説明

開閉扉付きの浴槽

【課題】湯張りした状態で扉に作用する水圧を当該扉の閉止力となるように働かせて、浴槽周壁部と扉との間の水密性を確保できるようにした、構造が簡単で小型化が図り易く、廉価に製産することが可能な開閉扉付きの浴槽を提供する。
【解決手段】周壁部6aに浴槽6内への出入り用の開閉扉7が設けられている開閉扉付きの浴槽であって、該周壁部6aには開口6bが形成され、該開口6bの周縁には内面側が該開閉扉の外面周縁との当接面となるフランジ6cが設けられており、該開閉扉7は該開口6cの一側縁にヒンジ軸8を介して浴槽6の内方に向けて開閉自在に設けられており、該開閉扉7と該フランジ6cとの間にはシール材14が介在されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開閉扉付きの浴槽に係わり、特に、自立歩行は可能であるが、膝などに障害があって浴槽内にその周壁を跨いで出入りするのが困難な人にとって好適な浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
自立歩行は可能であっても、リュウマチなどで膝屈伸をすることが困難な軽度の障害を持った人にとっては、入浴時に膝を大きく折り曲げて浴槽内に入ることが困難である。このような人のために、下記特許文献1〜3に示される構造を持った浴槽が開発されている。
【0003】
即ち、特許文献1の浴槽は、浴室の床から突出する浴槽の周壁上部の一部分を開口し、この開口を落し込み式の扉により開閉する構造が開示されている。また、特許文献2及び3の浴槽では、浴槽周壁部に形成された開口部を、当該周壁部に一端がヒンジされた外開き方式の扉で開閉可能に覆う構造が開示されている。
【特許文献1】特開2000−300641号公報
【特許文献2】特開2002−36325号公報
【特許文献3】特開平6−93743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構造では、浴槽の出入りの都度、落し込み式の扉の脱着操作が必要であり、この脱着に大きな力を要し、また開口があいている状態での扉の置場所に大きなスペースを取るという問題があった。
【0005】
また、特許文献2及び3に記載の構造にあっては、扉は外開き方式であるため、閉扉状態における水密性を確保するには、浴槽内の水圧に抗して当該扉を周壁部に押圧して密着状態を維持させておかなければならず、そのために扉の押圧ロック機構が必要となるばかりか、水圧が大きく扉に加わるため油圧開閉機構などを用いて開閉することが必要となり、構造が複雑となって製産コストが高騰して廉価に提供し難くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決するものであり、その目的は、湯張りした状態で扉に作用する水圧を当該扉の閉止力となるように働かせて、浴槽周壁部と扉との間の水密性を確保できるようにした、構造が簡単で小型化が図り易く、廉価に製産することが可能な開閉扉付きの浴槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、周壁部に槽内への出入り用の開閉扉が設けられている開閉扉付きの浴槽であって、該周壁部には開口が形成され、該開口の周縁には内面側が該開閉扉の外面周縁との当接面となるフランジが設けられており、該開閉扉は該開口の一側縁にヒンジを介して浴槽の内方に向けて開閉自在に設けられており、該開閉扉と該フランジとの間にはシール材が介在されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る開閉扉付きの浴槽の発明は、前記扉が内開き式の中折れ戸であって、その開閉端底部が前記浴槽の底部に沿って設けたガイドレールに沿って移動可能であり、該開閉扉の中折れ部には両中折れ扉の側端面同士がシール材を介して密着当接するシール面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る開閉扉付きの浴槽の発明は、前記浴槽の内部に腰掛け用の椅子を一体的に設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る開閉扉付きの浴槽の発明は、前記浴槽には、これの近傍におかれたコントロールパネルによって制御されるマイコン制御方式の風呂給湯器が風呂用給湯配管を介して接続されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る開閉扉付きの浴槽の発明は、前記風呂用給湯配管が、前記浴槽の底部に形成された下部給湯孔に接続されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る開閉扉付きの浴槽の発明は、前記風呂用給湯配管が、前記浴槽の腰掛け椅子用の背部上方に設けられて該腰掛け椅子に着座した入浴者の肩口に向けて配向された上部給湯孔に接続されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る開閉扉付きの浴槽の発明は、前記風呂用給湯配管が、前記浴槽の底部に形成された下部給湯孔と前記浴槽の腰掛け椅子用の背部上方に設けられて該腰掛け椅子に着座した入浴者の肩口に向けて配向された上部給湯孔とのそれぞれに分岐接続され、各分岐給湯配管に前記マイコンによって開閉作動制御される電磁弁を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る開閉扉付きの浴槽の発明は、前記浴槽の底部に連通する排水経路に電磁弁が設けられ、該電磁弁は前記マイコン制御によって開閉されることを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る開閉扉付きの浴槽の発明は、前記浴槽の排水経路中に排水ポンプが介在され、該排水ポンプは前記電磁弁に同期してマイコン制御されることを特徴とする。
【0016】
請求項10に係る開閉扉付きの浴槽の発明は、前記扉の開閉端に、扉の閉止状態を検出するセンサが設けられ、前記マイコンは該センサから閉止状態の検知出力を受けている場合に、前記浴槽内部への湯の供給を許可することを特徴とする。
【0017】
請求項11に係る開閉扉付きの浴槽の発明は、前記風呂用給湯配管にフレキシブルホースを介して分岐接続させて押しボタン操作式のハンドシャワーを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明では、湯張りされていない状態で浴槽内に入り、扉を内側から閉めて湯張りをすれば、湯の水位上昇につれて、その水圧によって扉が浴槽周壁部における開口のフランジ内側にシール材を介して押圧されて密着するので、その水密性を十分に確保でき、浴槽から出る場合には、内部の湯を排水すれば扉を簡易に開けることができるので、簡単な構造で廉価に提供できるばかりか、小型化も容易に図り得る。
【0019】
請求項2の発明では、開閉扉が中折れ戸とされているので、1人用の小形浴槽であっても小さな開放作動半径で大きな開口部を確保でき、出入りやその際の開閉操作が簡単であり、残湯を使い捨てにする場合における湯量を最小限にとどめることができる。
【0020】
請求項3の発明では、浴槽内に腰をかけて洗面や、体洗いができるため、入浴が楽となる。また腰かけることにより、入浴者の湯に浸かる体積分水位が上昇するため、湯量も少なくて良い。
【0021】
請求項4の発明では、浴槽には、これの近傍におかれたコントロールパネルによって制御されるマイコン制御方式の風呂給湯器を風呂用給湯配管を介して接続させているので、入浴者の手元で容易にコントロールパネルのボタン操作を行って、各種の給湯制御に基づいた給湯を行わせることができる。
【0022】
請求項5の発明では、コントロールパネルのボタン操作などにより、浴槽の底部から順次湯の水位が上昇し、設定された高さで自動的に停止するため、湯張り時の水面監視や、湯栓の開閉操作などが不要であり、入浴者を足下から徐々に暖めていくことができる。
【0023】
請求項6の発明では、風呂用給湯配管が浴槽の腰掛け椅子用の背部上方に設けられて該腰掛け椅子に着座した入浴者の肩口に向けて配向された上部給湯孔に接続されているので、椅子に腰掛けた入浴者の肩口にお湯をかけながら浴槽内に貯湯できるので、冬場の寒冷時であっても入浴者の身体が冷えてしまうことを可及的に防止して暖めることができる。
【0024】
請求項7の発明では、風呂用給湯配管が、前記浴槽の底部に形成された下部給湯孔と前記浴槽の腰掛け椅子用の背部上方に設けられて該腰掛け椅子に着座した入浴者の肩口に向けて配向された上部給湯孔とのそれぞれに分岐接続され、各分岐給湯配管に前記マイコンによって開閉作動制御される電磁弁を設けたので、下部給湯孔と上部給湯孔とからの給湯を適宜任意に切替て選択的にあるいは同時に行わせることができる。このため、入浴者の足元からの水位上昇に加え肩からシャワー状のお湯の供給も同時に行い得、下半身より順次暖めるのに加え上半身からも掛け湯されるため、設定水位に至る迄の間にあっても効率的に身体を暖めることができる。
