説明

間接照明装置

【課題】光源として白色LEDを使用した際に、簡易な構成によって、440〜490nm付近の青色波長成分をさらに効果的に低減させた間接光を得ることのできる間接照明装置を提供する。
【解決手段】光源14からの光を反射面15に反射させた間接光Lによって照明を行う間接照明装置10において、光源14を、白色LED12と赤色LED13とを混在配置して構成することにより、白色LED12からの光による440〜490nmの波長成分の相対的な比エネルギー量を、赤色LEDからの光によって低減させた間接光Lによって照明を行うようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接照明装置に関し、特に、光源からの光を反射面に反射させた間接光によって照明を行う白色発光ダイオードを用いた間接照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内の照明方法として、光源が直接目に入らないことで柔らかい光環境が得られる間接照明が注目されている。間接照明は、光源から反射面に照射した光を反射させ、反射した間接光によって照明を行うようにしたものである。
【0003】
また、近年、青色の光を発する青色発光ダイオード(青色LED)が開発されたことで、青色を励起光とする、寿命が長く電力効率に優れた白色発光ダイオード(白色LED)が注目されており、このような白色LEDを用いた間接照明装置も種々開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。白色発光ダイオードによる白色光は、可視光線の全域に渡って連続したスペクトルにより実現される光であり、人間の眼には光の三原色の混合や補色関係にある2色の混合も白色に見えることから、白色の光が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−211881号公報
【特許文献2】特開2009−283167号公報
【特許文献3】特開2007−227294号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】著者名:George C. Brainard, John P. Hanifin, Jeffrey M. Greeson, Brenda Byrne, Gena Glickman, Edward Gerner, and Mark D. Rollag、タイトル「Action Spectrum for Melatonin Regulation in Humans:Evidence for a Novel Circadian Photoreceptor」、刊行物名:The Journal of Neuroscience、August 15, 2001,21(16):6405-6412
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、白色光のうち、440〜490nm付近の青色波長成分は、特に夜間の光環境下においては、人の生活活動を良好にするメラトニンの分泌に対して好ましくない影響を与えることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。これに対して、間接照明装置において、反射面を構成する材を特定のものとすることで、光源に含まれている各種光成分のうち、464nmをピークとする400nm〜550nmの波長域の光成分を極力吸収して反射させることにより、メラトニンの分泌に影響を与えない間接照明による光空間を作りだせるようにした間接照明装置も開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献3の間接照明装置では、間接照明の光源が蛍光灯や白熱電球である場合には、440〜490nm付近の青色波長成分を効果的に吸収した間接光を得ることができるが、光源が440〜490nm付近の青色波長成分をピークとする白色LEDである場合には、これらの光成分を十分に吸収した間接光を得ることが難しいことから、光源として白色LEDを使用した際に、簡易な構成によって、440〜490nm付近の青色波長成分の相対比率をさらに効果的に低減させるとともに、赤色波長成分の適正な相対比率を確保させた間接光を得ることができるようにする新たな技術の開発が望まれている。
【0008】
本発明は、光源として白色LEDを使用した際に、簡易な構成によって、440〜490nm付近の青色波長成分の相対比率をさらに効果的に低減させるとともに、赤色波長成分の適正な相対比率を確保させた間接光を得ることのできる間接照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光源からの光を反射面に反射させた間接光によって照明を行う間接照明装置において、前記光源を、白色発光ダイオードと赤色発光ダイオードとを混在配置して構成することにより、前記白色発光ダイオードからの光による440〜490nmの波長成分の相対的な比エネルギー量を、前記赤色発光ダイオードからの光によって低減させた間接光によって照明を行う間接照明装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
