説明

関節炎の予防及び治療のための組成物及び方法

細胞外に局在化した14-3-3η及び/又は14-3-3γタンパク質アイソフォームに特異的に結合することができる14-3-3アンタゴニストを含む関節炎の治療方法を提供する。好ましい実施形態において、該14-3-3アンタゴニストは、阻害性ペプチド又は抗14-3-3抗体である。該14-3-3アンタゴニストはまた、医薬組成物に製剤化し、患者の滑液中のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)(MMP1-又はMMP-3)の発現を低減する方法において使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロス・リファレンス
本出願は、2007年11月27日に出願された米国特許仮出願第60/990,520号、及び2008年6月30日に出願された米国特許仮出願第61/077,123号の利益を主張する。尚、上記文献は、その全文を参照として本明細書に明示的に組み込むものとする。
【0002】
発明の分野
本発明は、関節炎への14-3-3タンパク質の関与、並びに関節炎の予防及び治療のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関節炎又は関節痛は、一般に、身体の関節の炎症性障害を指し、通常、痛み、腫脹及び硬直を伴う。関節炎は、複数の原因、例えば、感染、外傷、変性疾患、代謝疾患若しくは障害、又はその他未知の病因のいずれかによって起こりうる。変形性関節症(OA)は、関節に対する外傷後、関節の感染後、又は単純に加齢によって起こりうる関節炎の一般的病態である。変形性関節症はまた、変形性関節疾患としても知られている。関節リウマチ(RA)は、伝統的に、慢性の炎症性自己免疫障害であり、免疫系による関節の攻撃を引き起こす。これは、何もできなくなるほどの疼痛性炎症状態であり、この状態は、痛みと関節の破壊により、運動性の実質的な喪失を招く可能性がある。強直性脊椎炎(AS)は、慢性の疼痛性変形性炎症性関節炎であり、主に脊椎及び仙腸骨関節に影響を及ぼし、結果として脊椎固定を引き起こす。
【0004】
身体の関節部をなす連結は、滑膜性関節と呼ばれ、各滑膜性関節は、一般に2つの隣接した骨の向き合う末端を含む。骨の末端は軟骨組織に包まれていて、関節領域全体は、滑膜と呼ばれる保護性軟組織に包まれており、滑膜は滑液膜を含んでいる。滑膜は潤滑性の滑液を生産し、これを関節内の関節腔に放出する。正常な関節においては、滑液の量はかなり少ない。滑液は、その潤滑機能に加えて、溶質及び残った僅かな単核滑膜細胞の貯蔵体としても作用する。
【0005】
滑膜は、関節炎を助長すると考えられる多くの傷害、例えば、関節への外傷及び/又は身体の免疫系の機能不全などに応答して刺激され、厚くなる可能性がある。このような傷害の結果として、滑液の過剰生産及び関節への過剰放出があり、これにより関節領域内及びその周囲の腫脹が起こる。滑液の量が増加すると、典型的には、線維芽細胞様滑膜細胞(FLS細胞)、前炎症性サイトカイン、例えば、インターロイキン-1(IL-1)及び腫瘍壊死因子(TNF-α)、ヒスタミンタンパク質及びペプチド、並びに分解酵素、例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の濃度上昇が付随して起こる。FLS細胞は、正常な滑液中の滑膜細胞の約2/3を構成し、明確な分泌系を有し、外傷又は炎症の条件下では、一般に、滑液に多量のMMP、具体的にはMMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及びMMP-13を分泌する。MMP-1及びMMP-3は、軟骨、及び関節を含む基本的骨組織の進行性構造損傷に有意な役割を果たしていると考えられる。FLS細胞を活性化してMMP-1及びMMP-3を産生させる既知の因子として、IL-1及びTNFαがある。
【0006】
RA、SA及びOAの原因因子は現在のところはっきりとしていない。しかし、関節における過剰な滑液の蓄積により起こる長期の腫脹及び炎症から、分解酵素の活性による軟骨及び基本的骨組織の分解及び劣化、並びに付随して起こる骨へのFLS細胞増殖(これにより永久的構造損傷が起こる)まで、疾患の進行に関連する生理学的事象は知られている。十分早期に検出されれば、疾患の長期にわたる有害な影響の可能性は、理学療法及び医学療法により逆転するか、又は少なくとも最小限にすることができる。従って、関節炎の早期発見のための好適なバイオマーカーを見出すのに相当な努力が払われてきた。そのために、Kilaniら(2007, J. Rheum. 34: 1650-1657; WO2007/128132号)は、14-3-3タンパク質ファミリーの2つのメンバー、具体的には14-3-3η及び14-3-3γが、関節炎患者の滑液及び血清中に存在し、両アイソフォームが滑液及び血清中のMMP-1及びMMP-3のレベルと直接相関することを報告している。
【0007】
14-3-3タンパク質は、真核生物において偏在的に発現される保存的細胞内調節分子のファミリーである。14-3-3タンパク質は、多種の機能的に多様なシグナル伝達タンパク質、例えば、キナーゼ、ホスファターゼ、及び膜貫通受容体に結合する能力を有する。実際に、100種以上のシグナル伝達タンパク質が14-3-3リガンドとして報告されている。14-3-3タンパク質は、テトラトリコペプチド反復配列スーパーファミリーの進化したメンバーと考えることができる。これらは、一般に、9又は10のαヘリックスを有し、通常、そのアミノ末端ヘリックスに沿ってホモ及び/又はヘテロ二量体相互作用を形成する。これらのタンパク質は、いくつかの既知ドメイン、中でも、例えば二価カチオン相互作用、リン酸化及びアセチル化、並びにタンパク質分解切断のための領域を含む。14-3-3タンパク質には、哺乳動物において発現することが知られている、7種の異なる遺伝的にコードされたアイソフォームがあり、各アイソフォームは、242〜255個のアミノ酸を含んでいる。これら7つの14-3-3タンパク質アイソフォームは、14-3-3α/β(アルファ/ベータ)、14-3-3δ/ζ(デルタ/ゼータ)、14-3-3ε(イプシロン)、14-3-3γ(ガンマ)、14-3-3η(イータ)、14-3-3τ/θ(タウ/シータ)、及び14-3-3σ(シグマ/ストラチフィン)と呼ばれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、部分的に、以下の知見から生じたものである:(i)14-3-3タンパク質は、関節炎の場合に細胞外滑膜腔に異常に局在化する、(ii)こうした細胞外14-3-3タンパク質は、関節炎のエフェクターを誘導する可能性がある、及び(iii)細胞外14-3-3タンパク質に対する14-3-3アンタゴニストは、関節炎のエフェクターを低減することができる。
【0009】
一態様では、本発明は、関節炎を治療する方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、多筋炎、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される疾患を治療する方法を提供する。
【0010】
本方法は、罹患した患者への14-3-3アンタゴニストの投与を含み、上記14-3-3アンタゴニストは、細胞外に局在化した14-3-3タンパク質にターゲティングされる。好ましい実施形態において、14-3-3タンパク質は、14-3-3タンパク質η又は14-3-3タンパク質γである。
【0011】
用いる14-3-3アンタゴニストは、従来の組成物、又は本明細書に開示した新規組成物のいずれでもよい。治療用組成物は、送達された14-3-3アンタゴニストが、細胞外14-3-3タンパク質と結合させるのに利用できるように製剤化され、投与される。一実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、ペプチド又は抗14-3-3抗体である。
【0012】
好ましい実施形態では、用いる14-3-3アンタゴニストは、それが結合する14-3-3タンパク質によるMMPの誘導を阻害することができる。好ましくは、MMPは、MMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及びMMP-13からなる群より選択され、MMP-1及びMMP-3が特に好ましい。
【0013】
一実施形態では、本方法は、1種以上の14-3-3アンタゴニストに加えて、少なくとも1種の別の治療薬を投与する、併用療法を含む。好ましい実施形態において、治療薬は、疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)及び疾患修飾変形性関節症薬(DMOAD;例えば、Loeser, Reumatologia, 21:104-106, 2005を参照)からなる群より選択される。特に好ましい実施形態では、1種以上の抗14-3-3アンタゴニストは、抗TNFα抗体、抗IL-1抗体、抗CD4抗体、抗CTLA4抗体、抗IL-6抗体、抗CD20抗体、レフルノミド、スルファサラジン、及びメトトレキセートからなる群より選択される少なくとも1種の薬剤と併用して投与する。
【0014】
一実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、コード核酸の形態で投与し、これが発現されて、14-3-3アンタゴニストを送達する。
【0015】
一実施形態では、本方法は、14-3-3アンタゴニストを送達する細胞を患者に投与することを含む。好ましい実施形態において、こうして送達された14-3-3アンタゴニストは、ペプチド又は抗14-3-3抗体である。好ましい実施形態では、この細胞は、線維芽細胞又はFLS細胞である。
【0016】
一態様では、本発明は、関節炎を発症する危険性のある被験者において関節炎の発症を予防するための予防方法を提供する。本方法は、1種以上の14-3-3アンタゴニストを被験者に投与することを含む。
【0017】
一態様では、本発明は、外傷により負傷した関節に対する損傷を軽減する方法を提供する。本方法は、外傷により負傷した関節を有する被験者に1種以上の14-3-3アンタゴニストを投与することを含む。一実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、本明細書に記載する併用療法の1成分として投与する。
【0018】
一態様では、本発明は、MMP発現を低減する方法を提供する。一実施形態では、低減しようとするMMP発現は、滑膜におけるものである。本方法は、MMP産生細胞が存在する組織又はコンパートメントに1種以上の14-3-3アンタゴニストを送達することを含み、MMP産生細胞は、14-3-3アンタゴニストが結合する14-3-3タンパク質に対して応答性である。送達は、罹患した組織若しくはコンパートメントに対して直接的であってもよいし、又は間接的であってもよい。好ましい実施形態において、上記応答性細胞は、線維芽細胞又はFLS細胞である。
【0019】
好ましい実施形態では、低減しようとするMMP発現は、関節炎に関連するMMP発現である。
【0020】
好ましい実施形態では、低減しようとするMMP発現は、MMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及び MMP-13からなる群より選択されるMMPの発現である。特に好ましい実施形態では、低減しようとするMMP発現は、MMP-1又はMMP-3の発現である。
【0021】
一態様では、本発明は、14-3-3タンパク質によるMMP誘導を阻害する方法を提供する。阻害は、部分的又は完全のいずれも可能である。本方法は、MMP産生細胞が存在する組織又はコンパートメントに1種以上の14-3-3アンタゴニストを送達することを含み、MMP産生細胞は、14-3-3アンタゴニストが特異的に結合する14-3-3タンパク質に対して応答性である。送達は、罹患した組織若しくはコンパートメントに対し直接的であってもよいし、又は間接的のいずれであってもよい。好ましい実施形態では、上記1種以上の14-3-3アンタゴニストを滑膜に投与する。好ましい実施形態では、上記応答性細胞は、線維芽細胞又はFLS細胞である。
【0022】
好ましい実施形態では、阻害しようとするMMP誘導は、関節炎においてアップレギュレートされるMMPの誘導である。
【0023】
好ましい実施形態では、阻害しようとするMMP誘導は、MMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及びMMP-13からなる群より選択されるMMPの誘導である。特に好ましい実施形態では、阻害しようとするMMP誘導は、MMP-1又はMMP-3の誘導である。
【0024】
一態様では、本発明は、被験者において関節腫脹を低減する方法を提供する。本方法は、罹患した被験者に1種以上の14-3-3アンタゴニストを投与することを含む。
【0025】
一態様では、本発明は、被験者において軟骨変性を低減する方法を提供する。本方法は、罹患した被験者に1種以上の14-3-3アンタゴニストを投与することを含む。
【0026】
一態様では、本発明は、被験者において骨変性を低減する方法を提供する。本方法は、罹患した被験者に1種以上の14-3-3アンタゴニストを投与することを含む。
【0027】
一態様では、本発明は、滑液中の前炎症性サイトカイン蓄積を低減する方法を提供する。本方法は、罹患した被験者に1種以上の14-3-3アンタゴニストを投与することを含む。
【0028】
罹患した被験者に14-3-3アンタゴニストを投与することを含む方法のために、好ましい実施形態では、アンタゴニストのカプセル内送達を用いる。別の実施形態では、アンタゴニストの全身送達を用いる。治療用組成物の製剤化及び投与は、こうして送達される14-3-3アンタゴニストが、細胞外に局在化した14-3-3タンパク質と結合させるのに利用できるように行う。
【0029】
一実施形態では、14-3-3アンタゴニストはペプチドである。好ましい実施形態では、ペプチドは、「R-18」と称するアミノ酸配列を含む。別の好ましい実施形態では、上記ペプチドは、実質的にR-18配列から構成される。一実施形態では、上記ペプチドは、R-18配列の複数の反復を含む。別の好ましい実施形態では、上記ペプチドは、R-18に結合することができる14-3-3タンパク質の1領域に結合する。別の好ましい実施形態では、上記ペプチドは、細胞内14-3-3結合パートナー、好ましくはRafに結合することができる14-3-3タンパク質の1領域に結合する。一実施形態では、上記ペプチドは、14-3-3タンパク質と細胞内14-3-3結合パートナーとの結合を破壊することなく、14-3-3タンパク質に結合する。
【0030】
一実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、ホスホペプチドである。
【0031】
一実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、当分野において公知のモードIホスホペプチドである。
【0032】
別の実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、当分野において公知のモードIIホスホペプチドである。
【0033】
一実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、抗14-3-3抗体である。一実施形態では、抗14-3-3抗体は、汎(pan)14-3-3抗体である。別の実施形態では、抗14-3-3抗体は、14-3-3アイソフォーム同士を識別することができる。好ましい実施形態において、上記抗14-3-3抗体は、14-3-3ループペプチド、14-3-3ヘリックスペプチド、及び非ヘリックス14-3-3ペプチドからなる群より選択されるペプチドに特異的に結合する。
【0034】
一実施形態では、抗14-3-3抗体は、抗14-3-3γ抗体である。好ましい実施形態では、上記抗14-3-3γ抗体は、配列番号64に示されるアミノ酸配列のセグメントを含む14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記セグメントは、長さが少なくとも6アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも7アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも8アミノ酸である。
【0035】
好ましい実施形態では、抗14-3-3γ抗体は、14-3-3γループペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記14-3-3γループペプチドは、配列番号44〜49からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、上記14-3-3γループペプチドは、配列番号44〜49からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3γ抗体は、配列番号44〜49からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3γの1領域に結合する。
【0036】
別の好ましい実施形態では、抗14-3-3γ抗体は、14-3-3γヘリックスペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記14-3-3γヘリックスペプチドは、配列番号33〜43からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、上記14-3-3γヘリックスペプチドは、配列番号33〜43からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3γ抗体は、配列番号33〜43からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3γの1領域に結合する。
【0037】
別の好ましい実施形態では、抗14-3-3γ抗体は、非ヘリックス14-3-3γペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記非ヘリックス14-3-3γペプチドは、配列番号50〜62からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、上記非ヘリックス14-3-3γペプチドは、配列番号50〜62からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3γ抗体は、配列番号50〜62からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3γの1領域に結合する。
【0038】
一実施形態では、抗14-3-3抗体は、抗14-3-3η抗体である。好ましい実施形態では、上記抗14-3-3η抗体は、配列番号63に示されるアミノ酸配列のセグメントを含む14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記セグメントは、長さが少なくとも6アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも7アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも8アミノ酸である。
【0039】
一実施形態では、本発明の抗14-3-3η抗体は、ヒト14-3-3ηタンパク質のN末端に位置するエピトープに結合しない。
【0040】
好ましい実施形態では、抗14-3-3η抗体は、14-3-3ηループペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記14-3-3ηループペプチドは、配列番号11〜16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、上記14-3-3ηループペプチドは、配列番号11〜16からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3η抗体は、配列番号11〜16からなる群より選択されるアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0041】
別の好ましい実施形態では、抗14-3-3η抗体は、14-3-3ηヘリックスペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記14-3-3ηヘリックスペプチドは、配列番号1〜10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、上記14-3-3ηヘリックスペプチドは、配列番号1〜10からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3η抗体は、配列番号1〜10からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0042】
別の好ましい実施形態では、抗14-3-3η抗体は、非ヘリックス14-3-3ηペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記非ヘリックス14-3-3ηペプチドは、配列番号17〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、上記非ヘリックス14-3-3ηペプチドは、配列番号17〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3γ抗体は、配列番号17〜32からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0043】
特に好ましい実施形態では、本発明の抗14-3-3η抗体は、LDKFLIKNSNDF(配列番号30)、KKLEKVKAYR(配列番号31)、及びKNSVVEASEAAYKEA(配列番号32)からなる群より選択されるアミノ酸配列に結合する。
【0044】
14-3-3ηループ、ヘリックス、及び非ヘリックスペプチドの例を本明細書の表1に開示する。特に、配列番号30は、ジスルフィド結合の形成を回避するために14-3-3η配列に存在するシステインがセリンに置換されている点で、対応する14-3-3η配列とは異なっている。一実施形態では、本発明は、システインを含む配列番号30の天然の14-3-3配列相関物にも結合する抗体を提供する。一実施形態では、本発明は、システインのセリンへの置換により本明細書中のエピトープ表に記載したペプチド配列とは異なるペプチド配列に結合することができる抗体を提供する。
【0045】
好ましい実施形態では、抗14-3-3抗体は、14-3-3タンパク質アイソフォーム同士を識別することができる。
【0046】
好ましい実施形態では、抗14-3-3抗体は、モノクローナル抗体である。
【0047】
好ましい実施形態では、抗14-3-3抗体は、ヒト化抗体である。
【0048】
一態様では、本発明は、新規の14-3-3アンタゴニストを提供する。一実施形態では、本発明は、新規の14-3-3アンタゴニストペプチドを提供する。別の実施形態では、本発明は、新規の抗14-3-3抗体を提供する。一態様では、本発明は、14-3-3アンタゴニストを作製する方法を提供する。
【0049】
一態様では、本発明は、ペプチド又は抗体である14-3-3アンタゴニストをコードする核酸を提供する。また、上記核酸を含むベクター(発現ベクターなど)も提供する。また、上記核酸を含む宿主細胞、及び上記ベクターを含む宿主細胞も提供する。さらには、上記宿主細胞の使用を含む14-3-3アンタゴニストを作製する方法も提供する。
【0050】
一態様では、本発明は、14-3-3アンタゴニストを産生することができる細胞を提供する。
【0051】
一実施形態では、上記細胞はハイブリドーマであり、14-3-3アンタゴニストは抗14-3-3抗体である。
【0052】
別の実施形態では、上記細胞は、遺伝子組換え線維芽細胞又はFLS細胞であり、上記14-3-3アンタゴニストは、ペプチド又は抗14-3-3抗体である。
【0053】
