説明

関節ポリシダルオキサジアジンの製造に用いられる化合物

【課題】 それらのキラル中心においてラセミ又は鏡像異性体的に富んでいる関節オキサジアジンの製造に用いられる化合物の提供。
【解決手段】 式:
【化1】


の化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節ポリシダル(arthropodicidal)オキサジアジンの製造に用いられる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
関節ポリシダルオキサジアジンは、特許文献1及び特許文献2中に開示されている。しかしながら、これらの化合物のための製造方法は、経済的な商業的操作のために改善されなければならない。従って、本発明は、好ましい関節ポリシダルオキサジアジンへの好都合なルートを提供する。
【特許文献1】WO92/11249パンフレット
【特許文献2】WO93/19045パンフレット
【発明の開示】
【0003】
本発明は、キラル中心*においてラセミであるか(以下ラセミ的なということもある)又は鏡像異性体に富んでいる(以下鏡像異性体的に富んでいるということもある)式I
【0004】
【化1】

【0005】
[式中、
は、F、Cl又はC〜C−フルオロアルコキシであり、そして
は、C〜C−アルキルである]
の化合物を製造するための方法であって、
(a)*において必要に応じて鏡像異性体的に富んでいる、式II
【0006】
【化2】

【0007】
の化合物を、酸触媒の存在下で式III
N−NHR III
の化合物と反応させて、式IV
【0008】
【化3】

【0009】
[式中、
は、保護基COCH(C)である]
の化合物を生成させること、
(b)式IVの化合物をルイス酸の存在下でジ(C〜C−アルコキシ)メタンと反応させて式V
【0010】
【化4】

【0011】
の化合物を生成させること、
(c)式Vの化合物を水素化させて式VI
【0012】
【化5】

【0013】
の化合物を生成させること、そして
(d)式VIの化合物を式VII
【0014】
【化6】

【0015】
の化合物と反応させて、式IIの化合物と実質的に同じ絶対配置を有する式Iの化合物を生成させること
を含んで成る方法に関連する。
【0016】
本発明は、更にまた、ステップa中の式IIの化合物が所望の式Iの化合物と同じ配置を有する、*において鏡像異性体的に富んでいる、ステップa〜dを含んで成るキラル中心で鏡像異性体的に富んだ式Iの化合物を製造するための方法に関連する。
【0017】
本発明は、更にまた、ステップa〜d及び更にまた
(i)ルイス酸の存在下でp−置換フェニルアセチルハロゲン化物をエチレンと反応させて式VIII
【0018】
【化7】

【0019】
の化合物を製造するステップ、
(ii)VIIIをペルオキシ酸と反応させて式IX
【0020】
【化8】

【0021】
の化合物を製造するステップ、
(iii)酸触媒の存在下でIXをC〜C−アルコールと反応させて式X
【0022】
【化9】

【0023】
の化合物を製造するステップ、
(iv)Xを塩基と反応させて式XI
【0024】
【化10】

【0025】
の化合物を製造するステップ、
並びに
(v)キラル塩基の存在下でXIをヒドロペルオキシドと反応させて鏡像異性体的に富んだIIを製造するステップ
を含んで成り、そしてステップvからの鏡像異性体的に富んだIIはステップaにおいて反応させられ、そして前記式中、R及びRは前に定義した通りである
キラル中心*において鏡像異性体的に富んだ式Iの化合物を製造するための方法に関連する。
【0026】
本発明は、更に個々の方法ステップa、b、c及びdに関連し、そしてa、b;a、b、c;b、c;b、c、d;及びc、dの多段ステップ方法に関連する。
【0027】
本発明は、更にまた、式XIの化合物から式IIの鏡像異性体を製造するための単一方法ステップvに、式IIの化合物を製造するための5つのステップi〜vに、p−置換フェニルアセチルハロゲン化物からの式XIの化合物の製造のための4つのステップi〜iv方法に、式IXの化合物を製造するための2つの方法ステップi〜ii方法に、式IXの化合物を製造するための単一ス方法テップiiに、そして式Xの化合物を製造するための2つのステップii〜iii方法に関連する。
【0028】
本発明は、更にまた、式II:
【0029】
【化11】

【0030】
[式中、
は、F、Cl及びC〜C−フルオロアルコキシの群から選ばれ、そして
は、C〜C−アルキルである]
の化合物の(+)鏡像異性体に関連し、そしてこれらの化合物は実質的に純粋な(+)鏡像異性体である。
【0031】
本発明は、更にまた、式IV、V及びVI:
【0032】
【化12】

【0033】
[式中、
は、F、Cl又はC〜C−フルオロアルコキシであり、
は、C〜C−アルキルであり、そして
は、COCH(C)である]
のラセミ及び鏡像異性体的に富んだ化合物に関連する。
【0034】
本発明は、式VII
【0035】
【化13】