【0025】
請求項8の発明では、浴槽の底部に連通する排水経路に電磁弁を設けて、該電磁弁をマイコン制御によって開閉させるようにしたので、入浴終了時には従来のように腰をかがめて排水栓を抜くことなく、単なるボタン操作で排水弁を開けることで自動的に浴槽内の残湯を排出できる。
【0026】
請求項9の発明では、浴槽の排水経路中に排水ポンプを介在させ、該排水ポンプを前記電磁弁に同期してマイコン制御するようにしたので、ボタン操作により排水弁の開放と同時にポンプが起動することにより残湯を迅速に排出させることができる。
【0027】
請求項10の発明では、開閉扉の開閉端に、扉の閉止状態を検出するセンサが設けられ、前記マイコンは該センサから閉止状態の検知出力を受けている場合に、前記浴槽内部への湯の供給を許可するようにしたので、扉が開いたままでは浴槽内への給湯がなされず、湯の無駄がない。
【0028】
請求項11の発明では、前記風呂用給湯配管にフレキシブルホースを介して分岐接続させて押しボタン操作式のハンドシャワーを設けたので、入浴者が洗髪、上り湯などの掛け湯を行うときの自由度が高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の最良の実施の形態につき添付図面を参照して説明する。図1〜図10は本発明に係る開閉扉付き浴槽の第1実施形態を示すものである。
【0030】
図1〜図3に示すように、浴室1は通常の家庭風呂と同様に、その床面積が略2〜3畳程度であって、長手方向の1面が出入口であり、その他の面を内外の壁面及び当該壁面に取り付けた窓面とし、その床面にユニットバス2が据付けられている。このユニットバス2は、床部3と、この床部3より一体に立設されて前記両内壁面に後部エプロン部4と側部エプロン部5とを介して固定された浴槽、すなわちバスタブ6を備えている。また、このバスタブ6に溜められる湯量は80〜100リットル程度とされており、通常の家庭用浴槽の容量よりはかなり小型化されている。
【0031】
バスタブ6はFRPなどの剛性のある樹脂により周壁部6aが一体に成形されたものであって、平面視略小判形をなしており、その床面は前記床部3とほぼ同一平面上としてある。また、バスタブ6には浴室1の出入口に面してその周壁部6aに、浴槽内への出入り用の開口6bが形成されていて、この開口6bには開閉扉として内開き方式の中折れ戸7が開閉可能に設けられており、これにより周壁部6aを跨ぐことなく開口6bを通じてバスタブ6内に出入りできるようになっている。
【0032】
前記中折れ戸7は、前記周壁部6aの開口6bにヒンジ軸8を介して回動可能かつ水密状態に係止された湾曲状の第1の扉体7aと、この第1の扉体7aの開閉端側にさらにヒンジ軸9を介して回動可能かつ水密状態にヒンジされた第2の扉体7bとからなる。この第2の扉体7bはバスタブ6の底部外周に沿って設けられた溝状のガイドレール10に案内されて開閉移動するようになっており、扉体7bの下面にはガイドレール10に摺動自在に係合するスライダー7cがヒンジ軸9の他側端側に設けられている。
【0033】
また、図1及び図3(a)に示すように、扉体7bの内外にはその開閉操作用の把手ハンドル12が設けられ、中折れ戸7の内開き状態で、人間1人が開口6bを通じてバスタブ6の内外に出入りするのに十分な開口部空間が形成されている。そして、中折れ戸7を開いた状態から把手ハンドル12を持ってガイドレール10に沿って閉止方向に引くことで、図2及び図3(b)に示すように中折れ戸7はバスタブ6の周壁部6a内周面に面一の状態で密着してその周壁部6aの出入り用の開口6bを閉止するようになっている。
【0034】
上記開口6bの周縁にはこれに沿って略コ字状に、当該開口6bの内方に向けて突出するフランジ6cが設けられており、このフランジ6cの浴槽内面側には水密性を得るためのシール材としてシールゴム14が設けられている。つまり、中折れ戸7を閉止すると、扉体7a,7bの外周縁部が上記シールゴム14を介して上記フランジ6cに当接して水密状態にされる。即ち、バスタブ6内に湯を張った状態では、その中折れ戸7の内側に水圧が作用するが、当該水圧によりその中折れ戸7はその外周縁部がシールゴム14を押圧してバスタブ6の開口6bの内周縁に突出するフランジ6cの内側面に押付けられるため、当該開口6bの周縁部において高い水密性が得られることになる。
