防水扉装置
【課題】 水密機能を劣化させることなく戸当たりからゴムパッキンを無くした防水扉装置を提供する。
【解決手段】 倒伏状態でケース5に収納される可動扉3の蝶着部21近傍に、起立状態でケース5内面に当接する止水ゴム24を回動軸に平行に延設する一方、可動扉3の左右に、止水ゴム24の両端部から上方に亘り配置されて戸当り3を押圧する縦シール部材61と、縦シール部材61を進退動作させるシール機構部6と、可動扉2を起立させた状態において戸当り3に隣接して平行に配置される棒状の凸条部64とを備え、可動扉2を起立させた状態で縦シール部材61を戸当り3と凸条部64の双方に密着させて水密状態を生成する。
【解決手段】 倒伏状態でケース5に収納される可動扉3の蝶着部21近傍に、起立状態でケース5内面に当接する止水ゴム24を回動軸に平行に延設する一方、可動扉3の左右に、止水ゴム24の両端部から上方に亘り配置されて戸当り3を押圧する縦シール部材61と、縦シール部材61を進退動作させるシール機構部6と、可動扉2を起立させた状態において戸当り3に隣接して平行に配置される棒状の凸条部64とを備え、可動扉2を起立させた状態で縦シール部材61を戸当り3と凸条部64の双方に密着させて水密状態を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建屋の出入口や地下駐車場の出入口等に設置され、水害時に出入口から水が浸入して建屋が浸水するのを防止する防水扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建屋の出入口等に設置される防水扉装置は、出入口の床面に可動扉を倒伏して埋設するように配置しておき、使用時は回動して起立させ、出入口を塞ぐよう構成したものが知られている。例えば、特許文献1の防水扉装置は、出入口の左右にシール部材としてゴムパッキンを上下に亘り付設した戸当たりを立設し、倒伏状態にある可動扉を回動して起立させた際に、可動扉の表面を戸当たりのゴムパッキンに当接させることで、出入口を水密状態で塞ぐ構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−63799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成の場合、常時露出状態にある戸当たりにゴムパッキンが取り付けられているため、ゴムパッキンが劣化し易かった。また、建屋の出入口に設置される戸当りは目立つ存在であり、ゴムパッキンを備えた戸当りの構成は更に目立ち、美観上の要求の厳しい場所には不釣り合いなものとなっていた。そのため、可能であれば戸当たりにゴムパッキンを設けない構成が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、水密機能を劣化させることなく戸当たりからゴムパッキンを無くし、さらには専用の戸当りを必要としない防水扉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、建屋の出入口外側の床面に凹設されたケースの開口面を塞ぐように可動扉を倒伏収納すると共に、可動扉の基端部をケース内に設けた軸部に蝶着し、倒伏状態から回動して可動扉を起立させ、出入口の両側に立設した戸当りに当接させることで出入口を水密状態で塞ぐ防水扉装置であって、可動扉の蝶着部近傍に、起立状態でケース内面に当接する弾性体から成る横シール部材を可動扉の回動軸に平行に延設する一方、可動扉の左右に、横シール部材の両端部から上方に亘り配置されて戸当りを押圧する弾性体から成る縦シール部材と、縦シール部材を戸当り側へ進退動作させるシール機構部と、可動扉を起立させた状態において戸当りに隣接して平行に配置される棒状の凸条部とを備え、可動扉を起立させた状態で、縦シール部材を戸当りと凸条部の双方に密着させて水密状態を生成することを特徴とする。
この構成によれば、通常状態では床面に収納される可動扉にシール部材を設けるため、シール部材を地上に露出しないよう構成できる。そのため、シール部材を劣化し難くできるし、戸当りをすっきりした構造にでき意匠上も好ましい。更に、戸当りにシール部材を設ける必要がなくなり、戸当りに汎用性を持たせることができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、縦シール部材は断面が矩形の棒状体であって、凸条部を押圧する面と戸当りを押圧する面とが異なる面であるこを特徴とする。
この構成によれば、戸当りを押圧する面と凸条部を押圧する面が異なるため、同一面で押圧する構成に比べて止水作用の向上を図ることができる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、シール機構部は、縦シール部材の押圧状態を固定するクランプ手段を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、水密状態を保持させることができる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、可動扉が、倒伏状態から起立状態へ個別に移行できる複数の分割可動扉により構成され、隣接する分割可動扉の間は、一方の分割可動扉の凸条部を所定方向に膨出して隣接する他方の分割可動扉の戸当りを形成し、他方の分割可動扉に設けた縦シール部材を、一方の分割可動扉に形成した戸当りと自身の凸条部との双方を押圧することで水密状態を形成し、隣接する分割可動扉の間は、何れか一方の分割可動扉に設けたシール機構部により水密状態が形成されることを特徴とする。
この構成によれば、可動扉を複数の扉(分割可動扉)で構成しても、戸当りを分割可動扉の連結部に設置する必要が無いため、可動扉をケースに収納した通常状態では可動扉を1枚で構成した場合と同様に出入りする通行人の邪魔になる部材がない。そして、構成部材を削減できる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の構成において、隣接して配置される分割可動扉が一直線状に配置される部位は、一方の分割可動扉の凸条部を分割可動扉の後方に膨出して戸当りを形成することを特徴とする。
