防振制御装置、光学機器、撮像装置、および防振制御方法
【課題】小型で機動性が高く、焦点距離や振れ補正範囲の変化によらずに、平行振れに対して高精度な像ブレ補正を行える防振制御装置および撮像装置を提供する。
【解決手段】角度振れ補正量算出部は、撮像光学系の光軸に対して直交する軸を中心とする装置の回転に伴って生じる角度振れを検出して像ブレの補正量を算出する。また平行振れ補正量算出部は、撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れから像ブレの補正量を算出する。推定器905は振動モデルに基づくオブザーバ手段によって平行振れを推定する。平行振れ補正量算出部は、オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて平行振れの補正量を算出し、撮像光学系の焦点距離や振れ補正部111の補正範囲に応じて平行振れの補正量を変更する。平行振れの補正量は角度振れの補正量と合成され、振れ補正部111が駆動制御される。
【解決手段】角度振れ補正量算出部は、撮像光学系の光軸に対して直交する軸を中心とする装置の回転に伴って生じる角度振れを検出して像ブレの補正量を算出する。また平行振れ補正量算出部は、撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れから像ブレの補正量を算出する。推定器905は振動モデルに基づくオブザーバ手段によって平行振れを推定する。平行振れ補正量算出部は、オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて平行振れの補正量を算出し、撮像光学系の焦点距離や振れ補正部111の補正範囲に応じて平行振れの補正量を変更する。平行振れの補正量は角度振れの補正量と合成され、振れ補正部111が駆動制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手振れ等による画像ブレを補正して画像劣化を防止する防振制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手振れ等による画像ブレを防ぐために、振れ補正部、駆動部及び振動検出部等を用いた防振制御装置を備えたカメラが製品化されており、撮影者の撮影ミスを誘発する要因は減ってきている。
ここで、防振制御装置について簡単に説明する。撮影動作中に手振れが起きても像ブレの無い撮影を行えるように、手振れ等によるカメラ振動を検出し、検出値に応じて像ブレ補正用レンズ(以下、補正レンズという)や撮像素子の移動制御が行われる。その際、振動を正確に検出して振れによる光軸変化を補正する必要がある。振動検出では、原理的には角速度等の検出結果を振動検出部が演算処理する。その演算処理結果に基づいて振れ補正部を制御して補正レンズまたは撮像素子を移動させることにより、画像ブレが抑制される。
角速度計で角度振れを検知し、補正レンズや撮像素子を駆動して像ブレを低減させる装置は様々な光学機器に搭載されている。しかし、至近距離での撮影(撮影倍率の高い撮影条件)では、角速度計のみでは検出できない振動を伴う。例えばカメラの光軸に対して直交する面内で水平方向または垂直方向に加わる、いわゆる平行振れが生じる場合、これによる画像劣化も無視できない。例えば、被写体に20cm程度まで接近したマクロ撮影の場合、平行振れを積極的に検出して補正する必要がある。また、1m程度の距離に位置する被写体の撮影でも、撮像光学系の焦点距離が非常に大きい条件下(例えば、400mm)では平行振れを検出して補正する必要がある。
【0003】
特許文献1には、加速度計で検出した加速度の2階積分から平行振れを求め、別に設けた角速度計の出力と共に振れ補正部を駆動する技術が開示されている。平行振れの検出に用いる加速度計の出力は外乱ノイズや温度変化等の環境変化の影響を受け易い。このため、2階積分によりそれらの不安定要因はさらに拡大され、平行振れの高精度な補正が難しい。
特許文献2には平行振れを、カメラから離れた場所に回転中心がある時の角度振れとみなして求めることが開示されている。この方法では、角速度計と加速度計を設け、それらの出力から角度振れの回転半径を用いた補正値と角度を求めて振れ補正を行う。外乱の影響を受け難い周波数帯域に限定して回転中心を求めることで、上記のような加速度計の不安定要因による精度低下を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−225405号公報
【特許文献2】特開2010−25962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、平行振れ補正において以下の課題がある。
平行振れ補正を行うための検出手段に加速度計を用いる方法では、カメラの大型化、高コスト化を招くおそれがある。また、加速度計の取り付け位置はレンズ主点位置が望ましいが、レンズ主点位置の近辺に加速度計を設置することが難しいという問題もある。
また、前記特許文献2では、振れ検出手段として加速度計の代わりに、撮像手段の出力から振れを検出する手段が開示されている。撮像手段の出力から振れを検出する場合、撮影動作直前までに画像ブレと角度振れとの関係により補正係数を演算し、撮影動作において角度振れに補正をかける方法がある。この場合、撮影動作中しか平行振れ補正を行えないという問題がある。また電子式の画像切り出しによる防振制御では、動画撮影にて画像ブレと角度振れとの関係により補正係数を演算し、角度振れに補正係数を掛けることで平行振れ量を算出する。平行振れ量に応じて撮像素子に取り込まれた画像の切り取り位置を変えていくことが可能であるが、画像の一部を切り取ることにより画角が狭くなってしまう等の問題がある。
【0006】
また前記特許文献2には、振れ検出手段として加速度計の代わりに、駆動コイルに流れる電流から平行振れの加速度を検出する手段も開示されている。しかし、当該手段においては撮影動作直前まで防振制御を行うことができない。マクロ領域の撮影等で平行振れの影響が大きい場合、詳細な構図の設定や正確なピント合わせが難しい場合がある。加えて、動画撮影中は平行振れ補正を行うことができないという問題もある。また、コイル電流値による加速度推定は、振れ補正機構の特性や振れ補正範囲を考慮していないため、正確な加速度の推定が難しく、推定した加速度を振れ補正に使うことは推定精度に問題があった。
そこで本発明の目的は、小型で機動性が高く、焦点距離や振れ補正範囲の変化によらずに、平行振れに対して高精度な像ブレ補正を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、振れ補正手段と、前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備える。前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離が長くなると前記補正量が小さくなるように演算する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、焦点距離や振れ補正範囲の変化によらずに、平行振れに対して高精度な補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】撮像装置の振れ方向を示した(A)図と、本発明の第1実施形態に係る防振制御装置を搭載した撮像装置を模式的に示す(B)図である。
【図2】図3とともに振れ補正機構を説明するために、構成例を示す分解斜視図である。
【図3】光軸方向から見た場合の振れ補正機構を示す図である。
【図4】振れ補正機構のフィードバック制御部の構成例を示すブロック図である。
【図5】振れ補正機構の被駆動部の振動をモデル化して示す(A)図と、1自由度の振動モデルを示す(B)図である。
【図6】第1実施形態に係る防振制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6の推定器の構成例を示すブロック図である。
【図8】振れ補正範囲の説明図である。
【図9】平行振れゲインと焦点距離の関係を示すグラフである。
【図10】撮像装置に加わる振れの回転中心を説明する図である。
【図11】第1実施形態に係る防振制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図12】図13および14と併せて本発明の第2実施形態を説明するために、防振制御装置の推定器の構成例を示すブロック図である。
【図13】振れ補正範囲の説明図である。
【図14】平行振れゲインと焦点距離の関係について、撮影モードおよび振れ補正モードによる相違を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態に係る撮像装置を添付図面に従って説明する。本発明は、デジタル一眼レフカメラ用の交換レンズのような光学機器やデジタルコンパクトカメラに限らず、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、Webカメラ、携帯電話等の撮影装置に適用できる。
図1(A)は撮像装置101の振れ方向を表す図である。防振制御装置は、撮像光学系の光軸102と直交する軸を中心とする装置の回転に伴って生じる振れ(以下、角度振れという。矢印103p、103y参照)に対して振れ補正を行う。防振制御装置はまた、光軸102と直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる振れ(以下、平行振れという。矢印104p、104y参照)に対して振れ補正を行う。なお、図1(A)に示すX軸、Y軸、Z軸の3次元座標については、Z軸方向が光軸方向に設定されており、これに直交する2軸がX軸とY軸である。X軸回り方向がピッチ方向(矢印103p参照)であり、Y軸回り方向がヨー方向(矢印103y参照)である。矢印104yで示す平行振れの方向はX軸に平行であり、矢印104pで示す平行振れの方向はY軸に平行である。
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を説明する。
図1(B)は、第1実施形態に係る防振制御装置を具備した撮像装置101を模式的に示す平面図である。図1(B)には撮像装置101の撮像部の構成と、CPU(中央演算処理装置)106で実行される像ブレ補正処理の機能ブロックを示す。
撮像光学系の光軸102上には、振れ補正部111の補正レンズと撮像素子107が位置する。角速度計108は角度振れを検出する角速度検出手段であり、角速度検出信号は2つの補正量算出部に出力される。角度振れ補正量算出部106Aは角度振れに対して像ブレの補正量を算出する第1の補正量算出手段である。また、平行振れ補正量算出部106Bは、平行振れに対して像ブレの補正量を算出する第2の補正量算出手段である。これらの算出部の出力は加算後に駆動部110に送出される。駆動部110は、振れ補正部111の補正レンズを駆動し、角度振れと平行振れの両方を加味した振れ補正を行う。
従来の装置では、図1(A)に矢印104p、104yで示す平行振れを検出するために加速度計等の物理センンサが設けられ、その検出信号が平行振れ補正量算出部106Bに送られるが、本実施形態では、平行振れ検出のために加速度計等は不要である。つまり、駆動部110から平行振れ補正量算出部106Bに出力される信号を用いて、平行振れの検出が行われる。なお、その詳細については後述する。
図1(B)に示す例では、振れ補正手段として、算出された補正量に基づいて補正レンズを光軸に垂直な面内で移動させる、いわゆる光学防振が採用される。像ブレ補正方法には補正レンズを用いた光学防振に限らず、撮像素子を光軸に垂直な面内で移動させることで防振を行う方法がある。また、撮像素子が出力する各撮影フレームの画像の切り出し位置を変更することで、振れの影響を軽減させる電子防振による方法があり、複数の防振方法を組み合わせて像ブレ補正を行うこともできる。
【0012】
次に、図2の分解斜視図を参照して、振れ補正部111の構成例を説明する。
振れ補正部111のベース401は、シャッタ機構、NDフィルタ機構も併せて保持している。ベース401にはフォロワピン402が一体的に設けられ、また不図示の可動フォロワピンを備える。ベース401の径方向の外側にある不図示のカム筒には3本のカム溝が形成されており、フォロワピン402が嵌合してカム溝に沿って光軸方向に進退するが、その詳細は省略する。