一態様では、本発明は、14-3-3アンタゴニストのスクリーニング方法を提供する。一実施形態では、この方法は、候補物質を、14-3-3ηタンパク質又は14-3-3γタンパク質と、14-3-3ηリガンド又は14-3-3γリガンドとの結合をそれぞれ阻害する能力についてスクリーニングするステップを含む。一実施形態では、上記リガンドは、14-3-3アンタゴニストペプチドである。一実施形態では、上記リガンドは、抗14-3-3抗体である。一実施形態では、上記リガンドは、細胞内14-3-3結合パートナーである。一実施形態では、上記方法は、候補物質が14-3-3タンパク質によるMMPの誘導を阻害する能力を分析するステップを含む。
【0054】
一実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、14-3-3ηタンパク質又は14-3-3γタンパク質と、本明細書に開示する抗14-3-3抗体又は14-3-3アンタゴニストペプチドとの結合を競合的に阻害する。一実施形態において、上記14-3-3アンタゴニストは、低分子化学組成物である。
【0055】
好ましい実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、R-18に結合することができる、14-3-3タンパク質の1領域に結合する。好ましい実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、細胞内14-3-3結合パートナー、好ましくはRafに結合することができる、14-3-3タンパク質の1領域に結合する。一実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、細胞内14-3-3結合パートナーの結合を阻害することなく、14-3-3タンパク質に結合する。
【0056】
一態様では、本発明は、関節炎の治療のための医薬組成物を提供する。医薬組成物は、1種以上の14-3-3アンタゴニストを含む。上記医薬組成物は、14-3-3アンタゴニストによる細胞外14-3-3タンパク質との結合(engagement)を達成するように製剤化する。
【0057】
一態様では、本発明は、関節炎を治療するのに有用な医薬を調製するための方法を提供する。上記医薬は1種以上の14-3-3アンタゴニストを含む。上記医薬は、14-3-3アンタゴニストによる細胞外14-3-3タンパク質との結合(engagement)を達成するように製剤化する。
【0058】
一態様では、本発明は、関節炎治療のための、又は関節炎治療用医薬を製剤化するための、14-3-3アンタゴニスト、例えば、細胞外に局在した14-3-3タンパク質に特異的に結合して、該14-3-3タンパク質の活性を阻害することができる14-3-3アンタゴニストの使用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ELISA:AUG1-CLDK-BSA抗原に対するマウス抗AUG1-CLDK免疫血清(2回目の追加免疫後)の試験採血滴定を示す(IgG応答のみ)図である。
【図2】ELISA:AUG2-KKLE-BSA抗原に対するマウス抗AUG2-KKLE免疫血清(2回目の追加免疫後)の試験採血滴定を示す(IgG応答のみ)図である。
【図3】ELISA:AUG3-CKNS-BSA抗原に対するマウス抗AUG3-CKNS免疫血清(2回目の追加免疫後)の試験採血滴定を示す(IgG応答のみ)図である。
【図4】各14-3-3タンパク質アイソフォームの配列アラインメントを示す図である。
【図5】R-18は、細胞外14-3-3タンパク質と相互作用して、細胞外14-3-3タンパク質により誘導されるMMP-1発現の誘導を阻害する。
【図6】全長ヒト組換え14-3-3ηに対して産生されたモノクローナル抗体により免疫沈降した、細胞溶解物由来の14-3-3ηタンパク質及びヒト組換え14-3-3ηを示すウエスタンブロットである。
【図7】ヒト14-3-3ηタンパク質の非ヘリックス領域からのヒト14-3-3ηペプチド断片(配列番号24の142〜158)に対して産生されたモノクローナル抗体により免疫沈降した、細胞溶解物由来の14-3-3ηタンパク質及びヒト組換え14-3-3ηを示すウエスタンブロットである。
【図8】ELISA:14-3-3η抗原に対するマウス抗14-3-3η免疫血清(2回目の追加免疫後)の試験採血滴定を示す(IgG応答のみ)図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
発明の詳細な説明
本発明は、関節炎を治療する方法、例えば、以下の疾患:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、並びにヴェーゲナー肉芽腫症を治療する方法を提供する。
【0061】
本明細書で用いる「関節炎」又は「関節痛」は、身体の関節の炎症性障害を指す。関節炎疾患には、痛み、腫脹、硬直及び運動困難が伴うことが多い。関節炎は、複数の原因、例えば、感染、外傷、変性疾患、代謝疾患若しくは障害又はその他未知の病因のいずれかに起因して起こりうる。
【0062】
関節炎の進行又は重症度は、当分野で公知の技術を用いて、測定又は定量することができる。一例として、「疾患活動性スコア」(DAS)は、患者における関節炎の活動性又は状態を測定するのに用いることができる。DASは、臨床診療に用いられる数種の基準又はスコアの1つである。DASの計算は、以下のパラメーター:触診に対する敏感関節(TEN)の数、腫脹関節(SW)の数、赤血球沈降速度(ESR)、及び疾患活動性の患者評価(VAS)を含みうる。あるいは、DASは、C反応性タンパク質マーカー評価(CRP)を含んでもよい(Skogh Tら、2003. Ann Rheum Dis 62:681-682)。この他にも、疾患の存在若しくは非存在を測定する、又は疾患の重症度を決定するために、診断バイオマーカー、例えば、14-3-3η及び/又は14-3-3γを用いることができる。
【0063】
本明細書において、用語「治療」又は「治療する」とは、予防的処置、並びに治癒的処置又は疾患改変処置の両方を指し、例えば、疾患に罹患する危険性がある患者又は疾患に罹患した疑いがある患者、及び病気の患者又は疾患若しくは病状に罹患していると診断された患者の処置を含み、また、臨床的再発の抑制も含む。
【0064】
本方法は、1種以上の14-3-3アンタゴニストの投与を含む。本発明の14-3-3アンタゴニストは、14-3-3タンパク質、特に14-3-3η又はγに結合して、その活性と拮抗する。
【0065】
本明細書で用いられるように、「アイソフォーム」とは、類似しているが、同一ではないアミノ酸配列を有し、異なる遺伝子によりコードされているか、又は同じ遺伝子由来の異なるRNA一次転写物若しくはプロセシングされた転写物によりコードされた、2種以上の機能的に類似したタンパク質を指す。
【0066】
14-3-3ηタンパク質又は14-3-3γタンパク質と言うとき、その断片も含むこともある。例えば、一実施形態において、本発明は、14-3-3アンタゴニストのスクリーニング方法を提供し、この方法は、好ましい実施形態では、候補物質を14-3-3リガンドと14-3-3タンパク質の結合を阻害する能力についてスクリーニングするステップを含む。14-3-3タンパク質の適切な断片をアッセイに用いることができることが理解されよう。
【0067】
14-3-3アンタゴニストの一例として、R18阻害ペプチド(Wangら、1999 - 参照文献35)がある。R18ペプチド(本明細書では「R18」とも呼ぶ)は、14-3-3タンパク質とRaf-1の会合をブロックすることができる小さなペプチドである。14-3-3タンパク質に結合するペプチドの他の例は公知である(例えば、Wangら、1999 - 参照文献35, 後掲;Yaffeら、Cell, 91:961-971, 1997;Shawら、米国特許第5,948,765号;Petosaら、JBC 273:16305-16310, 1998;Fuら、US2004/0152630を参照)。前記及びその他のペプチドを異常に局在化した細胞外4-3-3タンパク質と結合させるように製剤化すると、関節炎治療のための治療薬として本発明において有用であることがわかるだろう。
【0068】
「抗体」とは、対応する抗原に特異的に結合し、かつ、免疫グロブリンに共通の一般的構造を有するタンパク質を含む組成物を指す。抗体という用語には、所望の生物活性を呈示するものであれば、具体的には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二量体、多量体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントが含まれる。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラ又はその他の種由来のいずれでもよい。典型的に、抗体は、ジスルフィド結合により互いに連結される少なくとも2つの重鎖及び2つの軽鎖を含み、これらが組み合わされて、抗原と相互作用する結合ドメインを形成する。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、すなわちCH1、CH2及びCH3からなり、μ、δ、γ、α又はεアイソタイプのいずれであってもよい。同様に、軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、すなわちCLからなり、κ又はλアイソタイプのいずれでもよい。VH及びVL領域はさらに、超可変性領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に細分することができ、これら領域の間に、より保存的な領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)が散在している。各VH及びVLは、3つのCDRと4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置されている。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと、宿主組織又は因子(例えば、免疫系の細胞(例:エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq))との結合、を媒介することができる。重鎖定常領域は、特に、細胞受容体、例えば、Fc受容体(例:FcγRI、FcγRII、FcγRIIIなど)を介して、免疫グロブリンと宿主組織又は宿主因子との結合を媒介する。本明細書で用いる抗体はまた、抗原に結合する能力を保持する免疫グロブリンの抗原結合部分も含む。これらの例として、VL CL及びVH CH抗体ドメインの1価フラグメントであるF(ab);及びヒンジ領域でジスルフィド結合により連結された2つのFabフラグメントを含む2価フラグメントであるF(ab')2フラグメントがある。用語「抗体」はまた、組換え一本鎖Fvフラグメント(scFv)及び二重特異性分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディも指す(例えば、米国特許第5,844,094号を参照)。
【0069】
抗体は、様々な形態、例えば、抗体複合体として作製し、使用することができる。本明細書で用いる用語「抗体複合体」とは、1以上の抗体と、別の抗体、又は1若しくは複数の抗体フラグメント又は2以上の抗体フラグメントとの複合体を指す。抗体複合体には、抗14-3-3抗体の多量体形態、例えば、ホモコンジュゲート及びヘテロコンジュゲート、並びに本明細書に開示する他の架橋抗体が含まれる。
【0070】
「抗原」は広義に解釈すべきであり、抗体に特異的に結合することができるあらゆる分子、組成物又は粒子を指す。抗原は、抗体と相互作用する1以上のエピトープを有するが、必ずしも該抗体の産生を誘導するとは限らない。
【0071】
用語「架橋した」、「架橋」及びその文法上の同等物は、抗体複合体を形成するための2以上の抗体の結合を指し、多量体形成と呼ぶこともある。架橋又は多量体形成は、2以上の同じ抗体の結合(例:ホモ二量体形成)、及び2以上の異なる抗体の結合(例:ヘテロ二量体形成)を含む。当業者であれば、架橋又は多量体形成が、抗体ホモコンジュゲート及び抗体ヘテロコンジュゲート形成とも呼ばれることは認識されよう。上記コンジュゲートは、同じクローン起原の2以上のモノクローナル抗体の結合(ホモコンジュゲート)又は異なるクローン起原の2以上の抗体の結合(ヘテロコンジュゲート又は二重特異性とも呼ばれる)を含むこともある。抗体は、非共有又は共有結合のいずれによって架橋してもよい。架橋に好適な多数の技術が当業者には認識されよう。非共有結合は、一次抗体種に特異的な二次抗体の使用により達成することができる。例えば、ヤギ抗マウス(GAM)二次抗体を用いて、マウスモノクローナル抗体を架橋することができる。共有結合は、化学的架橋剤の使用により達成することができる。
【0072】
「エピトープ」は、抗体への特異的結合が可能な決定基を意味する。エピトープは、分子の表面に一般に存在する化学的特徴であり、抗体と接触して相互作用が可能である。典型的な化学的特徴はアミノ酸及び糖部分であり、3次元構造の特徴と、電荷、親水性及び親油性などの化学的特性とを有する。3次元エピトープは、基本的化学構造には一切の変化を伴わなわずに、分子の空間要素が変化した後、抗体との反応性を喪失している点で、非3次元エピトープとは区別される。
【0073】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む免疫グロブリン分子を意味する。ヒト化抗体としては、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、該レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する、非ヒト種、例えば、マウス、ラット又はウサギのCDRからの残基(ドナー抗体)で置換されている免疫グロブリンがある。いくつかのケースでは、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基で置換されている。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、移入したCDR又はフレームワーク配列にも存在しない残基を含むこともある。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含み、ここで、CDR領域の全部又は実質的に全部が、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、フレームワーク(FR)領域の全部又は実質的に全部が、ヒト免疫グロブリン共通配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものを含む免疫グロブリンも包含する(Jonesら、Nature 321:522-525 (1986);Reichmannら、Nature 332:323-329 (1988))。
【0074】
「免疫原」とは、免疫応答の産生を刺激する物質、化合物又は組成物を指す。
【0075】
用語「免疫グロブリン遺伝子座」は、免疫グロブリンポリペプチドを発現するためにB細胞又はB細胞前駆体が用いることができる情報を含む遺伝要素、又は連鎖した遺伝要素のセットを意味する。このポリペプチドは、重鎖ポリペプチド、軽鎖ポリペプチド、又は重鎖及び軽鎖ポリペプチドの融合物のいずれであってもよい。再構成されていない遺伝子座の場合には、遺伝要素は、B細胞前駆体により、免疫グロブリンポリペプチドをコードする遺伝子を形成するように組み立てられる。再構成遺伝子座の場合には、免疫グロブリンポリペプチドをコードする遺伝子が遺伝子座内に含まれている。
【0076】
「アイソタイプ」とは、その重鎖定常領域により決定される抗体クラスを意味する。重鎖は一般に、γ、μ、α、δ、εとして分類され、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEと称される。各アイソタイプ内の違いによって、サブタイプに細分される。例えば、IgGはサブタイプIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4に区分され、またIgAは、IgA1及びIgA2に区分される。IgYアイソタイプは、鳥類に特異的である。
【0077】
「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一分子組成物からなる抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一結合特異性及び親和性を示す。
【0078】
用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列由来の可変及び/又は定常領域(もし存在すれば)を有する単一結合特異性を示す抗体を意味する。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖トランスジーンと軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物(例:トランスジェニックマウス)から取得したB細胞を不死化細胞に融合させたものを含む、ハイブリドーマにより産生される。
【0079】
「一本鎖Fv」又は「scFv」とは、抗体のVH及びVL領域を含む抗体を意味し、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーによって、scFvは、抗原結合のための所望の構造を形成することが可能になる。
【0080】
「被験者(被験体)」又は「患者」は、置き換え可能に用いられ、明示された場合を除いて、哺乳動物、例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、並びにウサギ、ラット、マウス、ヤギ、ブタ、及びその他の哺乳動物種を指す。
【0081】
「組換え抗体」とは、組換え技術により作出されたすべての抗体を指す。例えば、免疫グロブリン遺伝子座について形質転換した動物から取得した抗体、組換え発現ベクターから発現させた抗体、又は任意の免疫グロブリン遺伝子配列をいずれか他の核酸配列にスプライシングすることにより、創出、作製及び発現させた抗体がある。
【0082】
抗14-3-3抗体
一態様では、本発明は、14-3-3η又は14-3-3γタンパク質に特異的に結合する新規の抗14-3-3抗体を提供する。好ましくは、本発明の抗14-3-3抗体は、その天然の3次元配置の14-3-3タンパク質に特異的に結合することができる。その「天然の立体配置」の14-3-3タンパク質に特異的に結合するとは、in vivoで接触する14-3-3タンパク質に結合する能力を意味する。これは、例えば、抗体が、生体サンプル由来の14-3-3ηタンパク質を免疫沈降させる能力により証明することができる。
【0083】
好ましい実施形態では、本発明の抗14-3-3η抗体は、関節炎における細胞外滑膜腔に異常に局在化した14-3-3タンパク質に結合することができる。これは、例えば、関節炎を有する患者からの滑液サンプル中に存在する14-3-3タンパク質の免疫沈降により証明することができる。
【0084】
好ましい実施形態では、本発明の抗14-3-3抗体は、14-3-3タンパク質アイソフォーム同士を識別することができる。こうした抗体は、特定の14-3-3タンパク質アイソフォームに特異的に結合し、他の14-3-3タンパク質アイソフォームと比較して、同じ条件下で該アイソフォームに選択的に結合する能力を有する。これは、例えば、ELISAアッセイを用いて証明することができるが、このアッセイは、例えば、ハイブリドーマクローンからの上清を用いて実施することができる。対照(例:免疫前の血清)を用いるのが好ましい。「選択的」抗体は、特定の14-3-3アイソフォームを認識して、他のアイソフォームと比較して、該アイソフォームに対する高いシグナルを発生することができ、他のアイソフォームと比較して、好ましくは少なくとも1.5倍、さらに好ましくは2倍以上高いシグナルを発生することができる。好ましい実施形態では、選択的抗体は、他の14-3-3アイソフォームと比較して、特定の14-3-3ηを選択的に免疫沈降させる能力を有する。
【0085】
好ましい実施形態では、抗14-3-3抗体は、14-3-3α、β、δ、ε、γ、τ、及びζタンパク質と比較して、14-3-3ηタンパク質に対する選択性を呈示する。これは、例えば、ELISAにより証明することができる。
【0086】
別の好ましい実施形態では、抗14-3-3抗体は、14-3-3α、β、δ、ε、η、τ、及びζタンパク質と比較して、14-3-3γタンパク質に対する選択性を呈示する。これは、例えば、ELISAにより証明することができる。
【0087】
好ましい実施形態では、本発明の抗14-3-3抗体は、14-3-3アンタゴニストであるが、他の抗14-3-3抗体も本発明の範囲内であると想定される。
【0088】
好ましい実施形態では、抗14-3-3抗体は、14-3-3タンパク質、特に14-3-3γ又は14-3-3ηによるMMPの誘導を阻害することができる。好ましくは、MMPは、MMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及びMMP-13からなる群より選択され、特にMMP-1及びMMP-3が好ましい。上記能力は、in vitroアッセイ又はin vivoアッセイにより決定することができる。当業者には理解されるように、上記アッセイは、抗14-3-3抗体の非存在下で、14-3-3タンパク質が存在すると、MMPの誘導が起こるように設計する。14-3-3タンパク質によるMMPの誘導を低減する能力によって、抗14-3-3抗体のこうした機能阻害能力を証明することができる。
【0089】
一態様では、本発明は、抗14-3-3η抗体を提供する。好ましい実施形態では、抗14-3-3η抗体は、配列番号63に示されるアミノ酸配列のセグメントを含む14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記セグメントは、長さが少なくとも6アミノ酸、より好ましくは少なくとも7アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも8アミノ酸である。
【0090】
一実施形態において、本発明の抗14-3-3η抗体は、ヒト14-3-3ηタンパク質のN末端に位置するエピトープに結合しない。
【0091】
好ましい実施形態では、抗14-3-3η抗体は、14-3-3ηループペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記14-3-3ηループペプチドは、配列番号11〜16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、14-3-3ηループペプチドは、配列番号11〜16からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3η抗体は、配列番号11〜16からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0092】
別の好ましい実施形態では、抗14-3-3η抗体は、14-3-3ηヘリックスペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記14-3-3ηヘリックスペプチドは、配列番号1〜10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、上記14-3-3ηヘリックスペプチドは、配列番号1〜10からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3η抗体は、配列番号1〜10からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0093】
別の実施形態では、抗14-3-3η抗体は、非ヘリックス14-3-3ηペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、この非ヘリックス14-3-3ηペプチドは、配列番号17〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、上記非ヘリックス14-3-3ηペプチドは、配列番号17〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3γ抗体は、配列番号17〜32からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0094】