【0036】
の化合物に関する。
【0037】
本発明は、更にまた、式IX及びX
【0038】
【化14】

【0039】
[式中、
は、F、Cl及びC〜C−フルオロアルコキシの群から選ばれれ、そして
は、C〜C−アルキルである]
の化合物に関連する。
【0040】
上の定義においては、“ハロゲン化物”という語は、フッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物を意味する。“C〜C−アルキル”という語は、1、2又は3個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキルを示し、そしてメチル、エチル、n−プロピル又はイソプロピルを意味する。“C〜C−アルコキシ”という語は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ又はイソプロポキシを意味する。“C〜C−フルオロアルコキシ”という語は、部分的に又は全部がフッ素原子によって置換されたメトキシ、エトキシ、n−
プロポキシ又はイソプロポキシを意味し、そして、例えば、CFO及びCFCHOを含む。“C〜C−アルコール”という語は、メチル、エチル、n−プロピル又はイソプロピルアルコールを意味する。
【0041】
式IV、V及びVIの好ましい化合物は、RがメチルでありそしてRが塩素、CFO及びCFCHOである化合物である。最も好ましいものは、フェニルメチル[5−クロロ−2,3−ジヒドロ−2−ヒドロキシ−2−(メトキシカルボニル)−1H−インデン−1−イリデン]ヒドラジンカルボキシレート(IVaと名付ける)、4a−メチル2−(フェニルメチル)−7−クロロインデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−2,4a(3H,5H)−ジカルボキシレート(Vaと名付ける)、及びメチル7−クロロ−2,5−ジヒドロインデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a(3H)−カルボキシレート(VIaと名付ける)である。
【0042】
式II、IX及びXの好ましい化合物は、[式中、Rがメチルであり、そしてRが塩素、臭素、CFO又はCFCHOである]化合物である。最も好ましいものは、(+)メチル5−クロロ−1,3−ジヒドロ−2−ヒドロキシ−1−オキソ−2H−インデン−2−カルボキシレート((+)Haと名付ける)である。
【0043】
本発明の一つの面は、典型的には以下のように操作される4つのステップ、a〜dを含んで成る、式Iの化合物を製造するための方法に関連する。
【0044】
ステップa)は、II(WO 9211249中に詳細に述べられているような、置換されたインダノン、例えば5−クロロ−1−インダノンから例えば製造された)を、酸触媒例えばp−トルエンスルホン酸、硫酸又は酢酸の存在下で、必要に応じて不活性溶媒例えばメタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン及び類似物の中で、約等モル量のIIIと反応させることによってIVを生成させる。典型的な反応条件は、約0.5〜25時間の間の約40〜120℃、好ましくは65〜85℃の温度を含む。化合物IVは、必要に応じて反応混合物の水による希釈の後で、標準的方法例えば濾過によって回収することができる。その代わりに、IVは、溶媒によって抽出し、そして単離なしで次の反応ステップにおいて直接に使用することもできる。
【0045】
ステップb)は、IVを、ルイス酸の存在下で、必要に応じて不活性溶媒例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、α,α,α−トリフルオロトルエン及び類似物の存在下でジ(C〜C−アルコキシ)メタン例えばジメトキシメタン又はジエトキシメタンと反応させることによってVを生成させる。このジ(C〜C−アルコキシ)メタンはモル過剰で良い。ルイス酸はP、BF及びSOを含み、最善の結果のためには、これらは一般的には0.9〜4.0モル当量(Vに対して)を必要とし、更にまた含まれるのは、Vに対して約0.1〜0.5モル当量で使用することができる金属(殊に、スカンジウム、イッテルビウム、イットリウム及び亜鉛)トリフルオロメタンスルホネートである。このステップのための最も好ましいルイス酸はP及びSOである。SOは、錯体例えばDMF・SO(DMFはジメチルホルムアミドである)の形でも良い。典型的な反応条件は、約0.5〜48時間に関して、約20〜150℃、好ましくは50〜60℃、及び約100〜700kPa、好ましくは100〜300kPaの圧力を含む。犠牲にならないルイス酸例えば希土類トリフルオロメタンスルホネートを用いる時には、反応の間に蒸留によって副生成物C〜C−アルコールを連続的に除去することが好ましい。化合物Vは、標準的方法例えば濾過によって回収することができ、次の反応ステップにおいて精製なしで使用することができる。その代わりに、ルイス酸として金属トリフルオロメタンスルホネートを用いる時には、Vは、反応物体を濃縮すること、必要に応じて不活性で水不混和性溶媒例えば酢酸エチルによって希釈するこ
と、水で洗浄して金属トリフルオロメタンスルホネートを除去すること、有機相を濃縮すること、並びに必要に応じて適切な溶媒例えば水性メタノール、ヘキサン及び類似物を添加することによって有機相からVが結晶化するようにせしめることによって回収することができる。
【0046】
ステップc)は、水素化金属触媒例えばパラジウム、好ましくは物質例えば炭の上に支持されたものの存在下で、不活性溶媒例えば酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、ジエトキシメタン又はC〜C−アルコールの中で、水素ソースからの水素又は好ましくは分子水素それ自体とVとを反応させることによってVIを生成させる。典型的な反応条件は、約3時間に関して、約0〜30℃、好ましくは約20℃の温度、及び約105〜140kPa、好ましくは35kPaの圧力を含む。化合物VIは、標準的方法、例えば濾過すること及び後続のバッチへのリサイクルのためにパラジウムを回収すること、有機相を分離すること、溶媒を除去することによって有機相を濃縮すること、及び必要に応じて水性C〜C−アルコール、アセトニトリル又は脂肪族炭化水素例えばヘキサンを添加することによってVIの結晶化を誘発させることによって、溶液から回収することができる。好ましくは化合物VIは、有機相中の溶液からの単離なしで次のステップにおいて使用される。
【0047】
