説明

防水ボックス

【課題】防水性能を高めることが可能な防水ボックスを提供する。また、作業性の向上と省スペース化とを図ることが可能な防水ボックスを提供する。
【解決手段】高圧洗浄を行うと、防水ボックス11に向けて噴射された洗浄水は、ボックス本体14の周壁17に当たり、この後に洗浄水は周壁17に添って上昇する。周壁17に添って上昇した洗浄水は、本体側の防水構造部20における第一防水部30の下面30eに突き当たり、ある程度勢いが低減される。また、周壁17に添って上昇した洗浄水は、この一部が壁34の内側の空間37によって上方へスルーされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックス本体側の防水構造部とカバー側の防水構造部とを重ね合わせて防水をする防水ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のエンジンルームに設置される電気接続箱は、ワイヤハーネスの接続処理部品や、リレー、ヒューズ等の電気部品、或いは電子制御ユニット等の電装品を有することから、雨天走行時やエンジンルームの高圧洗浄時において水が掛からないようにする必要がある。このことから電気接続箱は、上記電気部品等を収容するボックス本体及びこのボックス本体の上部開口を覆うカバーそれぞれに防水構造を持たせて防水をすることができるように形成されている。電気接続箱は、防水ボックスとしての機能を有している。
【0003】
防水ボックスに関しては、ボックス本体に設けられる防水構造部、及びカバーに設けられる防水構造部の間にパッキンを挟み込んで防水をするタイプのもの(例えば下記特許文献1参照)と、パッキンを用いずにボックス本体の防水構造部及びカバーの防水構造部を重ね合わせて防水をするタイプのもの(例えば下記特許文献2参照)とが知られている。
【0004】
パッキンを用いるタイプの防水ボックスは、各防水構造部間に挟み込まれるパッキンが隙間を塞ぐようになることから、防水性能を高めることができる反面、パッキンの分だけ部品点数及びコストが増加してしまうという問題点を有している。また、パッキンを装着するための工数が掛かってしまうという問題点を有している。このようなことから、近年にあっては、パッキンレスタイプの防水ボックスが用いられるようになってきている。
【0005】
パッキンレスタイプの防水ボックスとして、下記特許文献2に開示されたものは、上部開口を有するボックス本体と、このボックス本体の上部開口を覆うカバーとを備えて構成されている。防水ボックスは、ボックス本体及びカバーの継ぎ目部分に設けられる各防水構造部を重ね合わせて防水を図ることができるように形成されている。具体的に、ボックス本体側の防水構造部は、ボックス本体の周壁の先端位置に周設されて環状となる防水凸部を有しており、カバー側の防水構造部は、カバー周壁の先端位置に周設されて環状となる防水凹部を有している。
【0006】
上記構成及び構造において、ボックス本体の上部開口の上方にカバーを配置して、この後にカバーを真っ直ぐ下に移動させ、そして、各防水構造部同士を重ね合わせると、この時、防水凹部は防水凸部に差し込まれるようになる。また、ボックス本体及びカバーは、ボックス本体の防水構造部に設けられる本体ロックに対し、カバーの防水構造部に設けられるU字状のカバーロックが引っ掛かって係止され、これによりロック状態が形成されるようになる。本体ロック及びカバーロックは、防水ボックスの左右両側位置(又は前後両側位置)となる少なくとも二箇所に配置されている。この二箇所は、離れた配置となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−72116号公報
【特許文献2】特開平9−216648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、パッキンレスタイプの防水ボックスにあっては、次のような問題点を有している。すなわち、高圧洗浄に係る噴射水圧が高い場合に、防水ボックスに向けて噴射された洗浄水は、ボックス本体の周壁に当たり、この後に周壁に添って上昇し、そして、重なり合った状態にある各防水構造部間の微小な隙間を通過することから、水分が内部へ入り込んでしまうという問題点を有している。
【0009】
尚、特許文献2の場合、周壁及びカバー周壁の各防水構造部よりも内方に内壁を周設していることから、仮に上記のような状況で水分が入り込んできても、内壁の存在によって電気部品等に水分が吹き掛かることはないようになっている。しかしながら、数多く知られる防水ボックスの中には、内壁を設けることができないものもあることから(内壁を部分的に設けることができないものもあることから)、ボックス本体及びカバーの各防水構造部に効果的な対策をする必要があると言える。
