説明

防塵装置

【課題】 可動部を大型化させることなくダストの写り込みによる画質低下を軽減する装置を提供する。
【解決手段】 撮像装置1の集塵装置は、撮像素子50を有する撮像部と、撮像部に固着された第1枠61とを有し、撮像光学系の光軸LXに垂直な平面上を移動可能な可動部と、撮像素子50の受光面と対向する位置に取り付けられたローパスフィルタ40と、ローパスフィルタ40に固着された第2枠62とを有し、撮像光学系と可動部の間に配置される固定部と、第1枠61と第2枠62との間に注入されて、第1、第2枠61、62に磁力で吸着され、撮像素子50とローパスフィルタ40との間を密閉状態にする磁性流体63とを備え、固定部は、磁性流体63を介して可動部を平面上で移動可能な状態で支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防塵装置に関し、特に撮像素子を含む可動部と固定部との間の防塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子を含む可動部を光軸に垂直な平面上に移動させて手ブレ補正を行う像ブレ補正装置において、ダストの写り込みによる画質低下を軽減する装置が提案されている。特許文献1は、撮像素子の受光面側を覆うローパスフィルタなどの透明体によって受光面側で且つ撮像素子の近傍のダスト付着を防止する装置を開示する。
【特許文献1】特開2003−110930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の装置は、撮像素子を覆うローパスフィルタなどの透明体が可動部側にあるため、可動部が大型化していた。
【0004】
したがって本発明の目的は、可動部を大型化させることなくダストの写り込みによる画質低下を軽減する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る撮像装置の集塵装置は、撮像素子を有する撮像部と、撮像部に固着された第1枠とを有し、撮像光学系の光軸に垂直な平面上を移動可能な可動部と、撮像素子の受光面と対向する位置に取り付けられた透過面と、透過面に固着された第2枠とを有し、撮像光学系と可動部の間に配置される固定部と、第1枠と第2枠との間に注入されて、第1、第2枠に磁力で吸着され、撮像素子と透過面との間を密閉状態にする磁性流体とを備え、固定部は、磁性流体を介して可動部を平面上で移動可能な状態で支持する。
【0006】
好ましくは、透過面は、ローパスフィルタである。
【0007】
また、好ましくは、固定部は、撮像装置が有するシャッタのシャッタ枠に取り付けられる。
【0008】
また、好ましくは、第1、第2枠はラバーマグネットで構成される。
【0009】
また、好ましくは、撮像部は、撮像素子の受光面を覆うカバーガラスを有する。
【0010】
また、好ましくは、撮像素子が移動範囲の中心にある時に、撮像素子の受光面の中心が光軸を通る位置関係にある。
【0011】
また、好ましくは、第1枠の中空部分は、撮像素子の受光面よりも大きい形状を有し、第2枠の中空部分は、撮像素子の受光面の移動範囲よりも大きい形状を有する。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、可動部を大型化させることなくダストの写り込みによる画質低下を軽減する装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図を用いて説明する。本実施形態における撮像装置1は、クイックリターンミラー20、焦点板21、ペンタゴナルダハプリズム22、接眼レンズ群23、シャッタ30、シャッタ枠35、ローパスフィルタ40、撮像部、第1枠61、第2枠62、及び磁性流体63とを備える(図1参照)。撮像部は撮像素子50、カバーガラス51、及び撮像素子基板55を有する。撮像装置1は、デジタルカメラである。本実施形態では、撮像装置1は、撮像光学系(交換レンズ、不図示)が可能な一眼レフカメラであるとして説明するが、他のデジタルカメラであってもよい。
【0014】
クイックリターンミラー20は、撮像光学系とシャッタ30との間に取り付けられて、非撮影状態(ファインダー観察状態)の時に、撮像光学系の光軸LXをペンタゴナルダハプリズム22へ向けて折り曲げる(ミラーダウン状態、図1参照)。
【0015】
ファインダー観察状態では、撮像光学系を透過した被写体光は、クイックリターンミラー20において反射する。その反射光は、撮像素子50の受光面と等価な位置にある焦点板21上において一旦結像した後、ペンタゴナルダハプリズム22を介して接眼レンズ群23に入射する。接眼レンズ群23において、被写体の正立像が拡大観察可能である。
【0016】
