説明

開閉扉機構及び該機構を備えた携帯型機器

【課題】開閉が容易でありながら閉じた状態を確実に保持し得、しかも構造が簡単な開閉扉機構及び該機構を備えた携帯型機器を提供すること。
【解決手段】携帯型機器10の1つの面の少なくとも一部を覆うサイズを持つ開閉扉21を開閉する機構は、開閉扉21を、面の少なくとも一部を覆う状態に保持する係止手段24、26と、一端に開閉扉21を回転自在に保持し、携帯型機器10に沿ってスライド可能であり且つ一つの方向へバネ35によって引かれるスライド片29とを備える。スライド片29が一つの方向とは逆の方向へスライドさせられるとき、解除手段37は係止手段24、26の係止を解除し、開閉扉21を開くことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引っ張りバネによって懸架された開閉扉機構及び該機構を備えた携帯型機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大部分の携帯型機器は乾電池や充電池などの電池で駆動されるため、携帯型機器の適所に電池を収納するための収納スペースを設け、該収納スペースを開閉自在な蓋で覆うことが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、電池の交換のために蓋を開閉自在とするための従来の機構は、携帯型機器をどのような状況下で使用しようとも蓋が開いてしまわないように、蓋を閉じた状態に確実に保持する点では不十分なものが多かった。例えば、携帯型機器を落としたとき、その衝撃で蓋が開いてしまうものがあった。それを避けるために蓋を開けるのに或る程度の大きな力を必要とするほど強く閉めてしまうと、老人や子供には蓋が開けにくいという別の問題が生じる。
【0004】
加えて、従来の蓋には、指の先端を引っ掛けて蓋を開くための窪みやフック等が形成されているものが多く、機器の表面に凹凸ができてしまってデザイン的にすっきりした感じを与えられなかった。
【特許文献1】特開2003−142841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みて提案されたものであって、開閉が容易でありながら閉じた状態を確実に保持し得、しかも簡単な操作で開閉することができる開閉扉機構及び該機構を備えた携帯型機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、
使用状態では携帯型機器の1つの面の少なくとも一部を覆うように該携帯型機器に係止される開閉扉と、
一端に前記開閉扉を回転自在に保持するスライド片であって、前記携帯型機器に沿ってスライド可能であり且つ一つの方向へ常時引かれるスライド片と、
を具備し、前記スライド片を前記一つの方向とは逆の方向へスライドさせることにより前記開閉扉の係止を解除して前記開閉扉を開放状態に保持することができることを特徴とする開閉扉機構、
を提供する。
【0007】
請求項2の発明は、前記開閉扉が、前記携帯型機器に設けられた係止ピンと係合し得る係止片を有することを特徴とする。
請求項3の発明は、前記開閉扉が、前記携帯型機器に対して、前記開放状態における開き角度よりも大きな角度まで回転可能に支持され、もって前記開放状態の破壊を防止することを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、
携帯型機器の1つの面の少なくとも一部を覆うサイズを持つ開閉扉と、
前記開閉扉を、前記1つの面の少なくとも一部を覆う状態に保持するための係止手段と、
一端に前記開閉扉を回転自在に保持するスライド片であって、前記携帯型機器に沿ってスライド可能であり且つ一つの方向へ常時引かれるよう取り付けられたスライド片と、
前記スライド片が前記一つの方向とは逆の方向へスライドさせられるときに前記係止手段の係止を解除して前記開閉扉を開くことができるようにする解除手段と、
を具備することを特徴とする開閉扉機構、
を提供する。
【0009】
請求項5の発明は、前記係止手段が、前記開閉扉に設けられた係止片と、前記携帯型機器に設けられた係止ピンとを含むことを特徴とする。