この構成によれば、分割可動扉の凸条部を後方に膨出させるだけで、戸当りを立設すること無く水密状態を生成でき、安価な構成で防水扉装置を構築できる。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4に記載の構成において、隣接して配置される分割可動扉がL字状に角度を持って配置される部位は、一方の分割可動扉の凸条部を分割可動扉の側方に膨出して戸当りを形成することを特徴とする。
この構成によれば、分割可動扉の凸条部を側方に膨出させるだけで、戸当りを立設することなく水密状態を生成でき、安価な構成で防水扉装置を構築できる。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の構成において、出入口が、引き違いサッシや自動ドア等のサッシ部材で構成されている場合、出入口の左右端部に配置される戸当りは、建屋側のサッシ枠であることを特徴とする。
この構成によれば、出入口の左右端部に戸当りを立設する必要がなく、部材を削減できるし意匠上も好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通常状態では床面に収納される可動扉にシール部材を設けるため、シール部材を地上に露出しないよう構成できる。そのため、シール部材を劣化し難くできるし、戸当りをすっきりした構造にでき意匠上も好ましい。更に、戸当りにシール部材を設ける必要がなくなるため、建屋の部材を戸当りとして使用することも可能となり、部材の削減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る防水扉装置の一例を示し、可動扉を倒伏した状態の平面図である。
【図2】図1の可動扉を起立させてクランプした状態の平面図である。
【図3】図2の背面説明図である。
【図4】図1のX−X線断面説明図である。
【図5】図2のY−Y線断面説明図である。
【図6】図2のA部拡大図である。
【図7】図6においてクランプレバーによるクランプを解除した状態の説明図である。
【図8】L字状に構成された防水扉装置の平面図である。
【図9】図8のB部拡大図である。
【図10】図8のC部拡大図である。
【図11】図8のD部拡大図である。
【図12】図8のE部拡大図である。
【図13】コ字状に構成された防水扉装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1,図2は本発明に係る防水扉装置の第1の形態を示す平面図であり、1枚の可動扉を備えた防水扉装置を示している。図1は可動扉2を倒伏した状態、図2は可動扉2を起立させた状態を示し、隣接する建屋等は省略してある。
【0016】
図1,図2において、2は防水扉装置1の主要部を成す可動扉、3は建屋出入口の左右両側に設置され、起立させた可動扉2が密着する戸当り、4は起立時下部となる可動扉2の一部に形成された凹部を覆い平坦にするための蓋部材、5は可動扉2を収容するために床面(地面)に凹設されたケース、6は水密状態を形成するためのシール機構部、7は作業者が可動扉を操作するための取っ手である。図1,図2において戸当り3,3の間が建屋の出入口であり、戸当り3の図示上側が建屋側、下側が外側(出入口前)となる。
【0017】
また、図3は図2の状態の背面説明図、図4は図1のX−X線断面説明図、図5は図2のY−Y線断面説明図を示している。可動扉2は、シール機構部6に加えて、図3〜図5に示すように、ケース5内の戸当り3近傍に設けられた回動軸51に係合する蝶着部21、戸当り3,3間を閉塞する閉塞板22、可動扉2下部の隙間を無くすためにケース5の壁面に密着する横シール部材としての帯状の止水ゴム24を備えている。以下、各部を具体的に説明する。尚、Pは床面(地面)を示している。
【0018】
蝶着部21は、可動扉2の基端部である下端をL字状に折り曲げて形成され、着脱可能に構成されている。止水ゴム24は、この蝶着部21の上部に蝶着部21に平行に左右に亘り貼着され、その左右端部は図3に示すように上方に曲げられ、左右に設けられたシール機構部6と連携して可動扉2の水密状態を形成するよう構成されている。尚、図3では蝶着部21は省略してある。
【0019】
可動扉2は、倒伏してケース5に収納した状態では、周囲床面Pと面一になるよう配置されるが、起立状態では閉塞板22が図5に示すように左右の戸当り3の間を通過し、前方に突出した位置で制止するよう構成されている。また、閉塞板22の倒伏時上面となる前面は平坦に形成され、床面として良好に使用できるよう形成されている。
尚、蓋部材4はグレーチングを兼ねており、図4に示すようにU字状溝部41と蓋板42とで構成されている。
【0020】
図6は図2A部の拡大図を示している。この図6に示すように、シール機構部6は閉塞板22の左右背部に設けられ、棒状のゴム製弾性体から成る縦シール部材61、縦シール部材61を保持する保持棒62、保持棒62を閉塞板22背部で移動可能に支持するアーム体63、密閉操作時に縦シール部材61が当接する凸条部64、縦シール部材61が戸当り3と凸条部64の双方に密着した状態をロック(固定)するクランプレバー65等を備えている。
尚、この図6では、クランプレバー65を係止突起66に係止して縦シール部材61を戸当り3と凸条部64に密着させてロックした状態を示している。
【0021】
凸条部64は、可動扉2を起立させた状態で戸当り3の近傍に平行に配置されるよう閉塞板22の側辺に沿って形成され、縦シール部材61は凸条部64に平行に配置されている。
そして、図5に示すようにクランプレバー65は、略中央が連結部材65aを介して保持棒62に回動可能に連結され、先端には、凸条部64に設けられた係止突起66に係止するための係止溝65bが形成されている。
【0022】
アーム体63は略コ字状を成し、保持棒62の上下2箇所に設けられている。一端が閉塞板22背部に軸着され、他端は保持棒62に固着されている。
