説明

防水コネクタ

【課題】両コネクタハウジングの嵌合操作力を低減させると共に、コネクタハウジング同士が円滑に嵌合できるようにする。
【解決手段】フード部55を有する機器側コネクタハウジング52と、フード部55内に嵌合可能な一対の円筒嵌合部24及びインターロック嵌合部25を有する電線側コネクタハウジング22とを備えた防水コネクタであって、両円筒嵌合部24及びインターロック嵌合部25の外周面には、フード部55の内周面と両円筒嵌合部24及びインターロック嵌合部25の外周面との間をシールするゴムリング33が一括して嵌着されており、フード部55の内周面には、ゴムリング33と全周に亘って密着するシール面55Aが設けられており、フード部55の内周面のうちシール面55Aよりも開口部側の面には空気逃がし溝66が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ワイヤハーネス同士の接続等に用いられる防水コネクタとして、特許文献1に記載のものが知られている。この防水コネクタは、フード部を有する第一コネクタハウジングと、第一コネクタハウジングのフード部内に嵌合される嵌合部を有する第二コネクタハウジングとを備えて構成されている。
【0003】
第二コネクタハウジングの嵌合部にはゴムリングが嵌着されている。このゴムリングは、第一コネクタハウジングと第二コネクタハウジングとを嵌合させた際に、フード部の内周面と嵌合部の外周面とに全周に亘って密着して、フード部と嵌合部との間から水などが浸入しないようにしている。また、通常、各コネクタハウジングから引き出される電線にはゴム栓が嵌着されている。このゴム栓は、電線の外周面と各コネクタハウジングの内周面とに密着することで、電線と各コネクタハウジングとの間から水などが浸入しないようにしている。これにより、防水コネクタは、内部が密閉された状態となり、外部から水などが浸入しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−293554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような防水コネクタは、フード部内に嵌合部を嵌合させると、嵌合部のゴムリングがフード部の開口部における内周面に密着して防水コネクタの内部が密閉された状態となり、フード部内に嵌合部を挿入しようとすると防水コネクタ内の空気が圧縮されるので、第一コネクタハウジングと第二コネクタハウジングとの嵌合操作力が上昇する。また、フード部の内周面にゴムリングが全周に亘って密着した状態で、フード部の開口部からフード部の奥部までゴムリングが挿入されるようになっているので、嵌合操作力がより上昇する。かといって、フード部の間口を大きくしてフード部の奥部に向かうほど内部が狭くなるように構成すると嵌合途中までゴムリングがフード部に非接触となるので防水コネクタの内圧の上昇を軽減することはできるものの、第二コネクタハウジングが正規の姿勢に対して傾いた姿勢となり、ガタつきが発生する。その結果、第一コネクタハウジングと第二コネクタハウジングとを円滑に嵌合させることができなくなってしまう。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、両コネクタハウジングの嵌合操作力を低減させると共に、コネクタハウジング同士が円滑に嵌合できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、フード部を有する第一コネクタハウジングと、前記フード部内に嵌合可能な嵌合部を有する第二コネクタハウジングとを備えた防水コネクタであって、前記嵌合部には、前記フード部の内周面と前記嵌合部の外周面とに密着した状態で前記フード部の開口部から前記フード部の奥部まで挿入されるゴムリングが嵌着されており、前記フード部の内周面には、前記第一及び第二コネクタハウジングが正規に嵌合した際に、前記ゴムリングと全周に亘って密着するシール面が設けられており、前記フード部の内周面のうち前記シール面よりも開口部側の面には前記フード部内の空気を外部へ逃がす空気逃がし部が形成されているところに特徴を有する。