ステップd)は、VIを約モル当量のVIIと、必要に応じて約1.0〜1.5モル当量(VIIに関して)の酸スカベンジャー例えばトリアルキルアミン、ピリジン又は、好ましくは水性炭酸又は重炭酸ナトリウムの存在下で、不活性溶媒例えばトルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエトキシメタン及び類似物の中で反応させることによってIを生成させる。典型的な反応条件は、約0.2〜2時間の間の約0〜30℃の温度を含む。化合物Iは、標準的方法によって、例えば反応混合物を水性酸又は水性塩化ナトリウムで洗浄し、有機相を濃縮し、そして必要に応じてC〜C−アルコール、水、アルコール−水混合物又は脂肪族炭化水素例えばヘキサンの添加によって有機相からのIの結晶化を誘発することによって回収することができる。ステップcとdは、Vの水素化の間にVII及び必要に応じた酸スカベンジャーを添加することによって単一の反応ポット中に合わせることができる。このやり方においては、化合物VIは、それが生成させるとすぐにアシル化されてIを与える。合わせられたステップc及びdのための典型的な溶媒は、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン及び類似物である。酸スカベンジャーは、トリアルキルアミン例えばトリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルアミン及び類似物、又は固体無機化合物例えば重炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、ピロリン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム塩及び類似物で良い。
【0048】
反応ステップa〜dは、キラル中心*での配置を実質的に保留しながら進む。好ましい実施態様においては、ステップaにおいて用いられる式IIの化合物は、鏡像異性体的に富んでいて、それによって同じ絶対配置を有する鏡像異性体的に富んでいる式Iの化合物を供給する。鏡像異性体的に富んでいるということは、化合物のバルクサンプルが(+)か(−)のどちらかの過剰の鏡像異性体を含み、そして100%を含みそれまでの純粋な鏡像異性体の、鏡像異性体の1対1(ラセミ)混合物よりも大きい何かを含むことを意味する。かくして、例えば、25%(−)鏡像異性体と75%(+)鏡像異性体を有する富んだ化合物は、50%のラセミ化合物及び50%の純粋な(+)鏡像異性体の混合物と見なされ、そして50%の鏡像異性体的に過剰な(+)鏡像異性体を有するとされる。本発明の殊に好ましい実施態様においては、式IIの化合物は(+)鏡像異性体に富んでいて、これは(+)鏡像異性体に富んだ式Iの化合物を導き、そして(+)鏡像異性体は一層関節ポリシダル活性鏡像異性体であることが見い出された。式IIの化合物の富化は好ましくは少なくとも10%そして更に好ましくは少なくとも20%の(+)鏡像異性体である。
【0049】
式IIの鏡像異性体的に富んだ化合物は、例えば、標準的方法に従ってラセミ混合物の鏡像異性体を物理的に分離することによって製造することができる。しかしながら、このような方法は、大規模で操作するのが困難であり、そして望まない鏡像異性体を廃棄しなければならないのでしばしば不経済である。本発明の好ましい実施態様においては、式IIの鏡像異性体的に富んだ化合物を、5つのステップ、i〜vを含んで成る鏡像異性体選択的方法によって製造する。“鏡像異性体選択的”ということは、キラル生成物の所望の鏡像異性体が、必ずしも排他的ではないけれども、優先的に生成されることを意味する。
【0050】
ステップi)は、購入することができる(例えばSpectrum Chemical
Manufacturing Co.から)か又は既知の手順によって酸から製造することができそして必要に応じてその場で生成させることができる適切に置換されたフェニルアセチルハロゲン化物を、約1〜4モル当量、好ましくは2モル当量のエチレンガス及び約0.9〜1.5モル当量のルイス酸例えば塩化アルミニウムと、約3〜10重量部の不活性溶媒例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、二硫化炭素、又はo−ジクロロベンゼンの中で反応させることによってVIIIを生成させる。典型的な反応条件は、約−20〜+30℃、好ましくは−5〜0℃の範囲の温度、約60〜400kPaの範囲の圧力及び約0.5〜8時間の反応時間を含む。化合物VIIIは、標準的方法によって単離することができ、又は溶媒が適切、例えばジクロロメタン又はジクロロエタンである時には、反応混合物はVIIIの単離なしで次のステップにおいて用いることができる。
【0051】
ステップii)は、VIIIを、約2.5〜3.5当量のペルオキシカルボン酸、好ましくはペルオキシ酢酸と、不活性溶媒例えば酢酸、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、又は1,2−ジクロロエタンの中で反応させることによってIXを生成させる。典型的な反応条件は、約15〜55℃、好ましくは25〜45℃の範囲の温度、及び約5〜35時間の反応時間を含む。温度は、安全上の理由のために低く保持する。必須ではないが、好ましくは、この反応は、0.5〜2.5モル当量の緩衝剤例えば酢酸ナトリウムの存在下で行われる。VIIIの溶液へのペルオキシカルボン酸の添加の速度は、過剰のペルオキシカルボン酸を集積させることを回避するために制御される。生成物は、例えば、水で急冷し、必要に応じて還元剤例えば二酸化硫黄を添加して過剰の酸化剤を除去し、そして濾過することによって単離することができる。必要な場合には、生成物の濾過の前にpHを3未満に調節することができる。 ステップiii)は、標準的方法によるIXのエステル化によってXを生成させる。好ましい実施態様においては、IXを、アルコール溶媒(約2〜20重量部)と、断水剤としての約1〜20モル当量の対応するアルコールのカーボネート誘導体及び約0.001〜0.2モル当量の酸触媒、例えば硫酸又はp-トルエンスルホン酸の存在下で反応させる。ここで、典型的な反応条件は、75〜105℃の範囲の温度、約100〜500kPaの範囲の圧力及び約10〜30時間の反応時間を含む。化合物Xを標準的方法によって単離することができる。その代わりに、反応混合物をXの単離なしで次のステップにおいて用いることができる。好ましくは、Xはステップivの前には単離されない。
【0052】
