説明

開閉装置

【課題】固定プレートに対する移動プレートの移動動作を安定かつ滑らかに一つの操作で行いうる開閉装置を提供する。
【解決手段】一端が第1軸部A1で固定プレート12に接続され、他端部が第3軸部A3において移動プレート14に接続され、第1軸部A1と第3軸部A3との間にスライド溝18bが形成され、第1軸部A1を中心として回転することにより移動プレート14を閉位置と開位置との間で移動させるヒンジアーム18と、一端が第2軸部A2において固定プレート12に接続され、他端部が第5軸部A5に接続されるリンクアーム22と、一端が第4軸部A4において移動プレート14に接続され、他端部が第5軸部A5に接続されたスライドアーム20とを有する。そして、移動プレート14が閉位置と開位置との間で移動する際、スライドアーム20及びリンクアーム22の回転に伴い第5軸部A5がスライド孔18b内でスライドするよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開閉装置に係り、特に固定プレートに対して移動プレートを移動させる開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯端末装置に代表される携帯端末装置は、テンキー,液晶表示装置等が配設された第1筐体と、液晶表示装置等が配設され第1筐体に対して開閉可能とされた第2筐体とにより構成されている。また、第1筐体に対して第2筐体を開閉させる構造としては、第1筐体と第2筐体をヒンジ機構により接続し、第1筐体に対して第2筐体を回動させることにより開閉するタイプ(折り畳みタイプ)のものと、第1筐体に対して第2筐体をスライドさせることにより開閉するタイプ(スライドタイプ)のものが一般的である。
【0003】
ところで、近年携帯端末装置は多機能化が進んでおり、また地上デジタル放送を受信可能な装置も提供されるようになってきており、液晶表示装置の大型化も進んでいる。また、多機能化に伴い、携帯端末装置に対して入力処理を行うキーボードのキー数も増大する傾向にあり、よってキーボードも大型化する傾向にある。一方において携帯端末装置は携帯性の向上が恒常的に望まれており、液晶表示装置及びキーボードの大型化にも限度がある。
【0004】
上記した折り畳みタイプの携帯端末装置では、折り畳んだ状態では液晶表示装置は隠れた状態となってしまい、折り畳み状態では液晶表示装置を使用することができないという問題点がある。また、スライドタイプの携帯端末装置では上記の折り畳みタイプの問題点は発生しないが、開いた状態において必然的に第1筐体と第2筐体で重なる部分が発生し、スペースの有効利用ができないという問題点がある。
【0005】
そこで、第1筐体と第2筐体を開いた状態において、第1筐体と第2筐体が同一平面状(フラット)となる開閉装置が提案されている(特許文献1〜3参照)。この構成によれば、第1筐体と第2筐体を閉じた状態でも液晶表示装置を使用することができ、かつ第1筐体と第2筐体を開いた状態では両筐体に重なる部分がなく、スペースの有効利用を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−218674号公報
【特許文献1】特開2009−059102号公報
【特許文献2】特開2009−071588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1に開示された開閉装置では、1本のアームにより第1筐体に対して第2筐体を移動させる構成であったため、移動途中において第2筐体が任意に回転してしまい移動動作が不安定になるという問題点があった。
【0008】
また特許文献2,3に開示された開閉装置では、開閉操作を行う際に第1筐体に対して第2筐体をスライドさせるスライド操作と、第1筐体に対して第2筐体を上下移動させる昇降操作の二つの操作を必要とするため、開閉操作が面倒であるという問題点があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、固定プレートに対する移動プレートの移動動作を安定かつ滑らかに一つの操作で行うことを可能とした開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、第1の観点からは、
第1筐体に取り付けられる固定プレートと、
第2筐体に取り付けられる移動プレートと、
前記固定プレートに対して移動プレートを開位置と閉位置との間で移動させる開閉機構とを有した開閉装置であって、
前記開閉機構を、
前記固定プレートに回転可能に接続された第1軸部と、前記移動プレートに回転可能に接続される第3軸部と、前記第1軸部と前記第3軸部との間に設けられたスライド溝とを有し、前記第1軸部を中心として回転することにより、前記固定プレートに対して前記移動プレートを閉位置と開位置との間で移動させるヒンジアームと、
前記固定プレートに回転可能に接続された第2軸部と、前記スライド溝にスライド可能に接続される第5軸部とを有したリンクアームと、
一端部に前記移動プレートに回転可能に接続された第4軸部を有すると共に、他端部が前記第5軸部に接続されたスライドアームとを有する構成とし、
前記移動プレートが前記閉位置と前記開位置との間で移動する際、前記ヒンジアーム及び前記リンクアームの回転に伴ない前記第5軸部を前記スライド溝内でスライドし、かつ、前記移動プレートが開位置に移動した際、前記第1筐体の表面と前記第2筐体の表面が略同一平面上に位置する構成としたことを特徴とする開閉装置により解決することができる。
【発明の効果】
【0011】
開示の開閉装置によれば、第5軸部がヒンジアームの回転に伴いスライド溝内で移動することによりスライドアーム及びリンクアームの一端部がヒンジアームの回転に同期して移動するため、閉位置と開位置との間で移動プレートを一動作で滑らかに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である開閉装置の斜視図であり、(A)は移動プレートが閉状態を示し、(B)は移動プレートが開状態を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態である開閉装置の分解斜視図である。
【図3】図3は本発明の一実施形態である開閉装置の電子機器への取り付けを説明するための分解斜視図である。
