説明

防水構造

【課題】 携帯機器の防水構造において、部品数や組み立て工程を減少する。
【解決手段】 携帯無線機10の裏面に形成された開口部12に装着され、開口部12の周縁19と接して開口部12を閉塞する電池パック11の周縁19´にパッキン32を設ける。こうすることで、パッキン32が開口部12の周縁19に押し当てられ、隙間を塞ぐ。このように、電池パック11にパッキン32を取り付けたことにより、無線機本体10と電池パック11が嵌合する部分で防水性能を確保できる。そのため、無線機本体10と電池パック11が、個々に防水構造を必要としない。さらに、パッキン32から内側に端子や電極を設けることで、それらを防水する必要がないため、防水部品を減少して組み立て工程を減少できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯機器の防水構造に関し、例えば、携帯型無線機本体と前記無線機本体に装着する電池パックなどの装着部材との防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯型の無線機などの携帯機器は、アウトドアや作業現場で使用されることが多いため、防水機能が必須アイテムとなっている。
【0003】
こうした防水機能を備えたものとして、例えば、図9の特許文献1に示すような携帯型の無線機がある。この無線機は、無線機本体1に、オプション用の電池パック2を装着して駆動時間を延長できるようにしたものである。
このような無線機では、従来、無線機本体1と電池パック2のそれぞれに、防水機構を備え、個々に防水することで、電池パック2を装着した際の防水特性を得る構成となっている。
すなわち、図9のように、無線機本体1は、開口部3のパネル4とケース5との間に防水パッキン(全周に必要)6を設ける構造としている。さらに、無線機本体1は、図9のように、電源端子部(電池パック2との接続用)7にも防水用のパッキン6を設ける構造としている。
一方、電池パック2は、ケースの接合面にパッキン6を取り付け、かつ、接続用の放電端子部8にパッキン6を設ける構造となっており、無線機本体1と電池パック2が、それぞれ、独立して防水性能を保持する構造とすることにより、無線機全体の防水性能を確保するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−228862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法では、無線機本体や電池パックの防水を個別にするため、それぞれの防水機構に合わせた防水部品を準備しなければならない。さらに、無線機本体や電池パックのみならず、無線機本体の電源端子や電池パックの放電端子なども防水構造としなければならないため、防水用の部品を多数準備しなければならず、それに伴う組み立て工程も多くなるという問題を抱えていた。
【0006】
そこで、この発明の課題は、携帯機器の防水構造において、部品数や組み立て工程を減少できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明では、携帯機器本体と、前記携帯機器本体に着脱可能な装着部材と、前記携帯機器本体と前記装着部材との間にパッキンが挟みこまれた電子機器の防水構造において、前記携帯機器本体は、厚みを一部切欠いた開口部を有し、前記装着部材は、携帯機器本体と当接し前記開口部を閉塞する周縁を有し、かつ、前記周縁には前記パッキンを取り付けるための溝を備え、一方、前記パッキンは、前記開口部の切欠に対応した立ち上がり部を有する3次元構造である構成を採用したのである。
【0008】
このような構成を採用することにより、開口部に装着部材を取り付けると、装着部材の周縁に取り付けたパッキンが開口部の周縁に押し当てられ、装着部材と開口部の隙間を塞ぐことで防水する。このとき、パッキンに切欠きに対応した立ち上がり部を設けたことにより、携帯機器の厚みを一部切欠いた開口部に合わせて、パッキンの当たり面が常に開口部の周縁に接するようにできるため、防水特性を得ることができる。
このように、パッキンの当たり面をパッキンの全周に亘って同一方向とせずに、携帯機器本体の開口部の形状に合わせた3次元構造としたので、厚みを切欠いた立ち上(下)がりの防水も一つのパッキンで行うことができる。そのため、防水構造をコンパクトにできる。
また、携帯機器に装着部材を取り付けた際に、携帯機器本体と装着部材を一体にして防水するので、個別に防水を行うよりも部品数及び組み立て工数の減少が図れる。
【0009】
このとき、上記パッキンが開口部と接触する先端部の断面を略三角形とし、その三角形の頂点を底辺の中点より装着部材の外側に向けて、あるいは内側に向けてずらせた構成を採用することができる。
【0010】
このような構成を採用することにより、パッキンは、三角形の頂点を外側あるいは内側のいずれかの同一方向にずらせた形状としたことで、パッキンを機器本体の開口部の周縁に押圧した際に、同一方向に潰れて水の浸入を防止するので、安定した防水特性を得ることができる。
【0011】
また、このとき、上記装着部材が電池を収容した電池パックとし、その電池パックの放電端子及びその放電端子と接続する機器本体の電源端子を開口部内に設けた構成を採用することができる。
【0012】
