説明

関心密度分布モデル化装置及びそのプログラム

【課題】信号中の関心領域に応じて適切に関心密度分布をモデル化する。
【解決手段】関心対象を予め記憶する関心対象記憶部(11)と、入力信号の中から関心対象記憶部に記憶されている関心対象と類似度の高い関心対象信号を検出し、関心対象情報を生成する関心対象検出部(12)と、関心密度分布モデルの形状を予め記憶するモデル形状記憶部(13)と、モデル形状記憶部から関心密度分布モデルの形状を選択し、選択した関心密度分布モデルの形状情報を生成するモデル選択部(1411)と、関心対象情報と関心密度分布モデルの形状情報とに基づいて、関心密度分布モデルのパラメータを生成するモデルパラメータ生成部(1412)と、関心密度分布モデルの形状情報及び関心密度分布モデルのパラメータにより関心密度分布を生成する統合分布モデル化部(142)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の表現において、関心密度の分布をモデル化する関心密度分布モデル化装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル信号処理では処理対象となる信号を標本化して扱う。多くの場合、処理の簡便さから信号全体を均一に標本化する。例えば、音声信号では一定の時間間隔で標本点を配置し、標本化することが多い。また、画像信号では直交格子状に縦横等間隔で標本点を配置し、標本化することが多い。
【0003】
しかし、一般的に信号は区間や領域ごとに信号の特性が異なる。そのため、信号全体を均一に標本化することが適切とは限らない。例えば、同数の標本点を配置する場合、高周波成分を多く含む信号区間は密に、低周波成分のみを含む信号区間は疎になるように不均一に標本化した方が、信号全体を均一に標本化するよりも精度良く信号の特性を抽出できる。また、信号中で関心のある領域や詳細な解析を要する領域が偏っている場合、それらの領域を密に、それら以外の領域を疎に標本化した方が、信号全体を均一に標本化するよりも情報量の観点から効率的となる。そこで、画像信号中の関心領域(特徴領域)を検出し、それらの領域に対して多くの情報量を割り当てる技法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−089356号公報
【特許文献2】特開2009−253747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び2に記載の技法は、関心領域であるかそれ以外の領域であるかを判断し、この判断結果(2値)を基にその後の処理を決定するため、関心領域ごとに異なる画像処理パラメータ(例えば、階調数や解像度)を設定できないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記問題を解決するため、関心領域ごとに異なる画像処理パラメータを設定できる関心密度分布モデル化装置及びそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、ユーザが関心を持っている信号である関心対象を標本化する際の関心密度の分布を、統合分布モデルによってモデル化する関心密度分布モデル化装置であって、関心対象を予め記憶する関心対象記憶部と、入力信号の中から、前記関心対象記憶部に記憶されている関心対象と類似度の高い関心対象信号を検出し、検出した関心対象信号の入力信号中における位置、大きさ、及び形状を含む情報を関心対象情報として生成する関心対象検出部と、前記関心対象信号を取り囲む領域の形状である関心密度分布モデルの形状を予め記憶するモデル形状記憶部と、前記関心対象情報に含まれる形状に基づいて、前記モデル形状記憶部から関心密度分布モデルの形状を選択し、選択した関心密度分布モデルの形状を示す情報を生成するモデル選択部と、前記関心対象情報に含まれる位置及び大きさと、前記関心密度分布モデルの形状を示す情報とに基づいて、関心密度の最大値を含む関心密度分布のパラメータを生成するモデルパラメータ生成部と、前記関心密度分布モデルの形状を示す情報及び前記関心密度分布のパラメータから、関心密度分布を生成する統合分布モデル化部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る関心密度分布モデル化装置において、前記関心対象検出部は、複数の関心対象信号を検出し、該関心対象信号ごとに前記関心対象情報を生成する手段を有し、前記モデル選択部は、該関心対象信号ごとに前記関心密度分布モデルの形状を示す情報を生成する手段を有し、前記モデルパラメータ生成部は、該関心対象信号ごとに前記関心密度分布のパラメータを生成する手段を有し、前記統合分布モデル化部は、該関心対