【0010】
近年においては、防水ボックス内にアルミ電線を引き込むこともある。アルミ電線は、この接続部分への水分の付着を嫌うことから、水分の付着を防止する必要性が高まってきている。
【0011】
また、パッキンレスタイプの防水ボックスにあっては、次のような問題点も有している。すなわち、本体ロック及びカバーロックのロック状態を解除しようとする場合、少なくとも二箇所あるロック状態をそれぞれ解除しなければならず、作業者やユーザーにとっては面倒な作業になってしまうという問題点を有している。また、二箇所あるロック状態をそれぞれ解除するとともに、カバーの取り外しをするためには、両手を使うことができる大きなスペースを防水ボックスの上方に確保しなければならないという問題点を有している。尚、これら問題点の解決には、防水性能の維持に配慮しなければならないのは言うまでもない。
【0012】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、防水性能を高めることが可能な防水ボックスを提供することを課題とする。また、作業性の向上と省スペース化とを図ることが可能な防水ボックスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の防水ボックスは、周壁を有し該周壁の内部に水分を嫌う部品が収容されるボックス本体と、カバー周壁を有し前記ボックス本体の周壁縁部の開口を覆うカバーとを備えるとともに、前記周壁縁部に設けられる本体側の防水構造部と、前記カバー周壁縁部に設けられるカバー側の防水構造部とを有し、これら前記本体側の防水構造部及び前記カバー側の防水構造部を重ね合わせて防水をする防水ボックスにおいて、前記重ね合わせの部分よりも外側、且つ前記周壁の外面に対し所定の間隔をあけて対面する壁を、前記本体側の防水構造部の一部又は前記カバー側の防水構造部の一部として設けることを特徴とする。
【0014】
このような特徴を有する本発明によれば、壁の存在によって重ね合わせの部分への水分の浸入を規制することが可能になる。
【0015】
請求項2記載の本発明の防水ボックスは、請求項1に記載の防水ボックスにおいて、前記重ね合わせにより対向し合う前記本体側の防水構造部の本体側合わせ面と前記カバー側の防水構造部のカバー側合わせ面との隙間により生じる微小通路の入口に関し、該入口前方に前記壁が間隔をあけて位置するように前記入口を配置することを特徴とする。
【0016】
このような特徴を有する本発明によれば、対向し合う本体側合わせ面及びカバー側合わせ面の隙間により生じる微小通路は、言い換えれば水分の通路となり得る微小通路であることから、壁の存在によって微小通路入口前方からの水分の浸入を規制することが可能になる。
【0017】
請求項3記載の本発明の防水ボックスは、請求項2に記載の防水ボックスにおいて、前記微小通路の入口を、前記ボックス本体の前記周壁外面に対し略直交方向外側に向けて配置することを特徴とする。
【0018】
このような特徴を有する本発明によれば、周壁に添って上昇又はカバー周壁に沿って降下してくる水分に対し、この浸入をし難くすることが可能になる。
【0019】
請求項4記載の本発明の防水ボックスは、請求項1ないし請求項3いずれか記載の防水ボックスにおいて、前記ボックス本体に対し前記カバーを回動自在且つ着脱自在にするための回動支点部を、前記本体側の防水構造部及び前記カバー側の防水構造部に設けることを特徴とする。
【0020】
このような特徴を有する本発明によれば、回動支点部を支点としてカバーが回動自在となる。カバーは、これを回動させることによってボックス本体の開口を覆ったり取り外しをしたりすることが可能になる。ボックス本体及びカバーにおいて、これらをロック状態にするロック構造は、回動支点部を設けた位置の反対側の位置に設けるだけで済む。すなわち、ロック解除は一カ所で済む。本発明によれば、片手1アクション(ワンアクション)でカバーの着脱をすることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載された本発明によれば、本体側の防水構造部の一部又は前記カバー側の防水構造部の一部として壁を設けることにより、この壁の存在によって水分の浸入を規制することができるという効果を奏する。従って、本発明によれば、従来よりも防水性能を高めることができるという効果を奏する。ことができるという効果を奏する。
【0022】
請求項2に記載された本発明によれば、微小通路の入口前方に壁を設けることにより、水分の浸入を規制することができるという効果を奏する。従って、本発明によれば、従来よりも防水性能を高めることができるという効果を奏する。
【0023】