ステップiv)は、Xを強塩基例えばアルカリ金属アルコキシド又は水素化物と、適切な溶媒例えば対応するアルコール、ベンゼン、トルエン又はキシレンの中で反応させることによってXIを生成させる。典型的な反応条件は、約60〜90℃の温度、約100〜500kPaの圧力及び約0.5〜10時間の反応時間を含む。生成物は、アルカリ金属塩として回収しそして例えば濾過によって単離することができる。その代わりに、生成物をまず酸例えば氷酢酸又は薄い水性鉱酸によって中和し、次に例えば濾過又は抽出によって単離することができる。
【0053】
ステップv)は、XIを約0.9〜1.5当量のヒドロペルオキシド例えば過酸化水素
及び過酸化水素のモノエーテルと、約0.001〜1.5当量の光学的に活性なアミン塩基及び必要に応じて不活性溶媒の存在下で反応させることによって鏡像異性体的に富んだIIを生成させる。過酸化水素の好ましいモノエーテルは、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド及びそれらの組み合わせを含む。適切な溶媒は、脂肪族炭化水素例えばシクロヘキサン、芳香族炭化水素例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン及びクメン、ハロゲン化炭化水素例えばジクロロメタン、ジクロロエタン及びオルトジクロロベンゼン、ケトン例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びメチルイソプロピルケトン、エステル例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、並びにエーテル例えばジエチルエーテル及びテトラヒドロフランを含む。芳香族炭化水素溶媒が好ましい。典型的な反応条件は、約−5〜50℃の範囲の反応温度及び約2時間〜8日間の反応時間を含む。アミン塩基は、好ましくは、キナノキ(cinchona)アルカロイド又はそれらの誘導体である。好ましくは、(+)鏡像異性体に富んだII((+)IIと名付ける)を製造するためには、キナノキアルカロイドはシンコニン、クイニジン、シンコニン又はクイニジンの対応するジヒドロ誘導体そして上記のものの任意の組み合わせであり、これらの中でキラルアルカロイドは[8−(R)、9−(S)]配置を有する。(−)鏡像異性体に富んだ式IIの化合物は、[8−(S)、9−(R)]配置を有する塩基、例えばシンコニジン、キニン及びそれらの誘導体の使用によって得られる。生成物は、標準的方法、例えば濾過、必要に応じて引き続く触媒を除去するために十分な量の水性酸又は無極性溶媒例えばヘキサンのどちらかによる希釈によって回収することができる。その代わりに、生成物混合物を、極性の水不混和性溶媒例えば酢酸エチルによって吸収し、水性酸によって洗浄して触媒を除去し、濃縮し、そして結晶化させることができる。必要に応じて、IIを、適切な溶媒、例えば酢酸イソプロピルと共につき砕き又は再結晶させて、鏡像異性体的に富んだ混合物から純粋な鏡像異性体を分離することができる。
【0054】
好ましい実施態様においては、ステップvにおける溶媒は、その中では式XIの化合物が式IIの対応する化合物よりも実質的により大きい溶解度を有する溶媒である。このような溶媒によれば、IIは沈殿するであろうしかつ濾過によって回収することができ、そして何らかの溶けたII、未反応XI及び触媒を含む濾液は、引き続くバッチに好都合にリサイクルすることができる。好ましくは、溶媒はまた水不混和性であり、その結果引き続くバッチにおける使用に先立って、水性塩基及び/又は水で洗浄して酸性不純物及び水可溶性副生成物の量を減らすことができる。濾液のリサイクルは生成物ロスを最小にし、そして触媒の一層有効な使用を与える。殊にIIaのような化合物の製造のためには、芳香族炭化水素例えばキシレンは、殊にIIaのような化合物の製造のためには、このやり方における使用のための特に好ましい溶媒である。
【実施例1】
【0055】
式Iの化合物を生成させるためのステップa〜dの例示
ステップa:フェニルメチル[5−クロロ−2,3−ジヒドロ−2−ヒドロキシ−2−(メトキシカルボニル)−1H−インデン−1−イリデン]ヒドラジンカルボキシレート(化合物IVa)の生成
頭上撹拌機、温度計、還流コンデンサー及び窒素入り口を備えた1Lの三ッ口フラスコに、87g(0.363モル)のメチル5−クロロ−2,3−ジヒドロ−2−ヒドロキシ−1−オキソ−1H−インデン−2−カルボキシレート、63.5g(0.380モル)のフェニルメチルヒドラジンカルボキシレート(Lancaster Synthesisから)、1.8g(0.01モル)のp-トルエンスルホン酸一水和物、及び300mLのメタノールを仕込んだ。スラリーを還流(67℃)に加熱すると、オレンジ色の溶液が得られ、それから生成物が次第に沈殿した。14〜16時間後に、混合物を5℃に冷却しそして濾過した。濾過ケークを100mLの冷たいメタノールで洗浄し、そして60℃で真空下で窒素パージしながら2時間の間の乾燥させると、白い結晶性固体として135
g(インデンカルボキシレートを基にして96%)のIVaが得られた。アセトニトリルからの再結晶によって分析サンプルを製造した、mp 187〜188℃;H NMR(CDCl)δ3.23(d,1H,J=18Hz)、3.48(d,1H,J=18Hz)、3.7(s,3H)、4.58(br s,1H)、5.19(br AB q,2H)、7.18(d,1H)、7.25(dのd、1H)、7.45(m,5H)、7.75(br d,1H)、9.55(br s,1H)。生成物は、殆ど排他的にZ−(syn−)異性体であると思われる。
【0056】
ステップb:4a−メチル2−(フェニルメチル)−7−クロロインデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−2,4a(3H,5H)−ジカルボキシレー(化合物Va)の生成
頭上撹拌機、温度計、還流コンデンサー及び窒素入り口を備えた乾いた1Lの三ッ口フラスコに、42gのケイソウ土、500mLの1,2−ジクロロエタン、及び100mLのジメトキシメタンを仕込んだ。五酸化リン(42g、0.31モル)を外部冷却(20℃のバス)しながら窒素下で添加し、そしてこの混合物を20〜25℃で15分間撹拌せしめ、その後で97g(0.25モル)のIVaを少しずつ添加した。この混合物を55〜60℃で2時間加熱しそして次に濾過した。濾過ケークを1,2−ジクロロエタンの二つの部分で洗浄し、そして合わせた濾液を蒸留によって体積を約150mLに減らした。300mLのメタノール中の約5gのNaOAcの添加によって、pHを約1.5から約4に上げ、そして約150mLの溶媒の蒸留によって、残留ジクロロエタンを除去した。次に、約30mLの水を添加し、そしてこの混合物を5℃に冷却しかつ濾過した。濾過した生成物を100mLの冷たいメタノールで洗浄し、そしてフィルターの上で一晩吸引乾燥すると、89g(IVaを基にして89%)のVaが得られた。イソプロパノールからの再結晶によって分析サンプルを製造した、mp 122〜124℃;H NMR(CDCl)δ3.16(d,1H,J=16Hz)、3.42(d,1H,J=16Hz)、3.64(s,3H)、5.12(d,1H,J=10Hz)、5.26(AB q,2H,J=12Hz)、5.53(br,d,1H,J=10Hz)、7.2〜7.45(m,7H)、7.65(d,1H,J=9Hz)。
