動自在に収納される。
【0020】
支持片31は、合成樹脂などを用いて長尺の直方体状に形成され、可動接点30が支持片31の長手方向一端側(図1(a)の下端側)に位置するようにして可動接触子3がその前面側に固着される。また支持片31の右側面の長手方向他端側(図1(a)の上端側)には、支持片31を器体Hに幅方向を回転軸として回動自在に取り付けるための軸部31aが一体に突設されており、左側面においても同様に軸部31aと同軸上に位置する軸部(図示せず)が一体に突設されている。さらに、支持片31の左側面の長手方向中央部には、ハンドル4と支持片31とを連結するコイルばねC1のフックの一方が係合される係合突起31bが一体に突設されている。
【0021】
ハンドル4は、合成樹脂などを用いて形成され、図1(a),(b)に示すように、ハンドル4を器体Hに回動自在に取り付けるための軸受けとなる切欠部40aが下端部に形成された平板部40と、ハンドル4の回転軸を中心とした中心角が略180度の円弧状を有して平板部40の上端側に形成された摺動部41と、摺動部41の略中央部に突設されたハンドル操作用のレバー(把持部)42とを一体に備え、摺動部41の前端部41aがハンドルロック部材5に当接する部位となる。また、平板部40の左側面には、コイルばねC1のフックの他方が係合される係合突起40bが設けられており、ハンドル4の係合突起40bと支持片31の係合突起31bとをコイルばねC1で連結することで、ハンドル4と支持片31とが連動するようにしている。
【0022】
ハンドルロック部材5は、図4に示すように、合成樹脂などを用いて上下方向を長手方向とする略直方体状に形成されており、特にその長手方向一端側(上端側)の平坦部50がハンドル4と当接してハンドル4の移動を規制する部位として用いられる。また、ハンドルロック部材5の右側面には幅方向を回転軸としてハンドルロック部材5を器体Hに取り付けるための軸部5aが一体に突設されている。
【0023】
一方、ハンドルロック部材5の左側面には、図2(b)に示すように、軸部5aと同軸上に位置する軸部5bが一体に突設されており、またその下端側には、後述する解除レバー6の係合部6cが配置される凹所5cが設けられている。さらに、ハンドルロック部材5の左側面の凹所5cに対応する面には、解除レバー6と係合するための係合軸部5dが一体に突設されている。また、ハンドルロック部材5の後面部には、ハンドル4を図1(b)に示すようなオン位置に位置させた際にハンドル4の摺動部41の前端部41aを一時的に収納するためのハンドル用の収納凹所5eが設けられている。
【0024】
解除レバー6は、合成樹脂などを用いて形成されており、図4に示すように、略角柱状の本体部6aと、本体部6aの上端面に突設された円柱状の操作部6bと、本体部6aの右側面の下端部から右斜め前方へ突設されてハンドルロック部材5の凹所5cに配置される前述の係合部6cと、本体部6aの下端面に突設されてコイルばねC2に嵌め込まれる略円柱状の突部6d(図1(a)参照)とを一体に備えている。また、係合部6cの右側面には、上方へいくほど後方へ傾斜した略弧状の係合溝60が設けられており、この係合溝60にハンドルロック部材5の係合軸部5cを係合することで、解除レバー6とハンドルロック部材5とが連結され、互いに連動するようにしている。
【0025】
次に、上述した部材が収納される器体Hについて説明する。この器体Hは、図2(a)に示すように、第1ケース7と、第2ケース8とで構成されており、これらケース7,8はともに合成樹脂製のものである。
【0026】
第1ケース7は、図1(a),(b)に示すように、右面が開口した略L字の箱状に形成されており、その内部の上側がハンドル収納部7a、下側が接点収納部7bとして用いられる。この第1ケース7の上壁部には、ハンドル4のレバー42を器体Hから外方(上方)へ突出させるための開口部70が設けられており、開口部70は、ハンドル4のレバー42を回動自在に移動できるような大きさに形成されている。加えて、第1ケース7内の開口部70の近傍には、ハンドル4の摺動部41の上面側が摺動自在に当接されるリブ70bが設けられており、これによりハンドル4が器体Hから脱落することを防止するようにしている。
【0027】