補正レンズ群406はシフトレンズホルダ416に不図示のカシメ爪によって一体的に保持されている。レンズカバー403は、補正レンズ群406を通過する光束を制限する開口部を有し、側面部に設けた3箇所の腕部404にはそれぞれに開口405が形成されている。シフトレンズホルダ416の側面には、3箇所に設けた突起415が形成されており、これらは開口405とそれぞれ嵌合することにより、レンズカバー403がシフトレンズホルダ416と一体に保持される。シフトレンズホルダ416には、電磁機構を構成するマグネット412、413が保持されている。
シフトレンズホルダ416は、3つのボール407を介してベース401に圧接されている。つまり、各ボール10はシフトレンズホルダ416に対する可動支持部材である。それらの転動により、シフトレンズホルダ416は光軸に垂直な面内で、ベース401に対して自由に移動可能に支持される。本構成によれば、ガイドバーを用いた方式に比べて、より微小な振幅で、より高周波数の振動を実現できるという効果が得られるので、高画素化の進むデジタルカメラにおいて良好な像ブレ補正が実現可能になる。
【0013】
スラストスプリング414は、シフトレンズホルダ416をベース401に近づく方向に付勢する付勢手段である。スラストスプリング414は引っ張りスプリングであり、一端がシフトレンズホルダ416の引っ掛け爪に係合し、他端はベース401に形成した不図示の引っ掛け爪に係合している。また、ラジアルスプリング417、418はシフトレンズホルダ416の回転を防ぐ為に設けられた付勢手段であり、シフトレンズホルダ416やベース401に形成した不図示の引っ掛け爪にそれぞれ係合している。
コイル408、409は、樹脂製のボビン410、411にそれぞれ保持されている。該ボビンの先端に金属製のピンが一体的に構成されており、各コイルの端部が接続されている。このピンにフレキシブル基板(以下、FPCと略記する)424の導通パターンを半田付けすることで、回路部から各コイルに電力が供給される。コイル408、409に電力を供給するためFPC424には、ランド425にて前記した金属製のピンを介してコイル408、409が電気的に接続されている。位置検出手段にはホール素子422、423が使用され、マグネット412、413にそれぞれ近接して配置され、マグネットの移動に伴う磁界の変化を検出する。磁気検出信号に基づいてシフトレンズホルダ416の移動量が算出可能である。ホール素子422、423もFPC424に実装されて電力が供給される。
FPC426は、シャッタ及びNDフィルタ駆動部に電力を供給するための配線部材であり、FPC424と併せてFPCホルダ420に固定される。FPCホルダ420には円柱状の突起421が設けられており、これにFPC424、426の穴が圧入されることでそれらの位置決めが行われた上で固定される。
【0014】
図3は振れ補正部111を被写体側から見た正面図である。
凹部428は、補正レンズの近傍にそれぞれ位置する3つのボール407の位置、つまり三角形の頂点に配置された受け部である。ベース401に形成した、3つの凹部428にはそれぞれ1つずつボール407が受け入れられ、各ボールはシフトレンズホルダ416と点接触で圧接する。本構成により、摩擦が小さく、補正レンズを高精度で目標位置に追従させる制御が可能となり、平行振れの推定精度を高めることができる。
次に、補正レンズの制御方法について説明する。
図4は、駆動部110の演算処理を説明するブロック図である。
補正レンズ群406の目標位置は減算部601に入力される。減算部601は、この目標位置から、位置検出信号の示す現在位置を減算して偏差を算出する。位置検出信号は、ホール素子等の位置検出素子の出力値をAD変換でデジタル信号にしたものである。ここでホール素子等の出力値には観測ノイズ(ζ参照)が含まれており、これは加算部605に加わる。観測ノイズとは、センサ自身がもつノイズや、外部からの電気的な誘導ノイズ等の影響を受けたノイズ成分であり、ホール素子の出力には実際の補正レンズの位置に観測ノイズの成分が加わることになる。
減算部601が算出した偏差は、フィードバック制御コントローラ602(図4のC(s)参照)に出力され、該コントローラは、この偏差をゼロに近づけるように、即ちセンサによる検出位置が目標位置に追従するよう制御を行う。しかし、フィードバック制御コントローラ602の出力には、加算部603でシステムノイズ成分(d参照)が加わった後で、プラント604(図4のP(s)参照)である振れ補正機構へ出力され、これに駆動推力を与えることになる。システムノイズは主に、撮像装置の姿勢変化による重力加速度の影響や、手振れ等によって生じる振動加速度の影響による力外乱である。振れ補正機構を構成する補正レンズは、目標位置とフィードバック制御コントローラ602の特性、プラント604の特性に従い、さらにはシステムノイズや観測ノイズの影響を受けつつ駆動される。
【0015】
次に、振れ補正機構およびその駆動手段を用いた平行振れの検出方法について説明する。
まず、振れ補正機構については、互いに直交する2軸について、図5(A)に示すようにプラントのモデル化を行う。直交するA軸とB軸は、可動レンズ(補正レンズ)の駆動軸をそれぞれ表している。振れ補正機構の被駆動部701は、慣性質量mをもち、駆動部により各軸に沿ってそれぞれ駆動される。第1駆動部に係るばね定数をka、減衰係数をca、推力をfaで表し、第2駆動部に係るばね定数をkb、減衰係数をcb、推力をfbで表す。
図5(B)は前記2軸のうち、1軸分の振動モデルを例示する。つまり、補正レンズを含む振れ補正機構の被駆動部について、その振動を1自由度でモデル化した模式図である。振れ補正機構の被駆動部701に対して、固定部801は、当該被駆動部を支持する部分(カメラ本体部)を示す。本モデルにて、補正レンズを含む被駆動部701の絶対変位をzbと記し、固定部801の絶対変位をzwと記す。また、駆動部のばね定数をk、減衰係数をc、振れ補正機構のコイルに電力を供給することにより生じる推力をfと記す。被駆動部701(質量m)についてのモデル系の運動方程式は、ニュートンの記法で下式(1)のようになる。
【0016】
【数1】
振れ補正機構の被駆動部701と固定部801との相対変位については、位置検出素子(図2のホール素子422、423参照)により検出可能である。そこで、被駆動部701と固定部801との相対変位を可観測出力とするため、両者の相対変位をz0として下式(2)で定義する。
【数2】
状態変数を以下のように定義する。
【数3】
そして、y=z0、u=fとし、固定部801の絶対速度をwとする。
【数4】
【0017】
式(1)と前記の定義式を用いて、状態方程式として下式(3)が得られる(tは時間を表す変数である)。
【数5】
上式のν(t)は観測ノイズを表す。これはGauss性白色ノイズであり、wとνの平均値と共分散は既知であり、下式(4)で表されるものとする。
【数6】
【0018】
式(3)のA〜D、Gは、下式(5)のように表される。
【数7】
よって、振れ補正機構の被駆動部701と、固定部801との相対変位が測定可能であると考えると、式(3)よりオブザーバ手段は、下式(6)に示すように構成される。
【数8】
Lはオブザーバゲインであり、下式(7)で示されるRiccati方程式を解くことにより予め求められるカルマンフィルタゲインである。
【数9】
この正定対称な解Pより、Lは下式(8)のように決定される。
【数10】
このオブザーバ手段を用いると、状態変数である振れ補正機構の被駆動部701の絶対速度(zbの1階微分)と、被駆動部701と固定部801との相対変位z0が推定可能である。推定された相対変位z0を1階微分し、被駆動部701の絶対速度から減算することで、固定部801、つまりカメラ本体部の絶対速度(zwの1階微分)が検出可能となる。なお、推定された相対変位z0の1階微分が、被駆動部701の絶対速度に対して非常に小さい値となる場合には、これをカメラ本体部の絶対速度として平行振れ補正にそのまま用いてもよい。この場合、dz0 が小さいためdzbをdzwとみなせるので、前記の減算は不要である。
【0019】
図6は防振制御装置の構成例を示すブロック図である。以下の説明では、撮像装置の鉛直方向(ピッチ方向:図1(A)の矢印103p、104p参照)に生じる振れについての構成のみを示す。同様の構成は撮像装置の水平方向(ヨー方向:図1(A)の矢印103y、104y参照)に生じる振れについても設けられているが、両者は方向の違いを除いて基本的に同じであるため、一方だけを説明する。
まず、角度振れの補正について説明する。
角速度計108からの角速度検出信号はCPU106に入力され、HPF積分フィルタ901で処理される。角速度検出信号はHPF積分フィルタ901を構成するHPF(ハイパスフィルタ)でDC(直流)成分をカットされた後で積分されることにより、角度信号に変換される。手振れの周波数帯域は約1から10Hzである。そのため、HPF特性は、手振れの周波数帯域から十分離れた、例えば0.1Hz以下の周波数成分をカットする特性になっている。
HPF積分フィルタ901の出力は敏感度調整部903に入力される。敏感度調整部903は、ズームおよびフォーカスの位置情報902と、それらにより求まる撮影倍率と、焦点距離に基づいてHPF積分フィルタ901の出力を増幅し、角度振れの補正目標値を算出する。これは、撮影レンズの焦点調節やズーム動作等により光学情報が変化する場合、振れ補正部111の移動量に対する撮像面での揺れ量の比(振れ補正敏感度)が変化することを補正するためである。求まった角度振れの補正目標値は加算部912を介して駆動部110に出力され、振れ補正部111が駆動されて補正レンズの移動制御により画像ブレが補正される。
【0020】
次に、平行振れ補正について説明する。
本実施形態では上述したように、カルマンフィルタを用いたオブザーバ手段により、平行速度(zwの1階微分)が検出される。式(1)から(8)で説明した通り、振れ補正部111の被駆動部701と固定部801との相対変位を状態変数とし、駆動推力を入力変数として被駆動部701の絶対速度や、被駆動部701と固定部801との相対変位が推定される。平行速度を演算する推定器905には、駆動部110からの駆動指示信号、位置検出信号(ホール素子出力)と共に、ズームレンズの位置情報(ズーム情報という)902が入力される。
図7は、図6の推定器905の構成例を示す制御ブロック図である。
ホール素子(図2の422、423参照)が出力する相対変位の情報と、駆動部110から振れ補正部111への駆動指示信号の示す推力の情報は、カルマンフィルタ1001に入力される。ここで駆動推力については、以下の方法で算出される。図4のフィードバック制御コントローラ602が指示した指令電流を推力に変換するために、推力変換部1002は電流値に所定の係数を乗じて駆動推力を算出する。推力変換部1002の出力は温度補正用の可変ゲイン部1003に入力される。可変ゲイン部1003には、振れ補正部111の近くに設けた不図示の温度センサからの温度検出信号(鏡筒温度信号)が入力される。鏡筒温度に応じた温度変化係数が予めメモリに記憶されており、温度変化に応じてゲイン(K)の値が制御される。よって鏡筒温度が変化することによる、振れ補正部111のコイル出力特性の温度変化を加味して平行速度を推定することができる。可変ゲイン部1003の出力する駆動推力の情報と、ホール素子の出力する相対変位の情報は、カルマンフィルタ1001に入力される。カルマンフィルタ1001は、上述したように、振れ補正部111の被駆動部701の絶対速度、および、被駆動部701と固定部801との相対変位を推定する。推定された相対変位は微分器1004にて1階微分されて相対速度となり、加算部1005にて、推定された被駆動部701の絶対速度と加算される。こうして平行振れの推定量(推定速度)が算出される。なお、加算部1005で行われる演算は実際には減算であるが、説明上、特に明示の必要がない場合、負値の加算(減算)も含めて同様の演算とみなすことにする。
平行振れゲイン演算部1007は不図示のズーム制御部からズーム情報902を取得し、加算部1005の後段にある平行振れ可変ゲイン部1006のゲイン設定を行う。加算部1005の出力には平行振れ可変ゲイン部1006にてゲイン係数が乗算され、最終的な平行振れの推定速度(以下、推定平行速度という)が算出される。
【0021】
次に、ズーム情報902に基づいて平行振れゲイン演算部1007が行う平行振れゲイン演算について説明する。
図8は振れ補正範囲を表した図であり、A軸およびB軸は撮像光学系の光軸に対して直交する平面内にて、互いに直交する2軸をそれぞれ示す。Wide可動範囲1101は撮影光学系の焦点距離が最も短くなるズーム位置における振れ補正範囲である。Tele可動範囲1102は撮影光学系の焦点距離が最も長くなるズーム位置における振れ補正範囲である。これらは振れ補正部111の最大可動範囲1103内にある。振れ補正部111の動作点1104をTele可動範囲1102に例示する。
