説明

間隔調節可能な支持具

【課題】コンクリート構造物の型枠あるいは建物の二重床用の床板等を支持すると共に型枠又は床板の連結を可能とし、且つ、幅又は高さを調節する際、支持ボルトが型枠又は床板の外側に突出することなく、しかも枠組や二重床の構造に左右されず、全てに共通して使用できる間隔調整可能な支持具を提供する。
【解決手段】支持ボルト(1)の頭部(11)側に、複数の取付穴(2a)を有する上部取付板(2)を、前記支持ボルト(1)を挿通した状態でもって、前記頭部(11)と、前記支持ボルト(1)に固着した調節用部材(3)とで回動自在に保持させ、前記支持ボルト(1)下部の雄ネジ部(12)に長ナット(4)を螺合し、該長ナット(4)の下端に複数の取付穴(5a)を有する下部取付板(5)を固着させ、且つ、前記上部取付板(2)が、その外周側の上面(2b)を前記支持ボルト(1)の前記頭部(11)よりも高くしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製型枠用の支持具、特には残存型枠を枠組する際に残存型枠の間隔を支持する間隔調節可能な支持具に関し、更には建物の二重床を構築する際に、下部の床と上部の床板との間隔を調節自在に支持する間隔調節可能な支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製型枠で特にはコンクリート製の残存型枠を枠組する際に、この残存型枠を所定間隔に支持する支持部材としては、例えば、特許文献1(特開平8−144518号)のものは、コンクリート型枠の間隔を調整するのに、調整金物の両側にネジ山が逆なスタッドボルトとセパレータボルトを螺合させ、調整金物を回して全体の長さを調整できるターンバックル式のものがある。
【0003】
また、特許文献2(実開昭60−15545号)には、管の一つの端部に小径の雌ねじ部を設け、この雌ねじ部へねじ込まれるねじ杆との組合せによって構成したコンクリート型枠用セパレータが開示されている。
【0004】
更に、特許文献3(実開昭59−154552号)には、型枠間を調節する手段として、一端にオネジ、他端にメネジを夫々形成した一体のボルト体を、一定寸法間隔で階段的に数種類揃えて1組と成す型枠間隔支持用継ぎ金具が開示され、また、特に図6には従来のセパレータの間隔調節方法が開示されている。
【0005】
他方、建物の二重床を構築する際に、下部の床と上部の床板との間隔を調節自在に支持する支持具として、例えば、特許文献4(特開2005−220583号)には、胴部と、床下材を支持すると共に胴部の一方の端部に螺合される第1支持部と、床下面に対する接触面を有すると共に胴部の他方の端部に螺合される第2支持部と、から成る床下支持部材を構成し、胴部の回転によって、第1支持部及び第2支持部は胴部に対して進退可能となるものが開示されている。
【0006】
更に、特許文献5(実開昭58−47637号)には、要約すると、安全接地盤にネジ支柱を立設し、そのネジ支柱に昇降板を昇降レベルの調整自在に螺合して取付ける(図2参照)。高さ調節は昇降板を回転操作して、その調整状態をナット(12)により固定する。また、図6では、ネジ支柱の上端部へ昇降板を固着一体化し、そのネジ支柱を安定接地盤に対してそのまま昇降できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8―144518号公報
【特許文献2】実開昭60−15545号公報
【特許文献3】実開昭59−154552号公報
【特許文献4】特開2005−220583号公報
【特許文献5】実開昭58−47637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術において、先ず特許文献1のものは、型枠間の調節がスタッドボルトに調整金物、この調整金物にセパレータボルトをそれぞれねじ込んだターンバックル式のものであり、型枠間の調整は型枠間の調整金物を回して行うため、型枠間が狭い場合には、調整金物を回すことができず、また、このものは型枠間を単に支持するものに過ぎず、枠組の際に型枠同志を接続することができない問題点を有していた。
【0009】
また、特許文献2のものは、型枠の間隔調節が、管体にねじ込んだねじ杆を回して調節するものであり、ねじ杆は型枠から外に突出するため、残存型枠のセパレータとして使用することは見栄えが悪く使用できず、且つ、枠組の際に型枠同志を連結できない問題点を有する。
【0010】