【図4】図4(A)は本発明の一実施形態である開閉装置を装着した電子機器の閉状態を示す斜視図であり、図4(B)は開状態を示す斜視図である。
【図5】図5(A)はヒンジアーム,スライドアーム,及びリンクアームが組み付けられた状態を示す斜視図であり、図5(B)はヒンジアーム,スライドアーム,及びリンクアームの組み付けを説明するための分解斜視図である。
【図6】図6(A)は外側プレートにラッチカムが取り付けられた状態を示す斜視図であり、図6(B)は外側プレートに対するラッチカムの取り付けを説明するための分解斜視図である。
【図7】図7は本発明の一実施形態である開閉装置に組み込まれる移動プレート14の分解斜視図である。
【図8】図8は本発明の一実施形態である開閉装置の動作(その1)を説明するための概略構成図であり、(A)は電子機器の側面図、(B)はガタ防止機構が取り付けられた開閉装置の側面図、(C)はガタ防止機構を取り外した開閉装置の側面図である。
【図9】図9は本発明の一実施形態である開閉装置の動作(その2)を説明するための概略構成図であり、(A)は電子機器の側面図、(B)はガタ防止機構が取り付けられた開閉装置の側面図、(C)はガタ防止機構を取り外した開閉装置の側面図である。
【図10】図10は本発明の一実施形態である開閉装置の動作(その3)を説明するための概略構成図であり、(A)は電子機器の側面図、(B)はガタ防止機構が取り付けられた開閉装置の側面図、(C)はガタ防止機構を取り外した開閉装置の側面図である。
【図11】図11は本発明の一実施形態である開閉装置の動作(その4)を説明するための概略構成図であり、(A)は電子機器の側面図、(B)はガタ防止機構が取り付けられた開閉装置の側面図、(C)はガタ防止機構を取り外した開閉装置の側面図である。
【図12】図12は本発明の一実施形態である開閉装置の動作(その5)を説明するための概略構成図であり、(A)は電子機器の側面図、(B)はガタ防止機構が取り付けられた開閉装置の側面図、(C)はガタ防止機構を取り外した開閉装置の側面図である。
【図13】図13はガタ防止機構の動作を説明するための図であり、(A)はラッチがラッチカムの円周部に圧接した状態を示す図であり、(B)はラッチの突出部がラッチカムのカム部に係合した状態を示す図である。
【図14】図14はガタ防止機構の機能を説明するための図であり、(A)はガタが発生していない状態を示す図であり、(B)はガタが発生した状態を示す図である。
【図15】図15は、本発明の変形例である開閉装置の電子機器への取り付けを説明するための分解斜視図である。
【図16】図16は、図15における右側に位置するヒンジアームの近傍を拡大して示す分解斜視図である。
【図17】図17は、図15における左側に位置するヒンジアームの近傍を拡大して示す分解斜視図である。
【図18】図18は図15における右側に位置するヒンジアームの動作を説明するための斜視図図であり、(A)は閉状態を示し、(B)は開状態を示す図である。
【図19】図19は図15における左側に位置するヒンジアームの動作を説明するための斜視図図であり、(A)は閉状態を示し、(B)は開状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0014】
図1及び図2は本発明の一実施形態である開閉装置10を説明するための図であり、図3及び図4は開閉装置10が設けられた電子機器1を説明するための図である。
【0015】
電子機器1は例えば携帯端末装置であり、第1筐体2、第2筐体3、及び開閉装置10等により構成されている。第1筐体2の上面2aにはキーボード5等が設けられている。なお、第1筐体2の上面2aには液晶表示装置等を設けることも可能であるが、本実施形態ではキーボードを配設した例について説明する。また、第2筐体3の上面3aには、液晶表示装置4等が設けられている。
【0016】
また携帯端末装置は、携帯時においてはその形状を小さくして携帯性を向上させる必要がある。このため本実施形態に係る電子機器1は、開閉装置10を設けることにより第2筐体3を第1筐体2に対して閉位置と開位置との間で移動させる構成とされている。
【0017】
図4(A)は第2筐体3が閉位置にある状態(以下、閉状態という)を示しており、図4(B)は第2筐体3開位置にある状態(以下、開状態という)を示している。閉状態では、第2筐体3は第1筐体2の上部に重なった状態となっており、よって液晶表示装置4のみが表面3aに露出した状態となっている。よって、閉状態においても液晶表示装置4を外部から見ることができる。
【0018】
また本実施形態では、第1筐体2及び第2筐体3の平面視した形状は同一形状とされているため、閉状態では電子機器1の平面視した時の面積は開状態における面積の半分となっている。よって、閉状態においては、電子機器1は小型形状となり携帯性が確保される。
【0019】
一方、開状態においては、後に詳述するように開閉装置10を構成するヒンジアーム18、スライドアーム20、及びリンクアーム22等が回転することにより、第2筐体3は閉位置から開位置に移動し、第1筐体2の上面2aと第2筐体3の上面3aとが同一平面上に位置した状態となる。この開状態では、図4(B)に示すように第1筐体2と第2筐体3は重なることなく、同一平面上に並設された状態となる。
【0020】
この開状態では、各筐体2,3の上面2a,3aの全面が上方に向け露出した状態となっている。よって、第1筐体2の上面2aの全面を電子機器1の構成部品の設置位置として使用することができ、同様に第2筐体3の上面3aの全面を電子機器1の構成部品の設置位置として使用することができる。
【0021】
このように本実施形態に係る開閉装置10を設けた電子機器1では、第1筐体2の上面全面及び第2筐体3の上面全面を構成部品の設置位置として使用できるため、各筐体2,3のスペースの使用効率を高めることができる。よって、例えば液晶表示装置4の大型化を図った場合には液晶表示装置4の視認性の向上を図ることができ、またキーボード5の大型化及びキー数を増やした場合にはキーボード5の操作性の向上を図ることができる。
【0022】
次に、第1筐体2及び第2筐体3の上記動作を可能とする開閉装置10の詳細構成について説明する。
【0023】
開閉装置10は、図1、図2、図8〜図12に示すように、大略すると一対の開閉機構11A,11Bとベースシャフト26等を有した構成とされている。一対の開閉機構11A,11はY1,Y2方向に離間して配置されている。
【0024】