また、第1ケース7の前壁部の下端側には、第1端子1の端子部1aを器体Hから前方へ突出させるための孔部71が設けられており、この孔部71の近傍には、第1端子1の連結部1cを嵌入して第1端子1を固定するための固定用溝部72が孔部71と連通するようにして設けられている。同様に、第1ケース7の後壁部の上端側には、第2端子2の端子部2aを器体Hから後方へ突出させるための孔部73が設けられており、この孔部73の近傍には、第2端子2の連結部2cを嵌入して第2端子2を固定するための固定用溝部74が孔部73と連通するようにして設けられている。加えて、第1ケース7のハンドル収納部7a及び接点収納部7bには、第1ケース7を第2ケース8に取り付けるための固定ねじSが挿通される各一対のねじ挿通孔75が第1ケース7の幅方向に貫設されている。
【0028】
一方、第1ケース7のハンドル収納部7aの底部(つまりは器体Hの左側部)には、図2(a),(b)に示すように、上下方向を長手方向とする長尺箱状の解除レバー収納部7cが外方へ向けて突出形成されている。この解除レバー収納部7cは、解除レバー6の本体部6aを上下方向に移動自在に収納できる程度の大きさに形成されており、その内部がハンドル収納部7a内と連通している。また、解除レバー収納部7cの上端部には、解除レバー6の操作部6bのみを外方へ突出させることができる大きさの孔部76が形成されており、解除レバー収納部7cの下端部には、コイルばねC2を嵌入して固定するための凹部77が形成されている。
【0029】
さらに、ハンドル収納部7aの底面(つまりは器体Hの左内側面)の前端側にはハンドルロック部材5の軸部5bに対応する軸受け孔78(図2(b)参照)が形成され、後端側には後述する中ケース9を取り付けるための嵌合部(図示せず)が形成されている。加えて、ハンドル収納部7aの底面の前後方向における中央部には、支持片31の図示しない軸部に対応する軸受け孔(図示せず)が形成されている。
【0030】
第2ケース8は、図2(a)に示すように、第1ケース7に対してほぼ左右対称となるように、左面が開口した略L字の箱状に形成されている。この第2ケース8の上壁部には、第1ケース7の開口部70と連通してハンドル4のレバー42を器体Hから外部へ突出させる開口部80が設けられており、この開口部80は、第1ケース7の開口部70と同様にハンドル4のレバー42を回動自在に移動できるような大きさに形成されている。加えて、第2ケース8内の開口部80の近傍には、第1ケース7と同様に、ハンドル4の摺動部41の上面側が摺動自在に当接されるリブ(図示せず)が設けられており、第1ケース7のリブ70bとともにハンドル4が器体Hから脱落することを防止している。
【0031】
また、第2ケース8において、第1ケース7の4つのねじ挿通孔75と対応する部位には、固定ねじS用のねじ孔(図示せず)が第2ケース8の幅方向に凹設されている。さらに、第2ケース8の底面(つまりは器体Hの右内側面)には、図2(b)に示すように、ハンドルロック部材5の軸部5aに対応する軸受け孔81が形成されている。加えて、図2(b)に示すように、ハンドルロック部材5の長手方向他端側(下端側)と対向する第2ケース8の部位には、ハンドルロック部材5の回動を邪魔しない程度の隙間を隔てて、ハンドルロック部材5にかかる無理な負荷を吸収して、ハンドルロック部材5の破損などを防止するための補強部82が設けられている。
【0032】
上述した第1ケース7と第2ケース8とで器体Hは構成されているが、この器体Hには、ハンドル4などを取り付けるための補助部材となる前述の中ケース9が設けられている。この中ケース9は、合成樹脂などを用いて形成されており、図1(a),(b)に示すように、器体Hの左右側面にほぼ平行する支持板90と、支持板90を第1ケース7に固定するための固定部91とを一体に備えている。この支持板90の右側面には、ハンドル4の切欠40aに軸支される軸部90aが突設されている。また、支持板90には、支持片31の軸部(図示せず)を軸支する第1ケース7の軸受け孔(図示せず)と対応する位置に、支持片31の軸部31aを軸支する軸受け孔90bが貫設されている。
【0033】
以上の部材により本実施形態の開閉器は構成されており、以下に本実施形態の開閉器の組み立て方法について説明する。まず、第1端子1を第1ケース7に取り付けるのであるが、この取り付け作業は、図1(a)に示すように第1端子1の端子部1aを第1ケース7の孔部71から器体Hの前方へ突出させるとともに、第1端子1の連結部1cを第1ケース7の固定用溝部72に嵌入することで行われ、これにより第1端子1は、接点部1bに設けられた固定接点10を後方へ向けた状態で、第1ケース7に取り付けられる。次に、第2端子2の第1ケース7への取り付けを行うのであるが、この取り付け作業は、第1端子1の場合と同様に、端子部2aを第1ケース7の孔部73から後方へ突出させるとともに、第2端子2の連結部2cを第1ケース7の固定用溝部74に嵌入することで行う。