一般的な振れ補正では、Wide可動範囲1101よりもTele可動範囲1102の方が大きいが、これは撮像面における角度振れ量の影響の度合いによるものである。同じ角度振れ量でも、焦点距離が長くなるにつれて撮像面における角度振れ量が大きくなり、それに伴い振れ補正部111を駆動して補正すべき振れ補正量も大きくなる。このため、Wide可動範囲1101よりも、Tele可動範囲1102の方が大きい振れ補正範囲となるように設定している。
振れ補正部111の動作点1104がWide可動範囲1101内にある場合とTele可動範囲1102内にある場合とでは、推定平行速度の精度に違いが生じる。特にTele可動範囲1102においては、動作点1104が振れ補正の最大可動範囲の端に近づいた場合、機構部の線形特性がなくなり、オブザーバ手段からの平行振れ推定値に誤差が生じてしまう。
また、同じ角度振れ量であっても焦点距離の違いにより、Wide撮影時における角度振れ補正量とTele撮影時における角度振れ補正量は異なり、後者の方が大きい。よって、電流−推力変換の誤差がある場合、Wide撮影時におけるカルマンフィルタ1001の出力誤差よりも、Tele撮影時におけるカルマンフィルタ1001の出力誤差の方が大きくなる。
そこで、平行振れ補正の過補正を防ぐために、平行振れゲイン演算部1007は、平行振れ可変ゲイン部1006に設定するゲイン係数の値を、焦点距離に応じて変化させる。つまり、動作点1104がWide可動範囲1101内にある場合に比べて、Tele可動範囲1102内にある場合の方が小さくなるように演算が行われる。この結果、同じ振れ量を検出したとしても、ワイド側よりもテレ側の方が平行振れ補正量が小さくなる。
【0022】
図9は、横軸にズーム位置をとり、縦軸に平行振れゲイン(係数)をとって両者の関係をグラフで例示した図である。点Pではゲイン値が1であり、点Qではゲイン値が1未満であって、線分PQは負勾配で右下がりである。
図示のように焦点距離が短い場合、平行振れゲインは1に近い値が設定され、点Pでゲイン値が1となる。本例では、さらに焦点距離が短くなっても一定値1のままである。また焦点距離が長い場合、1より小さいゲイン値が設定される。焦点距離が長くなるにつれて振れ補正範囲が広くなっていき、これに従ってゲイン値が小さくなる。なお、焦点距離によって振れ補正範囲を変更する場合は、振れ補正範囲が狭い場合(焦点距離が短い)よりも振れ補正範囲が広い場合(焦点距離が長い)の方が平行振れゲインを小さく設定する。本例では点Qでゲイン値が最小値となり、これに以降は焦点距離が長くなっても一定のゲイン値である。なお、グラフ線の形状については曲線や折れ線でもよく、要は焦点距離の増加につれてゲイン値が小さくなる設定であればよい。また、焦点距離が所定値(閾値)より長いか否かの判定処理を行って、焦点距離が所定値を超える場合に平行振れゲインを小さく設定することもできる。
【0023】
図6に戻って、平行振れの補正方法を説明する。
角速度計108の出力はCPU106に入力され、HPF積分フィルタ909で処理される。HPF積分フィルタ909を構成するHPFは角速度検出信号のDC成分をカットした後、この信号が積分されて角度信号に変換される。HPF積分フィルタ909の出力は利得調整部910に入力される。利得調整部910は利得調整フィルタを備えており、HPF積分フィルタ909の処理と併せて、平行振れ補正を行うべき周波数帯域におけるゲインおよび位相特性を調整する。利得調整部910の出力は、後述する出力補正部911により補正され、平行振れの補正目標値とされて加算部912で合成され、前述した角度振れの補正目標値と加算される。
また、上記処理と並行して、角速度計108の出力はHPF位相調整部904に入力される。HPF位相調整部904を構成するHPFは角速度検出信号のDC成分をカットし、その後に信号の位相調整が行われる。HPF位相調整部904の出力は角速度BPF(バンドパスフィルタ)部906で所定帯域の周波数成分のみ抽出される。
推定器905の出力(推定平行速度)は平行速度BPF部907に送られて、所定帯域の周波数成分のみ抽出される。角速度BPF部906及び平行速度BPF部907の各出力は比較部908に入力され、利得調整部910の出力を補正する補正量(補正係数)が算出される。比較部908が行う補正係数演算については後述する。
出力補正部911にはズームおよびフォーカスの位置情報902も入力され、当該情報より撮影倍率を演算する。求めた撮影倍率及び比較部908からの補正量に基づいて利得調整部910の出力が補正されて、平行振れの補正目標値が算出される。平行振れの補正目標値は、加算部912で角度振れの補正目標値と加算される。加算結果は駆動部110に出力され、これにより、振れ補正部111が駆動され、角度振れと平行振れの両者について画像ブレが補正されることになる。
【0024】
次に、比較部908が算出する補正量について説明する。
図10は撮像装置に加わる角度振れ103pと平行振れ104pを示し、側面から見た場合の模式図である。撮像装置101の撮像光学系の主点位置における平行振れ104pの大きさをYと記す。また角度振れ103pの大きさをθと記し、回転中心O(1301p参照)を定めた場合の回転半径をL(1302p参照)と記す。これらの関係は、以下の(9)および(10)式で表される。
【数11】
Vは速度を表し、ωは角速度を表す。尚、回転半径L(1302p参照)は、回転中心1301pから振れ補正部111までの距離である。
(9)式によれば、推定器905が出力した推定平行速度を1階積分して変位Yを求め、角速度計108pの出力を1階積分して角度θを求めて、両者の比の値から回転半径Lが求まる。また(10)式によれば、推定器905が出力した推定平行速度を速度Vとし、角速度計108pの出力を角速度ωとして、両者の比の値から回転半径Lが求まる。いずれの方法でも回転半径Lを求めることができる。
【0025】
回転半径Lの算出では、所定時間内の速度Vと角速度ωそれぞれの最大振幅のピーク値を求めて、それらの比からL値を算出してもよい。所定時間とは、例えば、角速度BPF部906及び平行速度BPF部907のカットオフ周波数が5Hzの場合、200ms程度の時間である。更に、回転半径Lの更新については、速度Vと角速度ωがそれぞれ算出された瞬間毎に行ってもよい。その際には、速度Vと角速度ωをそれぞれ時系列的に平均化し、あるいはLPF(ローパスフィルタ)で高周波成分をカットすることで、回転半径を算出する際の高周波ノイズ成分を除去できる。
【0026】
撮像光学系の主点位置における平行振れの変位Yと、振れ角度θ、及び撮像光学系の焦点距離fと撮影倍率βより、撮像面に生ずるブレ量δは下式(11)で求められる。
【数12】
(11)式の右辺第1項のfは、撮像光学系のズームおよびフォーカスの位置情報902により求まる。また撮影倍率βは、実際の被写体の大きさに対する、撮像素子107上に結像された被写体像の大きさの倍率を表すものであり、これも撮影光学系のズームおよびフォーカスの位置情報902より求まる。更に、振れ角度θは角速度計108pの出力の積分結果より求まる。よってこれらの情報から図6で説明したように角度振れ補正目標値を求めることができる。
また、(11)式の右辺第2項に関しては、推定器905が出力した推定平行速度の1階積分と、ズームおよびフォーカスの位置情報902から得られる撮影倍率βにより求まる。よって、図6で説明したように平行振れ補正目標値を求めることができる。
しかし、本実施形態においては式(11)を、以下の式(12)のように書き直したブレ量δに対して画像ブレ補正を行う。
【数13】
即ち、平行振れに関しては、推定器905が出力した推定平行速度より直接的に求まる平行振れの変位Yを用いてはいない。式(9)または式(10)から求まる回転半径Lを算定し、このL値と、角速度計108pの出力の積分結果(θ)と、撮影倍率βを乗算して補正値を算出している。図6の比較部908が補正係数演算で求めて出力補正部911に出力する補正量(β、L)は、θに対する補正係数である。
【0027】
次に、図11を参照して防振制御の全体的な動作について説明する。図11に示すフローチャートは、撮像装置の主電源のオン動作で開始し、CPU106が解釈して実行するプログラムに従って一定のサンプリング周期ごとに実行される。
まず、S1401では、ユーザによって不図示の防振スイッチ(SW)が操作されたか否かが判定される。防振SWがON状態であればS1402へ進み、OFF状態であればS1413へ処理を進める。S1402でCPU106は角速度計108の検出信号を取り込む。次のS1403でCPU106は、振れ補正が可能な状態であるか否かを判定し、振れ補正が可能な状態である場合、S1404へ進み、振れ補正が可能な状態でない場合、S1413へ処理を進める。S1403にて、電源供給時点から角速度計108の出力が安定するまでの間は振れ補正が可能な状態でないと判定される。角速度計108の出力が安定した後で振れ補正が可能な状態であると判定される。これにより、電源供給の直後での出力値が不安定な状態では、防振性能が低下しないように防止できる。
【0028】
S1404では、図6を用いて説明した方法で角度が算出される。この角度は図6のHPF積分フィルタ901の出力値となる。次のS1405は、ズームポジションが変化したか否かについての判定処理である。ズームポジションが前回から変化した場合、S1406へ進み、変化していない場合、S1407に進む。
S1406ではズームポジションに応じて振れ補正範囲(図8参照)が変更された後、S1407に進む。S1407では、S1404で求めた角度演算結果と、ズームおよびフォーカスの位置情報902から求めた焦点距離や撮影倍率を用いて、前記のように角度振れ補正量が算出される。この角度振れ補正量は図7の敏感度調整部903の出力値となる。次にS1408では前述したように推定平行速度が演算され(図5〜7参照)、S1409ではズーム位置から平行振れゲインの演算が行われる(図9参照)。次のステップ1410では、S1409で求めた平行振れゲインが、S1408で求めた平行速度に乗算される。さらに図10を用いて説明した方法で回転半径が算出される。求めた回転半径と角度とズームおよびフォーカスの位置情報902から求めた焦点距離や撮影倍率により、平行振れ補正量が演算され、S1411に進む。算出された平行振れ補正量は図7の出力補正部911の出力値となる。振れ補正量が合成され、加算部912は角度振れ補正量と平行振れ補正量を加算する。S1412にて駆動部110は振れ補正量に基づいて振れ補正部111を駆動し、振れ補正のサブルーチンを終了する。そして、次回のサンプリング時点までの間、待ち処理となる。
一方、S1401やS1403からS1413に進んだ場合、振れ補正部111の駆動を停止し、振れ補正のサブルーチンが終了する。そして、次回のサンプリング時点までの間、待ち処理となる。
【0029】
以上のように第1実施形態では、振れ補正機構の被駆動部と固定部との相対変位を状態変数とし、振れ補正部への駆動推力を入力変数として、オブザーバ手段を用いて、被駆動部の絶対速度、および被駆動部と固定部との相対変位が推定される。そして推定平行速度が算出されて、平行振れ補正量が得られる。上述のように振れ補正機構とその駆動手段を利用できるので、加速度計等を新たに設ける必要がない。したがって、構成部品を増やすことなく、コンパクト化と低コスト化が実現でき、角度振れの補正と平行振れの補正を同時に行える。
振れ補正範囲が大きくなると、振れ補正部が可動中心から離れて線形特性でない領域で平行振れの推定処理が行われる場合がある。また、焦点距離の違いで角度振れ補正量が変化することにより、電流−推力変換に誤差が大きい場合、角度振れ補正量の大きいときの方が、推定平行速度も誤差が大きくなるおそれがある。そこで前述した通り、焦点距離が長くなる条件下では、焦点距離が短い場合よりも平行振れゲインを小さく設定する。なお、焦点距離によって振れ補正範囲を変更する場合は、振れ補正範囲が狭い場合よりも振れ補正範囲が広い場合の方が平行振れゲインを小さく設定する。すなわち、振れ補正範囲が広いことにより生じる平行振れ推定誤差の影響を受け難くするため、推定平行速度を意図的に小さくする設定がなされている。これにより、焦点距離が長い場合や、振れ補正範囲が広い場合に、平行振れ補正の誤作動による平行振れ補正の過補正を防止できる。
【0030】
上記の通り、焦点距離や振れ補正部の可動範囲(補正範囲)が変化しても、平行振れ補正の過補正による防振性能の低下を防止でき、平行振れ補正の防振性能が向上する。
なお、本実施形態では、振れ補正手段としての補正レンズを光軸に垂直な面内で移動させる、いわゆる光学防振を説明した。しかし、光学防振に限らず、以下の構成を用いても構わない。