象信号ごとに生成した前記関心密度分布を統合して入力信号全体の関心密度分布を生成する手段を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る関心密度分布モデル化装置において、前記関心対象検出部は、検出の信頼度をさらに含む情報を前記関心対象情報として生成し、前記モデルパラメータ生成部は、前記信頼度の値に応じて前記関心密度の最大値を変更する手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る関心密度分布モデル化装置において、前記関心対象記憶部には、関心対象の種類ごとに対応する重みが予め記憶されており、前記関心対象検出部は、前記重みをさらに含む情報を前記関心対象情報として生成し、前記モデルパラメータ生成部は、前記信頼度に前記重みを乗じた値に応じて前記関心密度の最大値を変更する手段を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る関心密度分布モデル化装置において、前記関心対象検出部は、関心対象の密度分布タイプを判定し、該判定した関心対象の密度分布タイプをさらに含む情報を前記関心対象情報として生成し、前記モデルパラメータ生成部は、前記関心対象の密度分布タイプに応じて、前記関心密度分布のパラメータを変更する手段を有することを特徴とする。
【0012】
さらに、上記課題を解決するために、本発明は、ユーザが関心を持っているオブジェクトである関心対象を標本化する際の関心密度の分布を、統合分布モデルによってモデル化する関心密度分布モデル化装置として機能するコンピュータであって、関心対象を予め記憶する関心対象記憶部と、関心密度分布モデルの形状を予め記憶するモデル形状記憶部とを有するコンピュータに、入力信号の中から、前記関心対象記憶部に記憶されている関心対象と類似度の高い関心対象信号を検出し、検出した関心対象信号の入力信号中における位置、大きさ、及び形状を含む情報を関心対象情報として生成するステップと、前記関心対象情報に含まれる形状に基づいて、前記モデル形状記憶部から関心密度分布モデルの形状を選択し、選択した関心密度分布モデルの形状を示す情報を生成するステップと、前記関心対象情報に含まれる位置及び大きさと、前記関心密度分布モデルの形状を示す情報とに基づいて、関心密度分布を規定するパラメータを生成するモデルパラメータ生成部と、前記関心密度分布モデルの形状を示す情報及び前記パラメータにより、関心密度分布を生成するステップと、を実行させるためのプログラムとしても特徴付けられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、統合分布モデルを用いることで、画像中の関心領域に応じた適切な関心密度分布のモデル化が可能となり、関心領域ごとにそれぞれ異なる画像処理パラメータを設定することができるようになる。また、一度、関心密度分布をモデル化すれば、以降は分布を規定する少数のモデルパラメータのみから関心密度分布を再現できるため、情報量及び処理量の観点からも効率化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による一実施例の関心密度分布モデル化装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による一実施例の関心密度分布モデル化装置の単一分布モデル化部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明による一実施例の関心密度分布モデルの形状が楕円である場合の関心密度分布を示す図である。
【図4】本発明による一実施例の関心密度分布モデル化装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明による一実施例の関心密度分布を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本明細書において使用する用語を定義する。
「関心対象」とは、予め設定されたユーザが関心を持っている信号のことをいい、例えば、人、車、文字、記号、模様、特徴点等の任意のオブジェクトである。
「関心対象信号」とは、本発明の関心密度分布モデル化装置によって検出された、処理対象信号中における関心対象であると判定された信号のことをいう。
「関心対象信号領域」とは、関心対象信号をそれ以外の信号領域と区別するための、関心対象信号を取り囲む領域のことをいう。
「関心密度」とは、関心対象信号領域内の標本化密度を決定するための尺度のことをいう。
「関心密度分布モデル」とは、関心対象信号領域内の関心密度の分布を規定したモデルのことをいう。
「関心密度分布モデルの形状」とは、関心対象信号領域の形状のことをいう。
