説明

開閉装置

【課題】各種電子機器に使用される開閉装置に関し、簡易な構成で、開閉操作の確実なものを提供することを目的とする。
【解決手段】ケース15と可動体3の間に可動体3を軸線方向へ移動可能に保持するガイド手段を形成すると共に、このガイド手段のガイド溝15Aの固定体1方向端部に幅広部15Bを設けることによって、所定角度まで開いた後、さらに開く方向への力が加わった場合にも、幅広部15Bによってケース15がさらに回転可能に形成されているため、固定カム2や可動カム4の破損を防ぎ、簡易な構成で、確実な開閉操作が可能な開閉装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の、各種電子機器に使用される開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器の小型化や軽量化が進む中、固定筐体に対し可動筐体が開閉可能に装着された、所謂、折畳み式のものが増えており、これらに用いられる開閉装置においても、開閉操作が確実でより使い易いものが求められている。
【0003】
このような従来の開閉装置について、図4〜図7を用いて説明する。
【0004】
なお、これらの図面の内、断面図は固定カムと可動カムの関係を判り易くするため、径方向を拡大して表わしている。
【0005】
図5は従来の開閉装置の断面図、図6は同分解斜視図であり、同図において、1は左側面に固定部1Aが形成された略円筒状で金属製の固定体で、この右側面外周には突出部2A、及びこの突出部2Aから左右へ延出する二つの傾斜部2B、2Cから形成された固定カム2が設けられている。
【0006】
そして、3は同じく略円筒状で金属製の可動体で、固定体1に対し開閉方向へ回転可能に配置されると共に、固定カム2との対向面である左側面外周には可動カム4が設けられている。
【0007】
また、5は略円筒状で焼結合金製のケースで、ケース5には外方へ突出するガイド溝5Aが設けられると共に、このガイド溝5Aに可動体3外周のガイド突起3Aが挿入されて、ケース5内に収納された可動体3を軸線方向へ移動可能に保持するガイド手段が形成されている。
【0008】
さらに、6は可動体3右側面とケース5右底面との間にやや撓んだ状態で装着されたコイル状のばねで、このばね6によって可動体3が左方向へ付勢され、可動カム4の先端が固定カム2の傾斜部2Bへ弾接している。
【0009】
また、7は略円柱状の固定軸で、この固定軸7の左端部に固定体1が固着されると共に、右端部は可動体3の中空部やばね6を挿通し、止め輪8によってケース5右側面に回転可能に装着されている。
【0010】
そして、ケース5左側面から固定体1の固定部1Aが回転可能に突出し、この固定体1や可動体3、ばね6等がケース5内に収納されて、開閉装置10が構成されている。
【0011】
また、このように構成された開閉装置10は、例えば、図4(b)の携帯電話の斜視図に示すように、固定体1の固定部1Aが上面に複数のキーからなる操作部22Aやマイクロフォン等の音声入力部22Bが形成された固定筐体22へ、ケース5のガイド溝5A外周が、表面にLCD等の表示部23Aやスピーカ等の音声出力部23Bが形成された可動筐体23へ各々固着され、開閉装置10によって固定筐体22に対して可動筐体23が開閉可能に軸支されて電子機器が構成される。
【0012】
以上の構成において、図5に示したように、可動カム4の先端が固定カム2下側の傾斜部2Bへ弾接した状態では、可動体3がばね6によって下方向の閉方向へ付勢され、図7(a)の部分断面図に示すように、ガイド突起3A右端がガイド溝5A右端に弾接しているため、ケース5が固着された可動筐体23は、図4(a)に示すように固定筐体22に対して閉じた状態で保持されている。
【0013】
そして、この閉状態から、図4(b)に示すように、可動筐体23を手で開くと、可動筐体23に固着された可動ケース5を介して、可動体3がケース5内を軸線方向へ移動しながら回転して、図7(b)に示すように、可動カム4先端が固定カム2の突出部2Aを超えて左側の傾斜部2Cへ弾接し、可動体3が左方向の開方向へ付勢され、下方向へ移動したガイド突起3A左端がガイド溝5A左端に弾接するため、この力によって可動筐体23に開く方向の力が加わる。
【0014】
また、この後、図7(c)に示すように、可動カム4先端が傾斜部2Cを弾接摺動するのに伴い、さらに下方向へ移動したガイド突起3A左端に、ガイド溝5A左端を押圧されたケース5が開方向へ回転し、可動カム4先端が所定位置まで移動すると、図4(c)に示すように、可動筐体23が固定筐体22に対して150〜170度前後の所定角度に開いた状態となる。
【0015】
つまり、可動筐体23に固着されたケース5を回転させることによって、可動体3を軸線方向へ移動させ、可動カム4先端を固定カム2の傾斜部2Bまたは2Cのいずれかへ弾接させて、固定筐体22に対する可動筐体23の開閉操作が行われるように構成されている。
【0016】