更に、特許文献3のものは、一定寸法間隔で階段的な寸法のボルト体を用意して、型枠間隔に合せて、そのボルト体を両端長ネジのボルトに螺合して長さ調節するものであり、要するに、型枠の間隔に合せてボルトに適合するボルト体を継ぎ足す方法で調節するものであるから、調節量が階段的で微調整ができないという問題点を有していた。
【0011】
また、特許文献4のものは、建物の床下を支持する床下支持部材であるが、高さ調節は中間の胴部を回すことにより調整するいわゆるターンバックル式のものにすぎず、調節は床下で行うため、床下間が狭いと手が入らず調節が不可能となる問題点を有していた。
【0012】
更に、特許文献5のものは、床下支持装置であり、その内、図2では床下が狭い場合でもネジ支柱を上端から回して調節できるが、あくまで、床(横架材)にネジ支柱を回すための穴を必要とし、この穴を開けたくない床に対しては使用できず、且つ、調節量が大きいと、ネジ支柱が床の上面から突出する。他方、図6のものは、床に穴を必要としないが、調節するのに、ネジ支柱に固着した昇降板を回して調節するため、床下が狭いと昇降板を回せず、且つ、昇降板は予め床下の高さに回して高さ調節した状態で床下に設置しなければならず、床の昇降状態を見ながら調節するのが難しいという問題点を有していた。
【0013】
これら上記特許文献1〜5に開示された従来技術は、残存型枠を枠組する際のセパレータや建物の二重床の支持具として使用するのに、限定された使用となり、型枠の枠組や二重床の構成条件に左右される不具合があった。
【0014】
本発明は、コンクリート構造物の施工用に枠組した型枠あるいは建物の二重床用の床板等を支持すると共に型枠又は床板の連結を可能とし、且つ、それらの幅又は高さを調節する際、支持ボルトが型枠又は床板の外側に突出することなく、しかも枠組や二重床の構造に左右されず、全てに共通して使用できる間隔調整可能な支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、支持ボルト(1)の頭部(11)側に、複数の取付穴(2a)を有する上部取付板(2)を、前記支持ボルト(1)を挿通した状態でもって、前記頭部(11)と前記支持ボルト(1)に固着した調節用部材(3)とで回動自在に支持させる。前記支持ボルト(1)下部の雄ネジ部(12)に長ナット(4)を螺合し、該長ナット(4)の下端に複数の取付穴(5a)を有する下部取付板(5)を固着させ、且つ、前記上部取付板(2)が、その外周側の上面(2b)を前記支持ボルト(1)の前記頭部(11)よりも高くしたことを特徴とする。
【0016】
また、前記上部取付板(2)が、その中央を凹ませると共に、複数の流入穴(2c)を穿設することを特徴とする。
【0017】
本発明の支持ボルト(1)の頭部(11)は、その外径が下部の雄ネジ部(12)の径よりも大きく、外形としては六角,丸形を含むものであり、しかも頭部(11)には、その上面(11a)に、工具係止溝(11b)として、例えば十字穴,すり割り,六角穴等のいずれかが形成されており、プラスドライバー,マイナスドライバー,六角棒レンチ等が使用できるようにしている。
【0018】
また、本発明の調節用部材(3)は、支持ボルト(1)に同芯状に固着させ、その外形を六角形を含む多角形状に形成したものであり、この調節用部材(3)をスパナ等の工具で回すことにより、支持ボルト(1)が回動操作できるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、支持ボルト(1)の頭部(11)側に、上部取付板(2)を回動自在に保持させたことにより、支持ボルト(1)を回して高さ調節をする際に、上部取付板(2)に対して支持ボルト(1)の頭部(11)の高さが全く変わらずに高さ調節できる。つまり、高さ調節の際に、上部取付板(2)に対し、支持ボルト(1)の頭部(11)の位置が変動することがないのである。このことは、高さ調節の量が大きくなっても枠組した型枠(6)や二重床の床面から、支持ボルト(1)が突出することがなく、突出した支持ボルト(1)が後の施工に邪魔になることもなく、見栄えの良い施工ができる。
【0020】
また、上部取付板(2)が、その外周側の上面(2b)を前記支持ボルト(1)の頭部(11)よりも高くしたことにより、枠組した型枠や二重床の床に支持ボルト(1)を回すための穴がない場合でも、上部取付板(2)より頭部(11)が突出していないため、上部取付板(2)は、型枠や床に上面(2b)を密着して取付けることができ、しかも支持ボルト(1)を回して調節しても頭部(11)の位置も全く変らないので、頭部(11)が型枠や床を押して損傷させることもない。