図7は、図6においてクランプレバー65によるクランプを解除し、縦シール部材61を閉塞板22の背部に移動した状態を示している。回動扉2を倒伏してケース5に収納する際は、この図7に示すように縦シール部材61を閉塞板22の背部に移動させることで、閉塞板22の左右に突出する部位が無くなる。この結果、閉塞板22に合わせて形成されたケース5に収納でき、ケース5の開口面は隙間無く閉塞される。
【0023】
次に、このように構成された防水扉装置1の操作手順を説明する。防水扉装置1は通常倒伏状態にあり、倒伏することで閉塞板22の端部(下部)に現れる凹部は蓋部材4により閉塞され、ケース5の開口部は平坦に閉塞された状態となっている。
この状態から可動扉2を起立させて水密状態を形成する場合、まず図4に示すように蓋部材4を取り外す。蓋部材4を取り外すことで、可動扉2は回動可能となる。この状態で、作業者が取っ手7を掴んで持ち上げることで、可動扉2は回動軸51を中心に回動する。起立させた所定角度まで回動操作すると、閉塞板22はケース5の外側まで移動し、閉塞板22の下部に設けられた止水ゴム24がケース5の壁面に密着する。
この結果、可動扉2の重心が回動軸51の外側(前側)に移動するため、可動扉2の起立状態は安定し、凸条部64は戸当り3に隣接して平行に配置される。こうして隣接して配置された凸条部64と戸当り3に対して、アーム体63を回動して保持棒62を閉塞板22の側方へ露出させることで、縦シール部材61が戸当り3と凸条部64の双方へ当接する。
【0024】
この状態、即ち縦シール部材61を戸当り3と凸条部64の双方へ当接させた状態は、クランプレバー65により固定される。クランプレバー65を操作して係止溝65bを凸条部64の係止突起66に係止させて押し下げることで、縦シール部材61は図6に示す状態となり、縦シール部材61が戸当り3の側方に密着し、左右の戸当り3,3に対して内側から左右外方に押圧する。また、凸条部64に対しては後方から密着する。こうして、閉塞板22の側部は確実に水密状態となる。
【0025】
こうして可動扉2を起立することで、可動扉2は起立させた状態でケース5の壁面に係止して、起立角度以上に回動することが無く、背部から大きな水圧が加わっても可動扉が前方に傾倒することがない。そして、クランプレバー65によりロックすることで、洪水等で可動扉2背部側が大量の水で溢れても、可動扉2下部は止水ゴム24で水密状態が形成されるし、左右側部は縦シール部材61により水密状態が形成され、左右の戸当り3,3間において水が可動扉2の表側に流れ出ることがない。
【0026】
このように、通常状態では床面に収納される可動扉2に縦シール部材61を備えたシール機構部6を設けるため、シール部材を地上に露出しないよう構成できる。そのため、シール部材を劣化し難くできるし、戸当り3をすっきりした構造にでき意匠上も好ましい。更に、戸当り3にシール部材を設ける必要がなくなり、戸当りに汎用性を持たせることができる。
また、縦シール部材61の戸当り3を押圧する面と凸条部64を押圧する面が異なるため、同一面で押圧する構成に比べて止水作用の向上を図ることができる。
【0027】
図8は防水扉装置1の第2の形態を示し、可動扉2を複数の扉に分割して構成した場合を示している。具体的に、図8では可動扉2を4枚の分割可動扉2A(第1分割可動扉2Aa、第2分割可動扉2Ab、第3分割可動扉2Ac、第4分割可動扉2Ad)により構成している。
出入口が広い場合、また一直線に閉塞できない場合、このように可動扉を分割可動扉2Aを複数枚使用することで動力を使わず可動扉2を起立させることができ、水密状態を形成できる。ここでは1枚の分割可動扉2A(第1分割可動扉2Aa)のみ角度を変えてL字状に形成した構成を示している。
【0028】
尚、31は出入口を構成するスイングドア、32は他の出入口を構成する引き違いサッシを示し、出入口全体がL字状に形成されている。また、図8は可動扉2を起立させてロックした状態を示している。
【0029】
防水扉装置1は、このL字に形成された出入口の外側のエントランス空間を挟んで逆向きのL字を形成した構成となっている。以下、具体的に説明する。
図9は図8のB部の拡大図を示し、防水扉装置1の右端部(図示左端)となる第1分割可動扉2Aaの右端部の構成を示している。ここでは、建屋に組み込まれたサッシ枠32aを戸当り3として使用しており、戸当り3にシール部材を設ける必要がないため、このように建屋に組み込まれた部材を戸当りとして使用することができる。
そして、分割可動扉2Aと上記形態の可動扉2を比べた場合、シール機構部6の一部が異なる構成となっているため、シール機構部6を中心に説明し、閉塞板22、ケース5、等は上記第1の形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0030】
第1分割可動扉2Aaの右端部のシール機構部6は、建屋側サッシ枠32aの前方に突出する部位の側部を利用して水密状態を形成する。凸条部64は、建屋側サッシ枠32aの前面に対して対峙するよう配置され、背部が建屋側サッシ枠32aの側面と面一になるよう配置される。尚、この構成の場合、図9に示すように凸条部64は閉塞板22から僅かに側方に露出させて形成される。
そして、面一となったサッシ枠32aの側部と凸条部64に対して、縦シール部材61の同一面が当接して密着するよう構成されている。尚、アーム体63やクランプレバー65の構成は図1と同様である。
【0031】
図10は図8のC部の拡大図を示し、防水扉装置1の左端(図示右端)となる第4分割可動扉2Adのシール機構部6の構成を示している。防水扉装置1の右端と同様に、出入口に対して直交するよう防水扉装置1が配置され、建屋に組み込まれた部材(ここではスイングドア31のドアフレーム31a)を戸当りとして使用している。
図10に示すように、建屋壁面から突出する部位の殆どない部材を戸当りとして使用する場合は、壁面と平行な前面を縦シール部材61の当接面とする。この結果、シール機構部6は、上記第1の形態と同様に構成できる。即ち、ドアフレーム31aが凸条部64の斜め後方(分割可動扉2Aから見て斜め後方)に位置するよう配置すればよく、縦シール部材61の一面を凸条部64に当接させ、隣接する一面をドアフレーム31aに当接させることができ、水密状態を形成できる。
【0032】