【0035】
また、図4及び図5に拡大して示すように、ヒンジ軸9によって回動自在に接続される中折れ戸7の2枚の扉体7a,7bには、当該ヒンジ軸9で接合される側端面同士に、当該中折れ戸7が閉止状態にされるとシールゴム15を介して密着当接するシール面11が設けられている。このシール面11は、ヒンジ軸9を軸支する各扉体7a,7bのボス部13に隣接してその浴槽内方側に突出する形状で、各扉体7a,7bの縦方向の全長に亘って形成されている。即ち、バスタブ6内に湯を張った状態では、やはりその中折れ戸7に作用する水圧により浴槽外方に向けて押圧されるので、2つの扉体7a,7bはヒンジ軸9回りに回転モーメントが作用して互いのシール面11同士がシールゴム15を押圧して密着圧接されることになる。このため当該扉体7a,7bの側端面部のシール面11において高い水密性が得られることになる。
【0036】
一方、バスタブ6の床部は二重構造に形成されていて、その表面には多孔板16が配されており、湯張りする時は、下部給湯孔としてこの多孔板16の全面に亘って形成されている多数の孔から湯が湧き出すような状態で供給されるようになっている。
【0037】
また、バスタブ6の長手方向一側部内側には椅子17が一体に形成され、この位置に腰をかけて湯に浸かることができるようになっている。この椅子17の座面は凹状に形成されており、入浴者が腰掛けた状態で前方に滑り落ちることを防止している。
【0038】
椅子17の背部に位置するエプロン部4はバスタブ6の内側上縁より突出し、椅子17の上面側に向けて斜めかつ円弧状にオーバハングし、このオーバハング部18にはバスタブ6内にシャワー状の給湯を行う複数の小孔19が開口されている。これらの小孔19は、図10(b)にも示すように、バスタブ6の腰掛け椅子17の背部上方に設けられて当該腰掛け椅子17に着座した入浴者の肩口に向けて配向されており、上部給湯孔として機能するようになっている。また、図2,3において、符号20はオーバハング部18の一側部に設けられたシャワー状の上部給湯孔の開閉作動を行うための手動押ボタンスイッチである。なお、図示例の実施形態では、上部給湯孔は複数の小孔を片口に指向させて設けてシャワー状に給湯するようにしているが、打たせ湯様に頸椎部の近傍に集中させて給湯すべく大径な単一の孔を設けるようにしても良い。
【0039】
他方、椅子17側方に位置するエプロン部5はバスタブ6の上縁と面一であって、洗面用具等の置場を兼用している。そして、その上部には湯温コントロール及び湯温表示などを行うコントロールパネル21が設置されていて、入浴者は当該コントロールパネル21の各種ボタンを手近に操作して湯量、湯温などの調整を行うことが可能になっている。さらに、前記扉体7bの開閉端には図示しないが後述する扉開閉センサが設けられている。
【0040】
以上の構成におけるユニットバス2には給湯配管を介して、図2に示すように、浴室外壁の外側に配置された風呂給湯器23が接続されている。この風呂給湯器23は前記コントロールパネル21が接続されたマイコンなどからなる制御部22を備えており、全自動式に制御されるようになっている。
【0041】
即ち、風呂給湯器23には上水道及び、ガス配管が接続され、ガスの燃焼熱によって水道水を加熱して所定温度の湯を供給するようになっており、その内部にはバスタブ6内に上記下部給湯孔を通じて温水を供給する下部側給湯系配管 と、上記上部給湯孔や給湯栓、及びシャワーなどに温水を給水する上部側給湯系配管とが分岐されて設けられている。ここで、風呂給湯器23には冷水サンドイッチ現象防止機能付タイプのものを用いることが好ましく、これにより開栓時には常時設定湯温通りの湯の供給がなされ、開栓初期に冷たすぎたり、熱すぎる湯がでることを未然に防止できる。
【0042】
風呂温水供給系配管のうち下部側給湯系配管は、二重構造とされた床部の多孔板16の下方に形成されたチャンバー24に接続された給湯パイプ25,椅子17との対向端においてバスタブ6内に開口した循環パイプ26とを備え、給湯パイプ25を介して暖められたお湯をチャンバー24から多孔板16を通じてバスタブ6の内部に湯張りを行うとともに、循環パイプ26を通じて湯の循環を行う。