このような構成を採用することにより、電池パックの放電端子と機器本体の電源端子の防水も同時にできるため、部品数及び組み立て工数の減少が図れる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、以上のように構成したことにより、携帯機器本体と装着部材を一体に防水できる。そのため、防水部品の点数を減少し、かつ、組み立て工数の削減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の分解斜視図
【図2】(a)裏面側からの電池パックの斜視図、(b)先端部分の溝の正面図
【図3】電池パックの周縁の拡大図
【図4】パッキンの斜視図
【図5】パッキンの先端部の断面図
【図6】電池パックの取り付け時の作用説明図
【図7】電池パックの取り付け時の作用説明図
【図8】電池パック装着時の斜視図
【図9】従来例の作用説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
この形態の携帯機器は、図1に示す携帯型の無線機で、無線機本体10と電池パック11とで構成されている。
無線機本体10は、図1に示すように、樹脂製ケースの裏面全体に亘って厚みの一部(1/3程度)を切欠いた開口部12が形成されており、ここでは、開口部12以外(例えば、スイッチ、スピーカー、デイスプレイなど)は防水された構造となっている。
前記開口部12は、図1のものでは、上部ケース13を残した形状となっており、開口部12を構成する上部ケース13の左右の周縁19は、Rを付けた形状となっている。また、上部ケース13の周縁19の両端付近には、無線機本体10の正面側に向かって、ツメ止め14が両端に設けられており、後述するように電池パック11の係合用のツメ15を掛けるようになっている。
また、無線機本体10の下部には、係止用のツメ16とフック17が設けられており、後述のように、電池パック11を固定できるようになっている。
一方、開口部12は、ケースから一段下げてアルミ板による隔壁18を設けて内部の回路が露出しないようにしており、開口部12の周縁19は、樹脂製ケースの厚みを利用して電池パック11との接触部を形成するようにしてある。
この開口部12の上方には、2個の電源端子20が設けられている。前記端子20は、図1のように、隔壁18に形成された段部21に貫通孔22を設け、その貫通孔22内に、無線機本体10側に設けられたホルダー23を通すことによって係合させて支持するようになっており、内部回路への給電ができる構造となっている。また、電源端子20の間の突起31はストッパーで、取り付けの際、電池パック11の進出を止めて電源端子20を保護するためのものである。
【0016】
電池パック11は、図1のように、樹脂製の四角いトレー状のもので、上部を開放した形状となっている。この開放された上部の両側は、図2のように、Rをつけた形状となっており、両側のRを含む電池パック11の周縁19´は、無線機本体10の開口部12との接触部となるように形成されている。
また、この上部には、係合用のツメ15が左右に設けてあって、無線機本体10の上部ケース13に設けたツメ止め14に嵌るようになっている。さらに、電池パック11の下部には、図1のように、段差24と凹部25が設けてあって、それぞれ、無線機本体10のツメ16とフック17を嵌めるようになっている。
一方、トレー状の電池パック11の内側には、外側の周縁19´より突出した内壁26を設けて乾電池(ここでは単三)27を収容するようになっており、前記周縁19´の内側に設けた内壁26は、後述のように、無線機本体10の開口部12に嵌り込むようになっている。
また、この形態では、図1のように、内壁26の内側に仕切り28を設けて6コの乾電池27を並列に配置するようになっており、前記内壁26の左右に設けられた電極29を介して上部の放電電極30と接続するようになっている(図2参照)。
また、外側の周縁19´には、溝33を設けてパッキン32を取り付けるようにしてある。
すなわち、電池パック11の周縁19´に沿って、その周縁19´の端面に溝(ここでは端面の半分程度の幅)33を形成して、この溝33にパッキン32を取り付けることでパッキン32が電池パック11を一周するようにしてある。
また、前記溝33には、図3のような、パッキン32の抜け止め用の突起34と、図1、図2に示すような、位置決め用の凹部35が設けられている。
【0017】
他方、パッキン32は、ゴムまたは樹脂などの弾性材からなる耐水性を有するもので、図4のように、先端部を折り曲げた3次元構造に成形して、無線機本体10の開口部12の切欠に対応するように略垂直に立ち上がる立ち上がり部分を有するようになっている。
このように、パッキン32を3次元構造とすることで、パッキン32の当たり面が常に無線機本体10の開口部12の周縁19の接触部に当たるようにしてある。
すなわち、パッキン32の当たり面をパッキン32の全周に亘って同一方向とせずに、無線機本体10の開口部12の形状に合わせた3次元構造としたので、垂直方向の防水も一つのパッキン32でできる。例えば、パッキン32の当たり面を全周に亘って水平方向のみの同一方向とした場合、パッキン32を取り付ける溝33を設けるために必要な大きさだけ無線機本体10の縦寸法を大きくする必要があるが、パッキン32を3次元構造としているため、溝33を設けるためのスペースが不要であるため、防水構造をコンパクトにできる。