各開閉機構11A,11Bは、固定プレート12,16、移動プレート14、固定プレート16、ヒンジアーム18、スライドアーム20、ガタ防止機構21、リンクアーム22、及びヒンジユニット30等を有した構成とされている。
【0025】
この一対の開閉機構11Aと開閉機構11Bは、固定プレート12,16の構成が異なる点、開閉機構11Aのヒンジアーム18に軸受部18dが設けられている点、開閉機構11Bにヒンジユニット30が設けられている点を除き同一構成とされている。また、開閉機構11Aの各構成要素と開閉機構11Bの各構成要素は、図1及び図2における左右方向(Y1,Y2方向)に対称に配置された構成となっている。
【0026】
よって以下の説明において、開閉機構11Aと開閉機構11Bで対応する構成については同一符号を付し、それぞれの説明を一括的に行うものとする。
【0027】
固定プレート12,16は、電子機器1の第1筐体2に固定される。具体的には図3に示されるように、固定プレート12,16は第1筐体2の第1下部半体2Bに形成された装着凹部2aに固定される。第1筐体2は第1上部半体2Aと第1下部半体2Bを組み合わせた構成とされており、よって第1筐体2は固定プレート12,16と一体的な構成となる。
【0028】
この固定プレート12,16は、金属板状材をプレス成形したものである。図2に示されるように固定プレート12は、第1下部半体2Bに固定されるベース部12aと、その両側に形成された起立部12bとを有している。外側(Y1方向側)の起立部12bには軸ピン19が取り付けられる軸孔12cが形成されており、また内側(Y2方向側)の起立部12bには後述するヒンジアーム18の軸受部18dを軸承する軸孔12dが形成されている。
【0029】
また、固定プレート16は、ベース部16aと起立部16bとを一体的に形成した構成とされている。ベース部16aは、第1下部半体2Bに固定される部位である。また起立部16bには後述する軸ピン19が取り付けられる軸孔16cが形成されている。
【0030】
移動プレート14は、固定プレート12,16に対して移動可能な構成とされている。この移動プレート14は、電子機器1の第2筐体3に固定される。具体的には図3に示されるように、移動プレート14は第2筐体3の第2下部半体3Bに形成された装着凹部3aに固定される。第2筐体3は第2上部半体3Aと第2下部半体3Bを組み合わせた構成とされており、よって第2筐体3と移動プレート14は一体的な構成となる。
【0031】
移動プレート14は、金属板状材をプレス成形した内側プレート23と外側プレート24とを有している。内側プレート23は、図1,2に加えて図7に示すように、ベース部23a,起立部23b,天板部23c,及び蓋体部23dを一体的に形成した構成とされている。ベース部23aは、前記した第2下部半体3Bに固定される。また、起立部23bには後述するヒンジアーム18の軸部18aが軸承する軸孔14aが形成されている。また天板部23cは、内側プレート23が外側プレート24と組み合わされて移動プレート14を構成する際に、外側プレート24の天板部24cと重ね合わされる。
【0032】
外側プレート24は、図1,2に加えて図6,7に示すように、ベース部24a,起立部24b,天板部24c,及びラッチ収納部24dを一体的に形成した構成とされている。ベース部24aは、第2下部半体3Bに固定される。起立部24bには、軸孔14a,14bが形成されている。軸孔14aは、後述するヒンジアーム18の軸部18aが軸承される。また、軸孔14bは、スライドアーム20に接続されるスライドアームシャフト44を軸承する。
【0033】
また天板部24cは、前記のように内側プレート23が外側プレート24と組み合わされて移動プレート14を構成する際、内側プレート23の天板部23cと重ねあわされる。そして、この重ね合わされた状態で両天板部23c,24cを溶接することにより、内側プレート23と外側プレート24は一体化された構成となる。
【0034】
またラッチ収納部24dは、後述するガタ防止機構21を構成するラッチ41がX1,X2方向にスライド可能に収納される。更に、内側プレート23と外側プレート24とが一体化された状態で、各プレート23,24の内側にはヒンジアーム18が回転に伴い内部に収納されるアーム収納部(空間部)が形成される。
【0035】
なお、本実施形態では移動プレート14をY1,Y2方向に分離して配置した構成としている。しかしながら、一対の開閉機構11A,11Bにおいて、各移動プレート14を構成する天板部23c或いは天板部24cをY1,Y2方向に長く延出させることにより左右の移動プレート14を一体化して一つの構成部材とすることも可能である。
【0036】
ヒンジアーム18は、図5に示されるように、上端部に形成された軸部18aと、下端部に形成された軸孔18cと、この軸部18aと軸孔18cとの間の位置に形成されたスライド孔18b(長孔)とを有している。
【0037】
ヒンジアーム18の上端部に形成された軸部18aは、前記のように移動プレート14に形成された軸孔14aに回転可能に接続される。なお、以下の説明において、ヒンジアーム18の軸部18aが移動プレート14に回転可能に接続される部位を第3軸部A3というものとする。
【0038】
また、ヒンジアーム18の下端部に形成された軸孔18cには、ベースシャフト26(請求項に記載の連結アームに相当する)が装着される。具体的には、図2における矢印Y1方向側に位置するヒンジアーム18には軸受部18dが形成されており、軸孔18cはこの軸受部18dに形成されている。ベースシャフト26のY1方向側の端部は、軸受部18dの軸孔18cに挿入された後、ピン29により軸受部18dに固定される。これにより、Y1方向側のヒンジアーム18はベースシャフト26と一体的に回転する構成となる。
【0039】
一方、開閉機構11Bに設けられる(図中矢印Y2方向に位置する)ヒンジアーム18は、下端部に形成された軸孔18cの内部に、ヒンジユニット30の一部構成を収納する構成とされている。具体的には、ヒンジユニット30を構成するヘッドカム31及びヒンジプレート35が、軸孔18cの内部に収納するよう構成とされている。
【0040】
ヘッドカム31及びヒンジプレート35の外周には突部が形成されており、ヒンジアーム18の軸孔18c内にはこの突部に対応した形状の凹部が形成されている。従って、ヘッドカム31及びヒンジプレート35が軸孔18c内に収納された状態で、ヘッドカム31及びヒンジプレート35はヒンジアーム18と一体的に回転する構成となる。