そして、本発明の間接照明装置は、前記赤色発光ダイオードが、前記白色発光ダイオードに対して10〜100%の数量(白色発光ダイオード及び赤色発光ダイオードの全数量に対して5〜50%の数量)で前記白色発光ダイオードと混在配置されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の間接照明装置は、前記反射面が、当該反射面における分光反射率が、380nm〜780nmの波長範囲において、464nmの波長で25%以下、550nmの波長で40%以下、780nmの波長で35%以上となっている材によって構成されていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の間接照明装置は、前記反射面を構成する材が、オーク、ラバーウッド、メープル、チーク、パイン、チェリー、ウォルナット、竹、MDF、合板、及び木目模様のプリント紙を貼着した平板材からなる群より選ばれる一種の材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の間接照明装置によれば、光源として白色LEDを使用した際に、簡易な構成によって、440〜490nm付近の青色波長成分の相対比率をさらに効果的に低減させるとともに、赤色波長成分の適正な相対比率を確保させた間接光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る間接照明装置の構成を説明する、図2のA−Aに沿った断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る間接照明装置の構成を説明する、図1のB−Bに沿った上面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る間接照明装置の構成を説明する、図1のC部拡大図である。
【図4】実施例で用いた実験室の説明図である。
【図5】白色LEDを光源とする直接照明による分光分布と、白色LEDを光源とする間接照明による分光分布と、白色LEDと赤色LEDとを混在配置したものを光源とする間接照明による分光分布とを比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい一実施形態に係る間接照明装置10は、図1に示すように、例えば住宅の居室部の天井面11に設置されて、白色発光ダイオード(白色LED)12を含む光源14からの光を、反射面15に照射して反射させ、反射した間接光Lによって居室部の照明を行うものである。また本実施形態の間接照明装置10は、白色LED12からの光を、440〜490nm付近の青色波長成分の相対比率を低減させるとともに、赤色波長成分の適正な相対比率を確保させた、メラトニンの分泌に影響を与えない間接光Lとして、居室部の照明を行えるようにする機能を備えている。
【0016】
すなわち、本実施形態の間接照明装置10は、光源14からの光を反射面15に反射させた間接光Lによって照明を行う照明装置において、光源14を、図2に示すように、白色LED12と赤色発光ダイオード(赤色LED)13とを混在配置して構成することにより、白色LED12からの光による440〜490nmの波長成分の相対的な比エネルギー量を、赤色LED13からの光によって低減させた間接光Lによって照明を行うようになっている。
【0017】
本実施形態の間接照明装置10は、図1〜図3に示すように、平面形状が略正方形の上板部21と、上板部21の周縁部から下方に連続して設けられた周壁板部22と、周壁板部22の下端に連続して内側に張り出して設けられた内鍔部23と、内鍔部23の内側先端から上方に起立して設けられた起立板部24とを備える、起立板部24の内側部分が照明用開口面25となった扁平なボックス体26と、このボックス体26の四方の辺部に沿って形成された、周壁板部22の内側面と内鍔部23と起立板部24とで区画されるコの字断面形状の光源用溝部27に設置される、白色LED12及び赤色LED13による光源14とによって構成される。そして、光源14からの光を、反射面25を構成する上板部21の下面や周壁板部22の内側面に照射し、反射させた間接光Lを照明用開口面25から導出させて、居室部の照明を行うようになっている。
【0018】
また、本実施形態では、反射面15となる上板部21の下面や周壁板部22の内側面は、好ましくは、これらの反射面15における分光反射率が、380nm〜780nmの波長範囲において、464nmの波長で25%以下、550nmの波長で40%以下、780nmの波長で35%以上となっている材によって構成されている。