【0034】
この後に、解除レバー6の操作部6bを図2(a)に示すように孔部76から器体Hの上方へ突出させるとともに係合部6cをハンドル収納部7aに突出させた状態で、解除レバー6を第1ケース7の解除レバー収納部7cに収納する。同時に、解除レバー6の突部6dと、解除レバー収納部7cの凹部77との間に、解除レバー6を上方へ付勢して復帰力を与えるためのコイルばねC2を配設する。これにより解除レバー6は、解除レバー収納部7cの上壁の後面に本体部6aの上端面が弾接するとともに孔部76より操作部6bを器体Hの上方へ突出させた状態(図1(a)に示す状態)を初期位置として、解除レバー収納部7c内に収納される。これにより、操作部6bをコイルばねC2の付勢に逆らって下方へ押し込むことで下方へ移動し、操作部6bの押し込みを解除することで、コイルばねC2の付勢力によって上方へ移動して初期位置へと復帰する押し釦が構成される。
【0035】
このようにして解除レバー6が第1ケース7に取り付けられた後には、ハンドルロック部材5が第1ケース7に取り付けられる。ここで、ハンドルロック部材5は、図2(b)に示すように、軸部5bを第1ケース7の軸受け孔78に軸支させるとともに、凹所5cに配置される解除レバー6の係合部6cの係合溝60に係合軸部5dを係合させた状態で第1ケース7に取り付けられる。
【0036】
ここで、解除レバー6が上述の初期位置にある際には、図1(a)に示すように、ハンドルロック部材5の係合軸部5dは、解除レバー6の係合溝60の下端部に位置している。このとき係合軸部5dは器体Hの前壁に最も近接した状態となり、逆にハンドルロック部材5の平坦部50は器体Hの前壁から最も離間して、ハンドル4の移動経路に進出した状態となっている。このようにハンドルロック部材5は、解除レバー6と連動するようになっているので、解除レバー6を初期位置へ復帰させるためのコイルばねC2によって、平坦部50がハンドル4の移動経路へ進出するように付勢されている。
【0037】
また、第1ケース7には、可動接触子3が固定された支持片31と、中ケース9と、ハンドル4と、コイルばねC1とが次のようにして取り付けられる。まず、支持片31を第1ケース7に取り付けるのであるが、この取り付け作業は、支持片31の軸部(図示せず)を第1ケース7の軸受け孔(図示せず)に軸支させることで行われ、このとき可動接触子3に設けられた可動接点30と第1端子1の固定接点10とが対向するようにして、接点開閉機構Aを構成する。この後に、ハンドル4のレバー42を開口部70から器体Hの上方へ突出させるとともに、ハンドル4の摺動部41の上端面をリブ70bに摺接させ、さらにコイルばねC1によりハンドル4の係合突起40bと支持片31の係合突起31bとを連結した状態で、ハンドル4を第1ケース7のハンドル収納部7a内に配置する。
【0038】
同時に、第1ケース7の嵌合部(図示せず)に中ケース9の固定部91を嵌入することで中ケース9を第1ケース7に取り付けるのであるが、このとき中ケース9の支持板90の軸受け孔90bに支持片31の軸部31aを軸支させるとともに、支持板90の軸部90aをハンドル4の切欠40aに軸支させる。これにより、ハンドル4及び支持片31が器体Hの幅方向を回転軸として回動自在に取り付けられることになる。このようにして取り付けられたハンドル4及び支持片31は、コイルばねC1により互いに連結されているので、ハンドル4が回動した際には、支持片31がコイルばねC1により引っ張られてハンドル4に連動して回動するようになっている。
【0039】
特に本実施形態の開閉器では、ハンドル4を図1(b)に示すオン位置に位置させるために、図1(a)に示すオフ位置からハンドル4のレバー42を器体Hの前方へ移動させた(つまりハンドル4を図1における時計回り方向に回動させた)際には、支持片31はハンドル4に連動して前方へ移動(図1における反時計回り方向へ回動)して、両接点10,30が所定の接圧で接触するようになっている。逆に、ハンドル4を図1(a)に示すオフ位置に位置させるために、図1(b)に示すオン位置からハンドル4のレバー42を器体Hの後方へ移動させた(つまりハンドル4を図1における反時計回り方向に回動させた)際には、支持片31はハンドル4に連動して後方へ移動(図1における時計回り方向へ回動)して、両接点10,30が離反するようになっている。
【0040】