【0041】
ベースシャフト26のY2方向側の端部には、ヒンジユニット30を構成するヒンジシャフト28が配設される。具体的には、ヒンジシャフト28に形成されたホルダ部28bにベースシャフト26が挿入された後、ピン29で係止することにより、ベースシャフト26とヒンジシャフト28は一体的に回転する構成となる(以下の説明では、特に言及する場合を除き、ベースシャフト26といった場合にはヒンジシャフト28を含むものとする)。
【0042】
また、ヒンジシャフト28のY2方向先端部には、小判形状部28aが形成されている。また、軸部18a内に配設されたヒンジプレート35には、小判形状部28aに対応する形状の小判形状孔35aが形成されている。小判形状部28aは、このヒンジプレート35の小判形状孔35aに嵌入するよう構成されている。これにより、ヒンジアーム18は、ヒンジプレート35,ヒンジシャフト28を介してベースシャフト26と一体的に回転する構成となる。
【0043】
また、後述するヒンジユニット30は、第1下部半体2Bに固定されるヒンジケース34を有している。ベースシャフト26は、このヒンジケース34に軸承されるよう構成されている。よって、ベースシャフト26は、第1下部半体2B(第1筐体2)に固定される固定プレート12及びヒンジケース34により第1筐体2上で軸承される。なお、以下の説明において、ヒンジアーム18が固定プレート12,16に対して回転する回転軸を第1軸部A1というものとする。
【0044】
また、ヒンジアーム18の軸部18aと軸孔18cとの間に形成されたスライド孔18bには、図5に拡大して示すように、スライドアーム20及びリンクアーム22の一端部が接続される。スライド孔18bは、ヒンジアーム18の内側側面に長手方向に延在するよう形成されている。
【0045】
スライドアーム20及びリンクアーム22をスライド孔18bに接続するには、スライドアーム20の下端部に形成された軸孔20aと、リンクアーム22の上端部に形成された軸孔22aとを位置合わせし、軸ピン17を各軸孔20a,22a及びスライド溝18bに挿通する。そして、軸ピン17のスライド溝18bより内側に突出した端部に、スライダ36及びスペーサ37を挿通する。その上で、軸ピン17の端部にEワッシャ38を固定する。これにより、スライドアーム20及びリンクアーム22は、スライド孔18bに接続される。
【0046】
この際、リンクアーム22には図5(B)に示すようにボス部22cが形成されており、このボス部22cはスライド孔18bにスライド可能に係合するよう構成されている。従って、スライドアーム20及びリンクアーム22がスライド孔18bと接続する位置は、スライド孔18bに沿って移動しうる構成となっている。以下の説明において、このスライドアーム20及びリンクアーム22がヒンジアーム18のスライド孔18bに接続される部位(即ち、軸ピン17の位置)を第5軸部A5というものとする。
【0047】
上記構成とされたヒンジアーム18は、固定プレート12に接続された第1軸部A1を中心に回転することにより、移動プレート14を固定プレート12,16に対して閉位置と開位置との間で移動させる機能を奏する。また、移動プレート14が閉位置と開位置との間で移動する際、第5軸部A5はスライド孔18b内をスライドする。
【0048】
スライドアーム20は、前記のように下端部が第5軸部A5に接続される。また、スライドアーム20の上端部に形成された軸孔20bには、スライドアームシャフト44が挿通される。このスライドアームシャフト44は、移動プレート14に形成された軸孔14bに回転可能に軸承される(図6(B)参照)。なお、以下の説明において、スライドアーム20が移動プレート14に回転可能に接続される部位を第4軸部A4というものとする。
【0049】
リンクアーム22は、図2に示すように、リンクアーム本体22Aとリンクアームカバー22Bとを組み合わせた構成とされている。リンクアーム本体22Aは金属製であり、リンクアームカバー22Bは樹脂製である。リンクアーム本体22Aは、リンクアームカバー22B内にインサート成形された構成とされている。この構成とすることにより、リンクアーム22の強度をリンクアーム本体22Aにより実現し、かつリンクアーム22の表面における平滑性をリンクアームカバー22Bにより実現することができる。
【0050】
前記のように、リンクアーム22の上端部に形成された軸孔22aは、軸ピン17によりスライド孔18bに回転可能に接続される。またリンクアーム22の下端部に形成された軸孔22bは、固定プレート12に形成された軸孔12c或いは固定プレート16に形成された軸孔16cに軸ピン19により接続される。
【0051】
以下の説明において、リンクアーム22の下端部が固定プレート12又は固定プレート16に接続される部位を第2軸部A2というものとする。よって、リンクアーム22の上端部は第5軸部A5に回転可能に接続され、下端部は第2軸部A2に回転可能に接続された構成となる。よって、リンクアーム22の上端部も第5軸部A5に接続されるため、スライド孔18bに沿ってスライド可能な構成となる。
【0052】
次に、ヒンジユニット30について説明する。ヒンジユニット30は、ヒンジシャフト28、ヘッドカム31、スライドカム32、ヒンジスプリング33a,33b、ヒンジケース34、及びヒンジプレート35等を有した構成とされている。
【0053】
ヒンジシャフト28は、前記のようにベースシャフト26に接続されている。このヒンジシャフト28は、ヒンジケース34に対してY2方向に挿入される。ヘッドカム31及びスライドカム32等は、ヒンジシャフト28のヒンジケース34の内側に突出した部分に配設される。
【0054】
ヘッドカム31及びヒンジプレート35は、ヒンジアーム18の軸孔18c内に配設される(図2参照)。この際、ヒンジアーム18,ベースシャフト26,ヒンジシャフト28,ヘッドカム31,及びヒンジプレート35は、前記のように一体的に回転する構成とされている。
【0055】
一方、スライドカム32の外周にも突起部が形成されると共に、ヒンジケース34の内側にもこの突起部と係合する凹部が形成されている。従って、スライドカム32がヒンジケース34内に収納された状態で、スライドカム32はヒンジケース34に対して回転が規制された構成となっている。しかしながら、スライドカム32に形成された軸孔は、ヒンジシャフト28を回転可能とする軸径とされている。従って、ベースシャフト26はスライドカム32に対して回転可能で、かつベースシャフト26の軸方向(矢印Y1,Y2方向)にスライド可能な構成となっている。