その際、パッキン32の前記開口部12と接触する先端部(当たり面)40の断面を、図5の鎖線で示すように、略三角形としてある。そして、その三角形の頂点をパッキンの中点より外側(電池パックに取り付けた際、外側に向くように)に向けてずらせた形状としてある。このような断面形状とすることにより、図7のように、無線機本体10の開口部12の周縁19に押圧した際、パッキン32が同一方向(好ましくは外向き)に潰れて安定した防水特性を得られるようにして、水などの浸入が起き難くしてある。
なお、ここでは、パッキン32の先端部40の頂点をパッキン32の中点より外側に向けた場合を示したが、これに限定されるものではない。パッキン32が同一方向(好ましくは外向き)に潰れて安定した防水特性を得られれば良いので、条件が許せば、内側に向けるようにしてもよい。
また、パッキン32には、図4のように、突部41を形成し、前記突部41を前述の溝33の凹部35に嵌めることで位置決めするようになっており、取り付け時にパッキン32がねじれることを防止することで当たり面を一定にし、かつ、組み立ても容易にできるようにしてある。
さらに、溝33に嵌めたパッキンの溝33からの離脱を防止するため、図2(b)のように、溝33のパッキン32の折り曲げ部分を嵌めるカーブ位置を肉厚36とし、溝33の幅を狭くしてある。
【0018】
この形態は、上記のように構成されており、図1のように、電池パック11は、周縁19´の溝33にパッキン32が取り付けられ、乾電池27を収容したのち、収容した乾電池27が無線機本体10の開口部12に臨むようにして装着する。その際、電池パック11のツメ15を無線機本体10の上部ケース13のツメ止め14に嵌め、押し込むようにして回動し、無線機本体10の開口部12に電池パック11の内壁26を嵌める。すると、電池パック11の下部の段差24(裏面側)に、無線機本体10の後部のツメ16が嵌り電池パック11を係止するので、電池パック11の凹部25にフック17を嵌めると、図8のように装着が完了する。
このとき、電池パック11の周縁19´は、図6→図7に示すように、パッキン32が一方向に潰れ(パッキン32の頂点と無線機本体10の周縁19とが垂直に接触するようにガイドして補助する)、さらに、電池パック11の内壁26が開口部12に嵌まり込んで、水の浸入を防ぐ。したがって、開口部12の内部は安定した防水特性が得られる。また、このとき、開口部12の内部の電源端子20と放電電極30の接続も完了する。
【0019】
このように、電池パック11にパッキン32を取り付けたことにより、無線機本体10と電池パック11が嵌合する部分で防水性能を確保できる。そのため、無線機本体10と電池パック11は、個々に防水構造を必要としない。さらに、パッキン32から内側の端子29や電極30については防水の必要がないため、端子用や電極用の防水部品も削減できる。
したがって、無線機本体10と電池パック11の防水を確保しつつ、防水部品の削減を図り、かつ、組み立て工程の削減を図ることができる。
【0020】
なお、この形態では、装着部材として電池パック11について述べたが、装着部材は、電池パック11に限定されるものではない。開口部12を有する携帯機器に取り付けるものであれば、機能を付加したり、強化したりするものにも適用可能である。また、携帯機器は、無線機に限定されるものではない。そのため、本体と別部品となっているカバー類にも適用可能である。
また、実施形態では、裏面全体に亘って開口部12を形成したものについて述べたが、これに限定されるものではない。開口部は、一部であっても構わない。
【符号の説明】
【0021】
10 無線機本体
11 電池パック
12 開口部
13 上部ケース
19 周縁
19´ 周縁
20 電源端子
26 内壁
30 放電電極
32 パッキン
33 溝
40 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機器本体と、前記携帯機器本体に着脱可能な装着部材と、前記携帯機器本体と前記装着部材との間にパッキンが挟みこまれた電子機器の防水構造において、
前記携帯機器本体は、厚みを一部切欠いた開口部を有し、
前記装着部材は、携帯機器本体と当接し前記開口部を閉塞する周縁を有し、かつ、前記周縁には前記パッキンを取り付けるための溝を備え、
一方、前記パッキンは、前記開口部の切欠に対応した立ち上がり部を有する3次元構造であることを特徴とする電子機器の防水構造。
【請求項2】
上記パッキンが開口部と接触する先端部の断面を略三角形とし、その三角形の頂点を底辺の中点より装着部材の外側に向けて、あるいは内側に向けてずらせた請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
上記装着部材が電池を収容した電池パックとし、その電池パックの出力端子及び前記出力端子と接続する入力端子を開口部内に設けた請求項1〜2のいずれかに記載の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−114365(P2011−114365A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266188(P2009−266188)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】