クイックリターンミラー20の一端片には、回転軸が設けられており、撮影状態の時には、クイックリターンミラー20は、この回転軸を中心に回転移動される。具体的には、撮影状態の時には、図1のミラーダウン状態から、クイックリターンミラー20の反射面が焦点板21と略平行に対向する状態にされる(ミラーアップ状態、不図示)。このとき、撮像光学系を透過した被写体光は、クイックリターンミラー20を介さずシャッタ30のスリットを通過し、ローパスフィルタ40を透過して撮像素子50の受光面内の撮像領域に入射する。
【0017】
クイックリターンミラー20とローパスフィルタ40との間には、フォーカルプレーンシャッタであるシャッタ30が配置されている。シャッタ30は、撮影状態における露出時に、先幕と後幕との間に形成される任意の間隔を持つスリットを、所定の速度で撮像素子50の受光面の前を横切るように移動させる。これにより、撮像光学系からの被写体光を撮像素子50の受光面に到達させる。
【0018】
ローパスフィルタ40は、モアレを軽減するために使用され、シャッタ30と撮像素子50の間であって、シャッタ30の先幕、後幕の周りに構成されるシャッタ枠35に取り付けられる。ローパスフィルタ40は、光軸LX方向から見て、撮像素子50が移動範囲内のどの位置に移動した時でも、撮像素子50の受光面全体を覆うような大きさ、位置関係で配置される。光軸LXは、ローパスフィルタ40、撮像素子50の受光面と直交する。
【0019】
撮像素子50は、撮像装置1内に取り付けられた撮像素子基板55に取り付けられる。撮像素子50の受光面側には、カバーガラス51が取り付けられる。図1ではカバーガラス51は省略されている。
【0020】
ローパスフィルタ40と、カバーガラス51との間は、第1枠61、第2枠62、及び磁性流体63によって密閉される。
【0021】
第1枠61は、マグネットラバー(フェライト磁石パウダーに熱可塑性プラスチックでブレンドし、成形後に着磁したもの)で構成される枠で、カバーガラス51に固着される(図2参照)。但し、他の実施形態として、第1枠61は、撮像素子50の受光面の外側に固着されてもよい。第1枠61の中空部分は、撮像素子の受光面よりも大きい形状を有する。
【0022】
第2枠62は、マグネットラバーで構成されるフレームで、ローパスフィルタ40に固着される。第2枠62の中空部分は、撮像素子50の受光面の移動範囲よりも大きい形状を有する。
【0023】
第1、第2枠61、62は、撮像素子50の受光面が移動範囲のどの位置に移動した時でも、光軸LX方向からみて受光面を覆わない位置関係に設定される。本実施形態では、第1、第2枠61、62は、同じ大きさで、いずれの中空部分も撮像素子50の受光面の移動範囲よりも大きい形状を有するとして説明する。
【0024】
第1枠61と第2枠62の間には、磁性流体63が注入され、磁力により第1、第2枠61、62に吸着される。磁性流体63は、界面活性剤を用いて安定に分散させた液体で「強磁性」という磁性体としての性質と、「流動性」という液体の性質を兼ね備えた物質である。撮像素子50が移動することによって第1枠61と第2枠62との位置関係が変化した場合であっても、強磁性、流動性により第1枠61との磁力による吸着状態、及び第2枠62との磁力による吸着状態は保持される(図3、4参照)。
【0025】
撮像素子50、カバーガラス51、撮像素子基板55、及び第1枠61は、像ブレ補正動作のために光軸LXと垂直な平面上を移動可能である(可動部)。これに対して、シャッタ30(シャッタ枠35)、ローパスフィルタ40、第2枠62は固定されて、磁性流体63を介して、可動部を光軸LXに垂直な平面上を移動可能に支持する(固定部)。磁性流体63は、撮像素子50などの移動によって形状が変化する。
【0026】
ローパスフィルタ40、第2枠62、磁性流体63、第1枠61、及びカバーガラス51によって構成される空間内の密閉状態は保持され、撮像素子50とローパスフィルタ40との間にダストが侵入するのを防ぐことができる。
【0027】
撮像素子50の移動範囲を出来る限り広く活用するために、撮像素子50が移動範囲の中心にある時に(図3参照)、撮像素子50の受光面の中心が光軸LXを通る位置関係にあるのが望ましい。図4は、撮像素子50が移動範囲の中心から移動した状態を示す。
【0028】
本実施形態では、像ブレ補正動作などのために、撮像素子50が光軸LXに垂直な平面上に移動可能にされているが、ローパスフィルタ40は、シャッタ30に取り付けられており移動可能にされていない。従って、撮像素子50を含む可動部の構成からローパスフィルタ40を除外することができるので、可動部の小型化、軽量化を図ることが可能になる。可動部の小型化、軽量化によって、可動部を移動させるための負荷が軽減されるので、消費電力及び撮像装置の小型化を図ることも可能になる。