・撮像素子を光軸に垂直な面内で移動させることで振れ補正を行う構成。
・撮像素子が出力する各撮影フレームの画像の切り出し位置を変更することで振れの影響を軽減させる電子防振による構成。
・複数の防振制御を組み合わせて振れ補正を行う構成。
また、平行振れの推定に関しても、各種の構成が可能である。例えば、撮像素子を光軸に垂直な面内で移動させることで防振を行う振れ補正機構を用いた場合において、振れ補正機構の被駆動部と固定部との相対変位を観測できれば、オブザーバ手段によって推定平行速度を算出できる。つまり、振れ補正機構の被駆動部と固定部との相対変位を状態変数とし、振れ補正機構への駆動推力を入力変数としてオブザーバ手段を構成すれば、上記と同様の方法でカメラ本体部の絶対速度が検出可能である。
【0031】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態を説明する。
図12は第2実施形態に係る推定器の内部構成例を示すブロック図である。なお、第1実施形態の場合と同様の構成要素については既に使用した符号を用いることでそれらの詳細な説明を省略し、第1実施形態との相違点を主として説明する。
図6と図12の違いは以下の通りである。
(1)撮影モード情報1501と振れ補正モード情報1502が平行振れゲイン演算部1503に入力されること。
(2)平行振れゲイン演算部1503は、撮影モード情報1501、振れ補正モード情報1502、ズーム情報902に基づいて平行振れゲインを演算すること。
撮影モード情報1501は、静止画撮影モードであるか、または動画撮影モードであるかに応じて設定される情報である。また、振れ補正モード情報1502は、以下に示す振れ補正モード1または2に応じて設定される情報であり、各モードの選択時には動画撮影時の振れ補正範囲が異なる。
・振れ補正モード1= 動画撮影時でも振れ補正範囲は静止画撮影の場合とそれ程変わらないが、防振安定性を重視して、パンニング動作直後の撮影でも安定した防振性能が得られるモード。
・振れ補正モード2= 動画撮影時に振れ補正範囲を広げて歩行時などの大きな揺れに対して防振性能を向上させるモード。
【0032】
図13は、焦点距離が最も短いズーム位置(Wide撮影時)での振れ補正範囲である。図14は、撮影モード(静止画撮影、動画撮影)および振れ補正範囲と、ゲイン係数(または平行振れ補正量)の関係を、3種類のグラフで例示した図である。
静止画撮影モードのときの振れ補正範囲1601が最も狭い範囲であり、振れ補正モード1のときの振れ補正範囲1602は、振れ補正範囲1601よりも広い。振れ補正モード2のときの振れ補正範囲1603は、振れ補正範囲1602よりも広い。つまり、振れ補正範囲の大きさは、「静止画撮影モード < 動画撮影時の振れ補正モード1 < 動画撮影時の振れ補正モード2」の関係を満たすように設定されている。
振れ補正範囲が広い場合、可動中心から離れて機構部が線形特性でない領域で平行振れの推定が行われる場合がある。そこで、図14に例示するグラフのように、ズーム位置と撮影モード、振れ補正モードに応じて振れ補正ゲイン算出用の参照テーブルを変更してゲイン係数の演算が行われる。図14の横軸はズーム位置を示し、縦軸は平行振れゲインを示す。実線で示すグラフ線1701は静止画撮影モードでの設定を示し、点P1でのゲイン値が1である。また点線で示すグラフ線1702は動画撮影時の振れ補正モード1での設定を示し、点P2でのゲイン値が1未満である。1点鎖線で示すグラフ線1703は動画撮影時の振れ補正モード2での設定を示し、点P3でのゲイン値は点P2でのゲイン値よりも小さい。いずれも、焦点距離の長い点Qではゲイン値が最小である。線分P1Q、P2Q、P3Qは負勾配、つまり右下がりであり、勾配の大きさはこの順に小さくなる。
撮影モードが動画撮影の場合、振れ補正モード1では、静止画撮影モード時よりも振れ補正範囲が広い。よって、グラフ線1702に示すように、静止画撮影時のグラフ線1701よりもゲインが小さく設定された参照テーブルを使用する。この結果、静止画撮影時よりも平行振れ補正量が小さくなる。また、振れ補正モード2では、静止画撮影モードや振れ補正モード1の場合に比べてさらに振れ補正範囲が大きい。このため、グラフ線1703に示すように、他のグラフ線1701、1702よりもさらにゲイン係数が小さく設定された参照テーブルを用いる。この結果、他のモードよりも平行振れ補正量が小さくなる。なお、振れ補正範囲を所定値(閾値)と比較し、振れ補正範囲が所定値以下の場合に比べて振れ補正範囲が所定値よりも大きい場合の方が、同じ平行振れに対して平行振れ補正量が小さくなるように演算を行う構成でもよい。
【0033】
第2実施形態では、振れ補正範囲が広くなる条件下にて、振れ補正範囲が狭い場合よりも平行振れゲインを小さく設定される。すなわち、振れ補正範囲が広いことにより生じる平行振れ推定誤差の影響を受け難くするため、推定平行速度を意図的に小さく設定している。これにより、振れ補正範囲が広い場合の平行振れ補正の過補正を防止できる。ズーム位置や、撮影モードまたは振れ補正モードに応じて振れ補正部の補正範囲が変化した場合でも、平行振れ補正の過補正による防振性能の低下を防止できるので、平行振れ補正の防振性能が向上する。
【符号の説明】
【0034】
101 撮像装置
106A 角度振れ補正量算出部(第1の補正量算出部)
106B 平行振れ補正量算出部(第2の補正量算出部)
107 撮像素子
108 角速度計
905 推定器
1001 カルマンフィルタ
1006 平行振れ可変ゲイン部
1007 平行振れゲイン演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、手振れ等による画像ブレを補正して画像劣化を防止する防振制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手振れ等による画像ブレを防ぐために、振れ補正部、駆動部及び振動検出部等を用いた防振制御装置を備えたカメラが製品化されており、撮影者の撮影ミスを誘発する要因は減ってきている。
ここで、防振制御装置について簡単に説明する。撮影動作中に手振れが起きても像ブレの無い撮影を行えるように、手振れ等によるカメラ振動を検出し、検出値に応じて像ブレ補正用レンズ(以下、補正レンズという)や撮像素子の移動制御が行われる。その際、振動を正確に検出して振れによる光軸変化を補正する必要がある。振動検出では、原理的には角速度等の検出結果を振動検出部が演算処理する。その演算処理結果に基づいて振れ補正部を制御して補正レンズまたは撮像素子を移動させることにより、画像ブレが抑制される。
角速度計で角度振れを検知し、補正レンズや撮像素子を駆動して像ブレを低減させる装置は様々な光学機器に搭載されている。しかし、至近距離での撮影(撮影倍率の高い撮影条件)では、角速度計のみでは検出できない振動を伴う。例えばカメラの光軸に対して直交する面内で水平方向または垂直方向に加わる、いわゆる平行振れが生じる場合、これによる画像劣化も無視できない。例えば、被写体に20cm程度まで接近したマクロ撮影の場合、平行振れを積極的に検出して補正する必要がある。また、1m程度の距離に位置する被写体の撮影でも、撮像光学系の焦点距離が非常に大きい条件下(例えば、400mm)では平行振れを検出して補正する必要がある。
【0003】
特許文献1には、加速度計で検出した加速度の2階積分から平行振れを求め、別に設けた角速度計の出力と共に振れ補正部を駆動する技術が開示されている。平行振れの検出に用いる加速度計の出力は外乱ノイズや温度変化等の環境変化の影響を受け易い。このため、2階積分によりそれらの不安定要因はさらに拡大され、平行振れの高精度な補正が難しい。
特許文献2には平行振れを、カメラから離れた場所に回転中心がある時の角度振れとみなして求めることが開示されている。この方法では、角速度計と加速度計を設け、それらの出力から角度振れの回転半径を用いた補正値と角度を求めて振れ補正を行う。外乱の影響を受け難い周波数帯域に限定して回転中心を求めることで、上記のような加速度計の不安定要因による精度低下を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−225405号公報
【特許文献2】特開2010−25962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、平行振れ補正において以下の課題がある。
平行振れ補正を行うための検出手段に加速度計を用いる方法では、カメラの大型化、高コスト化を招くおそれがある。また、加速度計の取り付け位置はレンズ主点位置が望ましいが、レンズ主点位置の近辺に加速度計を設置することが難しいという問題もある。
また、前記特許文献2では、振れ検出手段として加速度計の代わりに、撮像手段の出力から振れを検出する手段が開示されている。撮像手段の出力から振れを検出する場合、撮影動作直前までに画像ブレと角度振れとの関係により補正係数を演算し、撮影動作において角度振れに補正をかける方法がある。この場合、撮影動作中しか平行振れ補正を行えないという問題がある。また電子式の画像切り出しによる防振制御では、動画撮影にて画像ブレと角度振れとの関係により補正係数を演算し、角度振れに補正係数を掛けることで平行振れ量を算出する。平行振れ量に応じて撮像素子に取り込まれた画像の切り取り位置を変えていくことが可能であるが、画像の一部を切り取ることにより画角が狭くなってしまう等の問題がある。
【0006】
また前記特許文献2には、振れ検出手段として加速度計の代わりに、駆動コイルに流れる電流から平行振れの加速度を検出する手段も開示されている。しかし、当該手段においては撮影動作直前まで防振制御を行うことができない。マクロ領域の撮影等で平行振れの影響が大きい場合、詳細な構図の設定や正確なピント合わせが難しい場合がある。加えて、動画撮影中は平行振れ補正を行うことができないという問題もある。また、コイル電流値による加速度推定は、振れ補正機構の特性や振れ補正範囲を考慮していないため、正確な加速度の推定が難しく、推定した加速度を振れ補正に使うことは推定精度に問題があった。
そこで本発明の目的は、小型で機動性が高く、焦点距離や振れ補正範囲の変化によらずに、平行振れに対して高精度な像ブレ補正を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、振れ補正手段と、前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備える。前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離が長くなると前記補正量が小さくなるように演算する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、焦点距離や振れ補正範囲の変化によらずに、平行振れに対して高精度な補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】撮像装置の振れ方向を示した(A)図と、本発明の第1実施形態に係る防振制御装置を搭載した撮像装置を模式的に示す(B)図である。
【図2】図3とともに振れ補正機構を説明するために、構成例を示す分解斜視図である。
【図3】光軸方向から見た場合の振れ補正機構を示す図である。
【図4】振れ補正機構のフィードバック制御部の構成例を示すブロック図である。
【図5】振れ補正機構の被駆動部の振動をモデル化して示す(A)図と、1自由度の振動モデルを示す(B)図である。
【図6】第1実施形態に係る防振制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6の推定器の構成例を示すブロック図である。
【図8】振れ補正範囲の説明図である。
【図9】平行振れゲインと焦点距離の関係を示すグラフである。
【図10】撮像装置に加わる振れの回転中心を説明する図である。
【図11】第1実施形態に係る防振制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図12】図13および14と併せて本発明の第2実施形態を説明するために、防振制御装置の推定器の構成例を示すブロック図である。
【図13】振れ補正範囲の説明図である。
【図14】平行振れゲインと焦点距離の関係について、撮影モードおよび振れ補正モードによる相違を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態に係る撮像装置を添付図面に従って説明する。本発明は、デジタル一眼レフカメラ用の交換レンズのような光学機器やデジタルコンパクトカメラに限らず、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、Webカメラ、携帯電話等の撮影装置に適用できる。