【0043】
上部側給湯系配管は、バスタブ6の底部を通じて前記シャワー用小孔19に連通するシャワー用給湯パイプ27を備え、これの配管経路内に配置された前記押ボタンスイッチ20に切替式に連動する電磁バルブ20aを介して開閉されるほか、この給湯パイプ27にはチーズ28aを介して家の中の他の場所、例えば洗面台や食器洗い用流し、あるいは同一浴室1内に配置される図示しない給湯栓に接続する給湯パイプ28が分岐配管されている。
【0044】
さらには、バスタブ6の二重床における底板29の集水位置には排水管30の一端が接続され、この排水管30は排水弁31及び排水ポンプ32を通じて屋外の排水溝33に連通している。
【0045】
図6は前記制御部22の電気的構成を示すものである。制御部22には通常と同じく、入力手段としての湯温センサ34、水位センサ35、設定及び表示手段としての前述のコントロールパネル21及び制御対象である給湯器23が接続されているほか、本発明では特に前述する入力手段としての扉開閉センサ36、及び制御対象機器としての前記排水弁31、排水ポンプ32、給湯用の電磁バルブ20aが接続されており、制御部22は、コントロールパネル21に設けた設定部38に設定された内容に基づきこれに内蔵されたプログラム手順を実行し、その過程で表示部39に温度、湯量などを表示するとともに、スピーカ40を通じて各種警告内容を表示し、湯張り、温水シャワー噴出、排水などの制御を実行するようになっている。
【0046】
図7は、前記コントロールパネル21の具体的な構成を示し、同パネル21の中央枠で囲われた上部には、液晶などにより給湯設定温度表示39a及び風呂設定温度表示39bがセグメント表示され、またその横には扉開閉のインジケータランプ39cが点灯表示されるようになっている。また、給湯表示39aの下部には給湯温度設定ボタン38aが設けられ、さらに風呂設定表示39bの下部にはインジケータ38dとともに湯量、及び湯温の設定ボタン38b,38cが設けられ、いずれもこれらは上部側を押すことにより、増加し、下部側を押すことで減少し、その値はそれぞれの表示39a,39b及びインジケータ38dに表示される。また、扉開閉インジケータ39cの下部には前記スピーカ40のグリル40aが設けられている。さらに、枠外における図の向って左側上部には電源スイッチ38dが、その下部には排水ボタン38eが配置され、枠外右側上部には風呂自動ボタン38f、下部には温度調整ボタン38gが配置されている。
【0047】
次に、以上におけるバスタブ6の入浴時における湯張りから排水までの前記制御部22による制御手順を、主に図7,8のフローチャート、及び前記図2,9及び図10を併用して説明する。
【0048】
まず、入浴者が中折れ戸7を開けてバスタブ6内に入り、中折れ戸7を閉止した後にコントロールパネル21の電源スイッチ38dを押すと、制御部が初期化され(ステップST1)、前回設定した湯温、湯量などが表示される(図7ではいずれも42℃に設定されている)。なお、今回の温度設定や、湯量などを変更したい場合には、それぞれの設定ボタン38a,38b,38cを押せば、希望する温度、湯量に変更できる。
【0049】
次いで、湯張りするために、風呂自動ボタン38fを押す(ステップST2)と湯張りが開始されるが、この時扉開閉のインジケータランプ39cが消灯している、すなわち中折れ戸7があいているか、完全にしまっていない場合には(ステップST3)、音声ガイダンス(1)が発声され(ステップST4)、再びステップST2の湯張り待機状態となる。
【0050】
この音声ガイダンス(1)は、例えば「扉が開いています。締めてください」などであり、このガイダンスにしたがって、入浴者が中折れ戸7を完全閉鎖すると、インジケータランプ39cが点灯し、この状態で再度風呂自動ボタン38fを押すことにより、まず排水管30の排水弁31が閉じ、次いで音声ガイダンス(2)が発声した後、湯張りが開始される(ステップST5〜7)。音声ガイダンス(2)は例えば、「お湯張りをします」などである。
【0051】
その後、風呂給湯器23が起動され、暖められた湯は給湯パイプ25よりチャンバー24内に入り、バスタブ6の床面である多孔板16の孔を通じてバスタブ6の内部に満たされゆき、順次水位が増す。
【0052】