このような構成の防水コネクタによると、第一及び第二コネクタハウジングを嵌合させる際に、フード部内の空気が空気逃がし部によって外部に排出されるので、防水コネクタの圧力上昇を軽減することができる。これにより、第一コネクタハウジングと第二コネクタハウジングとの嵌合操作力を低減させることができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記空気逃がし部は、前記シール面から前記フード部の開口部まで延びて前記フード部の内部空間に向かって開口する溝状に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、空気逃がし部が形成された部分は、ゴムリングと密着しないので、嵌合操作力をより低減させることができる。
【0009】
前記空気逃がし部は、前記フード部の内周面に複数形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、空気逃がし部が複数形成されているので、より効率よくフード部内の空気を外部に排出することができ、嵌合操作力を更に低減させることができる。
【0010】
前記フード部の内周面における前記空気逃がし部同士の間には、前記シール面からフード部の開口部まで延びて前記ゴムリングと密着可能なリブ状のゴムリング干渉部が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、第一及び第二コネクタハウジングを嵌合させる際に、互いのコネクタハウジングを正規の嵌合姿勢に保持することができると共に、フード部とゴムリングとの接触抵抗を軽減させることができる。これにより、互いのコネクタハウジングの嵌合操作力を極力低減させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、両コネクタハウジングの嵌合操作力を低減させると共に、コネクタハウジング同士が円滑に嵌合できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る電線側コネクタの分解斜視図
【図2】実施形態に係る機器側コネクタの分解斜視図
【図3】実施形態に係るシールドシェルの斜視図
【図4】実施形態に係る電線側コネクタの斜視図
【図5】実施形態に係る機器側コネクタハウジングの斜視図
【図6】実施形態に係る電線側コネクタと機器側コネクタとの嵌合前の状態を上方から見た断面図
【図7】図6の電線側コネクタと機器側コネクタとが半嵌合した状態に相当する断面図
【図8】図6の電線側コネクタと機器側コネクタとが正規嵌合した状態に相当する断面図
【図9】実施形態に係る電線側コネクタと機器側コネクタとの嵌合前の状態を側方からみた断面図
【図10】図9の電線側コネクタと機器側コネクタとが半嵌合した状態に相当する断面図
【図11】図9の電線側コネクタと機器側コネクタとが正規嵌合した状態に相当する断面図
【図12】実施形態に係る機器側コネクタハウジングの断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の一実施形態について図1乃至図12を参照しながら説明する。
本実施形態では、シールド電線(本発明の「電線」に相当する)Wの末端に接続された電線側コネクタ20と、電線側コネクタ20と嵌合可能であって機器のケースCに固定される機器側コネクタ50とを備えたシールドコネクタを例示している。
【0014】
電線側コネクタ20は、図1及び図6に示すように、二本のシールド電線Wの端末に接続された雌型端子金具21と、雌型端子金具21が収容される合成樹脂製の電線側コネクタハウジング(本発明の「第二コネクタハウジング」に相当する)22と、電線側コネクタハウジング22を覆うシールドシェル23とを備えて構成されている。
【0015】
雌型端子金具21は、前後方向に延びる円筒状をなす円筒接続部21Aと、円筒接続部21Aの後方に設けられたバレル21Bを備えて構成されている。バレル21Bは、シールド電線Wにかしめ圧着されることで、雌型端子金具21とシールド電線Wとを電気的に接続している。また、シールド電線Wには、ゴム栓Gが装着されている。
【0016】
電線側コネクタハウジング22は、前後方向に延びる略円筒状をなす一対の円筒嵌合部24と、前後方向に延びる角筒状のインターロック嵌合部25とを備えて構成されている。尚、一対の円筒嵌合部24及びインターロック嵌合部25が本発明の「嵌合部」に相当する。
【0017】
両円筒嵌合部24はインターロック嵌合部25を両側から挟みこむように横並び状態で一体に形成されている。詳しくは、両円筒嵌合部24における前後方向略中央部よりも後方に位置する後方部分は、両円筒嵌合部24の間に設けられた連結部26と共に一体に形成されている。また、両円筒嵌合部24における前後方向略中央部よりも前方部分は、インターロック嵌合部25を横方向両側から挟み込むようにしてインターロック嵌合部25と一体に形成されている。また、両円筒嵌合部24とインターロック嵌合部25との間には、スリット22Aが形成されている。インターロック嵌合部25は、前方に向かって開口しており、内部に短絡端子25Aが装着されている。