請求項6の発明は、前記解除手段が、前記開閉扉を開く方向に得前記係止片を押す案内バネを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項7の発明は、前記スライド片が、前記携帯型機器に沿って前記スライド片が移動し得る距離よりも長い少なくとも1つの孔を有し、前記携帯型機器には前記孔を通る突起が形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項8の発明は、前記開閉扉が回転軸を介して前記スライド片の一端に回転可能に取り付けられ、前記回転軸が、前記開閉扉を開放状態に保持するために前記携帯型機器の凹部に係合する少なくとも1つのカム突起を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項9の発明は、前記開閉扉が、前記携帯型機器に対して、前記開放状態における開き角度よりも大きな角度まで回転可能に支持され、もって前記開放状態の破壊を防止することを特徴とする。
【0013】
請求項10の発明は、請求項1〜9の発明に係る開閉扉機構を具備する携帯型機器を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る開閉扉機構の一つの実施の形態を図面を参照しながら詳述する。図1〜図3は、本発明に係る開閉扉機構が閉じた状態にあるときの携帯型機器10を、図4〜図6は、本発明に係る開閉扉機構が開いた状態にあるときの携帯型機器10を、それぞれ概略的に示している。携帯型機器10は、例えば、ワイヤレスマイクロホン、携帯電話機、携帯型音楽再生装置であるが、これらに限定されない。なお、便宜上、図1において、図に向かって右側が携帯型機器10の上側であり、左側が携帯型機器10の下側であり、したがって、図に向かって上側が携帯型機器10の左側であり、下側が携帯型機器10の右側であるとして以下の説明を行う。また、図では見えない側の対応する構成要素の参照数字を括弧内に示すことにする。
【0015】
携帯型機器10は対向する2つの広い面11、12を持ち、その一方の面11の下端から上方へ向かって面11の一部を覆うように、電池や部品の交換、携帯型機器10の動作設定その他の目的で開閉することができる開閉扉機構20が設けられ、他方の面12には携帯型機器10を携行者のベルトなどの保持手段(図示せず)に着脱するためのベルトクリップ機構が設けられる。携帯型機器10がワイヤレスマイクロホンである場合、携帯型機器10の上面13にアンテナ14が装着される。
【0016】
携帯型機器10の面11には、図4及び図6に示すように、電池を収納する収納スペース15が形成され、更に、収納スペース15に隣接して、携帯型機器10の動作を設定するための動作設定部16が設けられる。これら収納スペース15と動作設定部16を覆うように、開閉自在な開閉扉21が装着される。開閉扉21は面11の一部を形成する広い面21´とその両側の側面22、23とを有する。
【0017】
開閉扉21の左右の側面22、23の上端には、それぞれ係止片24、25が形成される。一方、携帯型機器10の各側面の係止片24、25に対応した位置に係止ピン26、27が形成され、図2に示すように、開閉扉21が閉じた状態では係止片24、25は各対応する係止ピン26、27と係合し、これによって、開閉扉21は収納空間15及び設定部16を覆った状態に保持される。
【0018】
開閉扉21の下端には回転軸28が一体に形成され、この回転軸28は携帯型機器10の左右の側面に設けられたスライド片29、30の下端に回転可能に支持される。図2に示すように、右側面に設けられたスライド片29の適宜の個所には2つの細長い孔31、32が形成され、これらの孔31、32のそれぞれを貫通するように、携帯型機器10の側面から突起33、34が植立される。こうして、孔31、32と突起33、34によってスライド片29、30の移動可能な距離が規定される。
【0019】
さらに、スライド片29の上端はスライド片29を上方へ引くバネ35の一端に接続され、バネ35の他端は携帯型機器10の側面に固定される。したがって、バネ35によってスライド片29は携帯型機器10の上面13の方へ引っ張られることになる。左側面に設けられたスライド片30も同様の構成によってスライド可能に支持されてバネ36によって携帯型機器10の上面13の方へ引っ張られる。この結果、回転軸28でスライド片29、30と結合された開閉扉21も上面13の方へ引かれるので、開閉扉21を閉じた状態では、係止片24、25は係止ピン26、27に係合した状態を維持する。
【0020】