図11は、直角に折り曲げ形成した図8D部の拡大図であり、第1分割可動扉2Aaと第2分割可動扉2Abとの連結部のシール機構部6の構成を示している。このように直角に連結される場合、一方の分割可動扉2Aである第1分割可動扉2Aaの凸条部64aを自身の側方へ膨出させて幅広に形成し、この膨出部Mの前面に隣接する分割可動扉2Aである第2分割可動扉2Abの側部を配置し、膨出部Mを戸当りとして使用している。この結果、上記第1の形態と同様の構成のシール機構部6を使用して水密状態を形成できる。
【0033】
このように、隣接して配置される分割可動扉2AがL字状に角度を持って配置される部位は、一方の分割可動扉2Aの凸条部64aを側方に膨出形成するだけで、戸当り3を別途立設することなく水密状態を生成でき、安価な構成で防水扉装置を構築できる。
【0034】
図12は図8のE部の拡大図を示し、分割可動扉2Aを一直線状に連結したシール機構部6の構成を示している。図12に示すように一直線状に連結する場合は、一方の分割可動扉2Aである第3分割可動扉2Acの凸条部64bを後方に膨出させて形成し、膨出部Mを他方の分割可動扉2Aである第2分割可動扉2Abの戸当りとして使用している。この結果、上記第1の形態と同様のシール機構部6を使用して水密状態を形成できる。
尚、図8のF部のシール機構部6は、このE部のシール機構部6を左右反転させた構成であるため説明を省略する。
【0035】
このように、隣接して配置される分割可動扉2Aが一直線状に配置される部位は、分割可動扉2Aの凸条部64を後方に膨出させるだけで、戸当り3を立設すること無く水密状態を生成でき、防水扉装置1を安価に構築できる。
そして、分割可動扉2Aの間を水密構造とする場合、何れか一方の分割可動扉2Aにシール機構部6を設ければよく、双方に設ける必要はないため防水扉装置1を安価に構築できる。また、分割可動扉2A同士を角度を持たせて連結し、可動扉2をL字状に形成しても水密状態を形成でき、水害等による出入口からの水没を防ぐことができる。
【0036】
図13は、分割可動扉2Aを複数使用して形成した防水扉装置1の他の例を示し、コ字状に形成した様子を示している。但し、図13は全ての分割可動扉2Aを倒伏した状態の平面図である。引き違いサッシ33等で構成された出入口の外側に風除室Sが設けられている場合、このように風除室Sを囲むように形成することができる。ここでは、5枚の分割可動扉2Ae〜2Aiを使用してコ字状の可動扉2を形成し、上記図8に示すL字状の構成を2組使用することで、このようなコ字状の形態であっても容易に構成できる。
【0037】
このように、可動扉2を複数の扉(分割可動扉2A)で構成しても、戸当り3を分割可動扉2Aの連結部に設置する必要が無いため、可動扉2をケース5に収納した通常状態では、可動扉2を1枚で構成した場合と同様に出入りする通行人の邪魔になる部材がない。そして、構成部材を削減できる。
また、引き違いサッシやスイングドア等のサッシ部材を戸当り3として使用することで、出入口の左右端部に専用の戸当り3を設ける必要がなくなり、部材を削減できるし意匠上も好ましいものとなる。
【0038】
尚、上記実施形態では、サッシ枠32aやドアフレーム31aを戸当りとして使用しているが、平坦で堅牢な部材であれば他の部材、例えば自動ドアの建具でも良く、戸当りとして代用できる。
【符号の説明】
【0039】
1・・防水扉装置、2・・可動扉、3・・戸当り、4・・蓋部材、4・・ケース、6・・シール機構部、22・・閉塞板、24・・止水ゴム(横シール部材)、32a・・サッシ枠、61・・縦シール部材、62・・保持棒、63・・アーム体、64,64a,64b・・凸条部、65・・クランプレバー(クランプ手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建屋の出入口や地下駐車場の出入口等に設置され、水害時に出入口から水が浸入して建屋が浸水するのを防止する防水扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建屋の出入口等に設置される防水扉装置は、出入口の床面に可動扉を倒伏して埋設するように配置しておき、使用時は回動して起立させ、出入口を塞ぐよう構成したものが知られている。例えば、特許文献1の防水扉装置は、出入口の左右にシール部材としてゴムパッキンを上下に亘り付設した戸当たりを立設し、倒伏状態にある可動扉を回動して起立させた際に、可動扉の表面を戸当たりのゴムパッキンに当接させることで、出入口を水密状態で塞ぐ構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−63799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成の場合、常時露出状態にある戸当たりにゴムパッキンが取り付けられているため、ゴムパッキンが劣化し易かった。また、建屋の出入口に設置される戸当りは目立つ存在であり、ゴムパッキンを備えた戸当りの構成は更に目立ち、美観上の要求の厳しい場所には不釣り合いなものとなっていた。そのため、可能であれば戸当たりにゴムパッキンを設けない構成が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、水密機能を劣化させることなく戸当たりからゴムパッキンを無くし、さらには専用の戸当りを必要としない防水扉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、建屋の出入口外側の床面に凹設されたケースの開口面を塞ぐように可動扉を倒伏収納すると共に、可動扉の基端部をケース内に設けた軸部に蝶着し、倒伏状態から回動して可動扉を起立させ、出入口の両側に立設した戸当りに当接させることで出入口を水密状態で塞ぐ防水扉装置であって、可動扉の蝶着部近傍に、起立状態でケース内面に当接する弾性体から成る横シール部材を可動扉の回動軸に平行に延設する一方、可動扉の左右に、横シール部材の両端部から上方に亘り配置されて戸当りを押圧する弾性体から成る縦シール部材と、縦シール部材を戸当り側へ進退動作させるシール機構部と、可動扉を起立させた状態において戸当りに隣接して平行に配置される棒状の凸条部とを備え、可動扉を起立させた状態で、縦シール部材を戸当りと凸条部の双方に密着させて水密状態を生成することを特徴とする。
