説明

間接転写印刷装置及び間接転写印刷方法

【課題】IDカード等の間接転写印刷装置において中間転写媒体の無駄を削減し、発行時間を短縮する方法と装置の提供を課題とする。
【解決手段】受像層を有する中間転写媒体の受像層上に転写インクを有するインクリボンを介してサーマルヘッドを当て、このサーマルヘッドの発熱制御により転写インクからなる画像を中間転写媒体の受像層上に転写する一次転写手段と、中間転写媒体の受像層を被転写媒体上に当て中間転写媒体を介して被転写媒体を加熱加圧して画像を有する受像層を被転写媒体に転写する二次転写手段とを含む間接転写印刷装置であって、該中間転写媒体が枚葉シート形状であることを特徴とする間接転写印刷方法と装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写印刷によりIDカードや旅券冊子等の印刷を行う装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりロール状に巻かれた中間転写フィルムを引き出して、受像層の画像を施し(一次転写)たのち、熱圧で最終媒体であるカードや冊子に再転写(二次転写)して印刷を行う方法があり、おもに偽造改ざん防止を必要とするメディアにおいて利用されてきた。 図5にはこの代表的な中間転写印刷装置の一例の概略図を示した。
【0003】
中間転写フィルムはロール状に巻かれた供給ロール52から送り出され、一次転写部と二次転写部を経て、巻き取りロールに回収される。例では一次転写にサーマルヘッド52とインクリボン50を使用してプラテンロール53上でサーマルヘッド52によってインクリボン50から中間転写フィルムに転写する熱転写方式を採用している。この一時転写はインクリボン50上に面順次に設けられた3色(イエロー、マゼンタ、シアン)ないしブラックを加えた4色のインキパネルを中間転写フィルムの同じ位置に繰り返し転写するので完了するまでに中間転写フィルムの前後往復を繰り返す必要があり時間がかかる。この一次転写が完了すると、上下動機構を備えたヒートローラ55でレール57上を搬送されるトレイ56に被印画面を上にして固定されたパスポート等の冊子58面上に加圧により受像層ごと画像を転写する二次転写が開始される(特許文献1、2)。
【0004】
この方法では一次転写と二次転写は順次行なうしかなく、また二次転写終了後は次の印画の準備のため中間転写フィルムを巻き戻す必要がある。
【0005】
ロール状の連続フィルムを中間転写フィルムとして用いる場合であっても、一次転写機構と二次転写機構の間にフィルムのバッファ機構を持たせ、それぞれを間隔を明けて同時に処理を行う方法もあるが、それぞれの転写機構に必要なフィルムテンションを安定的に与えることが出来ないうえに機構やコントロールが複雑になり、処理時間が増えるといったデメリットがあった。
【0006】
一方画質という面では、一次転写中に適正にフィルムテンションを与えられないと、インクリボンのインクがフィルムに転写した後の剥離時にインクの粘着性によりフィルムが引っ張られてしまう結果、剥離の角度が安定せず印画画像に濃淡や筋状のムラが発生する。
【0007】
また二次転写中に適正にフィルムテンションが与えられないと、フィルムに皺が発生して転写画像に影響を与えるほか、中間転写フィルムの層に施したホログラムや回折格子等が壊れて乱反射するようになり、白い筋として可視化する。
【0008】
一次転写と二次転写同時に処理を行う場合、それぞれに精密なテンションコントロールが必要である。ロール状の中間転写フィルムでは独立にこれらを同時にコントロールすることが困難で、枚葉シート状の中間転写媒体(以下、中間転写シートとも呼ぶ)を用いることで、一次転写、二次転写を完全に独立させて処理する必要があるという結論に至った。
【特許文献1】特開2000−190638号公報
【特許文献2】特開平11−300998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑み、IDカード等の間接転写印刷装置において中間転写媒体の無駄を削減し、発行時間を短縮する方法と装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、受像層を有する中間転写媒体の受像層上に転写インクを有するインクリボンを介してサーマルヘッドを当て、このサーマルヘッドの発熱制御により転写インクからなる画像を中間転写媒体の受像層上に転写する一次転写手段と、中間転写媒体の受像層を被転写媒体上に当て中間転写媒体を介して被転写媒体を加熱加圧して画像を有する受像層を被転写媒体に転写する二次転写手段とを含む間接転写印刷装置において、該中間転写媒体が枚葉シート形状であることを特徴とする間接転写印刷装置である。