【0019】
ここで、反射面15を構成する上述の物性を備える材としては、好ましくはオーク、ラバーウッド、メープル、チーク、パイン、チェリー、ウォルナット、竹、MDF、合板、及び木目模様のプリント紙を貼着した平板材からなる群より選ばれる一種の材を用いることができる。また、これらの材による反射面15は、扁平なボックス体26自体をこれらの材を用いて形成することで、上板部21の下面や周壁板部22の内側面に設けることができる他、別の材料でボックス体26を形成すると共に、上板部21の下面や周壁板部22の内側面を覆ってこれらの材を装着接合することで、これらの材による反射面15とすることもできる。
【0020】
上述の物性を備える材によって反射面15を構成することで、当該反射面15において光源14からの光を反射させる際に、メラトニンの分泌を阻害する400nm〜550nmの波長域にある光成分を効果的にカットすることが可能になり、440〜490nm付近の青色波長成分の相対比率をさらに効果的に低減させた間接光Lを得ることが可能になる。
【0021】
さらに、本実施形態では、ボックス体10の四方の周壁板部22の下端に連続して、内鍔部23とは反対側の外側に張り出す外鍔部28が設けられており、周壁板部22の下端部において、内鍔部23と外鍔部28とは、周壁板部22と共に倒立略T字断面形状を形成している。間接照明装置10を天井面11に設置する際に、例えば天井部分に造作部材として組み付けられた野縁29による略正方形の枠内に、ボックス体10を嵌め込み、外鍔部28を野縁29の下面に押し当てるようにして当該野縁29に向けてビス30を打ち込むことで、間接照明装置10を天井面11に容易に取り付けることができる。取り付けたボックス体10の内鍔部23及び外鍔部28を覆い隠すようにして天井仕上材31が敷設される。
【0022】
そして、本実施形態では、ボックス体10の四方の周壁板部22に沿ったこれらの内側の各光源用溝部27には、当該光源用溝部27に沿って内鍔部23の上面に設置された取付台16に支持させて、複数の白色LED12と複数の赤色LED13とが、これらを混在配置した光源14として設けられている。すなわち、複数の白色LED12と複数の赤色LED13とは、例えば各取付台16の長手方向に所定のピッチで一列に配置されることで、これらが一体となった光源14を構成している。
【0023】
ここで、白色LED12及び赤色LED13の配設ピッチは、5〜50mmとすることが好ましい。なお、白色LED12及び赤色LED13は、2列以上又はランダムに配置して光源14とすることもできる。
【0024】
また、白色LED12と混在配置される赤色LED13の数量は、白色LED12の5〜50%の数量であることが好ましく、10〜30%の数量であることがさらに好ましい。赤色LED13の数量が多すぎると、発光色がピンク色になることで室内照明として違和感を生じさせることになり、少なすぎると、発光色が白色となって440〜490nm付近の青色波長成分の相対比率を効果的に低減さることができなくなる。また赤色LED13は白色LED12の間に同じピッチで配設されるようにすることが好ましい。
【0025】
さらに、本実施形態では、白色LED12と混在配置される発光ダイオードとして、赤色LED13が用いられている。白色LED12と混在配置される発光ダイオードとして赤色LED13を用いることにより、赤色波長成分の適正な相対比率を確保させた、従来の白熱電球に近い照明の色をつくることが可能になる。
【0026】
そして、上述の構成を備える本実施形態の間接照明装置10によれば、光源14として白色LED12を使用していても、簡易な構成によって、440〜490nm付近の青色波長成分の相対比率を効果的に低減させるとともに、赤色波長成分の適正な相対比率を確保させた間接光Lを得ることができる。すなわち、本実施形態によれば、光源14を、白色LED12と赤色LED13とを混在配置して構成しているので、白色LED12からの光による440〜490nmの波長成分の相対的な比エネルギー量を赤色LEDからの光によって効率良く低減させた間接光Lを得ることが可能になり、このような間接光Lによって照明を行うことで、人にとって自然な好ましい間接照明による光環境を形成することが可能になる。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の間接照明装置は、居室部の天井面の他、壁面等のその他の部位に設置して用いることもできる。また、光源からの光を反射させる反射面は、当該反射面における分光反射率が、380nm〜780nmの波長範囲において、464nmの波長で25%以下、550nmの波長で40%以下、780nmの波長で35%以上となっている材によって構成されている必要は必ずしもなく、その他の種々の材による反射面であっても良い。反射面は、例えば居室部に設けられたカーテン等によるものであっても良い。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例により、本発明の間接照明装置をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