【0016】
本発明による一実施例の関心密度分布モデル化装置について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、2次元信号である画像を例に説明するが、1次元の信号でも、多次元の信号でも、同様に処理を行うことができる。
【0017】
図1は、本発明による一実施例の関心密度分布モデル化装置1の構成を示すブロック図である。本発明による関心密度分布モデル化装置1は、関心対象記憶部11と、関心対象検出部12と、モデル形状記憶部13と、関心密度分布モデル化部14とを備える。
【0018】
関心対象記憶部11は、関心対象をテンプレート画像として予め記憶する。また、関心対象記憶部11は、関心の度合いに応じて関心密度の重み付けをするために、次の表1に示すように、関心対象の種類ごとに対応する重みの値(例えば、0.0〜1.0の値)を関連付けて予め記憶することもできる。
【0019】
【表1】

【0020】
関心対象検出部12は、入力された処理対象画像中から、関心対象記憶部11に記憶されている関心対象と類似度の高い画像領域を、関心対象信号として検出する。関心対象信号の検出には、例えば、テンプレートマッチング法、画像の特徴量を利用した統計的手法、又はコーナーやエッジなど画像の特徴点を検出する方法等を用いる。そして、検出した関心対象信号ごとに、関心対象信号の情報(以下、「関心対象情報」という)を生成し、関心密度分布モデル化部14に出力する。ここで、関心対象情報とは、関心対象画像の入力画像中における位置、大きさ、形状、及び検出の信頼度(類似度)を含む情報である。位置、大きさ及び形状は、例えば座標を用いて表すことができる。検出の信頼度は、マッチングの度合いや特徴点の多さに応じて、複数段階の値(例えば、信頼度が最も低いときの値を0.0とし、信頼度が最も高いときの値を1.0とする)で表すことができる。
【0021】
モデル形状記憶部13は、関心密度分布モデルの形状を予め記憶する。関心密度分布モデルの形状は、例えば、円、矩形、三角形、楕円、関心対象に応じた形状(例えば、人の形状や車の形状)、又はこれらを組み合わせた形状等である。
【0022】
関心密度分布モデル化部14は、関心対象検出部12から入力される関心対象情報に基づいて、関心対象信号の関心密度分布をモデル化し、関心密度分布の情報を外部に出力する。関心密度分布モデル化部14は、1以上の単一分布モデル化部141(141−1〜141−n)と、統合分布モデル化部142とを備える。単一分布モデル化部141の個数は、関心対象検出部12で検出された関心対象信号の個数分だけ必要となる。例えば、N個の関心対象信号が検出された場合、単一分布モデル化部141はN個必要となる。ただし、単一分布モデル化部141を順次機能させる場合には1個でもよいし、1個の単一分布モデル化部141が複数の関心対象信号について処理する場合にはN個より少なくてもよい。
【0023】
単一分布モデル化部141は、関心対象検出部12で検出されたN個の関心対象信号のそれぞれについて、画像上での関心密度分布をモデル化する。図2は、単一分布モデル化部141の構成を示すブロック図である。単一分布モデル化部141は、モデル選択部1411と、モデルパラメータ生成部1412とを備える。
【0024】
モデル選択部1411は、関心対象検出部12から入力される関心対象情報に基づいて、モデル形状記憶部13から関心密度分布モデルの形状を選択し、選択した関心密度分布モデルの形状情報を生成し、モデルパラメータ生成部1412及び統合分布モデル化部142に出力する。ここで、関心密度分布モデルの形状情報とは、関心密度分布モデルの形状を示す情報であり、例えば次の表2に示すように、関心密度分布モデルの形状ごとに割り振られた番号である。
【0025】
【表2】

【0026】
モデルパラメータ生成部1412は、関心対象検出部12から入力される関心対象情報、及びモデル選択部1411から入力される関心密度分布モデルの形状情報に基づいて、適切な関心密度分布モデルのパラメータを生成し、統合分布モデル化部142に出力する。ここで、関心密度分布モデルのパラメータとは、関心密度の分布を規定するためのパラメータである。例えば、関心密度分布モデルの中心座標、関心密度分布の広がりを示す値(例えば、正規分布等の既知の分布関数の標準偏差)、関心密度の最大値等である。関心密度分布は、関心対象信号領域の標本化密度が他の領域の標本化密度よりも高くなるように設定される。例えば、関心密度分布モデルの中心部で密度が最大となり、中心部から離れるに従って密度が低くなるように設定される。図3は、関心密度分布モデルの形状が楕円である場合の関心密度分布の例を示す図である。x軸、y軸は画像の座標軸を示し、z軸は関心密度の高さを示している。