そして、図10(a)に示すように、入浴者の膝下程度であって、椅子17の上面近傍まで水位が上昇すると、この水位を設定水位W1とし、この設定水位W1まで水位が上昇した後、今度は電磁バルブ20aが解放側に切り替り、シャワーを噴出し、図10(b)に示すように入浴者は椅子17に腰をかけた状態で噴出するシャワーを肩から浴びることになる(ステップST8,9)。
【0053】
以上の二段構えとしたのは、最初に入浴者の足から暖めて湯温に順応させ、次いで肩から掛け湯することにより、入浴者の体全体をその温度に順応させ、かつバスタブ6に対する湯張り給湯を迅速にするために加速するのがその目的である。給湯器23として冷水サンドイッチ現象防止機能付給湯器を用いた場合には、シャワー噴出時にタイムラグを生ずることなく、適正温度の湯がでることになる。
【0054】
そして、バスタブ6内の湯量が図10(b)の想像線で示す設定水位W2まで上昇すると、湯の供給が停止し、また電磁バルブ20aが閉鎖側に切り替り、その水位に維持される(ステップST10,11)。この設定水位W2は、図10(b)に示すように、入浴者が椅子に腰をかけた状態で丁度胸の上部程度となり、入浴者に負担をかけることなく入浴により暖を取るのに好適な水位であり、また浮力により、歩行膝などの屈伸が困難であってもバスタブ6内で足腰の伸び縮みを十分に行うことができ、以後はバスタブ6内の入浴と洗いを行うことができる。
【0055】
なお、図示は省略するが設定水位W2に到達する前でも、入浴者が風呂自動ボタン38fを二度押しするなどにより、湯の供給が停止され、入浴者の好みに応じた水位で止めることができるようになっている。
【0056】
また、洗髪などをする場合には、図10(c)に示すように、オーバハング部8に向けて頭を下げた状態で、押ボタンスイッチ20を押せば上部給湯孔の多数の小孔から温水がシャワー状に噴出し、押しボタンスイッチ20を再び押せば温水の噴出が停止する(図8のステップST1〜4)。
【0057】
この入浴中に湯温を変更したい場合には、入浴者が温度調整ボタン38gを上、または下に押せば(ステップST12でYes)、表示39bに新たな設定温度が表示され、音声ガイダンス(3)が発声し、給湯パイプと循環パイプの間でバスタブ6の内部のお湯を循環させつつ、加熱または冷水を加えることにより新たな設定温度になると停止する(ステップST13〜16)。この音声ガイダンス(3)は、例えば「温度が変更されます」などである。
【0058】
また、以上の設定変更がなされない(ステップST12でNo)の場合には、ステップST17にジャンプし、次の命令待機状態となる。
【0059】
そして、入浴者が体を洗った後、排水ボタン38eを一押しすると(ステップST17でYes)、音声ガイダンス(4)が発声し、排水弁31が開き、排水ポンプ32が稼働し、バスタブ6内の湯を急速に排出する(ステップST18,19)。この音声ガイダンス(4)は、例えば「お湯を排出します」などである。
【0060】
この排出途中で入浴者が排水ボタン38eをもう一押しすると(ステップST20でYes)、排水弁31は閉じ、排水ポンプ32は停止する。すなわち、入浴者がバスタブ内の水位が高すぎると感じた場合に、この操作により減水方向に水位が調整される。
【0061】
また、ステップST20でNoの場合には、排水動作が継続し、バスタブ6内の残湯が完全に空になった状態でポンプのみ停止し、再びステップST2の湯張り待機状態となり、入浴者は中折れ戸7を開いてバスタブ6外にでることができる。
【0062】
なお、この後に入浴者が空になったバスタブ6内で上り湯としてシャワーを浴びたり、夏などでは当初よりシャワーを浴びるだけの場合があるが、これらの場合には、中折れ戸7の開閉には関係なく図10(d)に示すように、前記図8に示す手順でシャワーを噴出させることができ、また、この状態では排水バルブ31は開いたままなので、シャワーの洗い湯は、二重床の底板から排水管30を伝って屋外の排水溝33に排出される。
【0063】
なお、以上の実施形態では、バスタブ6内に張った湯を排出する場合にポンプ32を介して急速排出するようにしてある。これは通常の浴槽に出入りする感覚を得るためのほか、例えば入浴者が入浴中に気分が悪くなった場合を想定し、単に排水弁31を明けて排出するよりも急速に排出できるようにすることを前提としているが、必ずしもポンプ32は必要でなく、排水弁31のみにより自然排出させることもできる。