【0018】
円筒嵌合部24の内部には、前後方向に延びるキャビティ27が形成されている。このキャビティ27には、雌型端子金具21が収容可能とされている。また、キャビティ27は、雌型端子金具21が後方から収容された際に、シールド電線Wに装着されたゴム栓Gがキャビティ27の内周面に密着することで、後方から水などが浸入しないように防水されている。ゴム栓Gの後方には、ゴム栓押さえ28がシールド電線Wに外嵌され、両円筒嵌合部24に装着されることで、円筒嵌合部24の後端部からゴム栓Gが脱落することを防止している。
【0019】
また、両円筒嵌合部24には、図6に示すように、キャビティ27内の内壁のうち、インターロック嵌合部25側の内壁に、ランス29が形成されている。このランス29は、キャビティ27内に収容された雌型端子金具21の円筒接続部21Aの後端を係止することで、キャビティ27内に雌型端子金具21を後方に抜け止めした状態に保持している。
【0020】
電線側コネクタハウジング22の前後方向略中央部には、図1及び図9に示すように、全周に亘って周方向に張り出すフランジ部30が形成されている。このフランジ部30の後端面には、後方に向かって延びる一対の弾性係止片31が連結部26と対向して形成されている。両弾性係止片31は、撓み変形可能に形成されており、その中央部には係止孔31Aが設けられている。
【0021】
また、電線側コネクタハウジング22のフランジ部30よりも前方には、図6及び図9に示すように、両円筒嵌合部24とインターロック嵌合部25とに亘って設けられたゴムリング収容溝32が形成されている。このゴムリング収容溝32には、複数条(本発明では二条)の外周リップ33Aを有するゴムリング33が嵌着されている。
【0022】
シールドシェル23はアルミダイキャスト製であって、図1及び図3に示すように、前後方向に延びて横方向に横長な長円筒形をなしている。また、シールドシェル23は前後両端に開口しており、前端開口から電線側コネクタハウジング22を収容可能に形成されている。
【0023】
シールドシェル23の内周面における長辺側の面には、図3及び図9に示すように、その横方向中央部に係止突起36がそれぞれ設けられている。この係止突起36は、図6に示すように、電線側コネクタハウジング22がシールドシェル23内に正規の位置まで収容された状態において、弾性係止片31の係止孔31Aに収容され、弾性係止片31と係止することで、シールドシェル23内に電線側コネクタハウジング22を保持している。
【0024】
また、電線側コネクタハウジング22とシールドシェル23とが正規嵌合した状態では、図6及び図9に示すように、両円筒嵌合部24及びインターロック嵌合部25におけるゴムリング33及びゴムリング33よりも前方側の部分がシールドシェル23の前端開口部から突出した状態となっている。
【0025】
シールドシェル23の前端開口における一方の長辺側の開口縁部には、径方向に延出した固定部34が形成されている。この固定部34には、前後方向に貫通するボルト挿通孔34Aが設けられている。ボルト挿通孔34Aには、図9に示すように、締結ボルトVが挿通され、締結ボルトVはCリング35によって固定部34に抜け止めされている。この締結ボルトVは、図7及び図10に示すように、電線側コネクタ20と機器のケースCに固定された機器側コネクタ20とを浅く嵌合させた後、ケースCに設けられたボルト締結孔C2に締め付けることで、両コネクタ20,50を正規嵌合させる。
【0026】
また、両コネクタ20,50が正規嵌合されると、図8及び図11に示すように、固定部34の前端面を含むシールドシェル23の前端開口縁部がケースCに密着し、ケースCとシールドシェル23とが導通可能に接続されるようになっている。
【0027】
一方、機器側コネクタ50は、図2及び図6に示すように、雄型端子金具51を合成樹脂によってモールドした機器側コネクタハウジング(本発明の「第一コネクタハウジング」に相当する)52と、機器側コネクタハウジング52の外周面に外嵌された第一及び第二ゴムリング53,54とから構成されている。
【0028】
機器側コネクタハウジング52は、図2及び図5に示すように、電線側コネクタハウジング22の両円筒嵌合部24及びインターロック嵌合部25を内部に収容可能なフード部55と、フード部55の後方に設けられた端子保持部56とを備えて構成されている。