特に好ましい実施形態では、本発明の抗14-3-3η抗体は、LDKFLIKNSNDF(配列番号30)、KKLEKVKAYR(配列番号31)、及びKNSVVEASEAAYKEA(配列番号32)からなる群より選択されるアミノ酸配列に結合する。
【0095】
14-3-3ηループ、ヘリックス、及び非ヘリックスペプチドの例を本明細書の表1に開示する。特に、配列番号30は、ジスルフィド結合の形成を回避するために14-3-3η配列に存在するシステインがセリンにより置換されている点で、対応する14-3-3η配列とは異なっている。一実施形態では、本発明は、システインを含む配列番号30の天然の14-3-3配列相関物にも結合する抗体を提供する。一実施形態では、本発明は、システインのセリンへの置換によって、本明細書中のエピトープ表に記載したペプチド配列とは異なるペプチド配列に結合することができる抗体を提供する。
【0096】
一態様では、本発明は、抗14-3-3γ抗体を提供する。好ましい実施形態では、この抗14-3-3γ抗体は、配列番号64に示されるアミノ酸配列のセグメントを含む14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記セグメントは、長さが少なくとも6アミノ酸、より好ましくは少なくとも7アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも8アミノ酸である。
【0097】
好ましい実施形態において、抗14-3-3γ抗体は、14-3-3γループペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記14-3-3γループペプチドは、配列番号44〜49からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、上記14-3-3γループペプチドは、配列番号44〜49からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3γ抗体は、配列番号44〜49からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3γの1領域に結合する。
【0098】
別の実施形態において、抗14-3-3γ抗体は、14-3-3γヘリックスペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記14-3-3γヘリックスペプチドは、配列番号33〜43からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、上記14-3-3γヘリックスペプチドは、配列番号33〜43からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3γ抗体は、配列番号33〜43からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3γの1領域に結合する。
【0099】
別の好ましい実施形態において、抗14-3-3γ抗体は、非ヘリックス14-3-3γペプチドである14-3-3ペプチドに結合する。好ましい実施形態では、上記非ヘリックス14-3-3γペプチドは、配列番号50〜62からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、上記非ヘリックス14-3-3γペプチドは、配列番号50〜62からなる群より選択されるアミノ酸配列から実質的に構成される。別の実施形態では、抗14-3-3γ抗体は、配列番号50〜62からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3γの1領域に結合する。
【0100】
モノクローナル抗体、ハイブリドーマ、及びこれらを作製する方法
本発明は、14-3-3ηタンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体、及び14-3-3γタンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。また、上記抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞系も提供する。
【0101】
一態様では、本発明は、14-3-3ηループ、ヘリックス又は非ヘリックスペプチドに結合するモノクローナル抗14-3-3η抗体を提供する。好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号1〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施形態では、本発明は、LDKFLIKNSNDF(配列番号30)、KKLEKVKAYR(配列番号31)、及びKNSVVEASEAAYKEA(配列番号32)からなる群より選択されるアミノ酸配列に特異的に結合する抗14-3-3ηモノクローナル抗体を提供する。また、上記抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞系も提供する。
【0102】
一態様では、本発明は、14-3-3ηループ、ヘリックス又は非ヘリックスペプチドを含む免疫原で免疫したマウス由来の脾細胞の融合により作出されるハイブリドーマを提供する。好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号1〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施形態では、本発明は、LDKFLIKNSNDF(配列番号30)、KKLEKVKAYR(配列番号31)又はKNSVVEASEAAYKEA(配列番号32)を含む免疫原で免疫したマウス由来の脾細胞の融合により作出されるハイブリドーマを提供する。また、上記ハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体も提供する。
【0103】
好ましい実施形態では、本発明は、14-3-3γループ、ヘリックス又は非ヘリックスペプチドに結合するモノクローナル抗14-3-3γ抗体を提供する。好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号33〜62からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。また、上記抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞系も提供する。
【0104】
一態様では、本発明は、14-3-3γループ、ヘリックス又は非ヘリックスペプチドを含む免疫原で免疫したマウス由来の脾細胞の融合により作出されるハイブリドーマを提供する。好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号33〜62からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。また、上記ハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体も提供する。
【0105】
本発明はさらに、前記モノクローナル抗体、又はその誘導体を作出する方法であって、モノクローナル抗体が産生される好適な条件下で本発明のハイブリドーマを培養して、該細胞及び/又は細胞培養培地から抗体及び/又はその誘導体を取得することを含む方法を提供する。
【0106】
抗体は、当業者により容易に作出することができる。ハイブリドーマによりモノクローナル抗体を作製する一般的方法は、現在当分野で公知である。例えば、M. Schreierら、Hybridoma Techniques (Cold Spring Harbor Laboratory) 1980;Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas (Elsevier Biomedical Press) 1981を参照されたい。
【0107】
いくつかの実施形態では、前記方法は、抗体が産生される好適な条件下でハイブリドーマ細胞を培養して、該細胞及び/又は細胞培養培地から抗体及び/又はその誘導体を取得することを含む。
【0108】
本発明はまた、本明細書に記載の、目的とする14-3-3ペプチドに結合することができる抗体を選別するためのファージライブラリーの使用も想定する。例えば、Konthurら、Targets, 1: 30-36, 2002を参照。
【0109】
いずれかの手段により作出した抗体は、当業者に公知の方法により精製することができる。精製方法としては、とりわけ、選択的沈降、液体クロマトフラフィー、HPCL、電気泳動、クロマト分画、及び各種アフィニティー技術がある。選択的沈降には、硫酸アンモニウム、エタノール(コーン沈降)、ポリエチレングリコール、又は当分野で入手可能な他の物質を用いることができる。液体クロマトフラフィー媒質としては、中でも、イオン交換媒質DEAE、ポリアスパラギン酸エステル、ハイドロキシアパタイト、サイズ排除(例えば、架橋アガロース、アクリルアミド、デキストランなどをベースとするもの)、疎水性マトリックス(例えば、ブルーセファロース)がある。アフィニティー技術は、典型的に、免疫グロブリンFcドメインと相互作用するタンパク質に依存する。黄色ブドウ球菌由来のプロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づく抗体を精製するのに用いることができる(Lindmarkら、J.Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。C及びGブドウ球菌由来のプロテインGは、すべてのマウスアイソタイプ及びヒトγ3について有用である(Gussら、EMBO J. 5:15671575 (1986))。プロテインL、すなわち、k軽鎖相互作用により免疫グロブリン(Ig)に結合するペプトストレプトコッカス・マグヌス細胞壁タンパク質(BD Bioscience/ClonTech.、カリフォルニア州パロアルト)は、IgサブクラスIgM、IgA、IgD、IgG、IgE及びIgYのアフィニティー精製に有用である。これらタンパク質の組換え型も商業的に入手可能である。抗体が、金属結合残基、例えば、ヒスチジンタグを含むように構築されたファージ展示抗体を含有する場合には、金属アフィニティークロマトフラフィーを用いることができる。十分な量の特定の細胞集団が入手可能であれば、これらの細胞で抗原アフィニティーマトリックスを作製して、抗体を精製するためのアフィニティー方法を実施することができる。
【0110】
好ましい実施形態では、単離は、適切な14-3-3タンパク質又はその断片を用いたアフィニティークロマトフラフィーを含む。
【0111】
本発明は、本明細書に記載の抗体、並びに対応する抗体フラグメント及び抗原結合部分を提供する。これらはすべて、用語「抗14-3-3抗体」に含まれる。本明細書で用いる、本発明の抗体の「抗体フラグメント」又は「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、ある抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントが発揮することができることが明らかにされている。抗体の「抗体フラグメント」又は「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例として、以下のものがある:(i)Fabフラグメント:VL、VH、CL及びCH1ドメインから構成される1価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント:ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結した2つのFabフラグメントを含む2価フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインから構成されるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVL及びCH1ドメインから構成されるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(例えば、Wardら、(1989) Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、並びに(vii)二重特異性一本鎖Fv二量体(例えば、PCT/US92/09965)。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン(VH及びVL)は個別の遺伝子によりコードされるが、これらは、組換え方法を用いて、合成リンカーにより連結させることもできる。このリンカーは、両者を1本のタンパク質鎖にすることができ、この鎖内でVL領域とVH領域が対形成して、1価分子を形成する(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら、(1988) Science 242:423-426;及びHustonら、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照)。このような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗体結合部分」という用語に含まれるものとする。これらの抗体フラグメントは、当業者に周知の慣用的な方法を用いて取得し、インタクトな抗体と同じ方法で有用性についてフラグメントをスクリーニングする。抗体フラグメントは改変してもよい。例えば、VHドメインとVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組込みにより分子を安定化することができる(Reiterら、1996, Nature Biotech. 14:1239-1245)。
【0112】
免疫グロブリン分子をフラグメントに切断することもできる。該分子の抗原結合領域をF(ab')2又はFabフラグメントに分割することができる。F(ab')2フラグメントは2価であり、Fc領域が望ましくないか又は必要とする特徴ではない場合に有用である。Fabフラグメントは、1価であり、抗体がその抗原に対して極めて高い結合活性を有するとき有用である。この抗体からFc領域を排除すると、Fc領域及びFc受容体担持細胞同士の非特異的結合が減少する。Fab又はF(ab')2フラグメントを作製するために、抗体を酵素で消化する。免疫グロブリン分子のヒンジ領域で切断するプロテアーゼは、Fabドメイン同士を連結するジスルフィド結合を保存するため、これらのドメインは、切断後も連結したままである。この目的に好適なプロテアーゼは、ペプシンである。Fabフラグメントを作出するためには、重鎖同士を結合するジスルフィド結合を含むヒンジ領域上方で切断が起こるようにするが、重鎖と軽鎖を連結するジスルフィド結合はインタクトのまま残るように、プロテアーゼを選択する。Fabフラグメントを作製するのに好適なプロテアーゼはパパインである。アフィニティー技術がインタクトなFc領域を必要とする以外は、フラグメントを前述の方法により精製する(例えば、プロテインAアフィニティークロマトフラフィー)。
【0113】
抗体フラグメントは、抗体の限定的なタンパク質分解により作出することができ、これらはタンパク質分解抗体フラグメントと呼ばれている。こうしたフラグメントとして、限定するものではないが、以下のものがある:F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント、Fab'-SHフラグメント、及びFabフラグメント。「F(ab')2フラグメント」は、タンパク質分解酵素、例えば、ペプシン又はフィシンへの抗体の限定的な暴露により抗体から放出される。F(ab')2フラグメントは、2つの「アーム」を含み、それらは各々1可変領域を含むが、この領域は共通の抗原に対するものであり、これと特異的に結合する。2つのFab'分子は、重鎖のヒンジ領域において鎖間ジスルフィド結合により連結されている。Fab'分子は、同じ(2価)又は異なる(二重特異性)エピトープに対するものであってもよい。「Fab'フラグメント」は、ヒンジ領域を介してFabと重鎖の別の部分とを含む単一の抗原結合ドメインを含む。「Fab'-SHフラグメント」は、一般に、F(ab')2フラグメントから作出するが、これらは、F(ab')2フラグメント中のH鎖同士のジスルフィド結合により互いに保持されている。緩和な還元剤、例えば、非制限的例として、βメルカプトエチルアミンなどを用いた処理により、ジスルフィド結合を破壊し、1つのF(ab')2フラグメントから2つのFab'フラグメントを放出させる。Fab'-SHフラグメントは、1価で、単一特異性である。「Fabフラグメント」(すなわち、抗原結合ドメインを含み、ジスルフィド結合により架橋された軽鎖と重鎖の一部とを含む抗体フラグメント)は、インタクトな抗体のパパイン消化により作出することができる。好都合な方法は、この酵素を容易に除去して、消化を終結させることができるように、樹脂に固定化したパパインを用いることである。Fabフラグメントには、F(ab')2フラグメントに存在するH鎖同士のジスルフィド結合がない。
【0114】
「一本鎖抗体」は、抗体フラグメントの1種である。一本鎖抗体という用語は、「scFv」又は「sFv」のような略語で表わされることが多い。こうした抗体フラグメントは、組換えDNA技術を用いて作出する。一本鎖抗体は、VHドメイン及びVLドメインの両方を含み、両者が相互作用して、抗原結合部位を形成する。VHドメイン及びVLドメインは、通常、10〜25個のアミノ酸残基のペプチドにより連結されている。
【0115】
用語「一本鎖抗体」は、限定するわけではないが、さらに以下のものも含む:2つの一本鎖抗体(各々が異なるエピトープに対するものでもよい)が、ジスルフィド結合により互いに連結されている、ジスルフィド連結Fv(dsFv);異なる特異性を有する2つの別のscFvが、ペプチドリンカーで連結されている、二重特異性sFv;ダイアボディ(第1のsFvのVHドメインが第2のsFvのVLドメインと共に集合し、第1 sFvのVLドメインが第2 sFvのVHドメインと共に集合したとき、形成される二量体化sFvであり、ダイアボディの2つの抗原結合領域は同じ又は異なるエピトープのいずれに対するものであってもよい);トリアボディ(ダイアボディと同様の方法で形成される三量体化sFvであるが、単一の複合体中に3つの抗原結合ドメインが形成され、これら3つの抗原結合ドメインは、同じ又は異なるエピトープのいずれに対するものであってもよい)。
【0116】
「相補性決定領域ペプチド」又は「CDRペプチド」は、別の形態の抗体フラグメントである。一実施形態では、本発明は、14-3-3アンタゴニストであるCDRペプチドを提供する。CDRペプチド(「最小認識単位」としても知られる)は、単一の相補性決定領域(CDR)に対応するペプチドであり、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより作製することができる。こうした遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することにより、作製する。例えば、Larrickら、Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:106, 1991を参照されたい。
【0117】
「システイン改変抗体」の場合、遺伝子操作により抗体の表面で、システインアミノ酸が挿入されているか、又は置換されており、これを用いて、例えば、ジスルフィド架橋により、該抗体を別の分子と結合させる。抗体についてのシステイン置換又は挿入は記載されている(例えば、米国特許第5,219,996号を参照)。抗体の部位特異的結合に使用する目的で、IgG抗体の定常領域にCys残基を導入する方法は、Stimmelらにより記載されている(J. Biol. Chem 275:330445-30450, 2000)。
【0118】
本発明はさらに、ヒト化及び非ヒト化抗体を提供する。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体である。一般に、ヒト化抗体は、ヒト抗体に存在する配列に置換された可変ドメインフレームワーク領域を含む非ヒト抗体である。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、該レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種、例えば、マウス、ラット又は非ヒト霊長類の超可変領域からの残基(ドナー抗体)により置換されている免疫グロブリンであってよい。いくつかのケースでは、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体に存在しない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、抗体性能をさらに精巧にするために施される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含み、該ドメインにおいて、超可変ループの全部又は実質的に全部が、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、また、FRの全部又は実質的に全部が、ヒト免疫グロブリン配列のものである。また、ヒト化抗体には、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含有させてもよい。
【0119】
一般に、ヒト化抗体の場合、全抗体は、CDRを除いて、ヒト起原のポリヌクレオチドによりコードされるか、又はそのCDR内を除いて、そのような抗体と同一である。CDRは、その一部又は全部が非ヒト生物由来の核酸によりコードされており、これらをヒト抗体可変領域のβシートフレームワークに移植して、抗体を創出するが、その特異性は、移植したCDRによって決定される。このような抗体の創出については、例えば、WO92/11018号、Jones, 1986, Nature 321:522-525、Verhoeyenら、1988, Science 239:1534-1536に記載されている。ヒト化抗体はまた、遺伝子組換え免疫系を有するマウスを用いて作製することもできる(例えば、Roqueら、2004, Biotechnol. Prog. 20:639-654)。
【0120】
エフェクター機能に関して本発明の抗体を改変することが望ましい場合もある。例えば、システイン残基をFc領域に導入することにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。また、ヘテロ二価性架橋リンカーを用いて、ホモ二量体抗体を作製することも可能である(例えば、Wolffら、Cancer Research, 53:2560-2565 (1993)を参照)。あるいは、二重Fc領域を有する抗体を作製することもできる。例えば、Stevensonら、Anti-Cancer Drug Design, 3:219-230 (1989)を参照されたい。
【0121】
改変抗体
一態様では、本発明は、14-3-3タンパク質に特異的に結合する抗体に由来する改変抗体である、14-3-3抗体を提供する。改変抗体はまた、本明細書に記載する組換え抗体も含む。
【0122】
当業者には、多くの種類の改変又は組換え抗体が認識されよう。好適な種類の改変又は組換え抗体として、限定するものではないが、以下のものがある:操作されたモノクローナル抗体(例えば、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体)、ドメイン抗体(例えば、Fab、Fv、VH、scFV、及びdsFvフラグメント)、多価又は多重特異性抗体(例えば、ダイアボディ、ミニボディ、ミニ抗体、(scFv)2、トリボディ、及びテトラボディ)、並びに本明細書に記載の抗体コンジュゲート。
【0123】