【0011】
請求項2の発明は、前記枚葉シート形状の中間転写媒体が前方把持領域と後方把持領域を有し、前方把持領域に当接可能な前方把持手段と後方把持領域に当接可能な後方把持手段を有するあることを特徴とする請求項1に記載の間接転写印刷装置である。
【0012】
請求項3の発明は、受像層を有する中間転写媒体の受像層上に転写インクを有するインクリボンを介してサーマルヘッドを当て、このサーマルヘッドの発熱制御により転写インクからなる画像を中間転写媒体の受像層上に転写する一次転写工程と、中間転写媒体の受像層を被転写媒体上に当て中間転写媒体を介して被転写媒体を加熱加圧して画像を有する受像層を被転写媒体に転写する二次転写工程とを含む間接転写印刷方法において、該中間転写媒体が枚葉シート形状であることを特徴とする間接転写印刷方法である。
【0013】
請求項4の発明は、前記枚葉シート形状の中間転写媒体が前方把持領域と後方把持領域を有し、かつ前方把持領域に当接可能な前方把持手段と後方把持領域に当接可能な後方把持手段を有し、一次転写工程で該中間転写媒体の前方把持領域を一対の搬送ローラからなる前方把持手段により搬送し、同時に該中間転写媒体の後方把持領域を、後方把持手段で把持することにより中間転写媒体の搬送方向にテンションを加えることを特徴とする請求項3に記載の間接転写印刷方法である。
【0014】
請求項5の発明は、二次転写工程で、前記中間転写媒体の後方把持領域を、後方把持手段により把持し、中間転写媒体の搬送方向にテンションを加えることを特徴とする請求項4に記載の間接転写印刷方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る間接転写印刷装置によれば、従来ロールフィルムであった前記中間転写フィルムを枚葉型のシート形状とし、複数の前記シートを一次転写と二次転写時を独立的に安定して進行する間接転写印刷方法を可能とした。これにより、シートを二次転写させる際には次の印画タスク対象であるシートに対し一次転写を同時処理させることが可能となる。また、二次転写後に中間転写シートを戻して次の使用パネルを一次転写部にセットする必要がなく、インクフィルムを一定方向に搬送しながら順次中間転写媒体である中間転写シートを供給して行けばよい。これらの並行処理により発行時間を格段に短縮できる。
【0016】
請求項2に係る間接転写印刷装置によれば、図2に示すように前記中間転写シート1には画像印画領域82の前後に把持領域が設けられている場合に、前方のこの領域(前方把持領域83)を搬送ローラなどで把持してフィルムが搬送できる。また一次転写時には後方の把持領域(後方把持領域84)もローラなどで把持し、搬送に対向する力を加えフィ
ルム内にテンション応力を発生させる。これにより搬送が安定するとともに、インク冷却後の剥離を安定的に行うことが可能になる。
【0017】
請求項3に係る間接転写印刷方法によれば、受像層を有する中間転写媒体の受像層上に転写インクを有するインクリボンを介してサーマルヘッドを当て、このサーマルヘッドの発熱制御により転写インクからなる画像を中間転写媒体の受像層上に転写する一次転写工程と、中間転写媒体の受像層を被転写媒体上に当て中間転写媒体を介して被転写媒体を加熱加圧して画像を有する受像層を被転写媒体に転写する二次転写工程とを含む間接転写印刷方法であって、該中間転写媒体が枚葉シート形状であることによって中間転写媒体の無駄を削減し発行時間を格段に短縮できる。
【0018】
請求項4に係る間接転写印刷方法によれば、一次転写工程で該中間転写媒体の前方把持領域を一対の搬送ローラからなる前方把持手段により搬送し、同時に該中間転写媒体の後方把持領域を、後方把持手段で把持することにより中間転写媒体にテンションを加えることによって美しい仕上がりの転写面を得ることが出来る。
【0019】