さらに、携帯型機器10の右側面に沿って、開閉扉21を開ける方向へ係止片24を押す案内バネ37が設けられる。したがって、開閉扉21を開けるには、携帯型機器10の上部を一方の手で保持し、他方の手の親指と人差し指とで両側のスライド片29、30をバネ35、36に抗して携帯型機器10の下面17の方へ、孔31、32によって規定される許容移動範囲内でスライドさせると、開閉扉21も携帯型機器10の面11に平行に移動されるので、係止片24、25と係止ピン26、27との係合が外れ、係止片24が案内バネ37によって押し上げられて開閉扉21が面11から浮き上がる。そこで、開閉扉21を回転軸28の周りに回転させると、図4〜図6に示す開いた状態に保持される。開閉扉21が携帯型機器10に対して開き得る最大の角度、すなわち開き角度αは例えば120度である。
【0021】
図7の(A)〜(C)は、開閉扉21を開いた状態に保持するためのクリック機構の構成を概略的に示しており、(A)は図4の線A−Aに沿う断面図、(B)は線B−Bに沿う断面図である。上記のようにして開閉扉21を開くと、開閉扉21はα度開いた位置で停止する。これは、開閉扉21がα度まで開かれたとき、(A)に示すように、回転軸28に設けられたカム突起38が携帯型機器10の下面17に形成されたカム接面39の窪み40に嵌り込むとともに、(B)に示すように、下面11に形成された引っかかり代41に回転軸28の傾斜カム42が当接することによる。なお、図7において、参照数字18は携帯型機器10の電源となる乾電池である。
【0022】
このような構造としたので、開閉扉21がα度まで開かれる間は、カム接面39とバネ35、36との作用により開閉扉21には閉じる方向の力が作用する。一方、開閉扉21が過度の力によってα度を越えて開かれたときでも、(C)に示すように、バネ35、36に抗してスライド片29、30が更に左へ移動して傾斜カム42に引っかかり代41を乗り越えさせるので、過度の力によって開閉扉機構が破壊されるのを防止することができる。つまり、開閉扉21がα度を越えて開かれると、傾斜カム42によって分力が発生し、回転軸28を左の方へ移動させることになるが、バネ35、36の反力によって応力は緩和される。こうして、過度の負荷に対して回転軸28に加わる回転応力はバネ35、36に分散され、機構の破壊を防止することができる。
【0023】
これまで、本発明に係る開閉扉機構の一つの実施の形態について説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、
(1)開閉扉は携帯型機器の1つの面の一部分を覆うものとして説明したが、開閉扉を該面全体を覆うサイズとしてもよい。
(2)開閉扉を閉じた状態に保持するのに係止片を係止ピンに係合させるようにしたが、開閉扉の一方向への移動で係止が行われ、他方への移動で係止が解除される機構であれば任意のものを採用することができる。
(3)図2に示すように、それぞれのスライド片には2つの孔を設けるようにしたが、孔は1つであってもよいし、3つ以上形成してもよい。
(4)図7に示すように、回転軸の周に沿って1つのカム突起を設ける例について説明したが、回転軸の周に沿って複数のカム突起を設けて開閉扉を複数の角度で停止させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上の説明から明らかなように、本発明は、
(1)開閉扉を閉じた状態に確実に保持することができながら簡単な操作で開閉することができる開閉扉機構を提供することができる、
(2)開放状態にある開閉扉に不要な圧力が加えられたときにも、その力を逃がす構造を取り得るうえ、開閉の途中の状態では開・閉いずれの状態にもなり得るので、開閉扉の破壊を防止することができる、
(3)つまみ等によって開閉扉を開閉するのではない機構を採用したので、こうした開閉扉機構を備えた携帯型機器にあっては、携帯型機器を落としてしまったときにも、開閉扉が不用意に開いてしまうことがない、
(4)開閉扉を閉じた状態にロックする機構が外部に露出しないので、携帯型機器の意匠面での自由度が高い、
(5)開閉扉の開閉が容易であるため、携帯型機器の内部の構成要素へのアクセス、例えば、電池の交換が容易に行い得る、
等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る開閉扉機構における開閉扉が閉じた状態にあるときの携帯型機器の正面図である。
【図2】本発明に係る開閉扉機構における開閉扉が閉じた状態にあるときの携帯型機器の側面図である。
【図3】本発明に係る開閉扉機構における開閉扉が閉じた状態にあるときの携帯型機器の斜視図である。
【図4】本発明に係る開閉扉機構における開閉扉が開いた状態にあるときの携帯型機器の正面図である。