【0056】
ヒンジスプリングは、本実施形態では外ヒンジスプリング33aと内ヒンジスプリング33bとを組み合わせた構成としている。ヒンジスプリング33a,33bは、一端がヒンジケース34の内壁に当接すると共に、他端がスライドカム32と当接している。よって、ヒンジスプリング33a,33bの弾性力は、スライドカム32をヘッドカム31に向け押圧する力として作用する。
【0057】
上記構成とされたヒンジユニット30において、ヘッドカム31とスライドカム32との当接面には、互いに嵌合する凸面と凹面がそれぞれ形成されている。各カム31,32の各凸面の頂点部同士が当接する位置(中立位置という)においては、回転トルクは発生しない。しかしながら、凸部が中立位置からずれると、各カム31,32の間にはヒンジスプリング33の弾性力により回転トルクが発生する。
【0058】
前記のようにヒンジアーム18は閉位置と開位置との間で移動するが、本実施形態では閉位置と開位置との中間位置が、各カム31,32の中立位置となるよう設定されている。従って,ヒンジアーム18が閉位置と中間位置との間にある状態では、ヒンジユニット30によりヒンジアーム18は閉位置に向け回転付勢され、ヒンジアーム18が中間位置と開位置との間にある状態ではヒンジアーム18は開位置に向け回転付勢される。よって、上記構成とされたヒンジユニット30は、いわゆるカム式のセミオートヒンジを構成する。
【0059】
従って、固定プレート12(第1筐体2)に対して移動プレート14(第2筐体3)を開く場合には、閉位置から中立位置まで開き操作を行えば、その後自動的に移動プレート14は開位置に向かい移動する。逆に、固定プレート12に対して移動プレート14を閉じる場合には、開位置から中立位置まで閉じ操作を行えば、その後は自動的に移動プレート14は閉位置に向かい移動する。このように、セミオートヒンジタイプのヒンジユニット30を設けることにより、開閉装置10(電子機器1)の操作性を向上させることができる。
【0060】
次に、ガタ防止機構21について説明する。ガタ防止機構21は、図2に加えて図6,7に示すように、スライドアーム20、ラッチカム40、及びラッチ41等により構成されている。このガタ防止機構21は、図14(A)に示すように、移動プレート14が開位置まで移動した際、移動プレート14が図14(B)に矢印Sで示す方向に移動する動作(ガタ)の発生を防止する機能を奏するものである。
【0061】
即ち、図14(A)に示す状態において、移動プレート14に矢印Dで示す方向に力が作用した場合、移動プレート14には第3軸部A3を中心とした回転力が発生し、部品間のクリアランス等に起因して移動プレート14にガタが発生する可能性がある(図14(B)参照)。この際、スライドアーム20と移動プレート14との接続位置である第4軸部A4は、図中S方向に変位する。ガタ防止機構21は、このように移動プレート14に発生するガタを防止する機能を奏するものである。
【0062】
ラッチカム40は、略円柱形状を有している。このラッチカム40は、円周部40aの一部にカム部40bを形成した構成とされている。また、ラッチカム40には軸孔40c及び取り付け孔40dが形成されている。このラッチカム40は、スライドアームシャフト44に固定される。
【0063】
スライドアームシャフト44は、前記のように移動プレート14(外側プレート24)に形成された軸孔14bに軸承されるシャフトである。このスライドアームシャフト44の両端部には、小判形状部44a,44bが形成されている。
【0064】
スライドアームシャフト44の小判形状部44aは、スライドアーム20に接続される。スライドアーム20の上端部に形成された軸孔20bは、小判形状部44aの形状に対応した形状とされている。よって、小判形状部44aが軸孔20bに固着されることにより、スライドアームシャフト44はスライドアーム20と一体的に回転する構成となる。
【0065】
また、スライドアームシャフト44の他端部は、ラッチカム40の軸孔40cに挿通される。ラッチカム40の外側の側面には、ラッチプレート43が装着される。ラッチプレート43は、小判形状部43aと、ラッチカム40に形成された取り付け孔40dに取り付けられる一対の取り付けアーム43bが形成されている。
【0066】
小判形状部43aは、スライドアームシャフト44の小判形状部44bの形状に対応するよう構成されている。よって、スライドアームシャフト44を取り付け孔40dに挿通し、ラッチカム40に取り付けられたラッチプレート43の小判形状部43aに固着することにより、ラッチカム40はスライドアームシャフト44と一体的に回転する構成となる。従って、スライドアーム20とラッチカム40は、一体的に回転する構成となる。
【0067】
一方、ラッチ41は、角柱形状を有しており、ラッチカム40と対峙する端部に突出部41aが形成されている。この突出部41aは、ラッチカム40に形成されたカム部40bと係合する形状とされている。
【0068】
このラッチ41は、外側プレート24に形成されたラッチ収納部24d内にラッチスプリング42と共に装着される。ラッチ41のX1方向側の端部にはスプリング受け部41bが形成されており、ラッチスプリング42はこのスプリング受け部41bに装着される。
【0069】
前記ように、ラッチ収納部24dが形成された外側プレート24は内側プレート23と溶接されることにより移動プレート14を構成する。この際、内側プレート23と外側プレート24を組み合わせた状態で、内側プレート23に形成されている蓋体部23dは、ラッチ収納部24dの上部開口部分を覆うよう構成されている。このように、ラッチ収納部24dの上部開口部分が蓋体部23dで閉蓋されることにより、ラッチ41の外側プレート24(移動プレート14)からの離脱を防止することができる。
【0070】
前記のように、ラッチカム40はスライドアーム20の回転に伴い回転する。また、ラッチ41はラッチスプリング42のばね力により常に突出部41aをラッチカム40に向かう方向(X1方向)に押圧する構成とされている。図13(A)に示すように、ラッチ41の突出部41aがラッチカム40の円周部40aに圧接している状態では、ラッチカム40は回転可能であり、よってスライドアーム20も回転可能な状態となっている。
