説明

間欠巻取りユニット

【課題】駆動用一方向クラッチと逆転防止用の一方向クラッチを備えた間欠巻取りユニットにおいて、巻取り対象のトップテープのテンションによるラジアル負荷による付勢ばねの疲労を防止し、長期にわたり間欠巻取りユニットの安定化を図ることである。
【解決手段】入力側の揺動部材24と出力側の巻取り部材38が固定軸部材3の周りに同軸状態に取り付けられ、前記固定軸部材3と巻取り部材38との間に駆動用一方向クラッチ6と逆転防止用一方向クラッチ7がそれぞれ軸方向に並んで介在され、駆動側クラッチ部材9のポケット15が周方向に偏って配置され、該ポケット15の偏り配置された領域以外の外径面にラジアル軸受16が設けられた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テープフィーダユニット等において用いられる間欠巻取りユニットに関し、特に負荷支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チップマウンターに装着されるテープフィーダユニットにおいては、電子部品が収納された搬送テープを間欠的に送るとともに、その搬送テープの蓋の役目を果たすトップテープを剥ぎ取り、剥ぎ取ったトップテープを間欠的に巻取る間欠巻取りユニットが設けられる。
【0003】
従来から知られている間欠巻取りユニットは、入力側となる揺動部材と、出力側となる巻取り部材が固定軸部材上に回転自在に取り付けられ、該固定軸部材と巻取り部材との間に駆動用一方向クラッチと逆転防止用一方向クラッチがそれぞれ軸方向に並んで介在され、前記駆動用一方向クラッチは前記揺動部材と一体化され、かつ固定軸部材に回転自在に嵌合された駆動側クラッチ部材の外径面に所要数のポケットが形成されるとともに、各ポケットの底面に周方向の一定向きに傾斜し相手部材との間でクサビ角θを形成するカム面が形成され、前記ポケットに転動体と付勢ばねが収納され、該付勢ばねにより前記転動体がクサビ角θの狭小方向に付勢され、前記揺動部材の巻取り方向への揺動時に前記駆動用一方向クラッチがロックされ、このとき逆転防止用一方向クラッチはフリーとなる方向性をそれぞれ有する(特許文献1)。
【0004】
前記の間欠巻取りユニットは、揺動部材による一定方向の揺動時に駆動用一方向クラッチがロックして回転しトップテープの巻取りを行い、反対方向への揺動時は逆転防止用一方向クラッチにより巻取り部材の逆転を防止しつつ駆動用一方向クラッチを元の状態に戻す。このような作用を繰返してトップテープの巻取りを行う。
【特許文献1】特開2001−41265号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記間欠巻取りユニットにおいては、その稼動中において駆動用一方向クラッチにトップテープからの張力が常に負荷されており、その負荷部分を該一方向クラッチの転動体が繰り返し通過することになる。その通過の都度転動体にラジアル力が負荷され、転動体がカム面に沿って付勢ばね側へ移動するため、付勢ばねに過大な負荷を及ぼす。これにより付勢ばねの疲労が発生しばね力の早期低下をもたらし、その結果、一方向クラッチの機能が早期に不安定化するに至る問題がある。
【0006】
そこで、この発明は間欠巻取りユニットにおける駆動用一方向クラッチに作用するラジアル負荷が転動体の付勢ばねに及ばないようにして、付勢ばねの長寿命化を図り長期にわたり安定した機能を果たすことができる間欠巻取りユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、この発明は、添付の図面に示したように、入力側の揺動部材24と出力側の巻取り部材38が固定軸部材3の周りに同軸状態に取り付けられ、前記固定軸部材3と巻取り部材38との間に駆動用一方向クラッチ6と逆転防止用一方向クラッチ7がそれぞれ軸方向に並んで介在され、前記駆動用一方向クラッチ6は前記揺動部材24と一体化され、かつ固定軸部材3に回転自在に嵌合された駆動側クラッチ部材9の外径面に所要数のポケット15が形成されるとともに、各ポケット15の底面に周方向の一定向きに傾斜し相手部材との間でクサビ角θを形成するカム面18が形成され、前記ポケット15に転動体11と付勢ばね22が収納され、該付勢ばね22により前記転動体11がクサビ角θの狭小方向に付勢され、前記揺動部材24の巻取り方向への揺動時に前記駆動用一方向クラッチ6がロックされ、このとき逆転防止用一方向クラッチ7はフリーとなる方向性をそれぞれ有する間欠巻取りユニットにおいて、前記駆動用一方向クラッチ6のポケット15が前記駆動側クラッチ部材9の周方向に偏って配置され、該ポケット15の偏り配置された領域以外の外径面にラジアル軸受16が設けられた構成を採用した。