請求項3に記載された本発明によれば、微小通路の入口を周壁外面に対し略直交方向外側に向けて配置することにより、水分の浸入を規制することができるという効果を奏する。従って、本発明によれば、従来よりも防水性能を高めることができるという効果を奏する。
【0024】
請求項4に記載された本発明によれば、回動支点部を設けることにより片手1アクションでカバーを着脱することができるという効果を奏する。従って、本発明によれば、従来よりも作業性の向上を図ることができるという効果を奏する。また、片手1アクションであればカバーの上方に作業者の両手分となる大きなスペースを確保する必要がなくなることから、省スペース化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の防水ボックスを構成に含む電気接続箱の設置例を示す模式図である。
【図2】電気接続箱の分解斜視図である。
【図3】本体側の防水構造部、カバー側の防水構造部、及び壁を示す斜視図(一部断面を含む)である。
【図4】本体側の防水構造部、カバー側の防水構造部、及び壁を示す断面図である。
【図5】微小通路に係る図であり、(a)は本体側の防水構造部、カバー側の防水構造部、及び壁の断面図、(b)は微小通路の模式図である。
【図6】第二防水部及び第一防水部の拡大断面図である。
【図7】第一防水部及び壁の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら実施形態の一例を説明する。図1は本発明の防水ボックスを構成に含む電気接続箱の設置例を示す模式図である。また、図2は電気接続箱の分解斜視図である。さらに、図3ないし図7は本発明の防水ボックスに係る各種の図である。
【0027】
図1において、引用符号1は電気接続箱(R/B:リレーボックス、J/B:ジャンクションボックス、ECU等の車両用電気部品内蔵機器)を示している。電気接続箱1は、特に限定するものでないがリレーボックスであって、自動車2のエンジンルーム3に設置されている。エンジンルーム3においては、エンジン4の隣にバッテリー5が設置されている。そして、この隣には電気接続箱1が設置されている。電気接続箱1は、エンジンルーム3に設置されていることから、雨天走行時やエンジンルーム3の高圧洗浄時において、内部の電気部品等(水分を嫌う部品)に水分が掛からないようにする必要性を有している。
【0028】
以下で説明する電気接続箱1は、本発明に係る防水ボックスを有しており、高圧洗浄噴射水圧が例えば8MPa〜12MPaのような高い水圧であっても、内部の電気部品等に水分が掛からないようなものになっている。
【0029】
図2において、電気接続箱1は、合成樹脂製の防水ボックス11と、この防水ボックス11内に収容される機能部品12、13とを備えて構成されている。防水ボックス11内には、例えばアルミ電線を含む図示しないワイヤハーネスが引き込まれるようになっている。機能部品12、13は、リレー等の部品を含んでいる(リレー等の部品の図示は省略するものとする。図2には主にキャビティの図が示されている)。機能部品12におけるキャビティには、後述する内壁12aが設けられている。
【0030】
防水ボックス11は、機能部品12、13の収容部分となるボックス本体14と、このボックス本体14の上部開口を覆うアッパーカバー15(特許請求の範囲に記載したカバーに相当)と、ボックス本体14の下部に嵌合するロアーカバー16とを備えて構成されている。
【0031】
本発明は、ボックス本体14及びアッパーカバー15に幾つかの特徴を有している。その特徴の一つとしては、パッキンレスであるにもかかわらず、高い防水性能を発揮できる防水構造を有している点である。また、別の特徴としては、アッパーカバー15がボックス本体14に対し回動自在であって、片手1アクション(ワンアクション)で着脱をすることができる構造を有している点である。以下、これら特徴を含みながら、ボックス本体14やアッパーカバー15について説明をする。
【0032】
ボックス本体14は、周壁17を有している。周壁17は、フレーム状となる形状に形成されている。周壁17は、複数の壁を連続させて例えば図示のような形状に形成されている。ここで、矢印Pを上下方向、矢印Qを前後方向、矢印Rを左右方向と定義すると(ここではエンジンルーム3の前後方向及び左右方向に整合させずに定義するものとする)、周壁17における後側の壁の外面には、アッパーカバー15を回動自在且つ着脱自在にするための回動支点部18(図3参照)が設けられている。また、周壁17における前側の壁の外面には、アッパーカバー15をロック状態にするための本体ロック19が設けられている。
【0033】
ボックス本体14は、回動支点部18を回動中心としてアッパーカバー15を回動自在にするとともに、本体ロック19でアッパーカバー15を係止してロック状態にすることができるようになっている。また、上記のロック状態を解除するとともに、この解除と同時にアッパーカバー15を持ち上げるように回動させれば、容易にアッパーカバー15の取り外しをすることができるようになっている。
