説明

間知ブロックによる造成壁面の緑化構造

【課題】間知ブロックによる造成壁面に簡易且つ容易に施工でき、植生による緑化を効果的に図ることができると共に、維持管理が容易な間知ブロックによる造成壁面の緑化構造を提供する。
【解決手段】間知ブロック13による造成壁面14に沿って、植生が植設される植生基盤材15を備える矩形形状の緑化ユニット16を、複数並べて設置することにより造成壁面14の緑化を図るようにした緑化構造10であって、緑化ユニット16は、矩形法枠17の内側に、植生基盤材15として乾燥無炭化ピート塊によるブロック体18を嵌め込んで形成され、各緑化ユニット16の矩形法枠17を造成壁面14に各々固定して構成される。乾燥無炭化ピート塊によるブロック体18は6面体形状を備えており、縦横に複数並べて配置された状態で矩形法枠17の内側に嵌め込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間知ブロックによる造成壁面の緑化構造に関し、特に間知ブロックによる造成壁面に沿って、植生基盤材を備える矩形形状の緑化ユニットを複数設置することにより、法面の緑化を図るようにした間知ブロックによる造成壁面の緑化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
都市化が進む中、コンクリート等を用いて種々の人工構造物が形成され、自然な景観や環境が失われていることから、街中において植生による緑化を図ることが求められており、例えば住宅の屋上や屋根、或いは構造物の壁面を対象とした緑化技術が種々開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
また、道路、宅地、河川等に面した急傾斜の地山斜面の安定化と緑化を図ることにより、有効な環境保全を実現できるようにした斜面の緑化工法も開発されている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4の緑化工法は、金網等で作成した複数の客土篭を、斜面に沿って上下方向に延設させた複数の支持体に両端を支持させて横架し、客土篭と斜面とで包囲された略U字形の客土空間内に客土を行って植生を植栽するものである。
【特許文献1】特開平7−213159号公報
【特許文献2】特開2002−153119号公報
【特許文献3】特開2004−254559号公報
【特許文献4】特開平6−294141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、例えば造成地盤等における急傾斜の法面を防護する工法として、間知ブロック(間知石)を用いて法面を覆う工法が採用される場合がある。間知ブロックは、石垣用の石の一種であって、略角錐形状を有しており、略平坦な底面を表面側に配置して、法面に沿って縦横に並べて積み上げることにより、法面を覆う造成壁面を形成するものである。
【0005】
また、このような間知ブロックによる造成壁面は、道路に面した部分に設けられることが多く、景観上の要所となっているにもかかわらず、植生による緑化を図ることが困難な場所として扱われている。したがって、このような間知ブロックによる造成壁面を効果的に緑化することのできる技術の開発が望まれており、これによって、自治体が注力する「接道緑化率の増強」の要望に沿うことも可能になる。
【0006】
しかしながら、従来の住宅の屋上や屋根、或いは構造物の壁面を対象とした緑化技術では、これらを、漏水が生じても問題の生じない間知ブロックによる屋外の造成壁面に転用した場合に、イニシャルコストが高くなると共に、散水等を頻繁に行う必要を生じてメンテナンスの負担が大きくなる。また、従来の地山斜面の緑化を図る技術では、これを間知ブロックによる造成壁面に転用した場合に、相当量の客土を安定した状態で壁面に保持しておくことが困難になると共に、散水等を頻繁に行う必要を生じてメンテナンスの負担が大きくなる。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、間知ブロックによる造成壁面に簡易且つ容易に施工することができ、植生による緑化を効果的に図ることができると共に、維持管理が容易な間知ブロックによる造成壁面の緑化構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、間知ブロックによる造成壁面に沿って、植生が植設される植生基盤材を備える矩形形状の緑化ユニットを、複数並べて設置することにより造成壁面の緑化を図るようにした緑化構造あって、前記緑化ユニットは、矩形法枠の内側に、前記植生基盤材として乾燥無炭化ピート塊によるブロック体を嵌め込んで形成され、各緑化ユニットの矩形法枠を前記造成壁面に各々固定して構成される間知ブロックによる造成壁面の緑化構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造によれば、前記ブロック体が6面体形状を備えており、縦横に複数並べて配置された状態で前記矩形法枠の内側に嵌め込まれることが好ましい。