このようにして支持片31と、中ケース9と、ハンドル4と、コイルばねC1とを第1ケース7に取り付けた後には、可動接触子3の上端部と第2端子2の接続部2bとを絶縁被覆された編組線Lを用いて電気的に接続する。このように比較的柔らかく可撓性を有する編組線Lを用いて第2端子2と可動接触子3とを接続することにより、可動接触子3が回動した際に接続外れや接続不良等の悪影響が生じることを防止している。
【0041】
最後に、図2(a)に示すように、第1ケース7の右面開口を閉塞するように第2ケース8を第1ケース7に被着する。このとき、図2(a)に示すようにハンドル4のレバー42を開口部80から器体Hの上方へ突出させるとともに、ハンドル4の摺動部41の上端面を第2ケース8のリブ(図示せず)に摺接させ、さらに第1ケース7の4つのねじ挿通孔75と第2ケース8の4つのねじ孔(図示せず)とを連通させ、且つ図2(b)に示すようにハンドルロック部材5の軸部5aを第2ケース8の軸受け孔81に軸支させた状態とする。この状態で、固定ねじSを、第1ケース7のねじ挿通孔75を介して第2ケース8の各ねじ孔(図示せず)に螺入することで、図2(a)に示すような本実施形態の開閉器が完成する。
【0042】
次に、この開閉器の動作について説明する。初期状態では図1(a)に示すようにハンドル4のレバー42が器体Hの後方に位置した状態となっているとすると、ハンドル4に連動する支持片31も器体Hの後方に位置し、接点開閉機構Aは接点オフとなっている。また、解除レバー6を押し操作していない場合は、解除レバー6はコイルばねC2により上方へ押し上げられて初期位置に位置しているので、ハンドルロック部材5の係合軸部5dは解除レバー6の係合溝60の下端部に位置し、これに伴なって上述したようにハンドルロック部材5の平坦部50が器体Hの前壁から最も離間して、ハンドル4の移動経路に進出した状態となっている。
【0043】
上記の図1(a)に示す接点オフの状態では、上述したようにハンドルロック部材5の平坦部50がハンドル4の移動経路に進出した状態となっているので、ハンドル4のレバー42を前方へ移動させて接点をオンにしようとしても、ハンドル4の摺動部41の前端部41aにハンドルロック部材50の平坦部50がハンドル4のオン位置への移動方向(図1(a)における時計回り方向)で当接してハンドル4の移動が規制されるから、ハンドル4をオン位置へ移動させることができないようになっている。つまり、ハンドル4がオフ位置にロックされた状態となっているのである。
【0044】
したがって、不意にハンドル4のレバー42に力が加えられても、ハンドル4はハンドルロック部材5によりオフ位置にロックされているので、接点開閉機構Aがオンになることはない。また、本実施形態の開閉器には、図2(b)に示すような補強部82を設けているので、ハンドル4がロックされている状態でハンドル4を無理に動かそうとして、ハンドルロック部材5に無理な力が加えられても、ハンドルロック部材5の下端部が補強部82に当接することによって、ハンドルロック部材5の限度を越えた無理な移動が抑制される。これにより、ハンドルロック部材5の破損、特に軸部5a,5bの破損を防止することが可能になる。
【0045】
ハンドル4のロック状態を解除するためには、コイルばねC2の付勢に逆らって操作部6bを器体H内へ押し込んで解除レバー6を下方へ移動させればよい。このようにして解除レバー6を下方へ移動させると、当然ながら解除レバー6の係合部6cも下方へと移動するので、ハンドルロック部材5の係合軸部5dが相対的に係合部6cの係合溝60の上方へ移動することになる。この係合溝60は上方へいくほど後方へ傾斜した略弧状に形成されているので、ハンドルロック部材5の係合軸部5bは係合溝60により器体Hの後方へと誘導される。これに伴なってハンドルロック部材5が軸部5a,5bを回転中心として回動(図1における時計回り方向に回動)し、その結果、平坦部50が器体Hの前方へと移動する。
【0046】
この回動動作によりハンドルロック部材5は、図3に示す状態となる。この状態では係合軸部5dは器体Hの前壁から最も離間した状態となり、逆にハンドルロック部材5の平坦部50は器体Hの前壁に最も近接してハンドル4の移動経路から退出した状態となるから、ハンドルロック部材5によるハンドル4のロックが解除される。このようにハンドル4のロックが解除された状態は、解除レバー6の押し込みが継続されている間だけ維持され、解除レバー6の押し込みを止めると、解除レバー6はコイルばねC2の付勢により初期位置へ復帰し、同時にハンドルロック部材5も図1(a)に示す状態へと復帰する。つまり、解除レバー6は、押し操作が継続されている間のみハンドルロック部材5がハンドル4の移動経路に進出しないようにハンドルロック部材5を進出方向と反対方向へ移動させる押し釦となっている。