一態様では、本発明は、ドメイン抗体である抗14-3-3抗体を提供する。「ドメイン抗体」は、ヒト抗体の重鎖(VH)又は軽鎖(VL)いずれかの可変領域に対応する抗体の機能的結合ドメインである。ドメイン抗体は、分子量約13 kDa、又は完全抗体の1/10以下の大きさを有するものである。これらは、様々な宿主、例えば、細菌、酵母及び哺乳動物細胞系において良好に発現する。加えて、ドメイン抗体は、厳しい条件、例えば、凍結乾燥又は熱変性などに付した後であっても、高度に安定しており、活性を保持する。例えば、米国特許第6,291,158号;第6,582,915号;第6,593,081号;第6,172,197号;米国特許出願2004/0110941;欧州特許0368684;米国特許第6,696,245号、WO04/058821号、WO04/003019号及びWO03/002609号を参照されたい。一実施形態では、本発明のドメイン抗体は、単一ドメインである。単一ドメイン抗体は、例えば、米国特許第6,248,516号に記載のように作製することができる。
【0124】
別の態様において、本発明は、多重特異性抗体を含む。多重特異性抗体には、二重特異性、三重特異性等の抗体がある。二重特異性抗体は、組換え手段により、例えば、ロイシンジッパー部分(すなわち、選択的にヘテロ二量体を形成する、Fos及びJunタンパク質;例えば、Kosteinyら、1992, J. Immnol. 148:1547)、又は、例えば、米国特許第5,582,996号に記載のように、他の鍵・鍵穴(lock and key)相互作用ドメイン構造を用いることにより、作出することができる。これ以外の有用な技術として、米国特許第5,959,083号及び米国特許第5,807,706号に記載されているものがある。
【0125】
二重特異性抗体はまた、「ダイアボディ」と呼ばれることもある。これらは、2つ(又は3つ以上)の異なる抗原に結合する抗体である。また、当分野では、以下のものも知られている:トリアボディ(三量体化したsFvで、ダイアボディと同様に形成されるが、3つの抗原結合ドメインが単一の複合体内に形成される;これら3つの抗原結合ドメインは、同じ若しくは異なるエピトープのいずれに対するものであってもよい)、又はテトラボディ(4つの抗原結合ドメインが単一の複合体内に形成されており、これら4つの抗原結合ドメインは、同じ若しくは異なるエピトープのいずれに対するものであってもよい)。ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディは、当分野で公知の様々な方法(例えば、Holliger及びWinter, 1993, Current Opinion Biotechnol. 4:446-449)で製造することができ、例えば、化学的に、又はハイブリッドハイブリドーマから作製することができる。さらに、こうした抗体及びそのフラグメントは、遺伝子融合により構築することも可能である(例えば、Tomlinsonら、2000, Methods Enzymol. 326:461-479; WO94/13804号;Holligerら、1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6444-6448)。
【0126】
別の実施形態において、本発明は、小型化された抗体様タンパク質であるミニボディを提供する。これは、14-3-3タンパク質に特異的に結合する抗体に由来し、CH3ドメインに結合したscFvを含む。ミニボディは、当分野において記載されている(例えば、Huら、1996, Cancer Res. 56:3055-3061)ように作製することができる。
【0127】
別の実施形態において、本発明は、14-3-3結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質を提供する。一実施形態では、融合タンパク質は、免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した14-3-3結合ドメインポリペプチドを含んでもよく、これは、免疫グロブリン重鎖CH3定常領域ポリペプチドに融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域ポリペプチドに融合している。本発明において、14-3-3抗体融合タンパク質は、当業者に認識される方法(例えば、公開された米国特許出願:20050238646、20050202534、20050202028、2005020023、2005020212、200501866216、20050180970、及び20050175614を参照)により作製することができる。
【0128】
別の実施形態において、本発明は、14-3-3抗体由来の重鎖タンパク質を提供する。天然に存在する重鎖抗体(例えば、軽鎖がないラクダ科抗体)は、天然に存在する重鎖抗体の構造及び機能的特性を一般的に保持する抗体由来治療用タンパク質を開発するのに使用されてきた。これらは、当分野ではナノボディとして知られている。14-3-3重鎖抗体由来の重鎖タンパク質は、当業者に認識される方法(例えば、公開された米国特許出願:20060246477、20060211088、20060149041、20060115470、及び20050214857を参照)により作製することができる。さらに、軽鎖欠失マウスにおける重鎖単独抗体の作出については、例えば、Zouら、JEM, 204:3271-3283, 2007を参照されたい。
【0129】
一態様では、本発明は、ヒト抗体である改変抗体を提供する。一実施形態では、完全にヒトの14-3-3抗体が提供される。「完全にヒトの抗体」又は「完全ヒト抗体」とは、ヒト染色体由来の抗体の遺伝子配列のみを有するヒト抗体を意味する。抗14-3-3完全ヒト抗体は、ヒト抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを用いる方法[例えば、Tomizuka, K.ら、Nature Genetics, 16, p.133-143, 1997; Kuroiwa, Y.ら、Nuc. Acids Res., 26, p.3447-3448, 1998;Yoshida, H.ら、Animal Cell Technology: Basic and Applied Aspects 第10巻、p.69-73 (Kitagawa, Y., Matuda, T. 及びIijima, S.編), Kluwer Academic Publishers, 1999;Tomizuka, K.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 722-727, 2000を参照]、又は、ヒト抗体ライブラリーから選択したファージディスプレイに由来するヒト抗体を得る方法(例えば、Wormstone, I. M.ら、Investigative Ophthalmology & Visual Science. 43(7), p.2301-8, 2002;Carmen, S.ら、Briefings in Functional Genomics and Proteomics, 1 (2), p.189-203, 2002;Siriwardena, D.ら、Ophthalmology, 109(3), p.427-431, 2002)により取得することができる。
【0130】
一態様では、本発明は、抗体類似体である14-3-3抗体を提供し、これは「合成抗体」と呼ばれることもある。例えば、代替タンパク質スカフォールド、又は移植されたCDRを含む人工スカフォールドを用いることができる。こうしたスカフォールドとして、限定するものではないが、例えば、生体適合性ポリマーからなる合成スカフォールドがある。例えば、Korndorferら、2003, Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics, Volume 53, Issue 1:121-129. Roqueら、2004, Biotechnol. Prog. 20:639-654を参照されたい。さらに、ペプチド抗体模擬物(「PAM」)を用いることもでき、また、スカフォールドとしてフィブロネクチン成分を使用する抗体模擬物を用いることも可能である。
【0131】
一態様では、本発明は、本明細書に記載する2つ以上の抗体を含む、架橋抗体を提供するが、これらの抗体は互いに結合して、抗体複合体を形成する。架橋抗体はまた、抗体多量体、ホモコンジュゲート、及びヘテロコンジュゲートとも呼ばれる。
【0132】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体複合体は、抗14-3-3抗体の多量体形態を含む。例えば、本発明の抗体複合体は、単量体免疫グロブリン分子の抗体二量体、三量体又はさらに高次の多量体の形態を呈していてもよい。抗体の架橋は、当分野で公知の様々な方法により実施することができる。例えば、抗体の架橋は、抗体の自然凝集により、化学的若しくは組換え連結技術により又は当分野で公知の他の方法により達成することができる。例えば、精製された抗体調製物は、抗体ホモ二量体、及び、より高次の他の抗体多量体を含むタンパク質凝集体を自然に形成することができる。
【0133】
一態様では、本発明は、14-3-3抗原に特異的に結合するホモ二量体化抗体を提供する。
【0134】
抗体は、当分野で公知の連結技術により、架橋又は二量体化することができる。非共有結合方法を用いてもよい。特定の実施形態では、抗体の架橋は、二次クロスリンカー抗体を用いて、達成することができる。クロスリンカー抗体は、目的の抗体とは異なる動物に由来するものでよい。例えば、ヤギ抗マウス抗体(Fab特異的)をマウスモノクローナル抗体に添加することにより、ヘテロ二量体を形成する。この2価クロスリンカー抗体は、ホモ二量体を形成する、目的の2つの抗体のFab又はFc領域を認識する。
【0135】
本発明の一実施形態において、14-3-3抗原に特異的に結合する抗体は、ヤギ抗マウス抗体(GAM)を用いて架橋する。別の実施形態では、GAMクロスリンカーは、各々が14-3-3抗原に特異的に結合する、2つの抗体のFab又はFc領域を認識する。
【0136】
また、抗体の共有結合又は化学結合方法を用いてもよい。化学的架橋剤は、ホモ又はヘテロ二価性のいずれでもよく、ホモ二量体を形成する2つの抗体と共有結合する。架橋試薬は当分野で公知であり、よく知られているように、例えば、ホモ又はヘテロ二価性リンカーがある(the 2006 Pierce Chemical Company Crosslinking Reagents Technical Handbook;Hermanson, G.T., Bioconjugate Techniques, Academic Press, カリフォルニア州サンディエゴ(1996);Aslam M.及びDent AH., Bioconjugation: protein coupling techniques for the biomedical sciences, Houndsmills, England: Macmillan Publishers (1999);Pierce: Applications Handbook & Catalog, Perbio Science, Ermbodegem, Belgium (2003-2004);Haughland, R.P., Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals Eugene, 第9版、Molecular Probes, OR (2003);及び米国特許第5,747,641号を参照)。当業者であれば、改変(架橋など)を目的とした抗体のアミノ酸に対する様々な官能基の適合性を理解されよう。抗体の架橋に用いられる化学的架橋剤クロスリンカーの好適な例として、限定するものではないが、以下のものがある:SMCC[スクシンイミジル4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート]、SATA[N-スクシンイミジルS-アセチルチオ-アセテート]、N-ヒドロキシスクシンイミドのヘミスクシン酸エステル;スルホ-N-ヒドロキシ-スクシンイミド;ヒドロキシベンゾトリアゾール、及びp-ニトロフェノール;ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(ECD)、及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドメチオダイド(EDCI)(例えば、米国特許第4,526,714号を参照、尚、その開示内容は、全文を参照として本明細書に組み込む)。上記以外の架橋試薬として、以下のものがある:グルタチオン、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン(DEPBT)、オニウム塩ベースの結合試薬、ポリオキシエチレンベースのヘテロ二価性架橋試薬、及びその他の試薬(Haitaoら、Organ Lett 1:91-94 (1999);Albericioら、J Organic Chemistry 63:9678-9683 (1998);Arpiccoら、Bioconjugate Chem. 8:327-337 (1997);Frischら、Bioconjugate Chem. 7:180-186 (1996);Deguchiら、Bioconjugate Chem. 10:32-37 (1998);Beyerら、J. Med. Chem. 41:2701-2708 (1998);Drouillatら、J. Pharm. Sci. 87:25-30 (1998);Trimbleら、Bioconjugate Chem. 8:416-423 (1997))。抗体ホモ二量体の形成のためのプロトコル例が、米国特許公開20060062786に記載されている。治療用化合物を抗体と結合させる技術も、以下の文献に記載されている:Arnonら、“Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancers Therapy,” Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Reisfeldら編、pp243-256, Alan R. Liss, Inc. (1985);Thorpeら、“The Preparation and Cytotoxic Properties of Antibody Toxin Conjugates,” Immunol. Rev. 62:119-58 (1982);及びPietersz, G.A., “The linkage of cytotoxic drugs to monoclonal antibodies for the treatment of cancer,” Bioconjugate Chemistry 1(2):89-95 (1990)。尚、これらの参照文献は、全文を参照として本明細書に組み込む。
【0137】
さらに、本発明の抗体−抗体コンジュゲートは、当分野で公知の技術により、例えば、ヘテロ二価性架橋試薬であるGMBS(マレイミドブトリルオキシスクシンイミド)及びSPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート) を用いて、互いに共有結合させることができる[例えば、Hardy, "Purification And Coupling Of Fluorescent Proteins For Use In Flow Cytometry", Handbook Of Experimental Immunology, 第1巻、Immunochemistry, Weirら(編)、pp. 31.4-31.12 第4版、(1986), 及びLedbetterら、米国特許第6,010,902号を参照]。
【0138】
これ以外にも、米国特許公開20060216284、米国特許第6,368,596号に記載のように、チオエーテル架橋を介して抗体を連結させることもできる。当業者には理解されるように、抗体はFab領域で架橋することができる。いくつかの実施形態では、化学的架橋剤は、抗体の抗原結合領域と相互作用しないことが望ましい。というのは、こうした相互作用は、抗体機能に影響を与えうるからである。
【0139】
コンジュゲート抗体
本明細書に開示した14-3-3アンタゴニストは、無機又は有機化合物、例えば、限定するものではないが、別のタンパク質、核酸、炭水化物、ステロイド、及び脂質に結合した抗体を含む(例えば、Greenら、Cancer Treatment Reviews, 26:269-286 (2000)を参照)。化合物は、生物活性であってもよい。生物活性とは、該化合物に暴露されていない細胞と比較して、細胞に対する生理学的作用を有する化合物を指す。生理学的作用とは、生物学的過程における変化、例えば、限定するものではないが、DNA複製及び修復、組換え、転写、翻訳、分泌、膜ターンオーバー、細胞接着、シグナル伝達、細胞死などである。生物活性化合物としては、医薬化合物がある。一実施形態では、14-3-3抗体は、14-3-3アンタゴニストペプチド、好ましくはR-18に、好ましくはリンカーを介して結合されている。
【0140】
ペプチド
一態様では、本発明は、ペプチドである14-3-3アンタゴニストを提供する。このようなペプチドとして、CDRペプチドがある。
【0141】
一実施形態では、ペプチドは、抗14-3-3抗体又は別の14-3-3アンタゴニストペプチドに結合することができる14-3-3タンパク質の1領域に結合する。本明細書で用いられる用語「ペプチド」又は「オリゴペプチド」は、ペプチド類似体、誘導体、融合タンパク質など、及びペプチド組成物、例えば、本明細書に例示したものを包含するものとする。
【0142】
好ましい実施形態では、ペプチドは、R-18と称されるアミノ酸配列を含む。別の好ましい実施形態では、ペプチドは、R-18配列から実質的に構成される。別の好ましい実施形態では、ペプチドは、R-18配列のセグメントを含む。別の好ましい実施形態では、ペプチドは、R-18配列の複数の反復を含み、これらはリンカーによって隔てられているのが好ましい。
【0143】
別の好ましい実施形態では、ペプチドは、R-18に結合することができる14-3-3タンパク質の1領域に結合する。別の好ましい実施形態では、ペプチドは、細胞内14-3-3結合パートナー、好ましくはRafに結合することができる14-3-3タンパク質の1領域に結合する。
【0144】
一実施形態では、ペプチドは、14-3-3タンパク質と細胞内14-3-3結合パートナーの結合を破壊することなく、14-3-3タンパク質に結合する。
【0145】
一実施形態では、14-3-3アンタゴニストはホスホペプチドである。
【0146】
ペプチド改変
対象ペプチドは、当業者には周知の様々な慣用的方法で改変することができる。所望の特性を有するペプチドを達成するために、改変をいくつ実施してもよい。本発明のペプチドに求められるのは、14-3-3アンタゴニストとして機能する能力を保持することである。
【0147】
改変の例として、以下のものがある。ペプチドの末端アミノ基及び/若しくはカルボキシル基並びに/又はアミノ酸側鎖をアルキル化、アミド化若しくはアシル化により改変して、エステル、アミド又は置換アミノ基を取得する。ヘテロ原子を脂肪族修飾基に含有させてもよい。これは、慣用的化学合成方法を用いて実施する。その他の改変として、以下のものがある:それぞれ対応するグルタミル及びアスパルチル残基へのグルタミル及びアスパラギニル残基の脱アミノ;プロリン及びリシンのヒドロキシル化;セリン又はトレオニンのヒドロキシ基のリン酸化;並びにリシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のアミノ基のメチル化(例えば、T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co. カリフォルニア州サンフランシスコ、1983を参照)。
【0148】
別の態様では、ペプチドの一方又は両方の末端、通常、一方の末端を親油基、通常、脂肪族又はアラルキル基(ヘテロ原子を含んでもよい)で置換することができる。鎖は飽和又は不飽和のいずれでもよい。好都合なことに、市販の脂肪族脂肪酸、アルコール及びアミンを用いることができ、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸及びミリスチルアルコール、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸並びにステアリルアミン、オレイン酸、リノール酸、ドコサヘキサエン酸など(米国特許第6,225,444号を参照)がある。非分枝状で、天然に存在する、炭素数14〜22の長さの脂肪酸が好ましい。これ以外の親油性分子として、グリセリル脂質及びステロール、例えば、コレステロールがある。親油基は、多くの場合、支持体上での合成中に、該支持体とオリゴペプチドの結合部位に応じて、慣用的方法に従い、オリゴペプチド上の適切な官能基と反応させてもよい。ペプチド及び薬剤を宿主に投与するために、他の治療薬と一緒に、オリゴペプチドをリポソームの腔に導入する場合には、脂質結合が有用である。
【0149】
別の実施形態では、ペプチドのN及びC末端のいずれか又は両方を合計約100以下のアミノ酸、一般的に合計約30以下のアミノ酸、さらに一般的に約20以下のアミノ酸、多くの場合、約9以下のアミノ酸により伸長することができ、アミノ酸は、25%以下、より一般的に20%以下の極性アミノ酸、より具体的には荷電アミノ酸である20%以下のアミノ酸を有する。従って、いずれかの方向での上記配列の伸長は、主に、親油性の非荷電アミノ酸、特に非極性脂肪族アミノ酸及び芳香族アミノ酸を用いて実施する。ペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、又はD-アミノ酸とL-アミノ酸の混合物を含んでいてもよい。以下に説明するように、オリゴペプチドを融合又はキメラタンパク質として発現させる場合には、前記のアミノ酸伸長の数の例外を考慮する。
【0150】
ペプチドはまた、オリゴマー、特にペプチドの二量体の形態であってもよく、好ましくは、約6以下のペプチドの反復配列を含む、頭−頭型、尾−尾型、又は頭−尾型のいずれでもよい。オリゴマーは、1以上のD-立体異性体アミノ酸を、アミノ酸の全部に至るまで含んでもよい。オリゴマーは、ペプチド間にリンカー配列を含んでも、含まなくてもよい。好適なリンカーとして、限定するものではないが、当分野で公知のように、非荷電アミノ酸と(Gly)nを含むもの(nは1〜7)、Gly-Ser(例えば、(GS)n、(GSGGS)n及び(GGGS)n、ここで、nは少なくとも1である)、Gly-Ala、Ala-Ser、又はその他の可変リンカーがある。Gly又はGly-Serのリンカーを用いることができる。というのは、これらのアミノ酸は比較的非構造型(unstructured)であるため、個々のペプチドと細胞の標的分子との相互作用を可能にし、オリゴマーのペプチド間の構造的摂動が制限されるからである。オリゴマーペプチドを構築するために、アミノ酸以外のリンカーを用いてもよいことは理解すべきである。
【0151】
ペプチドはまた、構造的に規制された形態、例えば、好ましくは約9〜50、一般的には12〜36アミノ酸の環状ペプチドであってもよく、これらのペプチドには、指定されたアミノ酸以外のアミノ酸がスペーサーとして存在しうる。従って、例えば、末端システインの付加により、ジスルフィド架橋を形成させ、環状ペプチドを形成することができる。いくつかのケースでは、ペプチドを環状化するために、アミノ酸以外のものを用いることもある。ペプチドの2以上のアミノ酸を連結するのに、二価性架橋試薬が有用である。環形成のための他の方法については、例えば、Chen, S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5872-5876 (1992);Wu, T. P.ら、Protein Engineering 6:471478 (1993);Anwer, M. K.ら、Int. J. Pep. Protein Res. 36:392-399 (1990);Rivera-Baeza, C.ら、Neuropeptides 30: 327-333 (1996)を参照されたい。あるいは、ペプチドのN末端及びC末端に二量体形成配列を付加することにより、構造的に規制されたペプチドを作製し、二量体形成配列同士の相互作用により、環状構造を形成させる(例えば、WO/0166565号を参照)。別のケースでは、対象ペプチドを別のタンパク質との融合物として発現させ、こうした融合物が、表面露出構造、例えば、コイルドコイル又はβターン構造のループ上での規制ディスプレイのためのスカフォールドを提供する。
