説明

防水機能付蓋部材及びその製造方法

【課題】蓋部材にゴム状弾性材製のシール部を一体成形する事により、防水機能付蓋部材の薄肉化を図ると共に、バリ漏れを抑え、蓋部材の傷つきを無くし、蓋部材とシール部との剥がれも防止出来る防水機能付蓋部材を提供できることを目的とするものである。
【解決手段】ハウジングに形成された開口部を開閉する防水機能付蓋部材において、
前記蓋部材の樹脂材製本体の一方の面に一体的に形成された前記開口部内に収まる突起部と、前記突起部の外周面に一体形成され、前記開口部の周面と密接する環状突起部と、前記環状突起部から前記外周面の前記本体との接合部近傍まで伸びる補強部とを備えたゴム状弾性材製のシール部と、前記補強部の外周面側に密接して存在する前記本体側に一体的に形成された熱可塑性エラストマー材製の保持部とよりなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の防水機能付蓋部材及びその製造方法に係り、更に詳しくは、携帯電話端末等の電子機器の内部へ水滴が浸入しないようにシールする構造に関するものである。
従って、本発明の防水機能付蓋部材は、防水電子機器のコネクタ部のシール構造として好適に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯端末においては、コネクタを開閉するコネクタ蓋が備えられる。
すなわち、コネクタ用の通信ポートを開閉するコネクタ蓋は、帯状で可撓性のバンド部でハウジング(ケース)側に固定保持されている。
そして、コネクタを塞ぐコネクタ蓋の周側面には、その全周にわたり小さなリブ形状のシールリング部が形成されている。
この事により、コネクタ蓋は、コネクタ用の通信ポートを水密的に密閉するようにしている。
【0003】
この種のコネクタ蓋は、具体的には、例えばポリカーボネートにより形成される蓋部材の内側に形成される栓部材の周囲にシリコンラバーにより形成されるゴムパッキンをインサート成形した防水栓を、コネクタ蓋に超音波溶着により一体化した構造となる。(特許文献1)
しかし、コネクタ蓋の内側に防水栓があるため、コネクタ蓋全体の厚みが増えると共に製造コストが嵩む問題を惹起した。
【0004】
そこで、コネクタ蓋に防水部材を一体化させて、コネクタ蓋の防水構造の薄型化を実現する提案がされた。(特許文献2)
しかし、ポリカーボネート等の樹脂材製のコネクタ蓋に、ゴム状弾性材製の防水部材を一体化させる際に、コネクタ蓋を傷つける問題を招来した。
すなわち、携帯電話等の電子機器は、その外観の美観を非常に重要視するため、防水部材を構成するゴム状弾性材の一部が、不必要な箇所にはみ出すバリ漏れを発生させる事は避けなければならない。
【0005】
このためには、ゴム状弾性材製の防水部材を成形する際に、成形時の型締め圧力を一定以上に上げなければならない。
この結果、ポリカーボネート等の樹脂材製のコネクタ蓋の塗装面が傷つく問題が不可避的に存在した。特に、ゴム状弾性材製の防水部材が樹脂材製のコネクタ蓋から剥がれる事を防止する為に、薄肉の延出部を設ける態様とした場合は、上記した問題が顕著に現れた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−84438号公報
【特許文献2】特開2010−186562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、蓋部材にゴム状弾性材製のシール部を一体成形する事により、防水機能付蓋部材の薄肉化を図ると共に、バリ漏れを抑え、蓋部材の傷つきを無くし、蓋部材とシール部との剥がれも防止出来る防水機能付蓋部材を提供できることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明にあっては、ハウジングに形成された開口部を開閉する防水機能付蓋部材において、
前記蓋部材の樹脂材製本体の一方の面に一体的に形成された前記開口部内に収まる突起部と、前記突起部の外周面に一体形成され、前記開口部の周面と密接する環状突起部と、前記環状突起部から前記外周面の前記本体との接合部近傍まで伸びる補強部とを備えたゴム状弾性材製のシール部と、前記補強部の外周面側に密接して存在する前記本体側に一体的に形成された熱可塑性エラストマー材製の保持部とよりなることを特徴とする。
【0009】
更に、上記目的を達成するために本発明にあっては、最初に熱可塑性エラストマー材製の保持部を成形する工程と、この保持部と蓋部材の樹脂材製本体及び突起部とを一体成形する工程と、ゴム状弾性材製のシール部を成形する成形金型を前記保持部に押し当てた状態で前記シール部を前記突起部に一体成形する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明の防水機能付蓋部材によれば、防水機能付蓋部材の薄肉化を図ると共に、バリ漏れを抑え、蓋部材の傷つきを無くし、蓋部材とシール部との剥がれも防止出来る。