【0034】
周壁17の上端部には、防水をするための部分として、本体側の防水構造部20が周設されている。また、周壁17の下端部には、ロアーカバー16を嵌合させるための部分として、嵌合部21が周設されている。尚、嵌合部21に関しては、公知の構造を採用するものとしてここでの説明を省略するものとする。
【0035】
アッパーカバー15は、ボックス本体14の形状に合わせて形成される蓋部材であって、防水ボックス11において一番上の部分となる天井壁22と、この天井壁22の周縁部分から下側にのびるカバー周壁23とを有している。カバー周壁23における後側の壁には、ボックス本体14の回動支点部18(図3参照)と共にアッパーカバー15の回動中心となる回動支点部24(図3参照)が設けられている。また、カバー周壁23における前側の壁の外面には、ボックス本体14の本体ロック19に引っ掛かり係止されるカバーロック25が設けられている。カバー周壁23の下端部には、防水をするための部分として、カバー側の防水構造部26が周設されている。
【0036】
ロアーカバー16は、公知のものを採用するものとして詳細な説明を省略するものとする。
【0037】
図3ないし図7を参照しながら本体側の防水構造部20及びカバー側の防水構造部26について詳細に説明する。図3及び図4には、周壁全周中の代表例として回動支点部18、24が存在する壁の部分の防水構造が示されている。
【0038】
図3及び図4において、ボックス本体14に対しアッパーカバー15を回動させ、そして、これらをロック状態にすると、本体側の防水構造部20及びカバー側の防水構造部26は、図示のように重ね合わせられるようになる。
【0039】
ところで、アッパーカバー15を回動させるためには、構造上、回動軌跡を考慮する必要があるが、全周にわたって隙間なしに重ね合わせをすることは不可能である。従って、本体側の防水構造部20及びカバー側の防水構造部26の間には、これら対向し合う面(合わせ面であり後述する)の隙間によって生じる微小通路27が形成されるようになる(図5(b)に水分が浸入する方向を現すようにして模式的に微小通路27を示すものとする)。尚、水分の浸入を微小通路27の範囲内で防止することや、浸入した水分の勢いを大幅に落とすこと等は、防水ボックス11における防水構造の目指すところである。
【0040】
本体側の防水構造部20には、本体側合わせ面28が形成されている。また、カバー側の防水構造部26には、カバー側合わせ面29が形成されている。これら本体側合わせ面28及びカバー側合わせ面29は、上記の重ね合わせによって対向し合うようになっている。本体側合わせ面28及びカバー側合わせ面29を構成する各面に関しては後述する。
【0041】
図3ないし図7において、本体側の防水構造部20は、上記の如く、周壁17の上端部に設けられて防水をする部分であって、微小通路27の入口側となる第一防水部30と、微小通路27の出口側となる第二防水部31とを有している(微小通路27において、水分が外部から最初に浸入する部分を入口とするものとする)。第二防水部31から順に説明する。
【0042】
第二防水部31は、周壁17の上端の位置に配置されている。第二防水部31は、周壁17と同じ厚みで形成されている(周壁17の厚みが決まる外面17a及び内面17bは、上記の上下方向に沿って形成されている)。第二防水部31は、周壁17の上端面に一致する上面31aを有している。この上面31aは、本体側合わせ面28の一部を構成する面として形成されている。また、上面31aに直交するように連続する外面31bも本体側合わせ面28の一部を構成する面として形成されている。外面31bは、周壁17の内面17bに対して平行に形成されている。上面31aは、内面17bに連続する部分に小さな面取り部31cを有している。
【0043】
第一防水部30は、第二防水部31の下に配置形成されている。第一防水部30は、第二防水部31よりも厚みを有する壁となるように形成されている。第一防水部30は、第二防水部31よりも厚い分だけ外側に突出するように形成されている。第一防水部30の上面30aは、第二防水部31の外面31bに直交するように連成されている。また、上面30aは、第二防水部31の上面31aに対して平行に形成されている。上面30aは、第二防水部31の上面31aと同じくらいの長さに形成されている。上面30aは、本体側合わせ面28の一部を構成する面として形成されている。上面30aに連続する外面30bは、周壁17の内面17bに対して平行ではなく、傾斜するように形成されている。具体的には、下側に向かって次第に内面17bとの距離が短くなるような逆テーパ状の面となるように形成されている。