【0064】
また、以上のバスタブ6では、入浴者がバスタブ6内に入り、一旦湯張りをした後は、中折れ戸7に大きな水圧が加わり、内側からはよほど大きな力を加えない限り、湯を排出するまではバスタブ6からでられない。また、この様なタイプの風呂給湯器23では、一般に前記バスタブ6に備え付のコントロールパネル21と、ダイニングなどに設けたコントロールパネルとが親子式に接続されているので、前記コントロールパネル21に呼び出しボタンなどを設けておき、これを押すことでダイニング側のコントロールパネルから例えば「お風呂で呼んでいます」などの音声を出力させることによって、気分が悪くなったり、洗面用具などを忘れた際など、緊急時などにも対応できるようになる。
【0065】
図11,12は本発明の第2実施形態を示している。なお、この第2実施形態の説明においては、前記第1実施形態と同一箇所には同一符号を付し、異なる箇所にのみ新たな符号を付して説明する。
【0066】
図において、シャワー状に給湯する上部給湯孔の小孔19への供給用の給湯パイプ27には、チーズ51aを介してハンドシャワー50側に連通する給湯パイプ51が分岐されている。また、給湯パイプ27の電磁弁52は押ボタン切替連動式でなく、制御部22によって直接制御されるものに変更されている。ハンドシャワー50は特に図12に示すように、これに設けたシャワーボタン50aを押すことにより、シャワーを噴出するもので、通常はエプロン5上に突出状態に設置され、使用時には前記給湯パイプ51に接続されたフレキシブルホース53をエプロン5内より引出すことで使用可能となる。
【0067】
本実施形態では、第1実施形態に比べて、洗髪や体を洗う際に入浴者の姿勢の自由度が高く、使い勝手が良いものとなる。
【0068】
なお、以上の各実施形態では、バスタブ6に対する温水供給源としてガス燃焼式の給湯器23を用いたが、夜間電力による電気温水供給器を用いても良いし、これらの熱源に加えて、ソーラ発熱方式の温水なども併用することも可能である。また、必要に応じてバスタブ6の内部に介助用手摺を設けたり、ジャグジー機能などを付加することも可能であることは言うまでもない。また、図示した実施形態では床部と周壁部とが一体となったユニットバスを例示してあるが、バスタブを独立させて分離形成して浴室の床部上に据え置くように構成した浴槽にも本発明を適用可能であり、この様な据え置き型の浴槽が設置された既存の浴室であれば、大掛かりなリフォームをすることなく本発明に係る開閉扉付き浴槽に容易に置換することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態による開閉扉付きの浴槽を備えたユニットバスの平面図である。
【図2】図1中のA−A線矢視部におけるユニットバスの概略断面構成並びにその給湯構造とを共に示す概略図である。
【図3】(a),(b)は同開閉扉付き浴槽の中折れ戸の開閉状態を示す斜視図である。
【図4】(a),(b)は図2中のB−B線矢視断面部位における中折れ戸の開閉状態を示す要部拡大図である。
【図5】(a),(b)は図2中のC−C線矢視断面部位における中折れ戸の開閉状態を示す要部拡大図である。
【図6】同ユニットバスにおける給湯器の給湯制御部の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】同ユニットバスにおける給湯制御部のコントロールパネルを示す正面図である。
【図8】同給湯制御部による湯張りから排出までの給湯制御手順を示すフローチャートである。
【図9】上部給湯孔からのシャワー状の給湯制御手順を示すフローチャートである。
【図10】(a)〜(d)は入浴時における使用状態を示す説明用断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態による給湯構造を含むユニットバスの断面図である。
【図12】(a)は同第2実施形態によるハンドシャワーの格納状態を,(b)はハンドシャワーの引出し状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
1 浴室 3 床部
6 バスタブ(浴槽) 6a 周壁部
6b 開口 6c フランジ
7 内開き式中折れ戸 7a 第1の扉体
7b 第2の扉体 7c スライダー
8,9 ヒンジ軸 10 ガイドレール
11 シール面 14,15 シールゴム