また、請求項2記載の発明の防水機能付蓋部材によれば、蓋部材の突起部の機械的強度を高める事が出来る為、シール部に十分な嵌合圧力を与える事が出来る。
【0011】
更に、請求項3記載の発明の防水機能付蓋部材によれば、シール部の蓋部材からの剥がれを防止出来る。
更に、請求項4記載の発明の防水機能付蓋部材によれば、蓋部材の軽量化が図れると共に、環状の突起部により囲まれる空間にコネクタ等のハウジング内に収める部材の一部を収容できる為、内部スペースが広がり、小型化、薄肉化が図れる。
【0012】
更に、請求項5記載の発明の防水機能付蓋部材によれば、蓋部材の軽量化が図れると共に、蓋部材の傷つきを無くし、蓋部材とシール部との剥がれも防止出来る。
更に、請求項6記載の発明の防水機能付蓋部材によれば、蓋部材の着脱が容易で、密封性能が良好である。
【0013】
更に、請求項7記載の発明の防水機能付蓋部材によれば、電子機器の防水、特に防水携帯電話に好適に用いられる。
更に、請求項8記載の発明の防水機能付蓋部材の製造方法によれば、ゴム状弾性材の一部が、不必要な箇所にはみ出すバリ漏れを発生させる事を効果的に防止出来るばかりではなく、ポリカーボネート等の樹脂材製の蓋部材本体2の塗装面が傷つく問題も回避出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る防水機能付蓋部材の正面図。
【図2】図1の防水機能付蓋部材の側面図。
【図3】図1のA−A断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態を図3と同様に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明に係る防水機能付蓋部材は、図1乃至図3に示す様に、携帯端末の機器の筐体を形成しているハウジング1に形成された開口部11を開閉する為に使用されるものである。
この開口部11には、コネクタ5が配置されている。
【0016】
そして蓋部材の樹脂材製本体2の一方の面には、本体2に一体的に形成され、開口部11内に収まる突起部21と、この突起部21の外周面211に一体形成され、開口部11の周面12と密接する環状突起部31と、この環状突起部31から外周面211の本体2との接合部2111近傍まで伸びる、筒状の補強部32とを備えたゴム状弾性材製のシール部3と、補強部32の外周面側に密接して存在する本体2側に一体的に形成された熱可塑性エラストマー材製の保持部4とが配置されている。
【0017】
突起部21は、蓋部材の形状に対応した柱状を呈している。
そして、シール部3は、突起部21の端面212(図上上方の面)の外周面に形成した環状段部に接合し、端面212に沿って伸びる環状の端面補強部33を備えている。
このことにより、シール部3が、蓋部材側から剥がれる事を効果的に防止出来る。
【0018】
また、環状突起部31は、外周面211の上端部2112近傍に一体的に設けられており、断面円弧形状を呈している。
このことにより、蓋部材の着脱が容易で、密封性能が良好である。
また、蓋部材は、帯状で可撓性のバンド部6でハウジング(ケース)1側に固定保持されている。
【0019】
本発明に係る防水機能付蓋部材の製造方法は、最初に熱可塑性エラストマー材製の保持部4を成形しておき、この保持部4と蓋部材の樹脂材製本体2及び突起部21とを二色成形により一体形成する。
ついで、成形金型を熱可塑性エラストマー材製の保持部4に押し当てた状態でゴム状弾性材製のシール部3を成形するものである。
この様に成形する事により、ゴム状弾性材の一部が、不必要な箇所にはみ出すバリ漏れを発生させる事を効果的に防止出来るばかりではなく、ポリカーボネート等の樹脂材製の
蓋部材本体2の塗装面が傷つく問題も回避出来る。
尚、本実施態様においては、保持部4を補強部32の外周面側にのみ設ける態様としているが、成形金型が端面212の全面に当接する場合は問題ないが、端面補強部33の近傍のみに成形金型が当接する場合は、成形金型が当接する箇所(端面補強部33の内側)にも熱可塑性エラストマー材製の保持部4を設ける事が好ましい。
【0020】
シール部3に使用されるゴム状弾性材としては、ニトリルゴム、アクリルゴム、EPDM、CR、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等が挙げられ、各種用途に応じて適宜選択して用いられる。
【0021】