【0044】
逆テーパ状の面となる外面30bに連続する入口位置上面30cは、上面30aに対して平行に形成されている。入口位置上面30cは、逆テーパ状の面となる外面30bの下側が内面17bに近づくことから、この分だけ上面30aよりも長く形成されている。引用符号30dは、周壁17の外面17aに対し平行な入口位置外面を示している。また、引用符号30eは、入口位置外面30dに対し直交、且つ入口位置上面30cに平行な下面を示している。入口位置上面30c及び逆テーパ状の面となる外面30bは、本体側合わせ面28の一部を構成する面として形成されている。外面30bの所定位置には、この外方に突出する突起形状の回動支点部18が設けられている。
【0045】
本体側合わせ面28を構成する第二防水部31の上面31aから第一防水部30の入口位置上面30cにかけてを、本体側の防水構造部20の断面で見ると、本体側合わせ面28は段々となる形状、言い換えれば迷路となる形状に形成されている。すなわち、本体側合わせ面28は、水分が浸入し難くなるような形状に形成されている。
【0046】
一方、カバー側の防水構造部26は、上記の如く、カバー周壁23の下端部に設けられて防水をする部分であって、微小通路27の入口側となる第一防水部32と、微小通路27の出口側となる第二防水部33とを有して、外側に開く略スカート状の壁となるように形成されている。また、カバー側の防水構造部26は、微小通路27の入口に対してこの前方に所定の間隔で配置される壁34を有している。
【0047】
第一防水部32は、本体側の防水構造部20の第一防水部30に対応するように配置形成されている。また、第二防水部33は、本体側の防水構造部20の第二防水部31に対応するように配置形成されている。第二防水部33から順に説明する。
【0048】
第二防水部33は、本体側の防水構造部20における第二防水部31の上面31aに対向する面(カバー側合わせ面29を構成することができる面)の位置で開口するような袋小路33aを有している。袋小路33aは、下側が開口して上側が行き止まりになるように、また、所望の大きさの空間を有するように形成されている。袋小路33aは、この内部に、内側の面33bと、この内側の面33bに平行な外側の面33cと、内側の面33b及び外側の面33cを繋ぐような奥側の面33dとを有している。内側の面33bは、ボックス本体14における周壁17の内面17bに対し、この直上に位置するように配置されている。袋小路33aは、カバー周壁23の下端部に内側の面33bを配置するようにして形成されている。
【0049】
袋小路33aの配置及び微小通路27の出口位置に関し、袋小路33aの開口と内側の面33bとの交点位置を出口基準35として設定するとともに、周壁17の内面17bと第二防水部31の上面31aとの交点位置を出口基準36として設定すると、これら出口基準35、36は同一平面上に存在するように設定されている。すなわち、微小通路27の出口を極力小さくして水分が出口から出難くなるように出口基準35及び36が設定されている(出口基準35が出口基準36よりもボックス内側に位置すればするほど、出口の幅が大きくなってしまい、水分が微小通路27の出口から出易くなることになる)。
【0050】
第二防水部33は、袋小路33aに連続して真っ直ぐ下にのびる壁状の部分33eを有している。この壁状の部分33eは、本体側の防水構造部20における第二防水部31の外面31bに対向する内面33fを有している。内面33fは、カバー側合わせ面29の一部を構成する面として形成されている。内面33fは、第一防水部32に連続する部分に小さな面取り部33gを有している(面取り部33gもカバー側合わせ面29の一部を構成する面として形成されている)。
【0051】
第一防水部32は、第二防水部33の下に配置形成されている。第一防水部32は、本体側の防水構造部20における第一防水部30の上面30aに対向する下面32aと、逆テーパ状の面となる外面30bに対向する内面32bとを有する壁状の部分として形成されている。下面32aは、第二防水部33の面取り部33gに連続するとともに、この反対側に内面32bが連続するように配置形成されている。内面32bは、逆テーパ状となる面であって、アッパーカバー15が上方へ移動しようとする時に外面30bに当接して噛み合うように形成されている。下面32a及び内面32bは、カバー側合わせ面29の一部を構成する面として形成されている。
【0052】
第一防水部32における引用符号32cは、内面32bに連続する面取り部を示している。また、引用符号32dは、本体側の防水構造部20における第一防水部30の入口位置上面30cに対向する入口位置下面を示している。面取り部32c及び入口位置下面32dは、カバー側合わせ面29の一部を構成する面として形成されている。さらに、引用符号32eは、入口位置下面32dに対し直交、且つ周壁17の内面17bに平行な入口位置外面を示している。入口位置外面32eは、第一防水部32の外面32fを構成する一部として形成されている。