【0152】
意図する用途に応じて、特に哺乳動物宿主への投与のために、対象ペプチドは、キャリア分子への組込み、ペプチドバイオアベイラビリティーの変更、半減期の延長又は短縮、各種組織又は血流への分配制御、血液成分との結合の低減又は増強などの目的で、別の化合物との結合により改変することができる。対象ペプチドは、これら別の成分とリンカーで結合させてもよく、リンカーは、例えば、滑膜中のMMPにより、生理学的環境において切断可能であるか、又は切断可能ではない。ペプチド同士は、官能基、例えば、ヒドロキシ、チオール、カルボキシル、アミノなどが存在するペプチドの任意の地点で連結させることができる。改変は、N末端又はC末端のいずれかで行うのが望ましい。例えば、対象ペプチドは、ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジン、ポリプロリン、ポリ(ジビニル-エーテル-コ-無水マレイン酸)、ポリ(スチレン-c-無水マレイン酸)などと共有結合させることにより、改変することができる。水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール及びポリビニルピロリジンは、改変されていない化合物と比較して、血流からの結合化合物のクリアランスを低下させることが知られている。また、改変により、水性媒質での溶解性を高め、ペプチドの凝集を低減することもできる。必要なのは、ペプチドが、送達及び/又は放出されるとき、14-3-3アンタゴニスト機能を保持することである。
【0153】
ペプチドコンジュゲート及び融合タンパク質
一実施形態では、ペプチドの検出及び単離のために、又はオリゴペプチドを特定の細胞、組織、若しくは器官にターゲティング若しくは輸送する目的で、ペプチドを低分子に結合する。低分子コンジュゲートは、ハプテンを含み、これは、単独で動物に導入されたとき、免疫応答を開始しない物質である。一般に、ハプテンは、分子量約2 kD以下、より好ましくは約1 kD以下の低分子である。ハプテンとして、低有機分子(例えば、p-ニトロフェノール、ジゴキシン、ヘロイン、コカイン、モルヒネ、メスカリン、リセルグ酸、テトラヒドロカンナビノール、カンナビノール、ステロイド、ペンタミジン、ビオチンなど)がある。例えば、検出又は精製を目的とする、ハプテンとの結合は、ハプテン特異的抗体又は特異的結合パートナー、例えば、ビオチンに結合するアビジンを用いて、実施する。
【0154】
また、特定の細胞又は組織にコンジュゲートをターゲティングする低分子を用いてもよい。
【0155】
当分野で公知の標識を本発明のペプチドに結合させて、診断方法にこのようなコンジュゲートを使用してもよいことは理解されよう。
【0156】
一実施形態において、ペプチドは、様々な目的のために、多種多様ないずれか別のペプチド又はタンパク質に結合させる。ペプチドをペプチド又はタンパク質に連結させることにより、結合のために好都合な機能性を提供することができ、例えば、アミド又は置換アミン形成(例:還元的アミノ化)のためのアミノ基;チオエーテル又はジスフィルド形成のためのチオール基;アミド形成のためのカルボキシル基などに結合させる。中でも、2以上、より一般的には3以上のペプチドで、約60以下のリシン基、特に約4〜20、一般的には6〜18リシン単位からなるポリリシン(多重抗原性ペプチド系(MAPS))と呼ばれる)が興味深く、対象ペプチドを、リシンアミド基、一般に少なくとも約20%、より一般的には約50%以上の利用可能なアミノ基に結合させることにより、多重ペプチド生成物を取得する(Butz, S.ら、Pept. Res. 7: 20-23 (1994))。このようにして、複数の対象ペプチドを有する分子が得られ、この分子において対象ペプチドの配向は同じ方向であり、実際に、この連結基によって、尾−尾型二量体形成又はオリゴマー形成が可能になる。
【0157】
一実施形態では、オリゴペプチドを細胞及び組織にターゲティングするか、又はペプチドに追加の官能性を付加する目的で、ペプチドを別のペプチド又はタンパク質に結合させる。ターゲティングの場合、結合に用いるタンパク質又はペプチドは、治療のためにターゲティングしようとする細胞又は組織に基づいて選択する(Lee, R.ら、Arthritis. Rheum. 46: 2109-2120 (2002);Pasqualini, R., Q. J. Nucl. Med. 43: 159-62 (1999);Pasgualinl, R., Nature 380: 364-366 (1996))。タンパク質はまた、限定するものではないが、ポリアルギニン;及びポリリシン、ポリアスパラギン酸などのポリアミノ酸を含んでもよく、これらは、結合ペプチドを含む小胞又は粒子の調製のために、別のポリマー、例えば、ポリエチレングリコールに組み込んでもよい。
【0158】
一実施形態では、対象ペプチドを別のペプチド又はタンパク質と一緒に発現させるか、あるいは一緒に合成して、内部、又はN末端若しくはC末端のいずれかでポリペプチド鎖の一部にして、キメラタンパク質又は融合タンパク質を形成することができる。本明細書において「融合ポリペプチド」又は「融合タンパク質」又は「キメラタンパク質」とは、典型的には天然の状態では連結されているが、ペプチド結合によって、それぞれのアミノ末端及びカルボキシ末端と連結することにより、連続したポリペプチドを形成する、多数のタンパク質成分から構成されるタンパク質を意味する。タンパク質成分は直接に連結することもできるし、又はペプチドリンカー/スペーサーを介して連結することもできることは理解されよう。
【0159】
細胞及び組織にターゲティングする目的、細胞内コンパートメントにターゲティングする目的、細胞若しくは生物における融合タンパク質を追跡する目的、及びオリゴペプチドに結合する別の分子をスクリーニングする目的で、様々なペプチド又はタンパク質を融合ポリペプチドにして、立体構造的に規制された形態の対象オリゴペプチドを展示することができる。融合タンパク質を作製するのに有用なタンパク質として、各種リポータータンパク質、構造タンパク質、細胞表面受容体、受容体リガンド、毒素、及び酵素がある。タンパク質の例としては、蛍光タンパク質(例えば、エクオジア・ビクトリア(Aequadia victoria)GFP、ウミシイタケ(Renilla renifornis)GFP、レニーラ・ミュエレジ(Renilla muelledi)GFP、ルシフェラーゼなど、及びその変異体);βガラクトシダーゼ;アルカリホスファターゼ;大腸菌マルトース結合タンパク質;糸状バクテリオファージのコートタンパク質;T細胞受容体;カリブドトキシンなどが挙げられる。
【0160】
融合タンパク質はまた、単独で、又はより大きなタンパク質配列の一部としての、タンパク質又は別のペプチドの断片との融合物も包含する。従って、融合ポリペプチドは、融合パートナーを含んでもよい。「融合パートナー」とは、そのクラスのタンパク質のメンバーすべてに共通の機能又は能力を賦与するペプチドと結合した配列を意味する。融合パートナーは、異種(すなわち、宿主細胞に対しネイティブではない)又は合成(すなわち、どの細胞に対してもネイティブではない)のいずれでもよい。融合パートナーとしては、限定するものではないが、以下のものがある:a)立体構造的に規制された形態又は安定な形態のオリゴペプチド;b)配列のターゲティング、これは、細胞内又は細胞外コンパートメントへのペプチドの局在化を可能にする;c)安定性配列、これは、ペプチド若しくはそれをコードする核酸の安定性、又はそれらの分解からの保護に影響を与える;d)リンカー配列、これは、融合パートナーからオリゴペプチドを立体的に切断する;及びe)上記いずれかの組合せ。
【0161】
一態様では、融合パートナーは提示構造である。本明細書で用いる「提示構造」とは、対象ペプチドと融合したとき、立体構造的に規制された形態のペプチドを提示する配列を意味する。好ましい提示構造は、溶媒暴露外側表面にペプチドを提示することにより、別の結合パートナーとの結合相互作用を増強する。一般に、このような提示構造は、オリゴペプチドのN末端と連結した第1部分と、オリゴペプチドのC末端と連結した第2部分を含む。すなわち、本発明のペプチドは提示構造に挿入されている。好ましくは、提示構造は、標的細胞において発現させたとき、最小生物活性を有するように選択又は設計する。
【0162】
好ましくは、提示構造は、ペプチド又は外部ループを展示又は提示することにより、ペプチドへの接触性を最大限にする。好適な提示構造として、限定するものではないが、コイルドコイル幹構造、ミニボディ構造、βターン上のループ、二量体形成配列、システイン連結構造、トランスグルタミナーゼ連結構造、環状ペプチド、らせん状バレル、ロイシンジッパーモチーフなどがある。
【0163】
一実施形態において、提示構造は、外部ループへの対象ペプチドの提示を可能にする、コイルドコイル構造(例えば、Myszka, D. G.ら、Biochemistry 33: 2363-2373 (1994))、例えば、コイルドコイルロイシンジッパードメイン(Martin, F.ら、EMBO J. 13: 5303-5309 (1994))である。提示構造はまた、主として最小抗体相補領域からなる、ミニボディ構造を含んでもよい。ミニボディ構造は一般に、折りたたまれたタンパク質において三次構造の単一面に沿って提示される2つのペプチド領域を提供する(例えば、Bianchi, E.ら、J. Mol. Biol. 236: 649-659 (1994); Tramontano, A.ら、J. Mol. Recognit. 7: 9-24 (1994))。
【0164】
別の形態において、提示構造は、2つの二量体形成配列を含む。これらの二量体形成配列は同じでも、異なるものでもよく、生理学的条件下で、十分な親和性で非共有結合することにより展示ペプチドを構造的に規制する。従って、二量体形成配列を対象オリゴペプチドの各末端で用いた場合、それによって得られる構造は、構造的に制限又は規制された形態の対象ペプチドを展示することができる。様々な配列が二量体形成配列として好適である(例えば、WO99/51625号;参照として本明細書に組み込む)。当分野で知られるいくつものタンパク質−タンパク質相互作用配列が本発明の目的に有用である。
【0165】
別の態様では、提示配列は、金属イオンに結合して、立体構造的に規制された二次構造を形成する能力を賦与する。従って、例えば、C2H2ジンクフィンガー配列を用いる。C2H2配列は、2つのシステインと2つのヒスチジンを有し、これらは、亜鉛イオンがキレート化するように配置されている。ジンクフィンガードメインは、多数のジンクフィンガーペプチド中に独立に存在して、構造的に独立した可変連結ドメインを形成することが知られている(例えば、Nakaseko, Y.ら、J. Mol. Biol. 228: 619-636 (1992))。一般的共通配列は、(5アミノ酸)-C-(2〜3アミノ酸)-C-(4〜12アミノ酸)-H-(3アミノ酸)-H-(5アミノ酸)(配列番号66)である。好ましい例は、3〜20アミノ酸-HIRSHTG(配列番号67)の-FQCEEC-ランダムペプチドであろう。同様に、共通配列-C-(2アミノ酸)-C-(4〜20ランダムペプチド)-H-(4アミノ酸)-C-(配列番号68)を有するCCHCボックスを用いることもできる(Bavoso, A.ら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 242: 385389 (1998))。別の例として、以下のものがある:(1)ヌクレオキャプシドタンパク質P2をベースとする、-VKCFNC-4〜20ランダムアミノ酸-HTARNCR-(配列番号69);(2) Lasp-1 LIMドメインの天然に存在する亜鉛結合ペプチドの配列から改変した配列(Hammarstrom, A.ら、Biochemistry 35: 12723-32 (1996));及び(3) NMR構造アンサンブルIZFPをベースとする、−MNPNCARCG−4〜20ランダムアミノ酸-HKACF-(配列番号70)(Hammarstromら、前掲)。
【0166】
さらに別の態様では、提示構造は、ジスフィルド結合が形成されて、その結果、立体構造的に規制された構造が得られるように、2つ以上のシステイン残基を含む配列である。すなわち、前述したように、対象オリゴペプチドの各末端にペプチド配列を含むシステインを用いることにより、環状ペプチド構造が得られる。環状構造は、提示されたペプチドのタンパク質分解に対する感受性を低減し、その標的分子との接触性を高める。当業者には理解されるように、この特定の実施形態は、分泌ターゲティング配列を用いて、ペプチドを細胞外空間に向けて指令する場合に特に適している。さらに、プロテアーゼ、例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ(例:MMP-1、MMP-3)により認識されて、切断される配列を用いてもよい。これらの残基を用いて、環状ペプチドを形成することにより、ペプチド半減期又は膜透過性を高める。続いて、適切なプロテアーゼで環状ペプチドを切断すると、所望の位置で、活性線状形態のペプチドが放出される。
【0167】
別の実施形態では、融合パートナーはターゲティング配列である。ターゲティング配列は、以下の配列を含む:発現産物の生物活性を保持しながら、発現産物を予め定めた分子又はクラスの分子に結合させることができる結合配列;融合タンパク質又は結合パートナーの選択的分解をシグナル伝達する配列;及び、予め定めた細胞位置にペプチドを構成的に局在化することができる配列。典型的な細胞位置としては、細胞内位置(例えば、ゴルジ体、小胞体、核、仁、核膜、ミトコンドリア、分泌小胞、リソソーム)、及び分泌シグナルの使用による細胞外位置がある。
【0168】
様々なターゲティング配列が当分野では公知であり、例えば、膜アンカー配列などがある。ペプチドは、シグナル配列により膜に向けて指令され、疎水性膜貫通ドメイン(TMと称する)によって膜に安定に組み込まれる。TMセグメントは、当分野で公知のように、発現した融合タンパク質上に適切に配置されて、細胞内又は細胞外のいずれかに対象ペプチドを展示する。細胞外提示が特に好ましい。膜アンカー配列及びシグナル配列としては、限定するものではないが、以下に由来するものがある:(a)クラスI完全膜タンパク質、例えば、IL-2受容体β鎖(Hetakeyama, M.ら、Science 244: 551-556 (1989))及びインスリン受容体β鎖(Hetakeyamaら、前掲);(b)クラスII完全膜タンパク質、例えば、中性エンドペプチダーゼ(Malfroy, B.ら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 144: 59-66 (1987));並びに(c)III型タンパク質、例えば、ヒトシトクロムP450 NF25(Hetakeyamaら、前掲);CD8、ICAM-2、IL-8R、及びLFA-1由来のもの。
【0169】
膜アンカー配列はまた、GPIアンカーも含み、これにより、グリコシルホスファチジルイノシトールを介して、GPIアンカー配列と脂質二重層の間に、共有結合が形成される。GPIアンカー配列は、Thy-1やDAFなどの様々なタンパク質に存在する(Homans, S. W.ら、Nature 333: 269-272 (1988))。同様に、アシル化配列は、脂質部分の結合、例えば、イソプレニル化(すなわち、ファメシル及びゲラニル−ゲラニル;Farnsworth, C. C.ら、Proc. Natl. Aced. Sci. USA 91: 11963-11967 (1994)及びAronheim, A.ら、Cell 78: 949-61 (1994)を参照)、ミリストイル化(Stickney, J. T. Methods Enzymol. 332: 64-77 (2001))、又はパルミトイル化を可能にする。一態様では、対象ペプチドを末端の脂質群に結合させて、脂質膜、例えば、リポソームに結合することができるようにする。
【0170】
別の態様では、ターゲティング配列は、ペプチドの分泌に作用する分泌シグナル配列である。多数の分泌配列が、それらを目的のペプチドに対してアミノ末端に配置したとき、細胞外空間へのペプチドの分泌、特に、細胞(移植細胞を含む)によるペプチドの分泌を指令することがわかっている。好適な分泌シグナルとしては、IL-2(Villinger, F.ら、J. Immuno. 155: 3946-3954 (1995))、成長ホルモン(Roskam, W. G.ら、Nucleic Acids Res. 7: 305-320 (1979))、プレプロインスリン、及びインフルエンザHAタンパク質に存在するものがある。
【0171】
融合パートナーはさらに、融合タンパク質又はそれをコードする核酸に安定性を賦与する、安定配列を含んでもよい。従って、例えば、開始メチオニンの後にグリシンを組み込む(例えば、MG又はMGG)ことにより、VarshavskyのN末端法則の通り、融合ペプチドを安定化する、又はユビキチン化による分解からこれを保護することができ、従って、細胞内での半減期延長をもたらす。
【0172】
検出又は精製の目的で、ペプチドにタグ標識をするために別のアミノ酸を付加してもよい。これらの配列は、リガンド、例えば、抗体により認識されるエピトープ又は金属イオンに結合する配列を含んでもよい。様々なタグ配列及びリガンド結合配列が当分野で公知である。これらの配列として、限定するものではないが、以下のものがある:ポリ−ヒスチジン(例えば、6xHisタグ、抗体により認識されるが、二価金属イオンにも結合する);ポリ−ヒスチジン−グリシン(ポリ-his-gly)タグ;インフルエンザHAタグポリペプチド;c-mycタグ;Flagペプチド(例えば、Hoppら、BioTechnology 6: 1204-1210 (1988));KT3エピトープペプチド;チューブリンエピトープペプチド(例えば、Skinnerら、J. Biol. Chem. 266: 15163-12166 (1991));T7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(例えば、Lutz-Freyermuthら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6363-6397 (1990))。
【0173】
融合パートナーは、本明細書に記載のように、ペプチドを連結し、非妨害構造中にペプチドを提示するためのリンカー又は連結配列を含む。
【0174】
本発明において、融合パートナーの組合せを用いてもよい。リンカー配列と共に、又はリンカー配列なしで、提示構造、ターゲティング配列、タグ配列及び安定配列の組合せをいくつ用いてもよい。
【0175】
ペプチド調製物及び塩
本発明のペプチドは、いくつかの方法で作製することができる。ペプチドの化学合成は当分野において公知である。固相合成が一般に用いられ、各種の商業的合成装置、例えば、Applied Biosystems Inc.(カリフォルニア州フォスターシティ);Beckmanなどによる自動化合成装置が入手可能である。また、特にラージスケール産生のために、液相合成法を用いてもよい。これらの標準的方法を用いることにより、天然に存在するアミノ酸を、非天然アミノ酸、特にD-立体異性体で、及び長さ又は官能価が異なる側鎖を有するアミノ酸で置換することができる。低分子、標識部分、ペプチド、若しくはタンパク質と結合させるための官能基、又は環状化ペプチドを形成する目的での官能基を化学合成中に分子に導入することもできる。さらに、合成工程中に低分子及び標識部分を結合してもよい。官能基の導入、及び別の分子との結合による、対象ペプチドの構造及び機能への影響は最小限であるのが好ましい。
【0176】
本発明のペプチドは、塩の形態、一般に、薬学的に許容される塩形態で存在してもよい。こうした塩として、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガンなどの無機塩がある。また、ペプチドの様々な有機塩も作製することができ、例えば、限定するものではないが、酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、サリチル酸などがある。
【0177】
また、オリゴペプチド及びその誘導体の合成は、組換え技術を用いることにより、実施することもできる。組換え生産のために、単一オリゴペプチドをコードする、又は、好ましくは介在アミノ酸若しくは配列(これにより、単一ペプチド若しくは頭−尾型二量体に対する切断が可能になる)とタンデムで複数の対象ペプチドをコードする、核酸配列を作製することができる。メチオニン又はトリプトファンが存在しない場合には、介在メチオニン又はトリプトファンを組み込んでもよく、これによって、それぞれCNBr又はBNPS-Skatole(2-(2-ニトロフェニルスルフェニル)-3-メチル-3-ブロモインドレニン)を用いた単一アミノ酸切断が可能になる。あるいは、酵素による切断のための特定のプロテアーゼにより認識される配列、又は自己切断部位として作用する配列(例えば、アフトウイルス及びカルジオウイルスの2A配列;Donnelly, M. L., J. Gen. Virol. 78:13-21 (1997);Donnelly, M. L., J. Gen. Virol. 82:1027-41 (2001))を用いて、切断を達成する。対象ペプチドはまた、より大きなペプチドの一部として作製してもよく、これを単離した後、タンパク質分解的切断又は化学的切断によりオリゴペプチドを得ることができる。具体的配列及び作製方法は、利便性、経済性、必要な純度などにより決定される。これらの組成物を作製するために、特定のペプチド、タンパク質又は融合タンパク質をコードする遺伝子を、本発明のオリゴペプチドをコードするDNA配列に連結して、融合核酸を形成し、これを発現ベクターに導入する。融合核酸の発現は、特定の宿主細胞又は生物における発現のために、以下に記載するように、好適なプロモーター及びその他の制御配列の制御下で実施する(Sambrookら、Molecular Biology: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(第3版、2001);Ausubel, F.ら、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, ニューヨーク州ニューヨーク(2002年まで更新)(1988))。
【0178】
様々な分子を本発明のペプチドに結合させるために、オリゴペプチド及び別の分子上の官能基を適切な結合(例えば、架橋)物質の存在下で反応させる。用いられる結合又は架橋物質の種類は、官能基に応じて異なり、例えば、一級アミン、スルフヒドリル、カルボニル、炭水化物及びカルボン酸が用いられる。好ましくは、改変のために選択されていないオリゴペプチド上の反応性官能基を保護した後、ペプチドと他の反応性分子の結合を実施することにより、不要な副反応を制限する。本明細書で用いる「保護基」とは、特定の官能基に結合した分子であり、官能基を再度露出させるために選択的に除去可能な分子を意味する(Greene, T. W.及びWuts, P. G. M. Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc., ニューヨーク(第3版、1999))。ペプチドは、保護されたアミノ酸前駆体と一緒に合成するか、又は合成後で、しかも架橋試薬と反応させる前に保護基と反応させることができる。また、結合は間接的であってもよく、例えば、ビオチン部分を結合することにより実施し、これをストレプトアビジン又はアビジンと結合した化合物又は分子と接触させることができる。
【0179】
好ましい実施形態において、結合した形態で活性が低減しているオリゴペプチドの場合、オリゴペプチドと結合化合物との連結は、例えば、所望の細胞又は組織への輸送後に、所望の条件下で切断が起こるように、十分に不安定性であるように選択する。生物学的に不安定な共有結合、例えば、イムノ結合及びエステルが当分野でよく知られている(例えば、米国特許第5,108,921号を参照)。このような改変により、潜在的に活性が低い形態のオリゴペプチドの投与が可能になり、その後、これらは不安定な結合の切断により活性化される。
【0180】
核酸、発現ベクター、及び導入方法