図1(A)は撮像装置101の振れ方向を表す図である。防振制御装置は、撮像光学系の光軸102と直交する軸を中心とする装置の回転に伴って生じる振れ(以下、角度振れという。矢印103p、103y参照)に対して振れ補正を行う。防振制御装置はまた、光軸102と直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる振れ(以下、平行振れという。矢印104p、104y参照)に対して振れ補正を行う。なお、図1(A)に示すX軸、Y軸、Z軸の3次元座標については、Z軸方向が光軸方向に設定されており、これに直交する2軸がX軸とY軸である。X軸回り方向がピッチ方向(矢印103p参照)であり、Y軸回り方向がヨー方向(矢印103y参照)である。矢印104yで示す平行振れの方向はX軸に平行であり、矢印104pで示す平行振れの方向はY軸に平行である。
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を説明する。
図1(B)は、第1実施形態に係る防振制御装置を具備した撮像装置101を模式的に示す平面図である。図1(B)には撮像装置101の撮像部の構成と、CPU(中央演算処理装置)106で実行される像ブレ補正処理の機能ブロックを示す。
撮像光学系の光軸102上には、振れ補正部111の補正レンズと撮像素子107が位置する。角速度計108は角度振れを検出する角速度検出手段であり、角速度検出信号は2つの補正量算出部に出力される。角度振れ補正量算出部106Aは角度振れに対して像ブレの補正量を算出する第1の補正量算出手段である。また、平行振れ補正量算出部106Bは、平行振れに対して像ブレの補正量を算出する第2の補正量算出手段である。これらの算出部の出力は加算後に駆動部110に送出される。駆動部110は、振れ補正部111の補正レンズを駆動し、角度振れと平行振れの両方を加味した振れ補正を行う。
従来の装置では、図1(A)に矢印104p、104yで示す平行振れを検出するために加速度計等の物理センンサが設けられ、その検出信号が平行振れ補正量算出部106Bに送られるが、本実施形態では、平行振れ検出のために加速度計等は不要である。つまり、駆動部110から平行振れ補正量算出部106Bに出力される信号を用いて、平行振れの検出が行われる。なお、その詳細については後述する。
図1(B)に示す例では、振れ補正手段として、算出された補正量に基づいて補正レンズを光軸に垂直な面内で移動させる、いわゆる光学防振が採用される。像ブレ補正方法には補正レンズを用いた光学防振に限らず、撮像素子を光軸に垂直な面内で移動させることで防振を行う方法がある。また、撮像素子が出力する各撮影フレームの画像の切り出し位置を変更することで、振れの影響を軽減させる電子防振による方法があり、複数の防振方法を組み合わせて像ブレ補正を行うこともできる。
【0012】
次に、図2の分解斜視図を参照して、振れ補正部111の構成例を説明する。
振れ補正部111のベース401は、シャッタ機構、NDフィルタ機構も併せて保持している。ベース401にはフォロワピン402が一体的に設けられ、また不図示の可動フォロワピンを備える。ベース401の径方向の外側にある不図示のカム筒には3本のカム溝が形成されており、フォロワピン402が嵌合してカム溝に沿って光軸方向に進退するが、その詳細は省略する。
補正レンズ群406はシフトレンズホルダ416に不図示のカシメ爪によって一体的に保持されている。レンズカバー403は、補正レンズ群406を通過する光束を制限する開口部を有し、側面部に設けた3箇所の腕部404にはそれぞれに開口405が形成されている。シフトレンズホルダ416の側面には、3箇所に設けた突起415が形成されており、これらは開口405とそれぞれ嵌合することにより、レンズカバー403がシフトレンズホルダ416と一体に保持される。シフトレンズホルダ416には、電磁機構を構成するマグネット412、413が保持されている。
シフトレンズホルダ416は、3つのボール407を介してベース401に圧接されている。つまり、各ボール10はシフトレンズホルダ416に対する可動支持部材である。それらの転動により、シフトレンズホルダ416は光軸に垂直な面内で、ベース401に対して自由に移動可能に支持される。本構成によれば、ガイドバーを用いた方式に比べて、より微小な振幅で、より高周波数の振動を実現できるという効果が得られるので、高画素化の進むデジタルカメラにおいて良好な像ブレ補正が実現可能になる。
【0013】
スラストスプリング414は、シフトレンズホルダ416をベース401に近づく方向に付勢する付勢手段である。スラストスプリング414は引っ張りスプリングであり、一端がシフトレンズホルダ416の引っ掛け爪に係合し、他端はベース401に形成した不図示の引っ掛け爪に係合している。また、ラジアルスプリング417、418はシフトレンズホルダ416の回転を防ぐ為に設けられた付勢手段であり、シフトレンズホルダ416やベース401に形成した不図示の引っ掛け爪にそれぞれ係合している。
コイル408、409は、樹脂製のボビン410、411にそれぞれ保持されている。該ボビンの先端に金属製のピンが一体的に構成されており、各コイルの端部が接続されている。このピンにフレキシブル基板(以下、FPCと略記する)424の導通パターンを半田付けすることで、回路部から各コイルに電力が供給される。コイル408、409に電力を供給するためFPC424には、ランド425にて前記した金属製のピンを介してコイル408、409が電気的に接続されている。位置検出手段にはホール素子422、423が使用され、マグネット412、413にそれぞれ近接して配置され、マグネットの移動に伴う磁界の変化を検出する。磁気検出信号に基づいてシフトレンズホルダ416の移動量が算出可能である。ホール素子422、423もFPC424に実装されて電力が供給される。
FPC426は、シャッタ及びNDフィルタ駆動部に電力を供給するための配線部材であり、FPC424と併せてFPCホルダ420に固定される。FPCホルダ420には円柱状の突起421が設けられており、これにFPC424、426の穴が圧入されることでそれらの位置決めが行われた上で固定される。
【0014】
図3は振れ補正部111を被写体側から見た正面図である。
凹部428は、補正レンズの近傍にそれぞれ位置する3つのボール407の位置、つまり三角形の頂点に配置された受け部である。ベース401に形成した、3つの凹部428にはそれぞれ1つずつボール407が受け入れられ、各ボールはシフトレンズホルダ416と点接触で圧接する。本構成により、摩擦が小さく、補正レンズを高精度で目標位置に追従させる制御が可能となり、平行振れの推定精度を高めることができる。
次に、補正レンズの制御方法について説明する。
図4は、駆動部110の演算処理を説明するブロック図である。
補正レンズ群406の目標位置は減算部601に入力される。減算部601は、この目標位置から、位置検出信号の示す現在位置を減算して偏差を算出する。位置検出信号は、ホール素子等の位置検出素子の出力値をAD変換でデジタル信号にしたものである。ここでホール素子等の出力値には観測ノイズ(ζ参照)が含まれており、これは加算部605に加わる。観測ノイズとは、センサ自身がもつノイズや、外部からの電気的な誘導ノイズ等の影響を受けたノイズ成分であり、ホール素子の出力には実際の補正レンズの位置に観測ノイズの成分が加わることになる。
減算部601が算出した偏差は、フィードバック制御コントローラ602(図4のC(s)参照)に出力され、該コントローラは、この偏差をゼロに近づけるように、即ちセンサによる検出位置が目標位置に追従するよう制御を行う。しかし、フィードバック制御コントローラ602の出力には、加算部603でシステムノイズ成分(d参照)が加わった後で、プラント604(図4のP(s)参照)である振れ補正機構へ出力され、これに駆動推力を与えることになる。システムノイズは主に、撮像装置の姿勢変化による重力加速度の影響や、手振れ等によって生じる振動加速度の影響による力外乱である。振れ補正機構を構成する補正レンズは、目標位置とフィードバック制御コントローラ602の特性、プラント604の特性に従い、さらにはシステムノイズや観測ノイズの影響を受けつつ駆動される。
【0015】
次に、振れ補正機構およびその駆動手段を用いた平行振れの検出方法について説明する。
まず、振れ補正機構については、互いに直交する2軸について、図5(A)に示すようにプラントのモデル化を行う。直交するA軸とB軸は、可動レンズ(補正レンズ)の駆動軸をそれぞれ表している。振れ補正機構の被駆動部701は、慣性質量mをもち、駆動部により各軸に沿ってそれぞれ駆動される。第1駆動部に係るばね定数をka、減衰係数をca、推力をfaで表し、第2駆動部に係るばね定数をkb、減衰係数をcb、推力をfbで表す。
図5(B)は前記2軸のうち、1軸分の振動モデルを例示する。つまり、補正レンズを含む振れ補正機構の被駆動部について、その振動を1自由度でモデル化した模式図である。振れ補正機構の被駆動部701に対して、固定部801は、当該被駆動部を支持する部分(カメラ本体部)を示す。本モデルにて、補正レンズを含む被駆動部701の絶対変位をzbと記し、固定部801の絶対変位をzwと記す。また、駆動部のばね定数をk、減衰係数をc、振れ補正機構のコイルに電力を供給することにより生じる推力をfと記す。被駆動部701(質量m)についてのモデル系の運動方程式は、ニュートンの記法で下式(1)のようになる。
【0016】
【数1】
振れ補正機構の被駆動部701と固定部801との相対変位については、位置検出素子(図2のホール素子422、423参照)により検出可能である。そこで、被駆動部701と固定部801との相対変位を可観測出力とするため、両者の相対変位をz0として下式(2)で定義する。
【数2】
状態変数を以下のように定義する。
【数3】
そして、y=z0、u=fとし、固定部801の絶対速度をwとする。
【数4】
【0017】
式(1)と前記の定義式を用いて、状態方程式として下式(3)が得られる(tは時間を表す変数である)。
【数5】
上式のν(t)は観測ノイズを表す。これはGauss性白色ノイズであり、wとνの平均値と共分散は既知であり、下式(4)で表されるものとする。
【数6】
【0018】
式(3)のA〜D、Gは、下式(5)のように表される。
【数7】
よって、振れ補正機構の被駆動部701と、固定部801との相対変位が測定可能であると考えると、式(3)よりオブザーバ手段は、下式(6)に示すように構成される。
【数8】
Lはオブザーバゲインであり、下式(7)で示されるRiccati方程式を解くことにより予め求められるカルマンフィルタゲインである。
【数9】
この正定対称な解Pより、Lは下式(8)のように決定される。
【数10】
このオブザーバ手段を用いると、状態変数である振れ補正機構の被駆動部701の絶対速度(zbの1階微分)と、被駆動部701と固定部801との相対変位z0が推定可能である。推定された相対変位z0を1階微分し、被駆動部701の絶対速度から減算することで、固定部801、つまりカメラ本体部の絶対速度(zwの1階微分)が検出可能となる。なお、推定された相対変位z0の1階微分が、被駆動部701の絶対速度に対して非常に小さい値となる場合には、これをカメラ本体部の絶対速度として平行振れ補正にそのまま用いてもよい。この場合、dz0 が小さいためdzbをdzwとみなせるので、前記の減算は不要である。
【0019】
図6は防振制御装置の構成例を示すブロック図である。以下の説明では、撮像装置の鉛直方向(ピッチ方向:図1(A)の矢印103p、104p参照)に生じる振れについての構成のみを示す。同様の構成は撮像装置の水平方向(ヨー方向:図1(A)の矢印103y、104y参照)に生じる振れについても設けられているが、両者は方向の違いを除いて基本的に同じであるため、一方だけを説明する。
まず、角度振れの補正について説明する。
角速度計108からの角速度検出信号はCPU106に入力され、HPF積分フィルタ901で処理される。角速度検出信号はHPF積分フィルタ901を構成するHPF(ハイパスフィルタ)でDC(直流)成分をカットされた後で積分されることにより、角度信号に変換される。手振れの周波数帯域は約1から10Hzである。そのため、HPF特性は、手振れの周波数帯域から十分離れた、例えば0.1Hz以下の周波数成分をカットする特性になっている。
