説明

開閉装置

【課題】原稿圧着板を完全かつ確実に接地させることができ、しかも、原稿圧着板を軽い操作力で容易に持ち上げることができる開閉装置を提供する。
【解決手段】装置本体に固定される取付部材と、該取付部材にヒンジ軸を介して回動自在に枢着されると共に、原稿圧着板を支持する回動部材と、該取付部材と回動部材の間に装設されて該回動部材を開く方向に付勢する圧縮コイルばね等の弾性体と、上記ヒンジ軸に回動可能に枢着される振子カムと、前記弾性体の付勢力により上記振子カムのカム面に弾性的に当接するカムフォロアから構成され、該カム面の形状により開閉トルクが制御される開閉装置において、上記回動部材が開く方向に所定の回動角度の間だけ、上記振子カムを該回動部材に追従させて回動せしめる手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やスキャナーなどの原稿圧着板を開閉自在に支持する開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の開閉装置としては、図7に示すように、複写機やスキャナーなどの装置本体Hに固定される取付部材1と、該取付部材1にヒンジ軸2を介して回動自在に枢着されると共に、原稿圧着板Pを支持する回動部材3と、該取付部材1と回動部材3の間に装設されて該回動部材3を開く方向に付勢する圧縮コイルばね等の弾性体Sと、上記取付部材1に一体的に設けられたカム部材Cと、上記回動部材3内に摺動自在に納められると共に、上記弾性体Pの付勢力により上記カム部材Cのカム面C′に弾性的に当接するカムフォロアFと、から構成され、上記カム部材Cのカム面C′の形状により開閉トルクが制御されるようになっていた。
【0003】
しかしながら、上記従来の開閉装置では、カム面C′に弾性体による強い摩擦力が働くため、ある程度の持上げ(開き)トルクを残した状態で回動部材3を閉めると、接地が不完全になり、一方、接地させるために上記トルクを残さない仕様にすると、ヒンジの持ち上げ力が弱くなって原稿圧着板Pの持ち上げが重くなるといった二律背反の問題点があった。
また、市場では、操作力を極力小さくして、ユーザーの負担を小さくする要求が多くなり、従来の技術ではカムとカムフォロアの圧力角で微妙な荷重コントロールをしており、持ち上げる力は原稿圧着板の取手部にて2Kg前後が限界であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、原稿圧着板を完全かつ確実に接地させることができ、しかも、原稿圧着板を軽い操作力で容易に持ち上げることができる開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の開閉装置は、複写機やスキャナーなどの装置本体に固定される取付部材と、該取付部材にヒンジ軸を介して回動自在に枢着されると共に、原稿圧着板を支持する回動部材と、該取付部材と回動部材の間に装設されて該回動部材を開く方向に付勢する圧縮コイルばね等の弾性体と、上記ヒンジ軸に回動可能に枢着される振子カムと、前記弾性体の付勢力により上記振子カムのカム面に弾性的に当接するカムフォロアから構成され、該カム面の形状により開閉トルクが制御される開閉装置において、上記回動部材が開く方向に所定の回動角度の間だけ、上記振子カムを該回動部材に追従させて回動せしめる手段を設けたことを特徴とする。また、上記所定の回動角度が、約3°から15°の範囲であることを特徴とする。さらに、上記振子カムを追従させて回動せしめる手段が、該振子カムに形成され上記ヒンジ軸を中心とする弧状の長穴と、上記取付部材に植設されると共に前記長穴に挿設される規制ピンから成ることを特徴とする。又更に、上記回動部材が閉じた状態において、上記ヒンジ軸を通る水平軸に対する、振子カムとカムフォロアの接点と該ヒンジ軸とを結ぶ線の回動角θ1と、上記規制ピンとヒンジ軸とを結ぶ線の角θ2との相関関係が、θ1≧θ2となるように設定することを特徴とする。
また、複写機やスキャナーなどの装置本体に固定される取付部材と、該取付部材にヒンジ軸を介して回動自在に枢着されると共に、原稿圧着板を支持する回動部材と、該取付部材と回動部材の間に装設されて該回動部材を開く方向に付勢する圧縮コイルばね等の弾性体と、上記取付部材に一体的に設けられたカム部材と、前記弾性体の付勢力により上記カム部材のカム面に弾性的に当接するカムフォロアから構成され、該カム面の形状により開閉トルクが制御される開閉装置において、上記回動部材が開く方向に回動し始めてから所定の回動角度の間だけ、上記カムフォロアが滑動する低摩擦部分を、上記カム部材のカム面に形成したことを特徴とする。更にまた、上記低摩擦部分が、摩擦係数の小さい材料のコーティング部分であることを特徴とする。更にまた、上記低摩擦部分が、表面が滑らかな金属片であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