【0057】
ステップc:メチル7−クロロ−2,5−ジヒドロインデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a(3H)カルボキシレート(化合物VIa)の生成
磁気撹拌機、温度計、pHプローブ、及び三方止めコックを有するガス入り口バルブを備えた1Lの三ッ口フラスコに、窒素をどっと流し、そして27.3g(0.13モル)のクエン酸一水和物、100mlの水、10.4g(0.13モル)の50%の水性NaOH、0.6gの炭素上のパラジウム、500mLの酢酸メチル、及び52.0g(0.13モル)のVaを仕込んだ。反応容器を窒素でパージし、そしてこの混合物を水素の流れを表面下で(subsurface)通しながら、5〜10℃で約3時間激しく撹拌した。この反応をVaの消失に関してHPLCによって監視した。反応が完結した(約4時間)時に、反応容器を窒素でパージし、そして炭素上のパラジウムをケイソウ土のパッドの上に濾過し、そして50mLの酢酸メチル及び20mLの水でリンスした。濾液を分離し、そしてVIaを含む有機相を次のステップにおいて直接に使用した。別のバッチにおいては、ステップcのための上の手順を繰り返し、そして約400mLの溶媒を蒸留によって除去し、約100mLのヘキサンを添加し、そして結晶化生成物を吸引乾燥させることによってVIaを単離した。mp 124〜127℃;H NMR(CDCl)δ3.18(d,1H,J=17Hz)、3.40(d,1H,J=17Hz)、3.65(d,3H)、4.43(d,1H,J=7Hz)、4.79(d,1H,J=7Hz)、6.10(br,s,1H)、7.25(m,2H)、7.54(d,1H,J=8Hz)。
【0058】
ステップd:メチル7−クロロ−2,5−ジヒドロ−2[[(メトキシカルボニル)]4
−(トリフルオロメトキシ)−フェニル]アミノ]カルボニル]インデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a(3H)−カルボキシレート(化合物Ia)の生成
VIaを含むステップcからの有機相に、水性飽和NaHCO(140g、約0.15モル)、引き続いて41g(0.14モル)のメチル(クロロカルボニル)[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]カルバメート(化合物VII)を添加し、そしてこの混合物を10〜15℃で約1時間撹拌した。有機相を分離し、乾燥し(MgSO)し、真空下で濃縮して約400mLの酢酸メチル除去し、そして加熱温度が64℃に到達するまで、300mLのメタノールとの蒸留によって残留溶媒を交換した。この混合物を5℃に冷却し、そして生成物を濾過し、70mlの冷たいメタノールで洗浄しかつ吸引乾燥すると、58gのIa(ステップcからのVaを基にして、85%総括)が得られた。mp 139〜141℃;H NMR(CDCl)δ3.25(d,1H,J=16Hz)、3.48(d,1H,J=16Hz)、3.70(s,3H)、3.71(s,3H)、5.20(d,1H,J=10Hz)、5.69(d,1H,J=10Hz)、7.2〜7.4(m,6H)、7.50(d,1H,J=8Hz)。
【実施例2】
【0059】
式IIの化合物を生成させるステップi〜vの例示
ステップi:6−クロロ−3.4−ジヒドロ−2(1H)−ナフタレンの生成(化合物VIIIa)
フラスコに、34g(0.20モル)の4−クロロフェニル酢酸(PCPA)及び150mLの1,2−ジクロロエタンを仕込んだ。懸濁液を撹拌し、25g(0.21モル)の塩化チオニルを添加し、そして生成した溶液を2〜3時間の間80〜90℃で加熱した。蒸留ヘッドを取り付け、そして25mLの溶媒を蒸留して残留SO及びHClを除去した。酸塩化物の薄いオレンジ溶液を5℃に冷却し、塩化アルミニウム(30g、0.22モル)を−5〜0℃で仕込み、そして蒸留装置を風船型フラスコと置き換えた。エチレンガス(12g、0.43モル)を、温度を−5〜0℃で維持しながら、少しずつ風船型フラスコに仕込んだ。赤い溶液をカニューレによって、冷却温度を20〜30℃で維持するような速度で次第に200mLの5℃の冷却水の中に移した。この混合物を25℃で1時間の間撹拌した後で、VIIIaを含む下部の有機層を分離し、そして100mLの5%水性HClで洗浄した。
【0060】
ステップii:2−カルボキシ−5−クロロベンゼンプロパン酸(化合物IXa)の生成
前のステップからのVIIIaの溶液を、頭上撹拌機を備えたフラスコに仕込んだ。酢酸ナトリウム(16g、0.20モル)をポットに仕込み、そしてこの混合物を、114g(0.60モル) の32%の過酢酸を3〜4時間にわたって一定添加漏斗から連続的に添加しながら、冷却によって25〜30℃で撹拌した。混合物を25℃で更に20時間撹拌せしめ、そして次に300mLの0.8NのHClを添加し、そして生成したスラリーを5℃に冷却した。この混合物を濾過し、冷たい5%水性NaHSO、水で洗浄し、吸引乾燥させ、そして50℃及び減圧で真空オーブン中で一晩乾燥させると、白い結晶性固体、m.p.156〜158℃として35〜36g(PCPAを基にして76〜78%の収率)の99%純粋なIXaが得られた。
【0061】
ステップiii:5−クロロ−2−(メトキシカルボニル)ベンゼンプロパン酸メチル(化合物Xa)の生成
熱時計及び頭上撹拌機を備えたフラスコに、45.7g(0.200モル)のIXa、5mLのメタノール、及び100mLの炭酸ジメチルを仕込んだ。硫酸(1g)を添加し、そしてこの混合物を窒素下で85℃で20時間撹拌した。酸を3gの25%ナトリウムメトキシド溶液によって中和し、そして全部の炭酸ジメチル(DMC)を反応フラスコから蒸留させた。蒸留の間にはメタノール(100〜200mL)を添加して、メタノール/DMC共沸混合物(62℃)を生成させ、さもなければ90℃で蒸留するであろうDM