タンパク質(ペプチド及び抗体を含む)である14-3-3アンタゴニストは、これをコードする核酸を用いて、合成することもできる。これを実施して、14-3-3アンタゴニストを作出することができ、これは、後に使用のために単離する。あるいは、こうした核酸を治療に用いることもできる。
【0181】
一実施形態では、核酸を発現ベクターにクローニングし、細胞又は宿主に導入する。発現ベクターは、自己複製染色体外ベクター、又は宿主染色体に組み込まれるベクターのいずれか、例えば、レトロウイルスに基づくベクター、部位特異的組換え配列を含むベクター、又は相同組換えによるものである。一般に、これらのベクターは、オリゴペプチドをコードする核酸に機能的に連結した制御配列を含む。「制御配列」とは、特定の宿主生物において対象ペプチドの発現に必要な核酸配列を意味する。従って、制御配列は、核酸の転写及び翻訳に必要な配列であり、限定するものではないが、プロモーター配列、エンハンサー又は転写アクチベーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び停止配列;ポリアデニル化シグナルなどがある。
【0182】
好ましい実施形態では、細胞は、線維芽細胞又はFLS細胞である。好ましくは、細胞は滑膜細胞である。好ましくは、細胞は、14-3-3アンタゴニストを発現するように操作する。細胞をin vitroで操作し、レシピエントに導入してもよい。あるいは、細胞をin vivoで操作してもよい。
【0183】
様々なプロモーターが、本発明のペプチドを発現させるのに有用である。プロモーターは、構成的、誘導性、及び/又は細胞特異的なものでよく、天然プロモーター、合成プロモーター(例えば、tTAテトラサイクリン誘導性プロモーター)、又は様々なプロモーターのハイブリッドを含んでもよい。プロモーターは、考慮事項の中でも、タンパク質を発現させようとする細胞又は生物、所望する発現のレベル、及び所望する発現の調節に基づいて選択する。好適なプロモーターとしては、以下のものがある:細菌プロモーター(例えば、pL1ファージプロモーター、tacプロモーター、lacプロモーターなど);酵母系プロモーター(例えば、GAL4プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、トリプトファンシンターゼプロモーター、銅誘導性CUPIプロモーターなど);植物プロモーター(例えば、CaMV S35、ノポリンシンターゼプロモーター、タバコモザイクウイルスプロモーターなど)、昆虫プロモーター(例えば、オートグラファ(Autographa)核多角体病ウイルス、アエデス(Aedes)DNVウイルスp&及びP61、hsp70など)、並びに発現哺乳動物細胞のためのプロモーター(例えば、ユビキチン遺伝子プロモーター、リボソーム遺伝子プロモーター、βグロビンプロモーター、チミジンキナーゼプロモーター、熱ショックタンパク質プロモーター、及びリボソーム遺伝子プロモーターなど)、そして特にウイルス性プロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス(SV40)プロモーター、及びレトロウイルスプロモーター。
【0184】
本明細書において「機能的に連結された」とは、核酸が、別の核酸と機能的な関係に配置されたことを意味する。本発明に関連して、機能的に連結されたとは、コードされたアンタゴニストの発現が起こるように、制御配列を、対象14-3-3アンタゴニストをコードする核酸配列に対して配置することを意味する。ベクターは、プラスミドを含むか、あるいはウイルスベクター、例えば、細胞が分裂細胞である場合に有用な送達系である、レトロウイルスベクター、又は細胞が非分裂細胞である場合には、レンチウイルス及びアデノウイルスベクターを含む。特に好ましいのは、自己不活性化レトロウイルスベクター(SINベクター)であり、これは、3'-LTRで不活性化されたプロモーターを有し、これにより、ウイルスベクターに挿入された非ウイルスプロモーターを用いて、異種遺伝子の発現の制御が可能になる(例えば、Hofmann, A.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 5185-5190 (1996)を参照)。当業者には理解されるように、シュードタイピングによる系の改変により、すべての真核細胞、特により高次の真核生物の細胞について、レトロウイルスベクターの使用が可能になる(Morgan, R. A.ら、J. Virol. 67: 4712-4721 (1993); Yang, Y.ら、Hum. Gene Ther. 6:1203-1213 (1995))。
【0185】
さらに、発現ベクターはまた、形質転換した宿主細胞の選択を可能にする選択マーカー遺伝子も含む。一般に、選択により、発現ベクターを含む細胞の割合を増加させる検出可能な表現型が賦与され、さらに、選択遺伝子を発現する細胞と、これを発現しない細胞の識別が可能になる。選択遺伝子は当分野で公知であり、用いる宿主細胞に応じて異なる。好適な選択遺伝子として、細胞を薬剤に対して耐性にする遺伝子、低栄養培地での増殖を可能にする遺伝子、リポーター遺伝子(例えば、βガラクトシダーゼ、蛍光タンパク質、グルコウロニダーゼなど)があり、これらはすべて、当分野において公知であり、当業者が入手可能である。
【0186】
生存細胞に核酸を導入するのに利用することができる様々な技術がある。本明細書において、「導入された」とは、核酸が、後に起こる該核酸の発現に適した方法で細胞に進入することを意味する。核酸を導入する技術は、核酸を培養細胞にin vitroで輸送するのか、又は意図する宿主生物の細胞にin vivoで輸送するのかに応じて異なり、また、宿主細胞の種類によっても異なる。核酸をin vitroで導入するための方法としては、リポソーム、Lipofectin(商標)の使用、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、及びパーティクルボンバードメントがある。核酸をin vivoで輸送するための方法としては、核酸の直接導入、ウイルスベクターの使用、典型的レトロウイルスベクター、及びリポソーム媒介トランスフェクション(ウイルスコートリポソーム媒介トランスフェクションなど)がある。本発明の14-3-3アンタゴニストを発現する核酸は、細胞中に一時的に若しくは安定に存在してもよいし、又は宿主の染色体に安定に組み込んでもよい。
【0187】
状況によっては、細胞又は組織をターゲティングする物質、例えば、細胞表面タンパク質又は標的細胞(例:線維芽細胞若しくはFLS細胞、標的細胞上の受容体のリガンド、細胞膜上の脂質成分、又は細胞表面上の炭水化物)に特異的な抗体を含むのが望ましい場合もある。リポソームを用いる場合には、細胞内に取り込まれる、細胞表面タンパク質に結合するタンパク質を、ターゲティングのために、及び/又は取込みを容易にするために用いることができる。非制限的例として、特定の細胞型向性の(tropic)キャプシドタンパク質若しくはその断片、インターナリゼーションを受けるタンパク質に特異的な抗体(Wu, G. Y.ら、J. Biol. Chem. 262: 4429-4432 (1987);Wagner, E.ら、Proc. Natl. Aced. Sci. USA 87: 3410-3414 (1990)))、又はin vivo半減期を延長するタンパク質に特異的な抗体がある。
【0188】
発現は、原核生物から真核生物に及ぶ極めて多種の宿主細胞において実施され、宿主細胞としては、細菌、酵母、植物、昆虫、及び動物などがある。本発明のオリゴペプチドは、特に、大腸菌、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・ポンベ、タバコ又はシロイヌナズナ(Arabidopsis)植物、昆虫シュナイダー(Schneider)細胞、及び哺乳動物細胞、例えば、COS、CHO、HeLaなどに、細胞内で、又はペプチドを適切なシグナルペプチドに融合することにより分泌形態で、発現させることができる。宿主細胞からの分泌は、オリゴペプチドをコードするDNAと、シグナルペプチドをコードするDNAを融合することにより、実施することができる。分泌シグナルは、細菌、酵母、昆虫、植物、及び哺乳動物系について当分野で公知である。オリゴペプチドを発現する核酸は、細胞、例えば、組織発現のためには幹細胞に、あるいは消化管発現のためには細菌に挿入することができ、これらの細胞を宿主に移植することにより、オリゴペプチドのin vivo供給源が得られる。
【0189】
精製ペプチド
好ましい実施形態では、本発明のオリゴペプチドは、合成又は発現後に精製又は単離することができる。「精製(した)」又は「単離(した)」とは、ペプチドを合成又は発現させた環境から遊離しており、実際に使用することができる形態であることを意味する。従って、精製(した)又は単離(した)とは、ペプチド又はその誘導体が、実質的に純粋である、すなわち、純度90%以上、好ましくは純度95%以上、好ましくは純度99%以上であることを意味する。オリゴペプチド及びその誘導体は、サンプル中に存在する他の成分に応じて、当業者には周知の方法により精製及び単離することができる。標準的精製方法としては、電気泳動、免疫学的技法、及びクロマトグラフィー技法、例えば、イオン交換、疎水性、アフィニティー、サイズ排除、逆相HPLC、及びクロマト分画がある。タンパク質はまた、例えば、塩若しくは有機溶媒の存在下で、選択的溶解度により精製することもできる。必要な精製の程度は、対象オリゴペプチドの用途に応じて異なる。従って、いくつかのケースでは、精製がまったく必要でないこともある。
【0190】
ほとんどの用途について、用いられる組成物は、生成物の作製方法、精製方法、及び、その意図する使用(例えば、治療を目的とした医薬用担体と一緒に)に関連する汚染物質に対して、少なくとも20重量%、さらに一般的には少なくとも約75重量%、好ましくは少なくとも約95重量%、一般的には少なくとも約99.5重量%の所望の生成物を含む。一般に、百分率は総タンパク質に基づくものとする。
【0191】
医薬組成物、投与、及び投薬量
本発明の14-3-3アンタゴニストは、被験者への投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。典型的には、医薬組成物は、本発明の14-3-3アンタゴニストと、薬学的に許容される担体を含む。本明細書で用いる「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合性の、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬及び抗真菌薬、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容される担体の例として、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうち1種以上、及びこれらの組合せがある。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトールのようなポリアルコール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを含有するのが好ましい。薬学的に許容される物質としては、14-3-3アンタゴニストの貯蔵寿命又は効果を増強する、湿潤又は微量の補助物質、例えば、湿潤若しくは乳化剤、保存剤又はバッファーがある。
【0192】
14-3-3アンタゴニストは、細胞外に局在化した14-3-3タンパク質にターゲティングする。従って、治療用組成物の製剤化及び投与は、こうして送達される14-3-3アンタゴニストが、細胞外14-3-3タンパク質と結合するのに利用可能であるように実施する。
【0193】
本発明の組成物は、様々な形態をしていてよい。これらの形態としては、例えば、液体、半固体及び固体投与剤形、例えば、溶液(例:注射液及び注入液)、分散液若しくは懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソーム及び座薬がある。好ましい剤形は、投与及び治療適用の意図する方法に応じて異なる。典型的な好ましい組成物は、注射液又は注入液の形態をしており、例えば、別の抗体によるヒトの受動免疫のために用いられるものに類似した組成物である。好ましい投与方法は非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋内であり、特に嚢内が好ましい)である。一実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、静脈内注入又は注射により投与する。別の好ましい実施形態では、14-3-3アンタゴニストは、筋内又は皮下注射により投与する。好ましい実施形態では、滑膜への直接注射を実施する。
【0194】
治療用組成物は、典型的に、製造及び貯蔵の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散液、又は高い薬物濃度に適した他の規則構造として製剤化することができる。滅菌注射液は、必要に応じて、前文に挙げた成分の1つ又はそれらの組合せと一緒に、適切な溶媒に必要量の活性化合物を組み込んだ後、濾過滅菌を実施することにより、調製することができる。一般に、分散液は、ベースの分散媒と、前文に挙げた成分からの他の必要な成分とを含む無菌ビヒクルに、活性化合物を組み込むことにより調製することができる。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これにより、事前に滅菌濾過した溶液から、活性成分の粉末、さらには所望する任意の別の成分の粉末が得られる。溶液の適正な流動度は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用により、分散液の場合には要求粒度の維持により、及び界面活性剤の使用により、維持することができる。注射組成物の長時間にわたる吸収は、吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に含有させることにより、達成することができる。
【0195】
本発明の14-3-3アンタゴニストは、当分野で公知の様々な方法、例えば、静脈内注射又は注入により投与することができる。滑膜への直接投与は、好ましい投与経路の1つである。当業者であれば理解されるように、投与経路及び/又は方法は、所望する結果に応じて異なる。いくつかの実施形態では、活性化合物は、急速な放出から化合物を保護する担体と一緒に調製してもよく、例えば、放出制御製剤(埋込み物、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達系)がある。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を用いることができる。このような製剤を調製するための多数の方法が特許付与されているか、又は当分野で公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, 編、Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。代表的製剤化技術は、中でも以下の文献に教示されている:Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第19版、Mack Publishing Co., ペンシルバニア州イーストン (1995)及びHandbook of Pharmaceutical Excipients, 第3版、Kibbe, A.H. 編、Washington DC, American Pharmaceutical Association (2000)。
【0196】
いくつかの実施形態では、本発明の14-3-3アンタゴニストは、不活性希釈剤又は吸収可能な可食担体と一緒に、経口投与してもよい。また、化合物(及び、所望であれば別の成分)を硬質又は軟質シェルゼラチンカプセルに封入し、錠剤に圧縮してもよいし、又は被験者の食事に直接組み込んでもよい。治療用の経口投与の場合には、化合物に賦形剤を組み込み、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、オブラート(wafers)などの形態で用いてもよい。非経口投与以外により本発明の化合物を投与するために、化合物の不活性化を防ぐ物質で該化合物をコーティングするか、又は該物質と一緒に同時投与しなければならない場合もある。
【0197】
また、追加的な活性化合物を組成物に組み込むこともできる。いくつかの実施形態では、本発明の14-3-3アンタゴニストは、1種以上の別の治療薬と一緒に製剤化する、及び/又は、これと同時投与する。例えば、DMARD又はDMOADがある。このような併用療法は、有利なことに、投与治療薬の使用量を低減することができるため、各種単剤療法に関連する毒性又は合併症の可能性を回避しうる。
【0198】
本発明の医薬組成物は、「治療有効量」又は「予防有効量」の本発明の抗体を含むことができる。「治療有効量」とは、必要な投薬回数で、かつ必要な期間をかけて、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。14-3-3アンタゴニストの治療有効量は、様々な因子、例えば、個体の病状、年齢、性別、及び体重、並びに14-3-3アンタゴニストが個体において所望の応答を誘発する能力に応じて変動しうる。治療有効量はまた、抗体の有毒又は有害な作用より、治療に有益な作用の方が上回る量でもある。「予防有効量」とは、必要な投薬回数で、かつ必要な期間をかけて、所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。典型的には、予防的用量は、疾患の発症前、又は早期に使用することから、予防有効量は、治療有効量より少ない。
【0199】
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療又は予防応答)を達成するように、調節することができる。例えば、単回ボーラスを投与してもよいし、数回に分けた用量を、時間をかけて投与してもよく、また、治療状況の要件により、これに比例して用量を減少又は増加させてもよい。投与しやすさ、及び投薬の均一性のために、非経口組成物を単位投与剤形に製剤化するのが特に有利である。本明細書で用いる単位投与剤形とは、治療しようとする哺乳動物被験体の単位投与に適した、物理的に分離した単位を意味し、各単位は、必要な医薬用担体と一緒に所望の治療効果を生み出すように計算されて、予め決定された量の活性化合物を含む。本発明の単位投与剤形の詳細は、以下の事項により決定され、かつこれらに直接左右される:(a)活性化合物に特有の特性、及び達成しようとする特定の治療又は予防効果、並びに(b)個体における感受性の治療のためのこうした活性化合物を配合する技術に固有の制限事項。
【0200】
本発明の抗体の治療又は予防有効量の非制限的範囲は、0.1〜20 mg/kg、さらに好ましくは1〜10 mg/kgである。用量の数値は、緩和しようとする状態の類型及び重症度に応じて変動しうる。さらに、特定の被験体の場合、個々の必要性、及び組成物を投与する、又はその投与を監督する人の専門的判断に応じて、時間経過に伴い、具体的投薬レジメンを調節すべきであること、また、本明細書に記載した用量の範囲は例にすぎず、特許請求の範囲に記載する組成物の範囲又は実施を制限する意図はないことは理解すべきである。
【0201】
本明細書に記載する医薬組成物は、単位用量又は複数回用量容器、例えば、密封アンプル又はバイアル中に提供してもよい。このような容器は典型的に、使用まで製剤の無菌性及び安定性を保つような方法で密封する。一般に、製剤は、前述のように、油性又は水性ビヒクル中に懸濁液、溶液又はエマルションとして貯蔵することができる。あるいは、医薬組成物は凍結乾燥状態で貯蔵してもよく、この場合、使用前に無菌液体担体を添加するだけでよい。
【0202】
14-3-3アンタゴニストの治療用途
本明細書において「処置(治療)」とは、治療若しくは予防的処置、又は疾患、障害若しくは望ましくない状態に対する抑制的処置を意味する。治療は、疾患の重症度を軽減し、疾患の進行を止める、又は疾患を排除するために、疾患症状の開始前、及び/又は疾患の臨床症状、若しくは他の症状発現後の、適切な形態の対象14-3-3アンタゴニストの投与を含む。疾患の予防は、好ましくは疾患に対する感受性が高い被験体において、障害若しくは疾患の症状の開始を引き延ばす、又は遅らせることを含む。
【0203】
一態様では、本発明は、関節炎を治療する方法を提供し、例えば、以下の疾患を治療する方法を含む:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症。
【0204】
一般に、本方法は、14-3-3アンタゴニストを単独で、又は治療効果を高めるための別の治療薬と併用して、患者に投与することを含む。
【0205】
14-3-3アンタゴニストのスクリーニング方法
一態様では、本発明は、14-3-3アンタゴニストをスクリーニングする方法を提供する。スクリーニングされる化合物は、有機低分子から、大きなポリマー及びバイオポリマーまでに及ぶ可能性があり、例として、限定するものではないが、有機小化合物、糖類、炭水化物、多糖、レクチン、ペプチド及びその類似体、ポリペプチド、タンパク質、抗体、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸などを含みうる。
【0206】
一実施形態において、スクリーニングされる候補化合物は有機低分子であり、約100〜2,500ダルトンの範囲の分子量を有するものが好ましいが、それ以外の分子を用いてもよい。こうした候補分子は、往々にして、炭素原子、若しくは炭素原子と1以上のヘテロ原子の混合物から構成される環状構造、並びに/又は芳香族、ポリ芳香族、ヘテロ芳香族及び/若しくはポリ芳香族構造を含む。候補物質は、様々な官能基置換基を含んでいてもよい。一実施形態では、置換基は、タンパク質と相互反応することが知られる置換基、例えば、アミン、カルボニル、ヒドロキシル及びカルボキシル基からなる群より独立に選択される。
【0207】
候補化合物は、化合物別の基準に基づいて、又はこれに代わり、当分野で一般に使用されている多種多様なライブラリー技術の1つを用いて、スクリーニングすることができる。例えば、14-3-3タンパク質への結合について14-3-3リガンドと競合する化合物を同定する目的で、本発明のアッセイを用いて、合成コンビナトリアル化合物ライブラリー、天然産物ライブラリー及び/又はペプチドライブラリーをスクリーニングすることができる。これらの競合的結合アッセイは、14-3-3リガンドとほぼ同じ部位で14-3-3タンパク質に結合する化合物を同定することができる。競合結合アッセイを実施する多数の技術が当分野で公知である。これら技術のいずれを本発明に用いてもよい。
【0208】
このような結合実験は、完全に溶液中で行ってもよいし、あるいはこれに代わり、試薬を固定化するために、固体支持体、例えば、ガラス若しくはその他のビーズ、又は固体表面、例えば、ペトリ皿の底面を用いて実施してもよい。固定化は、非共有結合相互作用、又は共有結合相互作用のいずれによって媒介されるものでもよい。多種多様な化合物及びタンパク質を固体支持体に固定化する方法は、公知である。これら方法のいずれを用いてもよい。
【0209】
溶液中で実施するか、又は固定化した14-3-3タンパク質若しくは候補化合物を用いて実施するかにかかわらず、14-3-3タンパク質及び候補化合物は一般に、結合を促進する条件下で互いに接触させる。用いられる実際の条件は変わりうるが、結合アッセイは、一般に生理学的条件下で実施する。特定のアッセイに好適な実際の濃度は、当業者には明らかであろう。
【0210】
一実施形態では、本アッセイはさらに、候補物質が14-3-3タンパク質活性と拮抗する能力に関する機能性アッセイも含む。一実施形態では、上記アッセイは、候補物質が14-3-3タンパク質によるMMPの誘導を低減する能力を決定することを含む。一実施形態では、候補物質を14-3-3タンパク質と混合して、得られた混合物を、14-3-3タンパク質に応答してMMPを誘導することができる細胞に添加する。別の実施形態では、候補物質を14-3-3タンパク質と一緒に、14-3-3タンパク質に応答してMMPを誘導することができる細胞に添加する。候補物質が、細胞、好ましくは線維芽細胞若しくはFLS細胞において測定可能な変化を誘導する14-3-3タンパク質の能力を阻害する能力を測定し、これにより、該候補物質を14-3-3アンタゴニストとして特性決定する他の機能性アッセイを実施することもできる。