この構成によれば、通常状態では床面に収納される可動扉にシール部材を設けるため、シール部材を地上に露出しないよう構成できる。そのため、シール部材を劣化し難くできるし、戸当りをすっきりした構造にでき意匠上も好ましい。更に、戸当りにシール部材を設ける必要がなくなり、戸当りに汎用性を持たせることができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、縦シール部材は断面が矩形の棒状体であって、凸条部を押圧する面と戸当りを押圧する面とが異なる面であるこを特徴とする。
この構成によれば、戸当りを押圧する面と凸条部を押圧する面が異なるため、同一面で押圧する構成に比べて止水作用の向上を図ることができる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、シール機構部は、縦シール部材の押圧状態を固定するクランプ手段を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、水密状態を保持させることができる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、可動扉が、倒伏状態から起立状態へ個別に移行できる複数の分割可動扉により構成され、隣接する分割可動扉の間は、一方の分割可動扉の凸条部を所定方向に膨出して隣接する他方の分割可動扉の戸当りを形成し、他方の分割可動扉に設けた縦シール部材を、一方の分割可動扉に形成した戸当りと自身の凸条部との双方を押圧することで水密状態を形成し、隣接する分割可動扉の間は、何れか一方の分割可動扉に設けたシール機構部により水密状態が形成されることを特徴とする。
この構成によれば、可動扉を複数の扉(分割可動扉)で構成しても、戸当りを分割可動扉の連結部に設置する必要が無いため、可動扉をケースに収納した通常状態では可動扉を1枚で構成した場合と同様に出入りする通行人の邪魔になる部材がない。そして、構成部材を削減できる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の構成において、隣接して配置される分割可動扉が一直線状に配置される部位は、一方の分割可動扉の凸条部を分割可動扉の後方に膨出して戸当りを形成することを特徴とする。
この構成によれば、分割可動扉の凸条部を後方に膨出させるだけで、戸当りを立設すること無く水密状態を生成でき、安価な構成で防水扉装置を構築できる。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4に記載の構成において、隣接して配置される分割可動扉がL字状に角度を持って配置される部位は、一方の分割可動扉の凸条部を分割可動扉の側方に膨出して戸当りを形成することを特徴とする。
この構成によれば、分割可動扉の凸条部を側方に膨出させるだけで、戸当りを立設することなく水密状態を生成でき、安価な構成で防水扉装置を構築できる。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の構成において、出入口が、引き違いサッシや自動ドア等のサッシ部材で構成されている場合、出入口の左右端部に配置される戸当りは、建屋側のサッシ枠であることを特徴とする。
この構成によれば、出入口の左右端部に戸当りを立設する必要がなく、部材を削減できるし意匠上も好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通常状態では床面に収納される可動扉にシール部材を設けるため、シール部材を地上に露出しないよう構成できる。そのため、シール部材を劣化し難くできるし、戸当りをすっきりした構造にでき意匠上も好ましい。更に、戸当りにシール部材を設ける必要がなくなるため、建屋の部材を戸当りとして使用することも可能となり、部材の削減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る防水扉装置の一例を示し、可動扉を倒伏した状態の平面図である。
【図2】図1の可動扉を起立させてクランプした状態の平面図である。
【図3】図2の背面説明図である。
【図4】図1のX−X線断面説明図である。
【図5】図2のY−Y線断面説明図である。
【図6】図2のA部拡大図である。
【図7】図6においてクランプレバーによるクランプを解除した状態の説明図である。
【図8】L字状に構成された防水扉装置の平面図である。
【図9】図8のB部拡大図である。
【図10】図8のC部拡大図である。
【図11】図8のD部拡大図である。
【図12】図8のE部拡大図である。
【図13】コ字状に構成された防水扉装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1,図2は本発明に係る防水扉装置の第1の形態を示す平面図であり、1枚の可動扉を備えた防水扉装置を示している。図1は可動扉2を倒伏した状態、図2は可動扉2を起立させた状態を示し、隣接する建屋等は省略してある。
【0016】
図1,図2において、2は防水扉装置1の主要部を成す可動扉、3は建屋出入口の左右両側に設置され、起立させた可動扉2が密着する戸当り、4は起立時下部となる可動扉2の一部に形成された凹部を覆い平坦にするための蓋部材、5は可動扉2を収容するために床面(地面)に凹設されたケース、6は水密状態を形成するためのシール機構部、7は作業者が可動扉を操作するための取っ手である。図1,図2において戸当り3,3の間が建屋の出入口であり、戸当り3の図示上側が建屋側、下側が外側(出入口前)となる。
【0017】
また、図3は図2の状態の背面説明図、図4は図1のX−X線断面説明図、図5は図2のY−Y線断面説明図を示している。可動扉2は、シール機構部6に加えて、図3〜図5に示すように、ケース5内の戸当り3近傍に設けられた回動軸51に係合する蝶着部21、戸当り3,3間を閉塞する閉塞板22、可動扉2下部の隙間を無くすためにケース5の壁面に密着する横シール部材としての帯状の止水ゴム24を備えている。以下、各部を具体的に説明する。尚、Pは床面(地面)を示している。