HPF積分フィルタ901の出力は敏感度調整部903に入力される。敏感度調整部903は、ズームおよびフォーカスの位置情報902と、それらにより求まる撮影倍率と、焦点距離に基づいてHPF積分フィルタ901の出力を増幅し、角度振れの補正目標値を算出する。これは、撮影レンズの焦点調節やズーム動作等により光学情報が変化する場合、振れ補正部111の移動量に対する撮像面での揺れ量の比(振れ補正敏感度)が変化することを補正するためである。求まった角度振れの補正目標値は加算部912を介して駆動部110に出力され、振れ補正部111が駆動されて補正レンズの移動制御により画像ブレが補正される。
【0020】
次に、平行振れ補正について説明する。
本実施形態では上述したように、カルマンフィルタを用いたオブザーバ手段により、平行速度(zwの1階微分)が検出される。式(1)から(8)で説明した通り、振れ補正部111の被駆動部701と固定部801との相対変位を状態変数とし、駆動推力を入力変数として被駆動部701の絶対速度や、被駆動部701と固定部801との相対変位が推定される。平行速度を演算する推定器905には、駆動部110からの駆動指示信号、位置検出信号(ホール素子出力)と共に、ズームレンズの位置情報(ズーム情報という)902が入力される。
図7は、図6の推定器905の構成例を示す制御ブロック図である。
ホール素子(図2の422、423参照)が出力する相対変位の情報と、駆動部110から振れ補正部111への駆動指示信号の示す推力の情報は、カルマンフィルタ1001に入力される。ここで駆動推力については、以下の方法で算出される。図4のフィードバック制御コントローラ602が指示した指令電流を推力に変換するために、推力変換部1002は電流値に所定の係数を乗じて駆動推力を算出する。推力変換部1002の出力は温度補正用の可変ゲイン部1003に入力される。可変ゲイン部1003には、振れ補正部111の近くに設けた不図示の温度センサからの温度検出信号(鏡筒温度信号)が入力される。鏡筒温度に応じた温度変化係数が予めメモリに記憶されており、温度変化に応じてゲイン(K)の値が制御される。よって鏡筒温度が変化することによる、振れ補正部111のコイル出力特性の温度変化を加味して平行速度を推定することができる。可変ゲイン部1003の出力する駆動推力の情報と、ホール素子の出力する相対変位の情報は、カルマンフィルタ1001に入力される。カルマンフィルタ1001は、上述したように、振れ補正部111の被駆動部701の絶対速度、および、被駆動部701と固定部801との相対変位を推定する。推定された相対変位は微分器1004にて1階微分されて相対速度となり、加算部1005にて、推定された被駆動部701の絶対速度と加算される。こうして平行振れの推定量(推定速度)が算出される。なお、加算部1005で行われる演算は実際には減算であるが、説明上、特に明示の必要がない場合、負値の加算(減算)も含めて同様の演算とみなすことにする。
平行振れゲイン演算部1007は不図示のズーム制御部からズーム情報902を取得し、加算部1005の後段にある平行振れ可変ゲイン部1006のゲイン設定を行う。加算部1005の出力には平行振れ可変ゲイン部1006にてゲイン係数が乗算され、最終的な平行振れの推定速度(以下、推定平行速度という)が算出される。
【0021】
次に、ズーム情報902に基づいて平行振れゲイン演算部1007が行う平行振れゲイン演算について説明する。
図8は振れ補正範囲を表した図であり、A軸およびB軸は撮像光学系の光軸に対して直交する平面内にて、互いに直交する2軸をそれぞれ示す。Wide可動範囲1101は撮影光学系の焦点距離が最も短くなるズーム位置における振れ補正範囲である。Tele可動範囲1102は撮影光学系の焦点距離が最も長くなるズーム位置における振れ補正範囲である。これらは振れ補正部111の最大可動範囲1103内にある。振れ補正部111の動作点1104をTele可動範囲1102に例示する。
一般的な振れ補正では、Wide可動範囲1101よりもTele可動範囲1102の方が大きいが、これは撮像面における角度振れ量の影響の度合いによるものである。同じ角度振れ量でも、焦点距離が長くなるにつれて撮像面における角度振れ量が大きくなり、それに伴い振れ補正部111を駆動して補正すべき振れ補正量も大きくなる。このため、Wide可動範囲1101よりも、Tele可動範囲1102の方が大きい振れ補正範囲となるように設定している。
振れ補正部111の動作点1104がWide可動範囲1101内にある場合とTele可動範囲1102内にある場合とでは、推定平行速度の精度に違いが生じる。特にTele可動範囲1102においては、動作点1104が振れ補正の最大可動範囲の端に近づいた場合、機構部の線形特性がなくなり、オブザーバ手段からの平行振れ推定値に誤差が生じてしまう。
また、同じ角度振れ量であっても焦点距離の違いにより、Wide撮影時における角度振れ補正量とTele撮影時における角度振れ補正量は異なり、後者の方が大きい。よって、電流−推力変換の誤差がある場合、Wide撮影時におけるカルマンフィルタ1001の出力誤差よりも、Tele撮影時におけるカルマンフィルタ1001の出力誤差の方が大きくなる。
そこで、平行振れ補正の過補正を防ぐために、平行振れゲイン演算部1007は、平行振れ可変ゲイン部1006に設定するゲイン係数の値を、焦点距離に応じて変化させる。つまり、動作点1104がWide可動範囲1101内にある場合に比べて、Tele可動範囲1102内にある場合の方が小さくなるように演算が行われる。この結果、同じ振れ量を検出したとしても、ワイド側よりもテレ側の方が平行振れ補正量が小さくなる。
【0022】
図9は、横軸にズーム位置をとり、縦軸に平行振れゲイン(係数)をとって両者の関係をグラフで例示した図である。点Pではゲイン値が1であり、点Qではゲイン値が1未満であって、線分PQは負勾配で右下がりである。
図示のように焦点距離が短い場合、平行振れゲインは1に近い値が設定され、点Pでゲイン値が1となる。本例では、さらに焦点距離が短くなっても一定値1のままである。また焦点距離が長い場合、1より小さいゲイン値が設定される。焦点距離が長くなるにつれて振れ補正範囲が広くなっていき、これに従ってゲイン値が小さくなる。なお、焦点距離によって振れ補正範囲を変更する場合は、振れ補正範囲が狭い場合(焦点距離が短い)よりも振れ補正範囲が広い場合(焦点距離が長い)の方が平行振れゲインを小さく設定する。本例では点Qでゲイン値が最小値となり、これに以降は焦点距離が長くなっても一定のゲイン値である。なお、グラフ線の形状については曲線や折れ線でもよく、要は焦点距離の増加につれてゲイン値が小さくなる設定であればよい。また、焦点距離が所定値(閾値)より長いか否かの判定処理を行って、焦点距離が所定値を超える場合に平行振れゲインを小さく設定することもできる。
【0023】
図6に戻って、平行振れの補正方法を説明する。
角速度計108の出力はCPU106に入力され、HPF積分フィルタ909で処理される。HPF積分フィルタ909を構成するHPFは角速度検出信号のDC成分をカットした後、この信号が積分されて角度信号に変換される。HPF積分フィルタ909の出力は利得調整部910に入力される。利得調整部910は利得調整フィルタを備えており、HPF積分フィルタ909の処理と併せて、平行振れ補正を行うべき周波数帯域におけるゲインおよび位相特性を調整する。利得調整部910の出力は、後述する出力補正部911により補正され、平行振れの補正目標値とされて加算部912で合成され、前述した角度振れの補正目標値と加算される。
また、上記処理と並行して、角速度計108の出力はHPF位相調整部904に入力される。HPF位相調整部904を構成するHPFは角速度検出信号のDC成分をカットし、その後に信号の位相調整が行われる。HPF位相調整部904の出力は角速度BPF(バンドパスフィルタ)部906で所定帯域の周波数成分のみ抽出される。
推定器905の出力(推定平行速度)は平行速度BPF部907に送られて、所定帯域の周波数成分のみ抽出される。角速度BPF部906及び平行速度BPF部907の各出力は比較部908に入力され、利得調整部910の出力を補正する補正量(補正係数)が算出される。比較部908が行う補正係数演算については後述する。
出力補正部911にはズームおよびフォーカスの位置情報902も入力され、当該情報より撮影倍率を演算する。求めた撮影倍率及び比較部908からの補正量に基づいて利得調整部910の出力が補正されて、平行振れの補正目標値が算出される。平行振れの補正目標値は、加算部912で角度振れの補正目標値と加算される。加算結果は駆動部110に出力され、これにより、振れ補正部111が駆動され、角度振れと平行振れの両者について画像ブレが補正されることになる。
【0024】
次に、比較部908が算出する補正量について説明する。
図10は撮像装置に加わる角度振れ103pと平行振れ104pを示し、側面から見た場合の模式図である。撮像装置101の撮像光学系の主点位置における平行振れ104pの大きさをYと記す。また角度振れ103pの大きさをθと記し、回転中心O(1301p参照)を定めた場合の回転半径をL(1302p参照)と記す。これらの関係は、以下の(9)および(10)式で表される。
【数11】
Vは速度を表し、ωは角速度を表す。尚、回転半径L(1302p参照)は、回転中心1301pから振れ補正部111までの距離である。
(9)式によれば、推定器905が出力した推定平行速度を1階積分して変位Yを求め、角速度計108pの出力を1階積分して角度θを求めて、両者の比の値から回転半径Lが求まる。また(10)式によれば、推定器905が出力した推定平行速度を速度Vとし、角速度計108pの出力を角速度ωとして、両者の比の値から回転半径Lが求まる。いずれの方法でも回転半径Lを求めることができる。
【0025】
回転半径Lの算出では、所定時間内の速度Vと角速度ωそれぞれの最大振幅のピーク値を求めて、それらの比からL値を算出してもよい。所定時間とは、例えば、角速度BPF部906及び平行速度BPF部907のカットオフ周波数が5Hzの場合、200ms程度の時間である。更に、回転半径Lの更新については、速度Vと角速度ωがそれぞれ算出された瞬間毎に行ってもよい。その際には、速度Vと角速度ωをそれぞれ時系列的に平均化し、あるいはLPF(ローパスフィルタ)で高周波成分をカットすることで、回転半径を算出する際の高周波ノイズ成分を除去できる。
【0026】
撮像光学系の主点位置における平行振れの変位Yと、振れ角度θ、及び撮像光学系の焦点距離fと撮影倍率βより、撮像面に生ずるブレ量δは下式(11)で求められる。
【数12】
(11)式の右辺第1項のfは、撮像光学系のズームおよびフォーカスの位置情報902により求まる。また撮影倍率βは、実際の被写体の大きさに対する、撮像素子107上に結像された被写体像の大きさの倍率を表すものであり、これも撮影光学系のズームおよびフォーカスの位置情報902より求まる。更に、振れ角度θは角速度計108pの出力の積分結果より求まる。よってこれらの情報から図6で説明したように角度振れ補正目標値を求めることができる。
また、(11)式の右辺第2項に関しては、推定器905が出力した推定平行速度の1階積分と、ズームおよびフォーカスの位置情報902から得られる撮影倍率βにより求まる。よって、図6で説明したように平行振れ補正目標値を求めることができる。
しかし、本実施形態においては式(11)を、以下の式(12)のように書き直したブレ量δに対して画像ブレ補正を行う。
【数13】
即ち、平行振れに関しては、推定器905が出力した推定平行速度より直接的に求まる平行振れの変位Yを用いてはいない。式(9)または式(10)から求まる回転半径Lを算定し、このL値と、角速度計108pの出力の積分結果(θ)と、撮影倍率βを乗算して補正値を算出している。図6の比較部908が補正係数演算で求めて出力補正部911に出力する補正量(β、L)は、θに対する補正係数である。
【0027】
次に、図11を参照して防振制御の全体的な動作について説明する。図11に示すフローチャートは、撮像装置の主電源のオン動作で開始し、CPU106が解釈して実行するプログラムに従って一定のサンプリング周期ごとに実行される。
まず、S1401では、ユーザによって不図示の防振スイッチ(SW)が操作されたか否かが判定される。防振SWがON状態であればS1402へ進み、OFF状態であればS1413へ処理を進める。S1402でCPU106は角速度計108の検出信号を取り込む。次のS1403でCPU106は、振れ補正が可能な状態であるか否かを判定し、振れ補正が可能な状態である場合、S1404へ進み、振れ補正が可能な状態でない場合、S1413へ処理を進める。S1403にて、電源供給時点から角速度計108の出力が安定するまでの間は振れ補正が可能な状態でないと判定される。角速度計108の出力が安定した後で振れ補正が可能な状態であると判定される。これにより、電源供給の直後での出力値が不安定な状態では、防振性能が低下しないように防止できる。