【0211】
本明細書に記載する参照文献は、以下に挙げるものを含め、その全文を参照として本明細書に明示的に組み込むものとする。
【0212】
実験
【表1】

【0213】
【表2】

【0214】
【表3】

【0215】
一実施形態では、システイン残基を含む配列において、ジスフィルド結合の形成を回避するために、システイン残基をセリン残基で置換する。尚、このシステインは、内部システイン残基又は末端システイン残基のいずれでもよい。
【0216】
様々な目的のために、ペプチドエピトープを改変してもよく、その例として、別の部分との結合、例えば、エピトープを含む免疫原を産生する部分との結合などがある。理解されるように、キャリアとの結合のために、また、抗体を作製する目的で露出することが望まれる領域の露出が達成されるように、システインを適切に配置することができる。KKLEの場合、反対側を露出させるために、システインをC末端に付加した。用いるキャリアはかなり大きくてもよく、このキャリアで最初の数個のアミノ酸をマスキングしてもよい。
【実施例】
【0217】
[実施例1]14-3-3η免疫原配列及び抗14-3-3η抗体
単一特異性抗14-3-3η抗体を作製するために、長さが8〜15アミノ酸の様々なペプチドを本発明者ら自身の基準に基づいて選択した。これらのペプチド、及び全長組換え天然(タグ付加していない)14-3-3ηをモノクローナル抗体産生の免疫原として用いた。14-3-3の7つのアイソフォームについてのタンパク質配列アラインメントを図4に示す(14-3-3γ(配列番号64)、14-3-3η(配列番号63)、14-3-3α/β(配列番号71)、14-3-3ζ(配列番号72)、14-3-3θ(配列番号73)、14-3-3σ(配列番号74)、及び14-3-3ε(配列番号75))。
【0218】
免疫原#1:C-LDKFLIKNSNDF(配列番号76)(アミノ酸配列104〜115;“AUG1-CLDK”)。ヒト14-3-3η残基104〜115のセグメントに対応するペプチドは、キャリアとの結合のためにN-末端システイン部分の付加、及び内部ジスフィルド結合の形成を回避するために内部システイン-112部分の置換により改変した。
【0219】
免疫原#2:KKLEKVKAYR-C(配列番号77)(アミノ酸配列77〜86;“AUG2-KKLE”)。ヒト14-3-3η残基77〜86のセグメントに対応するペプチドは、キャリアとの結合のためにC末端システイン部分の付加により改変した。
【0220】
免疫原#3:C-KNSVVEASEAAYKEA(配列番号78)(アミノ酸配列143〜157;“AUG3-CKNS”)。ヒト14-3-3η残基143〜157のセグメントに対応するペプチドは、キャリアとの結合のためにN末端システイン部分の付加により改変した。
【0221】
免疫原#4:全長ヒト組換え14-3-3η(配列番号63)、タンパク質アクセッション番号:NP 003396。
【0222】
免疫
雌BALB/cマウス4匹のグループを、最初に完全フロイントアジュバント中マウス当たり50ugの抗原(免疫原#1、#2、#3又は#4)を用いて、腹腔内注射により免疫した。続いて、不完全フロイントアジュバント中の抗原で、3週間の間隔をあけて、前記と同様に4回の追加免疫を投与した。血清力価(ELISAにより測定)が、免疫前血清サンプルの力価の10倍以上に上昇したら、各グループにおいて2匹の最高応答マウスに各々、100μlの滅菌PBS(pH7.4)中10μgの抗原で静脈内に追加免疫した。2回目の追加免疫後に採取した免疫マウスからの血清サンプルの力価測定を図1(免疫原#1:CLDK)、図2(免疫原#2:KKLE)、図3(免疫原#3:CKNS)及び図8(免疫原#4)に示す。
【0223】
融合方法
最後の追加免疫から3日後に、ドナーマウスを死なせた後、脾細胞を採取して、プールした。ハイブリドーマの1段階選択及びクローニングを実施した以外は、以前記載されている通りに、上記脾細胞とSP2/0 BALB/cミエローマ親細胞との融合を実施した。融合から11日後にクローンを採取し、96ウェル組織培養プレートのウェルにおいて、以下:1%ヒポキサンチン/チミジン、20%ウシ胎仔血清、2 mM GlutaMax I、1 mMピルビン酸ナトリウム、50μg/mlゲンタマイシン、1%OPI及び0.6 ng/ml IL-6を含む200μlのD-MEM培地中に再懸濁させた。4日後、上清を、1 μg/ウェルの精製抗原でコーティングしたプレート上で抗体活性についてELISAによりスクリーニングした。
【0224】
増殖の遅いハイブリドーマクローンの再生方法
増殖が遅い、又は不健康にみえるハイブリドーマ細胞系は、一般に、以下を含む濃厚増殖培地の添加によりレスキューすることができた:1%ヒポキサンチン/チミジン、20%ウシ胎仔血清、2 mM GlutaMax I、1 mMピルビン酸ナトリウム、50μg/mlゲンタマイシン、1%OPI、20%馴化EL-4組織培養上清、及び0.6 ng/ml IL-6を含むD-MEM培地。EL-4はマウスの胸腺腫細胞系であり、これは、12-酢酸12-ミリスチン酸ホルボール(PMA、Sigma製、カタログ番号P-8139)で刺激すると、細胞にインターロイキン2(IL-2)、B細胞分化因子(EL-BCDF-nak)、2種のB細胞増殖因子(BSF-p1及びEL-BCGF-swa)、及び別のリンホカイン(リンパ球の増殖及び分化を大幅に増強する)を分泌させる。以下の文献を参照されたい:G. Kohler及びC. Milstein, Preparation of monoclonal antibodies, Nature 25 (1975) 256-259;Ma, M., S. Wu, M. Howard及びA. Borkovec. 1984. Enhanced production of mouse hybridomas to picomoles of antigen using EL-4 conditioned media with an in vitro immunization protocol. In Vitro 20:739。
【0225】
30日の安定性試験後、組換え14-3-3ηを認識することができるIgGを分泌した、合計100個の生存クローンを取得した。追跡すべきリード(lead)クローンを同定するために、以下を含む一連の方法を用いて、100個の生存クローンをスクリーニングした:イムノブロッティング(ドットブロット)、捕獲(trapping)アッセイ及び慣用的捕捉(サンドイッチ)ELISA。また、100個のクローンはすべて、別の6つの14-3-3アイソフォームと一緒に、慣用的捕捉(サンドイッチ)ELISAを用いて、交差反応性についても試験した。
【0226】
[実施例2]捕捉ELISAにおいてビオチン化14-3-3アイソフォームをベイト(bait)として用いた、ハイブリドーマクローンからの組織培養(TC)上清の交差反応性の試験
本発明者らは、作出したハイブリドーマクローンのいずれかが、14-3-3η以外の6つのアイソフォームのいずれかと交差反応するか、又はこれを認識するか否かを決定するために、7つの14-3-3アイソフォームを「ベイト」として用いて、慣用的捕捉ELISAを実施した。表4に示す代表的データが証明するように、選択した4つのハイブリドーマクローン(AUG3-CKNS-2D5、AUG3-CKNS-7F8、AUG3-CKNS-7H8、AUG4-ETA-8F10)は、2つの連続希釈度で、14-3-3ηに結合し、これを認識するが、試験したこれより低い希釈度でも、他の14-3-3アイソフォームのいずれにも結合しないか、又はいずれとも交差反応しなかった。このデータは、これらのクローンが14-3-3ηに高度に特異的であることをはっきりと示している。対照的に、1クローンAUG3-CKNS-4F10は、他の3つの14-3-3アイソフォーム、主としてそれぞれ14-3-3γ、β及びζと結合又は交差反応する。以上を考え合わせると、これらのデータから、慣用的捕捉ELISAは、14-3-3ηアイソフォームに高度に特異的であるハイブリドーマクローンをスクリーニング及び同定するのに有効な方法を提供することがわかる。
【0227】
表4に示す慣用的捕捉ELISA実験を以下のように実施した。ELISAプレートに、100μL/ウェルの未希釈過剰増殖TC上清を塗布して、4℃で一晩インキュベートした。ビオチン標識14-3-3(7つのアイソフォームすべてに対応する)を1/500から1/16,000を超えるまで滴定した後、室温で1時間インキュベートした。プレートを、100μL/ウェルのPBS(pH 7.4)中の3%脱脂粉乳でブロッキングし、室温で1時間インキュベートした。1/8,000ストレプトアビジン-HRPOをPBS-Tweenで希釈して、100μL/ウェルで添加した後、振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。TMBバッファーをウェル当たり50μLで添加した後、室温の暗所でインキュベートした。10分後ウェル当たり50μLの1M HClで反応を停止してから、OD450nmで読み取った。
【表4a】

【0228】
【表4b】

【0229】
[実施例3]RAに罹患した患者の滑液及び血清における14-3-3発現
プールした患者の滑液(SF)及び血清(PS)サンプルにおける14-3-3タンパク質の様々なアイソフォームβ、γ、ε、η、τ、σ及びζのレベルを、角化細胞溶解物(K)を陽性対照として用いて、ウエスタン分析により分析した。η及びγアイソフォームのみがSFサンプルに検出され、これらはPSと比較して高い強度で染色されていた。活性滑膜炎を呈したが、抗TNF療法をまだ受けていない17人の RA患者からの関節滑液サンプルも、14-3-3のηアイソフォームの一貫した発現を呈示した(データは示していない)。患者はすべて疾患活動性スコア(DAS)が6.0以上であった。
【0230】
[実施例4]患者の滑液及び血清におけるMMP発現
上記の変化が、同じ滑液サンプル中のMMP-1及びMMP-3の変化と相関しているか否かを決定するために、合計12のRA滑液サンプルとそれらの対応する血清サンプルを14-3-3η及びγについて、またMMP-1及びMMP-3タンパク質についても同時に評価した。14-3-3ηは全サンプルに検出された。MMP-1は、SF及びPSの両方で全サンプルに検出されたが、MMP-3はこれより検出レベルの変化が大きかった。また、14-3-3γアイソフォームも患者の滑液及び血清サンプルに検出された(データは示していない)。
【0231】
MMP-1及びMMP-3の発現は、滑液及び血清の両方で14-3-3η及びγアイソフォームの発現と有意な相関を示している(表5)。
【表5】

【0232】
[実施例5]患者の血清及び滑液サンプルにおける14-3-3タンパク質のウエスタンブロット検出の感度
滑液及び血清サンプル中の14-3-3ηの検出レベルを決定するために、12人のRA罹患患者又は正常な被験者からのサンプルをプールし、プールしたサンプルの限界希釈をウエスタンブロットにより分析した。14-3-3ηは、ある程度の希釈度範囲にわたり(0.1μl有効量の滑液及び1.0μl有効量の血清という低いものまで)検出可能であった(データは示していない)。
【0233】
2μlのプールした正常な血清(NS)又は患者の血清(PS)を、0.05〜2.0μgの範囲の既知濃度の組換え14-3-3ηと一緒に泳動させた。2μl量のNS及びPSサンプルは、それぞれ約1〜1.5μg及び15〜20μgの14-3-3ηを含むと推定された(データは示していない)。これは、14-3-3ηのレベルが、正常な被験者と比較して、RA罹患患者の血清では約10倍以上多く存在することを示している。
【0234】
さらなる詳細、及び結果については、Kilaniら、J. Rhuematology, 34: 1650-1657, 2007を参照されたい。
【0235】
[実施例6]R-18ペプチドは、細胞外14-3-3タンパク質と相互作用し、細胞外14-3-3タンパク質により誘導されたMMP-1発現の誘導を阻害する
ビオチン化R18の配列は以下の通りである:ビオチン-Pro-His-Cys-Val-Pro-Arg-Asp-Leu-Ser-Trp-Leu-Asp-Leu-Glu-Ala-Asn-Met-Cys-Leu-Pro-OH(配列番号79)。
【0236】
R-18が14-3-3タンパク質のMMP誘導作用をブロック又は抑制する能力を証明するために、質量分析法により、数種の14-3-3アイソフォームを含有することが証明されている(未公開のデータ)角化細胞様細胞馴化培地(KLCCM)で、皮膚線維芽細胞のサブコンフルエント培養物を処理した。上記実験で用いたKLCCMは、皮膚線維芽細胞においてMMP-1発現を誘導する高い能力を有するため、細胞分化転換の第28日から採取した(データは示していない)。馴化培地(KLCCM)内に存在する14-3-3タンパク質を除去又は「プルダウン(pull down)」するために、KLCCMのいくつかのサンプルをビオチン化R-18及びアビジンセファロースに暴露した。
【0237】
その結果は、皮膚線維芽細胞が、KLCCMでの処理後、MMP-1を発現したこと、及びMMP-1の発現は、ビオチン化R-18及びアビジンセファロース(KLCCMから選択的に14-3-3タンパク質を枯渇させると考えられる)によるKLCCMの前処理により部分的に阻害することができた(68.8%低減)ことを証明するものであった(図5、パネルA「プルダウン」)。
【0238】
組換え14-3-3σ(ストラチフィン)は、MMP-1を誘導することが知られており、これを5μg/mlで(「プルダウン」−)又は暴露後に(「プルダウン」+)、陽性対照として用いた。陰性対照としては、馴化していない培地(DMEM(49%)、KSFM(49%)及び2%FBS)で処理した皮膚線維芽細胞を用いた(「プルダウン」−)。図5のパネルBは、MMP-1/βアクチン比の密度計測分析を示す。3つの独立した実験から得られた知見は、統計的有意性を示した(P値:0.02)。
【0239】
[実施例7]ヒト組換え14-3-3η、及びHeLa細胞由来の内因性14-3-3ηの免疫沈降
実施例1からのモノクローナル抗14-3-3抗体を、それらが、組換え及び内因性細胞14-3-3ηの両方を免疫沈降させる、すなわち「捕捉する」能力について試験した。本明細書に記載する本発明の治療方法の場合、天然の立体配置の14-3-3ηを免疫沈降させるか、又はこれを認識する能力を有する抗体を用いるのが好ましい。抗14-3-3ηハイブリドーマクローンからの培養上清を、100 ngのヒト組換え14-3-3ηを含むバッファー、又は溶解HeLa細胞由来の上清(200μgタンパク質)を含むバッファーのいずれかと一緒に、4℃で2時間インキュベートした。標準的方法により、プロテインA/Gアガロースを用いて、免疫沈降物を回収した。免疫沈降物をSDS-PAGE及びウエスタンブロッティングにより分析した。図6は、免疫原#4(全長組換え14-3-3η)を用いて作製したハイブリドーマクローン7B11を用いて得られたウエスタンブロットを示す。レーン1:プロテインA/Gアガロースビーズのみ;レーン2:プロテインA/Gアガロースビーズを細胞溶解物と混合した;レーン3:プロテインA/Gアガロースビーズを組換えヒト14-3-3ηと混合した;レーン4:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清と混合した;レーン5:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清及び細胞溶解物と混合した;レーン6:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清及び組換え14-3-3ηと混合した。データは、クローン7B11が、HeLa細胞由来の14-3-3η(レーン5)及びヒト組換え14-3-3η(レーン6)の両方を免疫沈降したことを示している。
【0240】
図7は、免疫原#3(CKNS)に対して作製したハイブリドーマクローン2D5を用いて得られたウエスタンブロットを示す。レーン1:プロテインA/Gアガロースビーズのみ;レーン2:プロテインA/Gアガロースビーズを細胞溶解物と混合した;レーン3:プロテインA/Gアガロースビーズを組換えヒト14-3-3ηと混合した;レーン4:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清と混合した;レーン5:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清及び細胞溶解物と混合した;レーン6:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清及び組換え14-3-3ηと混合した。データは、クローン2D5が、HeLa細胞溶解物由来の14-3-3η(レーン5)及びヒト組換え14-3-3η(レーン6)の両方を免疫沈降したことを示している。
【0241】
同様の分析を別のハイブリドーマクローン数個について実施した(データは示していない)。これらの実験は、実施例1で作出したモノクローナル抗体が、HeLa細胞溶解物由来のタンパク質の免疫沈降により証明されたように、天然の立体配置の14-3-3ηに結合して、これを免疫沈降する、すなわち「捕捉する」ことができることを明らかにしている。
【0242】
[実施例8]抗14-4-3抗体は、マウスRAモデルにおけるMMP発現を低減する;14-3-3アンタゴニストペプチドは、マウスRAモデルにおけるMMP発現を低減する
Williamsら、PNAS, 89:9784-9788, 1992に記載されているように、尾の付け根に、フロイント完全アジュバントに乳化させた100μgの精製済II型コラーゲンを注射することにより、オスDBAマウスにコラーゲン誘導性関節炎を誘導した。その後、マウスを毎日検査し、1若しくはそれ以上の足に紅斑及び/又は腫脹を示すマウスは、本明細書に記載する1種以上のアンタゴニスト14-3-3ηによる処置レジメン、又はプラセボ処置にランダムに割り当てた。これ以外にも、II型コラーゲンによる免疫の前日に、処置レジメンを開始する。マウス10匹のグループを用いて、以下のように様々な処置レジメンを実施する。
【0243】
(1)R-18ペプチドを0.1〜20 mg/kgの範囲の様々な投与量で、週2回、(a)腹腔内経路で、又は(b)滑膜内に投与した。
【0244】
(2)実施例1のハイブリドーマ上清から取得及び精製して、選択した抗14-3-3η抗体を0.10〜20 mg/kgの範囲の様々な投与量で、週2回、(a)腹腔内経路で、又は(b)滑膜内に投与した。
【0245】
(3)プラセボ処置。
【0246】
20日の処置期間にわたり関節炎をモニターし、以下に記載する疾患指数を評価する。
【0247】
臨床スコア
腫脹、紅斑、関節硬直、及び足腫脹についてマウスの肢を評価する。関節炎の臨床徴候は、プラセボ対照と比較して、処置レジメンが有効であった動物において低減している。
【0248】
滑膜における14-3-3、MMP-1及び/又はMMP-3発現
様々な時点で滑膜サンプルを採取し、14-3-3、好ましくは14-3-3γ及び/又は14-3-3η、並びにMMP-1及び/又はMMP-3レベルを決定する。MMP-1及び MMP-3のレベルは、プラセボ対照と比較して、処置レジメンが有効であった動物において低減している。
【0249】
組織病理学的評価
関節炎の足を固定し、パラフィンに埋め込み、切片にして、顕微鏡評価のために、ヘマトキシリン及びエオジンで染色する。各関節における関節炎の重症度を以下の基準に従って等級化した:軽度=最小限の滑膜炎、軟骨喪失、及び点在巣に限定される骨びらん;中度=滑膜炎及びびらんが存在するが、正常な関節構造(joint architecture)はインタクトである;重度=滑膜炎、広範なびらん、及び関節構造の破壊。組織病理学により検出した関節炎の重症度は、プラセボ対照と比較して、処置レジメンが有効であった動物において低下している。
【0250】
[実施例9]抗14-4-3抗体は、ウサギRAモデルにおけるMMP発現を低減する;14-3-3アンタゴニストペプチドは、IL-1分泌細胞の埋込みにより誘導されたウサギRAモデルにおけるMMP発現を低減する
本発明の14-4-3ηアンタゴニストは、Yaoら、Arthritis Research and Therapy 2006, 8:R16(http://arthritis-research.com/content/8/1/R16にて、オンラインで入手可能)に記載されているように、ニュージーランド白ウサギの膝関節に5 x 105個のIL-1産生細胞を埋め込むことにより関節炎を誘導したウサギモデルにおいて評価する。
【0251】
[実施例10]抗14-4-3抗体は、RAモデルにおいてMMP発現を低減する;14-3-3アンタゴニストペプチドは、RAにおけるMMP発現を低減する
ブラウンノルウェイ(Brown Norway)ラット又はニュージーランド(New Zealand)白ウサギにおいて、肢関節の滑膜に組換え14-3-3ηタンパク質を注射することにより、実験的関節炎を誘導する。試験及び評価は、実施例8に記載したのとほぼ同様に実施した。
【0252】
本発明の方法に有用な、関節リウマチ(コラーゲン誘導性関節炎、「CIA」)の他のモデル、及び実験設計は、例えば、以下の参照文献に見い出すことができる:Williams, Methods Mol Med. 2004;98:207-16. Collagen-induced arthritis as a model for rheumatoid arthritis;Brand, Com. Med., 55:114-122, 2005;Vierboomら、Drug Discovery Today, 12:327-335, 2007;Sakaguchiら、Curr. Opin. Immunol., 17:589-594, 2005。
【0253】
特定の動物モデルにおいて最初の処置レジメンを開始する前に、まず、14-3-3に関与する炎症性疾患モデルとして有効であるか、上記モデルを確認するのが好ましい。好ましくは、14-3-3及びMMP、好ましくは14-3-3η及び/又は14-3-3γ、そして好ましくはMMP-1及び/又はMMP-3のレベルを決定することにより、モデルにおける実験的関節炎の誘導後の評価を明らかにする。
【0254】
一般的方法
ウエスタンブロッティング
サンプル(滑液若しくは血清(各々2μl)、組換えヒト14-3-3η、細胞溶解物又は細胞溶解物沈降物)を、12〜15%(重量/体積)アクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGE分析に付した後、PVDF膜上にエレクトロトランスファーした。膜上の非特異的タンパク質をPBS-0.1%Tween-20中の5%脱脂粉乳で一晩ブロッキングした。7種のアイソフォームに特異的なウサギ抗ヒト14-3-3ポリクローナル抗体2μg/mlを用いて、実施例3のイムノブロッティングを実施した(Martin H, Patel Y, Jones D, Howell S, Robinson K and Aitken A 1993. Antibodies against the major brain isoforms of 14-3-3 protein. An antibody specific for the N-acetylated amino-terminus of a protein. FEBS Letters. 331:296-303)。いくつかの実験(主に実施例7)では、実施例1のハイブリドーマクローン由来の抗体を免疫沈降すなわち「捕捉」実験に用いた。免疫沈降物をSDS-PAGEにより分離し、膜を脱脂粉乳中でブロッキングした後、一次14-3-3η(1:1,000、BioMol International SE-486)と一緒に、次いで、適切な二次セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgG若しくは抗マウスIgG抗体(1:2,500希釈)と一緒にインキュベートした。次に、ECL及びウエスタンブロッティング検出装置を用いて、免疫反応性タンパク質を視覚化した。角化細胞溶解物(K)、組換えタンパク質及び/又はHeLa細胞溶解物を陽性対照として用いた。SF:滑液;PS:患者の血清。
【0255】
患者のサンプル
抗TNF療法の開始前に、活性滑膜炎患者の膝関節から滑液を採取した。患者はすべてDASスコア>6.0であった、標準的静脈穿刺方法により対応血液サンプルを採取した。血餅を遠心分離により除去した。