なお、このように可動筐体23を所定角度開いた後、図4(d)に示すように、裏側から誤って押される等さらに可動筐体23を開く力が加わった場合、図7(d)に示すように、ケース5はガイド溝5Aとガイド突起3Aの間の僅かな隙間分は回転するが、ガイド突起3A右端にガイド溝5A右端が当接し、可動カム4が次の固定カム2に当接すると、これ以上は開かないようになっている。
【0017】
従って、可動筐体23を所定角度まで開いた後、誤ってさらに力が加わった時の固定カム2や可動カム4の破損を防ぎ、その後の開閉操作に支障をきたさないようにするためには、固定カム2や可動カム4を充分な強度の得られる大きな形状としたり、固定筐体22と可動筐体23の間に別途ストッパ機構を設けたりする必要があるものであった。
【0018】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004−245342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記従来の開閉装置においては、所定角度まで開いた後、誤ってさらに力が加わった場合の固定カム2や可動カム4の破損を防ぐためには、カムを大きな形状としたり、固定筐体22と可動筐体23に別途ストッパ機構を設けたりする必要があり、開閉装置が大きなものとなったり、構成が複雑なものとなってしまうという課題があった。
【0020】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡易な構成で、確実な開閉操作が可能な開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明は、ケースと可動体の間に可動体を軸線方向へ移動可能に保持するガイド手段を形成すると共に、このガイド手段の固定体方向端部に幅広部を設けたものであり、所定角度まで開いた後、さらに開く方向への力が加わった場合にも、幅広部によってケースがさらに回転可能に形成されているため、固定カムや可動カムの破損を防ぎ、簡易な構成で、確実な開閉操作が可能な開閉装置を得ることができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、簡易な構成で、確実な開閉操作が可能な開閉装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0024】
なお、これらの図面の内、断面図は固定カムと可動カムの関係を判り易くするため、径方向を拡大して表わしている。
【0025】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0026】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による開閉装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、1は左側面に固定部1Aが形成された略円筒状で鋼や銅合金、焼結合金等の金属製の固定体で、この右側面外周には突出部2A、及びこの突出部2Aから左右へ延出する二つの傾斜部2B、2Cから形成された複数の固定カム2が設けられている。
【0027】
そして、3は同じく略円筒状で金属製の可動体で、固定体1に対し開閉方向へ回転可能に配置されると共に、固定カム2との対向面である左側面外周には複数の可動カム4が対称に設けられている。
【0028】
また、15は略円筒状で金属製のケースで、ケース15には外方へ突出する複数のガイド溝15Aが対称に設けられると共に、このガイド溝15Aには、ガイド溝15Aよりもやや幅の小さな可動体3外周の複数のガイド突起3Aが挿入されている。
【0029】
さらに、このケース15のガイド溝15Aの固定体1方向端部には、ガイド溝15Aよりも閉方向に幅が広がった幅広部15Bが設けられて、ケース15内に収納された可動体3を軸線方向へ移動可能に保持するガイド手段が形成されている。
【0030】
そして、6は可動体3右側面とケース15右底面との間にやや撓んだ状態で装着されたコイル状のばねで、このばね6によって可動体3が左方向へ付勢され、可動カム4の先端が固定カム2の傾斜部2Bへ弾接している。
【0031】
また、7は略円柱状の固定軸で、この固定軸7の左端部に固定体1が固着されると共に、右端部は可動体3の中空部やばね6を挿通し、止め輪8によってケース15右側面に回転可能に装着されている。
【0032】
さらに、ケース15左側面からは固定体1の固定部1Aが回転可能に突出すると共に、この固定体1や可動体3、ばね6等がケース15内に収納されて、開閉装置20が構成されている。
【0033】
また、このように構成された開閉装置20は、例えば、図4(b)の携帯電話の斜視図に示すように、固定体1の固定部1Aが上面に複数のキーからなる操作部22Aやマイクロフォン等の音声入力部22Bが形成された固定筐体22へ、ケース15のガイド溝15Aや幅広部15B外周が、表面にLCD等の表示部23Aやスピーカ等の音声出力部23Bが形成された可動筐体23へ各々固着され、開閉装置20によって固定筐体22に対して可動筐体23が開閉可能に軸支されて電子機器が構成される。
【0034】