Cの除去を容易にした。このステップからの生成物は、単離なしで次のステップ中に持ち込んだ。
【0062】
ステップiv:メチル5−クロロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロインデン−2−カルボキシレート(化合物XIa)の生成
殆どのDMCを除去した後で、前のステップからのXaのメタノール溶液に、追加の150mLのメタノール、引き続いてメタノール中の47.5g(0.22モル)の25%NaOMeを添加した。溶液を70℃で維持し、そして効果的な撹拌のために必要とされる最小レベルまでメタノールを蒸留した。反応が完了した時に、混合物を周囲温度に冷却した。酢酸(3g、0.05モル)、引き続いてpHを5〜6にするために十分な1NのHClを添加した。混合物を5℃に冷却し、濾過し、そして粗製固体を水、次に冷たいヘキサンで洗浄すると、m.p.80〜82℃のベージュの固体として40〜42g(89〜93%の収率)のXIaが得られた。
【0063】
ステップv:(+)メチル5−クロロ−1,3−ジヒドロ−2−ヒドロキシ−1−オキソ−2H−インデン−2−カルボキシレート(化合物(+)IIa)の生成
10.0gのXIa、イソーオクタン中の17mL(51ミリモル)の3.0Mのt−ブチルヒドロペルオキシド、70mLの酢酸イソプロピル及び0.2gのシンコニン(Aldrich(R) Chemical Co.)の混合物を室温で6日間周囲温度で撹拌した。この混合物に、約100mLの酢酸エチル、30mLの希薄水性重亜硫酸ナトリウム及び20mLの2NのHClを添加した。この混合物を振盪しそして分離し、そして有機抽出物を逐次水とブラインで洗浄した。溶媒を真空下で除去し、そして粗製固体生成物をヘキサンで洗浄すると、キラルカラムを使用するHPLC分析によって測定されるように72%(+)対28%(−)の鏡像異性体比を有する7.31gのIIa(68%の収率)が得られた。(+)に富んだIIaを酢酸イソプロピルから再結晶させて、4〜5gの純粋な(+)IIaを生成させた。m.p. 163〜165℃;[α]25 +115.1゜(CHCl、c=1.0);H NMR(CDCl)δ3.21(d,1H,J=18Hz)、3.67(d,1H,J=18Hz)、3.72(s,3H)、4.07(s,1H)、7.38(dのd,1H,J=8及び1Hz)、7.47(d,1H,J=1Hz)、及び7.70(d,1H,J=8Hz)。
【実施例3】
【0064】
鏡像異性体的に富んだIIaから出発しそして鏡像異性体的に富んだ
Iaを生成させるステップa〜dの代わりの操作の例示
ステップa:(+)IVa)の生成
Dean−Stark装置及び窒素入り口を備えた1Lの一ッ口フラスコに、75g(0.312モル)の(+)IIa(50%鏡像異性体的に過剰)、54.6g(0.358モル)のフェニルメチルヒドラジンカルボキシレート、1.78g(0.0094モル)のp-トルエンスルホン酸一水和物(Aldrich(R) Chemical Company)、及び275mLの1,2−ジクロロエタンを仕込んだ。スラリーを還流に加熱すると、オレンジ色の溶液が得られ、それから生成物が次第に沈殿した。Dean−Starkトラップ中に収集された水相を除去した。2時間後に、混合物を室温に冷却した。この反応混合物をステップbにおいて直接に使用した。
【0065】
ステップb:(+)Vaの生成
頭上撹拌機、温度計、還流コンデンサー及び窒素入り口を備えた2Lの三ッ口フラスコに、88.5gのケイソウ土(Celite(R))及び300mLの1,2−ジクロロエタンを添加した。五酸化リン(88.5g、0.623モル)、引き続いて120mLのジメトキシメタンを添加した。ステップaからの1,2−ジクロロエタン中の(+)IVaのスラリーを次に添加した。この混合物を35〜40℃で5時間加熱し、そして次に
30℃に冷却しそして濾過した。濾過ケークを135mLの1,2−ジクロロエタンで洗浄し、そして合わせた濾液を最小体積にまで蒸留した。メタノールを添加し、そして蒸留を続けた。すべての1,2−ジクロロエタンが除去されそして約500mLのメタノールがポット中に留まった時に、蒸留を停止しそしてポットを45℃に冷却した。生成物は沈殿し始め、そして120mLの水を添加した。冷却を20℃まで続けた。混合物を濾過し、そして濾過ケークを370mLの3:1メタノール/水で洗浄した。固体を一晩真空下で80℃で乾燥させると、100.5g(2ステップに関して80.5%)の(+)Vaが生成した。H NMRスペクトルは、実施例1におけるVaに関して得られたものと一致した。純度は、HPLCによって99.3%であった。
【0066】
ステップc:化合物(+)VIaの生成
磁気撹拌機、温度計、pHプローブ、及び三方止めコックを有するガス入り口バルブを備えた500mLの三ッ口フラスコに、窒素をどっと流し、そして50mLの0.5Mのリン酸二水素ナトリウム緩衝溶液(pH 3.5)及び0.2gの50%水で湿った炭素上の5%パラジウムを仕込んだ。二相懸濁液を周囲温度で0.5時間撹拌した。分離フラスコにおいて、10g(0.025モル)の(+)Vaを、窒素下で50mLの酢酸メチルに添加し、35℃に加熱し、そして溶けるまで撹拌した。(+)Vaの溶液をPd触媒懸濁液に添加し、そしてこの混合物を10℃に冷却した。反応容器を排気し、そして混合物を水素の流れを表面下で通しながら、10℃で激しく撹拌した。この反応を、TLC及びGCによって(+)Vaの消失に関して監視した。反応が完結した(約1.5時間)時に、反応容器を排気しそして窒素でパージし、反応混合物をケイソウ土のパッドを通して濾過し、そしてフィルターパッドを追加の20mLの酢酸メチルで洗浄した。これらの液相を分離し、そして(+)VIaを含む酢酸メチル相をステップdに直接に運んだ。
【0067】
ステップd:(+)Iaの生成
(+)VIaを含むステップcからの酢酸メチル溶液を、38mLの水の中の3gのNaHCOの溶液に添加した。この混合物を窒素下で10℃に冷却し、そして7.43g(0.025モル)のVIIを一度に添加した。反応物を10℃で1時間撹拌した。酢酸メチル相を分離し、そして真空下で濃縮して約100mLの溶媒を除去した。50mLのメタノールを添加し、そしてスラリーを再度蒸発させて、残りのメタノールを酢酸メチル/メタノール共沸混合物として除去した。最後の50mLのメタノールを添加し、そして懸濁液を還流に加熱した。加熱を続けている時にケイソウ土(0.4g)を添加し、そして次に17mLの水を滴加した。生成したスラリーを、冷却し、濾過し、33mLの2:1メタノール/水で洗浄し、そして真空乾燥させると11.16gの富んだ(+)Ia(Vaを基にしてステップc及びdに関して78%の総括収率)が得られた。キラルHPLCによる分析は、(+)鏡像異性体の42%の過剰を示した。