【0027】
統合分布モデル化部142は、モデル選択部1411から入力される関心密度分布モデルの形状情報、及びモデルパラメータ生成部1412から入力されるモデルパラメータにより、単一分布モデル化部141においてモデル化されたN個の関心対象信号ごとの関心密度分布を生成し、それらを統合して入力画像全体の関心密度分布を生成し、外部に関心密度分布の情報を出力する。統合方法は、関心対象信号ごとの関心密度分布を重ね合わせ、関心密度分布モデルの形状が重なる領域については、関心密度の高い方を採用する。
【0028】
再び図1を参照するに、関心対象検出部12は、さらに、密度分布タイプ判定部121を備える構成とすることもできる。この場合、密度分布タイプ判定部121は、検出した関心対象信号に係る関心対象の密度分布タイプを判定する。関心対象検出部12は、関心対象の密度分布タイプを含めた情報を関心対象情報として生成し、関心密度分布モデル化部14に出力する。例えば、関心対象が人間や車の場合には、密度分布タイプに0を設定し、該情報を受け取ったモデルパラメータ生成部1412は、上述したように中央部で密度が高く、周囲部で密度が低くなるように関心密度分布モデルのパラメータを決定する。一方、関心対象が文字や記号等の場合には、文字や記号全体を高密度で標本化することが望ましいため、密度分布タイプを1に設定し、該情報を受け取った関心密度分布モデル化部14は、関心対象信号領域全体が均一に高い密度となるように関心密度分布モデルのパラメータを決定する。また、関心対象の形状が環状の場合には(例えば、ドーナツや車輪)、密度分布タイプに2を設定し、該情報を受け取ったモデルパラメータ生成部1412は、関心対象信号領域の中央部で密度が低く、周囲部で密度が高くなるように関心密度分布モデルのパラメータを決定する。このように、関心対象ごとに密度分布タイプを判定することにより、関心対象の密度分布タイプに応じて、関心密度分布モデルのパラメータを変更することが可能となる。なお、密度分布タイプが0以外の場合のみ、関心対象情報に密度分布タイプを含めるようにしてもよい。また、上述の密度分布タイプは一例にすぎず、それら以外の密度分布タイプ(例えば、複数の領域を高密度とするもの)を判定することも可能である。
【0029】
図4は、関心密度分布モデル化装置1の動作を示すフローチャートである。以下に、関心密度分布モデル化装置1に図5(a)に示す画像が入力された場合を例に、関心密度分布モデル化装置1の動作を説明する。
【0030】
ステップS101では、関心対象検出部12により、入力画像から、関心対象記憶部11に記憶された関心対象と類似度の高い関心対象信号を検出し、検出した関心対象信号に関する関心対象情報を生成する。関心対象記憶部11に関心対象として月、人間、車のテンプレート画像が記憶され、鳥のテンプレート画像は記憶されていない場合、関心対象検出部12は、関心対象信号として月21、人間22、及び車23を検出し、鳥24は検出しない。そして、月21、人間22、及び車23のそれぞれの関心対象情報を生成する。関心対象情報には、入力画像中における関心対象の位置、大きさ、形状、検出の信頼度、重み、及び関心対象の密度分布タイプが含まれる。
【0031】
ステップS102では、単一分布モデル化部141(141−1〜141−3)のモデル選択部1411(1411−1〜1411−3)により、関心対象情報に含まれる形状に基づいて、モデル形状記憶部13から関心密度分布モデルの形状を選択し、選択した関心密度分布モデルの形状情報を生成する。モデル選択部1411−1は、月21の関心対象情報に含まれる形状から、関心密度分布モデルの形状を例えば楕円と決定する。同様に、モデル選択部1411−2は関心密度分布モデルの形状を例えば矩形と決定し、モデル選択部1411−3は関心密度分布モデルの形状を例えば矩形と決定する。この場合、表2によると、モデル選択部1411−1〜1411−3によって生成される関心密度分布モデルの形状情報は、それぞれ、4,2,2となる。
【0032】
ステップS103では、モデルパラメータ生成部1412により、関心対象情報に含まれる位置、大きさ、及び信頼度と、関心密度分布モデルの形状情報とに基づいて、関心密度分布モデルのパラメータを生成する。関心密度の最大値は、関心対象情報に含まれる信頼度の高さに応じて決定される。例えば、関心対象信号として検出した月21、人間22、車23のそれぞれの信頼度が0.6,0.8,0.9である場合、信頼度の高い車23、人間22、月21の順に関心密度の最大値が大きくなるように決定する。
【0033】