【0021】
要するに、本発明は、支持ボルト(1)が、その頭部(11)側又は中間で回せて高さ調節できる点と、調節時に支持ボルト(1)を回しても上部取付板(2)に対して支持ボルト(1)の頭部(11)位置が全く変らない点である。従って、型枠の枠組や床の二重床を施工する際に、取付けた支持ボルト(1)の高さ調節をするのに、支持ボルト(1)を回す位置が、枠組した型枠や二重床の内側又は外側のどちらであっても、支持ボルト(1)の高さ調節が可能であり、枠組した型枠及び二重床の床に対し、その間隔や高さの大小、又は穴の有無等の構造が異なっていても全く左右されず、それら構造的条件に関係なく共通して使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の支持具全体を示す断面図である。
【図2】本発明の支持具の上面図である。
【図3】本発明の使用状態を示す説明図である。
【図4】本発明の他の使用状態を示す説明図である。
【図5】本発明の支持具で穴付型枠を連結して枠組した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1において、(1)は一定長さの支持ボルトであり、該支持ボルト(1)は、上部に頭部(11)を有し、下部に雄ネジ部(12)を形成したものである。上記頭部(11)は雄ネジ部(12)の外径より大きな外径であり、該頭部(11)の形状は丸形,六角形を含み、且つ、頭部上面(11a)にはマイナス溝,プラス溝,六角穴等を形成して、支持ボルト(1)をレンチ工具で頭部(11)上方から回動できるようにしている。
【0024】
(2)は金属製の上部取付板であり、該上部取付板(2)は外形が四角状又は丸状で、その中央を、逆ハの字状,湾状を含む形状に凹ませ、中心に前記支持ボルト(1)が挿通可能なバカ穴(2d)を穿設し、更に、上部取付板(2)の外周側の上面(2b)に複数の取付穴(2a)を穿設させている。そして、この上部取付板(2)は、支持ボルト(1)の頭部(11)側に、前記支持ボルト(1)をバカ穴(2d)に挿通した状態でもって、頭部(11)として、支持ボルト(1)に固着した調節用部材(3)とで回動自在に保持させている。尚、前記上部取付板(2)の凹ます深さは、支持ボルト(1)の頭部(11)の高さよりも大きくし、支持ボルト(1)に取付けられた上部取付板(2)の上面(2b)を頭部(11)よりも高くしている。
【0025】
また、図2に示すように、上部取付板(2)には、凹ませた箇所の周方向に複数の流入穴(2c)を穿設させている。この流入穴(2c)は、上部取付板(2)の中央を凹ませると、型枠の枠組に使用する場合、その上部取付板(2)の凹ませた箇所と型枠との間に隙間ができ、コンクリート打設後のコンクリート構造物内に空洞が生じて弱くなる。従って、この空洞化を防止するため、流入穴(2c)は打設コンクリートがこの流入穴(2c)から上部取付板(2)内の隙間に流入し、隙間にコンクリートを充填させるためのものである。
【0026】
調節用部材(3)は、支持ボルト(1)が挿通した状態で、溶接等で支持ボルト(1)に固着させている。この調節用部材(3)の外形は、角形で、好ましくは六角形であり、スパナ等で調節用部材(3)を回すことができ、これにより支持ボルト(1)も回されるようにしている。また、調節用部材(3)は上部取付板(2)を回動自在に保持する役目を成す。
【0027】
(4)は支持ボルト(1)の雄ネジ部(12)と螺合した長ナットである。この長ナット(4)は、長さ全部に雌ネジを形成している。しかしながら、雌ネジの形成する長さについては全長の略上部半分とし、残り下部は雌ネジの内径よりも大きな逃げ穴としてもよい(図示せず)。この長ナット(4)に螺合した支持ボルト(1)を回動することにより、支持ボルト(1)は上下に移動される。
【0028】
(5)は長ナット(4)の下端に固着させた下部取付板であり、外形及び大きさは前記上部取付板(2)と同様のものである。また下部取付板(5)には、その外周近くに複数の取付穴(5a)を穿設させているが、左右が型枠同志で枠組した状態では、型枠との固着が可能となり好ましい。また、この下部取付板(5)は、必ずしも上部取付板(2)のように中央を凹まさせなくてもよく、平らでも良い。
【0029】