【0071】
これに対して図13(B)に示すように、突出部41aがカム部40bと係合した状態では、ラッチ41によりラッチカム40(スライドアーム20)の回転は規制される。図14(B)を用いて説明したように、移動プレート14にガタが発生する場合、スライドアーム20が接続された第4軸部A4はS方向に変位する。本実施形態に係るガタ防止機構21は、スライドアーム20の変位をガタ防止機構21で規制することにより、開位置において移動プレート14にガタが発生しないよう構成している。
【0072】
次に、図8乃至図12を用いて上記構成とされた電子機器1及び開閉装置10の具体的な動作について説明する。図8乃至図12は、第2筐体3及び移動プレート14が閉状態から開状態に移動する動作を示している。なお、各図において(A)は電子機器1の動作を示し、(B)はガタ防止機構21が設けられた開閉装置10の動作を示し、(C)はガタ防止機構21を取り外した状態の開閉装置10の動作を示している。
【0073】
図8は、閉状態の電子機器1及び開閉装置10を示している。この閉状態では、図8(A)に示すように、電子機器1の第2筐体3は第1筐体2の上部に重なった状態となっている。また、図8(B),(C)に示すように閉状態では、開閉装置10のヒンジアーム18は第1軸部A1を中心として図中反時計方向に回転した状態となっている。
【0074】
また閉状態では、第5軸部A5はスライド孔18b内の第3軸部A3側の端部(移動プレート14に近い側の端部)に位置している。また、ヒンジアーム18、スライドアーム20、及びリンクアーム22は略一直線上に並んだ構成となっており、よってコンパクトな状態となっている。
【0075】
また、閉状態においてヒンジユニット30は、ヒンジアーム18を第1軸部A1を中心として図中反時計方向に付勢している。更にガタ防止機構21は、図8(b)に示すようにラッチ41がラッチカム40のカム部40bに圧接した状態となっている。このため、スライドアーム20は回転可能な状態となっている。
【0076】
この閉状態から、ヒンジユニット30の付勢力に抗して第2筐体3を開位置に向けて移動操作すると、第2筐体3は第1筐体2から離間して図9(A)に示すように開位置に向け移動する。これに伴い、ヒンジアーム18は第1軸部A1を中心として図9(B)に矢印Pで示す方向に回転を開始し、これによりスライドアーム20及びリンクアーム22も各軸部A2,A3,A4,A5を中心として回転を開始し、これにより移動プレート14は閉位置から移動を開始する。
【0077】
この際、スライドアーム20の下端部及びリンクアーム22の上端部は、ヒンジアーム18に移動可能に係合した第5軸部A5に接続されている。よって、ヒンジアーム18がP方向に回転することにより、スライドアーム20及びリンクアーム22は第5軸部A5をスライド孔18bに沿って第1軸部A1に向かう方向(図中、矢印Zで示す方向)に移動させる。このように、第5軸部A5がスライド孔18bに沿って移動するため、各アーム18,20,22は円滑な回転動作を行いうる。
【0078】
この移動の際、移動プレート14はスライドアーム20によりヒンジアーム18に対して支持され、ヒンジアーム18はリンクアーム22により固定プレート12及びヒンジケース34に対して支持される。このため、移動プレート14の移動姿勢は安定し、ヒンジアーム18に対して移動プレート14が不要に変位するようなことはない。
【0079】
図10は、第2筐体3(移動プレート14)が中立位置まで移動した状態を示している。本実施形態では、ヒンジアーム18が閉状態から直立した位置が中立位置となるよう設定されている。
【0080】
前記したように中立位置においては、ヒンジユニット30のヘッドカム31とスライドカム32の各凸面の頂点部同士が当接した状態となっている。この中立位置では、瞬間的にヒンジユニット30によるヒンジアーム18の回転付勢力がなくなる。そして、この中立位置より更に第2筐体3(移動プレート14)を開位置に向け操作することにより、ヘッドカム31とスライドカム32の当接面に発生する回転トルクは反転し、移動プレート14が開位置に向かい移動する方向にベースシャフト26を回転付勢する。
【0081】
これにより中立位置以降は、ヒンジアーム18は第1軸部A1を中心として時計方向(開方向)に回転付勢される。従って、中立位置より第2筐体3(移動プレート14)を開位置に向け若干操作した後は、図11〜図12に示すように、第2筐体3(移動プレート14)は自動的に開位置に向けて順次移動する。
【0082】
なお、中立位置においても、図10(B)に示すように、ガタ防止機構21のラッチ41はラッチカム40の円周部40aに圧接しており、スライドアーム20の回転は維持されている。
【0083】
図11は、ヒンジアーム18が中立位置から更に回転し、開位置近傍まで回転した状態を示している。ヒンジアーム18は中立位置を過ぎると、第3軸部A3を下方に向け押し下げるよう作用する。このため、図11に示すように、ヒンジアーム18のP方向への回転に伴い、第2筐体3(移動プレート14)の水平方向に対する角度(チルト角θ)は漸次小さくなる。即ち、第2筐体3(移動プレート14)の姿勢は前記水平に寝た状態に近づく。
【0084】
そして、図12に示すように第2筐体3(移動プレート14)が開位置まで移動した時点で、第1筐体2の上面と第2筐体3の上面は同一平面となる。この開状態において、各アーム18,20,22は一直線状となっており、また各アーム18,20,22はベースシャフト26の軸方向(Y1,Y2方向)に重なった状態となっている。このため、開閉装置10は、開状態においてもコンパクトな状態となっている。
【0085】
また、ガタ防止機構21は、移動プレート14が閉位置まで移動した状態で、ラッチ41の突出部41aがラッチカム40のカム部40bと係合するよう構成されている。従って、移動プレート14が閉位置まで移動した状態でガタ防止機構21によりスライドアーム20の回転は規制される。これにより、図14を用い手説明したように、移動プレート14の第4軸部A4が矢印Sで示す方向に変位することに起因したガタの発生を防止することができる。従って、開状態において第2筐体3がガタツクことを防止でき、電子機器1の使用性を向上させることができる。
【0086】