請求項5に係る間接転写印刷方法によれば、二次転写時には前項で説明した前方把持領域83をローラ搬送し二次転写を進行させるとともに、後方把持領域をローラなどで把持し、中間転写シートにヒートローラと垂直方向のテンションを加えることでフィルムの皺発生や蒸着層の破壊を抑える。これにより美しい仕上がりの転写面を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の一つについて図を参照しながら説明する。
図1は本発明の中間転写印刷装置の一例の内部構成の概念図である。
【0021】
シートホッパ30内の中間転写シート1は持ち上げバー36で上方に押されており、ピックローラ31によりガイド経路内に送られる。中間転写シート1はシート搬送ローラ32を通ってプラテンローラ11部にて印画される。印画の終わった中間転写シート1はさらに搬送路33を通ってヒートローラ22の直下まで搬送される。ここで中間転写シート上の受像層は冊子9のページに転写され、転写の終わった中間転写シートは搬送路34によって搬送され、シート排出部35に排出される。
【0022】
一方インクリボン8はリボン搬送ローラ14の駆動力により、転向ローラ15、剥離バー16を介して巻き取りロール17に巻かれる。インキリボン上にはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなど印画に必要なインクパネルが用意されている。
【0023】
冊子9は冊子ピックローラ41によって搬送路43を通り、ヒートローラ22とヒートプラテン23とで中間転写シート1とともに加圧され、ページ上に中間転写シートの受像層を転写した後、剥離ローラ25にて中間転写シートと分離して、冊子は搬送路44に沿って送られる。そして出来上がった冊子は冊子スタッカ45に蓄積される。
【0024】
シートホッパ30から出た中間転写シート1は搬送路32に沿って搬送され、プラテンローラ11がサーマルヘッド10と離れた位置にあるときに、中間転写シート1はシート搬送ローラ12とシート搬送ローラ13に橋渡しされるまで送られる。その後、プラテンローラ11はサーマルヘッド10に接近し、中間転写シート1はプラテンローラ11表面上に沿って巻きつけられる。そしてインクリボン8を挟みながら中間転写シート1の画像印画領域82の端部にサーマルヘッド10が当たるように圧着される。
【0025】
この状態から、サーマルヘッド10は画像データに合わせて発熱を開始し、それと同時にシート搬送ローラ12は所望の距離だけシートを下方に送り、リボン搬送ローラ14も
同時にインクリボン8を下方に送る。これによりインクリボン8上のインクは中間転写シート1上に転移し画像が形成される。
【0026】
この工程においてシート搬送ローラ13はトルクリミッタ機構(図示せず)により中間転写シート1の後方把持領域84を押さえており、中間転写シート1に対して搬送方向のテンションをかけている。これは中間転写シート1をプラテンローラ11表面に対して押し付ける効果があり、結果として中間転写シート1とプラテンローラ11表面で相互間に滑りのない安定した送りが実現される。中間転写シート1の受像面に転移し接着したインクは、サーマルヘッド10先端に位置する剥離バー16部にて剥離され、インクリボン8から離れる。
【0027】
印画動作が行われている間に、冊子9は冊子ピックローラ41によって冊子ホッパー40から排出され、冊子フィードローラ46とゲート47の間を通り、搬送路43の駆動力により図の右方向に搬送される。このときヒートローラ22と剥離ローラ25は待機状態でありヒートプラテン23と離れた位置にある。この状態で冊子9の背表紙部分がヒートプラテン23の軸上に来るまで搬送され、本文部は引き込み板26のガイドにより搬送路44へ引き込まれる。この後、開かれた転写ページは開きローラ24によって弛みを伸ばされ、引き込み板26はヒートローラ22との干渉を退避する位置へ移動する。これで冊子9は待機完了となる。
【0028】
画像の形成が完了した中間転写シート1は搬送路37を通り、開きローラ24とシート搬送ローラ21の間に橋渡しされるように搬送される。そして中間転写シート1の画像印画領域82が端部がヒートプラテン軸上に来るまで開きローラ24によって冊子に押し付けられながら位置決めされる。位置決めが完了したときシート搬送ローラ21は中間転写シート1の後方把持領域84を把持している。この状態で圧着されたシート搬送ローラ21B軸は駆動側のシート搬送ローラ21Aを中心に回転させ、シート搬送方向をシート排出部35の方向に向けることが可能である。