【0029】
また、機器側コネクタハウジング52におけるフード部55の前後方向略中央部よりも後方部分は、機器のケースCに設けられた取付孔C1に嵌合可能な機器側嵌合部57とされている。機器側嵌合部57の外周面には、第一ゴムリング53が収容された第一ゴムリング収容溝58が全周に亘って設けられている。第一ゴムリング53は、機器側嵌合部57がケースCの取付孔C1に嵌合された際に、ケースCの取付孔C1の内周壁に全周に亘って密着し、外部からケースC内に水などが浸入しないように防水している。
【0030】
フード部55の内部には、図8及び図11に示すように、電線側コネクタハウジング22と機器側コネクタハウジング52とが嵌合した際に、両円筒嵌合部24及びインターロック嵌合部25におけるフランジ部30よりも前方部分が収容され、フード部55の開口部における内周面と両円筒嵌合部24及びインターロック嵌合部25の基端部における外周面とが密着するようになっている。
【0031】
また、フード部55は、図5及び図6に示すように、その外周形状が横長な長円形状をなし、前後方向に延びた形態をなしている。また、フード部55の前後方向略中央部より前方部分は、電線側コネクタ20のシールドシェル23の内部に嵌合可能に形成されている。また、フード部55の奥部における内周面は、電線側コネクタ20と機器側コネクタ50とが正規に嵌合した際に、電線側コネクタハウジング22のゴムリング33が全周に亘って密着するシール面55Aとされている。
【0032】
フード部55の前端部における外周面には、第二ゴムリング54が収容された第二ゴムリング収容溝60が全周に亘って設けられている。第二ゴムリング54は、電線側コネクタ20と機器側コネクタ50とを嵌合させた際、シールドシェル23の内周面に全周に亘って密着し、フード部55とシールドシェル23との間から水などが浸入しないように防水している。
【0033】
フード部55の前後方向略中央部における横方向の一端側には、径方向に張り出す固定片59が形成されている。固定片59には、固定ボルトV1が挿通可能な金属製のカラー59Aが組み付けられている。機器側コネクタハウジング52は、図6に示すように、機器側嵌合部57をケースCの取付孔C1に嵌合させた後、固定ボルトV1を前方からカラー59Aに挿通させ、機器のケースCに設けられたボルト固定孔C3に締め付けることでケースCに固定されている。
【0034】
端子保持部56には、内部に二本の雄型端子金具51が横並びに収容されている。雄型端子金具51は、図6に示すように、略円錐状をなす端子本体部61と、端子本体部61の前端から前方に向かって延びるピン状接続部62と、ピン状接続部62の前端部を合成樹脂によってモールドした絶縁頭部62Aとから構成されている。ピン状接続部62は、フード部55の奥壁から前方に向かって突出してフード部55の前後方向略中央部まで延びた状態となっている。絶縁頭部62Aは、電線側コネクタ20と機器側コネクタ50とが離脱した状態で、作業者などの指がフード部55内に挿入された際に、指がピン状接続部62に直接触れないように規制している。また、絶縁頭部62A及びピン状接続部62は、電線側コネクタ20の雌型端子金具21における円筒接続部21Aの内部に挿入可能に形成されており、電線側コネクタ20と機器側コネクタ50とが正規に嵌合した際に、図8に示すように、ピン状接続部62が円筒接続部21A内に収容され、電気的に接続されるようになっている。
【0035】
また、端子保持部56における両雄型端子金具51の間には、図6に示すように、嵌合検知端子63Aが装着されたインターロックコネクタ63が後方から装着されており、バックリテーナ68によって抜け止めされている。嵌合検知端子63Aは、図8に示すように、電線側コネクタ20と機器側コネクタ50とが正規に嵌合した際に、インターロック嵌合部25の短絡端子25Aと導通可能に接続され、両コネクタ20,50が正規嵌合したことを検知できるようになっている。
【0036】
また、端子保持部56の前端面(フード部55の奥壁)には、図6及び図8に示すように、フード部55の内部空間に向かって延びる一対の案内板64が形成されている。両案内板64は、雄型端子金具51とインターロックコネクタ63との間に配されており、雄型端子金具51の前端部よりもやや前方まで延びた形態とされている。両案内板64は、電線側コネクタ20と機器側コネクタ50とが嵌合される際に、電線側コネクタハウジング22のスリット22Aに収容され、両コネクタ20,50を所定の位置に案内するようになっている。