【0053】
カバー側の防水構造部26に設けられる回動支点部24は、本体側の防水構造部20における突起形状の回動支点部18を差し込み可能にする貫通孔(図示省略)と、この貫通孔の両側に配置形成される一対の保護壁24aとを有している。一対の保護壁24aは、リブ状となる形状であって、上下方向にのびるように形成されている。
【0054】
壁34は、上記の如く、微小通路27の入口に対してこの前方に所定の間隔で配置されている。壁34は、一対の保護壁24aの突出先端(最も外側の位置)に連成されるとともに、内面34aが第一防水部32の外面32fに対して平行となるように配置形成されている。壁34(内面34a)は、第一防水部32の外面32fとの間や第一防水部30の入口位置外面30dとの間に空間37を有するように配置形成されている。また、壁34は、周壁17の外面17aに対し所定の間隔をあけて対面するように配置形成されている。壁34は、空間37によって洗浄水を上下方向にスルーすることができるようになっている。尚、壁34は、周壁17の外面17aに突起又はリブを複数設け、この突起又はリブの先端に連成するようにしてもよいものとする。
【0055】
図2に戻り、機能部品12におけるキャビティには、内壁12aが設けられている。この内壁12aは、ボックス本体14における周壁17の内面17bから所定の間隔で配置されるように形成されている。内壁12aは、この先端12bがカバー周壁23の基端側に位置するように突出形成されている。内壁12aは、この先端12bが微小通路27の出口位置よりも上方に位置するように突出形成されている。内壁12aは、本体側の防水構造部20及びカバー側の防水構造部26とは別に、電気部品等(水分を嫌う部品)に対して水分が掛からないようにするための部分として形成されている。
【0056】
電気部品等(水分を嫌う部品)に対し水分が掛からないようにするためには、本体側の防水構造部20及びカバー側の防水構造部26で十分であるが、内壁12aの形成は確実性を高める上で有効であると言える。
【0057】
図4において、アッパーカバー15は、ボックス本体14における周壁17の内面17bに対向するようにのびる内壁38を有している。内壁38は、カバー周壁23の下端部に連続するように設けられている。内壁38は、アッパーカバー15の回動中心となる回動支点部24が存在する壁以外に設けられている。この理由としては、アッパーカバー15が回動自在であることから、回動軌跡に配慮して上記壁以外に設けられている。回動支点部24が存在する壁においては、微小通路27の出口位置よりも先端位置が下方となるようにテーパ部39が設けられている。テーパ部39は、僅かであるが内壁としての機能を有している。
【0058】
上記構成及び構造において、アッパーカバー15を片手で持ちながらこのアッパーカバー15の回動支点部24をボックス本体14の回動支点部18に差し込み、そして、回動支点部18、24を支点にしてアッパーカバー15を回動させると、アッパーカバー15のカバーロック25がボックス本体14の本体ロック19に引っ掛かり係止される(ロック状態が形成される)。ボックス本体14の上部開口は、アッパーカバー15により覆われ、この時、本体側の防水構造部20及びカバー側の防水構造部26が重ね合わせられると、図4及び図5に示すような防水構造の形成が完了する。本体側の防水構造部20及びカバー側の防水構造部26は、この重ね合わせによって、本体側合わせ面28及びカバー側合わせ面29が対向し合うようになる。また、小通路27の入口は、ボックス本体14における周壁17の外面17aに対して直交方向外側に向けて配置されていることから、この入口前方に壁34が位置するようになる。
【0059】
高圧洗浄を行うと、防水ボックス11に向けて噴射された洗浄水は、ボックス本体14の周壁17(の外面17a)に当たり、この後に洗浄水は周壁17に添って上昇する。周壁17に添って上昇した洗浄水は、本体側の防水構造部20における第一防水部30の下面30eに突き当たり、ある程度勢いが低減される。また、周壁17に添って上昇(又はカバー周壁23に沿って降下)した洗浄水は、この一部が壁34の内側の空間37によって上方へスルーされる(又は下方へスルーされる)。
【0060】
微小通路27の入口は、ボックス本体14における周壁17の外面17aから離れて配置されていることから、また、壁34の内側の空間37によって洗浄水が上方へスルーされることから、微小通路27の入口にピンポイントで洗浄水が当たり難く、結果、水分の浸入は難しい状態にある。この他、微小通路27の入口前方からの水分の浸入は、壁34の存在によって規制されることから、水分の浸入は難しい状態にある(壁34が存在しない場合には、微小通路27の入口前方から洗浄水が当たるようになることから、結果、水分が浸入してしまう)。