ここで、表1に示したように、関心対象記憶部11に関心対象の種類ごとに対応する重みが関連付けられて予め記憶されている場合には、モデルパラメータ生成部1412は、重みを考慮して関心密度分布モデルのパラメータを生成する。表1によると、関心対象の種類が月、人間、車の場合のそれぞれの重みは0.5,1.0,0.8なので、関心対象信号として検出した月21、人間22、車23のそれぞれの信頼度に重みを乗じると、それぞれ0.3,0.8,0.72となる。よって、信頼度に重みを乗じた値の大きい人間22、車23、月21の順に関心密度の最大値が大きくなるように決定する。
【0034】
また、図5(a)に示す画像中には、文字や記号、及び形状が環状の関心対象は含まれていないが、それらが画像中に含まれる場合、関心対象の密度分布タイプを含めた関心対象情報が生成される。そして、モデルパラメータ生成部1412は、関心対象の密度分布タイプに応じて、関心密度分布モデルのパラメータを決定する。例えば、関心対象を取り囲む領域全体が均一に高い密度となるようなパラメータや、関心対象信号領域の外周において密度が高くなるようなパラメータを決定する。
【0035】
ステップS104では、統合分布モデル化部142により、各単一分布モデル化部141においてモデル化された関心密度分布を統合し、入力画像全体の関心密度分布を生成する。上述したように、関心対象画像ごとの関心密度分布は、関心対象画像の検出の信頼度や、関心対象の種類ごとの重みや、関心対象の密度分布タイプによって関心密度の重み付けがなされるが、さらに、統合分布モデル化部142で統合する際に、画像中の関心対象信号の位置や大きさに応じて重み付けをして統合することもできる。例えば、入力画像の中央部は重みを大きくし、入力画像の上下左右の端部は重みを小さくする。
【0036】
図5(b)は、図5(a)に示す画像が入力された際に、関心密度分布モデル化装置1が出力する関心密度分布を説明する図である。図中の点線は、関心密度分布モデルの形状を示している。図中では説明の便宜上、関心密度を3段階で表示しており、関心密度分布モデル内の斜線は、斜線の間隔が狭いほど関心密度が高いことを示している。つまり、月21、人間22、車23のそれぞれについて、関心密度が中央部に向けて高くなるように設定される様子を示している。人間22と車23のように関心密度分布モデルの形状が重なる領域については、関心密度の高い方を採用する。
【0037】
なお、モデル選択部1411で常に同一の形状を選択するようにすることもできる。図5(c)は、モデル選択部1411(141−1〜141−3)の全てが、関心密度分布モデルの形状として円を選択した場合の関心密度分布を示す図である。ただし、図5(b)と図5(c)の比較から明らかなように、関心密度分布モデルの形状を関心対象信号ごとに対応した形状とすることにより、関心対象信号全体を高密度で標本化できる。一方、関心のない領域は低密度で標本化できるため、情報量の観点から効率的となる。
【0038】
このように、本発明の関心密度分布モデル化装置1によれば、関心密度分布を表現するのに統合分布モデルを導入することにより、多峰性の密度分布の表現が可能となる。また、同心円状以外の分布形状も表現可能となる。この結果、画像中に関心対象信号が複数ある場合や、関心対象信号が円形と異なる複雑な形状である場合も、それらに合わせて関心対象信号ごとに効果的にモデル化し、標本化できるようになる。また、画像に対して統一的に分布を算出するため、一貫性が保たれる。すなわち、画像中の関心対象信号が1つの場合も、種々の大きさや形状の関心対象信号が複数ある場合も、適応的に処理することができる。
【0039】
ここで、関心密度分布モデル化装置として機能させるために、コンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、関心対象記憶部11と、関心対象検出部12と、モデル形状記憶部13と、関心密度分布モデル化部14とを機能させるための制御部を、CPU(中央演算処理装置)と、少なくとも1つのメモリで構成される記憶部とで実現できる。また、そのようなコンピュータに、CPUによって所定のプログラムを実行させることにより、関心対象記憶部11と、関心対象検出部12と、モデル形状記憶部13と、関心密度分布モデル化部14の有する機能を実現させることができる。
【0040】
上述の実施例は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
このように、本発明によれば、関心密度分布をモデル化することができるので、信号を標本化する任意の用途に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 関心密度分布モデル化装置
11 関心対象記憶部
12 関心対象検出部
13 モデル形状記憶部
14 関心密度分布モデル化部
121 密度分布タイプ判定部