【0037】
さて、フード部55の内周面におけるシール面55Aよりも前方部分には、図6及び図12に示すように、前後方向に直線的に延びる複数のゴムリング干渉部65が形成されている。このゴムリング干渉部65は、フード部55の内周面からフード部55の内側に向かって突出したリブ状に形成されている。また、ゴムリング干渉部65の突出端は、丸みを帯びた形態であって、フード部55のシール面55Aの高さと同じに設定されている。
【0038】
また、ゴムリング干渉部65は、フード部55の内周面における長辺側の両面に等間隔で各3本形成され、フード部55の内周面における横方向両側の曲面に等間隔で各5本形成されている。すなわち、ゴムリング干渉部65同士の間に位置する面同士を周方向に繋いだ形状は、図12に示すように、ゴムリング干渉部65の突出端を周方向に繋いだ形状よりも一回り大きくなっている。さらに、フード部55のシール面55Aよりも前方部分におけるゴムリング干渉部65以外の内周面は、図5に示すように、シール面55Aよりも周方向に拡幅された空気逃がし溝(本発明の「空気逃がし部」に相当する)66とされており、この空気逃がし溝66は、フード部55の全周に亘って複数設けられている。したがって、電線側コネクタ20のゴムリング33は、機器側コネクタ50のフード部55内に電線側コネクタ20の両円筒嵌合部24とインターロック嵌合部25とを浅く嵌合させて、複数本のゴムリング干渉部65と密着した状態からフード部55のシール面55Aと全周に亘って密着する直前の状態までの間、複数本のゴムリング干渉部65のみと接触した状態となっている。なお、図7及び図10に示す両コネクタ20,50の半嵌合状態とは、ゴムリング33がシール面55Aと全周に亘って密着する直前の状態をいう。これにより、空気逃がし溝66は、フード部55と両円筒嵌合部24及びインターロック嵌合部25とを嵌合させる際に、フード部55内の空気をフード部55の外部へ排出し、フード部55の内圧が上昇しないようにすることができる。
【0039】
一方、電線側コネクタハウジング22における円筒嵌合部24の外周面には、フード部55の長辺側の空気逃がし溝66に収容可能な一対のガタつき防止リブ67がそれぞれ形成されている。このガタつき防止リブ67は、円筒嵌合部24におけるゴムリング33よりも後方に形成されており、両コネクタ20,50が正規嵌合した際に、フード部55に対して電線側コネクタハウジング22の姿勢を正規の姿勢に保持する役割を果たしている。
【0040】
次に、本実施形態の防水コネクタの嵌合操作を説明すると共に、その作用効果を説明する。
機器側コネクタ50に電線側コネクタ20を嵌合させるときには、まず電線側コネクタハウジング22のスリット22Aと機器側コネクタハウジング52の案内板64との案内に従って電線側コネクタ20に機器側コネクタ50を浅く嵌合させる。このとき、電線側コネクタハウジング22のゴムリング33は、機器側コネクタハウジング52のフード部55におけるゴムリング干渉部65に密着する。
【0041】
そのまま、両コネクタ20,50を更に嵌合させて半嵌合状態に至らしめると、図7および図10に示すように、フード部55内に円筒嵌合部24及びインターロック嵌合部25が嵌合されると同時に、フード部55がシールドシェル23内に嵌合され、締結ボルトVがケースCのボルト締結孔C2に進入し始める。この半嵌合状態で、締結ボルトVをボルト締結孔C2に螺合させて、図8及び図11に示すように、両コネクタ20,50を正規嵌合させる。この嵌合過程において、電線側コネクタハウジング22のゴムリング33は、フード部55のゴムリング干渉部65に密着した時点からフード部55のシール面55Aに密着するまでの間、ゴムリング干渉部65のみと摺動し、フード部55内の空気は、空気逃がし溝66を通ってフード部55の開口部から外部に排出される。最終的に、両コネクタ20,50が正規嵌合に至ったところで、電線側コネクタハウジング22のゴムリング33は、フード部55のシール面55Aに全周に亘って密着し、フード部55と電線側コネクタハウジング22との間がシールされる。これにより、防水コネクタ(両コネクタ20,50)の内圧が上昇することを軽減することができ、電線側コネクタ20と機器側コネクタ50との嵌合操作力を低減させることができる。
【0042】