【0028】
S1404では、図6を用いて説明した方法で角度が算出される。この角度は図6のHPF積分フィルタ901の出力値となる。次のS1405は、ズームポジションが変化したか否かについての判定処理である。ズームポジションが前回から変化した場合、S1406へ進み、変化していない場合、S1407に進む。
S1406ではズームポジションに応じて振れ補正範囲(図8参照)が変更された後、S1407に進む。S1407では、S1404で求めた角度演算結果と、ズームおよびフォーカスの位置情報902から求めた焦点距離や撮影倍率を用いて、前記のように角度振れ補正量が算出される。この角度振れ補正量は図7の敏感度調整部903の出力値となる。次にS1408では前述したように推定平行速度が演算され(図5〜7参照)、S1409ではズーム位置から平行振れゲインの演算が行われる(図9参照)。次のステップ1410では、S1409で求めた平行振れゲインが、S1408で求めた平行速度に乗算される。さらに図10を用いて説明した方法で回転半径が算出される。求めた回転半径と角度とズームおよびフォーカスの位置情報902から求めた焦点距離や撮影倍率により、平行振れ補正量が演算され、S1411に進む。算出された平行振れ補正量は図7の出力補正部911の出力値となる。振れ補正量が合成され、加算部912は角度振れ補正量と平行振れ補正量を加算する。S1412にて駆動部110は振れ補正量に基づいて振れ補正部111を駆動し、振れ補正のサブルーチンを終了する。そして、次回のサンプリング時点までの間、待ち処理となる。
一方、S1401やS1403からS1413に進んだ場合、振れ補正部111の駆動を停止し、振れ補正のサブルーチンが終了する。そして、次回のサンプリング時点までの間、待ち処理となる。
【0029】
以上のように第1実施形態では、振れ補正機構の被駆動部と固定部との相対変位を状態変数とし、振れ補正部への駆動推力を入力変数として、オブザーバ手段を用いて、被駆動部の絶対速度、および被駆動部と固定部との相対変位が推定される。そして推定平行速度が算出されて、平行振れ補正量が得られる。上述のように振れ補正機構とその駆動手段を利用できるので、加速度計等を新たに設ける必要がない。したがって、構成部品を増やすことなく、コンパクト化と低コスト化が実現でき、角度振れの補正と平行振れの補正を同時に行える。
振れ補正範囲が大きくなると、振れ補正部が可動中心から離れて線形特性でない領域で平行振れの推定処理が行われる場合がある。また、焦点距離の違いで角度振れ補正量が変化することにより、電流−推力変換に誤差が大きい場合、角度振れ補正量の大きいときの方が、推定平行速度も誤差が大きくなるおそれがある。そこで前述した通り、焦点距離が長くなる条件下では、焦点距離が短い場合よりも平行振れゲインを小さく設定する。なお、焦点距離によって振れ補正範囲を変更する場合は、振れ補正範囲が狭い場合よりも振れ補正範囲が広い場合の方が平行振れゲインを小さく設定する。すなわち、振れ補正範囲が広いことにより生じる平行振れ推定誤差の影響を受け難くするため、推定平行速度を意図的に小さくする設定がなされている。これにより、焦点距離が長い場合や、振れ補正範囲が広い場合に、平行振れ補正の誤作動による平行振れ補正の過補正を防止できる。
【0030】
上記の通り、焦点距離や振れ補正部の可動範囲(補正範囲)が変化しても、平行振れ補正の過補正による防振性能の低下を防止でき、平行振れ補正の防振性能が向上する。
なお、本実施形態では、振れ補正手段としての補正レンズを光軸に垂直な面内で移動させる、いわゆる光学防振を説明した。しかし、光学防振に限らず、以下の構成を用いても構わない。
・撮像素子を光軸に垂直な面内で移動させることで振れ補正を行う構成。
・撮像素子が出力する各撮影フレームの画像の切り出し位置を変更することで振れの影響を軽減させる電子防振による構成。
・複数の防振制御を組み合わせて振れ補正を行う構成。
また、平行振れの推定に関しても、各種の構成が可能である。例えば、撮像素子を光軸に垂直な面内で移動させることで防振を行う振れ補正機構を用いた場合において、振れ補正機構の被駆動部と固定部との相対変位を観測できれば、オブザーバ手段によって推定平行速度を算出できる。つまり、振れ補正機構の被駆動部と固定部との相対変位を状態変数とし、振れ補正機構への駆動推力を入力変数としてオブザーバ手段を構成すれば、上記と同様の方法でカメラ本体部の絶対速度が検出可能である。
【0031】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態を説明する。
図12は第2実施形態に係る推定器の内部構成例を示すブロック図である。なお、第1実施形態の場合と同様の構成要素については既に使用した符号を用いることでそれらの詳細な説明を省略し、第1実施形態との相違点を主として説明する。
図6と図12の違いは以下の通りである。
(1)撮影モード情報1501と振れ補正モード情報1502が平行振れゲイン演算部1503に入力されること。
(2)平行振れゲイン演算部1503は、撮影モード情報1501、振れ補正モード情報1502、ズーム情報902に基づいて平行振れゲインを演算すること。
撮影モード情報1501は、静止画撮影モードであるか、または動画撮影モードであるかに応じて設定される情報である。また、振れ補正モード情報1502は、以下に示す振れ補正モード1または2に応じて設定される情報であり、各モードの選択時には動画撮影時の振れ補正範囲が異なる。
・振れ補正モード1= 動画撮影時でも振れ補正範囲は静止画撮影の場合とそれ程変わらないが、防振安定性を重視して、パンニング動作直後の撮影でも安定した防振性能が得られるモード。
・振れ補正モード2= 動画撮影時に振れ補正範囲を広げて歩行時などの大きな揺れに対して防振性能を向上させるモード。
【0032】
図13は、焦点距離が最も短いズーム位置(Wide撮影時)での振れ補正範囲である。図14は、撮影モード(静止画撮影、動画撮影)および振れ補正範囲と、ゲイン係数(または平行振れ補正量)の関係を、3種類のグラフで例示した図である。
静止画撮影モードのときの振れ補正範囲1601が最も狭い範囲であり、振れ補正モード1のときの振れ補正範囲1602は、振れ補正範囲1601よりも広い。振れ補正モード2のときの振れ補正範囲1603は、振れ補正範囲1602よりも広い。つまり、振れ補正範囲の大きさは、「静止画撮影モード < 動画撮影時の振れ補正モード1 < 動画撮影時の振れ補正モード2」の関係を満たすように設定されている。
振れ補正範囲が広い場合、可動中心から離れて機構部が線形特性でない領域で平行振れの推定が行われる場合がある。そこで、図14に例示するグラフのように、ズーム位置と撮影モード、振れ補正モードに応じて振れ補正ゲイン算出用の参照テーブルを変更してゲイン係数の演算が行われる。図14の横軸はズーム位置を示し、縦軸は平行振れゲインを示す。実線で示すグラフ線1701は静止画撮影モードでの設定を示し、点P1でのゲイン値が1である。また点線で示すグラフ線1702は動画撮影時の振れ補正モード1での設定を示し、点P2でのゲイン値が1未満である。1点鎖線で示すグラフ線1703は動画撮影時の振れ補正モード2での設定を示し、点P3でのゲイン値は点P2でのゲイン値よりも小さい。いずれも、焦点距離の長い点Qではゲイン値が最小である。線分P1Q、P2Q、P3Qは負勾配、つまり右下がりであり、勾配の大きさはこの順に小さくなる。
撮影モードが動画撮影の場合、振れ補正モード1では、静止画撮影モード時よりも振れ補正範囲が広い。よって、グラフ線1702に示すように、静止画撮影時のグラフ線1701よりもゲインが小さく設定された参照テーブルを使用する。この結果、静止画撮影時よりも平行振れ補正量が小さくなる。また、振れ補正モード2では、静止画撮影モードや振れ補正モード1の場合に比べてさらに振れ補正範囲が大きい。このため、グラフ線1703に示すように、他のグラフ線1701、1702よりもさらにゲイン係数が小さく設定された参照テーブルを用いる。この結果、他のモードよりも平行振れ補正量が小さくなる。なお、振れ補正範囲を所定値(閾値)と比較し、振れ補正範囲が所定値以下の場合に比べて振れ補正範囲が所定値よりも大きい場合の方が、同じ平行振れに対して平行振れ補正量が小さくなるように演算を行う構成でもよい。
【0033】
第2実施形態では、振れ補正範囲が広くなる条件下にて、振れ補正範囲が狭い場合よりも平行振れゲインを小さく設定される。すなわち、振れ補正範囲が広いことにより生じる平行振れ推定誤差の影響を受け難くするため、推定平行速度を意図的に小さく設定している。これにより、振れ補正範囲が広い場合の平行振れ補正の過補正を防止できる。ズーム位置や、撮影モードまたは振れ補正モードに応じて振れ補正部の補正範囲が変化した場合でも、平行振れ補正の過補正による防振性能の低下を防止できるので、平行振れ補正の防振性能が向上する。
【符号の説明】
【0034】
101 撮像装置
106A 角度振れ補正量算出部(第1の補正量算出部)
106B 平行振れ補正量算出部(第2の補正量算出部)
107 撮像素子
108 角速度計
905 推定器
1001 カルマンフィルタ
1006 平行振れ可変ゲイン部
1007 平行振れゲイン演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、
振れ補正手段と、
前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、
前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備え、
前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離が長くなると前記補正量が小さくなるように演算することを特徴とする防振制御装置。
【請求項2】
撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、
振れ補正手段と、
前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、
前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備え、
前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離が所定値より長い場合に、前記焦点距離が前記所定値より短い場合に比べて前記補正量が小さくなるように演算することを特徴とする防振制御装置。
【請求項3】
撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、
振れ補正手段と、
前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、
前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備え、
前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離から前記振れ補正手段の補正範囲を算出し、前記補正範囲が広くなると前記平行振れの補正量が小さくなるように演算することを特徴とする防振制御装置。
【請求項4】
撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、
振れ補正手段と、
前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、
前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備え、
前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離から前記振れ補正手段の補正範囲を算出し、前記補正範囲が所定値より大きい場合に、前記補正範囲が所定値より小さい場合に比べて前記補正量が小さくなるように演算することを特徴とする防振制御装置。
【請求項5】
撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、
振れ補正手段と、
前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、
前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備え、
前記補正量算出手段は、
前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離が長くなると前記補正量が小さくなるように演算し、