【0256】
組換え14-3-3η
Ghaharyら、2004 J Invest Dermatol 122:1188-1197 (参照文献36、前掲)に記載の方法に従い、角化細胞由来14-3-3ηのcDNAを、ヒト角化細胞から抽出した全RNAから作製し、クローニングして、大腸菌中で発現させた後、アフィニティー精製した。14-3-3ηcDNAのPCR増幅に用いたプライマーは、以下とした:
(GCGAATTCCTGCAGCGGGCGCGGCTGGCCGA)(配列番号80)及び
(GCTCGAGCCTGAAGGATCTTCAGTTGCCTTC)(配列番号81)。
【0257】
タグなし組換え14-3-3タンパク質
cDNAをヒト供給源から取得し、クローニングして、大腸菌中で発現させた後、アフィニティー精製した。14-3-3ηcDNAのPCR増幅に用いたプライマーは、(agaattcagttgccttctcctgctt)(配列番号82)及び(acatatgggggaccggga)(配列番号83)であり;14-3-3γについては(agaattcttaattgttgccttcgccg)(配列番号84)及び(acatatggtggaccgcgagc)(配列番号85)であり;14-3-3βについては(acatatgacaatggataaaagtgagctg)(配列番号86)及び(agaattcttagttctctccctccccagc)(配列番号87)であり;14-3-3εについては(acatatggatgatcgagaggatctg)(配列番号88)及び(agaattctcactgattttcgtcttccac)(配列番号89)であり;14-3-3σについては(acatatggagagagccagtctgatcc)(配列番号90)及び(agaattcagctctggggctcctg)(配列番号91)であり;14-3-3θについては(acatatggagaagactgagctgatcc)(配列番号92)及び(agaattcttagttttcagccccttctgc)(配列番号93)であり;14-3-3ζ(acatatggataaaaatgagctggttc)(配列番号94)及び(agaattcttaattttcccctccttctcct)(配列番号95)であった。
【0258】
ELISAアッセイ条件
スクリーニング及び試験:スクリーニング及び試験のために、1.0μg/ウェルの抗AUG1-CLDK、抗AUG2-KKLE、抗AUG3-CKNS又は抗14-3-3η抗原を、50μL/ウェルのdH2O中でELISAプレートに塗布した。14-3-3η抗原について試験するため、炭酸塩コーティングバッファー中で0.25μg/ウェルを塗布して、4℃で一晩インキュベートした。
【0259】
抗体捕獲(trapping)アッセイによる試験:1/10,000ヤギ抗マウスIgG/IgM捕獲(trapping)抗体(Pierce カタログ番号31182)を炭酸塩コーティングバッファー中で100μL/ウェルでELISAプレートに塗布して、4℃で一晩インキュベートした。
【0260】
陰性対照抗体についての試験:0.5μg/ウェルのHT(ヒトトランスフェリン)抗原を、dH2O中で50μL/ウェルでELISAプレートに塗布し、37℃で一晩乾燥させた。
【0261】
捕捉ELISAによる試験のために:ELISAプレートに、100μL/ウェルの純過剰増殖TC上清を塗布して、4℃で一晩インキュベートした。ビオチン標識14-3-3η(又は他の6種の14-3-3ファミリーメンバー)を1/500から1/16,000を超えるまで滴定した後、室温で1時間インキュベートした。
【0262】
ブロッキング:プレートを、100μL/ウェルのPBS(pH 7.4)中の3%脱脂粉乳でブロッキングし、室温で1時間インキュベートした。
【0263】
一次抗体:スクリーニング及び試験のために、マウス抗AUG1-CLDK、抗AUG2-KKLE、抗AUG3-CKNS又は抗14-3-3ηハイブリドーマ組織培養物上清、及びマウスモノクローナル対照をウェル当たり100μLずつ添加した。マウス抗AUG1-CLDK、抗AUG2-KKLE、抗AUG3-CKNS又は抗14-3-3η免疫血清、及びマウス免疫前血清をSP2/0組織培養物上清中に1/500希釈して、スクリーニング及び試験のために100μL/ウェルで添加した。スクリーニング及び試験の両方のために、振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。
【0264】
スクリーニング及び試験に用いる二次抗体:1/25,000ヤギ抗マウスIgG Fc HRPコンジュゲート(Jackson カタログ番号115-035-164)をスクリーニング及び試験に用いた。PBS-Tweenで希釈した二次抗体を100μL/ウェルで添加して、振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。
【0265】
捕捉ELISAに用いるストレプトアビジン:100μL/ウェルのストレプトアビジンHRPO(1:8,000、CedarLane カタログ番号CLCSA1007)を添加し、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。
【0266】
基質:TMBバッファー(BioFx カタログ番号TMBW-1000-01)をウェル当たり50μL添加した後、暗所にて室温でインキュベートした。スクリーニング及び試験のための反応を10分後ウェル当たり50μLの1M HClで停止し、OD450nmで読み取った。
【0267】
ドットブロット条件
スクリーニング:Millipore、Immobilon Transfer Membrane カタログ番号IPVH304F0を用いた。14-3-3η抗原をサンプルバッファー中で5分沸騰させた後、冷却させた。抗原を、ピペットを用いて合計6μgのドット量でドットに固定した。抗原を15分かけて乾燥させた後、PBS-Tween pH 7.4を用い、これを数回交換しながら、ブロットを洗浄した。ブロットは、全スクリーニング工程中個別のペトリ皿に維持した。
【0268】
ブロッキング:PVDF膜を、PBS(pH 7.4)中の5%粉乳で、室温にて1時間ブロッキングした。ブロッキング後、PBS-Tween pH 7.4を用い、これを数回交換しながら15分かけてブロットを洗浄した。ブロットは、一次抗体をアプライする前に、ペーパータオル上で表を上にして10分かけて乾燥させた。
【0269】
一次抗体:マウスAUG1-CLDK、抗AUG2-KKLE、抗AUG3-CKNS又は抗14-3-3ηハイブリドーマ組織培養物上清、及びマウスモノクローナル対照を、個別のペトリ皿中でブロットと一緒にインキュベートした。マウス抗AUG1-CLDK、抗AUG2-KKLE、抗AUG3-CKNS又は抗14-3-3η免疫血清、及びマウス免疫前血清をSP2/0組織培養物上清で1/500希釈して、対照として用いた。ブロットを振盪しながら室温で1時間インキュベートした。一次抗体のインキュベーション後、PBS-Tween pH 7.4を用い、これを5回交換しながら30分かけてブロットを洗浄した。
【0270】
二次抗体:PBS-Tween pH 7.4で希釈した1/5,000ヤギ抗マウスIgG/IgM、(H+L)のアルカリホスファターゼコンジュゲート(Rockland 610-4502)をブロットに添加し、ペトリ皿において、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。二次抗体のインキュベーション後、PBS-Tween pH 7.4を用い、これを5回交換しながら30分かけてブロットを洗浄した。Tris 0.1M pH 9バッファー中で、室温にて10分かけてブロットを平衡させた後、基質を添加する前に滴下乾燥させた。
【0271】
基質:BCIP/NBT発色剤1の成分AP膜基質(BioFx製品番号BCID-1000-01)を室温でブロット上に滴下した。5分後に反応を常温の水道水で停止させた後、結果を肉眼で定量的に決定し、強陽性+++、中陽性++、弱陽性+、わずかに陽性+/-、陰性-のスコアを付与した。
【0272】
参照文献
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すべての参照文献は、その全文を参照として本明細書に明示的に組み込むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節炎の治療方法であって、治療有効量の14-3-3アンタゴニストを患者に投与することを含み、上記14-3-3アンタゴニストが細胞外に局在化した14-3-3タンパク質に特異的に結合することができ、上記14-3-3タンパク質がγアイソフォーム及びηアイソフォームから選択される、上記方法。
【請求項2】
前記14-3-3アンタゴニストがペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチドが、R-18のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペプチドが、実質的にR-18のアミノ酸配列からなる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ペプチドが、R-18のアミノ酸配列のセグメントを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記14-3-3アンタゴニストが抗14-3-3抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗14-3-3抗体が抗14-3-3η抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記抗14-3-3η抗体が汎14-3-3抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗14-3-3η抗体が、14-3-3タンパク質アイソフォーム同士を識別することができる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記抗14-3-3η抗体が、ループ、ヘリックス又は非ヘリックス14-3-3ηペプチドに特異的に結合することができる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記抗14-3-3η抗体が、配列番号1〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列に結合することができる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記抗14-3-3η抗体が、アミノ酸配列LDKFLIKNSNDF(配列番号30)に特異的に結合することができる、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記抗14-3-3η抗体が、アミノ酸配列KKLEKVKAYR(配列番号31)に特異的に結合することができる、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記抗14-3-3η抗体が、アミノ酸配列KNSVVEASEAAYKEA(配列番号32)に特異的に結合することができる、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記抗14-3-3抗体が抗14-3-3γ抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
前記抗14-3-3γ抗体が汎14-3-3抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗14-3-3γ抗体が、14-3-3タンパク質アイソフォーム同士を識別することができる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記抗14-3-3γ抗体が、ループ、ヘリックス又は非ヘリックス14-3-3γペプチドに特異的に結合することができる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記抗14-3-3γ抗体が、配列番号33〜62からなる群より選択されるアミノ酸配列に結合することができる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
請求項6〜21のいずれか一項に記載の方法に使用するための抗体。
【請求項23】
請求項22に記載の抗体を産生することができるハイブリドーマ。
【請求項24】
関節炎の治療に使用するための14-3-3アンタゴニストであって、上記14-3-3アンタゴニストが細胞外に局在化した14-3-3タンパク質に特異的に結合することができ、上記14-3-3タンパク質がγアイソフォーム及びηアイソフォームから選択される、上記14-3-3アンタゴニスト。
【請求項25】
前記14-3-3アンタゴニストがペプチドである、請求項24に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項26】
前記ペプチドが、R-18のアミノ酸配列を含む、請求項25に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項27】
前記ペプチドが、実質的にR-18のアミノ酸配列からなる、請求項25に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項28】
前記ペプチドが、R-18のアミノ酸配列のセグメントを含む、請求項25に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項29】
前記14-3-3アンタゴニストが抗14-3-3抗体である、請求項24に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項30】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項29に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項31】
前記モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項30に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項32】
前記抗14-3-3抗体が抗14-3-3η抗体である、請求項29に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項33】
前記抗14-3-3η抗体が汎14-3-3抗体である、請求項32に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項34】
前記抗14-3-3η抗体が、14-3-3タンパク質アイソフォーム同士を識別することができる、請求項32に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項35】
前記抗14-3-3η抗体が、ループ、ヘリックス又は非ヘリックス14-3-3ηペプチドに特異的に結合することができる、請求項32に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項36】
前記抗14-3-3η抗体が、配列番号1〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列に結合することができる、請求項32に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項37】
前記抗14-3-3η抗体が、アミノ酸配列LDKFLIKNSNDF(配列番号30)に特異的に結合することができる、請求項32に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項38】
前記抗14-3-3η抗体が、アミノ酸配列KKLEKVKAYR(配列番号31)に特異的に結合することができる、請求項32に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項39】
前記抗14-3-3η抗体が、アミノ酸配列KNSVVEASEAAYKEA(配列番号32)に特異的に結合することができる、請求項32に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項40】
前記抗14-3-3抗体が抗14-3-3γ抗体である、請求項29に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項41】
前記抗14-3-3γ抗体が汎14-3-3抗体である、請求項40に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項42】
前記抗14-3-3γ抗体が、14-3-3タンパク質アイソフォーム同士を識別することができる、請求項40に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項43】
前記抗14-3-3γ抗体が、ループ、ヘリックス又は非ヘリックス14-3-3γペプチドに特異的に結合することができる、請求項40に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項44】
前記抗14-3-3γ抗体が、配列番号33〜62からなる群より選択されるアミノ酸配列に結合することができる、請求項40に記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項45】
前記抗体がハイブリドーマにより産生される、請求項29〜44のいずれかに記載の14-3-3アンタゴニスト。
【請求項46】
関節炎を治療するための有効量の14-3-3アンタゴニストの使用であって、上記14-3-3アンタゴニストが細胞外に局在化した14-3-3タンパク質に特異的に結合することができ、上記14-3-3タンパク質がγアイソフォーム及びηアイソフォームから選択される、上記使用。
【請求項47】
関節炎の治療用医薬を製剤化するための14-3-3アンタゴニストの使用であって、上記14-3-3アンタゴニストが細胞外に局在化した14-3-3タンパク質に特異的に結合することができ、上記14-3-3タンパク質がγアイソフォーム及びηアイソフォームから選択される、上記使用。
【請求項48】
前記14-3-3アンタゴニストがペプチドである、請求項46又は47に記載の使用。
【請求項49】
前記ペプチドが、R-18のアミノ酸配列を含む、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
前記ペプチドが、実質的にR-18のアミノ酸配列からなる、請求項48に記載の使用。
【請求項51】
前記ペプチドが、R-18のアミノ酸配列のセグメントを含む、請求項48に記載の使用。
【請求項52】
前記14-3-3アンタゴニストが抗14-3-3抗体である、請求項46又は47に記載の使用。
【請求項53】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
前記モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
前記抗14-3-3抗体が抗14-3-3η抗体である、請求項52に記載の使用。
【請求項56】
前記抗14-3-3η抗体が汎14-3-3抗体である、請求項55に記載の使用。
【請求項57】
前記抗14-3-3η抗体が、14-3-3タンパク質アイソフォーム同士を識別することができる、請求項55に記載の使用。
【請求項58】
前記抗14-3-3η抗体が、ループ、ヘリックス又は非ヘリックス14-3-3ηペプチドに特異的に結合することができる、請求項55記載の使用。
【請求項59】
前記抗14-3-3η抗体が、配列番号1〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列に結合することができる、請求項55に記載の使用。
【請求項60】
前記抗14-3-3η抗体が、アミノ酸配列LDKFLIKNSNDF(配列番号30)に特異的に結合することができる、請求項55に記載の使用。
【請求項61】
前記抗14-3-3η抗体が、アミノ酸配列KKLEKVKAYR(配列番号31)に特異的に結合することができる、請求項55に記載の使用。
【請求項62】
前記抗14-3-3η抗体が、アミノ酸配列KNSVVEASEAAYKEA(配列番号32)に特異的に結合することができる、請求項55に記載の使用。
【請求項63】
前記抗14-3-3抗体が抗14-3-3γ抗体である、請求項52に記載の使用。
【請求項64】
前記抗14-3-3γ抗体が汎14-3-3抗体である、請求項63に記載の使用。
【請求項65】
前記抗14-3-3γ抗体が、14-3-3タンパク質アイソフォーム同士を識別することができる、請求項63に記載の使用。
【請求項66】
前記抗14-3-3γ抗体が、ループ、ヘリックス又は非ヘリックス14-3-3γペプチドに特異的に結合することができる、請求項63に記載の使用。
【請求項67】
前記抗14-3-3γ抗体が、配列番号33〜62からなる群より選択されるアミノ酸配列に結合することができる、請求項63に記載の使用。
【請求項68】
前記抗体がハイブリドーマにより産生される、請求項52〜67のいずれか一項に記載の使用。
【請求項69】
製剤中に14-3-3アンタゴニストを含む医薬組成物であって、上記製剤は投与後に上記14-3-3アンタゴニストによる細胞外局在化14-3-3タンパク質との結合を達成するものである、上記医薬組成物。
【請求項70】
前記14-3-3アンタゴニストが抗14-3-3抗体である、請求項69に記載の医薬組成物。
【請求項71】
前記14-3-3アンタゴニストがペプチドである、請求項69に記載の医薬組成物。
【請求項72】
患者の滑膜におけるMMP発現を低減するための方法であって、請求項69に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む方法。
【請求項73】
前記MMPが、MMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及びMMP-13からなる群より選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記MMPがMMP-1又はMMP-3である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
患者の滑膜におけるMMP発現の低減に使用するための、請求項69に記載の医薬組成物。
【請求項76】
前記MMPが、MMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及びMMP-13からなる群より選択される、請求項75に記載の医薬組成物。
【請求項77】
前記MMPがMMP-1又はMMP-3である、請求項76に記載の医薬組成物。
【請求項78】
患者の滑膜におけるMMP発現を低減するための、請求項69に記載の医薬組成物の使用。
【請求項79】
前記MMPが、MMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及びMMP-13からなる群より選択される、請求項78に記載の使用。
【請求項80】
前記MMPがMMP-1又はMMP-3である、請求項79に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−504877(P2011−504877A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534332(P2010−534332)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/CA2008/002154
【国際公開番号】WO2009/067820
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(300066874)ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア (24)
【Fターム(参考)】