【0047】
したがって、開閉器の接点開閉機構Aをオンにする際には、解除レバー6を押し込んでハンドル4のロックを解除したままの状態で、ハンドル4のレバー42を前方へと倒せばよい。これによりハンドル4が図1(b)に示すようにオン位置へと移動し、このハンドル4の移動に連動して支持片31が前方へ移動して可動接点30が固定接点10に所定の接圧で接触し、接点開閉機構Aがオンとなる。尚、このようにハンドル4をオン位置へ移動させた際には、ハンドルロック部材5に設けた収納凹所5e内にハンドル4の摺動部41の前端部41aが一時的に収納されるようにしているので、ハンドルロック部材5によりハンドル4の移動が妨げられることがない。
【0048】
ところで、本実施形態の開閉器では、一旦ハンドル4をオン位置に位置させた後には、解除レバー6の押し操作を止めてもハンドル4がロックされることがないようになっている。これは、図1(b)に示すオン状態では、ハンドルロック部材5の平坦部50が進出する移動経路にハンドル4の摺動部41が位置しているため、ハンドルロック部材5は、平坦部50がハンドル4にその進出方向で当接した状態となって、ハンドル4によってハンドルロック部材5の移動が規制されるためである。
【0049】
そして、図1(b)に示す接点オンの状態から、図1(a)に示す接点オフの状態とするには、単にレバー42を後方へ移動させればよく、このレバー42の移動に伴なってハンドル4がオフ位置に移動し、同時に支持片31が後方へ移動して固定接点10から可動接点30が離間し、これにより接点開閉機構Aがオフとなる。このようなハンドル操作時には、ハンドルロック部材5は、自身の進出方向でハンドル4と当接しているため、ハンドルロック部材5によりハンドル4の移動が規制されることはない。そして、ハンドル4がオフ位置に位置した際には、ハンドルロック部材5の進出方向でのハンドルロック部材5とハンドル4との当接状態が解除されるので、図1(a)に示すように、ハンドルロック部材5がコイルばねC2の付勢力により再びハンドル4の移動経路に進出し、これによってハンドル4のオン位置への移動が規制される。
【0050】
以上述べたように、本実施形態の開閉器によれば、ハンドルロック部材5をハンドル4の移動経路へ進出するように付勢し、ハンドル4がオン位置に位置しているときはハンドル4と前記進出方向で当接してハンドル4のオフ位置への移動を規制せず、ハンドル4がオフ位置に位置しているときは前記進出方向でのハンドル4との当接状態が解除されてハンドル4の移動経路へ進出し、ハンドル4のオン位置への移動方向でハンドル4と当接することでハンドル4のオン位置への移動を規制するように構成している。
【0051】
そのため、ハンドル4をオン位置からオフ位置へ移動させた際には、ハンドルロック部材5が付勢力によりハンドル4の移動経路に進出して、ハンドル4のロックが自動的に行われるから、ハンドル4のロック作業を使用者が手動で行う必要がない。これによりハンドル4のロック忘れなどが起きることがなくなるので、ハンドル4のロックを確実に行うことができる。しかもハンドル4をオフ位置へ戻せば、他に特別な操作を行わなくても自動的にハンドル4がロックされるので、ハンドル4のロックを簡単に行える。
【0052】
また、解除レバー6は、押し操作が継続されている間のみハンドルロック部材5をハンドル4の移動経路から退出させる押し釦となっているので、解除レバー6の押し操作を止めることによりハンドルロック部材5が自動的にハンドル4をロックする位置へ復帰するようになっている。そのため、ハンドル4をオン位置からオフ位置へ移動させる際には解除レバー6の操作を行う必要がない(解除レバー6の操作はハンドル4をオフ位置からオン位置へ移動させるときのみ行えばよい)から、ハンドル4のロック作業がさらに簡単になる。
【0053】
さらに、ハンドルロック部材5を、長手方向の中央部に突設した軸部で器体Hに回動自在に支持させて、上端側の平坦部50をハンドル4の位置規制に用いるとともに下端側の係合軸部5dにて解除レバー6と係合させ、解除レバー6の操作に伴なって前記軸部を軸として回動するように設定することで、ハンドルロック部材5と解除レバー6とが互いに連動するようにしている。そのため、図1(b)に示すように、ハンドル4によってハンドルロック部材5の移動が規制されていると、解除レバー6から手を離したとしても、ハンドルロック部材5の係合軸部5dの位置が固定されていることにより解除レバー6の上方への移動が規制され、解除レバー6は押し込まれたままの状態となる。
【0054】
