説明

防水壁材

【課題】海水や雨水の流入を防ぐとともに、平常時は設置場所の景観を損ない難い防水壁材を提供する。
【解決手段】防水壁材として、透明樹脂板を使用する。この透明樹脂板としては、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂からなるものが好ましく用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾の防波堤、建物や地下駐車場の出入口などに設置される防水壁材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高潮や異常降雨などによる海水や雨水の流入を防ぐための防水壁材としては、従来、鉄、ステンレスなどの金属材料からなるものや、コンクリート、セメント、モルタルなどの無機質材料からなるものが使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭53−91929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防水壁材は、平常時に設置場所の景観を損ない易いという問題がある。そこで、本発明の目的は、海水や雨水の流入を防ぐとともに、平常時は設置場所の景観を損ない難い防水壁材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、防水壁材として透明樹脂板を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、透明樹脂板からなることを特徴とする防水壁材を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、海水や雨水の流入を防ぐとともに、平常時は設置場所の景観を損ない難い防水壁材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の防水壁材は、透明樹脂板からなるものである。透明樹脂板としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などの各種熱可塑性樹脂の板が好ましく用いられる。中でも、透明性や耐候性の点から、アクリル樹脂板が好ましく用いられる。
【0008】
アクリル樹脂は、メタクリル酸メチルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸メチルとこれ以外の単量体との共重合体であってもよく、共重合体である場合、その単量体に占めるメタクリル酸メチルの割合は、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上であるのがよい。また、共重合体である場合、メタクリル酸メチル以外の単量体としては、アクリル酸アルキルやスチレンが好ましく用いられる。
【0009】
透明樹脂板の厚みは、通常1〜600mm程度である。厚肉のものは、積層接着により得てもよく、この場合、積層接着が容易な点から、アクリル樹脂版が好ましく用いられる。また、透明樹脂板の全光線透過率は、無色透明のものであれば80%以上、スモーク色などの着色透明のものであれば20%以上であるのが好ましい。
【0010】
透明樹脂には、一般に用いられる添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤などが挙げられる。
【0011】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)の“チヌビンP”、住友化学(株)の“スミソーブ340”など〕、ベンゾフェノン系化合物〔シプロ化成(株)の“シーソーブ110”、住友化学(株)の“スミソーブ110”など〕、ヒンダードアミン系化合物〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)の“チヌビン770”〕などが挙げられる。
【0012】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物〔住友化学(株)の“スミライザーBP101”、“スミライザーGM”など〕、リン系化合物〔(株)アデカの“マークPEP−8”、“マークPEP−24”など〕などが挙げられる。
【0013】
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートのような芳香族多価カルボン酸エステル、ジオクチルアジペート、アセチルトリブチルシトレートのような脂肪族多価カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0014】
着色剤としては、例えば、アントラキノン系染料〔住友化学(株)の“スミプラストGreenG”、“スミプラストBlueOR”など〕、ペリノン系染料〔住友化学(株)の“スミプラストOrangeHRP”など〕などが挙げられる。
【0015】
透明樹脂板には、その表面を硬くし、傷が付き難くするとともに、耐溶剤性を向上させる目的で架橋樹脂層を被覆することができる。
【0016】
架橋樹脂層の組成や被覆方法については特に限定されないが、例えば、分子内に2つ以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する架橋性化合物を含む塗料〔広栄化学工業(株)のコーエイハードM101など〕を、透明樹脂板の表面に浸漬、噴霧、塗布などの方法により付着させた後、これに紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによって架橋硬化させて被覆する方法や、シリコン系やメラミン系の架橋性化合物を含む塗料を、透明樹脂板の表面に浸漬、噴霧、塗布などの方法により付着させた後、これを加熱することによって架橋硬化させて被覆する方法が好ましい。架橋樹脂層は、厚さが通常0.1〜10μmとなるように透明樹脂板の表面に被覆される。その厚さがあまり小さいと、耐擦傷性が低下する場合があり、またあまり厚いと、剥離が起こり易いなど、耐久性に問題が生じる場合がある。
【0017】
また、透明樹脂板には、表面の汚れを防止する目的で、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、無機コロイドゾルなどによる被覆層を形成してもよい。
【0018】
以上説明した透明樹脂板からなる防水壁材を、単独又は支持枠内に施工することで、透明性のある防水壁が得られる。支持枠は、通常、鉄、アルミニウム、ステンレスのような金属材料からなる桟、支柱、固定枠などの構造材から構成される。
【0019】
防水壁材の施工方法については特に限定されないが、例えば、防水壁材の周辺を金属製の枠で固定し、コンクリート製基礎壁などに立てられた支柱に取付ける方法や、防水壁材料を金属製の周辺固定枠なしに直接支柱に取付ける方法ないしコンクリート製防水壁に埋め込む方法などがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂板からなることを特徴とする防水壁材。
【請求項2】
透明樹脂板が、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂からなるものである請求項1に記載の防水壁材。

【公開番号】特開2008−208681(P2008−208681A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48941(P2007−48941)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】