また、蓋部材に使用される樹脂材としては、ABS樹脂、PP(ポリプロピレン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PSF(ポリスルホン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PMMA(アクリル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PA(ナイロン/ポリアミド)、PC(ポリカーボネイト)、POM(ポリアセタール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、LCP(液晶ポリマー)、フッ素樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、各種用途に応じて適宜選択して用いられる。
【0022】
また、保持部4に使用される熱可塑性エラストマー材としては、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、ポリエステル系、塩素化ポリエチレン系等の熱可塑性エラストマー材が挙げられ、各種用途に応じて適宜選択して用いられる。
【0023】
ついで、本発明の第2の実施形態を図4に基づき説明する。
先に説明した実施形態と相違する点は、突起部21が、環状であることである。
この為、シール部3は、突起部21の全体を覆っている。
【0024】
この結果、突起部21の内周面212に接着しているシール部3の内側補強部34の内周側には、内側補強部34に密接して存在する、本体2側に一体的に形成された熱可塑性エラストマー材製の内側保持部41が配置されている。
この事により、蓋部材の軽量化が図れると共に、蓋部材の傷つきを無くし、蓋部材の突起部21とシール部3との剥がれも防止出来る。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る防水機能付蓋部材は、電子機器の防水、特に防水携帯電話に使用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 ハウジング
2 本体
3 シール部
4 保持部
5 コネクタ
11 開口
12 周面
21 突起部
31 環状突起部
32 補強部
33 端面補強部
34 内側補強部
41 内側保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)に形成された開口部(11)を開閉する防水機能付蓋部材において、
前記蓋部材の樹脂材製本体(2)の一方の面に一体的に形成された前記開口部(11)内に収まる突起部(21)と、前記突起部(21)の外周面(211)に一体形成され、前記開口部(11)の周面(12)と密接する環状突起部(31)と、前記環状突起部(31)から前記外周面(211)の前記本体(2)との接合部(2111)近傍まで伸びる補強部(32)とを備えたゴム状弾性材製のシール部(3)と、前記補強部(32)の外周面側に密接して存在する前記本体(2)側に一体的に形成された熱可塑性エラストマー材製の保持部(4)とよりなることを特徴とする防水機能付蓋部材。
【請求項2】
前記突起部(21)が、柱状であることを特徴とする請求項2記載の防水機能付蓋部材。
【請求項3】
前記シール部(3)が、前記突起部(21)の端面(212)の一部に接合した端面補強部(33)を備えていることを特徴とする請求項1記載の防水機能付蓋部材。
【請求項4】
前記突起部(21)が、環状であることを特徴とする請求項1記載の防水機能付蓋部材。
【請求項5】
前記シール部(3)が、前記突起部(21)の全体を覆い、前記突起部(21)の内側補強部(34)の内周側に密接して存在する前記本体(2)側に一体的に形成された熱可塑性エラストマー材製の内側保持部(41)とよりなることを特徴とする請求項4記載の防水機能付蓋部材。
【請求項6】
前記環状突起部(31)が、前記外周面(211)の上端部(2112)近傍に一体的に設けられ、断面円弧形状を呈していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の防水機能付蓋部材。
【請求項7】
電子機器の防水、特に防水携帯電話に好適に用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の防水機能付蓋部材。
【請求項8】
最初に熱可塑性エラストマー材製の保持部4を成形する工程と、この保持部4と蓋部材の樹脂材製本体2及び突起部21とを一体成形する工程と、ゴム状弾性材製のシール部3を成形する成形金型を前記保持部4に押し当てた状態で前記シール部3を前記突起部21に一体成形する工程とを含む防水機能付蓋部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−124075(P2012−124075A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275037(P2010−275037)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】