【実施例4】
【0068】
ステップc及びdの代わりの操作の例示
ステップc:VIaの生成
磁気撹拌機、温度計、pHプローブ、及び三方止めコックを有するガス入り口バルブを備えた1Lの三ッ口フラスコに、窒素をどっと流し、そして580mLの酢酸メチル、0.164gの酢酸ナトリウム(2モル%)、及び0.8gの炭素上の5%パラジウム触媒を仕込んだ。約200mLの溶媒を蒸留によって除去し、そして生成した乾いた溶媒/触媒懸濁液を50℃に冷却せしめ、そして40.0g(0.1モル)のVaを一度に添加した。この混合物を撹拌してVaを溶かし、そして次に周囲温度に冷却した。反応容器を窒素でパージし、次に混合物を、水素の流れが表面下に入れられる時に周囲温度で激しく撹拌した。反応は、Vaの消失に関して監視した。反応が完結した時に(約3.0時間)、反応容器を排気しそして窒素でパージした。炭素上のパラジウムを、ケイソウ土のパッドの上に濾過し、そして50mLの乾いた酢酸メチルによってリンスした。濾液をステップ
dにおいて直接に使用した。
【0069】
ステップd:Iaの生成
VIaを含むステップcからの酢酸メチル溶液を、150mLの水の中の12gのNaHCOの溶液と合わせた。この混合物を窒素下で10℃に冷却し、そして29.7g(0.1モル)の化合物VIIを0.5時間にわたって一度に添加した。混合物を10〜15℃で更に約1時間撹拌した。次に、酢酸メチル相を分離し、そして真空下で濃縮して約400mLの溶媒を除去した。メタノール(50mL)を添加し、そして溶媒を真空中で再び除去した。次に70%の水性メタノール(100g)を添加し、そしてこの混合物をアイスバスから冷却しながら45分間撹拌した。生成物を濾過し、25mLの冷たい70%水性メタノールで洗浄し、そして真空乾燥させると、51g(88.9%HPLC分析を基にしてVaからの86%の総括収率)、mp 135〜138℃が得られた。
【実施例5】
【0070】
ステップvの代わりの操作の例示
ステップv:化合物(+)IIa)の生成
11.25g(50ミリモル)のVa、70mLの混合キシレン、及び1.4gのシンコニン(Aldrich(R) Chemical Co.)の懸濁液を窒素下で撹拌し、そして7.0g(70ミリモル)の90%水性t−ブチルヒドロペルオキシド(Aldrich(R) Chemical Co.を添加した。生成した溶液を室温で24時間の間撹拌せしめると、その時間の間に生成物が結晶化し始めた。次に、反応混合物を、100mLの酢酸エチルによって希釈し、そして二つの部分の50mLの飽和水性重炭酸ナトリウム、50mLの1Nの水性塩化水素酸、及び50mLの飽和水性重亜硫酸ナトリウムによって逐次洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムの上で乾燥させ、そして溶媒を減圧下で除去すると、10.6gの富んだ(+)IIa(86%純度、Vaを基にして76%収率)が得られた。キラルHPLCによる分析は、(+)鏡像異性体の45%の鏡像異性体を示した。
【実施例6】
【0071】
ステップbの代わりの操作の例示
ステップb:化合物Vaの生成
磁気撹拌機、温度計、及び二つのガス入り口を備えた500mLの四ッ口フラスコに、49.9g(0.128モル)のIVa及び250mLのジエトキシメタンを仕込んだ。この混合物を−10℃に冷却し、そして反応容器を排気した(〜24cmHg)。三酸化硫黄ガスを、反応混合物の温度が−10℃〜0℃に維持されるような速度で冷却反応容器に入れた。添加が完了した時に、窒素を入れて真空を解放した。この混合物を室温まで加温せしめ、4.75時間の間撹拌し、良好な撹拌をしながら室温で50mLの水を添加し、そして更に2時間撹拌した。混合物を濾過し、そして濾液から有機相を分離しかつ蒸発させた。残渣を125mLのメタノール中に溶かし、そして濾過からの固体と合わせた。このスラリーに、125mLの水を滴加し、その後で混合物を1.5時間撹拌し、次に濾過した。濾過ケークを室温で真空下で乾燥させると、46.3g(IVaを基にして90%)のVaが得られた。生成物の小部分をメタノールから再結晶して、サンプルを供給したが、それのmp及びH NMRスペクトルは、実施例1ステップbにおいて得られたVaのものと一致した。
【実施例7】
【0072】
メチル(クロロカルボニル)[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]
カルバメート(化合物VII)の製造
第一反応フラスコ中で、70.5g(0.30モル)のメチル4−(トリフルオロメトキシ)フェニルカルバメートを、700mLのジクロロメタン中に溶かす。次に、鉱油中
の14.0gの60%水素化ナトリウム(0.35モル)を、引き続いて60mLのglyme(エチレングリコールジメチルエーテル)を15分以内に添加する。発熱反応が起こりそして反応混合物の温度は周囲の室温のものよりも少し高く上昇する。反応混合物を外部加熱なしで一晩(約16時間)撹拌する。蒸留塔を備えた第二反応フラスコにおいては、120g(1.2モル)のホスゲンを、5〜10℃に冷却されている300mlのジクロロメタン中に溶かす。濃いスラリーである第一フラスコからの反応混合物を、ホスゲン溶液を含む第二フラスコに5〜10℃でゆっくりと添加する。添加が完了した後では、塔頂温度がジクロロメタンだけが塔頂を越えて来ていることを示すまで、蒸留によって過剰のホスゲンを除去する。蒸留を停止し、そして反応混合物を約0℃まで冷却する。200mLの氷水を添加して、副生成物の塩化ナトリウムを溶かす。ジクロロメタン層を水性層から分離し、濾過しそしてMgSOで乾燥させる。乾燥されたジクロロメタン溶液、化合物VIIを含むcを、次に、蒸留してジクロロメタンを取り去り、そして交換に、全部で400mLのヘキサンを添加する(溶媒交換手順)。ジクロロメタンが除去されそしてヘキサンが蒸留し始める時に、蒸留を停止する。次に、ヘキサン溶液を5℃に冷却すると、その際にVIIが沈殿するが(種付けが必要とされる可能性がある)、追加の冷たいヘキサンで洗浄しそして乾燥させる。収率は典型的には、m.p.97〜99℃の97〜98%の純粋なVIIに関して約94%である。H NMR(CDCl)δ3.80(S,3)、7.29(S,4)
以下に本発明及び本発明の関連する発明の主な特徴及び態様を列挙する。
【0073】
1. キラル中心*においてラセミ的な又は鏡像異性体的に富んでいる式I
【0074】
【化15】