【0018】
蝶着部21は、可動扉2の基端部である下端をL字状に折り曲げて形成され、着脱可能に構成されている。止水ゴム24は、この蝶着部21の上部に蝶着部21に平行に左右に亘り貼着され、その左右端部は図3に示すように上方に曲げられ、左右に設けられたシール機構部6と連携して可動扉2の水密状態を形成するよう構成されている。尚、図3では蝶着部21は省略してある。
【0019】
可動扉2は、倒伏してケース5に収納した状態では、周囲床面Pと面一になるよう配置されるが、起立状態では閉塞板22が図5に示すように左右の戸当り3の間を通過し、前方に突出した位置で制止するよう構成されている。また、閉塞板22の倒伏時上面となる前面は平坦に形成され、床面として良好に使用できるよう形成されている。
尚、蓋部材4はグレーチングを兼ねており、図4に示すようにU字状溝部41と蓋板42とで構成されている。
【0020】
図6は図2A部の拡大図を示している。この図6に示すように、シール機構部6は閉塞板22の左右背部に設けられ、棒状のゴム製弾性体から成る縦シール部材61、縦シール部材61を保持する保持棒62、保持棒62を閉塞板22背部で移動可能に支持するアーム体63、密閉操作時に縦シール部材61が当接する凸条部64、縦シール部材61が戸当り3と凸条部64の双方に密着した状態をロック(固定)するクランプレバー65等を備えている。
尚、この図6では、クランプレバー65を係止突起66に係止して縦シール部材61を戸当り3と凸条部64に密着させてロックした状態を示している。
【0021】
凸条部64は、可動扉2を起立させた状態で戸当り3の近傍に平行に配置されるよう閉塞板22の側辺に沿って形成され、縦シール部材61は凸条部64に平行に配置されている。
そして、図5に示すようにクランプレバー65は、略中央が連結部材65aを介して保持棒62に回動可能に連結され、先端には、凸条部64に設けられた係止突起66に係止するための係止溝65bが形成されている。
【0022】
アーム体63は略コ字状を成し、保持棒62の上下2箇所に設けられている。一端が閉塞板22背部に軸着され、他端は保持棒62に固着されている。
図7は、図6においてクランプレバー65によるクランプを解除し、縦シール部材61を閉塞板22の背部に移動した状態を示している。回動扉2を倒伏してケース5に収納する際は、この図7に示すように縦シール部材61を閉塞板22の背部に移動させることで、閉塞板22の左右に突出する部位が無くなる。この結果、閉塞板22に合わせて形成されたケース5に収納でき、ケース5の開口面は隙間無く閉塞される。
【0023】
次に、このように構成された防水扉装置1の操作手順を説明する。防水扉装置1は通常倒伏状態にあり、倒伏することで閉塞板22の端部(下部)に現れる凹部は蓋部材4により閉塞され、ケース5の開口部は平坦に閉塞された状態となっている。
この状態から可動扉2を起立させて水密状態を形成する場合、まず図4に示すように蓋部材4を取り外す。蓋部材4を取り外すことで、可動扉2は回動可能となる。この状態で、作業者が取っ手7を掴んで持ち上げることで、可動扉2は回動軸51を中心に回動する。起立させた所定角度まで回動操作すると、閉塞板22はケース5の外側まで移動し、閉塞板22の下部に設けられた止水ゴム24がケース5の壁面に密着する。
この結果、可動扉2の重心が回動軸51の外側(前側)に移動するため、可動扉2の起立状態は安定し、凸条部64は戸当り3に隣接して平行に配置される。こうして隣接して配置された凸条部64と戸当り3に対して、アーム体63を回動して保持棒62を閉塞板22の側方へ露出させることで、縦シール部材61が戸当り3と凸条部64の双方へ当接する。
【0024】
この状態、即ち縦シール部材61を戸当り3と凸条部64の双方へ当接させた状態は、クランプレバー65により固定される。クランプレバー65を操作して係止溝65bを凸条部64の係止突起66に係止させて押し下げることで、縦シール部材61は図6に示す状態となり、縦シール部材61が戸当り3の側方に密着し、左右の戸当り3,3に対して内側から左右外方に押圧する。また、凸条部64に対しては後方から密着する。こうして、閉塞板22の側部は確実に水密状態となる。
【0025】
こうして可動扉2を起立することで、可動扉2は起立させた状態でケース5の壁面に係止して、起立角度以上に回動することが無く、背部から大きな水圧が加わっても可動扉が前方に傾倒することがない。そして、クランプレバー65によりロックすることで、洪水等で可動扉2背部側が大量の水で溢れても、可動扉2下部は止水ゴム24で水密状態が形成されるし、左右側部は縦シール部材61により水密状態が形成され、左右の戸当り3,3間において水が可動扉2の表側に流れ出ることがない。
【0026】
このように、通常状態では床面に収納される可動扉2に縦シール部材61を備えたシール機構部6を設けるため、シール部材を地上に露出しないよう構成できる。そのため、シール部材を劣化し難くできるし、戸当り3をすっきりした構造にでき意匠上も好ましい。更に、戸当り3にシール部材を設ける必要がなくなり、戸当りに汎用性を持たせることができる。
また、縦シール部材61の戸当り3を押圧する面と凸条部64を押圧する面が異なるため、同一面で押圧する構成に比べて止水作用の向上を図ることができる。
【0027】
図8は防水扉装置1の第2の形態を示し、可動扉2を複数の扉に分割して構成した場合を示している。具体的に、図8では可動扉2を4枚の分割可動扉2A(第1分割可動扉2Aa、第2分割可動扉2Ab、第3分割可動扉2Ac、第4分割可動扉2Ad)により構成している。
出入口が広い場合、また一直線に閉塞できない場合、このように可動扉を分割可動扉2Aを複数枚使用することで動力を使わず可動扉2を起立させることができ、水密状態を形成できる。ここでは1枚の分割可動扉2A(第1分割可動扉2Aa)のみ角度を変えてL字状に形成した構成を示している。
【0028】
尚、31は出入口を構成するスイングドア、32は他の出入口を構成する引き違いサッシを示し、出入口全体がL字状に形成されている。また、図8は可動扉2を起立させてロックした状態を示している。