【0029】
この後、加熱されたヒートローラ22は下降し、直下のヒートプラテン23に加圧する。同時に剥離ローラ25は中間転写シート1を押し下げる。
さらにヒートプラテン23の回転駆動によって冊子9と中間転写シート1とともに図の右方向に搬送する。これにより中間転写シート1上の受像層は冊子9のページに転写される。同時に冊子9は搬送路44の駆動により冊子スタッカ45の方向へ移動させ、また同時に中間転写シート1はシート搬送ローラ21の駆動により、シート排出部35の方向に移動させる。
【0030】
さらにこの時は中間転写シート1の画像印画領域82または前方把持領域83に対して開きローラ24を圧着させ冊子9の移動により開きローラ24を回転させる。これにより図示していない摩擦クラッチによる回転抵抗によって開きローラ24は中間転写シートにテンションを与えることが出来る。これは転写進行中の中間転写シートに可視または不可視の皺発生を抑え、出来上がりの転写物に皺または受像層と併設される蒸着層の白化現象を防止する効果がある。
【0031】
転写が進むにつれ、一時的に接着した前記受像層と前記冊子ページは、剥離ローラ25において分離される。さらに転写が進み冊子ページの後端が剥離ローラ25の位置まで来ると完全に冊子9と中間転写シート1は分離され、冊子9は完成品として冊子スタッカ45へ排出される。また画像印画領域82の受像層部が転写されて抜けている中間転写シート1はシート排出部35へ排出される。
【0032】
印刷が終了して中間転写シート1がヒートローラ22付近に搬送された後は、印画部に
て次の動作を行うことが可能である。すなわち、次の中間転写シート1に対して持ち上げバー36で加圧し、ピックローラ31の駆動でシートホッパ30から搬送を開始する。そして前回行ったシートの印刷工程を繰り返す。この印画動作は先の転写動作と同時に行うことで、冊子の発行処理時間を大きく短縮することが出来た。
【0033】
本発明の中間転写印刷装置に用いる中間転写シートは通常、基材と製品に転写した絵柄を保護するための転写保護層及びインクリボンから転写される熱溶融性インクまたは熱昇華性インクを定着させる受像層からなる。基材は熱転写記録媒体の基材として使用されているものと同等な機械的強度、耐熱性のあるプラスチックフィルムが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリイミド、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチックフィルム、コンデンサーペーパー、パラフィン紙等の紙類を挙げることができるが、特に好ましいのはポリエチレンテレフタレートである。基材の厚みは特に限定されないが12〜50μmが好ましい。
【0034】
転写保護層は、文字や画像を形成する受像層と基材の間にあり被熱転写体上に、中間記録媒体の転写保護層の反対面からヒートロールやサーマルヘッドによる加熱により転写される、文字や画像を保護するための層であり、熱転写時の剥離性も必要とされる。
【0035】
転写保護層に使用される樹脂としては、セルロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩ビ・酢ビ共重合体、エチレン・酢ビ共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、石油樹脂、塩化ゴム、塩素化ポリオレフィン樹脂等を用いることが出来る。通常転写保護層の厚みは0.5μm〜3μmである。
【0036】
受像層に使用される樹脂としては、セルロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩ビ・酢ビ共重合体、エチレン・酢ビ共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、石油樹脂、塩化ゴム、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられるが被転写材料との熱接着性を考慮して適宜選ばれる。
【0037】
本発明の中間転写印刷装置に用いるインクリボンの基材としては、中間転写シートと同様の耐熱性プラスチックのなかから選ばれ、厚みは4から7μm程度が熱感度の点から好ましい。
【0038】