【0061】
尚、洗浄水の勢いによって、仮にアッパーカバー15が矢印S方向に移動、すなわちアッパーカバー15に吹き上がり(浮き上がり)が生じると、また、仮に水分が浸入したとすると、この時、第一防水部30及び32における逆テーパ状の面となる外面30b及び内面32bが当接して噛合い、微小通路27の入口側は塞がれる。これにより、水分の浸入(通過)が規制される。
【0062】
また、仮に逆テーパ状の面となる外面30b及び内面32bの噛合いの前に水分が浸入したとすると、微小通路27は多数の段(曲がり角)を有する迷路形状になっていることから、この迷路形状によって水分の浸入(通過)が規制される。
【0063】
また、仮に第二防水部31及び33の外面31b及び内面33fの間まで水分が浸入したとすると、この水分の進行方向は外面31b及び内面33fの延在方向であることから、水分は袋小路33aに入り込み勢いが低減される。袋小路33aは、バッファとしての機能を有し、勢いが低減された水分は落下する。
【0064】
微小通路27の出口は、上記の如く極力小さくなるように設定されていることから、袋小路33aに入り込み勢いが低減された水分は出難くなっている。仮に微小通路27の出口から水分が出たとしても、この水分は周壁17の内面17bを伝うようにして落下し、ロアーカバー16の図示しない排水口から排水される。
【0065】
以上、図1ないし図7を参照しながら本発明を説明してきて分かるように、本発明は従来よりも防水性能を高めることができるという効果を奏する。また、アッパーカバー15の着脱が片手1アクションで行えることから、従来よりも作業性の向上と省スペース化とを図ることができるという効果を奏する。
【0066】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
1…電気接続箱
2…自動車
3…エンジンルーム
4…エンジン
5…バッテリー
11…防水ボックス
12、13…機能部品
14…ボックス本体
15…アッパーカバー(カバー)
16…ロアーカバー
17…周壁
18…回動支点部
19…本体ロック
20…本体側の防水構造部
21…嵌合部
22…天井壁
23…カバー周壁
24…回動支点部
25…カバーロック
26…カバー側の防水構造部
27…微小通路
28…本体側合わせ面
29…カバー側合わせ面
30、32…第一防水部
31、33…第二防水部
34…壁
35、36…出口基準
37…空間
38…内壁
39…テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁を有し該周壁の内部に水分を嫌う部品が収容されるボックス本体と、カバー周壁を有し前記ボックス本体の周壁縁部の開口を覆うカバーとを備えるとともに、前記周壁縁部に設けられる本体側の防水構造部と、前記カバー周壁縁部に設けられるカバー側の防水構造部とを有し、これら前記本体側の防水構造部及び前記カバー側の防水構造部を重ね合わせて防水をする防水ボックスにおいて、
前記重ね合わせの部分よりも外側、且つ前記周壁の外面に対し所定の間隔をあけて対面する壁を、前記本体側の防水構造部の一部又は前記カバー側の防水構造部の一部として設ける
ことを特徴とする防水ボックス。
【請求項2】
請求項1に記載の防水ボックスにおいて、
前記重ね合わせにより対向し合う前記本体側の防水構造部の本体側合わせ面と前記カバー側の防水構造部のカバー側合わせ面との隙間により生じる微小通路の入口に関し、該入口前方に前記壁が間隔をあけて位置するように前記入口を配置する
ことを特徴とする防水ボックス。
【請求項3】
請求項2に記載の防水ボックスにおいて、
前記微小通路の入口を、前記ボックス本体の前記周壁外面に対し略直交方向外側に向けて配置する
ことを特徴とする防水ボックス。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3いずれか記載の防水ボックスにおいて、
前記ボックス本体に対し前記カバーを回動自在且つ着脱自在にするための回動支点部を、前記本体側の防水構造部及び前記カバー側の防水構造部に設ける
ことを特徴とする防水ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−4531(P2011−4531A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145947(P2009−145947)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】