【0010】
また、本発明の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造によれば、縦横に複数並べて配置される前記ブロック体が、前記矩形法枠に両端を支持させて前記矩形法枠の内側に張設された位置決め線状部材を介して各々位置決めされて、前記矩形法枠の内側に嵌め込まれることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造によれば、前記矩形法枠が木製の法枠であることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造によれば、前記木製の矩形法枠の下枠に沿って補強鋼材が取り付けられていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造によれば、前記造成壁面に向けて打ち込まれるアンカー部材を介して、前記矩形法枠が前記造成壁面に固定されることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造によれば、前記アンカー部材は、前記間知ブロックの目地部分に打ち込まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造によれば、間知ブロックによる造成壁面に簡易且つ容易に施工することができて、植生による緑化を効果的に図ることができると共に、維持管理が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好ましい一実施形態に係る間知ブロックによる造成壁面の緑化構造10は、図1及び図2に示すように、例えば一戸建て住宅や集合住宅を建築するための造成地盤11の法面12を覆って設けられた、当該法面12を防護する間知ブロック13による造成壁面14に、植生による緑化を施すために採用されたものである。すなわち、間知ブロック13による造成壁面14は、道路に面した部分に設けられることが多く、景観上の要所となっているにもかかわらず、急傾斜の斜面であり、その表面がコンクリートや石によって形成される面となるため、植生を施し難く、また散水等によるメンテナンスを行い難い場所であるが、このような間知ブロック13による造成壁面14に対して、維持管理を容易にしつつ、簡易且つ効果的に植生による緑化を図ることをができようにするために本実施形態の緑化構造10が採用される。
【0017】
そして、本実施形態の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造10は、間知ブロック13による造成壁面14に沿って、植生が植設される植生基盤材15を備える矩形形状の緑化ユニット16を、複数並べて設置することにより造成壁面14の緑化を図るようにした緑化構造あって、緑化ユニット16は、図3にも示すように、矩形法枠17の内側に、植生基盤材15として乾燥無炭化ピート塊によるブロック体18を嵌め込んで形成され、各緑化ユニット16の矩形法枠17を造成壁面14に各々固定して構成される。
【0018】
また、本実施形態では、ブロック体18は、図4に示すように、6面体形状を備えており、縦横に複数並べて配置された状態で矩形法枠17の内側に嵌め込まれている(図1,図3参照)。
【0019】
本実施形態では、矩形法枠17は、好ましくは木製の角材、丸太、枕木等を4方の辺部に配置して、例えば縦450〜2000mm、横600〜2500mm、好ましくは縦600〜1200mm、横1200〜2000mm程度の大きさの矩形形状に組み立てられる。なお、矩形法枠17は、木製以外の、合成樹脂製や金属製の材料を用いて形成することができるが、木製材料を用いることにより、本実施形態の緑化構造10を、自然循環が可能な構造物として位置付けることが可能になる。
【0020】
また、本実施形態では、矩形法枠17の内側に嵌め込まれるブロック体18を構成する乾燥無炭化ピート塊は、炭化していない乾燥した状態のピート塊であり、例えば北欧産ピートブロック等を用いることができる。特に、本実施形態では、ワタスゲ、コケ等の自然堆積物であるホワイトピートモス層を切り出し、約2年間自然乾燥を行うことで、繊維構造の結束を図ることにより、ホワイトピートモス本来の保水力、通気性等の一定の物理特性を利用できるようにした、商品名「ソッドピート」(ドイツ、クラスマンダイルマン社製)を好ましく用いることができる。
【0021】
このようなホワイトピートモスによる植生基盤材(緑化基盤材)15は、例えば1本のソッドが5リットルの水分を吸収して、散水管理をほとんど不要にすると共に、飽和状態を超えると浄化された水を排出する性能を備ている。また、ナイフやノコギリによる切断加工やドリルによる穴あけ加工が容易であり、例えばポット栽培植物の植付にも最適である。さらに、手軽な大きさと重量(例えば1ブロックが約700g)を備えていて、積込み、運搬、荷揚げ、敷き込みなどの作業を容易に行うことが可能である。さらにまた、自然堆積によって繊維の結束が形成されているため、水に入れても分解せず、沓圧等による固結がないため植物の根に障害が起こらず、貼芝を行えば人が歩けるほどの強度を備えている。