本発明の中間転写印刷装置に用いるインクリボンのパネル、すなわちイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色を構成する熱転写層は、色材、バインダーを含有する。たとえば、熱転写層が昇華性染料を含む場合、染料としては従来公知のものを用いることができる。具体的には、イエローとしては、カヤセットイエローAG、カヤセットイエローTDN、PYT52、プラストイエロー8040、ホロンブリリアントイエローS6GLPI等が挙げられる。マゼンタとしては、カヤセットレッドB、カヤセットレッド130、セレスレッド7B、マクロレックスレッドバイオレットR等を挙げられる。シアン

しては、カヤセットブルー714、セレスブルーGN、MSブルー50等が挙げられる。
【0039】
昇華性染料との組み合わせで熱転写層に用いるバインダーとしては、従来公知のものが使用でき、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリカーボネート等の耐熱性、染料移行性等に優れた樹脂が使用で
きる。
【0040】
昇華性染料との組み合わせで熱転写層に用いるバインダーのガラス転移温度としては、50℃以上が好ましく、ガラス転移温度が50℃以下であると、熱転写時に熱転写層が被熱転写体に融着しやすくなったり、熱転写記録媒体の保存性に問題が生じたりするため好ましくない。さらに、熱転写層に含まれる昇華性染料とバインダーとの比率は、100:50〜100:300が好ましい。
【0041】
一方、熱転写層が熱溶融性を有する溶融転写層の場合、熱転写層は色材、バインダー、ワックスを含有する。該色材は、公知の顔料を用いることができる。例えば、ブラック単色印字用としてはカーボンブラックが好ましく、多色印字用としては、イエロー、マゼンタ、シアンを形成する顔料及びこの3色の顔料にブラックを加えた4色の顔料を使用する。これら顔料は、1種類もしくは2種類以上組み合わせて使用することも可能である。
【0042】
溶融転写層に使用する有機顔料の例としては、フタルイミド系イエロー、べンズイミダゾロンオレンジ、スルホアミドイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ジケトピロロピロール、キノフタロン、イソインドリノン、ジアミノジアントラキノン等が挙げられる。
【0043】
溶融転写層に使用するバインダーとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ロジン系誘導体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、酸化ワックス等が用いられる。
【0044】
また、受容層としては、熱転写層に昇華性染料を用いる場合には、例えば、染着性を有するブチラール樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアセタール、エポキシ、ケトン、或いはこれらの変性樹脂やブレンド品などの熱可塑性樹脂や、これらの架橋生成物、等を使用することができる。これらは単独でも2種以上を混合してもよい。受像層の膜厚は、薄すぎると画像の反射濃度が低下し、十分な画像を形成することが困難になる。一方、厚すぎると色のにじみ等の画像品位の低下が生じる。従って、一般的には1〜30μm、好ましくは3〜10μmとする。
【0045】
これらの中間転写シートおよびインクリボンの塗工及び乾燥には通常のグラビア印刷やグラビア塗工及び熱風乾燥が賞用されるが特に限定されるものではない。必要に応じてフレキソ印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、ロールコート、ナイフコート、コンマコート、エアナイフコート等の公知の塗工方式や電子線硬化、紫外線硬化等の活性エネルギー線硬化等の公知の乾燥方式を用いることも出来る。
【0046】
なお、印画の際、どの位置で中間転写シート1を止めるかは、中間転写シート1に設けられた、たとえば回折格子レジマーク80により位置決めが行われる。すなわち、中間転写シート1の搬送中にレジマークセンサ38により回折格子レジマークを検出し、ここからの搬送距離を制御することで印画スタート位置を決めている。
【0047】