【図5】本発明に係る開閉扉機構における開閉扉が開いた状態にあるときの携帯型機器の側面図である。
【図6】本発明に係る開閉扉機構における開閉扉が開いた状態にあるときの携帯型機器の斜視図である。
【図7】本発明に係る開閉扉機構における開閉扉を開いた状態で停止させるクリック機構を説明する図で、(A)は図4の線A−Aに沿う断面図、(B)は図4の線B−Bに沿う断面図であり、(C)は開閉扉に過度の力が加わえられたときの状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0026】
10:携帯型機器、11:面、 15:収納スペース、16:動作設定部、 20:開閉扉機構、 21:開閉扉、 24、25:係止片、 26、27:係止ピン、28:回転軸、 29、30:スライド片、 31、32:孔、 33、34:突起、 35、36:バネ、 37:案内バネ、 38:カム突起、 39:カム接面、 40:窪み、 41:引っかかり代、 42:傾斜カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用状態では携帯型機器の1つの面の少なくとも一部を覆うように該携帯型機器に係止される開閉扉と、
一端に前記開閉扉を回転自在に保持するスライド片であって、前記携帯型機器に沿ってスライド可能であり且つ一つの方向へ常時引かれるスライド片と、
を具備し、前記スライド片を前記一つの方向とは逆の方向へスライドさせることにより前記開閉扉の係止を解除して前記開閉扉を開放状態に保持することができることを特徴とする開閉扉機構。
【請求項2】
前記開閉扉が、前記携帯型機器に設けられた係止ピンと係合し得る係止片を有することを特徴とする、請求項1に記載の開閉扉機構。
【請求項3】
前記開閉扉が、前記携帯型機器に対して、前記開放状態における開き角度よりも大きな角度まで回転可能に支持され、もって前記開放状態の破壊を防止することを特徴とする、請求項1又は2に記載の開閉扉機構。
【請求項4】
携帯型機器の1つの面の少なくとも一部を覆うサイズを持つ開閉扉と、
前記開閉扉を、前記1つの面の少なくとも一部を覆う状態に保持するための係止手段と、
一端に前記開閉扉を回転自在に保持するスライド片であって、前記携帯型機器に沿ってスライド可能であり且つ一つの方向へ常時引かれるよう取り付けられたスライド片と、
前記スライド片が前記一つの方向とは逆の方向へスライドさせられるときに前記係止手段の係止を解除して前記開閉扉を開くことができるようにする解除手段と、
を具備することを特徴とする開閉扉機構。
【請求項5】
前記係止手段が、前記開閉扉に設けられた係止片と、前記携帯型機器に設けられた係止ピンとを含むことを特徴とする、請求項4に記載の開閉扉機構。
【請求項6】
前記解除手段が、前記開閉扉を開く方向に得前記係止片を押す案内バネを備えることを特徴とする、請求項5に記載の開閉扉機構。
【請求項7】
前記スライド片が、前記携帯型機器に沿って前記スライド片が移動し得る距離よりも長い少なくとも1つの孔を有し、前記携帯型機器には前記孔を通る突起が形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の開閉扉機構。
【請求項8】
前記開閉扉が回転軸を介して前記スライド片の一端に回転可能に取り付けられ、
前記回転軸が、前記開閉扉を開放状態に保持するために前記携帯型機器の凹部に係合する少なくとも1つのカム突起を備えることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の開閉扉機構。
【請求項9】
前記開閉扉が、前記携帯型機器に対して、前記開放状態における開き角度よりも大きな角度まで回転可能に支持され、もって前記開放状態の破壊を防止することを特徴とする、請求項8に記載の開閉扉機構。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の開閉扉機構を備えた携帯型機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−108577(P2006−108577A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296610(P2004−296610)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000223182)ティーオーエー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】