以上の構成において、図1に示したように、可動カム4の先端が固定カム2下側の傾斜部2Bへ弾接した状態では、可動体3がばね6によって下方向の閉方向へ付勢され、図3(a)の部分断面図に示すように、ガイド突起3A右端がガイド溝15A右端に弾接しているため、ケース15が固着された可動筐体23は、図4(a)に示すように、固定筐体22に対して閉じた状態で保持されている。
【0035】
そして、この閉状態から、図4(b)に示すように、可動筐体23を手で開くと、可動筐体23に固着されたケース15を介して、可動体3がケース15内を軸線方向へ移動しながら回転して、図3(b)に示すように、可動カム4先端が固定カム2の突出部2Aを超えて左側の傾斜部2Cへ弾接し、可動体3が左方向の開方向へ付勢され、下方向へ移動したガイド突起3A左端がガイド溝15A左端に弾接するため、この力によって可動筐体23に開く方向の力が加わる。
【0036】
また、この後、図3(c)に示すように、可動カム4先端が傾斜部2Cを弾接摺動するのに伴い、さらに下方向の固定体1方向端部へ移動したガイド突起3A左端に、ガイド溝15A左端を押圧されたケース15が開方向へ回転し、可動カム4先端が所定位置まで移動すると、図4(c)に示すように、ケース15が固着された可動筐体23が固定筐体22に対して、150〜170度前後の所定角度に開いた状態となる。
【0037】
さらに、このように可動筐体23を所定角度開いた後、図4(d)に示すように、裏側から誤って押される等さらに可動筐体23を開く力が加わった場合、図3(d)に示すように、ケース15のガイド溝15Aの固定体1方向端部には、ガイド溝15Aよりも閉方向に広がった幅広部15Bが設けられているため、ガイド突起3A左端がガイド溝15A左端から離れ、この幅広部15Bの幅寸法分だけケース15が開方向へ回転する。
【0038】
つまり、可動筐体23を所定角度まで開いた後、さらに力を加えて可動筐体23を開いた場合にも、固定体1方向端部に形成された幅広部15Bによって、可動筐体23と固定筐体22がほぼ水平になるまでケース15がさらに回転可能となっているため、対称に形成されて当接した次の固定カム2と可動カム4の破損を防ぎ、その後の開閉操作に支障をきたさないように構成されている。
【0039】
このように本実施の形態によれば、ケース15と可動体3の間に可動体3を軸線方向へ移動可能に保持するガイド手段を形成すると共に、このガイド手段のガイド溝15Aの固定体1方向端部に幅広部15Bを設けることによって、所定角度まで開いた後、さらに開く方向への力が加わった場合にも、幅広部15Bによってケース15がさらに回転可能に形成されているため、固定カム2や可動カム4の破損を防ぎ、簡易な構成で、確実な開閉操作が可能な開閉装置を得ることができるものである。
【0040】
なお、以上の説明では、ケース15に設けたガイド溝15Aや幅広部15Bと、可動体3外周に設けたガイド突起3Aによってガイド手段を形成した構成について説明したが、ケース15のガイド溝や幅広部を孔としたり、或いは、これとは逆にケース15側を凸状、可動体3側を凹状に形成し、これらによってガイド手段を設けたりした構成としても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明による開閉装置は、簡易な構成で、開閉操作が確実なものを得ることができ、各種電子機器に使用される開閉装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態による開閉装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同部分断面図
【図4】携帯電話の斜視図
【図5】従来の開閉装置の断面図
【図6】同分解斜視図
【図7】同部分断面図
【符号の説明】
【0043】
1 固定体
1A 固定部
2 固定カム
2A 突出部
2B、2C 傾斜部
3 可動体
3A ガイド突起
4 可動カム
6 ばね
7 固定軸
8 止め輪
15 ケース
15A ガイド溝
15B 幅広部
20 開閉装置
22 固定筐体
22A 操作部
22B 音声入力部
23 可動筐体
23A 表示部
23B 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に固定カムが設けられた固定体と、この固定体に対し回転可能に配置されると共に、上記固定カムとの対向面に可動カムが設けられた可動体と、この可動カムと上記固定カムを弾接させるばねと、これらを収納した略円筒状のケースからなり、上記ケースと可動体の間に上記可動体を軸線方向へ移動可能に保持するガイド手段を形成すると共に、このガイド手段の固定体方向端部に幅広部を設けた開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−138400(P2006−138400A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328746(P2004−328746)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】