一方、図1(a)に示すように、ハンドルロック部材5がハンドル4の移動を規制する位置に位置しているときは、解除レバー6は押し込まれていない状態となる。つまり、本実施形態の開閉器では、ハンドルロック部材5がハンドル4の移動を規制する位置に位置しているときは、解除レバー6は押し込まれていない状態となり、ハンドルロック部材5がハンドル4の移動を規制しない位置に位置しているときは、解除レバー6は押し込まれた状態となるので、ハンドル4がオン位置に位置しているかオフ位置にしているかを解除レバー6が押し込まれた状態となっているかどうかを見るだけで判断することができる。
【0055】
加えて、器体Hには、上述したようにハンドルロック部材5の長手方向他端側(下端側)に当接して、ハンドルロック部材5にかかる無理な負荷を吸収する補強部82を設けているので、ハンドル4がロックされている状態でハンドル4を無理に動かそうとしてハンドルロック部材5に過剰な負荷をかけてしまっても、ハンドルロック部材5の下端部が補強部82に当接することによって、ハンドルロック部材5の無理な移動が抑制される。そのため、ハンドルロック部材5の破損、特に軸部5a,5bの破損を防止できる。
【0056】
尚、上記の例では、ハンドル4をオフ位置に固定するようにしているが、ハンドル4をオン位置に固定するようにしてもよいし、ハンドル4をオン位置とオフ位置のそれぞれの位置で固定するように、例えばハンドルロック部材5と解除レバー6との組を二組設けるようにしてもよい。また尚、接点開閉機構Aの構成も上記の例に限らず、使用形態に応じて好適なものを用いればよいし、過電流が流れた際に、自動的に接点がオフとなるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は、本発明の開閉器の接点オフ状態を示す説明図であり、(b)は、接点オン状態を示す説明図である。
【図2】(a)は、本発明の開閉器の斜視図であり、(b)は、本発明の開閉器の一部を切り欠いた前面図である。
【図3】本発明の開閉器の動作説明図である。
【図4】本発明の開閉器の要部の組み立て説明図である。
【符号の説明】
【0058】
4 ハンドル
5 ハンドルロック部材
6 解除レバー
H 器体
A 接点開閉機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点開閉機構と、オフ位置又はオン位置に移動されることにより接点開閉機構のオンオフを切り換えるハンドルと、ハンドルの移動経路へ進出するように付勢されてハンドルの移動を規制するハンドルロック手段と、ハンドルロック手段を前記移動経路から退出させてハンドルロック手段によるハンドルの移動規制を解除する解除手段と、これらを収納する器体とを備え、前記ハンドルロック手段は、ハンドルがオン位置又はオフ位置のいずれか一方に位置しているときはハンドルに前記進出方向で当接してハンドルの他方への移動を規制せず、ハンドルが他方に位置しているときは前記進出方向でのハンドルとの当接状態が解除されて前記移動経路へ進出し、ハンドルの一方への移動方向でハンドルに当接することでハンドルの一方への移動を規制するように構成されていることを特徴とする開閉器。
【請求項2】
前記解除手段は、押し操作が継続されている間のみ前記ハンドルロック手段を前記移動経路から退出させる押し釦であることを特徴とする請求項1に記載の開閉器。
【請求項3】
ハンドルロック手段は、長手方向の中央部で器体に回動自在に支持されており、長手方向一端側が前記ハンドルの位置規制に用いられるとともに長手方向他端側が解除手段と係合され、解除手段の操作に伴なって前記中央部を軸として回動するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の開閉器。
【請求項4】
前記器体には、ハンドルロック手段の長手方向他端側に当接して、ハンドルロック手段にかかる無理な負荷を吸収する補強部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の開閉器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−35377(P2007−35377A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214981(P2005−214981)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(505155012)松下電工電路システム株式会社 (140)
【Fターム(参考)】