かつ、前記撮像光学系の焦点距離から前記振れ補正手段の補正範囲を算出し、前記補正範囲が広くなると前記補正量が小さくなるように演算する
ことを特徴とする防振制御装置。
【請求項6】
前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に乗算するゲイン係数を小さくして前記平行振れの補正量を演算することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の防振制御装置。
【請求項7】
前記撮像光学系の光軸に対して直交する軸を中心とする装置の回転に伴って生じる角度振れを検出する角度振れ検出手段を備え、
前記補正量算出手段は、
前記角度振れ検出手段による検出信号を用いて前記角度振れの補正量を算出する第1の補正量算出手段と、
前記振れ補正手段の前記被駆動部と該被駆動部を支持する固定部との相対変位を状態変数とし、前記振れ補正手段への駆動推力を入力変数として、前記オブザーバ手段を用いて前記平行振れの補正量を算出する第2の補正量算出手段を有することを特徴とする請求項請求項1ないし6の何れか1項に記載の防振制御装置。
【請求項8】
前記オブザーバ手段はカルマンフィルタを用いた推定器であり、
前記オブザーバ手段の出力に対してゲイン係数を乗算する可変ゲイン手段と、
前記撮像光学系の焦点距離の情報を取得して前記ゲイン係数を演算し、前記可変ゲイン手段に設定するゲイン演算手段を備えることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項記載の防振制御装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか1項に記載の防振制御装置と、
前記撮像光学系を備えたことを特徴とする光学機器。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れか1項に記載の防振制御装置と、
前記撮像光学系を通して被写体を撮像する撮像素子を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
前記撮像装置は、前記撮像素子により静止画または動画の撮影を行うことが可能であり、
前記補正量算出手段は、前記静止画を撮影する場合よりも、前記動画を撮影する場合の方が、前記補正量が小さくなるように演算することを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記撮像装置は、前記動画を撮影する場合において、前記振れ補正手段の補正範囲が異なる複数の振れ補正モードの選択が可能であり、
前記補正量算出手段は、前記補正範囲が広くなると前記補正量が小さくなるように演算することを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを検出し、振れ補正手段を駆動して像ブレを補正する防振制御方法であって、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として、前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段を用いて前記平行振れを推定するステップと、
前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離が長くなると前記補正量が小さくなるように演算するステップを有することを特徴とする防振制御方法。
【請求項14】
撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを検出し、振れ補正手段を駆動して像ブレを補正する防振制御方法であって、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として、前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段を用いて前記平行振れを推定するステップと、
前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離から前記振れ補正手段の補正範囲を算出し、前記補正範囲が広くなると前記補正量が小さくなるように演算するステップを有することを特徴とする防振制御方法。
【請求項1】
撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、
振れ補正手段と、
前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、
前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備え、
前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離が長くなると前記補正量が小さくなるように演算することを特徴とする防振制御装置。
【請求項2】
撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、
振れ補正手段と、
前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、
前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備え、
前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離が所定値より長い場合に、前記焦点距離が前記所定値より短い場合に比べて前記補正量が小さくなるように演算することを特徴とする防振制御装置。
【請求項3】
撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、
振れ補正手段と、
前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、
前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備え、
前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離から前記振れ補正手段の補正範囲を算出し、前記補正範囲が広くなると前記平行振れの補正量が小さくなるように演算することを特徴とする防振制御装置。
【請求項4】
撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、
振れ補正手段と、
前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、
前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備え、
前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離から前記振れ補正手段の補正範囲を算出し、前記補正範囲が所定値より大きい場合に、前記補正範囲が所定値より小さい場合に比べて前記補正量が小さくなるように演算することを特徴とする防振制御装置。
【請求項5】
撮像光学系を有する装置に加わる振れを検出して像ブレを補正する防振制御装置であって、
振れ補正手段と、
前記撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを含む装置の振れ量から補正量を算出する補正量算出手段と、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として前記平行振れを推定するために前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段と、
前記補正量に基づいて前記振れ補正手段を駆動する駆動手段を備え、
前記補正量算出手段は、
前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離が長くなると前記補正量が小さくなるように演算し、
かつ、前記撮像光学系の焦点距離から前記振れ補正手段の補正範囲を算出し、前記補正範囲が広くなると前記補正量が小さくなるように演算する
ことを特徴とする防振制御装置。
【請求項6】
前記補正量算出手段は、前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に乗算するゲイン係数を小さくして前記平行振れの補正量を演算することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の防振制御装置。
【請求項7】
前記撮像光学系の光軸に対して直交する軸を中心とする装置の回転に伴って生じる角度振れを検出する角度振れ検出手段を備え、
前記補正量算出手段は、
前記角度振れ検出手段による検出信号を用いて前記角度振れの補正量を算出する第1の補正量算出手段と、
前記振れ補正手段の前記被駆動部と該被駆動部を支持する固定部との相対変位を状態変数とし、前記振れ補正手段への駆動推力を入力変数として、前記オブザーバ手段を用いて前記平行振れの補正量を算出する第2の補正量算出手段を有することを特徴とする請求項請求項1ないし6の何れか1項に記載の防振制御装置。
【請求項8】
前記オブザーバ手段はカルマンフィルタを用いた推定器であり、
前記オブザーバ手段の出力に対してゲイン係数を乗算する可変ゲイン手段と、
前記撮像光学系の焦点距離の情報を取得して前記ゲイン係数を演算し、前記可変ゲイン手段に設定するゲイン演算手段を備えることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項記載の防振制御装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか1項に記載の防振制御装置と、
前記撮像光学系を備えたことを特徴とする光学機器。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れか1項に記載の防振制御装置と、
前記撮像光学系を通して被写体を撮像する撮像素子を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
前記撮像装置は、前記撮像素子により静止画または動画の撮影を行うことが可能であり、
前記補正量算出手段は、前記静止画を撮影する場合よりも、前記動画を撮影する場合の方が、前記補正量が小さくなるように演算することを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記撮像装置は、前記動画を撮影する場合において、前記振れ補正手段の補正範囲が異なる複数の振れ補正モードの選択が可能であり、
前記補正量算出手段は、前記補正範囲が広くなると前記補正量が小さくなるように演算することを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを検出し、振れ補正手段を駆動して像ブレを補正する防振制御方法であって、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として、前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段を用いて前記平行振れを推定するステップと、
前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離が長くなると前記補正量が小さくなるように演算するステップを有することを特徴とする防振制御方法。
【請求項14】
撮像光学系の光軸に対して直交する方向に沿う装置の並進に伴って生じる平行振れを検出し、振れ補正手段を駆動して像ブレを補正する防振制御方法であって、
前記振れ補正手段を構成する被駆動部への駆動指示信号および前記被駆動部の位置検出信号を入力として、前記振れ補正手段の振動モデルから構成されるオブザーバ手段を用いて前記平行振れを推定するステップと、
前記オブザーバ手段から得られる前記平行振れの推定量に基づいて前記平行振れの補正量を算出する際、前記撮像光学系の焦点距離から前記振れ補正手段の補正範囲を算出し、前記補正範囲が広くなると前記補正量が小さくなるように演算するステップを有することを特徴とする防振制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−15639(P2013−15639A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147528(P2011−147528)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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