なお、図13に示す開状態から、第2筐体3(移動プレート14)を閉位置に向け移動させる操作及び動作は、図8乃至図13を用いて説明した上記した操作及び動作の反対となるため、その説明については省略するものとする。
【0087】
上記のように本実施形態に係る開閉装置10は、簡単な機構で開位置において移動プレート14と固定プレート12とを略同一平面となる位置で保持することができる。また、スライドアーム20は一端が第4軸部A4において移動プレート14と接続されると共に、他端が第5軸部A5に接続されている。更に、リンクアーム22は一端が第2軸部A2において固定プレート12,固定プレート16に接続されると共に、他端が第5軸部A5に接続されている。更に、第5軸部A5は、ヒンジアーム18に形成されたスライド孔18bにスライド可能な構成とされている。このため、各アーム18,20,22の動作は同期した動作となるため、閉位置と開位置との間で第2筐体3(移動プレート14)を一動作で滑らかに移動させることができる。
【0088】
更に、本実施形態に係る開閉装置10では、上記のようにスライドアーム20の下端部及びリンクアーム22の上端部を第5軸部A5に接続し、この第5軸部A5をスライド孔18b内でスライド可能な構成としたことにより、スライドアーム20及びリンクアーム22をヒンジアーム18に近接させた構成とすることが可能となった。このため、図8〜図12に示した閉位置から開位置までの移動プレート14の動作に際し、各アーム18,20,22はY1,Y2方向に対し重なるか、スライドアーム20及びリンクアーム22がヒンジアーム18に近接した状態で開閉動作を行うことができる。
【0089】
これにより、電子機器1内において開閉装置10の占める体積を小さくすることができ、第1筐体2及び第2筐体3の利用効率を高めることができる。また、開閉装置10の開閉動作途中において、各アーム18,20,22間に異物が入り込むことを防止でき、開閉装置10の信頼性を向上させることができる。
【0090】
次に、上記した実施形態に係る開閉装置10の変形例につい説明する。
【0091】
図15乃至図19は、開閉装置10の変形例である開閉装置100を説明するための図である。図15は、本変形例である開閉装置100が設けられる電子機器1を示している。図16はY1方向側に配設される開閉機構111Aを拡大して示す分解斜視図であり、図17はY2方向側に配設される開閉機構111Bを拡大して示す分解斜視図である。また、図18は開閉機構111Aの動作を示す図であり、(A)は閉状態を示し、(B)は開状態を示している。更に、図19は開閉機構111Bの動作を示す図であり、(A)は閉状態を示し、(B)は開状態を示している。
【0092】
本変形例に係る開閉装置100は、開閉装置10に設けられていたベースシャフト26が取り除かれた構成である点、及び一対の開閉機構111A,111Bのそれぞれにヒンジユニット30を設けた構成である点を除き、図1乃至図14を用いて説明した開閉装置10と略同一構成である。
【0093】
このため、開閉装置10の変形例である開閉装置100を説明するに際し、図1乃至図14に示した開閉装置10の構成と対応する構成については同一符号を付して、その説明は省略するものとする。更に、本変形例に係る開閉装置100の説明においては、開閉装置10と異なる構成を主に説明するものとする。
【0094】
図15に示されるように、本変形例に係る開閉装置100が配設される電子機器1は、第2上部半体3Aに液晶表示装置4Aを設けると共に、第1上部半体2Aにも液晶表示装置4Bを設けた構成としている。また本変形例においても、一対の開閉機構111A,111BがY1,Y2方向に離間して配設されている。
【0095】
ここで、図3に示された開閉装置10と、図15に示された開閉装置100とを比較する。すると、図3に示された開閉装置10では開閉機構11Aと開閉機構11Bとの間にベースシャフト26が設けられ、各開閉機構11A,11Bが連結された構成とされている。
【0096】
これに対して本変形例に係る開閉装置100では、開閉機構111Aと開閉機構111Bは各々独立しており、各開閉機構111A,111B間にベースシャフトが設けられない構成となっている。本変形例のように、ベースシャフトを用いない構成とすることにより、第1筐体2に搭載される搭載部品の配設スペースに余裕を持たせることが可能になる。
【0097】
具体的には、本変形例のように第1筐体2に液晶表示装置4Bを搭載する場合、液晶表示装置4Bはある程度の厚みを有するため、図3に示すベースシャフト26を有した開閉装置10を用いた場合には、ベースシャフト26の配設位置に液晶表示装置を配設することができなかった。
【0098】
これに対して本変形例に係る開閉装置100では、ベースシャフトを設けていないため、開閉機構111Aと開閉機構111Bとの間に液晶表示装置等の部品を配設することが可能になる。よって本変形例に係る開閉装置100では、液晶表示装置4Bを第1筐体2に搭載した場合には、液晶表示装置4Bを開閉機構111Aと開閉機構111Bとの間に配設できるため、第1下部半体2BのX1方向側の長手方向側縁に近接するよう液晶表示装置4Aを配設することが可能となる。
【0099】
この構成によれば、第1筐体2に対して第2筐体3を開いた際、図15に示すように、第1上部半体2A(第1筐体2)に配設された液晶表示装置4Bを第2上部半体3Aに配設された液晶表示装置4Aに極めて近接させることができる。これにより、二つの液晶表示装置4A,4Bはあたかも一つの液晶表示画面のようになり、液晶表示装置4A,4Bの視認性を高めることができる。
【0100】
また、液晶表示装置以外の部品を開閉機構111Aと開閉機構111Bとの間に配設した場合には、その配設分だけ省スペース化を図ることができ。よって、この構成とした場合には、電子機器1の小型化を図ることができる。
【0101】
また、本変形例に係る開閉装置100では、各開閉機構111A,111Bを独立させた構成としたことに伴い、各開閉機構111A,111Bにそれぞれヒンジユニット30を設けた構成とした。このヒンジユニット30は、前記した開閉装置10のY2方向側に配設される開閉機構11Bに取り付けられるものと同一構成とされている。
【0102】