【0029】
また、撮像素子50の受光面側でローパスフィルタ40との間の空間は、磁性流体63を第1、第2枠61、62の間に注入することによって密閉されるので、この空間を蛇腹等によって密閉する場合に比べて、構造を簡素化することが可能になる。また、この空間は密閉されており、ダストの侵入を阻止できる。
【0030】
ダストの写り込みによる画質低下は、撮像素子50の受光面とダストの距離が短いほど顕著になる。本実施形態では、撮像素子50とローパスフィルタ40との間を密閉することにより、写り込むダストはローパスフィルタ40と撮像光学系との間の空間に存在するダストに限られ、写り込むダストと撮像素子50の受光面との距離を長くすることが可能になる。これにより、ダストの写り込みによる画質低下を軽減することが可能になる。
【0031】
本実施形態では、第1、第2枠61、62はいずれもマグネットラバーであるとして説明したが、他の永久磁石であってもよい。
【0032】
本実施形態では、第2枠62はローパスフィルタ40に取り付けられるとして説明したが、ローパスフィルタとは異なる透過面を有する部材であってもよい。この場合、ローパスフィルタは、透過面と撮像光学系の間に配置される。
【0033】
また、ローパスフィルタ40はシャッタ枠35に取り付けられるとして説明したが、ミラーボックス内の他の場所等、撮像素子50と連動して光軸LXと垂直な平面上を移動しない他の場所に取り付けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態における撮像装置の断面構成図である。
【図2】撮像素子、カバーガラス、及び第1枠の構成を示す斜視図である。
【図3】撮像素子が移動範囲の中心にあるときの、ローパスフィルタ及び撮像素子の位置関係を示す側面図である。
【図4】撮像素子が移動範囲の中心から移動したときの、ローパスフィルタ及び撮像素子の位置関係を示す側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 撮像装置
20 クイックリターンミラー
21 焦点板
22 ペンタゴナルダハプリズム
23 接眼レンズ群
30 シャッタ
35 シャッタ枠
40 ローパスフィルタ
50 撮像素子
51 カバーガラス
55 撮像素子基板
61、62 第1、第2枠
63 磁性流体
LX 光軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を有する撮像部と、前記撮像部に固着された第1枠とを有し、撮像光学系の光軸に垂直な平面上を移動可能な可動部と、
前記撮像素子の受光面と対向する位置に取り付けられた透過面と、前記透過面に固着された第2枠とを有し、前記撮像光学系と前記可動部の間に配置される固定部と、
前記第1枠と第2枠との間に注入されて、前記第1、第2枠に磁力で吸着され、前記撮像素子と前記透過面との間を密閉状態にする磁性流体とを備え、
前記固定部は、前記磁性流体を介して前記可動部を前記平面上で移動可能な状態で支持する撮像装置の防塵装置。
【請求項2】
前記透過面は、ローパスフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の防塵装置。
【請求項3】
前記固定部は、前記撮像装置が有するシャッタのシャッタ枠に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の防塵装置。
【請求項4】
前記第1、第2枠はラバーマグネットで構成されることを特徴とする請求項1に記載の防塵装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記撮像素子の受光面を覆うカバーガラスとを有することを特徴とする請求項1に記載の防塵装置。
【請求項6】
前記撮像素子が移動範囲の中心にある時に、前記撮像素子の受光面の中心が前記光軸を通る位置関係にあることを特徴とする請求項1に記載の防塵装置。
【請求項7】
前記第1枠の中空部分は、前記撮像素子の受光面よりも大きい形状を有し、前記第2枠の中空部分は、前記撮像素子の受光面の移動範囲よりも大きい形状を有することを特徴とする請求項1に記載の防塵装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−349973(P2006−349973A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175860(P2005−175860)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】