141 単一分布モデル化部
142 統合分布モデル化部
1411 モデル選択部
1412 モデルパラメータ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが関心を持っている信号である関心対象を標本化する際の関心密度の分布を、統合分布モデルによってモデル化する関心密度分布モデル化装置であって、
関心対象を予め記憶する関心対象記憶部と、
入力信号の中から、前記関心対象記憶部に記憶されている関心対象と類似度の高い関心対象信号を検出し、検出した関心対象信号の入力信号中における位置、大きさ、及び形状を含む情報を関心対象情報として生成する関心対象検出部と、
前記関心対象信号を取り囲む領域の形状である関心密度分布モデルの形状を予め記憶するモデル形状記憶部と、
前記関心対象情報に含まれる形状に基づいて、前記モデル形状記憶部から関心密度分布モデルの形状を選択し、選択した関心密度分布モデルの形状を示す情報を生成するモデル選択部と、
前記関心対象情報に含まれる位置及び大きさと、前記関心密度分布モデルの形状を示す情報とに基づいて、関心密度の最大値を含む関心密度分布のパラメータを生成するモデルパラメータ生成部と、
前記関心密度分布モデルの形状を示す情報及び前記関心密度分布のパラメータから、関心密度分布を生成する統合分布モデル化部と、
を備えることを特徴とする関心密度分布モデル化装置。
【請求項2】
前記関心対象検出部は、複数の関心対象信号を検出し、該関心対象信号ごとに前記関心対象情報を生成する手段を有し、
前記モデル選択部は、該関心対象信号ごとに前記関心密度分布モデルの形状を示す情報を生成する手段を有し、
前記モデルパラメータ生成部は、該関心対象信号ごとに前記関心密度分布のパラメータを生成する手段を有し、
前記統合分布モデル化部は、該関心対象信号ごとに生成した前記関心密度分布を統合して入力信号全体の関心密度分布を生成する手段を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の関心密度分布モデル化装置。
【請求項3】
前記関心対象検出部は、検出の信頼度をさらに含む情報を前記関心対象情報として生成し、
前記モデルパラメータ生成部は、前記信頼度の値に応じて前記関心密度の最大値を変更する手段を有する
ことを特徴とする、請求項2に記載の関心密度分布モデル化装置。
【請求項4】
前記関心対象記憶部には、関心対象の種類ごとに対応する重みが予め記憶されており、
前記関心対象検出部は、前記重みをさらに含む情報を前記関心対象情報として生成し、
前記モデルパラメータ生成部は、前記信頼度に前記重みを乗じた値に応じて前記関心密度の最大値を変更する手段を有する
ことを特徴とする、請求項3に記載の関心密度分布モデル化装置。
【請求項5】
前記関心対象検出部は、関心対象の密度分布タイプを判定し、該判定した関心対象の密度分布タイプをさらに含む情報を前記関心対象情報として生成し、
前記モデルパラメータ生成部は、前記関心対象の密度分布タイプに応じて、前記関心密度分布のパラメータを変更する手段を有する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の関心密度分布モデル化装置。
【請求項6】
ユーザが関心を持っているオブジェクトである関心対象を標本化する際の関心密度の分布を、統合分布モデルによってモデル化する関心密度分布モデル化装置として機能するコンピュータであって、関心対象を予め記憶する関心対象記憶部と、関心密度分布モデルの形状を予め記憶するモデル形状記憶部と有するコンピュータに、
入力信号の中から、前記関心対象記憶部に記憶されている関心対象と類似度の高い関心対象信号を検出し、検出した関心対象信号の入力信号中における位置、大きさ、及び形状を含む情報を関心対象情報として生成するステップと、
前記関心対象情報に含まれる形状に基づいて、前記モデル形状記憶部から関心密度分布モデルの形状を選択し、選択した関心密度分布モデルの形状を示す情報を生成するステップと、
前記関心対象情報に含まれる位置及び大きさと、前記関心密度分布モデルの形状を示す情報とに基づいて、関心密度分布を規定するパラメータを生成するモデルパラメータ生成部と、
前記関心密度分布モデルの形状を示す情報及び前記パラメータにより、関心密度分布を生成するステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−22414(P2012−22414A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158271(P2010−158271)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】