【0022】
そして、本実施形態では、乾燥無炭化ピート塊によるブロック体18を、例えば幅100〜200mm、高さ100〜200mm、長さ300〜500mm程度の大きき(本実施形態では130×130×380)の6面体形状(直方体形状)に切り出し、この6面体形状のブロック体18を、例えば縦横に4列、合計16個並べて配置して、矩形法枠17の内側に嵌め込み固定することにより、ブロック体18による植生基盤材15を備える緑化ユニット16が形成される。
【0023】
ここで、各ブロック体18は、緑化ユニット16が造成壁面14による急勾配の法面に沿って配置された際に、矩形法枠17の内側で位置ずれしたり、矩形法枠17から脱落しないように、好ましくは図3に示すように、矩形法枠17に両端を支持させて矩形法枠17の内側に張設されたスチールワイヤー等からなる位置決め線状部材19を介して、各々位置決めされた状態で設置される。すなわち、位置決め線状部材19は、例えば矩形法枠17の短辺部と平行に延設して、ブロック体18の幅に相当する間隔をおいて矩形法枠17の厚さ方向中央部分に配置されて取り付けられる。また位置決め線状部材19には、当該位置決め線状部材19に交差して接合された、スチールワイヤー等からなる複数の差込針部材20が取り付けられている。各ブロック体18を、両側又は一方の端面を位置決め線状部材19に沿わせるようにしつつ、位置決め線状部材19に沿った端面に差込針部材20を差込みながら矩形法枠17の内側に設置することにより、各ブロック体18は、安定した状態で位置決め固定されて、矩形法枠17の内側に嵌込み設置される。
【0024】
また、本実施形態では、各ブロック体18には、図4にも示すように、植栽穴21が開口形成されており、この植栽穴21に、例えばポット栽培植物22や植物種子を、堆肥を混入した土と共に植栽することにより、緑化ユニット16の植生基盤材15に植生を植設することが可能になる。
【0025】
本実施形態では、緑化ユニット16は、矩形法枠17を造成壁面14に固定することにより、造成壁面14に沿って取り付けられる。すなわち、矩形法枠17には、図3に示すように、所定の間隔をおいて、締着ボルト挿通孔23が複数貫通形成されており、例えば間知ブロック13による造成壁面14に向けて所定の位置に打ち込んだホールインアンカーをアンカー部材24として(図6参照。)、このアンカー部材24に固定ボルト25を締着することにより(図6参照。)、矩形法枠17を造成壁面14に容易に固定することができる。また、アンカー部材24を、造成壁面14の間知ブロック13間の目地部分に打ち込むことにより、間知ブロック13を損傷させることなく緑化ユニット16を造成壁面14に固定することが可能になる。
【0026】
そして、本実施形態では、緑化ユニット16は、図1に示すように、例えば造成壁面14の下部に沿って横方向に並べて複数設置されることにより、造成壁面14の下半部を覆う緑化構造10が形成される。また、本実施形態によれば、造成地盤11の縁部分や、造成壁面14の下端部と隣接する道路の縁部分には、緑化ユニット16と略同様の構成を備える、矩形法枠の内側に乾燥無炭化ピート塊によるブロック体を嵌め込んで形成された第2緑化ユニット26が、これらの縁部分に沿って平坦に並べて設置されている。
【0027】
なお、緑化ユニット16は、図5に示すように、造成壁面14に沿って縦方向にも並べてその全面を覆って設置することもでき、造成壁面14を覆う範囲は、施工や維持管理のし易さ、景観等を鑑みて適宜設定することができる。また、緑化ユニット16を縦方向にも並べて設置する場合には、図6に示すように、上段に配置される緑化ユニット16については、木製の矩形法枠17の下枠に沿って、例えば山形鋼(アングル)からなる補強鋼材27を取り付けておくことが好ましい。これによって、長期間の経過後に矩形法枠17が腐蝕した場合でも、乾燥無炭化ピート塊のブロック体18による植生基盤材15を、上段の位置に容易に保持しておくことが可能になる。
【0028】
そして、本実施形態の造成壁面の緑化構造10によれば、間知ブロック13による造成壁面14に簡易且つ容易に施工することができ、植生による緑化を効果的に図ることができると共に、維持管理が容易である。すなわち、本実施形態の緑化構造10によれば、矩形法枠17の内側に、乾燥無炭化ピート塊によるブロック体18を嵌め込んで形成される緑化ユニット16を、間知ブロック13による造成壁面14に沿って複数並べて設置することにより、容易に形成することができ、乾燥無炭化ピート塊を植生基盤材15として植設された植生によって、間知ブロック13による造成壁面14の緑化を効果的に図ることが可能になる。また植生基盤材15を構成する乾燥無炭化ピート塊は、多量の水分を吸収して散水管理をほとんど不要にしたり、飽和状態を超えると浄化された水を排出する機能を備えるので、維持管理を容易に行うことが可能になる。