また、本実施形態によると、ゴムリング干渉部65をフード部55の内周面にほぼ均等に間欠的に配置したことから、互いのコネクタハウジング22,52を正規の嵌合姿勢に保持することができる。更に、電線側コネクタハウジング22のゴムリング33は複数のゴムリング干渉部65のみと接触しているので、ゴムリング33とフード部55との接触抵抗が軽減され、電線側コネクタ20と機器側コネクタ50との嵌合操作力をより低減させることができるようになっている。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態では、締結ボルトVを機器のケースCに締め付けることで電線側コネクタ20と機器側コネクタ50とを正規嵌合させる構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、本発明は、締結ボルトVを用いずに電線側コネクタ20と機器側コネクタ50とを正規嵌合させる防水コネクタにも適用させることができる。
(2)本実施形態では、機器のケースCに導通接続可能なシールドシェル23を備えた防水コネクタに適用した例を説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、本発明は、シールドシェルを備えていない通常の防水コネクタにも広く適用させることができる。
【0044】
(3)本実施形態では、空気逃がし溝66が複数形成された構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、空気逃がし溝66を一本のみ形成した構成としてもよい。
(4)本実施形態では、空気逃がし部をフード部55の開口部からシール面55Aまで延びる空気逃がし溝66として構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、空気逃がし部として、例えば、フード部55のシール面55Aよりも前方側の位置にフード部55を貫通する空気逃がし孔を形成した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
22 :電線側コネクタハウジング(第二コネクタハウジング)
24 :円筒嵌合部(嵌合部)
25 :インターロック嵌合部(嵌合部)
33 :ゴムリング
52 :機器側コネクタハウジング(第一コネクタハウジング)
55 :フード部
55A:シール面
65 :ゴムリング干渉部
66 :空気逃がし溝(空気逃がし部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フード部を有する第一コネクタハウジングと、前記フード部内に嵌合可能な嵌合部を有する第二コネクタハウジングとを備えた防水コネクタであって、
前記嵌合部には、前記フード部の内周面と前記嵌合部の外周面とに密着した状態で前記フード部の開口部から前記フード部の奥部まで挿入されるゴムリングが嵌着されており、
前記フード部の内周面には、前記第一及び第二コネクタハウジングが正規に嵌合した際に、前記ゴムリングと全周に亘って密着するシール面が設けられており、
前記フード部の内周面のうち前記シール面よりも開口部側の面には前記フード部内の空気を外部へ逃がす空気逃がし部が形成されていることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項2】
前記空気逃がし部は、前記シール面から前記フード部の開口部まで延びて前記フード部の内部空間に向かって開口する溝状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の防水コネクタ。
【請求項3】
前記空気逃がし部は、前記フード部の内周面に複数形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の防水コネクタ。
【請求項4】
前記フード部の内周面における前記空気逃がし部同士の間には、前記シール面からフード部の開口部まで延びて前記ゴムリングと密着可能なリブ状のゴムリング干渉部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の防水コネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−128966(P2012−128966A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277094(P2010−277094)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】