【0008】
前記構成の間欠巻取りユニットは、駆動用一方向クラッチ6のラジアル軸受16がトップテープ50の巻取り時に作用するラジアル負荷を受ける範囲にあるよう位置決めして使用に供される。揺動部材24が巻取り方向に揺動したとき、これと一体の駆動用一方向クラッチ6が一定方向に回転し、転動体11がクサビ角θの部分に噛みこんでロックする。これにより巻取り部材38が回転してトップテープ50の巻取りを行う。このとき、作用するラジアル負荷Rは駆動用一方向クラッチ6のラジアル軸受16により受けられる。
【0009】
また、揺動部材24が前記と反対方向に揺動した場合は駆動用一方向クラッチ6はフリーとなるが、巻取り部材38に逆転方向のトルクが作用すると逆転防止用一方向クラッチ7のころ35がクサビ角δの狭小方向に移動してロックし、巻取り部材38の逆転が防止される。
【発明の効果】
【0010】
この発明の間欠巻取りユニットは以上のように、駆動用一方向クラッチのポケットが偏り配置されるとともに、その偏り配置された領域以外の範囲に設けられたラジアル軸受によってトップテープのテンションによるラジアル負荷を受けるようにしたので、ポケット内に収納された付勢ばねに過大な負荷が作用することが回避され、長期にわたり安定したクラッチ機能を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいてこの発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0012】
実施例の間欠巻取りユニットは、図1に示したように、ハウジング1にねじ2によって固定軸部材3が固定される。固定軸部材3は、ねじ孔を有する筒軸部4の一端につば部5が設けられたものである。
【0013】
前記筒軸部4の外径面において、前記のつば部5とハウジング1との間に、該ハウジング1側に駆動用一方向クラッチ6、つば部5側に逆転防止用一方向クラッチ7が軸方向に並設され、これらの各一方向クラッチ6、7は前記つば部5によって軸方向への抜け出しが防止される。
【0014】
前記の駆動用一方向クラッチ6は、駆動側クラッチ部材9、ころ11、ばね部材12及び外環部材13とから成る(図3、図5参照)。駆動側クラッチ部材9は、前記固定軸部材3に回転自在に嵌合されたスリーブ部9aと、そのスリーブ部9aのハウジング1側端部に形成されたつば部9bとからなり、そのスリーブ部9aに外環部材13が相対回転可能に嵌合される。
【0015】
前記スリーブ部9aの外径面において、周方向約半分の範囲に偏って所要数のポケット15が一定間隔をおいて配置され(図3、図6参照)、そのポケット15の偏り配置されたほぼ半周の領域以外の外径面にラジアル軸受16が形成される。そのラジアル軸受16の周方向中間部分に軸方向の潤滑油溜り溝17が設けられる。
【0016】
前記のポケット15は、その底面に周方向の一定方向に傾斜したカム面18が形成され、そのカム面18とこれに対向した外環部材13内径面に引いた接線とのなす角度をクサビ角θと称する。ポケット15のクサビ角θの拡大側端部にばね収納凹部19が設けられる、ポケット15にころ11が軸方向に挿通される。
【0017】
前記のばね部材12は、図5に示したように、金属板の打ち抜きによって形成された環状部21と、ばね片22とにより形成される。各ばね片22は前記環状部21の外周縁に切り起しによってポケット15に対向し、かつポケット15と同数だけ形成される。ばね片22は高さ方向の中間部で二つ折りに折り曲げられ、それぞれ前記の凹部19に挿通される。各ばね片22は、ころ11をクサビ角θの狭小方向に付勢し、ころ11の姿勢の安定化を図る。なお、前記の外環部材13の外径面に回り止め用の嵌合溝23が形成される。
【0018】
以上の構造からなる駆動用一方向クラッチ6は、そのクラッチ部材9のつば部9bに揺動部材24のボス部25が嵌合される。前記のつば部9b及びボス部25にはそれぞれ回り止め用のDカット部26、26’が設けられる。
【0019】
前記揺動部材24は、ボス部25から外方に約90度の間隔をおいて突き出した2本の揺動アーム27、28を有する。一方の揺動アーム27の下端はケーシング1に対し回転自在に取り付けられ、また他方の揺動アーム28の先端とケーシング1との間に引っ張りコイルばね29が設けられる。
【0020】