次に本発明の支持具について、その使用の実施例を説明する。先ず、図3では、多数の穴を有するコンクリート製の残存型枠(6)で枠組する場合に使用する例を示している。この図3の例では、先ず基礎部(7)に本発明の支持具を立設した状態で、上部取付板(2)と残存型枠(6)とを、ボルト・ナットから成るネジ部材(8)で取付ける。この際に上部取付板(2)に穿設した取付穴(2a)及び残存型枠(6)の穴(6a)を利用してネジ部材(8)で固定される。そして、上部取付板(2)に残存型枠(6)が取付けられたならば、支持ボルト(1)を回して基礎部(7)に対する残存型枠(6)の高さを設定された高さに調節する。
【0030】
この高さ調節において、本発明では2つの方法ができ、1つは上部外側から残存型枠(6)の穴(6a)にネジ回し用のレンチ工具を差込んで支持ボルト(1)の頭部(11)を回す方法と、他の方法は、内側から調節用部材(3)をスパナ等で回す方法である。
【0031】
従って、基礎部(7)と残存型枠(6)との高さがあまりなく、両者間に手が入らない狭い場合は、残存型枠(6)の穴(6a)側から支持ボルト(1)を回して、残存型枠(6)の外側から高さ調節すればよく、また、施工現場によって枠組した残存型枠(6)の外側から人が作業できないような場合には、調節用部材(3)を利用してスパナで支持ボルト(1)を回し、残存型枠(6)の内側から高さ調節ができるのである。この高さ調節においては、支持ボルト(1)をいくら回しても、決して上部取付板(2)と支持ボルト(1)の頭部(11)との位置が全く変らず、しかも残存型枠(6)から突出したり当接する不具合もなく、コンクリート打設後の見栄えが極めてよい。
【0032】
このように、本発明の支持具は、枠組した状態に左右されず、高さ調節を可能とし、1種類の支持具でもって構造状態が異なる枠組の支持に共通して使用できる利点を有する。
【0033】
尚、図3に示した使用例では、他に、基礎部(7)も残存型枠(6)とした場合、あるいは、残存型枠(6)を二重床の床に置き代えても基本的に同様の作用を成すものである。
【0034】
図4に示した本発明の支持具では、残存型枠(6)に穴(6a)が無い場合の例を示している。この例では基礎部(7)と残存型枠(6)間に本発明の支持具を入れ、調節用部材(3)でもって支持ボルト(1)を回し、残存型枠(6)の内側から高さ調節を行うことができる。
【0035】
また、本発明の支持具では、図5に示すように、穴(6a)を有する残存型枠(6)を段積して枠組する際に、4枚並べた残存型枠(6)のそれぞれ当接する角部中心に支持具を設置し、残存型枠(6)の穴(6a)と上部取付板(2)の取付穴(2a)とを利用し、各残存型枠(6)の角部を上部取付板(2)にネジ部材(8)で固着することができ、枠組の際に残存型枠(6)同志を連結できる。この場合、残存型枠(6)の隅は通常45度の面取を施しているので、その面取によって生じる四角穴(6b)を利用し、支持ボルト(1) の頭部(11)をレンチ工具で回せば支持具の高さ調節が外側からもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の支持具は、コンクリート構造物を施工する際に型枠の枠組間の支持具に使用でき、また、建物内の二重床の支持具として利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 支持ボルト
11 頭部
12 雄ネジ部
2 上部取付板
2a 取付穴
2b 上面
2c 流入穴
3 調節用部材
4 長ナット
5 下部取付板
5a 取付穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ボルト(1)の頭部(11)側に、複数の取付穴(2a)を有する上部取付板(2)を、前記支持ボルト(1)を挿通した状態でもって、前記頭部(11)と、前記支持ボルト(1)に固着した調節用部材(3)とで回動自在に保持させ、前記支持ボルト(1)下部の雄ネジ部(12)に長ナット(4)を螺合し、該長ナット(4)の下端に複数の取付穴(5a)を有する下部取付板(5)を固着させ、且つ、前記上部取付板(2)が、その外周側の上面(2b)を前記支持ボルト(1)の前記頭部(11)よりも高くしたことを特徴とする間隔調節可能な支持具。
【請求項2】
前記上部取付板(2)が、その中央を凹ませると共に、複数の流入穴(2c)を穿設した請求項1記載の間隔調節可能な支持具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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