〔実験概要〕
奥行きが3.64m、天井高さが2.35mの10畳(16.6m2)の広さの部屋を実験室とした。実験室の天井、壁は、白色クロス仕上げ、床はフローリング仕上げでライトオーク色とした。天井、壁、床の反射率は、それぞれ0.88、0.68、0.22である。
【0030】
図4に示すように、実験室の奥行き方向の1辺にTVボードを設置した。TVボードの下面に、床面を照射する向きでLEDランプを設置し、比エネルギーを測定した。TVボードは幅480mm×高さ300mm×長さ2000mmの大きさのものである。LEDランプは、複数の白色LEDを一列に配置した直径20mm、長さ1700mmの白色LEDランプと、同じ数の複数の赤色LEDを一列に配置した直径20mm、長さ1700mmの赤色LEDランプの2本のLEDランプを、互いに接して、TVボードの前面から50mmの位置に設置した。
【0031】
2本のLEDランプを共に点灯させ、間接光の比エネルギーを測定することで、実施例1の分光分布を解析した。また、白色LEDランプのみを点灯させ、直接光の比エネルギーを測定することで、比較例1の分光分布を解析した。さらに、白色LEDランプのみを点灯させ、間接光の比エネルギーを測定することで、比較例2の分光分布を解析した。比エネルギーは、分光放射輝度計CS・2000(コニカミノルタ製)に照度測定用レンズを装着して測定した。間接光は図4の(A)の位置で、間接光は図4の(B)の位置で各々測定した。実験結果を図5に示す。
【0032】
図5に示す実験結果によれば、白色LEDを光源とする直接照明による比較例1の分光分布では、人が青色の光と認識する470nm前後の波長域の光成分がピークとなっており、また白色LEDを光源とする間接照明による比較例2の分光分布では、木質材料による反射面で反射されることで、470nm前後の波長域の光成分の比エネルギー量が小さくなってはいるものの、依然として470nm前後の波長域の光成分にピークが残っていることが判明する。これに対して、白色LEDと赤色LEDとを混在配置したものを光源とする本発明に係る実施例1の間接照明による分光分布では、人が赤色の光と認識する630nm前後の波長域の光成分がピークとなっており、且つ470nm前後の波長域の光成分の相対的な比エネルギー量が効果的に低減されていることが判明する。
【符号の説明】
【0033】
10 間接照明装置
11 天井面
12 白色発光ダイオード(白色LED)
13 赤色発光ダイオード(赤色LED)
14 光源
15 奥部閉塞部材
21 上板部
22 周壁板部
23 内鍔部
24 起立板部
25 照明用開口面
26 ボッ クス体
27 光源用溝部
28 外鍔部
L 間接光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を反射面に反射させた間接光によって照明を行う間接照明装置において、
前記光源を、白色発光ダイオードと赤色発光ダイオードとを混在配置して構成することにより、前記白色発光ダイオードからの光による440〜490nmの波長成分の相対的な比エネルギー量を、前記赤色発光ダイオードからの光によって低減させた間接光によって照明を行う間接照明装置。
【請求項2】
前記赤色発光ダイオードは、前記白色発光ダイオードに対して10〜100%の数量で前記白色発光ダイオードと混在配置されている請求項1記載の間接照明装置。
【請求項3】
前記反射面は、当該反射面における分光反射率が、380nm〜780nmの波長範囲において、464nmの波長で25%以下、550nmの波長で40%以下、780nmの波長で35%以上となっている材によって構成されている請求項1又は2記載の間接照明装置。
【請求項4】
前記反射面を構成する材は、オーク、ラバーウッド、メープル、チーク、パイン、チェリー、ウォルナット、竹、MDF、合板、及び木目模様のプリント紙を貼着した平板材からなる群より選ばれる一種の材である請求項3記載の間接照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−48848(P2012−48848A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187326(P2010−187326)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】