開閉機構111Aと開閉機構111Bが独立した構成とした場合、図18(A),(B)に示すように、開閉機構111Aは開閉機構111Bに拘らず固定プレート16に対してヒンジアーム18を図中矢印P1,P2に回転させることが可能である。同様に、図19(A),(B)に示すように、開閉機構111Bは開閉機構111Aに拘らず固定プレート12に対してヒンジアーム18を図中矢印P1,P2に回転させることが可能である。
【0103】
このように、各開閉機構111A,111Bが独立した構成において、一方の開閉機構にのみヒンジユニット30を設けると、第1筐体2に対して第2筐体3を開閉操作した際、ベースシャフトが存在しないため、一方の開閉機構にのみヒンジユニット30の回転トルクが印加されることになる。この構成では、ヒンジユニット30の回転トルクが偏って第1筐体2及び/或いは第2筐体3に印加されることとなり、安定した開閉動作が行われないおそれがある。しかしながら本変形例に係る開閉装置100では、各開閉機構111A,111Bの双方にヒンジユニット30を設けた構成としているため、各開閉機構111A,111Bを独立させても安定した開閉動作を行うことが可能となる。
【0104】
また本変形例では、開閉機構111A,111Bの外側にヒンジユニット30を配設する構成とした。即ち、開閉機構111Aにおいてはヒンジユニット30をヒンジアーム18のY1方向側に配設し、開閉機構111Bにおいてはヒンジユニット30をヒンジアーム18のY2方向側に配設した。この構成とすることにより、一対の開閉機構111A,111B間にヒンジユニット30が存在しない構成となるため、前記した液晶表示装置や部品の配置の自由度を高めることができる。
【0105】
また、本変形例に係る開閉装置100と開閉装置10との相違点としては、開閉装置10では移動プレート14を内側プレート23と外側プレート24を組み合わせる構成であるのに対し、本変形例では移動プレート114A,114Bをプレス加工により一体成形した構成とした点がある。また本変形例では、ラッチ収納部24dを覆う天板123を独立した構成とし、これを移動プレート114A,114Bに図示しないねじにより固定する構成としている。この本変形例の構成によれば、移動プレート114A,114Bが一体化されるため組み立て性の向上を図ることができる。
【0106】
なお、開閉装置10の構成と開閉装置100の構成では、他にも種々の相違点が存在するが、この相違点は設計的な相違点が主であるため、その説明については省略するものとする。
【0107】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0108】
1 電子機器
2 第1筐体
3 第2筐体
10,100 開閉装置
11A,11B,111A,111B 開閉機構
12,16,112,116 固定プレート
14,114A,114B 移動プレート
16 支持プレート
18 ヒンジアーム
20 スライドアーム
22 リンクアーム
23 内側プレート
24 外側プレート
26 ベースシャフト
30 ヒンジユニット
31 ヘッドカム
32 スライドカム
33a,33b ヒンジスプリング
34 ヒンジケース
35 ヒンジプレート
40 ラッチカム
40b カム溝
41 ラッチ
41a 突出部
42 ラッチスプリング
43 ラッチプレート
44 スライドアームシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プレートに対して移動プレートを開位置と閉位置との間で移動させる開閉機構を有する開閉装置であって、
前記開閉機構を、
前記固定プレートに回転可能に接続された第1軸部と、前記移動プレートに回転可能に接続される第3軸部と、前記第1軸部と前記第3軸部との間に設けられたスライド溝とを有し、前記第1軸部を中心として回転することにより、前記固定プレートに対して前記移動プレートを閉位置と開位置との間で移動させるヒンジアームと、
前記固定プレートに回転可能に接続された第2軸部と、前記スライド溝にスライド可能に接続される第5軸部とを有したリンクアームと、
一端部に前記移動プレートに回転可能に接続された第4軸部を有すると共に、他端部が前記第5軸部に接続されたスライドアームとを有する構成とし、
前記移動プレートが前記閉位置と前記開位置との間で移動する際、前記ヒンジアーム及び前記リンクアームの回転に伴ない前記第5軸部を前記スライド溝内でスライドし、かつ、前記移動プレートが開位置に移動した際、前記第1筐体の表面と前記第2筐体の表面が略同一平面上に位置する構成としたことを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記移動プレートが開位置に移動した際、前記第4軸部における前記スライドアームの回転を規制するガタ防止機構を設けたことを特徴とする請求項1記載の開閉装置。
【請求項3】
前記ガタ防止機構は、前記第4軸部に同軸的に配設されると共に前記スライドアームと一体的に回転するラッチカムと、該ラッチカムに圧接されるラッチとを有しており、
前記移動プレートが開位置に移動した際、前記ラッチカムに形成されたカム溝に前記ラッチが係合し、前記スライドアームの回転を規制する構成としたことを特徴とする請求項2記載の開閉装置。
【請求項4】
前記開閉機構を離間させて一対配設すると共に、該一対の開閉機構にそれぞれ配設された前記リンクアームの前記第1軸部間を連結アームで連結し、前記一対の開閉機構にそれぞれ配設された前記リンクアームが動機して回転するよう構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記一対の開閉機構のいずれか一方の開閉機構の第1軸部に、トルクを発生させるヒンジユニットを設けたことを特徴とする請求項4記載の開閉装置。
【請求項6】
前記開閉機構を離間させて一対配設すると共に各開閉機構を独立した構成とし、
かつ、前記一対の開閉機構にそれぞれ配設された前記リンクアームの前記第1軸部に、トルクを発生させるヒンジユニットを各々設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−77907(P2012−77907A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94892(P2011−94892)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000176833)三菱製鋼株式会社 (69)
【Fターム(参考)】