1)本発明の開閉装置は、回動部材を閉じた状態から開くとき、長穴に沿って振子カムが追従して回動するため、圧縮コイルばねの大きな縮み代を保時することができ、その結果、ヒンジトルクが上がって持ち上げ力を、約1Kg前後の荷重に軽くすることができるだけでなく、原稿圧着板を完全かつ確実に接地させることができる。
2)回動部材を閉じる際は、振子カムに下向きの力が働き、長穴の上端で規制ピンが係合してトルクを発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は本発明装置の1実施例を示す側面図であって、1は取付部材であり、複写機やスキャナーなどの装置本体Hに取り付け固定されている。該取付部材1には、ヒンジ軸2を介して、回動部材3の基部が回動自在に枢着されている。さらに、該回動部材3の先端部には、支軸4を介してリフトアーム5が回動自在に枢着されている。該リフトアーム5には原稿圧着板Pが装着されている。本発明において、上記支軸4およびリフトアーム5を省略して、該原稿圧着板Pを上記回動部材3に装着させてもよい。
【0009】
上記回動部材3内には第1スライダー6および第2スライダー7が摺動自在に取り付けられている。これら第1スライダー6および第2スライダー7間には、本発明の弾性体としての圧縮コイルばね8が介挿されている。該第1スライダー6の外側には、カムフォロア9が一体的に形成されている。
【0010】
10は振子カムであって、上記ヒンジ軸2に回動可能に枢着されている。該振子カム10には、ヒンジ軸2を中心とする弧状の長穴10aが形成されていて、規制ピン11が挿設されている。該規制ピン11は上記取付部材1に取り付けられている。上記カムフォロア9は、該振子カム10のカム面10bに弾性的に当接していて、該カム面10bの形状により上記回動部材3の開閉トルクが制御されるようになっている。
【0011】
図2から明らかなように、上記回動部材が閉じた状態において、上記ヒンジ軸2を通る水平軸Xに対する、振子カム10とカムフォロア9の接点Tと上記ヒンジ軸2とを結ぶ線Yの回動角θ1と、上記規制ピン11とヒンジ軸2とを結ぶ線Zの角θ2との相関関係は、θ1≧θ2となるように設定することにより、振子カム10を回動部材3の回動に従って、確実かつ安定して追従せしめる。
【0012】
本実施例の開閉装置は、以上のように構成されているので、図3に示すように、上記原稿圧着板P、すなわち上記回動部材3を開く方向に回動せしめると、これと一体的に回動する第1スライダー6、すなわちカムフォロア9が上記振子カム10のカム面10bに弾性的に当接し、しかも、該振子カム10に長穴10aが形成されていて振子カム10が回動可能となっているため、その当接摩擦力により、該振子カム10が上記回動部材3の回動に追従して回動する。該振子カム10が追従して回動するために、上記回動部材3がほぼ無抵抗で回動し、その結果、上記原稿圧着板Pを軽く持ち上げることができる。
【0013】
上記回動部材3の回動角、すなわち原稿圧着板Pの開き角が所定角度(本実施例では10°)になると、上記規制ピン11は長穴10aの下端に到達する。上記回動部材3を更に開くと、振子カム10は規制ピン11にロックされて、上述のように、追従して動くことが出来なくなる。その結果、上記カムフォロア9がカム面10bをスライドしながら、上記回動部材3、すなわち原稿圧着板Pが開き、図4に示すように、規制ピン11は長穴10aの元の位置(上端)に戻る。
【0014】
次に、上記原稿圧着板Pを閉じる場合には、図5に示すように、上記振子カム10は規制ピン11により常に反時計回りの回動が規制されているので、従来どおり、全回動行程に亘ってカムフォロア9はカム面10bに沿ってスライドすることになる。
【実施例2】
【0015】
図6は、本発明の別の実施例を示すもので、カム部材12のカム面12aに低摩擦部分12a′を形成してある。低摩擦部分12a′の形成方法としては、例えば、D.L.C(ダイヤモンド・ライク・カーボン)などの摩擦係数の小さい材料をコーティングしたり、表面が滑らかな金属片を貼り付ける。形成箇所は、上記回動部材3の回動角、すなわち原稿圧着板Pの所定の開き角(例えば、10°)に亘る部分である。なお、本実施例のカム部材12は、上記第1実施例の振子カム10のように揺動しない。