【0029】
防水扉装置1は、このL字に形成された出入口の外側のエントランス空間を挟んで逆向きのL字を形成した構成となっている。以下、具体的に説明する。
図9は図8のB部の拡大図を示し、防水扉装置1の右端部(図示左端)となる第1分割可動扉2Aaの右端部の構成を示している。ここでは、建屋に組み込まれたサッシ枠32aを戸当り3として使用しており、戸当り3にシール部材を設ける必要がないため、このように建屋に組み込まれた部材を戸当りとして使用することができる。
そして、分割可動扉2Aと上記形態の可動扉2を比べた場合、シール機構部6の一部が異なる構成となっているため、シール機構部6を中心に説明し、閉塞板22、ケース5、等は上記第1の形態と同様の構成であるため説明を省略する。
【0030】
第1分割可動扉2Aaの右端部のシール機構部6は、建屋側サッシ枠32aの前方に突出する部位の側部を利用して水密状態を形成する。凸条部64は、建屋側サッシ枠32aの前面に対して対峙するよう配置され、背部が建屋側サッシ枠32aの側面と面一になるよう配置される。尚、この構成の場合、図9に示すように凸条部64は閉塞板22から僅かに側方に露出させて形成される。
そして、面一となったサッシ枠32aの側部と凸条部64に対して、縦シール部材61の同一面が当接して密着するよう構成されている。尚、アーム体63やクランプレバー65の構成は図1と同様である。
【0031】
図10は図8のC部の拡大図を示し、防水扉装置1の左端(図示右端)となる第4分割可動扉2Adのシール機構部6の構成を示している。防水扉装置1の右端と同様に、出入口に対して直交するよう防水扉装置1が配置され、建屋に組み込まれた部材(ここではスイングドア31のドアフレーム31a)を戸当りとして使用している。
図10に示すように、建屋壁面から突出する部位の殆どない部材を戸当りとして使用する場合は、壁面と平行な前面を縦シール部材61の当接面とする。この結果、シール機構部6は、上記第1の形態と同様に構成できる。即ち、ドアフレーム31aが凸条部64の斜め後方(分割可動扉2Aから見て斜め後方)に位置するよう配置すればよく、縦シール部材61の一面を凸条部64に当接させ、隣接する一面をドアフレーム31aに当接させることができ、水密状態を形成できる。
【0032】
図11は、直角に折り曲げ形成した図8D部の拡大図であり、第1分割可動扉2Aaと第2分割可動扉2Abとの連結部のシール機構部6の構成を示している。このように直角に連結される場合、一方の分割可動扉2Aである第1分割可動扉2Aaの凸条部64aを自身の側方へ膨出させて幅広に形成し、この膨出部Mの前面に隣接する分割可動扉2Aである第2分割可動扉2Abの側部を配置し、膨出部Mを戸当りとして使用している。この結果、上記第1の形態と同様の構成のシール機構部6を使用して水密状態を形成できる。
【0033】
このように、隣接して配置される分割可動扉2AがL字状に角度を持って配置される部位は、一方の分割可動扉2Aの凸条部64aを側方に膨出形成するだけで、戸当り3を別途立設することなく水密状態を生成でき、安価な構成で防水扉装置を構築できる。
【0034】
図12は図8のE部の拡大図を示し、分割可動扉2Aを一直線状に連結したシール機構部6の構成を示している。図12に示すように一直線状に連結する場合は、一方の分割可動扉2Aである第3分割可動扉2Acの凸条部64bを後方に膨出させて形成し、膨出部Mを他方の分割可動扉2Aである第2分割可動扉2Abの戸当りとして使用している。この結果、上記第1の形態と同様のシール機構部6を使用して水密状態を形成できる。
尚、図8のF部のシール機構部6は、このE部のシール機構部6を左右反転させた構成であるため説明を省略する。
【0035】
このように、隣接して配置される分割可動扉2Aが一直線状に配置される部位は、分割可動扉2Aの凸条部64を後方に膨出させるだけで、戸当り3を立設すること無く水密状態を生成でき、防水扉装置1を安価に構築できる。
そして、分割可動扉2Aの間を水密構造とする場合、何れか一方の分割可動扉2Aにシール機構部6を設ければよく、双方に設ける必要はないため防水扉装置1を安価に構築できる。また、分割可動扉2A同士を角度を持たせて連結し、可動扉2をL字状に形成しても水密状態を形成でき、水害等による出入口からの水没を防ぐことができる。
【0036】
図13は、分割可動扉2Aを複数使用して形成した防水扉装置1の他の例を示し、コ字状に形成した様子を示している。但し、図13は全ての分割可動扉2Aを倒伏した状態の平面図である。引き違いサッシ33等で構成された出入口の外側に風除室Sが設けられている場合、このように風除室Sを囲むように形成することができる。ここでは、5枚の分割可動扉2Ae〜2Aiを使用してコ字状の可動扉2を形成し、上記図8に示すL字状の構成を2組使用することで、このようなコ字状の形態であっても容易に構成できる。
【0037】
このように、可動扉2を複数の扉(分割可動扉2A)で構成しても、戸当り3を分割可動扉2Aの連結部に設置する必要が無いため、可動扉2をケース5に収納した通常状態では、可動扉2を1枚で構成した場合と同様に出入りする通行人の邪魔になる部材がない。そして、構成部材を削減できる。
また、引き違いサッシやスイングドア等のサッシ部材を戸当り3として使用することで、出入口の左右端部に専用の戸当り3を設ける必要がなくなり、部材を削減できるし意匠上も好ましいものとなる。
【0038】
尚、上記実施形態では、サッシ枠32aやドアフレーム31aを戸当りとして使用しているが、平坦で堅牢な部材であれば他の部材、例えば自動ドアの建具でも良く、戸当りとして代用できる。
【符号の説明】
【0039】
1・・防水扉装置、2・・可動扉、3・・戸当り、4・・蓋部材、4・・ケース、6・・シール機構部、22・・閉塞板、24・・止水ゴム(横シール部材)、32a・・サッシ枠、61・・縦シール部材、62・・保持棒、63・・アーム体、64,64a,64b・・凸条部、65・・クランプレバー(クランプ手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の出入口外側の床面に凹設されたケースの開口面を塞ぐように可動扉を倒伏収納すると共に、前記可動扉の基端部をケース内に設けた軸部に蝶着し、倒伏状態から回動して前記可動扉を起立させ、前記出入口の両側に立設した戸当りに当接させることで前記出入口を水密状態で塞ぐ防水扉装置であって、