16 多孔板(下部給湯孔) 17 椅子
19 シャワー用小孔(上部給湯孔) 21 コントロールパネル
22 制御部(マイコン) 23 風呂給湯器
25 給湯パイプ(風呂用給湯配管) 26 循環パイプ(風呂用給湯配管)
27 上部給湯用配管(風呂用給湯配管) 30 排水パイプ
31 排水弁 32 排水ポンプ
50 ハンドシャワー 50a シャワーボタン
53 フレキシブルホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部に槽内への出入り用の開閉扉が設けられている開閉扉付きの浴槽であって、
該周壁部には開口が形成され、該開口の周縁には内面側が該開閉扉の外面周縁との当接面となるフランジが設けられており、該開閉扉は該開口の一側縁にヒンジを介して浴槽の内方に向けて開閉自在に設けられており、該開閉扉と該フランジとの間にはシール材が介在されていることを特徴とする開閉扉付き浴槽。
【請求項2】
前記扉は2枚の扉体がヒンジ軸で回動自在に接合された内開き式の中折れ戸であって、その開閉端底部が前記浴槽の底部に沿って設けたガイドレールに沿って移動可能であり、両扉体がヒンジ軸で接合される側端面同士には、シール材を介して密着当接するシール面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の開閉扉付きの浴槽。
【請求項3】
前記浴槽の内部に腰掛け用の椅子を一体的に設けたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の開閉扉付きの浴槽。
【請求項4】
前記浴槽には、これの近傍におかれたコントロールパネルによって制御されるマイコン制御方式の風呂給湯器が風呂用給湯配管を介して接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の開閉扉付き浴槽。
【請求項5】
前記風呂用給湯配管が、前記浴槽の底部に形成された下部給湯孔に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の開閉扉付き浴槽。
【請求項6】
前記風呂用給湯配管が、前記浴槽の腰掛け椅子用の背部上方に設けられて該腰掛け椅子に着座した入浴者の肩口に向けて配向された上部給湯孔に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の開閉扉付き浴槽。
【請求項7】
前記風呂用給湯配管が、前記浴槽の底部に形成された下部給湯孔と前記浴槽の腰掛け椅子用の背部上方に設けられて該腰掛け椅子に着座した入浴者の肩口に向けて配向された上部給湯孔とのそれぞれに分岐接続され、各分岐給湯配管に前記マイコンによって開閉作動制御される電磁弁を設けたことを特徴とする請求項4に記載の開閉扉付き浴槽。
【請求項8】
前記浴槽の底部に連通する排水経路に電磁弁が設けられ、該電磁弁は前記マイコン制御によって開閉されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の開閉扉付き浴槽。
【請求項9】
前記浴槽の排水経路中に排水ポンプが介在され、該排水ポンプは前記電磁弁に同期してマイコン制御されることを特徴とする請求項8に記載の開閉扉付き浴槽。
【請求項10】
前記開閉扉の閉止状態を検出するセンサが設けられ、前記マイコンは該センサから閉止状態の検知出力を受けている場合に、前記浴槽内部への湯の供給を許可することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の開閉扉付きの浴槽。
【請求項11】
前記風呂用給湯配管にフレキシブルホースを介して分岐接続させて押しボタン操作式のハンドシャワーを設けたことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の開閉扉付きの浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−50070(P2007−50070A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236635(P2005−236635)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(505310437)
【Fターム(参考)】