【0075】
[式中、
は、F、Cl又はC〜C−フルオロアルコキシであり、そして
は、C〜C−アルキルである]
の化合物を製造するための方法であって、
(a)*において必要に応じて鏡像異性体的に富んでいる、式II
【0076】
【化16】

【0077】
の化合物を、酸触媒の存在下で式III
N−NHR III
の化合物と反応させて、式IV
【0078】
【化17】

【0079】
[式中、
は、保護基例えばCOCH(C)及び類似物である]
の化合物を生成させること、
(b)式IVの化合物をルイス酸の存在下でジ(C〜C−アルコキシ)メタンと反応させて式V
【0080】
【化18】

【0081】
の化合物を生成させること、
(c)式Vの化合物を水素化させて式VI
【0082】
【化19】

【0083】
の化合物を生成させること、そして
(d)式VIの化合物を式VII
【0084】
【化20】

【0085】
の化合物と反応させて、式IIの化合物と実質的に同じ絶対配置を有する式Iの化合物を生成させること
を含んで成る方法。
【0086】
2. 式V:
【0087】
【化21】

【0088】
の化合物を作るための方法であって、
(a)*において必要に応じて鏡像異性体的に富んでいる、式II
【0089】
【化22】

【0090】
の化合物を、酸触媒の存在下で式III
N−NHR III
の化合物と反応させて、式IV
【0091】
【化23】

【0092】
[これらの式中、
は、F、Cl又はC〜C−フルオロアルコキシであり、
は、C〜C−アルキルであり、そして
は、保護基COCH(C)である]
の化合物を生成させること、及び
(b)式IVの化合物をルイス酸の存在下でジ(C〜C−アルコキシ)メタンと反応させること
を含んで成る方法。
【0093】
3. 式Vの化合物を水素化させることを含んで成る、式VI:
【0094】
【化24】

【0095】
の化合物を作るための2項に記載の方法。
【0096】
4. 式IV
【0097】
【化25】

【0098】
[式中、
は、F、Cl又はC〜C−フルオロアルコキシであり、
は、C〜C−アルキルであり、そして
は、保護基COCH(C)である]
の化合物を、ルイス酸の存在下でジ(C〜C−アルコキシ)メタンと反応させて、式V
【0099】
【化26】

【0100】
の化合物を生成させ、そして式Vの化合物を水素化させることを含んで成る、式VI:
【0101】
【化27】

【0102】
の化合物を作るための方法。
【0103】
5. 式VIの化合物を式VII
【0104】
【化28】

【0105】
の化合物と反応させることを含んで成る、式I
【0106】
【化29】

【0107】
の化合物を作るための、4項に記載の方法。
【0108】
6. 式I
【0109】
【化30】

【0110】
[式中、
は、F、Cl又はC〜C−フルオロアルコキシであり、そして
は、C〜C−アルキルである]
の化合物を作るための方法であって、式V
【0111】
【化31】

【0112】
[式中、
は、保護のCOCH(C)である]
の化合物を水素化させて、式VI
【0113】
【化32】

【0114】
の化合物を生成させ、そして
式VIの化合物を式VII
【0115】
【化33】

【0116】
の化合物と反応させることを含んで成る方法。
【0117】
7.
【0118】
【化34】

【0119】
[式中、
は、F、Cl又はC〜C−フルオロアルコキシであり、
は、C〜C−アルキルであり、
は、COCH(C)であり、そして
は、H及びCOCH(C)から選ばれる]
の群から選ばれたラセミ又は鏡像異性体的に富んだ化合物。
【0120】
8. 式II:
【0121】
【化35】

【0122】
[式中、
は、F、Cl及びC〜C−フルオロアルコキシの群から選ばれ、そして
は、C〜C−アルキルである]
の化合物の鏡像異性体的に富んだ(+)又は(−)鏡像異性体を製造するための方法であって、
(i)ルイス酸の存在下でp−置換フェニルアセチルハロゲン化物をエチレンと反応させて式VIII
【0123】
【化36】

【0124】
の化合物を製造するステップ、
(ii)VIIIをペルオキシ酸と反応させて式IX
【0125】
【化37】

【0126】
の化合物を製造するステップ、
(iii)酸触媒の存在下でIXをC〜C−アルコールと反応させて式X
【0127】
【化38】

【0128】
の化合物を製造するステップ、
(iv)Xを塩基と反応させて式XI
【0129】
【化39】

【0130】
の化合物を製造するステップ、
並びに
(v)キラル塩基の存在下でXIをヒドロペルオキシドと反応させて鏡像異性体的に富んだIIを製造するステップ
を含んで成る方法。
【0131】
9. 式:
【0132】
【化40】

【0133】
[式中、
は、F、Cl及びC〜C−フルオロアルコキシの群から選ばれ、そして
は、C〜C−アルキルである]
の化合物の(+)鏡像異性体。
【0134】
10. (+)メチル5−クロロ−1,3−ジヒドロ−2−ヒドロキシ−1−オキソ−2H−インデン−2−カルボキシレートである、1項に記載の化合物。
【0135】
11. 式IX又はX:
【0136】
【化41】

【0137】
[式中、
は、F、Cl及びC〜C−フルオロアルコキシの群から選ばれ、そして
は、H又はC〜C−アルキルである]
の化合物。
【0138】
12. 2−カルボキシ−5−クロロベンゼンプロパン酸である、11項に記載の化合物。
【0139】
13. 5−クロロ−2−(メトキシカルボニル)ベンゼンプロパン酸メチルである、11項に記載の化合物。
【0140】
14. 式:
【0141】
【化42】

【0142】
の化合物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

の化合物。

【公開番号】特開2006−273867(P2006−273867A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181231(P2006−181231)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【分割の表示】特願平7−527663の分割
【原出願日】平成7年4月17日(1995.4.17)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】