前記可動扉の前記蝶着部近傍に、起立状態で前記ケース内面に当接する弾性体から成る横シール部材を前記可動扉の回動軸に平行に延設する一方、
前記可動扉の左右に、前記横シール部材の両端部から上方に亘り配置されて前記戸当りを押圧する弾性体から成る縦シール部材と、前記縦シール部材を前記戸当り側へ進退動作させるシール機構部と、前記可動扉を起立させた状態において前記戸当りに隣接して平行に配置される棒状の凸条部とを備え、
前記可動扉を起立させた状態で、前記縦シール部材を前記戸当りと前記凸条部の双方に密着させて水密状態を生成することを特徴とする防水扉装置。
【請求項2】
前記縦シール部材は断面が矩形の棒状体であって、前記凸条部を押圧する面と前記戸当りを押圧する面とが異なる面であるこを特徴とする請求項1記載の防水扉装置。
【請求項3】
前記シール機構部は、前記縦シール部材の押圧状態を固定するクランプ手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の防水扉装置。
【請求項4】
前記可動扉が、倒伏状態から起立状態へ個別に移行できる複数の分割可動扉により構成され、
隣接する前記分割可動扉の間は、一方の分割可動扉の凸条部を所定方向に膨出して隣接する他方の分割可動扉の戸当りを形成し、他方の分割可動扉に設けた前記縦シール部材を、前記一方の分割可動扉に形成した戸当りと自身の凸条部との双方を押圧することで水密状態を形成し、
隣接する分割可動扉の間は、何れか一方の分割可動扉に設けた前記シール機構部により水密状態が形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の防水扉装置。
【請求項5】
隣接して配置される前記分割可動扉が一直線状に配置される部位は、前記一方の分割可動扉の凸条部を分割可動扉の後方に膨出して戸当りを形成することを特徴とする請求項4記載の防水扉装置。
【請求項6】
隣接して配置される前記分割可動扉がL字状に角度を持って配置される部位は、前記一方の分割可動扉の凸条部を分割可動扉の側方に膨出して戸当りを形成することを特徴とする請求項4記載の防水扉装置。
【請求項7】
出入口が、引き違いサッシや自動ドア等のサッシ部材で構成されている場合、
出入口の左右端部に配置される戸当りは、建屋側のサッシ枠であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の防水扉装置。
【請求項1】
建屋の出入口外側の床面に凹設されたケースの開口面を塞ぐように可動扉を倒伏収納すると共に、前記可動扉の基端部をケース内に設けた軸部に蝶着し、倒伏状態から回動して前記可動扉を起立させ、前記出入口の両側に立設した戸当りに当接させることで前記出入口を水密状態で塞ぐ防水扉装置であって、
前記可動扉の前記蝶着部近傍に、起立状態で前記ケース内面に当接する弾性体から成る横シール部材を前記可動扉の回動軸に平行に延設する一方、
前記可動扉の左右に、前記横シール部材の両端部から上方に亘り配置されて前記戸当りを押圧する弾性体から成る縦シール部材と、前記縦シール部材を前記戸当り側へ進退動作させるシール機構部と、前記可動扉を起立させた状態において前記戸当りに隣接して平行に配置される棒状の凸条部とを備え、
前記可動扉を起立させた状態で、前記縦シール部材を前記戸当りと前記凸条部の双方に密着させて水密状態を生成することを特徴とする防水扉装置。
【請求項2】
前記縦シール部材は断面が矩形の棒状体であって、前記凸条部を押圧する面と前記戸当りを押圧する面とが異なる面であるこを特徴とする請求項1記載の防水扉装置。
【請求項3】
前記シール機構部は、前記縦シール部材の押圧状態を固定するクランプ手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の防水扉装置。
【請求項4】
前記可動扉が、倒伏状態から起立状態へ個別に移行できる複数の分割可動扉により構成され、
隣接する前記分割可動扉の間は、一方の分割可動扉の凸条部を所定方向に膨出して隣接する他方の分割可動扉の戸当りを形成し、他方の分割可動扉に設けた前記縦シール部材を、前記一方の分割可動扉に形成した戸当りと自身の凸条部との双方を押圧することで水密状態を形成し、
隣接する分割可動扉の間は、何れか一方の分割可動扉に設けた前記シール機構部により水密状態が形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の防水扉装置。
【請求項5】
隣接して配置される前記分割可動扉が一直線状に配置される部位は、前記一方の分割可動扉の凸条部を分割可動扉の後方に膨出して戸当りを形成することを特徴とする請求項4記載の防水扉装置。
【請求項6】
隣接して配置される前記分割可動扉がL字状に角度を持って配置される部位は、前記一方の分割可動扉の凸条部を分割可動扉の側方に膨出して戸当りを形成することを特徴とする請求項4記載の防水扉装置。
【請求項7】
出入口が、引き違いサッシや自動ドア等のサッシ部材で構成されている場合、
出入口の左右端部に配置される戸当りは、建屋側のサッシ枠であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の防水扉装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−23979(P2013−23979A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162182(P2011−162182)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)
【Fターム(参考)】
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