このように、中間転写シートに透明または不透明のホログラムや回折格子のマークを設けてあると、一次転写の前にこのマーク位置を装置内の検知センサで検出し、検出した位置情報を基準に印画画像を設けることにより印刷画像位置をシート内に設けられた透明回折格子画像や蒸着パターンによる画像に対して整合させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の間接転写印刷装置の一例の内部構成の概念図
【図2】中間転写シートの説明図
【図3】図1の間接転写印刷装置の一次転写機構の説明図
【図4】図1の間接転写印刷装置の二次転写機構の説明図
【図5】代表的な間接転写印刷装置の概念図
【符号の説明】
【0049】
1…中間転写シート
8…インクリボン
9…冊子
10…サーマルヘッド
11…プラテンローラ
12…前方把持手段(シート搬送ローラ)
12A…前方把持ロール
12B…前方把持ロール
13…後方把持手段(シート搬送ローラ)
13A…後方把持ロール
13B…後方把持ロール
14…リボン搬送ローラ
15…転向ローラ
16…剥離バー
17…巻き取りロール
21…シート搬送ローラ
21A…シート搬送ローラ
21B…シート搬送ローラ
22…ヒートローラ
23…ヒートプラテン
24…開きローラ
25…剥離ローラ
26…引き込み板
30…シートホッパ
31…ピックローラ
32…搬送路
33…搬送路
34…搬送路
35…シート排出部
36…持ち上げバー
38…レジマークセンサ
40…冊子ホッパー
41…冊子ピックローラ
43…搬送路
44…搬送路
45…冊子スタッカ
46…冊子フィードローラ
47…ゲート
50…インクリボン
51…中間転写フィルム
52…サーマルヘッド
53…プラテンローラ
54…ピンチローラ
55…ヒートローラ
56…トレイ
57…レール
58…パスポート
80…回折格子レジマーク(図2)
81…画像(図2)
82…画像印画領域(図2)
83…前方把持領域(図2)
84…後方把持領域(図2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受像層を有する中間転写媒体の受像層上に転写インクを有するインクリボンを介してサーマルヘッドを当て、このサーマルヘッドの発熱制御により転写インクからなる画像を中間転写媒体の受像層上に転写する一次転写手段と、中間転写媒体の受像層を被転写媒体上に当て中間転写媒体を介して被転写媒体を加熱加圧して画像を有する受像層を被転写媒体に転写する二次転写手段とを含む間接転写印刷装置において、該中間転写媒体が枚葉シート形状であることを特徴とする間接転写印刷装置。
【請求項2】
前記枚葉シート形状の中間転写媒体が前方把持領域と後方把持領域を有し、前方把持領域に当接可能な前方把持手段と後方把持領域に当接可能な後方把持手段を有するあることを特徴とする請求項1に記載の間接転写印刷装置。
【請求項3】
受像層を有する中間転写媒体の受像層上に転写インクを有するインクリボンを介してサーマルヘッドを当て、このサーマルヘッドの発熱制御により転写インクからなる画像を中間転写媒体の受像層上に転写する一次転写工程と、中間転写媒体の受像層を被転写媒体上に当て中間転写媒体を介して被転写媒体を加熱加圧して画像を有する受像層を被転写媒体に転写する二次転写工程とを含む間接転写印刷方法において、該中間転写媒体が枚葉シート形状であることを特徴とする間接転写印刷方法。
【請求項4】
前記枚葉シート形状の中間転写媒体が前方把持領域と後方把持領域を有し、かつ前方把持領域に当接可能な前方把持手段と後方把持領域に当接可能な後方把持手段を有し、一次転写工程で該中間転写媒体の前方把持領域を一対の搬送ローラからなる前方把持手段により搬送し、同時に該中間転写媒体の後方把持領域を、後方把持手段で把持することにより中間転写媒体の搬送方向にテンションを加えることを特徴とする請求項3に記載の間接転写印刷方法。
【請求項5】
二次転写工程で、前記中間転写媒体の後方把持領域を、後方把持手段により把持し、中間転写媒体の搬送方向にテンションを加えることを特徴とする請求項4に記載の間接転写印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−105322(P2010−105322A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281293(P2008−281293)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】