【0029】
また、乾燥無炭化ピート塊による植生基盤材15は、水分を吸収して膨潤することにより、植生基盤材15の背面側の間知ブロック13による造成壁面14の表面に凹凸がある場合でも、この凹凸に追随して造成壁面14の表面に容易に馴染むことができると共に、植生の過度の生育を抑制する機能を備えることにより、維持管理をさらに容易にすることが可能になる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、緑化ユニットの矩形法枠の内側に嵌め込まれるブロック体は、矩形法枠の内側に張設した位置決め線状部材を介して各々位置決めする必要は必ずしも無く、矩形法枠は、造成壁面に打ち込まれるアンカー部材を介して固定する方法以外の方法で、造成壁面に固定することもできる。また、間知ブロックによる造成壁面に、背面地盤からの浸出水の水抜き孔が設けられている場合には、これに水抜き配管を接続して、緑化ユニットの表面側から排水できるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る間知ブロックによる造成壁面の緑化構造を説明する正面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る間知ブロックによる造成壁面の緑化構造を説明する断面図である。
【図3】緑化ユニットの構成を説明する略示斜視図である。
【図4】ブロック体の構成を説明する略示斜視図である。
【図5】本発明の好ましい一実施形態に係る間知ブロックによる造成壁面の他の形態を例示する略示斜視図である。
【図6】矩形法枠を造成壁面に固定する状態を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 間知ブロックによる造成壁面の緑化構造
11 造成地盤
12 造成地盤の法面
13 間知ブロック
14 造成壁面
15 植生基盤材
16 緑化ユニット
17 矩形法枠
18 乾燥無炭化ピート塊によるブロック体
19 位置決め線状部材
20 差込針部材
21 植栽穴
22 ポット栽培植物
23 締着ボルト挿通孔
24 アンカー部材
25 固定ボルト
26 第2緑化ユニット
27 補強鋼材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間知ブロックによる造成壁面に沿って、植生が植設される植生基盤材を備える矩形形状の緑化ユニットを、複数並べて設置することにより造成壁面の緑化を図るようにした緑化構造であって、
前記緑化ユニットは、矩形法枠の内側に、前記植生基盤材として乾燥無炭化ピート塊によるブロック体を嵌め込んで形成され、各緑化ユニットの矩形法枠を前記造成壁面に各々固定して構成される間知ブロックによる造成壁面の緑化構造。
【請求項2】
前記ブロック体が6面体形状を備えており、縦横に複数並べて配置された状態で前記矩形法枠の内側に嵌め込まれる請求項1に記載の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造。
【請求項3】
縦横に複数並べて配置される前記ブロック体が、前記矩形法枠に両端を支持させて前記矩形法枠の内側に張設された位置決め線状部材を介して各々位置決めされて、前記矩形法枠の内側に嵌め込まれる請求項2に記載の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造。
【請求項4】
前記矩形法枠が木製の法枠である請求項1〜3のいずれかに記載の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造。
【請求項5】
前記木製の矩形法枠の下枠に沿って補強鋼材が取り付けられている請求項4に記載の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造。
【請求項6】
前記造成壁面に向けて打ち込まれるアンカー部材を介して、前記矩形法枠が前記造成壁面に固定される請求項1〜5のいずれかに記載の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造。
【請求項7】
前記アンカー部材は、前記間知ブロックの目地部分に打ち込まれる請求項6に記載の間知ブロックによる造成壁面の緑化構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−25146(P2008−25146A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196746(P2006−196746)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(391024696)住友林業緑化株式会社 (39)
【Fターム(参考)】