前記の逆転防止用一方向クラッチ7は、図4及び図5に示したように、逆転防止側クラッチ部材31の内径面の全周に渡り一定間隔をおいてポケット32が設けられ、各ポケット32の底面に周方向の一定向きに傾斜したカム面33が形成され、そのカム面33とこれに対向した固定軸部材3の筒軸部4の外径面に引いた接線とのなす角度をクサビ角δと称する。ポケット32のクサビ角δの拡大側端部にばね収納凹部34が設けられ、該ポケット32にころ35が軸方向に挿通される。また、ばね収納凹部34に金属片をS字状に屈曲させて形成されたばね片36が前記のばね収納凹部34に挿入され、これにより前記ころ35がクサビ角δの狭小方向に付勢され、ころ35の姿勢の安定化が図られる。前記逆転防止側クラッチ部材31の外径面に回り止め用の嵌合溝37が軸方向に形成される。
【0021】
なお、ケーシング1側から見た駆動用一方向クラッチ6のクサビ角θと逆転防止用一方向クラッチ7のクサビ角δの向きは反対向きである。
【0022】
図1に示したように、前記の固定軸部材3の筒軸部4上に軸方向に並設された前記駆動用一方向クラッチ6と逆転防止用一方向クラッチ7の外径側に巻取り部材38が嵌合される。巻取り部材38は、前記外環部材13とクラッチ部材31の外径に合致するボス部39と、そのボス部39のケーシング1側の端部に設けた巻取りフランジ40からなる。ボス部39の内径面は、前記外環部材13とクラッチ部材31の外径の差異分の段差41が設けられ、その段差41の軸方向の両側において、大径側に外環部材13の嵌合溝23に合致する嵌合リブ42が設けられる。また、小径側には逆転防止側クラッチ部材31の嵌合溝37に合致する嵌合リブ43が設けられる。なお、前記ボス部39の外径面に回り止め用の嵌合溝44が設けられる(図7参照)。
【0023】
前記の巻取り部材38に対向して前記ボス部39にリール45が着脱自在に嵌合される。リール45はボス部46と、そのボス部46の反ケーシング側の端部に巻取りフランジ47が設けられ、ボス部46の内径面に回り止め用の嵌合リブ48(図5参照)が設けられる。前記ボス部46の部分を前記巻取り部材38のボス部39の外径面に着脱自在に嵌合させ、対向した巻取りフランジ40、47の間にトップテープ50を巻取り、満杯になればリール45を交換して巻取りを継続する。
【0024】
実施例の間欠巻取りユニットは以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0025】
図2に示したように、駆動用一方向クラッチ6は、そのラジアル軸受16がトップテープ50の巻取り時に作用するラジアル負荷Rを受ける範囲にあるよう位置決めされる。いま、揺動部材24の揺動アーム27が、コイルばね29の引っ張り力により、図2に示した矢印a方向に揺動したとすると、これと一体の駆動用一方向クラッチ6の駆動側クラッチ部材9が図3の矢印A方向に回転するため、ころ11がクサビ角θの狭小部分に噛みこんでロックする。これにより駆動側クラッチ部材9ともに、外環部材13、巻取り部材38、リール45が回転してトップテープ50の巻取りを行う。このとき、トップテープ50には搬送テープから剥ぎ取られる際のテンションが作用するため、比較的大きいラジアル負荷Rが作用するが、そのラジアル負荷Rは駆動用一方向クラッチ6のラジアル軸受16により受けられ、ころ11で受けることが回避される。
【0026】
このとき逆転防止用一方向クラッチ7は、リール45等とともに逆転防止側クラッチ部材31が図4の矢印Aの方向に回転するので、ころ35はクサビ角δの拡大方向に移動してフリーとなり、トップテープ50の巻取りの妨げとなることがない。また、ポケット32間の柱部30は固定軸部材3に対して非接触状態にあり、かつころ35はフリーであるので、逆転防止用一方向クラッチ7によって前記のラジアル負荷Rを受けることはない。
【0027】
次に、揺動アーム27が前記と反対の矢印b方向に揺動すると、駆動側クラッチ部材9が図3の矢印B方向に回転するので、ころ11がクサビ角θの拡大方向に移動してロックが解除されフリーとなり、巻取り作用が停止される。このとき、トップテープ50に作用するテンションにより巻取り部材38等に逆転方向のトルクが作用すると(図4の矢印C参照)、逆転防止用一方向クラッチ7のころ35がクサビ角δの狭小方向に移動してロックする。これにより巻取り部材38等の逆転が防止される。
【0028】