【0016】
本実施例の開閉装置は、以上のように構成されているので、上記原稿圧着板P、すなわち上記回動部材3を開く方向に回動せしめると、カム面12aに当接しているカムフォロア9が滑動するので、原稿圧着板Pを軽く持ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の開閉装置の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】振子カムとカムフォロアの接点と規制ピンとの位置関係の説明図である。
【図3】図1の実施例の装置の回動部材が開き始めた状態の作用説明図である。
【図4】図1の実施例の装置の回動部材が完全に開いた状態の作用説明図である。
【図5】図1の実施例の装置の回動部材が閉じる状態の作用説明図である。
【図6】本発明の開閉装置の別の実施例を示す縦断面図である。
【図7】従来の開閉装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 取付部材
2 ヒンジ軸
3 回動部材
4 支軸
5 リフトアーム
6 第1スライダー
7 第2スライダー
8 圧縮コイルばね
9 カムフォロア
10 振子カム
10a 長穴
10b カム面
11 規制ピン
12 カム部材
12a カム面
12a′低摩擦部分
H 装置本体
P 原稿圧着板
T 接点
X 水平軸
Y 線
Z 線
θ1 角
θ2 角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複写機やスキャナーなどの装置本体に固定される取付部材と、該取付部材にヒンジ軸を介して回動自在に枢着されると共に、原稿圧着板を支持する回動部材と、該取付部材と回動部材の間に装設されて該回動部材を開く方向に付勢する圧縮コイルばね等の弾性体と、上記ヒンジ軸に回動可能に枢着される振子カムと、前記弾性体の付勢力により上記振子カムのカム面に弾性的に当接するカムフォロアから構成され、該カム面の形状により開閉トルクが制御される開閉装置において、上記回動部材が開く方向に所定の回動角度の間だけ、上記振子カムを該回動部材に追従させて回動せしめる手段を設けたことを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
上記所定の回動角度が、約3°から15°の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
上記振子カムを追従させて回動せしめる手段が、該振子カムに形成され上記ヒンジ軸を中心とする弧状の長穴と、上記取付部材に植設されると共に前記長穴に挿設される規制ピンから成ることを特徴とする請求項1または2に記載の開閉装置。
【請求項4】
上記回動部材が閉じた状態において、上記ヒンジ軸を通る水平軸に対する、振子カムとカムフォロアの接点と該ヒンジ軸とを結ぶ線の回動角θ1と、上記規制ピンとヒンジ軸とを結ぶ線の角θ2との相関関係が、θ1≧θ2となるように設定することを特徴とする請求項1、2または3に記載の開閉装置。
【請求項5】
複写機やスキャナーなどの装置本体に固定される取付部材と、該取付部材にヒンジ軸を介して回動自在に枢着されると共に、原稿圧着板を支持する回動部材と、該取付部材と回動部材の間に装設されて該回動部材を開く方向に付勢する圧縮コイルばね等の弾性体と、上記取付部材に一体的に設けられたカム部材と、前記弾性体の付勢力により上記カム部材のカム面に弾性的に当接するカムフォロアから構成され、該カム面の形状により開閉トルクが制御される開閉装置において、上記回動部材が開く方向に回動し始めてから所定の回動角度の間だけ、上記カムフォロアが滑動する低摩擦部分を、上記カム部材のカム面に形成したことを特徴とする開閉装置。
【請求項6】
上記低摩擦部分が、摩擦係数の小さい材料のコーティング部分であることを特徴とする請求項5に記載の開閉装置。
【請求項7】
上記低摩擦部分が、表面が滑らかな金属片であることを特徴とする請求項5に記載の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−91616(P2006−91616A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278882(P2004−278882)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(592264101)下西技研工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】