なお、以上の実施例においては、駆動用一方向クラッチ6のトルクの増大を図るために、駆動側クラッチ部材9の外径面にポケット15を設け、そのポケット15にころ11を収納した構成が採用されており、また、ころ11の長さも相対的に長く形成されている。反対に逆転防止用一方向クラッチ7においては、左程大きなトルクは必要とされないので、ころ35は逆転防止側クラッチ部材31の内径面に設けたポケット32に収納され、また、その長さも相対的に短く形成されている。なお、巻取り条件の如何によっては、前記とは反対に、駆動用一方向クラッチ6のころ11を駆動側クラッチ部材9の内径面に設けたポケットに収納してもよく、また逆転防止用一方向クラッチ7のころ35も逆転防止側クラッチ部材31の外径面に設けたポケットに収納するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例の断面図
【図2】同上の正面図
【図3】図1のX−X線の一部省略断面図
【図4】図1のY−Y線の一部省略断面図
【図5】実施例の分解斜視図
【図6】同上の駆動側クラッチ部材の斜視図
【図7】同上の巻取り部材の斜視図
【符号の説明】
【0030】
1 ハウジング
2 ねじ
3 固定軸部材
4 筒軸部
5 つば部
6 駆動用一方向クラッチ
7 逆転防止用一方向クラッチ
9 駆動側クラッチ部材
9a スリーブ部
9b つば部
11 ころ(転動体)
12 ばね部材
13 外環部材
15 ポケット
16 ラジアル軸受
17 潤滑油溜り溝
18 カム面
19 ばね収納凹部
21 環状部
22 ばね片(付勢ばね)
23 嵌合溝
24 揺動部材
25 ボス部
26、26’ Dカット部
27 揺動アーム
28 揺動アーム
29 コイルばね
30 柱部
31 逆転防止側クラッチ部材
32 ポケット
33 カム面
34 ばね収納凹部
35 ころ(転動体)
36 ばね片(付勢ばね)
37 嵌合溝
38 巻取り部材
39 ボス部
40 巻取りフランジ
41 段差
42 嵌合リブ
43 嵌合リブ
44 嵌合溝
45 リール
46 ボス部
47 巻取りフランジ
48 嵌合リブ
50 トップテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側の揺動部材(24)と出力側の巻取り部材(38)が固定軸部材(3)の周りに同軸状態に取り付けられ、前記固定軸部材(3)と巻取り部材(38)との間に駆動用一方向クラッチ(6)と逆転防止用一方向クラッチ(7)がそれぞれ軸方向に並んで介在され、前記駆動用一方向クラッチ(6)は前記揺動部材(24)と一体化され、かつ固定軸部材(3)に回転自在に嵌合された駆動側クラッチ部材(9)の外径面に所要数のポケット(15)が形成されるとともに、各ポケット(15)の底面に周方向の一定向きに傾斜し相手部材との間でクサビ角θを形成するカム面(18)が形成され、前記ポケット(15)に転動体(11)と付勢ばね(22)が収納され、該付勢ばね(22)により前記転動体(11)がクサビ角θの狭小方向に付勢され、前記揺動部材(24)の巻取り方向への揺動時に前記駆動用一方向クラッチ(6)がロックされ、このとき前記逆転防止用一方向クラッチ(7)はフリーとなる方向性をそれぞれ有する間欠巻取りユニットにおいて、
前記駆動用一方向クラッチ(6)のポケット(15)が前記駆動側クラッチ部材(9)の周方向に偏って配置され、該ポケット(15)の偏り配置された領域以外の外径面にラジアル軸受(16)が設けられたことを特徴とする間欠巻取りユニット。
【請求項2】
前記逆転防止用一方向クラッチ(7)は、前記巻取り部材(38)と一体化され、かつ前記固定軸部材(3)に回転自在に嵌合された逆転防止側クラッチ部材(31)を有し、該逆転防止側クラッチ部材(31)の内径面に周方向に一定間隔をおいて所要数のポケット(32)が形成されるとともに、該ポケット(32)の底面に周方向の一定向きに傾斜し相手部材との間でクサビ角δを形成するカム面(33)が形成され、前記ポケット(32)に転動体(35)と付勢ばね(36)が収納され、該付勢ばね(36)により前記転動体(35)がクサビ角δの狭小方向に付勢されたことを特徴とする請求項1に記載の間欠巻取りユニット。
【請求項3】
前記固定軸部材(3)が、ケーシング(1)に対しねじ止めされたつば部(5)を有する筒軸部(4)により形成され、そのつば部(5)によって前記駆動用及び逆転防止用の各一方向クラッチ(6)(7)及び巻取り部材(38)の抜け出しが防止されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の間欠巻取りユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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